JP3557116B2 - 自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車の電池群、電気機器(インバータ、モータ等)間を電気的に接続したり、各電池間の接続、インバータ内の回路等の大電流を通電するために用いられるAl合金製自動車用導電体(自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体)に関するものである。
なお、本明細書においては、Al合金組成はすべてwt%を意味するが、これを単に%と記した。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車には、電池群、インバータ、モータ等の各種の電気機器が使用されている。従来この電池群と電気機器間、各電池間、インバータ内の回路等を電気的に接続する導電母材(平角状や板状等の導体で、通常、ブス(またはバス)と呼ぶ給電用導電体、以下、導電体という)としては、純銅材が多用され、主としてボルト締めで接続されている。
【0003】
しかしながら、近年、燃費の軽減のため自動車の軽量化が求められており、前記の従来の銅製の導電体を、軽量であるAl又はAl合金製としたいという要望が強い。
一方、地上の配電設備等の導電用Al及びAl合金材としては、従来、1060(Al分99.60%以上の純Al )、6101(Al−0.5%Si−0.5%Mg 合金) 、6063(Al−0.4%Si−0.7%Mg 合金) 、6061(Al−0.6%Si−1.0%Mg−0.3%Cu−0.2%Cr 合金)が知られている(JIS H 4180) 。これらの合金組成及び導電率を表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
前記の従来の銅製の導電体をアルミニウム製に置き換える場合、銅の比重が8.89であり、アルミニウムの比重が2.70であること、又純銅の導電率を100%IACSとした場合の純アルミニウム1060の導電率が61%IACS以上であることから、銅と同一電気抵抗の導体とした場合の断面積は銅の160%となって増加するが重量は50%となり大幅に減少する。また、銅と同一電流容量の導体とした場合の断面積は125%となって増加するが重量は40%にすぎない。これらのことから、銅製と同等な電気的条件の導体としてアルミニウムを使用すれば、銅の場合の1/2又はそれ以下の重量で足りることになる。
【0006】
表2に、1060(純Al)、6101、銅(純Cu)の室温における代表的機械的性質を示す。
【表2】
【0007】
表1、表2に示す如く、純アルミニウムの1060は、アルミニウム導体の中で導電率が最も高いが常温における機械的強度は低い。合金系(Al−Mg−Si系)の導体である6101−T6の常温における機械的強度は、銅−1/2・Hと同等であり、導電率も55%IACS以上でAl合金の中で最も高い。
従って、銅に代わるアルミニウム導体としては、強度と導電率に優れた6101合金相当材が最も適していると考えられる。
【0008】
また、従来、地上の配電設備等に使用する前記のAl及びAl合金製導電体は、表面処理なしで裸で使用される場合が大部分である。
しかしながら、腐食環境の厳しい箇所及び長期に渡って耐食性が要求される電気機器内で使用される導電体は、Cu+Agメッキ、Sn−Zn 合金半田( 摩擦半田) メッキ等の表面処理を施して使用される場合もある。
また、これらのAl及びAl合金製導電体の接続は、接続部表面の酸化膜をワイヤブラシで除去した後(メッキを施してある場合は、単に布で汚れを拭き取った後)、接続コンパウンドを塗布して、ボルト・ナットで接続するのが一般的である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
自動車用の導電体に、前記の銅製導体に代えて純Al又はAl合金を用いる場合、純Alは導電率が61%IACS以上と高いが機械的強度が低く、又6063、6061合金は機械的強度が比較的高いが導電率が55%IACS未満で低い。
従って、自動車用Al合金製導電体としては、前述のごとく6101合金相当材が、強度及び導電率(55%IACS以上)の点で妥当と考えられるが、自動車用導電体という用途に応じたいくつかの点についての検討が必要となる。
【0010】
即ち、前記のAl合金材を自動車用導電体の用途に適用する場合、通電時での温度の上昇(例えば100℃前後)とその温度の低下という熱サイクルを伴うこと、また長期に渡って使用されることから、▲1▼ボルト締めつけ部の材料が変形しにくいこと、即ち耐クリープ性が従来の銅材と同等以上で優れていること、▲2▼接続部や接続部以外の部分で耐食性が良好であること、▲3▼接続部の電気特性(接触抵抗)が良好であること等の要件を満たす必要がある。
従って導電用のAl合金材料としては、高温下での耐クリープ性が従来の銅材と同等以上であり、導電率が出来るだけ高いこと(55%IACS以上) が望ましい。
