JP3557739B2 - 基準電圧発生回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CMOS集積回路等において温度特性の優れた基準電圧を発生させるための基準電圧発生回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子回路において回路動作の基準とするための温度係数の小さな基準電圧を発生させる基準電圧発生回路として、例えば、IEEJournal of Solidstate circuits.Volsc−8.PP222(1973)に開示されているように、半導体素子のPN接合に基づくバンドギャップ電圧が、ばらつきの少ない安定した温度特性を有することを利用し、このバンドギャップ電圧に基づき基準電圧を生成するものが知られている。
【0003】
即ち、この基準電圧発生回路8は、図9(a)に示すように、所定の基準電圧Voを出力する演算増幅器10と、演算増幅器10の出力端子と非反転入力端子との間に接続された抵抗R1と、演算増幅器10の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R2と、ベースとコレクタとが互いに接続されると共に演算増幅器10の非反転入力に接続され、且つエミッタが接地されたバイポーラトランジスタB1からなる第1の半導体回路と、一端が演算増幅器の反転入力に接続された抵抗R3と、ベースとコレクタとが互いに接続されると共に抵抗R3の他端に接続され、且つエミッタが接地されたバイポーラトランジスタB2からなる第2の半導体回路とにより構成されている。
【0004】
この基準電圧発生回路8においては、演算増幅器10の入力端子のイマジナリショートにより、抵抗R3の一端が接続された反転入力端子の電位は、非反転入力に印加されるバイポーラトランジスタB1のベース・エミッタ間電圧Vbe1 に等しく、一方、第3の抵抗R3の他端には、バイポーラトランジスタB2のベース・エミッタ間電圧Vbe2 が印加される。このため、抵抗R3の両端には、バイポーラトランジスタB1,B2のベース・エミッタ間電圧の差(Vbe1−Vbe2)が印加され、この両端電圧に応じた一定電流I2が流れる。その結果、電流I2により抵抗R2に誘起される所定電圧I2・R2と、バイポーラトランジスタB1のベース・エミッタ間電圧Vbe1 との加算値が基準電圧Voとして演算増幅器10から出力され、その基準電圧Voは、次の(1)式にて表される。
【0005】
【数1】
【0006】
kはボルツマン定数、tは絶対温度、qは電気素量である。
なお、図9(b)に示す基準電圧発生回路9は、図9(a)の基準電圧発生回路8のダイオード接続されたバイポーラトランジスタB1,B2の代わりに、ダイオードD1,D2を用いて構成し、ベース・エミッタ間電圧Vbe1,Vbe2に代わり、順方向電圧Vr1,Vr2に基づき基準電圧Voを発生させるものであり、この場合の基準電圧Voは、次の(2)式にて表される。
【0007】
【数2】
【0008】
そして、ベース・エミッタ間電圧Vbe1 (順方向電圧Vr1)は、負の温度係数(−2mV/℃程度)を持つのであるが、(1),(2)式からわかるように、抵抗R1〜R3を適宜設定して、(1),(2)式の第1項に、これと同じ大きさで正の温度係数を持たせることにより、基準電圧Voの温度係数をゼロとすることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような基準電圧発生回路8,9をCMOS集積回路上に実現しようとした場合、まずバイポーラトランジスタB1,B2を用いた基準電圧発生回路8では、その製造においては、CMOS工程とバイポーラ工程とを組み合わせたBiCMOS工程が必要となり、工程が複雑になってしまうという問題があった。
【0010】
また、ダイオードD1,D2を用いた基準電圧発生回路9の場合は、CMOS工程における様々なPN接合を利用することが考えられるが、回路特性を悪化させる寄生トランジスタが形成されないように設計することが難しいという問題があった。
【0011】
これらの問題を解決するために、バイポーラトランジスタB1,B2(ダイオードD1,D2)の代わりにドレイン・ソース間を接続したMOS型電界効果トランジスタを用いる試みが行われており、この場合、基準電圧Voは、(1)(2)式とは異なり、次の(3)式のように表される。
【0012】
【数3】
【0013】
