JP3558176B2 - 竪型衝撃式破砕機の運転方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は竪型衝撃式破砕機に関する。さらに詳細には、天然岩石等の塊状物を所定の粒径に破砕し、かつ粒形を整えるための竪型衝撃式破砕機に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩石、コンクリート塊等の塊状物は、例えばコンクリート用骨材、敷石、路床材など各種の用途に応じて破砕される。このような破砕を行う破砕機の1つに竪型衝撃式破砕機がある。竪型衝撃式破砕機は、原料または原石を高速で加速し、衝突面にぶつけて岩石を破砕するという原理に基づいて動作する。この衝撃式破砕機は、岩石の破砕形式からアンビル方式とデッドストック方式とに大別される。
【0003】
アンビル方式の衝撃式破砕機は、ロータを高速回転させ、ケーシングに投入された原料を加速し、遠心力によってロータの周囲に配置されたアンビルに衝突させて破砕するものである。このアンビル方式は、主として原料のサイズを小さくするのを目的として使用される。
【0004】
一方デッドストック方式は、すでに所望のサイズに破砕された原料の表面を滑らかにし、粒形を整えるために使用される。すなわち、デッドストック方式は、原料をロータによって加速する点はアンビル方式と同様であるが、ロータの周囲に破砕された原料によってデッドストックを形成し、このデッドストックを衝突面として原料を衝突させるものである。
【0005】
ところで、コンクリート用骨材は大径の砕石と小径の砕砂を必要とするが、JISでは砕石及び砕砂のいずれも一定の粒度分布にあることが要求されている。例えばJIS規格の「砕石5005」の場合、ふるいの通過重量百分率が60mm:100%、50mm:95〜100%、25mm:35〜70%、15mm:10〜30%、5mm:0〜5%であることが要求される。
【0006】
しかしながら、前記のようにアンビル方式は粒径を小さくするのを目的とした破砕方式であるので、要求される粒度分布のうち大径のものを産物として得にくく、また粒形も悪い。他方デッドストック方式は粒形調整を目的とした破砕方式であるので、要求される粒度分布のうち小径のものを産物として得にくい。
【0007】
原料が大きいと、約40mm以上だとロータの翼に配置された超硬チップの破壊が起こり易くチッピング摩耗を早めることになるので、破損しにくい材料のものがよい。しかしながら、砕石が10mm以下の砕砂になるとチッピング摩耗の量は少なく通常の摩耗量が多くなるので耐摩耗性が良い超硬チップで構成したほうが良い。したがって、比較的大きい原料の場合と砂の場合とでは要求される特性が異なり、矛盾した要求となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
【0009】
この発明の目的は、大小粒径が異なる砕石の生産を効率化する竪型衝撃式破砕機及びその運転方法を提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、チップの効率的な使用が可能な竪型衝撃式破砕機の運転方法を提供することにある。
【0011】
この発明の他の目的は、複数台の竪型衝撃式破砕機を同時に用いて生産効率が高い竪型衝撃式破砕機及びその運転方法を提供することにある。
【0012】
この発明の他の目的は、複数台の竪型衝撃式破砕機を同時に用いてチップの効率的な使用が可能な竪型衝撃式破砕機の運転方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採る。
【0014】
本発明1の竪型衝撃式破砕機は、
ケーシング(1)と、
前記ケーシング(1)内に配置され投入された被破砕物に遠心力を付与するための正逆回転の切換が可能なロータ(10)と、
前記ロータの外周域に前記ケーシングに設けられる複数のアンビル(32a〜32d)とからなり、
前記ロータ(10)は、
複数の等角度領域の各中心線(L,M,N)に対して周方向にそれぞれに対称に配置されるデッドストックスペース(91L,91M,91N)に設けられるチップ群(72L,72M,72N)を備え、
前記チップ群(72L,72M,72N)の内で前記中心線に対して正回転方向に進んだ回転位置の1組のチップ(72L1,72M1,72N1)は下記するチップに対して比較的に硬い硬質チップであり、
前記チップ(72L,72M,72N)の内で前記中心線に対して前記正回転方向に遅れた回転位置の他の1組のチップ72(72L2,72M2,72N2)は前記硬質チップに対して比較的に柔らかい軟質チップである。
