JP3559006B2 - 金属エレメント、金属バンド及び金属ベルト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、動力伝達系を構成する駆動プーリと被動プーリとの間に掛装される金属ベルト、その金属ベルトに使用される金属バンド及び金属エレメントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の無段変速機などに使用される金属ベルトは、無端帯状をなす金属バンドに鋼板を打ち抜き成形してなる多数の平板状の金属エレメントを、金属バンドの延長方向に相対滑り可能に積層配置して構成されている。例えば実公平5−8359号公報(以下、従来例1という)及び特開昭58−50139号公報(以下、従来例2という)がこの種の技術を開示している。
従来例1では、図5に示す形状の金属エレメント(同公報には、V型のエレメント又はエレメントと記載表示されているが、名称については本発明と対応した表示を用いる。)が用いられている。即ち、V字形の側端傾斜部111を有するボディ112にピラー113を介してヘッド114が設けられた形状であり、ボディ112の左右における中高弧状のショルダ118には、金属バンドが巻掛けてあり、ヘッド114の左右のイヤー119で金属エレメントの金属バンドに対する離脱を防止している。又、ボディ112の下部には金属ベルトによる押付力の分布を均一化するための切り欠き120が設けられている。
そして、金属バンドが直線状走行からプーリ回転軌道内に入るとき、又、逆にプーリ回転軌道内から直線状走行に移行するとき、金属エレメントのショルダ118における板厚端面のコーナーと金属バンドとの不可避の接触衝突による金属バンドの寿命低下を防止するために、図5の金属エレメントは、そのショルダ118の左右方向は勿論のこと、紙面前後方向にも中高弧状に形成されていなければならないが、ショルダ118とイヤー119との間の空隙は非常に狭いので、この前後左右方向の中高研削作業は大変困難であるという問題がある。
【0003】
このような2列の金属バンドが巻掛けられている従来例1の金属ベルトを一説では二帯式駆動ベルトと呼んでいるようだが、この方式の場合、2列の金属バンドの長さが左右で同一寸法であることは、その実現が保証し難く、時として短い方の一方だけが負荷を受け、金属ベルトの寿命を縮めてしまう懸念もこれ有りで、代わって登場した一帯式駆動ベルトと呼ばれる従来例2では、図6に示す形状の金属エレメント(従来例2の公報では、金属Vブロックと記載表示されているが、名称については本発明に対応した表示を用いる。)が用いられている。即ち、この金属エレメントは、テーパにした側端傾斜部131を有する本体部132と、この本体部132の上面133の両側から上面133に対して垂直に上方へ突出した角棒状の横案内134,134とからなっている。本体部132の上面133には金属バンドが巻掛けてあり、この金属バンドから金属エレメントが離脱しないように、横案内134,134の間にはピン135が取り付けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1の場合と同様に、金属バンドが直線状走行からプーリ回転軌道内に入るとき、又、逆にプーリ回転軌道内から直線状走行に移行するとき、金属バンドと金属エレメントの本体部132の上面133における板厚端面のコーナーとの不可避の接触衝突による金属バンドの寿命低下を防止するために、図6の金属エレメントの上面133の左右方向は勿論のこと、紙面前後方向にも中高弧状に形成されていなければならないが、従来例1の場合と違って、上面133の上はオープンなので、これらの中高弧状の研削作業性は大幅に改善されることが期待できる。しかし、上面133に直接接触して走行する複数層の一番下における層の金属バンドであっても、金属バンドが広幅故に、金属バンドの両幅端部近辺では幅方向中央部に比較して、上面133への接触圧が漸減していることは容易に推測できる。これが原因のひとつとなって、図3(b)から明らかなように、極薄肉厚の広幅金属バンドの積層層間では、走行速度の差による相対滑りが生じて層間の整列に乱れが生じ、金属エレメントから金属バンドに加わる張力が小さい場合には、外層側に位置する金属バンドでは上面133の中央部に寄らず横案内134,134に接触することが判明した。
この問題解消のために、従来例2の公報には、金属バンドの進行方向と直角な断面をその中心線上が塑性域にまで延ばされて、全体として金属エレメントの上面133の曲率に適した曲率を付与するということが開示されている。しかし、積層する金属バンドそれぞれにそれぞれ異なった曲率を付与しても、それらはバンド幅方向に一様の曲率であり、かつ、広幅故に外層側に位置する金属バンドの走行軌道の保証は満足されにくい嫌いがある。
この発明は、従来技術に存する前述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、金属バンドの蛇行を抑制できるとともに、安いコストで長寿命化された金属ベルトを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、駆動プーリと被動プーリとの間に掛装され、無端帯状をなす金属バンドの延長方向に積層配置される金属バンド用の金属エレメントにおいて、ボディ部における両側端傾斜部の延長上にそれぞれ鈎状部が形成され、その両鈎状部間に設けられているバンド載置面が、少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1において、金属エレメントが鋼板製であることを特徴とした。
