JP3559716B2 - 誘導発熱型定着装置とその誘導電流発生部材を製造する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式のプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置における誘導加熱式定着装置並びに当該定着装置に用いられる誘導電流発生部材の製造方法に関するもので、更に当該製造方法は誘導加熱方式を用いる加熱器具に利用される誘導コイルを製造するにあたって応用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
可視像形成のためにトナーを用いる画像形成装置においては、トナー画像を転写紙等、記録材に定着するために定着装置が備えられている。当該定着装置の主要部は未定着のトナーを加熱溶着するための加熱ローラ(定着ローラともいう)と、当該加熱ローラと共に記録材を押圧しながら挟持搬送する加圧ローラとで構成されている。従来、このような定着装置は、加熱ローラ内部に加熱ヒータとして一般にハロゲンランプを備え、このランプによって加熱ローラを加熱し、当該ローラを定着に必要な温度にまで上昇させるものであった。
【0003】
しかしながら、このようなヒータによる加熱方式は、加熱ローラを所定温度に加熱するまでの時間が比較的長く、その間、使用者は画像形成装置機器を使用することができず、長時間の待機を強いられるという問題があった。またハロゲンランプヒータ自体の損失も大きいため、このようなハロゲンランプ加熱方式では消費電力が大きくなり、地球温暖化などの環境問題がクローズアップされる昨今においては省エネルギー化に反する問題は見逃すことができず、効率が良く立ち上がり時間の短い定着装置の要求が生じた。
【0004】
そのため、金属導電体からなる加熱ローラを電磁波による渦電流によって加熱する誘導加熱式定着が、加熱時間を画期的に短くでき、且つ効率も良いため、環境問題にも寄与できる方式として注目されるようになっている。この場合、誘導加熱式定着装置における加熱ローラの一般的な従来構成の1つとして、金属導電体からなる加熱ローラの内部に誘導コイルを螺旋状に巻装したボビンを備えたものが知られている。そして、加熱ローラの内面に近接した上記誘導コイルに高周波電流を流し、これによって生じた高周波磁界で加熱ローラに誘導渦電流を発生させ、加熱ローラ自体の表皮抵抗によって加熱ローラそのものをジュール熱により発熱させるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記誘導コイルの材料として一般的に導電性の優れた材料、例えば銅が使用されているが、高周波の大電流が誘導コイルに流れると、導電性の高い材料でも発熱が大きく、また加熱ローラの輻射熱によっても、コイルの絶縁層が破壊され、短絡する危険性がある。その対策の一つとして冷却のためにコイル内部に強制的に空気を流通させることが提案されているが、誘導コイルの冷却効果が高くなるように、当該コイルが巻き付けられるべきボビンをなくし、コイル発熱による熱を効率よく外部へ排出する構成が考えられている。しかしながら、このような構成は理論的には誘導コイルの冷却効果が絶大であるものの、これまで製造が困難とされ、誘導加熱式定着装置に用いられる誘導コイルでは実用化されるに至っていない。同じようなボビンレスコイルとしては、変圧器等で用いられているモールドコイルが知られており、当該コイルはコイル外径に対して全長が十分に短いため、樹脂成形による製法が可能であるが、加熱ローラにおける誘導コイルのような小径の細長い円筒形状では、樹脂の流動性が悪く、樹脂成形が困難である。
【0006】
そこで本発明は、上述の問題に鑑み、冷却効果に優れた誘導電流発生部材を備えた誘導発熱型定着装置を提供し、またその誘導電流発生部材を製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題のうち誘導発熱型定着装置の提供については、導電性材料で形成された被加熱ローラの内部に配置された誘導電流発生部材が最外層の耐熱絶縁材の円筒体と接着剤層と当該接着剤層の内周面に接し巻回された誘導コイルとを基本な構成要素とすることによって、解決される。
【0008】
また誘導電流発生部材の製造方法に関する課題は、難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付けて非導電性接着剤を用いて当該コイルを含浸接着した後、これを耐熱絶縁材の円筒体内に挿入し、当該円筒体にコイルを接着した後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成することで解決される。
【0009】
難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付け、耐熱絶縁材の円筒体内周に非導電性接着剤を塗布した後、コイルを巻き付けたボビンを円筒体内に挿入し、コイルが接着剤を含浸して円筒体に接着した後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成しても、上記課題を解決する。また難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付け、当該コイルに非導電性接着剤を含浸して、固着する前にコイルを巻き付けたボビンを耐熱絶縁材の円筒体内に挿入し、円筒体にコイルを接着した後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成しても上記課題を解決できる。更に、難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付け、これを耐熱絶縁材の円筒体内に挿入し、コイルと円筒体のギャップに非導電性接着剤を流し込み、当該接着剤の固着後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成することも上記課題を解決する。
【0010】
