JP3559431B2 - 光ファイバ用接続部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信の分野において、光ファイバ同士を接続する光コネクタや、光ファイバと各種光素子とを接続する光モジュール等に使用される光ファイバ用接続部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より光コネクタや光モジュールには、光ファイバを保持するための接続部材が用いられる。例えば、図7に示すように、接続部材1は、軸方向の挿入孔11を有するジルコニアセラミックス製のフェルール10の後端部に、貫通孔21を有する樹脂製又は金属製のバックボディ20を接合してなるものである。また、この接続部材1は、一般的な製造方法でフェルール10とバックボディ20を別々に作製した後、両者を接着剤等で接合したものである。
【0003】
そして、バックボディ20の貫通孔21側から光ファイバ2を挿入し、フェルール10の挿入孔11に挿入して先端面を同一とした状態とし、また光ファイバ2の被覆部2aはバックボディ20の貫通孔21内に挿入した状態で、接着剤等により固定保持するようになっている。なお、この時、光ファイバ2の挿入を容易にするために、フェルール10の挿入孔11の後端部はテーパ孔13としてある。
【0004】
このような一対の接続部材1のフェルール10の先端面同士を当接させれば光コネクタとすることができ、またレーザダイオードやフォトダイオード等の光素子を収納したケーシングに上記接続部材1を配置して光モジュールとすることができる。
【0005】
ところで、このような接続部材1では、光ファイバ2の挿入を容易にするために、フェルール10にテーパ孔13を形成する必要があるが、フェルール10は硬度の高いセラミックスからなるため、このようなテーパ孔13の加工は手間がかかるものであった。
【0006】
そこで、フェルール10側にはテーパ孔を形成せず、加工の容易なバックボディ20側にテーパ孔を形成することを本件出願人は提案した(特開平9−68625号公報参照)。
【0007】
これは、図6に示すように、フェルール10側にはテーパ孔を形成せずに、後端面の口縁を曲面部12としておき、一方、バックボディ20側の貫通孔21を大径孔22とテーパ孔23と小径孔24により形成したものである。
【0008】
この接続部材1では、金属製又は樹脂製のバックボディ20側にテーパ孔23を加工すれば良いことから製造が容易となる。また、挿入した光ファイバ2はバックボディ20側のテーパ孔23で案内され、滑らかに挿入することができ、しかもフェルール10の挿入孔11の後端面の口縁は曲面部12となっているため光ファイバ2に傷をつけることを防止できる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図6に示す構造の接続部材1で光ファイバ2を挿入する場合、バックボディ20の小径孔24からフェルール10の挿入孔11に向かって光ファイバ2が挿入される際に、挿入孔11と光ファイバ2の中心が若干芯ずれることが考えられる。このような時でも滑らかに挿入できるように、フェルール10の挿入孔11の後端部に備える曲面部12の曲率半径Rは0.2〜0.5mm程度が必要であった。
【0010】
一方、上記のような接続部材1において、フェルール10を細くすることが求められている。具体的には、フェルール10の直径は従来2.5mm程度であったが、近年、直径1.25mmの細径型接続部材が提案され、広く使用されつつある。
【0011】
ところが、このような要求に伴って、図6に示すような構造の接続部材1におけるフェルール10の直径を細くしようとすると、これに合わせて挿入孔11の曲面部12の曲率半径Rも小さくする必要があり、その結果、光ファイバ2を滑らかに挿入しにくくなるという問題があった。
【0012】
また、製造工程上からも、上記曲面部12の曲率半径Rを小さくすることが好ましく、曲率半径Rの小さな曲面部12で充分滑らかに光ファイバ2を案内できるような接続部材1が求められている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記に鑑みて本発明は、光ファイバの挿入孔が軸方向に形成されたセラミックス製のフェルールと、該フェルールの後端部に固定保持し、貫通孔を備えた引っ張り破断強度が500kgf/cm2以上で、成形収縮率5%以下の樹脂製のバックボディとからなる光ファイバ用接続部材であって、上記フェルールにおける挿入孔の後端口縁部が曲面を成し、かつ上記バックボディの貫通孔は上記後端口縁部の曲面にまでバックボディが入り込んだ上記テーパ状先端部に合致した形状で連続する角度90°以下のテーパ孔を備えたことを特徴とする。
