JP4699615B2 - 定着装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば静電複写機やレーザプリンタ等の画像形成装置において被定着部材にトナー像(画像)を定着する定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスを用いた複写装置に組み込まれる定着装置は、被定着部材上に形成された現像剤であるトナーを加熱して溶融させ、被定着部材にトナーを固着するものである。なお、定着装置に利用可能なトナーを加熱する方法としては、ハロゲンランプ(フィラメントランプ)による放射熱を用いる方法が広く利用されている。
【0003】
熱源としてハロゲンランプを用いる方法においては、被定着部材とトナーに所定の圧力を提供可能に一対のローラを設け、そのローラの少なくとも一方のローラを中空円柱としてその内部空間に、円柱状に構成したハロゲンランプを配置する構成が広く用いられている。この構成においては、ハロゲンランプが配置されたローラは、他の一方のローラと接する位置で作用部(ニップ)を形成し、ニップに案内された被定着部材およびトナーに、圧力と熱を提供する。すなわち、ランプが設けられた加熱ローラと加熱ローラに従動して回転する加圧ローラとの圧接部(ニップ)である定着ポイントに、被定着部材すなわち用紙を通過させて、用紙上のトナーを融着させて、用紙に定着するものである。
【0004】
ハロゲンランプを用いた定着装置においては、ハロゲンランプからの光と熱が加熱ローラの全周方向に放射されて全体が加熱される。この場合、光が熱に変換される際の損出と、ローラ内の空気を暖めてローラに熱を伝達する際の効率等を考えると熱変換効率は、60〜70%であり、熱効率が低く、消費電力が多く、しかも、ウォーミングアップ時間も長くなることが知られている。
【0005】
このため、近年、加熱体に密着して移動可能な薄い金属層(導体)を有する耐熱性フィルムを無端ベルト状または円筒状とし、耐熱性フィルムに被加熱物を密着させながらフィルムと一緒に移動させることで、加熱体の熱エネルギーを、フィルムから被加熱物に付与する定着装置が提案されている。なお、耐熱性フィルムは、通常、利用可能な最大の幅を有する被定着部材の幅に合わせた幅が与えられている。このことにより、フィルムを用いた定着装置においては、加熱体の長手方向の温度を均一に管理する必要があり、製造時の均一性や動作時に高精度な温度制御が要求されることから、装置のコストが上昇する問題がある。
【0006】
上述したヒータ定着やフィルム定着に特有の問題等を解決するため、特開平9−258586号公報および特開平8−76620号公報等のように、誘導加熱の手法を用いた定着装置が提案されている。
【0007】
特開平9−258586号公報には、定着(金属)ローラの回転軸に沿って設けられたコアにコイルを巻いた誘導コイルに電流を流し、ローラに誘導電流を発生させて金属ローラ自身を加熱する定着装置が開示されている。
【0008】
特開平8−76620号公報には、磁場発生手段を収容した導電フィルムと導電フィルムに密着される加圧ローラとを有し、導電フィルムを発熱させて導電フィルムと加圧ローラとの間を搬送される記録媒体上のトナーを記録媒体に定着する定着装置が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した誘導加熱方式の定着装置では、ハロゲンランプを用いる周知の定着装置が、ローラ体の円周方向に関して均一に加熱できる構造であるに比較して、磁場発生装置としての励磁コイルの巻き付け間隔や巻き付け方向に関連して、ローラ体の円周方向で、必ずしも表面温度が均一にならないことが知られている。
【0010】
また、ローラ体の熱容量が低減されることにより、例えば、サイズの異なる用紙が利用されると、ローラ体の長手方向で、温度が不均一になるという新たな問題が生じている。例えば、小サイズの用紙(ローラ体の長さに比較して幅の狭い用紙)が連続して通紙されると、ローラ体の中央部では多くの熱が消費されるが、ローラ体の端部では熱が消費されないため、ローラ体の端部の温度が規格温度を越える問題がある。
【0011】
さらに、誘導加熱方式において、発熱効率を向上させるためには、各線材の配列および間隔を最適化して、インピーダンスを最適にする必要がある。
【0012】
ところで、励磁コイルを構成線材は、誘導加熱に利用される高周波電流の特性の一つである表皮効果の影響を低減するために、個々に絶縁された小断面の複数本の線材を撚って編んだリッツ線であり、しかも、通過電力が大きなことから、小断面の線材の中では、断面積の大きな剛性の高い線材が用いられる。
【0013】
このため、コイル支持体に巻き付ける際に、一般的なコイルと同様に、単純に線材を巻き付けたとしても、その剛性により、隣接する線材との間の間隔が変化したり、コイル支持体の長手方向において、コイル支持体と密着せずに、線材が浮き上がることがある。
【0014】
このことは、コイルと外側のローラ体との間の間隔を不均一とし、従って、ローラ体の熱分布を不均一とする問題がある。
【0015】
なお、剛性の高いリッツ線を、細長い円筒状のコイル支持体に、所望の間隔を維持しながら巻き付けることのできる巻き線の形成方法は、これまであまり公開されていない。
【0016】