なお、第1,2項が非反転入力端子(反転入力端子も同じ)の電位を、第3項が抵抗R2の両端電圧を表している。また、第2項のVthは、バイポーラトランジスタB1の代わりに接続されたMOS型電界効果トランジスタのスレッショルド電圧、即ちドレイン電流が流れ始めるゲート電圧であり、G(t)は、この回路が形成される基板の物性等により決まる関数である。
【0014】
そして、スレッショルド電圧Vthが、バイポーラトランジスタのベース・エミッタ間電圧と同程度の負の温度係数(−2mV/℃)を有しており、抵抗R1〜R3を適宜選択して、上記(3)式の第1項及び第3項に、正の温度係数を持たせることで、基準電圧Voの温度係数を零とすることができるのは、上述の基準電圧発生回路8,9の場合と全く同様である。
【0015】
しかし、CMOS工程においては、スレッショルド電圧Vthに影響を与えるゲート電極下の絶縁膜の膜厚がばらつくため、スレッショルド電圧Vth、延いては、ゲート電圧・ドレイン電流特性がばらつくことになる。その結果、MOS型電界効果トランジスタの特性が、設計時に仮定されたものと異なってしまうため、抵抗R1〜R3が集積回路上に形成される等してその抵抗値が固定されている場合には、基準電圧の温度係数も設計値、即ち零からずれてしまうことになり、精度のよい基準電圧を発生させることができないという問題があった。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するために、MOS型電界効果トランジスタを用いて構成した基準電圧発生回路において、設定された抵抗値を変更することなく、基準電圧の温度係数を調整可能にすることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、
出力端子と非反転入力端子との間に第1の抵抗が接続され、上記出力端子と反転入力端子との間に第2の抵抗が接続された演算増幅器と、
一端が上記非反転入力端子に接続されると共に他端が接地され、上記第1の抵抗に上記出力端子側から上記非反転入力端子側に向けて電流を流す第1の半導体回路と、
一端が第3の抵抗を介して上記反転入力端子に接続されると共に他端が接地され、上記第2の抵抗に上記出力端子側から上記反転入力端子側に向けて電流を流す第2の半導体回路と、
を備え、上記演算増幅器が、上記第1及び第2の半導体回路の両端電圧の差と上記第3の抵抗の抵抗値とに基づいて上記第2及び第3の抵抗に流れる電流により誘起される上記第2の抵抗の両端電圧と、上記第1の半導体回路による非反転入力端子への印加電圧との加算値を基準電圧として上記出力端子から出力する基準電圧発生回路において、
上記第1及び第2の半導体回路の少なくとも一方を、外部からの制御信号により導通,非導通が制御され、導通時に所定電流を流すスイッチング回路を複数並列接続してなる調整回路として構成することで、該調整回路に流れる電流値を、上記制御信号にて上記スイッチング回路の導通数を制御することにより調整可能とし、
しかも、上記スイッチング回路は、
ソース接地されたNチャネルのMOS型電界効果トランジスタからなる調整用トランジスタと、
上記制御信号に従い、上記調整用トランジスタのゲート・ドレイン間を接続して、該調整用トランジスタを導通させる第1のスイッチと、
該第1のスイッチの非導通時に、上記調整用トランジスタのゲート・ソース間を接続して、該調整用トランジスタを非導通にさせる第2のスイッチと、
からなることを特徴とする。
【0018】
このように構成された基準電圧発生回路においては、演算増幅回路の入力端子のイマジナリショートにより、反転入力端子の電位は非反転入力端子の電位に等しくなるため、一端が反転入力端子、他端が第2の半導体回路に接続された第3の抵抗の両端には、第1及び第2の半導体回路の両端電圧の差が印加される。その結果、この第3の抵抗の両端への印加電圧と、第3の抵抗の抵抗値とに応じた所定電流が、第2及び第3の抵抗に流れ、この所定電流により第2の抵抗に誘起される両端電圧と、第1の半導体回路による非反転入力端子への印加電圧との加算値が、基準電圧として上記出力端子から出力される。
【0019】
また、この基準電圧発生回路では、第1ないし第3の抵抗の抵抗値を適宜設定することにより、基準電圧の温度係数を零とすることができ、通常、これらの抵抗値はそのように設定される。
そして、この基準電圧発生回路を、例えば集積回路上に構成した時に、第1及び第2の半導体回路を構成する電界効果トランジスタの特性が、製造時のばらつきにより、設計時に仮定したものとは異なったものとなってしまった場合には、当然、基準電圧の温度係数も、設計値、即ち零からずれてしまうことになる。