【0015】
本発明2の竪型衝撃式破砕機の運転方法は、
正転方向のロータ(10)にデッドストックが形成されるデッドストックスペース(91L1,91M1,91N1)に設けられるチップ群のために下記軟質チップに対して比較的に硬い硬質チップ(72L1,72M1,72N1)を用い、逆転方向のロータ(10)にデッドストックが形成されるデッドストックスペース(91L2,91M2,91N2)に設けられるチップ群のために前記硬質チップに対して比較的に柔らかい軟質チップ(72L2,72M2,72N2)を用いた竪型衝撃式破砕機の運転方法であって、
粒径分布する原料の平均粒径に応じてロータ(10)の回転方向を定める。
【0016】
本発明3の竪型衝撃式破砕機の運転方法は、
前記発明2の竪型衝撃式破砕機の運転方法であって、
粒径分布する原料の平均粒径が大きい場合にロータ(10)を正転方向に回転させ、粒径分布する原料の平均粒径が小さい場合にロータ(10)を逆転方向に回転させる。
【0017】
本発明4の竪型衝撃式破砕機の運転方法は、
前記発明2の竪型衝撃式破砕機の運転方法であって、
粒径分布する原料の平均粒径が大きい場合に前記ロータ(10)を正転方向に回転させ、粒径分布する原料の平均粒径が小さい場合に前記ロータ(10)を逆転方向に回転させる運転方法と、
前記硬質チップ(72L1,72M1,72N1)と前記軟質チップ(72L2,72M2,72N2)との摩耗の度合いを比較しながら前記ロータ(10)の正逆回転方向を定める運転方法と
からなる。
【0018】
本発明5の竪型衝撃式破砕機の運転方法は、
前記発明2として記載する竪型衝撃式破砕機を複数機使用する竪型衝撃式破砕機群の運転方法であって、
平均粒径が小さい原料が破砕のために投入される竪型衝撃式破砕機のロータ(10)の回転方向を当該破砕機について正転方向とし、平均粒径が大きい原料が破砕のために投入される竪型衝撃式破砕機のロータ(10)の回転方向を当該破砕機について逆転方向としている。
【0019】
【作用】
本発明の竪型衝撃式破砕機及びその運転方法は、運転方向を切り換えることにより、チップの取り替えをすることなく用いるチップが変更される。複数台の竪型衝撃式破砕機の群制御が、各機のロータの正逆切換により行われる。超硬チップと非超硬チップとの摩耗量は、単一機においてロータの正逆により制御される。単一機ごとに制御して全体についても摩耗量を制御する。
【0020】
【実施例】
(実施例1)
この発明の実施例を図面を参照しながら以下に説明する。図1,図2はこの発明の竪型衝撃式破砕機を示している。ケーシング1はケーシング本体1aと、その上部に止め具9を介して着脱自在に固定された蓋体1bとからなっている。蓋体1bは、油圧シリンダ4によって昇降しかつ旋回軸3によって旋回するレバー5によって、ケーシング本体1aに対して開閉するようになっている。
【0021】
蓋体1bは原料の投入口2を有し、その下方に案内シュート7,8が二段に配置されている。下部の案内シュート8は、全体に環状になるように配置された複数の縦リブ8aの下端に設けられている。さらに、案内シュート8の下方にロータ10が配置されている。
【0022】
ロータ10は垂直回転軸11の上端に設けられている。垂直回転軸11は、軸受13,14を介して軸ハウジング15内に回転自在に収容されている。軸ハウジング15は、ブラケット16を介してケーシング本体1aに支持されている。垂直回転軸11の下端にプーリ17が設けられ、図示しない正逆回転可能なモータおよびベルトによって垂直回転軸11を介してロータ10が正逆回転する。
【0023】
ロータ10は垂直回転軸11に固定されたロータ本体21と、ロータ本体21の上面中央に設けられた円形の分配板22と、周方向に等角度間隔を置いて設けられた3つの翼23と、翼23,23間に配置されたライナ24とからなっている。
【0024】
ケーシング1は、この実施例では正四角筒からなっており、内面に保護ライナ40が設けられている。ケーシング本体1aの内部にはデッドストック形成プレート30が配置されている。デッドストック形成プレート30は、ケーシング1の断面形状と同様の正四角形の板体からなり、その周縁部がケーシング本体1aの内面に固着されている。
【0025】
デッドストック形成プレート30には、ロータ10よりも大径でかつロータ10同心の円孔31が形成されている。デッドストック形成プレート30の上方には、4つのアンビル32a,32b,32c,32dが配置されている。各アンビル32a〜32dは複数のアンビル要素33からなり、ケーシング本体1aの4つの内面のほぼ中央に固定されている。アンビル33は従来と同様に耐摩耗性を有するマンガン鋼等からなっている。