この発明の目的は、誘導加熱方式の定着装置に用いられる剛性の高いリッツ線を、細長い円筒状のコイル支持体に、所望の間隔を維持しながら巻き付けることにより、温度むらの生じにくい定着装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この発明は、導体からなる金属層を有するエンドレス部材に近接配置したコイルに電流を流して、前記エンドレス部材を発熱させて被定着部材を加熱する定着装置において、前記コイルは、外形が円筒状で、外周において対向するように形成されたリブ部及び線材の巻き付け加工時に、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて巻き付けられる線材の折り曲げ部を定義する補助部材を装着するためのねじ孔が設けられたコイル支持体に、前記リブ部の一方に沿って前記線材の巻き付けが開始されるとともに、前記コイルの半径方向の最外周にある線材について、隣り合う線材の中心を結ぶ線分と前記リブ部に巻き付けられた最内周の線材の中心を結ぶ線分とのなす角が90°を越える前に巻き方向が反転され、かつ、前記外周において対向する他のリブ部に沿って残りの線材の巻き付け位置が定義されるとともに、前記コイル支持体に装着される補助部材により、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて、巻き付けられている定着装置を提供するものである。
【0018】
また、この発明は、導体からなる金属層を有するエンドレス部材に近接配置したコイルに電流を流して、前記エンドレス部材を発熱させて被定着部材を加熱するコイルの製造方法において、前記コイルは、外形が円筒状で、外周において対向するように形成されたリブ部及び線の巻き付け加工時に、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて巻き付けられる線材の折り曲げ部を定義する補助部材を装着するためのねじ孔が設けられたコイル支持体に、前記リブ部の一方に沿って前記線材の巻き付けが開始されるとともに、前記コイルの半径方向の最外周にある線材について、隣り合う線材の中心を結ぶ線分と前記リブ部に巻き付けられた最内周の線材の中心を結ぶ線分とのなす角が90°を越える前に巻き方向が反転され、かつ、前記外周において対向する他のリブ部に沿って残りの線材の巻き付け位置が定義されるとともに、前記コイル支持体に装着される補助部材により、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて、巻き付けられるコイルの製造方法を提供するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である定着装置について説明する。なお、定着装置が組み込まれる画像形成装置の一例としてデジタル複写装置を例に説明する。
【0027】
図1に示すように、デジタル複写装置(画像形成装置)1は、複写対象の画像を光の明暗として読み取って画像信号を生成する画像読取装置(スキャナ)2と、スキャナ2もしくは外部から供給される画像信号に対応する画像を形成して被定着部材(転写材)である用紙Pに定着する画像形成部3とからなる。なお、スキャナ2には、複写対象がシート状である場合に、スキャナ2による画像の読み取り動作と連動して、順次複写対象を入れ換える自動原稿送り装置(ADF)4が一体的に設けられている。
【0028】
画像形成部3は、スキャナ2または外部装置から供給される画像情報に対応するレーザビームを照射する露光装置5、露光装置5から供給される画像情報であるレーザビームに対応する画像を保持する感光体ドラム6、感光体ドラム6に形成された画像に現像剤(トナー)を供給して現像する現像装置7、現像装置7により現像された感光体ドラム6上のトナー像が、以下に説明する給紙搬送部により給送された転写材(用紙)Pに転写された状態の現像剤像を加熱して溶融させ、用紙Pに定着する定着装置8等を有している。
【0029】
このような画像形成装置においては、スキャナ2あるいは外部装置から画像信号が供給されると、予め所定の電位に帯電されている感光体ドラム6に露光装置5から、画像信号に対応して強度変調されたレーザビームが照射される。これにより、感光体ドラム6に、複写あるいは出力すべき画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0030】
感光体ドラム6に形成された静電潜像は、現像装置7によりトナーが選択的に提供されることで現像されて、図示しないトナー像に変換される。
【0031】
感光体ドラム6上のトナー像は、感光体ドラム6と(符号を付さない)転写装置とが対向する転写位置で、用紙Pを保持しているカセット9から、ピックアップローラ10により1枚ずつ取り出されて感光体ドラム6へ向かう搬送路11を搬送され、アライニングローラ12により感光体ドラム6に形成されたトナー像との位置すなわち給送タイミングが整合されて、(転写位置に)供給されている用紙Pに転写される。
【0032】
用紙Pに転写されたトナーは、定着装置8に搬送され、定着装置8からの熱により、トナーが溶融されると同時に圧力が加えられることで、用紙Pに定着される。
【0033】
定着装置8でトナー像が定着された用紙Pは、排紙ローラ13により、用紙カセット9とスキャナ2との間に定義される排出空間である排紙トレイ14に排出される。
【0034】
図2ないし図4は、図1に示した画像形成装置に組み込まれる誘導加熱方式の定着装置の一例を説明する概略図である。なお、図2は、定着装置の断面図であり、図3は、被定着材である用紙が通過されている状態を説明する概略図である。また、図4は、図2および図3に示した定着装置において、誘導加熱のための高周波電流が供給される励磁コイルが巻き付けられるコイル支持体と支持体に巻き付けられた励磁コイルを示す概略図である。
【0035】
図2に示されるように、定着装置8は、内部に、誘導加熱体(励磁コイル)21を収容している第1のローラ体(エンドレス部材)20と、第1のローラ体20の軸線に沿って配置され、第1のローラ体20の表面と所定幅のニップNを介在させて接触された第2のローラ体30とからなる。なお、第1または第2のローラ体20または30のいずれかには、両ローラ体20,30を所定の速度で回転させるための図示しないギヤと、そのギヤに所定の駆動を与える図示しない駆動機構が設けられている。また、それぞれのローラ体の外径は、一例であるが40mmである。
【0036】