【0020】
しかし、本発明では、第1及び第2の半導体回路の少なくとも一方が、外部からの制御信号によって、スイッチング回路の導通数を制御することにより電流値を調整可能な調整回路として構成されており、即ち、制御信号に応じて調整回路の電圧・電流特性を変化させることにより、当該基準電圧発生回路の特性を変化させ、延いては、基準電圧の温度特性を調整することが可能なようにされている。
【0021】
従って、本発明の基準電圧発生回路によれば、第1及び第2の半導体回路を構成するMOS型電界効果トランジスタの特性が、設計時に仮定したものと異なることにより、基準電圧の温度係数が所望の値からずれてしまったとしても、制御信号により調整回路の電流値を変化させることで、簡単に、温度係数の調整を行うことができ、温度変動のない高精度な基準電圧を発生させることができる。
【0022】
また本発明によれば、バイポーラトランジスタを用いることなく構成されており、CMOS工程のみを用いて集積回路上に構成できるので、CMOS集積回路において、製造工程を複雑にすることなく、高精度な基準電圧を得ることができる。
【0023】
なお、第1の半導体回路を調整回路とした場合、電流値を大きくする程、温度係数は負の方向に変化し、一方、第2の半導体回路を調整回路とした場合、逆に電流値を大きくする程、温度係数は正の方向に変化する。
従って、例えば、調整回路の約半数のスイッチング回路を導通させた時の特性を基準として設計を行えば、実際に製造した時に、温度係数が正負のどちらにばらついたとしても、スイッチング回路の導通数を増減させることにより、確実に温度係数を零に調整できる。
【0024】
また、両方とも調整回路とした場合には、調整可能な範囲が広がるため、MOS型電界効果トランジスタの特性がより大きくばらついたとしても、確実に基準電圧の温度係数を零に調整できる。
【0025】
なお、スイッチング回路では、外部からの制御信号により、第2のスイッチが開放され、第1のスイッチが調整用トランジスタのゲート・ドレイン間を接続すると、調整用トランジスタはダイオード接続された状態となり導通する。
【0026】
一方、制御信号により、第1のスイッチが開放され、第2のスイッチがゲート・ソース間を接続すると、調整用トランジスタは確実に非導通となる。
従って、本発明によれば、制御信号に応じて、流すことのできる電流値を変化させ、電圧・電流特性を変化させることが可能な調整回路を具体的に実現することができる。
【0027】
また次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基準電圧発生回路において、
上記第1のスイッチは、
ドレインが入力端に、ソースが出力端に接続されたNチャネルのMOS型電界効果トランジスタと、
ソースが入力端に、ドレインが出力端に接続されたPチャネルのMOS型電界効果トランジスタと、
制御端に接続された一方のトランジスタのゲートへの入力を他方のトランジスタのゲートに反転させて入力する反転回路と、
により構成されたCMOSアナログスイッチからなり、上記入力端が上記調整用トランジスタのドレインに接続される共に、上記出力端が上記調整用トランジスタのゲートに接続され、更に、上記制御端に上記制御信号が入力されることを特徴とする。
【0028】
このように構成された第1のスイッチでは、導通時には、NチャネルのMOS型電界効果トランジスタには所定のHighレベルが、また、PチャネルのMOS型トランジスタには所定のLow レベルが印加される。つまり、Nチャネルのトランジスタでは、出力端の電位に関係なく、入力端の電位が低ければ十分な電流を流すことができ、一方、Pチャネルのトランジスタでは、出力端の電位に関係なく、入力端の電位が高ければ十分な電流を流すことができる。このため、回路の動作状態に応じて、入力端及び出力端の電位が変化したとしても、必ず、いずれか一方のトランジスタは、十分な電流を流すように動作する。
【0029】
従って、本発明によれば、第1のスイッチの導通時には、回路の動作状態に関わらず、第1のスイッチの両端、即ち調整用トランジスタのドレイン・ゲート間を、常に略同電位に保持することができ、調整用トランジスタの導通状態を安定したものとすることができる。
【0030】
更に、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の基準電圧発生回路において、
上記第2のスイッチは、ドレインが上記調整用トランジスタのゲートに接続されると共に、ソースが上記調整用トランジスタのソースに接続され、更に、ゲートに上記制御信号が入力されたNチャネルのMOS型電界効果トランジスタからなることを特徴とする。