上記フェルールの挿入孔における後端口縁部の曲面の曲率半径が0.01〜0.2mmの範囲であることを特徴とする。
光ファイバの挿入孔を軸方向に有し、挿入孔の一方端口縁部が曲面を成したセラミックス製のフェルールを作製し、このフェルールの上記曲面部に固定部材でコアピンを固定したコアピンの角度90°以下のテーパ状先端部を当接させた状態でフェルールを金型のキャビティ内に保持し引っ張り破断強度が500kgf/cm2以上で、成形収縮率5%以下の熱可塑性樹脂でモールド成形することによってコアピンのテーパ状先端部と曲面部との間にも樹脂が充填されることにより、テーパ状先端部に合致した形状でフェルールの後端側にバックボディを形成する工程からなることを特徴とする。
【0016】
即ち、本発明では、フェルールの後端側に樹脂のモールド成形でバックボディを形成するようにしたものであり、この時、フェルールの曲面部にコアピンのテーパ状先端部を当接させた状態でモールド成形すれば、両者の隙間に樹脂が入り込んで曲面部と連続するテーパ孔を容易に形成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図によって説明する。
【0018】
図1に示す接続部材1は、軸方向の挿入孔11を有するジルコニアセラミックス製のフェルール10の後端側に、貫通孔21を有する樹脂製のバックボディ20を接合してなるものである。また、フェルール10の挿入孔11の後端部における口縁には曲面部12が形成され、一方バックボディ20の貫通孔21は大径孔22とテーパ孔23からなり、このテーパ孔23が上記フェルール10の挿入孔11における曲面部12に連続している。
【0019】
即ち、拡大図を図2に示すように、本発明では、フェルール10における挿入孔11の後端部の口縁には、曲率半径Rの曲面部12が形成されており、しかもバックボディ20がこの曲面部12まで入り込んで、曲面部12に連続したテーパ孔23を形成していることを特徴とする。
【0020】
そのため、バックボディ20側から光ファイバ2を挿入すると、テーパ孔23で案内され、このテーパ孔23が曲面部12と連続していることによって、滑らかにフェルール10の挿入孔11に光ファイバ2を挿入することができるのである。また、この時、テーパ孔23と曲面部12が連続していることにより、曲面部12の曲率半径Rを小さくしても充分滑らかに光ファイバ2を案内することができる。
【0021】
ちなみに、図6に示す従来の接続部材1では、バックボディ20の先端部がテーパ孔ではなくストレート状の小径孔24であり、しかもこの小径孔24がフェルール10の曲面部12と連続していないため、光ファイバ2を滑らかに案内するためには、曲面部12の曲率半径を0.2〜0.5mmと大きくしておく必要がある。これに対し、本発明では、上述したように、バックボディ20の先端部をテーパ孔23とし、このテーパ孔23を曲面部12に連続させたことによって、曲面部12の曲率半径Rを小さくしても滑らかに案内できるようにしたのである。
【0022】
なお、従来の接続部材1では、フェルール10とバックボディ20を別々に形成して接合していたため、上記のように曲面部12と小径孔24を連続させることができず、また両者の芯ずれが生じていたが、本発明では、詳細を後述するように樹脂のモールド成形でバックボディ20を形成することにより、フェルール10の曲面部12とバックボディ20のテーパ孔23を連続させることができるのである。
【0023】
また、本発明の接続部材1において、上記フェルール10における曲面部12の曲率半径Rは0.01〜0.2mmの範囲とすることが好ましい。これは、曲率半径Rが0.01mm未満では、上述した光ファイバ2を滑らかに案内する効果に乏しく、また後述する製造工程において、コアピンの摩耗が激しくなるためである。また、曲率半径Rが0.2mmを超えるとブラシ研磨等の簡易な方法で加工できずに研削加工が必要になり、また接続部材1の細径化に対応しにくくなる。
【0024】