第1のローラ体20は、例えば肉厚1mmの鉄製の円筒すなわち導体で構成された金属層を有するエンドレス部材であり、表面に、テフロン等の離型層が形成されている。なお、第1のローラ体20には、他にも、ステンレス鋼、アルミニウム、ステンレス鋼とアルミニウムの合金等が利用可能である。また、第1のローラ体として、所定の厚さの耐熱性のフィルムの表面に、所定厚さの金属(上述の鉄等)の薄層を形成したシート部材を円筒状または楕円形もしくは2つ以上のローラにより無端ベルト状等の任意の形状が利用可能である。
【0037】
第2のローラ体30は、芯金31の周囲に、シリコンゴムやフッ素ゴムを素材とした弾性材料が所定の厚さに整形されているものである。
【0038】
両ローラ体20、30は、図示しない加圧機構により、第2のローラ体30が第1のローラ体20に対して所定の圧力で圧接されることで、両ローラが接する位置で、上述の所定幅のニップ(圧接により第2のローラ体30の外周面が弾性変形する領域)Nを提供する。なお、ニップNに用紙Pが搬送されると、用紙P上のトナーが熱により溶融されると同時に、圧力により、用紙Pに固着(定着)される。
【0039】
第1のローラ体20の周上であって、ニップNよりも回転方向の下流側には、用紙Pを第2のローラ体30の表面から剥離させる剥離爪81、第1のローラ体20の外周面にオフセット転写されたトナーや用紙からの紙粉等を除去するクリーニング部材83、第1のローラ体20の外周面にトナーが付着することを防止するために離型剤を塗布する離型剤塗布装置85および第1のローラ体20の外周面の温度を検出するサーミスタからなる温度センサ87が設けられている。
【0040】
なお、図3に示すように、コイル22(誘導加熱体21)は、ローラ体20の周方向に沿って、2組、配置されている。しかしながら、それぞれのコイルは、図4に詳述する中継線22によって、互いに接続されている。また、中継線22は、実際には、2組のコイルを形成する線材の一部であり、それぞれのコイルは、単一の線材から構成されている。
【0041】
図4に示すように、誘導加熱体21は、高耐熱性のエンジニアリングプラスチック、例えばフェノール樹脂により形成され、外形が円筒状で、励磁コイル22の線材が巻き付けられるための複数の溝部や曲面が形成されているコイル支持体23と、コイル支持体23に所定回数巻き付けられた線材すなわち励磁コイル22からなる。
【0042】
励磁コイル22は、例えば直径が0.5mmで、耐熱性のポリイミドで被覆されて互いに絶縁されている銅線を、複数本(19本)束ねて撚ったリッツ線を、第1のローラ体20の長手方向に平行、かつ第1のローラ体20の周方向に沿った平面状コイルとし、ローラ体20の周方向に沿って2つ配置したものであり(図3参照)、この線材の形状を維持するために、コイル支持体23の外周に、耐熱性の塗料あるいはワニスもしくは接着剤で固定したものである。なお、本実施例では、耐熱性のシリコーン樹脂を含む塗料を用い、ディッピング法により表面コートと固着を行っている。これにより、エンジニアリングプラスチック表面のさらなる耐熱コート、線材の耐熱性向上、絶縁および接着を行うことができる。また、市販の耐熱性塗料は、全てこの効果を期待できる。
【0043】
なお、励磁コイル22は、第1のローラ体20の周方向に2つに区分されているが、実際には、単一の線材により構成されており、一方のコイルを支持体23の所定の位置に巻き付けた後、中継用の線材(コイルの一部)により支持体23内で線材の方向が逆転されて、他方のコイルが再び支持体23の所定の位置に巻き付けられて形成されている。また、励磁コイル22の線材をリッツ線としたことにより、高周波電流の特性の一つである表皮効果に対して、浸透深さよりも線径を小さくすることができ、交流電流を有効に流すことが可能である。
【0044】
励磁コイル22はまた、芯材(フェライトや鉄芯等の磁性体)を使用しない空芯コイルであり、コイル支持材23は、励磁コイル22を構成する線材を、所定の間隔および配列で支持するためにのみ利用される。
【0045】
図5は、図4を用いて説明した誘導加熱体のコイルの構成(巻き付け)を説明する概略断面図である。
【0046】
図5に示すように、誘導加熱体21は、部分的に、2層に巻き付けられている励磁コイル22と、励磁コイル22の線材122を巻き付けるための図示しない複数の溝部や曲面が形成されているコイル支持体23と、からなる。
【0047】
図5に示す例では、誘導コイル22の線材122は、詳細は示さないが第1のローラ体20の長手方向の両端部のそれぞれと、中央付近とで、第1のローラ体20の円周方向で、各線材の間隔が変化されている。
【0048】
すなわち、中央付近においては、外側の巻き付けの最も内周側のターンの次のターン(内周から2番め)とその次のターン(内周から3番め)のと間に、線材一本の直径に等しい距離を上限とした隙間が設けられている。なお、内周から数えて5番めと6番めの線材は、内側の巻き付けの線材を覆うように、巻き付けられている。
【0049】
一方、両端部においては、最も内周側のターンの次のターン(内周から2番め)とその次のターン(内周から3番め)との間の間隔が消滅して、2つの平面状コイルの最も外周側のターン相互の間にあたる領域に、内側の巻き付けの線材のうちの2ターン分が、外側の巻き付けの線材に割り込むように、配列されている。
【0050】
すなわち、第1のローラ体20の長手方向の中央寄りの領域においては、外側の巻き付けには、ローラ体の円周方向に、一部で間隔が与えられて線材が巻き付けられるに対して、第1のローラ体20の長手方向の両端部においては、ローラ体の円周方向は、線材により満たされるように、各ターンが巻き付けられている。
【0051】
この構成によれば、ローラ体の長手方向の端部において円周方向に配列される線材の本数(ターン数)が、ローラ体の長手方向の中央付近に配列される線材の本数(ターン数)に比較して見かけ上、増大されることから、ローラ体の長手方向の端部から逃げる熱の分だけ低下する温度を、補償できる。従って、第1のローラ体20の外周面の温度分布を均一にできる。また、発熱効率が向上される。
【0052】