【0031】
従って、本発明によれば、第2のスイッチを構成するトランジスタのゲートに所定のHighレベルを印加して導通させた時に、該トランジスタのドレイン電位、即ち調整用トランジスタのゲート電位に関わらず、十分な電流を流すことができるため、調整用トランジスタのゲート電位を確実に接地電位とすることができ、延いては、調整用トランジスタを確実に非導通とすることができる。
【0032】
なお、上記調整用トランジスタは、いずれも同一ゲート幅、同一ゲート長に形成されていることが望ましい。
【0033】
この場合、導通された調整用トランジスタが流すことのできる電流値はいずれも等しく、どの調整用トランジスタも、調整回路全体の特性に対して同じ影響力を持つため、調整は調整用トランジスタの導通数のみを考慮すればよく、調整作業を容易なものとすることができる。また、調整回路は、すべて同じ特性のトランジスタにて構成すればよいので、設計や製造も容易にできる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は、第1実施例の基準電圧発生回路を表す電気回路図である。
図1に示すように、本実施例の基準電圧発生回路は、図9にて示した従来装置の基準電圧発生回路において、第1の半導体回路が、バイポーラトランジスタB1(ダイオードD1)の代わりに温度係数調整回路12aにて構成され、第2の半導体回路が、バイポーラトランジスタB2(ダイオードD2)の代わりにNチャネルのMOS型電界効果トランジスタ(以下、NMOSトランジスタとよぶ)Tr1にて構成されているだけで、それ以外の構成は、従来装置と全く同じであるため、同じ構成である演算増幅器10,抵抗R1,R2,R3についての説明は省略し、構成の異なる部分について説明する。
【0035】
まず、第2の半導体回路としてのNMOSトランジスタTr1は、ソースが接地される共に、ドレイン・ゲート間が接続され、所謂ダイオード接続されている。そして、当該NMOSトランジスタTr1のゲート電圧・ドレイン電流特性に基づき、抵抗R3と反転入力端子の電位とにより決まる所定電流I2を抵抗R2に流す。
【0036】
一方、第1の半導体回路としての温度係数調整回路12aは、図2に示すように、並列接続され、制御信号Ci(i=1〜n)により個別に導通,非導通が制御される複数のスイッチング回路TCiを備えている。
そして、各スイッチング回路TCiは、ドレインが演算増幅器10の非反転入力端子への接続端aに接続されると共にソースが接地されたNMOSトランジスタからなる調整用トランジスタTr1iと、調整用トランジスタTr1iのドレイン・ゲート間に接続され、制御信号Ciにより導通,非導通が制御される第1のスイッチSiと、調整用トランジスタTriのゲート・ソース間に接続され、制御信号Ciにより、第1のスイッチSiの導通時には非導通となり、また第1のスイッチSiの非導通時には導通となるように制御される第2のスイッチTiとにより構成されている。
【0037】
また、第1のスイッチSiは、図3(a)に示すように、ソースが調整用トランジスタTr1iのドレインとの接続端diに、ドレインが調整用トランジスタTr1iのゲートとの接続端eiに接続されたPMOSトランジスタTr21と、ドレインが接続端diに、ソースが接続端eiに接続されたNMOSトランジスタTr22と、PMOSトランジスタTr21のゲートに印加される制御信号Ciを反転させてNMOSトランジスタTr22のゲートに印加する反転回路14とからなる所謂CMOSアナログスイッチにより構成されている。
【0038】
このように構成された第1のスイッチSiでは、制御信号CiがHighレベルの時に、いずれのトランジスタTr21,Tr22も導通せず、逆に、制御信号CiがLow レベルの時に、いずれのトランジスタTr21,Tr22も導通する。なお、トランジスタTr21,Tr22の導通時に、接続端di,eiの電位が高くなる方向にシフトした時には、PMOSトランジスタTr21が十分に電流を流し、逆に、接続端di,eiの電位が低くなる方向にシフトした時には、NMOSトランジスタTr22が十分に電流を流すようになるため、回路の動作状態によって、接続端di,eiの電位がどのように変化しても、導通状態は確実に保持される。
【0039】