したがって、曲面部12の曲率半径Rを0.01〜0.2mmの範囲としておけば、光ファイバ2を滑らかに案内できるとともに、ブラシ研磨によって簡単に加工することができ、接続部材1の細径化にも対応できる。より好ましくは、曲率半径Rは0.02〜0.05mmが良い。
【0025】
また、上記テーパ孔23の角度θについては、90°以下とすることが必要である。これは、角度θが90°を超えると、光ファイバ2を挿入する際に、テーパ孔23で滑らかに案内されにくくなるためである。より好ましくは、テーパ孔23の角度θは30°前後が最適である。
【0026】
なお、本発明の他の実施形態を図3に示すように、バックボディ20側の貫通孔21として、大径孔22、テーパ孔23、小径孔24、テーパ孔25を形成し、このテーパ孔25をフェルール10の曲面部12と連続するように形成することもできる。この場合は、曲面部12と連続するテーパ孔25の角度を上記範囲内としておけば良い。
【0027】
次に本発明の接続部材1の製造方法を説明する。
【0028】
まず、フェルール1を作製する。材質としては、アルミナやジルコニア等のセラミックス、あるいは結晶化ガラス等を用いることができるが、ジルコニアセラミックスが最適である。具体的には、ZrO2 を主成分として、Y2 O3 、CaO、MgO、CeO2 、Dy2 O3 等の一種以上の安定化剤を含み、正方晶の結晶を主体とし、平均結晶粒径2μm以下、好ましくは1μm以下の部分安定化ジルコニアセラミックスを用いる。
【0029】
このような原料粉末を用いて、押出成形法によって、挿入孔11を有するフェルール10を成形し、所定条件で焼成した後、挿入孔11の一方端の口縁をブラシ研磨等で加工し、曲面部12を形成する。あるいは、射出成形法によって、予め挿入孔11と曲面部12を有するフェルール10を成形し、焼成することもできる。
【0030】
次に、このようにして得られたフェルール10を金型に保持して、樹脂のモールド成形により、バックボディ20を形成する。
【0031】
具体的には、図4(a)に示すように、バックボディ20の形状に合致したキャビティ32aを有する金型32、33内に上記フェルール10を保持し、一方、テーパ状先端部31aを有するコアピン31をフェルール10の挿入孔11の端部に挿入し、図4(b)に示すようにコアピン31のテーパ状先端部31aをフェルール10の曲面部12に当接させる。そして、両者が当接する方向に押圧するように、コアピン31にはバネ等の押圧部材34を備えている。
【0032】
この状態で、キャビティ32a内に、不図示の注入孔から溶融した樹脂を注入し硬化させる。この時、コアピン31とキャビティ32aの間の空間に樹脂が充填されて硬化することにより、バックボディ20が形成されることになる。また、図4(b)に示すコアピン31のテーパ状先端部31aと曲面部12との間にも樹脂が充填されることにより、テーパ状先端部31aに合致した形状で、曲面部12に連続したテーパ孔23が形成される。
【0033】
また、樹脂を注入する際には、樹脂の圧力で、樹脂がコアピン31とフェルール10の隙間を通って挿入孔11内へ流れ込まないように、コアピン31を押圧部材34で押圧しているが、押圧力を大きくするとフェルール10やコアピン31が破損しやすくなるため、固定部材35でコアピン31を固定しておくことが必要である。この固定部材35は、矢印方向にスライドすることにより、両側からコアピン31を挟み込んで保持固定するものである。
【0034】
なお、コアピン31を保持する構造の他の実施形態として、図5に示すように、コアピン31の一部に細径となるようなテーパ部31bを形成しておき、固定部材35の先端を斜面35aとしておいて、この斜面35aを上記テーパ部31bに当接させるように固定部材35をスライドさせて固定することが必要である。この時、固定部材35に歪みゲージセンサ36を備えておいてコアピン31の押圧力を調整することもできる。
【0035】
最後に、樹脂が硬化した後、金型32、33を分離して離形すれば、フェルール10の後端側に樹脂製のバックボディ20が接合された接続部材1を得ることができる。
【0036】