図6は、図4および図5を用いて説明した励磁コイルが形成されるコイル支持体の形状の特徴を説明する概略図である。
【0053】
図6に示されるように、支持体23は、円周上に設けられる2つのコイルの最内周の間隔を定義するための第1のリブ(および背面側で見えない第2のリブ)23aと、第1(および第2)のリブ23aに沿って最内周が定義されるコイル22の線材の方向が、支持体23の周方向で180°変化される反転用案内部23bと、図5に示したような外側および内側の2層の巻き付けのための内側の各ターンの線材が巻き付けられる複層ガイド部23cと、第1のリブ23aに沿って最内周が定義されるコイル22の線材の順に巻き付けられることでコイル22の大部分となる各ターンの線材が巻き付けられるコイルガイド部23dと、複層ガイド部23cおよびコイルガイド部23dを貫いてコイルガイド部23dの厚さの厚い部分から中心に向かって設けられ、コイル支持体23の重量および使用される材料を低減するとともに、誘導加熱体として組み立てられて、通電された際に、支持体23の温度が極度に上昇することを抑制するための一対の放熱開口23e、23fを有している。
【0054】
なお、支持体23上に巻き付けられる線材は、第1のリブ23aの一端側、例えば矢印A側から巻き始められ、第1のリブ23aと接する最内周部ターン(第1ターン)、コイルガイド部23dに沿うとともに、第1ターンに対して所定の間隔が与えられている第2ターンないし第4ターン、複層ガイド部23cに沿った内径側の第5ターンおよび第6ターン、複層ガイド部23cに巻き付けられた第5ターンおよび第6ターンを覆う第7および第8ターンの順に、順に巻き付けられる。第8ターンの終端部は、矢印A側で反転用案内部23bに密着されて、反対側の第2のリブ23aの側に移動され、第1のリブ23aの側と同様に、第2のリブ23aに沿った最内周部(第1ターン)、第2ないし第4ターン、複層ガイド部23cに沿った内径側の第5および第6ターン、複層ガイド部23cに巻き付けられた第5および第6ターンを覆う第7および第8ターンの順に、順に巻き付けられる。これにより、図4に示したような形状のコイルができあがる。
【0055】
従って、コイル支持体23に巻き付けられたコイル22は、第1のリブ23a、支持体23の図示しない周方向の中心および第2のリブ23aを通る平面に直交する平面から見た状態で、互いに逆向きの回転方向で支持体23に巻き付けられることになる。
【0056】
なお、リブ23aを最内周として巻き付けられるコイル22の最外周(この例では第8ターン)となる線材122は、図7に示すように、コイル22を構成する線材122の巻きつけ数(全ターン数)の約半分すなわちコイル22の半径方向の最外周にある線材122について考えるとき、隣り合う線材122の中心を結ぶ線分βとリブ23aに巻き付けられた最内周の線材122の中心を結ぶ線分αとのなす角γが90°を越える前に巻きつけ方向が変化され、逆の中心(第2のリブ)側から巻きつけられる第2のコイルの巻き始めの位置を定義するように、巻きつけられている。また、反転用案内部23bは、コイル全体の外径が同一の外径を維持可能に、線材同士の重なりを考慮した溝状に形成されることはいうまでもない。
【0057】
図8は、図6を用いて説明した最内周リブ、反転用案内部、複層ガイド部、およびコイルガイド部を有するコイル支持体に線材(リッツ線)を巻き付けるための工程を説明する概略図である。
【0058】
図示しない線材(リッツ線)供給源から供給された線材122は、巻き線機201により、支持体23の第1のリブ23aの長手方向および周方向のそれぞれの中心が回転中心として回転されることで、第1のリブ23aの一端から第1のリブ23aの長手方向の一方の側に密着されるとともに他の一端で長手方向の巻き方向が180°反転されて、再び第1のリブ23aに巻き付けられることで、第1のリブ23aに密着した第1ターンが形成される。
【0059】
続いて、第2ないし第4ターンが第1ターンに対して所定の間隔で、あるいは相互に密着して、順に巻き付けられる。
【0060】
次に、第5および第6ターンが、複層ガイド部23cに沿って、第1ないし第4ターンよりも線材122の直径の分だけ小さな外形で巻き付けられ、その後、第7および第8ターンが第5および第6ターンの外側を覆うように、巻き付けられる。
【0061】
続いて、作業者により、支持体23の周方向の向きが180°回転される。
【0062】
これにより、巻き線機201により回転される回転中心が、第1のリブ23aから第2のリブ23aに入れ替えられる。このとき、線材122は、作業者により、反転用案内部23bに密着される。
【0063】
以下、巻き線機201により、支持体23の第2のリブ23aの長手方向および周方向のそれぞれの中心が回転中心として回転されることで、第2のリブ23aの一端から第2のリブ23aの長手方向の一方の側に密着されるとともに他の一端で長手方向の巻き方向が180°反転されて、再び第2のリブ23aに巻き付けられることで、反対側のコイルの第2のリブ23aに密着した第1ターンが形成される。
【0064】
続いて、第2ないし第4ターンが第1ターンに対して所定の間隔で、あるいは相互に密着して、順に巻き付けられる。
【0065】
次に、第5および第6ターンが、複層ガイド部23cに沿って、第1ないし第4ターンよりも線材122の直径の分だけ小さな外形で巻き付けられ、その後、第7および第8ターンが第5および第6ターンの外側を覆うように、巻き付けられる。
【0066】
このようにして、単一(一本)の線材122からなり、第1のリブ23a、支持体23の図示しない周方向の中心および第2のリブ23aを通る平面に直交する平面から見た状態で、互いに逆向きの回転が与えられた励磁コイル22が形成される。
【0067】
なお、図9に示すように、回転方向が逆向きである2台の巻き線機201と202を同時に用いることで、支持体23を所定の方向に回転させるのみで、周方向の2つのコイルを同時に形成することも可能である。この場合、線材122の巻き始めは、反転用案内部23bとなり、第8および第7ターンと第6および第5ターンの周方向の位置(深さ)が逆になるが、でき上がり形状は、図4および図5に示した例と同一となることはいうまでもない。