一方、第2のスイッチTiは、図3(b)に示すように、ドレインが調整用トランジスタTr1iのゲートとの接続端eiに、ソースが調整用トランジスタTr1iのソースとの接続端fiに、ゲートが制御信号Ciの入力端子に接続されたNMOSトランジスタTr23からなり、制御信号CiがHighレベルの時に導通し、Low レベルの時に非導通となる。
【0040】
そして、NMOSトランジスタTr23の導通時には、接続端ei、即ち調整用トランジスタTr1iのゲート電位に関わらず、十分な電流を流すことができるため、調整用トランジスタTr1iのゲート電位は、確実に接地電位に保持される。
【0041】
従って、このように構成されたスイッチング回路TCiでは、制御信号CiがHighレベルの時に、第1のスイッチSiが非導通、第2のスイッチTiが導通となり、その結果、調整用トランジスタTr1iは、ゲートが接地されることになり非導通となる。また、制御信号CiがLow レベルの時に、第1のスイッチSiが導通、第2のスイッチTiが非導通となり、その結果、調整用トランジスタTr1iはダイオード接続されることになり導通する。
【0042】
また、上述のように、第1のスイッチSiとしてCMOSアナログスイッチを用い、第2のスイッチTiとしてNMOSトランジスタを用いているため、上記調整用トランジスタTr1iの導通、非導通は、回路の動作状態に関わらず、常に安定したものとなる。
【0043】
以上のように構成された温度係数調整回路12aは、調整用トランジスタTr1iの導通数により決まる温度係数調整回路12a全体としての電圧・電流特性に基づき、抵抗R1と基準電圧Voとにより決まる所定電流I1を抵抗R1に流す。
【0044】
なお、調整用トランジスタTr1iは、いずれも同一ゲート幅、同一ゲート長を有するように作製されており、即ち、導通時には、いずれの調整用トランジスタTr1i(即ち、スイッチング回路TCi)においても同じ大きさの電流が流れるようにされている。
【0045】
このため、制御信号Ciにより、調整用トランジスタTr1iの導通数を制御すると、この導通数に応じて略一定の割合で抵抗R1に流れる電流I1が変化し、これに応じて、上述の(3)式から明かなように、基準電圧Voの温度係数も変化する。その結果、基準電圧Voの温度係数は、調整用トランジスタTr1i導通数の増減に応じて略一定の分解能にて調整される。
【0046】
ここで図4は、本実施例の基準電圧発生回路2の基準電圧Voの温度係数と、調整用トランジスタTr1iの導通数との関係を求めたシミュレーション結果のグラフである。
なお、調整用トランジスタTr1iの導通数が19個の時に、温度係数調整回路12a全体の電圧・電流特性が、反転入力端子側に接続されたNMOSトランジスタTr1のゲート電圧・ドレイン電流特性に略等しくなるものとし、この時の基準電圧Voの温度係数が零となるように抵抗R1〜R3を設定している。
【0047】
具体的には、抵抗R1及び抵抗R3が18kΩ、抵抗R2が82.8kΩである。また、演算増幅器10の電源電圧が12V、当該基準電圧発生回路2にて生成される基準電圧Voが1.2Vであり、温度係数は、温度範囲は−45〜125℃の間を変化させたときの基準電圧Voの変動から求めたものである。
【0048】
図4に示すように、本実施例の基準電圧発生回路2においては、調整用トランジスタTr1iの導通数を増加させる程、温度係数は、負の方向に変化する。
そして、設計通りの特性を有するMOSトランジスタを製造できたのであれば、基準電圧Voの温度係数は、図4に示す通りのものとなるが、NMOSトランジスタTr1や調整用トランジスタTr1iのスレッショルド電圧Vthの温度係数が、設計時に仮定したものより小さくなってしまった場合、特性曲線は、図4中にて右方向にシフトしたものとなる。従って、この場合、調整用トランジスタTr1iの導通数を増加させることにより、温度係数を零に調整することができる。
【0049】
逆に、スレッショルド電圧Vthの温度係数が、設計時に仮定したものより大きくなってしまった場合、特性曲線は、図4中にて左方向にシフトしたものとなる。従って、この場合、調整用トランジスタTr1iの導通数を減少させることにより、温度計数を零に調整することができる。
【0050】
なお、調整用トランジスタTr1iの導通数は、実際には、基準電圧発生回路2の温度係数を、調整用トランジスタTr1iの導通数を変化させて実測することにより求める。