【0026】
アンビル32a〜32dを設けたことにより、各アンビル間すなわちデッドストック形成プレート30の4隅部にはデッドストックスペース34a〜34dが形成されている。図1において、鎖線矢印で示した範囲がデッドストックスペースである。
【0027】
各アンビル32a〜32dとロータ10との間の水平距離は調整可能である。すなわち、この実施例ではアンビル32a〜32dとケーシング本体1aの内面との間に調整手段としてのスペーサ35が着脱自在に固定され、スペーサ35の枚数を調整することにより、水平距離を調整することができる。
【0028】
デッドストックスペース34a〜34dの大きさも調整可能である。すなわち、円孔31の周縁に調整リング36がボルト38によって着脱自在に固定されている。調整リング36は、この実施例では円環を周方向に分割した複数のセグメント37からなっている。各セグメント37の内周縁部には、フランジ41が形成されている。
【0029】
このセグメント37の内径が異なったものを種々用意しておくことにより、デッドストックスペース34a〜34dの大きさを変えることができる。調整リング36はセグメントに分割することなく、1つのリングとしてもよい。この場合も、内径が異なるリングを種々用意しておくことによりデッドストックスペースの大きさを変えることができる。
【0030】
セグメント方式とした場合でも、同一内径のセグメントで調整することができる。すなわち、図3に示すように各セグメント37に半径方向に延びる長穴37aを設け、長穴37の適宜位置でボルトによりデッドストック形成プレート30に固定する。この場合、各セグメント37間に隙間が生じるが、この隙間にはロータから放出された石が挟まるので、不都合はない。
【0031】
図4,図5はロータ10の詳細構造を示している。ロータ本体21の外周には保護のためのライナ50が設けられ、ボルト51によって固定されている。分配板22は、ロータ本体21の上面中央に配置されている。分配板22は、上面中央が平坦面52となっており、その外周がテーパ面53となっている。
【0032】
分配板22の下面には円形の凹部54が形成され、この凹部54にロータ本体21の上面に形成した円形の段部55が嵌合され、分配板22の位置決めがなされる。分配板22はその中心部に孔56が設けられ、組立・分解時に吊下部材の係止具が孔56に引掛けられる。
【0033】
翼23を構成する複数の支柱57が、ロータ本体21の上面の分配板22の外周に配置されている。支柱57は、この実施例では3つ設けられ、互いに120度の角度間隔を置いて配置されている。支柱57はロータ本体21の半径方向に延びる半径方向部分58と、半径方向部分の外側端から両側にほぼ周方向に延びる周方向部分59とを有している。半径方向部分58の上端と周方向部分59の上端との間はプレート部60を介して一体化されている。
【0034】
放出路ライナ24は、各支柱57,57間に配置されている。放出路ライナ24は下面に突起61が設けられ、この突起61がロータ本体の上面に設けた凹部62に嵌合され、放出路ライナ24の位置決めがなされる。放出路ライナ24をロータ本体21上に配置したうえ、分配板22を位置決めすると、分配板22の切欠部63が放出路ライナ24に係合し、分配板22が放出路ライナ24を押さえ付けるようになっている。
【0035】
支柱57の外周端面には第1壁ライナ64が設けられている。第1壁ライナ64にはスタッドボルト65が設けられ、内側からナットにより締め付けられている。支柱57の周方向部分59,59には第2壁ライナ66、第3壁ライナ67、外側チッププレート68が設けられている。
【0036】
第2壁ライナ66にはスタッドボルト71が設けられ、第2壁ライナ66と周方向部分59との間に第3壁ライナー67を配置し、さらに周方向部分59の内側に外側チッププレート68のプレート部70を配置し、これらの部材にスタッドボルト71を通し、ナットにより締め付けられている。
【0037】
外側チッププレート68の基部69には超硬チップ又は通常の鋼材を用いた非超硬チップ72が設けられている。非超硬チップは、いわゆるクロム鋼、ニッケル・クロム鋼など強靭な鋼又は合金鋼等であり、摩耗しやすいが粘りがあり欠けにくい。“欠けにくい”とは、チッピング摩耗が少ないことである。超硬チップ72はWC−Co系、WC−TiC−Co系、WC−TiC−TaC(NbC)−Co、TaC−Ni系、Cr2−Ni系等の燒結合金からなり、ダイヤモンドに匹敵する硬さを有し、軟質炭化物を鉄族元素を結合剤金属として圧縮成形した後高温度で燒結して作られる。超硬チップは、非超鋼チップに比較して、欠けやすいが摩耗しにくい。超硬チップは、非超鋼チップに対して比較的に硬いチップであり、上記例示のものに限られず、ファインセラミックスも含まれる。