また、使用環境によって、導電体に特に耐食性等が要求される場合はAl合金材上に好ましい表面処理を行うことによって解決する必要がある。
本発明の課題は、ボルトの締めつけによる応力荷重下において、通電時の発熱により変形しにくい即ち耐クリープ性が良好で、導電率を低下させないAl合金製自動車用導電体を提供することであり、また特に耐食性等が要求される場合のAl合金製導電体の好ましい表面処理方法を見出すことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の観点によれば、Si0.3〜0.8wt%、Mg0.35〜1.0wt%、Fe0.1〜0.6wt%、Cu0.12〜0.5wt%を含有し、さらにMn0.1〜0.3wt%、Zr0.1〜0.3wt%の1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、導電率が55%IACS以上で、且つその調質がT6材であることを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体が提供される。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、Si0.3〜0.8wt%、Mg0.35〜1.0wt%、Fe0.1〜0.6wt%、Cu0.12〜0.5wt%を含有し、さらにMn0.1〜0.3wt%、Zr0.1〜0.3wt%の1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、導電率が55%IACS以上で、且つその調質がT8材であることを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体が提供される。
【0013】
本発明の第3の観点によれば、Si0.3〜0.8wt%、Mg0.35〜1.0wt%、Fe0.1〜0.6wt%、Cu0.12〜0.5wt%を含有し、さらにMn0.1〜0.3wt%、Zr0.1〜0.3wt%の1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、導電率が55%IACS以上で、且つその調質がT5材であることを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体が提供される。
【0014】
好ましくは、前記Al合金材の表面に、第1層として厚さ3〜10μmのNiメッキ被膜を有し、その上に第2層として厚さ2〜10μmのSnメッキ被膜を有することを特徴とする。
【0015】
以下、前記の各発明について、その構成、作用効果及び具体的な実施の形態等について、詳細に説明する。
(1)本発明は、前記のごとく所定の合金組成からなるAl合金であって、所定の調質材とすることを特徴とする自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体である。
このようにすることによって、所定の成形性(曲げ加工性等)と導電率(55%IACS以上)を維持しながら、耐クリープ性(高温強度)を従来の純Cu材や6101合金材以上とすることができる。
【0016】
本発明の構成要件を前記のごとく限定した理由は、次のとおりである。
(1)Si、Mg
Al合金中の元素Si、Mgは、材料強度を高め、導電用材料として用いたときの変形などを防止する作用を果たす。
Si、Mgによる材料強度を高める作用の一つは、主にアルミニウムマトリックスに固溶することによる固溶硬化である。それぞれの成分範囲の下限未満で添加された場合には、固溶量が少ないために十分な効果が得られず、成分範囲の上限を越えて添加した場合には導電率が低下し導電材としての性能が低下する。
また、SiとMgは、Mg2 Si粒子として微細に析出して、析出硬化の作用がある。SiとMgのそれぞれが規定値未満ではMg2 Si粒子の析出が少なく十分な強度が得られない。また、多く添加しすぎた場合には、Mg2 Si粒子が大きくなり、成形性を低下させる。
【0017】
(2)Fe、Cu
本発明に係わるAl合金は、前記のSi、Mgのほかに、さらに所定量のFe、Cuを含有したものである。
Feは、Alと金属間化合物を形成し、分散強化により材料の強度を向上させる。添加量が少ない場合はその効果が得られず、多い場合には成形性が低下する。
また、微細に析出したこれら金属間化合物が亜結晶粒組織や再結晶粒組織を安定化させ、通電時の発熱による組織内の歪みの回復を阻害することにより耐クリープ性を向上させる。
Cuは、アルミニウムマトリックスに固溶することによって材料を強化するものであるが、通電時の材料の耐クリープ性を向上させる。成分範囲の下限未満では、その効果が充分に発揮されず、上限を越えると成形性が低下する。
【0018】
(3)Mn0.1〜0.3%、Zr0.1〜0.3%