そして、制御信号Ciは、例えば、制御信号Ciの入力端子にディップスイッチ等を接続し、手動により設定してもよいし、基準電圧発生回路2が、CPUを用いたシステムに組み込まれる場合には、実測により求めた導通数を調整用データとしてメモリに格納すると共に、制御信号Ciの入力端子にレジスタを接続し、CPUが調整データを読み出してレジスタに設定するようにしてもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施例の基準電圧発生回路2においては、制御信号Ciにより温度係数調整回路12aの電流・電圧特性、延いては当該基準電圧の回路特性を変化させることができ、抵抗R1〜R3が固定されていても、基準電圧Voの温度係数を変化させることが可能なようにされている。
【0052】
従って、MOS集積回路上に、当該基準電圧発生回路2を形成した場合に、NMOSトランジスタTr1や調整用トランジスタTr1iの特性が、設計時に仮定した特性とは異なり、その結果、基準電圧Voの温度係数が零からずれてしまったとしても、制御信号Ciを適宜設定することにより、確実に基準電圧Voの温度係数を零に調整することができる。しかも、調整作業は、抵抗値のトリミングといった面倒なことをすることなく、単に制御信号を設定するだけでよく、容易に短時間で行うことができる。
【0053】
このため、本実施例によれば、CMOS集積回路において、容易に高精度な基準電圧Voを得ることができる。
また、本実施例においては、調整用トランジスタTr1iの導通,非導通を制御する第1のスイッチSiが、CMOSアナログスイッチにて構成され、回路の動作状態によって、接続端di,eiの電位がどのように変化しても、導通状態が確実に確保されるようにされていると共に、第2のスイッチTiがNMOSトランジスタにて構成され、ゲート電位を確実に接地電位に設定できるようにされている。
【0054】
従って、本実施例によれば、調整用トランジスタTr1iの導通数が変化することにより、回路の動作状態が変化しても、各スイッチング回路TCiでは、調整用トランジスタTr1iが確実にスイッチングされるため、回路の信頼性を向上させることができる。
【0055】
次に、第2実施例について説明する。
図5は、第2実施例の基準電圧発生回路4の全体構成を表す電気回路図である。
図5に示すように、本実施例の基準電圧発生回路4は、図9にて示した従来装置の基準電圧発生回路8において、第1実施例の基準電圧発生回路2とは反対に、第1の半導体回路が、バイポーラトランジスタB1の代わりにNMOSトランジスタTr2にて構成され、第2の半導体回路が、バイポーラトランジスタB2の代わりに温度係数調整回路12bにて構成されているだけで、それ以外の構成は、従来装置、及び第1実施例と全く同様である。
【0056】
そして、NMOSトランジスタTr2は、ソースが接地されると共に、ドレイン・ゲート間が接続され、所謂ダイオード接続されている。そして、当該NMOSトランジスタTr2のゲート電圧・ドレイン電流特性に基づき、抵抗R1と基準電圧Voにより決まる所定電流I1を抵抗R1に流すと共に、この時のゲート電圧を演算増幅器10の非反転入力に印加する。
【0057】
一方、温度係数調整回路12bは、第1実施例の温度係数調整回路12aと全く同様に構成されたものであり、調整用トランジスタTr1iの導通数にて決まる当該温度係数調整回路12b全体としての電圧・電流特性に基づき、抵抗R3と反転入力端子の電位とにより決まる所定電流I2を抵抗R2に流す。
【0058】
そして、制御信号Ciにより、調整用トランジスタTr1iの導通数を制御すると、この導通数に応じて、略一定の割合で抵抗R2に流れる電流I2が変化し、これに応じて基準電圧Voの温度係数も変化する。
ここで図6は、本実施例の基準電圧発生回路4の基準電圧Voの温度係数と、調整用トランジスタTr1iの導通数との関係を求めたシミュレーション結果のグラフである。
【0059】
なお、抵抗R1〜R3、演算増幅器10の電源電圧、温度係数の測定温度範囲は、第1実施例と同様である。
図6に示すように、本実施例の基準電圧発生回路4においては、調整用トランジスタTr1iの導通数を増加させる程、温度係数は、正方向に変化する。
【0060】
そして、第1実施例の場合と同様に、NMOSトランジスタTr2や調整用トランジスタTr1iのスレッショルド電圧Vthの温度係数が、設計時に仮定したものより大きい場合に、特性曲線は、図6中にて右方向にシフトし、逆に、スレッショルド電圧Vthの温度係数が設計時に仮定したものより小さい場合に、特性曲線は、図6中左方向にシフトする。
【0061】