【0038】
2つの周方向部分59,59のライナ構造は同様であり、部材の符号は一方にのみ付してある。支柱57の内周部に内側チッププレート73が配置されている。内側チッププレート73はほぼU字形をしており、支柱57の半径方向部分58を抱き込むように配置される。内側チッププレート73は、その両側及び内側に前記と同様の内側超硬チップ又は内側鋼材チップ74,75がそれぞれ設けられている。
【0039】
内側チッププレート73は支柱57に取付られると、下端が分配板22に設けられた切欠部76に係止する。支柱57にはトップカバープレート77が被着される。トップカバープレート77の裏面には位置決めのための段部78が設けられ、支柱57のプレート部60に対して位置決めされる。
【0040】
トップカバープレート77の内側端部には垂下部79が設けられ、内側チッププレート73は垂下部79と分配板22との間に挟まれる。トップカバープレート77は、外側チッププレート68の基部69及び支柱57のプレート部60に計4位置でボルト80により固定されている。
【0041】
図4に120度角度位置が異なる3本の中心線L,M,Nが示されている。各中心線L,M,Nは、それぞれに各支柱57の半径方向部分58,58,58の中心を通りロータ軸線に直交する線である。円周方向に隣り合う2本の中心線にあるロータ部分10LM,10MN,10NLは、実質的に互いに合同である。
【0042】
翼23L,23M,23Nは、各中心線L,M,Nに対して円周方向に対称である。例えば、基部69は、回転方向に中心線Lに対して対称な2つの位置に2つ69L1,69L2が設けられている。同様に、基部69M1,69M2,69N1,69N2が設けられている(図示せず)。
【0043】
このようにロータ10を構成する部品は、全て、中心線L,M,Nに対して回転方向即ち周方向に対称に設けられている。このような対称性は、ロータ10の高速回転のために基本的に必要である。このような基本的要請により、対称な位置にある基部69L1と基部69L2にあるチップ72も、チップ72L1とチップ72L2との2体が設けられている。
【0044】
同様に、各中心線に対称に、チップ72M1,72M2及びチップ72N1,チップ72N2が設けられている。従って、ロータ部分10LMにはチップ72L1及びチップ72M2が、ロータ部分10MNにはチップ72M1及びチップ72N2が、ロータ部分10NLにはチップ72N1及びチップ72L2が設けられている。
【0045】
このようなチップの内で、回転方向に同一位相にある1組のチップ72L1,72M1,72N1は、超硬チップである。回転方向に同一位相にある他の1組のチップ72L2,72M2,72N2は、超硬チップでなくてよく、通常の鋼材を用いた非超硬チップである。全チップは取換え可能である。内側チップとして超硬チップを用いる必要性は、外側チップ72に比較して小さい。
【0046】
回転方向の両側で各翼23L,23M,23Nには、デッドスペース91L,91M,91Nが与えられている。同様に、1組のデッドスペース91L1,91M1,91N1は、回転方向に同一位相である。他の1組のデッドスペース91L2,91M2,91N2は回転方向に同一位相である。
【0047】
デッドスペース91L1とデッドスペース91L2、デッドスペース91M1とデッドスペース91M2、デッドスペース91N1とデッドスペース91N2は、各中心線L,M,Nに関して回転方向にそれぞれに対称である。各デッドスペース91は、各翼23と放出路ライナー24との間に位置する。
【0048】
実施例の動作
ロータ10は駆動モータの駆動によって、高速回転させられる。原料は供給口2から案内シュート7,8を経てロータ10上に投下される。投下された原料は、分配板22によって翼23,23間に形成される3つの放出路のいずれかに分配され、翼23によって加速され、遠心力によってロータ10の外周に放出される。
【0049】
放出された原料は、アンビル32a〜32dあるいはデッドストックスペース34a〜34dに形成されたデッドストック42のいずれかに衝突する。なお、運転初期にはデッドストックは未形成であるが、デッドストックスペース34a〜34dに原料が堆積することにより、デッドストック42が形成される(図2参照)。また、ロータ10上にも支柱57の半径方向部分58と周方向部分59に飛び出しを阻止された砕石・砕砂・砂の遠心力堆積によりある特定の安息角を持ったデッドストックが形成される。