【0068】
ところで、線材122は、前に説明した通り、直径が0.5mmの被覆付き銅線を19本撚ったリッツ線であるから、図8および図9に示したような巻き線機を用いてコイル支持体23の外周に巻き付けられる際に、第1および第2のリブ23aに沿う部分は、比較的容易に巻き付け可能であるが、支持体23の端部で巻き付け方向が180°反転される場合に、自身の剛性により、第1および第2のリブ23aに沿わずに、支持体23の外周方向に飛び出すことがある。このため、巻き線機201(あるいは同時に巻き線機202)を用いる場合に、図10(a)に示すような外周ガイド223を支持体23の第1および第2のリブ23aの長手方向の両端部に装着し、巻き線機201(あるいは同時に巻き線機202)による線材122の巻き付け時に、線材122が支持体23の外周方向に飛び出すことを防止することで、より高い効率で、線材122をコイル支持体23の外周に巻き付けることが可能となる。すなわち、線材122の巻き中心である最内周部分に、外周ガイド223を取り付け、線材122を供給する際に、コイル22の巻き数全体の概ね半分である曲率が最大となる位置まで支持体23に線材122を巻き付けると、それ以降は、実質的に、内側に線材122を巻き付けることになるため、コイル22の形状が安定しないが、反転用案内部23bを用いて線材122をコイル支持体23の反対側のリブ23aに導いた後、巻き方向を逆転させて残りのコイルを形成することで、線材122を切断することなく、単一の連続した線材のままで、コイル22を成形することが可能となる。
【0069】
また、発熱分布を調整する等の目的で、図5に示したように、線材122の一部分を、異なる曲率で巻き付ける場合には、その部分に図示しない別の部分的なガイド部材(外周ガイド)を取り付けて、線材122を支持体23に巻き付ければよい。
【0070】
なお、外周ガイド223は、例えばコイル支持体23の所定の位置に図10(b)に示すような、予め設けられているねじ穴23gに、ねじ224により固定することで、容易に装着可能で、巻き線終了後には、容易に離脱(除去)可能となる。
【0071】
また、線材122は、その剛性から、図8および図9に示したような巻き線機を用いてコイル支持体23の外周に巻き付けられる際に、第1および第2のリブ23aに沿う部分は比較的容易に巻き付け可能であるが、支持体23の側面でコイルガイド部23dまたは複層ガイド部23cに密着すべき部分は、支持体23の外周に沿わずに、コイル22単体で平面状になる場合がある。
【0072】
このため、巻き線機201(あるいは同時に巻き線機202)を用いる場合に、図11(a)に示すような円弧部225aを有する円筒ガイド225を、支持体23の第1および第2のリブ23aの長手方向の両端部に装着し、図11(b)に示すように、巻き線機201(あるいは同時に巻き線機202)による線材122の巻き付け時に、線材122が支持体23の外周方向(巻き付け方向と直角な方向)に飛び出すことを防止することで、より高い効率で、線材122をコイル支持体23の外周に巻き付けることが可能となる。
【0073】
なお、この場合、巻き線機201(あるいは同時に巻き線機202)は、コイル支持体23の長手方向の端部を保持するものとし、円筒ガイド225とコイル支持体23との間の空間が線材122の図示しない供給源と対向するように、円筒ガイド225と支持体23の位置を、常時する変更ことが効果的である。また、この場合、円筒ガイド225と支持体23は、巻き線機203の回転方向(矢印C方向)と直交する方向(支持体23の周方向、矢印D方向)に回転されるため、駆動機構が煩雑になる虞れがあるが、線材122の剛性が高く、高速である必要は少ないため、巻き線機203による線材122の1/2ターン毎に、作業者が円筒ガイド225と支持体23の角度を変更可能な簡単な機構で十分である。
【0074】
図12は、図4および図5に示した励磁コイルのさらに別の実施の形態を説明する概略図である。
【0075】
前に説明した通り、励磁コイルの周方向の間隔および長手方向の線材の密度は、加熱対象である用紙Pの大きさや、インピーダンスに基づいて規定されることから、コイル支持体23の長手方向の端部においては、コイル支持体23の長手方向の中央部とは異なる温度分布を有する場合がある。また、ローラ体20の長手方向の端部は、ローラ体20を回転可能に支持するための軸受け等が配置される関係から、コイル支持体23の長手方向の中央付近と線材122の密度が同一では、ローラ体20を十分に昇温できない虞れがある。
【0076】
このため、例えば第7ターンと第8ターン(最内周から最も外側に位置する任意数のターンの線材)の支持体23の端部での折り曲げ部の形状(曲率)が図12(a)に示すように、それ以外の線材の曲率に比較して大きくあるいは特定の形状に定義される、すなわち線材122を支持体23の最内周から単純に巻きつけるだけでなく、内側に巻き付けられた線材122との間に、所定の間隔をおいて、線材122を巻き付ける必要が生じる場合がある。
【0077】
しかしながら、図12(a)に示すように、例えば最内周から最も外側に位置する任意の順のターンと、それに近接した順のターンの線材122が支持体23の端部で折り曲げられる部分の形状(曲率)を、所定の形状とする場合、図10および図11を用いて前に説明したと同様に線材122の剛性により、線材122が支持体23に確実に沿うことは少なく、線材122を巻き付ける際には、線材122の曲率(曲げ形状)を定義するための図12(b)に示すねじ穴23hに、補助部材226を付けて図12(a)のような突起を設けることで、巻き付け効率を高めることができる。
【0078】