このため、実際のスレッショルド電圧Vthの温度係数が設計時より大きい場合には、導通数を設計時より増加させれば、温度係数を零に調整することができ、逆に、実際のスレッショルド電圧Vthの温度係数が設計時より小さい場合には、導通数を設計時より減少させることにより、温度係数を零に調整することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施例の基準電圧発生回路4においては、制御信号Ciにより温度係数調整回路12bに流れる電流を調整可能にされており、抵抗R1〜R3が固定されていても、基準電圧Voの温度係数を変化させることが可能なようにされている。
【0063】
従って、本実施例によれば、第1実施例と同様に、当該基準電圧発生回路4を構成するMOS型電界効果トランジスタの特性が、設計時に仮定したものとは異なっていたとしても、制御信号Ciを適宜設定することにより、基準電圧Voの温度係数を零に調整することができる。
【0064】
次に、第3実施例について説明する。
図7は、第3実施例の基準電圧発生回路の全体構成を表す電気回路図である。図7に示すように、本実施例の基準電圧発生回路6は、図9にて示した従来装置の基準電圧発生回路8において、第1及び第2の半導体回路が、いずれもバイポーラトランジスタB1,B2の代わりに温度係数調整回路12a,12bにて構成されているだけで、それ以外の構成は、従来装置,第1実施例,及び第2実施例と全く同様である。
【0065】
そして、温度係数調整回路12a,12bは、第1及び第2実施例にて説明したものと全く同様のものである。なお、図7では、各温度係数調整回路12a,12bに入力される制御信号が、夫々異なるものであることを示すために、CAi,CBiとして区別して示している。
【0066】
このように構成された基準電圧発生回路6においては、制御信号CAiにより温度係数調整回路12aを制御すると、抵抗R1に流れる電流I1が変化し、また、制御信号CBiにより温度係数調整回路12bを制御すると、抵抗R2に流れる電流I2が変化し、これらの変化に応じて、基準電圧Voの温度係数も変化する。
【0067】
ここで図8は、本実施例の基準電圧発生回路6の基準電圧Voの温度係数と、各温度係数調整回路12a,12bの調整用トランジスタTr1iの導通数との関係を求めたシミュレーション結果のグラフである。
なお、抵抗R1〜R3、演算増幅器10の電源電圧、温度係数の測定温度範囲は、第1実施例と同様である。
【0068】
また、図8において、実線は、温度係数調整回路12bの調整用トランジスタTr1iの導通数を19個に固定して、温度係数調整回路12aの調整用トランジスタTr1iの導通数を変化させた時の特性であり、一方点線は、逆に、温度係数調整回路12aの調整用トランジスタTr1iの導通数を19個に固定して、温度係数調整回路12bの調整用トランジスタTr1iの導通数を変化させた時の特性である。
【0069】
そして、第1及び第2実施例の場合と全く同様に、MOSトランジスタの実際のスレッショルド電圧Vthの温度係数が設計時より大きい場合には、図8において、実線は左方向にシフトし、点線は右方向にシフトし、同じく設計時より小さい場合には、図8において、実線は右方向にシフトし、点線は左方向にシフトするため、これに応じて、調整用トランジスタTr1iの導通数を増減させれば、基準電圧Voの温度係数は零に調整される。
【0070】
以上説明したように、本実施例の基準電圧発生回路6においては、制御信号CAi,CBiにより温度係数調整回路12a,12bに流れる電流を調整可能にされており、抵抗R1〜R3が固定されていても、基準電圧Voの温度係数を変化させることが可能なようにされている。
【0071】
従って、本実施例によれば、第1及び第2実施例と同様に、当該基準電圧発生回路4を構成するMOS型電界効果トランジスタの特性が、設計時に仮定したものとは異なっていたとしても、制御信号CAi,CBiを適宜設定することにより、基準電圧Voの温度係数を零に調整することができる。
【0072】
また、本実施例では、2個の温度係数調整回路12a,12bを有しており、一方のトランジスタの導通数を固定して、他方のトランジスタの導通数のみを変化させて調整を行えば、第1及び第2実施例と全く同様の調整を行うことができ、また、トランジスタの導通数を一方は増加させ他方は減少させるように変化させれば、温度係数を大きく変化させることができ、より広い範囲で調整を行うことができるだけでなく、トランジスタの導通数を両方とも増加あるいは減少させるように変化させれば、温度係数を微妙に変化させることができ、より精密な調整を行うことができる。
【0073】