コイルを巻き付けたボビンを円筒体に挿入する代わりに、コイルを巻き付けたボビンを2つの半円筒体ではさみ、接着後にボビンを引き抜くようにしても、上記課題を解決できる。
【0011】
難接着剤をボビンに塗布する代わりに、難接着材料のボビンを用いてもよい。上記コイルがリッツ線で構成されているのが好適である。上記コイルの両端に位置するリード線に難接着剤が塗布されているのが、好ましい。ボビンに塗布されるべき難接着剤は鉱油又はシリコーン系材料を主成分としているのが好都合である。あるいはボビンに塗布されるべき難接着剤がフッ素系材料を配合していてもよい。コイルを巻き付けるボビンのコイルとの接触面がフッ素系又はシリコーン系の材質からなっていてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を、図に示す例に基づいて説明する。
先ず本発明に係る方法により製造した誘導電流発生部材を備える定着ユニット基本部(定着部)を、加熱ローラの軸線に沿って切った面で図1に、その垂直断面で切ったものを図2に示す。加圧ローラ2と圧接する加熱ローラ3は図2に示す面で時計回りに回転する。加熱ローラ3の軸線方向片端部には、不図示のギヤが嵌装固定され、同じく不図示の駆動ギヤと噛み合っており、当該駆動ギヤの回転によって加熱ローラ3が回転するようになっているものである。加熱ローラ3の芯金はステンレス、または鉄等の磁性材料からなっており、その外側にはフッ素樹脂からなる離型層が設けられている。
【0013】
また加熱ローラ3の内部には、誘導電流発生部材の誘導コイル1が配設されている。例えばリッツ線からなる誘導コイル1は、トナー画像定着装置の側板に設けられたブラケット7に固定された耐熱絶縁体6の内周面に非導電性接着剤4を用いて接着されており、その結果、当該誘導コイル1は回転しない。また誘導コイル1は両端にリード線10a,10bを有している。これらリード線10a,10bにより誘導コイル1には両端部から高周波電流が通じるようになっている。
【0014】
定着動作時に、加熱ローラのコア部に位置する誘導コイル1に高周波電流が通じ、加熱ローラ3は誘導電流に伴うジュール熱によって発熱する。特にコイルにリッツ線が用いられていれば効率良く発熱する。上記したように、図2において加熱ローラ3は時計回りに、加圧ローラ2は反時計回りに回転し、定着されるべきトナー画像TIを有する記録シートSをこれら加熱ローラと加圧ローラで挟圧して矢印方向に搬送して、トナー画像TIを熱と圧力により定着する。
【0015】
上記のような構成の定着ユニットに供される誘導電流発生部材の製造方法を以下に説明する。図3において、難接着剤を塗布した中空ボビン5に誘導コイル1を巻装して、巻かれた誘導コイル1に非導電性接着剤4を塗布し、誘導コイル1の線と線の隙間に当該非導電性接着剤4が浸透して含浸接着を行い、しかる後に当該巻装物を樹脂等の耐熱絶縁材からなる円筒体6内に緩嵌して同じく非導電性接着剤(或いは通常の接着剤)で当該巻装物を円筒体6の内周面に接着する。接着剤が固着した後、ボビン5を取り外してボビンレスコイルを耐熱絶縁体6内に実現させる。非導電性接着剤を2度用いる代わりに、耐熱絶縁材の円筒体の内周面に非導電性接着剤を予め塗布し、その中に難接着剤を塗布した上でコイルを巻いたボビンを挿入し、コイルが円筒体に接着した後にボビンを抜くようにしてもよい。あるいは難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻いた後に非導電性接着剤をコイルに含浸し、これを直ちに耐熱絶縁材の円筒体の内周面に挿入し、コイルが円筒体に接着した後にボビンを抜くようにしてもよい。
【0016】
また図4に示すように、難接着剤を塗布した上でコイルを巻いたボビン5を、円筒形の耐熱絶縁体内に嵌入し、しかる後に非導電性接着剤4をコイルと耐熱絶縁体の間のギャップに流し込み、当該接着剤が固着した後にボビン5を取り外してもよい。
【0017】
更に、難接着材料からなるボビン5に誘導コイル1を巻き、図5に示すように、耐熱絶縁材料からなる2つの半円筒体8で挟み、図4の例と同様に非導電性接着剤でコイルと半円筒体を接着した後にボビン5を抜き取るようにしてもよい。
【0018】
上記いずれの場合においても、コイル両端部のリード線は、接着剤が接触して固着する不具合を回避するために、難接着剤を塗布しておくのが良い。難接着剤には主に鉱油、フッ素樹脂系の樹脂あるいはシリコーン系の樹脂が用いられるが、コイル素線の外周を絶縁するために非導電性の接着剤を用いて含浸接着させるようにしているので、耐熱絶縁材の円筒体6あるいは半円筒体8と誘導コイル1を接着するこの接着剤が、誘導コイル1とボビン5の間に付着した場合にもその接着を妨げることができるものであれば良い。円筒形状乃至半円筒形状の耐熱絶縁体の材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂、PPS、PA、PETなどの樹脂又はセラミックなどを使用することができる。またボビン材料としてフッ素樹脂が選択され、非接着を補助するが、金属円筒体の表面にフッ素樹脂をコーティングしてなるボビンであってもよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、導電性材料で形成された被加熱ローラの内部に配置された誘導電流発生部材が最外層の耐熱絶縁材の円筒体と接着剤層と当該接着剤層の内周面に接し巻回された誘導コイルとを基本な構成要素とするので、誘導電流発生部材が冷却効果に優れた誘導発熱型定着装置とすることができる。
【0020】
また請求項2に係る発明では、難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付けた後に非導電性接着剤を用いて当該コイルを含浸接着するので、巻き緩み、たわみ等の形状変化がなくなり、耐熱絶縁材の円筒体にコイルを接着してボビンを取り外すと、その後においてもコイルの形状をボビンに巻き付けた時の形状に維持することができ、更にコイルの既存の絶縁材と併せて絶縁効果を奏し発熱による絶縁破壊を格段に抑えることができる。