【0050】
アンビル33と原料との衝突は、硬度が極めて大きいマンガン鋼等の鋼材と原料との衝突であり、原料は比較的小径に破砕される。一方、デッドストックと原料との衝突は原料どうしの衝突であり、デッドストックに衝突した原料は外形形状が滑らかになる程度であり、径が大きく減じることはない。
【0051】
異なった種類の原料で同じ粒度分布にする場合又は同じ種類の原料で粒度分布を変える場合、アンビル32a〜32dとロータ10との間の水平距離を変える。また、デッドストックスペース34a〜34dの大きさを変える。例えば、全体に小粒径の粒度分布の破砕産物を得るには、衝突エネルギーを大とすべく、各アンビル32a〜32dとケーシング1内面との間のスペーサ35の枚数を増大させる。また、内径が小さいセグメント37を選択し、調整リング36の内径を小さくする。
【0052】
ローター上のデッドストックスペースに堆積するデッドストックの形成面にぶつかり滑り転動しながら遠心力で加速される原料は、チップ72に激突する。大きい粒径の原料に激突されるチップは、粒径が小さい砕砂に激突される場合に比べて、破損しやすいが摩耗しにくい。小さい粒径の砕砂に激突されるチップは、粒径が大きい砕石に激突される場合に比べて、摩耗しやすいが破損しにくい。
【0053】
(運転方法の実施例)
本発明の竪型衝撃式破砕機は、運転方法を制御することにより、生産効率を高めることができる。本発明の竪型衝撃式破砕機の運転方法は原則的に、正転方向のロータ10にデッドストックが形成されるデッドストックスペース91L1,91M1,91N1には超硬チップ72L1,72M1,72N1を用い、逆転方向のロータ10にデッドストックが形成されるデッドストックスペース91L2,91M2,91N2には非超硬チップ72L2,72M2,72N2が用いられる。このような運転方法において、粒径分布する原料の平均粒径に応じてロータ10の回転方向が定められる。
【0054】
粒径が大きい分布の砕石・砕砂を生産する場合には、図4を上方から見て、ロータ10を時計方向(図4の下方から見ると反時計方向)に回転させる。この回転により砕石は主として、非超硬チップ72L2,72M2,72N2に衝突する。この場合、運動量が大きい砕石が当たる非超硬チップ72L2,72M2,72N2は、破損しにくく、衝突回数が少ないので摩耗量も少ない。
【0055】
粒径が小さい分布の砕石・砕砂を生産する場合には、図4を上方から見て、ロータ10を反時計方向に回転させる。この回転により砕石は主として、超硬チップ72L1,72M1,72N1に衝突する。この場合、運動量が小さい砕石が当たる超硬チップ72L1,72M1,72N1は、破損しにくく、衝突回数は多いが摩耗量は少ない。
【0056】
また、このような正逆切換の運転方法は、原則的運転方法に限られず原則的運転方法に組み合わされて、非原則的な運転方法も行われる。つまり、原料の平均粒径が小さい場合にロータ10を逆転方向(図4で時計方向)に回転させ、原料の平均粒径が大きい場合にロータ10を正転方向に回転させることがある。超硬チップ72L1,72M1,72N1と非超硬チップ72L2,72M2,72N2との摩耗の度合いを比較しながらロータ10の正逆回転方向を定める運転が行われる場合がある。このような組み合わせにより、超硬チップと非超硬チップの交換時期を一致させることができる。
【0057】
本発明の竪型衝撃式破砕機は、1台のみが用いられるのではない。普通、複数台が同時に運転される。粒径が大きい原料を順次に破砕して砂まで砕いていく場合に複数台の同時運転が行われる。平均粒径が大きい非破壊砕石例えば原料が破砕のために投入される竪型衝撃式破砕機のロータ10の回転方向をその破砕機について正転方向とし、このように破砕された生産途中の砕石(その破砕機についての原料)が破砕のために投入される竪型衝撃式破砕機のロータ10の回転方向をこの破砕機について逆転方向とする。生産計画の都合により、投入する原料の大きさと破砕機は1体に対応させる必要はない。例えば、全ての破砕機を大きい原料投入のために用いることがある。この場合は、ロータの全てを時計方向に回転させる。生産計画に応じ粒径の大小に応じて、ロータの正転逆転を切り換える。このような群管理により、チップの交換時期を延長しながら、複数台の破砕機を用いて生産効率を高めることができる。逆にいうと、チップの寿命の延長を図ることができる。
【0058】
(その他の実施例)