なお、保持部材226は、線材122の巻き付け終了後、容易に取り外せることが好ましく、例えば支持体23に設けられたねじ穴23hにねじ込み可能なねじ部を有することが好ましい。また、保持部材226は、内周よりの線材122の巻き付け時には、線材122に対して障害となる場合があるため、巻き付け機201(あるいは同時に202)による線材122の各ターンの終了後、工程を追って、支持体23の所定の位置に設けてられることが好ましい。
【0079】
ところで、図8および図9に示した巻き線機201あるいは202を用いて支持体23の外周に線材122を巻き付けて励磁コイル22を構成した場合、図10、図11および図12に示したようなガイドまたは補助部材を取り外すと、線材122は、自身の剛性により、支持体23の各部と密着せずに、外周方向に浮き上がることが多い。
【0080】
なお、図4を用いて既に説明した通り、線材122(励磁コイル22)は、コイル支持体23の外周に耐熱性の塗料あるいはワニスもしくは接着剤で固定されるが、実際には、耐熱性の塗料あるいはワニスもしくは接着剤が硬化するまでの間に、線材122が浮き上がって、支持体23と密着しなくなる問題がある。
【0081】
このため、図10ないし図12に示したようなさまざまなガイドや補助部材を用いて線材122を支持体23の外周に密着して巻き付けた後、巻き付け状態を維持するために、図13に示すように、線材122の外側を幅3mm程度のリング状部材(インシュロック)227で補助的に固定した状態で、耐熱性の塗料やワニスまたは接着剤、特にシリコーン系接着剤により、線材122を支持体23に固定することが好ましい。
【0082】
なお、リング状部材227は、励磁コイル22とローラ体20との接触をさけるため、および耐熱性の塗料やワニスあるいは接着剤が硬化した後に除去される際に線材122に対して外周の外側に向かう外力が与えられること等を考慮して、線材122をコイル支持体23に固定する能力が十分に発揮できる範囲で、面積(幅)の少ないものが好ましい。また、リング状部材227としては、例えば安価な樹脂バンドが好ましい。
【0083】
なお、図13に示したリング状部材227に代えて、図14に示すように、連続した細いワイヤ状の外形維持部材(固定部材)228により、スパイラル状に巻き付けて、コイル22の形状を維持することも可能である。この場合、外形維持部材228としては、例えばテトロン、ガラス芯入りテトロン組紐、コーネックス組紐、ノーメックス組紐、ケブラー組紐、PPS組紐、あるいはこれらのスリーブを用いることができる。
【0085】
定部材(外形維持部材)228を、耐熱温度が200℃以上で絶縁性を示す、耐熱グレードの高い部材とすることで、耐熱性の塗料やワニスは接着剤が硬化した後の除去工程を不要とすることもできる。
【0086】
ところで、図8および図9に示した巻き線機を用い、さらに図10ないし図12に示したようなガイドや補助部材を用いて線材122を支持体23の外周に密着して巻き付ける際には、線材122には、多くのストレスが生じる。このストレスのため、線材122の個々の銅線を被覆している被覆材(ポリイミド)が剥がれて、絶縁不良となる場合が多い。このことから、コイル支持体23に線材122を巻き付ける際には、線材122の表面に、例えばパラフィン等に代表される潤滑剤が塗布されている。
【0087】
しかしながら、潤滑剤が塗布されていることにより、耐熱性の塗料あるいはワニスもしくは接着剤をディッピング法により提供して、線材122をコイル支持体23に固着する場合に、塗料やワニスもしくは接着剤が線材122表面に確実に塗布されずに、線材122が浮き上がって、支持体23と密着しなくなる問題がある。
【0088】
このため、塗料やワニスもしくは接着剤をディッピング法により線材122に塗布する前に、線材122を脱脂して、線材122の被覆材に付着しているパラフィン等の潤滑剤を除去することで、塗料やワニスもしくは接着剤を線材122表面に確実に塗布可能とすることで、線材122が浮き上がって支持体23と密着しなくなることを抑止できる。なお、パラフィン等の潤滑剤は、例えば、高周波洗浄装置により除去される。また、潤滑剤の除去には、アセトンやトルエン等の有機溶剤を用いる方法やブラッシングも利用可能である。
【0089】
なお、このように、線材122の表面から潤滑剤を除去することは、図13および図14に示したリング部材227や固定部材228を用いる場合にも、有効である。また、塗料やワニスもしくは接着剤を塗布する際のディッピングに際しては、コイル22の取り付け支持部分等の必要部分がマスキングされることはいうまでもない。
【0090】
図15は、上述した線材122をコイル支持体23の表面に密着させて巻き付けることにより形成した励磁コイル22すなわち誘導加熱体21を、第1のローラ体20に対して着脱可能とする構成の一例を説明する概略図である。
【0091】
図2ないし図4に示した定着装置8においては、例えば図示しない剥離爪が長時間に亘って接触されることにより、第1のローラ体20の表面に傷がついたり表面のテフロン等の離型層が部分的に剥がれたりすることにより、あるいは、テフロン等の離型層の摩耗により、第1のローラ体20を交換する必要が生じる場合がある。
【0092】
これに対して、誘導加熱体21は、非常に高価であり、一方で、線材122に断線が生じることは極まれであり、必要に応じて、誘導加熱体21を第1のローラ20から抜き出して、ローラ体20のみを交換することが見込まれる。
【0093】
このとき、線材122の端部は、図示しない駆動回路(IH制御回路)に、例えばねじ留めにより接続されることで、導通は確保されるが、作業環境によっては、第1のローラ体20から誘導加熱体21を取り外す際に、定着装置8内部あるいは画像形成装置1内部に、ねじが落下する虞れがある。
【0094】
このような、ローラ体20の交換作業等に伴う不所望なねじ等の落下を防止するために、また、ローラ体20を交換する際の作業効率を改善する目的で、励磁コイル22を構成する線材122の端部に、例えば丸形端子229を固着する。
【0095】