なお、上記実施例において、各調整用トランジスタTr1iは、いずれも同一ゲート幅、同一ゲート長に形成され、同じ大きさの電流を流すようにしているが、例えばi番目(i=1〜n)の調整用トランジスタの電流駆動能力が2n−1 倍となるように設定すれば、最小限のトランジスタ数にて広い範囲の調整が可能となる。
【0074】
また、上記実施例では、第2のスイッチTiは、NMOSトランジスタにて構成したが、第1のスイッチSiと同様に、CMOSアナログスイッチにて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の基準電圧発生回路の構成を表す電気回路図である。
【図2】温度係数調整回路の構成を表す電気回路図である。
【図3】温度係数調整回路における第1及び第2のスイッチの構成を表す電気回路図である。
【図4】第1実施例における基準電圧Voの温度計数の特性を求めたシミュレーション結果を表すグラフである。
【図5】第2実施例の基準電圧発生回路の構成を表す電気回路図である。
【図6】第2実施例における基準電圧Voの温度係数の特性を求めたシミュレーション結果を表すグラフである。
【図7】第3実施例の基準電圧発生回路の構成を表す電気回路図である。
【図8】第3実施例における基準電圧Voの温度係数の特性を求めたシミュレーション結果を表すグラフである。
【図9】従来の基準電圧発生回路の構成を表す電気回路図である。
【符号の説明】
2,4,6…基準電圧発生回路 10…演算増幅器
12a,12b…温度係数調整回路 14…反転回路
R1,R2,R3…抵抗R Tr1,Tr2…NMOSトランジスタ
TCi…スイッチング回路 Tr1i…調整用トランジスタ
Si…第1のスイッチ Ti…第2のスイッチ
Claims (3)
- 出力端子と非反転入力端子との間に第1の抵抗が接続され、上記出力端子と反転入力端子との間に第2の抵抗が接続された演算増幅器と、
一端が上記非反転入力端子に接続されると共に他端が接地され、上記第1の抵抗に上記出力端子側から上記非反転入力端子側に向けて電流を流す第1の半導体回路と、
一端が第3の抵抗を介して上記反転入力端子に接続されると共に他端が接地され、上記第2の抵抗に上記出力端子側から上記反転入力端子側に向けて電流を流す第2の半導体回路と、
を備え、上記演算増幅器が、上記第1及び第2の半導体回路の両端電圧の差と上記第3の抵抗の抵抗値とに基づいて上記第2及び第3の抵抗に流れる電流により誘起される上記第2の抵抗の両端電圧と、上記第1の半導体回路による非反転入力端子への印加電圧との加算値を基準電圧として上記出力端子から出力する基準電圧発生回路において、
上記第1及び第2の半導体回路の少なくとも一方を、外部からの制御信号により導通,非導通が制御され、導通時に所定電流を流すスイッチング回路を複数並列接続してなる調整回路として構成することで、該調整回路に流れる電流値を、上記制御信号にて上記スイッチング回路の導通数を制御することにより調整可能とし、
しかも、上記スイッチング回路は、
ソース接地されたNチャネルのMOS型電界効果トランジスタからなる調整用トランジスタと、
上記制御信号に従い、上記調整用トランジスタのゲート・ドレイン間を接続して、該調整用トランジスタを導通させる第1のスイッチと、
該第1のスイッチの非導通時に、上記調整用トランジスタのゲート・ソース間を接続して、該調整用トランジスタを非導通にさせる第2のスイッチと、
からなることを特徴とする基準電圧発生回路。 - 請求項1に記載の基準電圧発生回路において、
上記第1のスイッチは、
ドレインが入力端に、ソースが出力端に接続されたNチャネルのMOS型電界効果トランジスタと、
ソースが入力端に、ドレインが出力端に接続されたPチャネルのMOS型電界効果トランジスタと、
制御端に接続された一方のトランジスタのゲートへの入力を他方のトランジスタのゲートに反転させて入力する反転回路と、
により構成されたCMOSアナログスイッチからなり、上記入力端が上記調整用トランジスタのドレインに接続される共に、上記出力端が上記調整用トランジスタのゲートに接続され、更に、上記制御端に上記制御信号が入力されることを特徴とする基準電圧発生回路。 - 請求項1または請求項2に記載の基準電圧発生回路において、
上記第2のスイッチは、ドレインが上記調整用トランジスタのゲートに接続されると共に、ソースが上記調整用トランジスタのソースに接続され、更に、ゲートに上記制御信号が入力されたNチャネルのMOS型電界効果トランジスタからなることを特徴とする基準電圧発生回路。
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