前記実施例ではケーシングを四角筒としたが、それ以外の多角筒あるいは円筒としてもよい。しかし、四角筒とすることにより対角線長さが長くなり、デッドストックスペース34a〜34dの面積を大きくすることができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の竪型衝撃式破砕機及びその運転方法によれば、チップを有効に用いながら、生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施例を示す水平方向の断面図である。
【図2】図2は、同実施例の垂直方向の断面図である。
【図3】図3は、デッドストックスペースの他の調整例を示す平面図である。
【図4】図4は、ロータの詳細構造を示す平面図である。
【図5】図5は、ロータの断面図である。
【符号の説明】
1…ケーシング
2…投入口
10…ロータ
32a〜32d…アンビルと
34a〜34d…デッドストックスペース
72…チップ
72L,72M,72N…チップ群
72L1,72M1,72N1…1組のチップ(超硬チップ)
72L2,72M2,72N2…他の1組のチップ(非超硬チップ)
91L,91M,91N…デッドストックスペース
91L1,91M1,91N1…デッドストックスペース
91L2,91M2,91N2…デッドストックスペース
L,M,N…中心線
Claims (5)
- ケーシング(1)と、
前記ケーシング(1)内に配置され投入された被破砕物に遠心力を付与するための正逆回転の切換が可能なロータ(10)と、
前記ロータの外周域に前記ケーシングに設けられる複数のアンビル(32a〜32d)とからなり、
前記ロータ(10)は、
複数の等角度領域の各中心線(L,M,N)に対して周方向にそれぞれに対称に配置されるデッドストックスペース(91L,91M,91N)に設けられるチップ群(72L,72M,72N)を備え、
前記チップ群(72L,72M,72N)の内で前記中心線に対して正回転方向に進んだ回転位置の1組のチップ(72L1,72M1,72N1)は下記するチップに対して比較的に硬い硬質チップであり、
前記チップ(72L,72M,72N)の内で前記中心線に対して前記正回転方向に遅れた回転位置の他の1組のチップ(72L2,72M2,72N2)は前記硬質チップに対して比較的に柔らかい軟質チップである
竪型衝撃式破砕機。 - 正転方向のロータ(10)にデッドストックが形成されるデッドストックスペース(91L1,91M1,91N1)に設けられるチップ群のために下記軟質チップに対して比較的に硬い硬質チップ(72L1,72M1,72N1)を用い、逆転方向のロータ(10)にデッドストックが形成されるデッドストックスペース(91L2,91M2,91N2)に設けられるチップ群のために前記硬質チップに対して比較的に柔らかい軟質チップ(72L2,72M2,72N2)を用いた竪型衝撃式破砕機の運転方法であって、
粒径分布する原料の平均粒径に応じてロータ(10)の回転方向を定める
竪型衝撃式破砕機の運転方法。 - 請求項2の竪型衝撃式破砕機の運転方法であって、
粒径分布する原料の平均粒径が大きい場合にロータ(10)を正転方向に回転させ、粒径分布する原料の平均粒径が小さい場合にロータ(10)を逆転方向に回転させる
竪型衝撃式破砕機の運転方法。 - 請求項2の竪型衝撃式破砕機の運転方法であって、
粒径分布する原料の平均粒径が大きい場合に前記ロータ(10)を正転方向に回転させ、粒径分布する原料の平均粒径が小さい場合に前記ロータ(10)を逆転方向に回転させる運転方法と、
前記硬質チップ(72L1,72M1,72N1)と前記軟質チップ(72L2,72M2,72N2)との摩耗の度合いを比較しながら前記ロータ(10)の正逆回転方向を定める運転方法と
からなる
竪型衝撃式破砕機の運転方法。 - 請求項2に記載する竪型衝撃式破砕機を複数機使用する竪型衝撃式破砕機群の運転方法であって、
平均粒径が小さい原料が破砕のために投入される竪型衝撃式破砕機のロータ(10)の回転方向を当該破砕機について正転方向とし、平均粒径が大きい原料が破砕のために投入される竪型衝撃式破砕機のロータ(10)の回転方向を当該破砕機について逆転方向とした
竪型衝撃式破砕機群の運転方法。
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JP10017295A JP3558176B2 (ja) | 1995-03-31 | 1995-03-31 | 竪型衝撃式破砕機の運転方法 |
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JPH08266920A JPH08266920A (ja) | 1996-10-15 |
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