なお、丸形端子229は、線材122と接続されるラッチ部分290aが完全な中空円筒状であり、図16に示すような、スポットプロジェクション装置211を用いることで、端子229を、線材122に対して溶着する(線材122と端子229の固着)と同時に、線材122の個々の被覆付き銅線の被覆を除去して、各銅線間の導通を確保することができる。この場合、スポットプロジェクション装置による溶着条件は、一例を示すと、電極圧力が5kN以上(最大で9.8kN程度)、溶着電流値が5kA以上(最大で10kA程度)が好ましい。
【0096】
ところで、作業性を考慮すると、図17に示すようなファストン端子230が一層好ましい。
【0097】
しかしながら、ファストン端子230は、線材122を保持するラッチ部分230aが完全な中空円筒状ではない開放端230bである場合が多く、図16に示したスポットプロジェクション装置211を用いて、端子230を線材122に対して溶着する(線材122と端子230の固着)場合には、開口端230bでリークが生じて、線材122の個々の被覆付き銅線の被覆を、除去できない場合がある。
【0098】
このことから、図17に示したファストン端子230を用いて線材122の端部を溶着する場合には、図18に示すように、ファストン端子230のラッチ部分230aおよび開放端230bの外側を覆う外装スリーブ231を被せたうえで、図16に示したスポットプロジェクション装置211により、ファストン端子230を、線材122の端部に溶着するものとする。この場合、スポットプロジェクション装置による溶着条件は、例えば、電極圧力が5kN以上(最大で9.8kN程度)、溶着電流値が5kA以上(最大で10kA程度)が好ましい。
【0099】
このように、スポットプロジェクション装置211を用いて、線材122の端部に固定用端子を溶着する場合、線材122をラッチする固定用端子のラッチ部分が開放端である場合には、開放端およびラッチ部分を覆う外装スリーブ231を用いることにより、端子230を線材122に対して溶着する(線材122と端子230の固着)と同時に、線材122の個々の被覆付き銅線の被覆を除去して、各銅線との間の導通を得ることができる。
【0100】
なお、樹脂製のコイル支持体23は、直径が30mm程度であるのに対し、全長が400mm前後であるから、成型時の熱および自重によりアフタキュアが生じる問題がある。
【0101】
このため、成型時に金型から外した際に、不所望な反りが生じないように、図19に示すような平板に複数のリブ232aが設けられている治具232上で放熱させて、形状を安定させることが好ましい。
【0102】
また、アフタキュアの影響を最小に抑えるために、コイル支持体23に線材122を巻き付けた後、線材122の間隔や外周方向の飛び出し等を整えて、コイル22として成形した後、塗料やワニスあるいは接着剤をディッピングにより線材122を支持体23に供給してコイル22を固定する際に、一旦所定温度まで加熱して、励磁コイル22およびコイル支持体23の形状を整えることが有益である。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明の定着装置およびその製造方法によれば、電磁誘導コイルは、コイルを構成する線材を所定形状に保持するコイル支持体に対し、コイル支持体の長手方向の中心から連続的に、コイル支持体の外周方向に沿って線材が巻き付けられ、コイルの総巻き付け数の概ね1/2の巻き付け数となる線材、または最内周の巻き付けの隣り合う線材の中心を結ぶ線と直前に巻きつけられた線材とのなす角度が90°を越えない巻き付け数で巻き方向が反転され、かつ、コイル支持体の周方向の180°逆のコイル支持体の中心から残りの線材が巻き付けられることにより、複雑なコイル形状であっても安定して、機械巻き線により加工することが可能である。
【0104】
また、この発明の定着装置およびその製造方法によれば、コイルの外形形状を変化させないように、コイル支持体に連結線専用の溝が設けられているため、巻き線機を用いた複雑なコイル形状であっても、コイルの外形の変化が無く、連続した単一の電線でコイルを加工することが可能となる。
【0105】
さらに、この発明の定着装置およびその製造方法によれば、コイル支持体は、線材の巻き線加工時に、線材が安定に巻き付け可能なガイド部材が着脱可能であるから、曲面上での線材の加工も安定して行うことができ、またこのガイド部材が取り外し式のため、コイル支持体の形状を単純な形状に成型できるのみならず、コイル形状を小さくすることができる。
【0106】
またさらに、この発明の定着装置の製造方法によれば、電磁誘導コイルを構成する線材を所定のコイル形状に維持するコイル支持体は、巻き付けられた線材の外径を維持するための取り外し可能な外径保持部材により外径が維持された状態で線材と相互に接着されるので、線材とコイル支持体を安定して接着することができる。
【0107】
さらにまた、この発明の定着装置の製造方法によれば、電磁誘導コイルを構成する線材を所定のコイル形状に維持するコイル支持体と線材とが相互に接着される前段で、線材に付着されている潤滑剤が除去されるので、線材とコイル支持体が安定して接着可能で、接着後に、コイルの外形が変化することを防止できる。
【0108】
またさらに、この発明の定着装置およびその製造方法によれば、励磁コイルは、複数の絶縁被覆のある線材が撚り合わせられた撚り線を、コイルの外形を維持するコイル支持体に巻き付けたもので励磁コイルにおいて、撚り線の端部には、外部または駆動回路に接続可能な端子がスポットプロジェクションにより、全ての線材と端子とが導通可能に溶着されることから、線材の絶縁被覆を剥離するために要求される工数を大幅に削減することが可能となる。
【0109】
さらにまた、この発明の定着装置の製造方法によれば、コイル支持体は、成型後、所定形状の補助部材を介在させた状態で冷却されることで、所定のコイル形状が与えられるので、コイル支持体が樹脂成形後のアフタキュアにて形状の変化を起こすことを抑止できる。
【0110】