本発明のAl合金は、さらにMn0.1〜0.3%、Zr0.1〜0.3%の1種又は2種を含有させることによって、耐クリープ性を更に向上させたものである。
すなわち、元素Mn、Zrは、Alと金属間化合物を形成し、分散強化により材料を強化する。添加量がその範囲の下限未満では十分な強化が得られず、また上限を越えると粗大析出物を形成し、材料の成形性を低下させる。
また、微細に析出したこれら金属間化合物が亜結晶粒組織や再結晶粒組織を安定化させ、通電時の発熱による組織内の歪みの回復を阻害することにより耐クリープ性を向上させる。
【0019】
次に、本発明に係わるAl合金材(圧延材、押出材)は、導電率が55%IACS以上で、調質がT6材もしくはT8材又はT5材である。このようにするのは、所定の強度を得るためである。
導電率が55%IACS以上としたのは、上述したように、6101合金相当の導電率として自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体として希望される値でからである。
調質をT6材もしくはT8材又はT5材とすることによって、所定の強度や、所定の耐クリープ性(高温強度)を得ることができる。
この調質は、後に好ましい製造方法として詳しく述べるが、T6、T8は、圧延材及び押出材のいずれにも適用され、T5は押出材のみに適用される。
調質T6は、材料の終わりの製造工程において、溶体化処理(焼き入れ)後続いて時効硬化処理を施すものであり、調質T8は溶体化処理後冷間加工続いて時効硬化処理を施すものである。
また、調質T5は、特別の溶体化処理(焼き入れ)工程を省いて、所定の断面寸法に熱間押出後冷却(焼き入れ)、続いて時効硬化処理を施すものである。
【0020】
参考までに、本発明のAl合金材(Al−Si−Mg−Fe−Cu合金材) の各調質毎の室温における機械的性質の代表値を示すと、以下の通りである。
なお、この値は、一例であって、実際には幅を有するものであり、以下の値に限定されるものではない。
また、本発明のAl合金材(Al−Si−Mg−Fe−Cu−Mn,Zr合金材) の各調質毎の室温における機械的性質は、上記よりわずかに高い値である。即ち、引張強さ及び耐力がいずれも上記より1kgf /mm2 程度高く、伸びは上記と同等である。
【0021】
前記のような本発明のAl合金製自動車用導電体は、後に詳しく述べる製造例から明らかなごとく、所定の寸法の圧延材もしくは押出材として製造される。
これらの素材は、所定の寸法に切断され、必要に応じて、曲げ成形、穴開等の加工を行い、無処理の状態の棒状もしく板状の導電体として使用される。
なお、これらの無処理の状態のAl合金製導電体の接続は、接続部表面の酸化膜をワイヤブラシで除去した後、接続コンパウンドを塗布して、ボルト・ナットで接続するのが好ましい。
【0022】
好ましくは、上記Al合金材の表面に、第1層として厚さ3〜10μmのNiメッキ被膜を有し、その上に第2層として厚さ2〜10μmのSnメッキ被膜を有することを特徴とする。
Al合金材の表面にこのような2層からなるメッキを施すことにより、優れた耐食性と電気特性(接続部の電気の接触抵抗)を有する導電体とすることができる。
本発明の導電体は、電気機器内で長期に渡って使用される場合や、腐食環境の悪い場所に使用する場合に適用される。
本発明におけるNiメッキは、Al合金製導電体全体の耐食性を向上させるためであり、またSnメッキは、特に接続部の電気特性を確保するためである。
本発明においては、Niメッキの厚さは、3〜10μmとする。3μm未満のような薄い場合には充分な耐食性を維持することができなく、また10μmを越えるような厚い場合には、Niメッキが割れやすくなると共にメッキコストが高くなるからである。
Snメッキの厚さは、2〜10μmとする。2μm未満の薄い場合には電気的接触を充分確保できなく、10μmを越えるような厚い場合には特性に影響しなく、必要以上の厚さはコスト高となるからである。
なお、メッキ被膜厚さのより好ましい範囲は、上記の特性とコストの点から、Niメッキの厚さは3〜7μmであり、Snメッキの厚さは2〜8μmである。
【0023】
本発明に係わるAl合金製自動車用導電体は、前述のごとく主として電気自動車の電池群、インバータ、モータ等の各種の電気機器間の電気的な接続、各電池間、インバータ内の回路等の電気的な接続のための導体として使用される。
従って、使用される導電体の形状は、平角材(例えば断面が2mm×20mm等)若しくは板材(例えば厚さ2mm×200mm×200mm等)であり、これらは、使用に適した形状に切断、打抜き加工、曲げ加工、穴開け加工等を行い、更に必要な場合は、前記のメッキを施し、電気機器等の接続のための導電体となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
前記の導電体の素材である平角材若しくは板材は、AL合金の圧延加工または押出加工によって製造することができる。