請求項3に記載の発明では、請求項1において、金属エレメントが金属線材製であることを特徴とした。
【0006】
請求項4に記載の発明では、駆動プーリと被動プーリとの間に掛装され、金属エレメントを積層状態で配置するための金属ベルト用の金属バンドにおいて、断面形状が少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状に形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、駆動プーリと被動プーリとの間に掛装され、無端帯状をなす金属バンドの延長方向に金属エレメントを積層配置した金属ベルトにおいて、金属エレメントにはボディ部における両側端傾斜部の延長上にそれぞれ鈎状部が形成され、その両鈎状部間に設けられているバンド載置面が、少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状であり、かつ、バンド載置面に載置される金属バンドも載置面に適合させるために、その断面形状が載置面とほぼ相似形をなすように、少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状に形成されて、脱落防止体と重合して載置面に配置されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項5において、金属バンドの複数の状の曲率半径は金属エレメントの載置面のそれよりも小さいことを特徴とした。
従って、金属エレメントの金属バンドを載置する載置面の加工は、その載置面の上はオープンなので作業性が良好であり、かつ金属バンドからの金属エレメントの離脱を防止する方策も脱落防止体を金属バンドに重合配置することで足りるので、極めて低コストとなる。又、金属バンド及び金属バンドを載置する載置面が複数の中高弧状の連続形状であり、両者の横方向におけるズレの危険は極めて積極的に解消されている。
金属エレメントを鋼板製にすれば、現行対象機器においてはほぼ100%近くが鋼板製なので本発明品のより速い普及が期待できる効果がある。
金属エレメントを金属線材製にすれば、円形断面線を用いることができて、金属エレメントの金属バンドを載置する載置面の研削作業はほとんど不要となり、低コスト化が実現でき、かつ弧状面の好ましい粗度が得られる。
金属バンドの複数の弧状の曲率半径を金属エレメントの載置面のそれよりも小さくすれば、金属エレメントの載置面上に載置された金属バンドの接触状況は、中高部の中心部で強く接触するのではなく、寧了両端の方でより積極的に接する結果となり、積層層間で相対滑りが介在しながら走行していても金属バンドの蛇行の危険は極めて積極的に解消される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
金属エレメント10は、2つの駆動側及び被動側のプーリに形成されるV溝(図示しない)に対してほぼ全面で摺動する両側端傾斜部11,11を有する。金属エレメント10の本体13の前記両側端傾斜部11,11の延長上に設けられている鈎状部12,12間には空洞が区画され、その空洞内に位置する本体13の上面が金属バンド20の載置面14を形成している。
前記載置面14は、図1(a)(b)に示すように2つの異なった点OLとORをそれぞれの中心点として半径RL,RR(RL=RR)で描いた円弧を連続させて形成されて、2つの中高弧状部14aを有している。なお、図1(a)に示す線15は、金属エレメント10がVプーリの回転軌道内に進入しても積層された金属エレメント10同士が十分に押合えるように傾斜姿勢を許容するための傾斜面の基線を表しており、即ち、図1(a)においてこの基線の下部が傾斜して下部側へ薄くなっており、凸起17及び凹所16は金属エレメント10が直線状走行しているとき、金属エレメント10が整列状態でそれらの隣接配置が保証されるための互いにはまり合う係合凹凸である。
【0008】
図2に示す金属バンド20の断面形状は2つの異なった点QLとQR(OLとQL、ORとQRはそれぞれ図2及び図1(b)において同一の一点鎖線上にある。即ちOLとORのピッチとQLとQRのピッチは同じ)をそれぞれの中心点として半径rl,rr(rl=rr)で描いた円弧を連続させて形成されている。従って、この金属バンド20も前記載置面14と相似形をなす2つの中高弧状部20aを有している。そして、金属バンド20の半径rl,rr は、前記載置面14の半径RL,RRよりも短いため、金属バンド20の弧状をなす曲率は、載置面14のそれよりも小さい。図3(a)から明らかなように、n層積層される金属バンド20のrl,rrは板厚をtとすれば2層目はrl+t,rr+t、3層目はrl+t+t,rr+t+t、n層目はrl+(n−1)t,r
r+(n−1)tとなることは当然である。
金属エレメント10の鈎状部12,12に区画された空洞内の載置面14にn層積層して金属バンド20を配置したら、その外周層に脱落防止体30を積層して金属ベルト1を完成する。脱落防止体30の周長はn層の外周に嵌装できる寸度であって、幅は鈎状部12,12の間隔よりやや広く、かつ脱落防止体30は鈎状部12,12の間隔より狭めることができる柔軟な撓曲性と弾力性を有する板厚であり、適当位置に軽量化のための透孔が設けられていれば十分である。脱落防止体30は、撓曲されることにより、鈎状部12,12間を通り抜けて、鈎状部12,12間の空洞内に配置される。