このような構成により、ウォームアップ時間が短く、全域において均一な定着性を得ることができ、消費電力の少ない定着装置およびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態である定着装置が適用される画像形成装置の一例を説明する概略図。
【図2】図1に示した画像形成装置に組み込まれる誘導加熱方式の定着装置の一例を説明する概略断面図。
【図3】図2に示した定着装置に、被定着材である用紙が通過されている状態を説明する概略図。
【図4】図2および図3に示した定着装置において、誘導加熱のための高周波電流が供給される励磁コイルが巻き付けられるコイル支持体と支持体に巻き付けられた励磁コイルを示す概略図。
【図5】図4を用いて説明した誘導加熱体のコイルの構成(巻き付け)を説明する概略断面図。
【図6】図4および図5を用いて説明した励磁コイルが形成されるコイル支持体の形状の特徴を説明する概略図。
【図7】図4および図5に示した説明した励磁コイルの巻き付け方向を反転する条件を説明する概略図。
【図8】図6を用いて説明した最内周リブ、反転用案内部、複層ガイド部、およびコイルガイド部を有するコイル支持体に線材(リッツ線)を巻き付けるための工程を説明する概略図。
【図9】図8に示したコイル支持体に線材を巻き付けるための工程の別の例を説明する概略図。
【図10】図8および図9に示したコイル支持体に線材を巻き付ける工程で利用可能な外周ガイドの一例を説明する概略図。
【図11】図8および図9に示したコイル支持体に線材を巻き付ける工程で利用可能な円筒ガイドの一例を説明する概略図。
【図12】図4および図5に示した励磁コイルのさらに別の実施の形態を説明する概略図。
【図13】図4、図5および図12に示した励磁コイルの外径の変動を抑制可能な構成の一例を説明する概略図。
【図14】図4、図5および図12に示した励磁コイルの外径の変動を抑制可能な構成の一例を説明する概略図。
【図15】図4、図5および図12に示した励磁コイルを、第1のローラ体に対して、着脱可能とする構成の一例を説明する概略図。
【図16】図15に示した励磁コイルを、第1のローラ体に対して着脱可能とする構成の製造に利用可能なスポットプロジェクション装置の一例を説明する概略図。
【図17】図4、図5および図12に示した励磁コイルを、第1のローラ体に対して、着脱可能とする構成の一例を説明する概略図。
【図18】図17に示した励磁コイルを、第1のローラ体に対して着脱可能とする構成の別の実施の形態を説明する概略図。
【図19】コイル支持体のアフタキュアの影響を低減可能な治具の一例を説明する概略図。
【符号の説明】
1 ・・・画像形成装置、
3 ・・・画像形成部
8 ・・・定着装置、
9 ・・・用紙カセット、
20 ・・・第1のローラ体(加熱)、
21 ・・・誘導加熱体、
22 ・・・誘導コイル、
23 ・・・コイル支持体、
30 ・・・第2のローラ体(加圧)、
81 ・・・剥離爪、
83 ・・・クリーニング部材、
85 ・・・離型剤塗布装置、
87 ・・・温度センサ、
122 ・・・線材。

Claims (6)

  1. 導体からなる金属層を有するエンドレス部材に近接配置したコイルに電流を流して、前記エンドレス部材を発熱させて被定着部材を加熱する定着装置において、
    前記コイルは、外形が円筒状で、外周において対向するように形成されたリブ部及び線材の巻き付け加工時に、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて巻き付けられる線材の折り曲げ部を定義する補助部材を装着するためのねじ孔が設けられたコイル支持体に、前記リブ部の一方に沿って前記線材の巻き付けが開始されるとともに、前記コイルの半径方向の最外周にある線材について、隣り合う線材の中心を結ぶ線分と前記リブ部に巻き付けられた最内周の線材の中心を結ぶ線分とのなす角が90°を越える前に巻き方向が反転され、かつ、前記外周において対向する他のリブ部に沿って残りの線材の巻き付け位置が定義されるとともに、前記コイル支持体に装着される補助部材により、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて、巻き付けられている定着装置。
  2. 導体からなる金属層を有するエンドレス部材に近接配置したコイルに電流を流して、前記エンドレス部材を発熱させて被定着部材を加熱するコイルの製造方法において、
    前記コイルは、外形が円筒状で、外周において対向するように形成されたリブ部及び線の巻き付け加工時に、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて巻き付けられる線材の折り曲げ部を定義する補助部材を装着するためのねじ孔が設けられたコイル支持体に、前記リブ部の一方に沿って前記線材の巻き付けが開始されるとともに、前記コイルの半径方向の最外周にある線材について、隣り合う線材の中心を結ぶ線分と前記リブ部に巻き付けられた最内周の線材の中心を結ぶ線分とのなす角が90°を越える前に巻き方向が反転され、かつ、前記外周において対向する他のリブ部に沿って残りの線材の巻き付け位置が定義されるとともに、前記コイル支持体に装着される補助部材により、前記線材のうち、内側に巻き付けられる線材と間隔をおいて、巻き付けられるコイルの製造方法。
  3. 前記巻き方向が反転された線材と前記総巻きつけ数の概ね1/2の巻き付け数にある線材とは、互いに接続されている請求項1記載の定着装置。
  4. 前記巻き方向が反転された線材と前記総巻きつけ数の概ね1/2の巻き付け数にある線材とは、互いに接続されている請求項2記載のコイルの製造方法。
  5. 前記コイル支持体は、前記互いに接続されている線材を収容する溝を有する請求項3記載の定着装置。
  6. 前記コイル支持体は、前記互いに接続されている線材を収容する溝を有する請求項4記載のコイルの製造方法。
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