以下に、この好ましい製造方法について詳細に説明する。
まず、前記のAl合金材を圧延加工によって製造する場合は、前記の合金組成からなるAl合金鋳塊を半連続鋳造法等の常法により製造し、これを500〜540℃の温度で保持した後熱間圧延を行い、その後所定の板厚まで冷間圧延を行うが、その際に、前記の冷間圧延前または冷間圧延の途中若しくは冷間圧延後において、500℃以上の温度に保持した後冷却(200℃までは1℃/sec以上の冷却速度で冷却)する〔溶体化処理〕。続いて必要に応じて所定の冷間圧延を行い、最後に150〜250℃で保持する人工時効硬化の熱処理を施すものである。
上記の製造方法を別の言い方をすると、熱間圧延又は冷間圧延→溶体化処理(焼き入れ)→冷間圧延→人工時効硬化の工程とする(T8処理)か若しくは熱間圧延又は冷間圧延→溶体化処理(焼き入れ)→人工時効硬化の工程とする(T6処理)。
【0025】
熱間圧延前に鋳塊を500〜540℃の温度に保持するのは、添加元素の固溶量を高めるためで、500℃未満では十分に固溶しなく、また540℃を越えると鋳塊が部分的に溶融する恐れがあるからである。
また、冷間圧延前または冷間圧延の途中若しくは冷間圧延後に500℃以上の温度に保持した後冷却(200℃までは1℃/sec以上の冷却速度で冷却)するのは、保持温度が500℃未満でも冷却速度が1℃/sec未満でも添加元素の固溶が不十分となるからである。
続いて行う150〜250℃に保持するのは、過剰に固溶したMg、Si、Cu成分元素がMg2 SiやCu化合物として析出して導電材の強度をより向上させるためである。前記の処理温度が150℃未満では析出が不足して十分な強度が得られず、250℃を越えると粗大な析出物が発生し、やはり十分な強度が得られない。
従って、本発明に係わるAl合金材の圧延加工による製造は、前記の製造方法を採用するのが好ましい。
【0026】
次に、このAl合金材を押出加工で製造する場合は、前記の合金組成からなるAl合金鋳塊(ビレット)を半連続鋳造法等の常法により製造し、これを500〜540℃の温度で保持した後熱間押出を行い、その後所定の断面寸法に冷間引抜を行うが、その際に、前記冷間引抜前または冷間引抜の途中若しくは冷間引抜後に500℃以上の温度で保持した後冷却(200℃までは1℃/sec以上の冷却速度で冷却)する。続いて必要に応じて所定の冷間引抜を行い、最後に150〜250℃で保持する人工時効硬化の熱処理を施すものである。
上記の製造方法を別の言い方をすると、熱間押出又は冷間引抜→溶体化処理(焼き入れ)→冷間引抜→人工時効硬化処理の工程とする(T8処理)か若しくは熱間押出又は冷間引抜→溶体化処理(焼き入れ)→人工時効硬化処理の工程とする(T6処理)。
また、特別の溶体化処理(焼き入れ)工程を省いて、所定の断面寸法に熱間押出後冷却(200℃までは1℃/sec以上の冷却速度で冷却)→人工時効硬化処理とすることもできる(T5処理)。
【0027】
鋳塊の均質化処理である熱間押出前に鋳塊を500〜540℃の温度に保持する理由、及び溶体化処理を500℃以上の温度で保持した後冷却(200℃までは1℃/sec以上の冷却速度で冷却)する理由、人工時効硬化処理を150〜250℃に保持する理由は、前記の圧延板の製造方法で述べた理由と同様である。
【0028】
本発明に係わるAl合金素材は、前記のごとく製造することによって、優れた導電性、強度及び耐クリープ性を得ることができる。
また、このようにして製造したAl合金素材の表面に、更に前記のNiメッキとSnメッキの2層からなるメッキを施すことによって、優れた耐食性と電気特性を有する導電体とすることができる。
【0029】
【実施例】
以下に本発明の実施例を、比較例等とともにより詳細に説明する。
〔実施例1〕
表3に記載の本発明に係わる合金組成範囲内のAl合金材と範囲外の比較Al合金材について、導電体用の板材を製造した。即ち表3に記載の合金組成に溶解鋳造後、この鋳塊を540℃で均質化熱処理(ソーキング)し、これを熱間圧延し、続いて冷間圧延して板厚5mmの板材とした。
この板材について、540℃で溶体化処理を施した後、200℃まで20℃/secの冷却速度で冷却し、その後200℃で2時間の時効硬化処理を施して供試材No.1、No.3〜No.13 (T6材)とした。
また、供試材No.2は、熱間圧延後、板厚7mmまで冷間圧延し、上記の溶体化処理を施した後、板厚5mmまで冷間圧延し、上記の時効硬化処理を施して供試材(T8材)とした。
【0030】
【表3】
【0031】
これらの供試材について室温で導電率を測定して表3に記した。
また、これらの供試材の高温状態におけるボルト締め接続部の耐クリープ性をみるため、次の試験を行った。
即ち、板材サンプル5mm×20mm×20mmの表面に定圧荷重(1.2ton/cm2)を負荷し、この状態で加熱して120℃で3時間保持した。次にこれを室温まで冷却して元の板厚5mmの変化量(減少量)を測定して、材料の変化率(%)求め、材料の耐クリープ性を評価した。