なお、バックボディ20を成す樹脂としては、接続部材1として好適に用いるためには引っ張り破断強度が500kgf/cm2以上で、成形収縮率5%以下の熱可塑性樹脂を用いる必要がある。具体的には、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、及び変性を含むポリフェニレンエーテル等の一種、もしくは2種以上の複合材を用いる。あるいは、これらの樹脂に、ガラスや炭素等のフィラーを添加したものでもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、光ファイバの挿入孔が軸方向に形成されたセラミックス製のフェルールと、該フェルールの後端部に固定保持し、貫通孔を備えた樹脂製のバックボディとからなる光ファイバ用接続部材であって、上記フェルールにおける挿入孔の後端口縁部が曲面を成し、かつ上記バックボディに形成した貫通孔は上記後端口縁部の曲面に連続するテーパ孔を備えたことにより、フェルール側にはテーパ孔を形成することなく、小さな曲率半径の曲面部のみを備えれば良いことから、滑らかに光ファイバを案内できる光ファイバ用接続部材を簡単な製造工程で得ることができる。しかも、上記曲面部の曲率半径を小さくできることから、接続部材の細径化にも対応できる。
【0038】
また、本発明によれば、光ファイバの挿入孔を軸方向に有し、該挿入孔の一方端口縁部を曲面と成したセラミックス製のフェルールを作製し、このフェルールの上記曲面部にコアピンのテーパ状先端部を当接させた状態で、金型のキャビティ内に保持し、樹脂でモールド成形することによって、フェルールの後端側にバックボディを形成する工程から光ファイバ用接続部材を製造することによって、上述したようなバックボディのテーパ孔とフェルールの曲面部が連続した光ファイバ用接続部材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバ用接続部材を示す縦断面図である。
【図2】図1中のA部の拡大図である。。
【図3】本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図4】(a)(b)は本発明の光ファイバ用接続部材の製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明の光ファイバ用接続部材の製造装置の他の実施形態を示す図である。
【図6】従来の光ファイバ用接続部材を示す部分断面図である。
【図7】従来の光ファイバ用接続部材を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1:接続部材
2:光ファイバ
10:フェルール
11:挿入孔
12:曲面部
20:バックボディ
21:貫通孔
22:大径部
23:テーパ孔
Claims (3)
- 光ファイバの挿入孔が軸方向に形成されたセラミックス製のフェルールと、該フェルールの後端部に固定保持し、貫通孔を備えた引っ張り破断強度が500kgf/cm 2 以上で、成形収縮率5%以下の樹脂製のバックボディとからなる光ファイバ用接続部材であって、上記フェルールにおける挿入孔の後端口縁部が曲面を成し、かつ上記バックボディの貫通孔は上記後端口縁部の曲面にまでバックボディが入り込んだ上記テーパ状先端部に合致した形状で連続する角度90°以下のテーパ孔を備えたことを特徴とする光ファイバ用接続部材。
- 上記フェルールの挿入孔における後端口縁部の曲面の曲率半径が0.01〜0.2mmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用接続部材。
- 光ファイバの挿入孔を軸方向に有し、挿入孔の一方端口縁部が曲面を成したセラミックス製のフェルールを作製し、このフェルールの上記曲面部に固定部材でコアピンを固定したコアピンの角度90°以下のテーパ状先端部を当接させた状態でフェルールを金型のキャビティ内に保持し引っ張り破断強度が500kgf/cm 2 以上で、成形収縮率5%以下の熱可塑性樹脂でモールド成形することによってコアピンのテーパ状先端部と曲面部との間にも樹脂が充填されることにより、テーパ状先端部に合致した形状でフェルールの後端側にバックボディを形成する工程からなることを特徴とする光ファイバ用接続部材の製造方法。
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- 1997-07-31 JP JP20689397A patent/JP3559431B2/ja not_active Expired - Fee Related
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