【0021】
請求項3や請求項4に係る方法によれば、非導電性接着剤を誘導コイル乃至耐熱絶縁材円筒体の接着必要個所に確実に塗布することができ、接着強度のばらつきを抑えて安定した強度を得ることができる。請求項5に係る方法によれば、請求項2に係る方法に比べて工程ステップを減らすことができ、製造方法を簡略化できる。
【0022】
更に請求項6に係る方法によれば、上記各製造方法に関する効果に加えて、半円筒体を誘導コイルの径方向から誘導コイルに接着させるためにこれらの隙間からの接着剤の漏れを減らすことができる。
【0023】
請求項7に係る方法では、ボビン自体を難接着材料にするので、難接着剤をボビンに塗布する工程を省略することができ、工程の簡略化を実現できる。請求項8に係る方法では、コイルがリッツ線で構成されるので、高周波電流による表皮効果を抑えることができ、非導電性接着剤がリッツ線の素線間に入り込み、接着効果を増すことができ、コイルの形状維持を高めることができる。請求項9に係る方法では、コイルの両端に位置するリード線に難接着剤が塗布されているので、このリード線に接着剤が付着した場合にも容易に剥離することができ、接着剤硬化によるリード線の配線困難といった事態を回避することができる。請求項10又は11に係る方法では、ボビンとコイルの非接着性を高めることができる。請求項12に係る方法では、フッ素系又はシリコーン系の材質という離型材質のためにボビンの引き抜きが一層容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着装置の主要部分の概略図である。
【図2】図1に示された定着装置ユニットの90度向きを変えた状態での概略図である。
【図3】誘導電流発生部材を製造する工程を示す図である。
【図4】誘導電流発生部材を製造する別の工程を示す図である。
【図5】半円筒形の絶縁体を用いる場合の工程のイメージを示す図である。
【符号の説明】
1 誘導コイル
2 加圧ローラ
3 加熱ローラ
6 円筒形状絶縁体
25 定着ローラ本体

Claims (12)

  1. 導電性材料で形成された被加熱ローラと当該被加熱ローラ内部に配置された誘導電流発生部材とを備える誘導発熱型定着装置において、
    上記誘導電流発生部材が最外層の耐熱絶縁材の円筒体と接着剤層と当該接着剤層の内周面に接し巻回された誘導コイルとを基本な構成要素とすることを特徴とする定着装置。
  2. 誘導発熱型定着装置のための誘導電流発生部材を製造する方法において、
    難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付けて非導電性接着剤を用いて当該コイルを含浸接着した後、これを耐熱絶縁材の円筒体内に挿入し、当該円筒体にコイルを接着した後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成することを特徴とする方法。
  3. 誘導発熱型定着装置のための誘導電流発生部材を製造する方法において、
    難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付け、耐熱絶縁材の円筒体内周に非導電性接着剤を塗布した後、コイルを巻き付けたボビンを円筒体内に挿入し、コイルが接着剤を含浸して円筒体に接着した後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成することを特徴とする方法。
  4. 誘導発熱型定着装置のための誘導電流発生部材を製造する方法において、
    難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付け、当該コイルに非導電性接着剤を含浸塗布して、固着する前にコイルを巻き付けたボビンを耐熱絶縁材の円筒体内に挿入し、円筒体にコイルを接着した後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成することを特徴とする方法。
  5. 誘導発熱型定着装置のための誘導電流発生部材を製造する方法において、
    難接着剤を塗布したボビンにコイルを巻き付け、これを耐熱絶縁材の円筒体内に挿入し、コイルと円筒体のギャップに非導電性接着剤を流し込み、当該接着剤の固着後に上記ボビンを引き抜くことで誘導電流発生部材を形成することを特徴とする方法。
  6. コイルを巻き付けたボビンを円筒体に挿入する代わりに、コイルを巻き付けたボビンを2つの半円筒体ではさみ、コイルを半円筒体に接着した後にボビンを引き抜くことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
  7. 難接着剤をボビンに塗布する代わりに、難接着材料のボビンを用いることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
  8. 上記コイルがリッツ線で構成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
  9. 上記コイルの両端に位置するリード線に難接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
  10. ボビンに塗布されるべき難接着剤が鉱油又はシリコーン系材料を主成分としていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
  11. ボビンに塗布されるべき難接着剤がフッ素系材料を配合していることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
  12. コイルを巻き付けるボビンのコイルとの接触面がフッ素系又はシリコーン系の材質からなることを特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載の誘導電流発生部材製造方法。
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