この結果を表3に併記した。
【0032】
なお、参考のため、基準となる従来の銅材(1/2・H)及び純Al(1060−H14)についても、同様に試験して、導電率と耐クリープ性を評価して表3に併記した。
表3から明らかなごとく、本発明に係わるAl合金製導電体(No.1〜5)は、高温状態における変形量が従来の銅材( No.15)や6101合金( No.8) よりも少なく耐クリープ性に優れ、導電率も55%IACS以上であることがわかる。
なお、比較用のAl合金材は、高温状態における変形量が大きいか又は導電率が55%IACS未満である。
【0033】
〔実施例2〕
本発明のAl合金材(実施例1の表3のNo.1〜5 )であり、ボルト用穴径8mmを有する5mm(厚さ)×30mm×100mmの板材について、表4に示すような各種のメッキ処理を施して供試材とした( なお、表4には、結果は同様であるので、No.1のAl合金材のみ記した) 。
これらの各種のメッキ処理について、処理コストを比較して表4に記した。
また、これらの供試材を2枚を合わせ(合わせ部10mm)、定圧荷重が1.2ton/cm2となるようにボルトで締めつけた(ボルトの締めつけトルク1.2kg・m)。
なお、締めつけボルトは、ボルト径が6mmで、フランジ付ボルト、ナット(フランジ部の径12mm)である。また、このボルトはステンレス製で、Crメッキが施されたものである。
【0034】
このように締めつけた供試材について、120℃で12時間保持後、室温で12時間保持(1サイクル)の熱サイクル試験を240時間(10サイクル、10日)実施した。
この試験の前後の電気的接触抵抗を測定して、その結果を表4に記した。
また、この熱サイクル試験後のサンプルについて、耐食性試験を行った。
この試験は、塩水噴霧試験により、96時間(4日)行い、ボルトでの加圧接続部(その近傍も含む)と接続部以外の腐食状況を観察して、その結果を表4に記した。
【0035】
【表4】
【0036】
表4から明らかなごとく、発明の範囲内のサンプル(Niメッキ厚さ3〜10μm、Snメッキ厚さ2〜10μm)は、メッキ処理コスト、熱サイクル試験前後の電気的接触抵抗、耐食性のいずれも良好であった。
発明の範囲外のサンプルは、処理コスト、接触抵抗、耐食性のいずれかで劣ることがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係わるAl合金製自動車用導電体は、従来の銅製の導電体に比しかなりの軽量化が可能となる。
また導電率を55%IACS以上に維持しながら、温度上昇時の耐クリープ性にも優れている。
更に、本発明のメッキ被覆導電体は、自動車用のように長期間使用する電気機器や腐食環境の厳しい場所においても、優れた耐食性と接続の際の電気特性を有する。
これらのことから、本発明の導電体は、自動車用導電体として工業上顕著な効果を有するものである。
Claims (4)
- Si0.3〜0.8wt%、Mg0.35〜1.0wt%、Fe0.1〜0.6wt%、Cu0.12〜0.5wt%を含有し、さらにMn0.1〜0.3wt%、Zr0.1〜0.3wt%の1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、導電率が55%IACS以上で、且つその調質がT6材であることを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体。
- Si0.3〜0.8wt%、Mg0.35〜1.0wt%、Fe0.1〜0.6wt%、Cu0.12〜0.5wt%を含有し、さらにMn0.1〜0.3wt%、Zr0.1〜0.3wt%の1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、導電率が55%IACS以上で、且つその調質がT8材であることを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体。
- Si0.3〜0.8wt%、Mg0.35〜1.0wt%、Fe0.1〜0.6wt%、Cu0.12〜0.5wt%を含有し、さらにMn0.1〜0.3wt%、Zr0.1〜0.3wt%の1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、導電率が55%IACS以上で、且つその調質がT5材であることを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体。
- 請求項1〜3いずれか記載のAl合金材の表面に、第1層として厚さ3〜10μmのNiメッキ被膜を有し、その上に第2層として厚さ2〜10μmのSnメッキ被膜を有することを特徴とする、自動車に搭載するAl合金製の給電用導電体。
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