【0009】
以上のように構成されたこの実施形態においては、金属エレメント10の金属バンド20の載置面14上はオープンなので、この載置面14の加工作業性が良好で、低コストである。また、脱落防止体30を設けるのみで、金属バンド20からの金属エレメント10の離脱を防止することができ、構成が簡単で低コストとなる。
金属エレメント10の載置面14及び金属バンド20が複数の中高弧状の連続形状であるため、図3(a)から明らかなように、両者の横方向、すなわち、金属バンド20の幅方向におけるズレの危険は極めて積極的に解消される。
金属エレメント10を金属線材製にすれば、断面円形の材料を用いることができ、載置面14の研削作業はほとんど不要となり、低コスト化が実現でき、かつ弧状面の好ましい粗度が得られる。つまり、金属エレメント10として金属線材を素材にした場合は、その金属線材が扁平になるようにプレス加工されだけであるため、外周端にエッジが立つことがない。よって、エッジを取るための研削加工が不要になる。
金属バンド20の弧状の曲率半径が金属エレメント10の載置面14のそれよりも小さいので、金属バンド20は、中高弧状の両端側でより積極的に載置面14に接する結果となり、積層層間で相対滑りが介在しながら走行していても蛇行の危険は極めて積極的に解消される。
従来構成と、前記実施形態の構成とを比較した図4の表によれば、稼働中に金属バンド20のずれによって鈎状部12に害が及んだり、金属バンド20の寿命を縮めてしまう欠陥はほぼ完全に排除することができた。また、従来の一山バンドと比較して、同一幅であっても金属バンド20の断面積が約5%程度増加するため、バンド201本当たりの引っ張り荷重が大きくなること、更に圧延後の両幅端面の板厚が極めて精度良く(一山ベルトのばらつきが0.003mmであるのに対し、本発明のベルトでは0.002mm)に仕上げることができることなどの理由により、より広幅のバンドを必要とする金属ベルトに好適である。
なお、金属バンド20及び載置面14の中高弧状部の数は、2つに限らず、3つ以上の複数であってもよい。
【0010】
【発明の効果】
以上のように、この発明においては、金属バンドの蛇行を抑制できるとともに、安いコストで長寿命化を達成できるため、金属ベルトとしてきわめて有用である。
【0011】
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は金属エレメントの正面図、(b)は金属エレメントの載置面の線図、(c)は(a)のA−A線断面図。
【図2】金属バンドの断面図。
【図3】(a)は実施形態における積層状態の金属バンドの走行後を示す断面図、(b)は従来構成における積層状態の金属バンドの走行後を示す断面図。
【図4】従来技術と実施形態との比較結果を示す表。
【図5】従来例1を示す正面図。
【図6】従来例2を示す正面図。
【符号の説明】
1…金属ベルト、 10…金属エレメント、 11…傾斜面、 12…鈎状部、 13…本体、 14…金属バンドの載置面、 15…基線、 16…係合凹凸、 20…金属バンド、 30…脱落防止体、 OL…14の左側の曲率の中心点、 OR…同右側の中心点、 RL…同左側の曲率、 RR…同右側の曲率、 QL…20の左側の曲率の中心点、 QR…同右側の中心点、 rl…同左側の曲率、 rr…同右側の曲率。

Claims (6)

  1. 駆動プーリと被動プーリとの間に掛装され、無端帯状をなす金属バンドの延長方向に積層配置される金属バンド用の金属エレメントにおいて、
    ボディ部における両側端傾斜部の延長上にそれぞれ鈎状部が形成され、その両鈎状部間に設けられているバンド載置面が、少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状であることを特徴とする金属エレメント。
  2. 鋼板製であることを特徴とした請求項1に記載の金属エレメント。
  3. 金属線材製であることを特徴とした請求項1に記載の金属エレメント。
  4. 駆動プーリと被動プーリとの間に掛装され、金属エレメントを積層状態で配置するための金属ベルト用の金属バンドにおいて、
    断面形状が少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状に形成されていることを特徴とする金属バンド。
  5. 駆動プーリと被動プーリとの間に掛装され、無端帯状をなす金属バンドの延長方向に金属エレメントを積層配置した金属ベルトにおいて、
    前記金属エレメントには、ボディ部における両側端傾斜部の延長上にそれぞれ鈎状部が形成され、その両鈎状部間に設けられているバンド載置面が、少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状であり、かつ、バンド載置面に載置される金属バンドも載置面に適合させるために、その断面形状が載置面とほぼ相似形をなすように、少なくとも複数の異なった地点を中心にして描かれた複数の中高の弧状に形成されて、脱落防止体と重合して載置面に配置されていることを特徴とする金属ベルト。
  6. 金属バンドの複数の弧状の曲率半径は金属エレメントの載置面のそれよりも小さいことを特徴とした請求項5に記載の金属ベルト。
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