JP2015057513A - バスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、電気機器の省スペース化(小型化)の要望を満たすため、バスバー1は、曲げ半径(R)が小さな湾曲部分を有する形状に設計される場合が多い。したがって、バスバー1は、曲げ加工性にも優れる必要がある。
加えて、バスバー1は、電気を通さなければならないため、当然、導電性に優れる必要もある。
しかしながら、近年、自動車の燃費を低減するために、自動車の軽量化、そして、自動車に搭載される電気機器の軽量化が求められている。
上記の事情を勘案し、銅よりも軽量であるアルミニウム合金からなる電気接続部品が提案されている。
なお、この実情は、技術常識(金属から構成される板材の応力緩和特性を向上させるには強度を向上させる必要があるが、強度を向上させると板材の曲げ加工性が低下してしまう、つまり、応力緩和特性と曲げ加工性とはトレードオフの関係にある)に合致するものであり、当然のことであると考えられてきた。
また、本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金が、Cu:0.10質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Ti:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
また、本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金は、Mn:0.10質量%以下、Cr:0.10質量%以下、Zn:0.10質量%、Zr:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
本発明に係る導電用アルミニウム合金板(以下、適宜、「アルミニウム合金板」という)は、所定量のSiおよびMgを含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、板表面の平均結晶粒径および大きなサイズの金属間化合物数が所定値以下であることを特徴とする。
また、本発明に係るアルミニウム合金板は、Cu、Fe、Tiの含有量が所定値以下であることが好ましい。また、本発明に係るアルミニウム合金板は、Mn、Cr、Zn、Zrの含有量が所定値以下であることが好ましい。
Siは、Mgとともに溶体化熱処理後の人工時効処理時に時効析出物を形成する。Siが高温環境下での転位の移動を阻害することで、応力緩和特性を向上させるため、Siは、本発明に係る導電用アルミニウム合金板に必須の元素である。
Siの含有量が0.3質量%未満では、所望の応力緩和特性を得られない。一方、Siの含有量が1.5質量%を超えると、粗大な晶出物、析出物が形成されて、特に曲げ加工性が劣化したり、導電性が低下したりしてしまう。
したがって、Siの含有量は0.3〜1.5質量%である。
なお、曲げ加工性と応力緩和特性の向上および導電性の確保という効果をより確実なものとするため、Siの含有量は0.4〜1.5質量%であることが好ましく、0.5〜1.3質量%であることがさらに好ましい。
Mgは、Siとともに溶体化熱処理後の人工時効処理時に時効析出物を形成する。Mgが高温環境下での転位の移動を阻害することで、応力緩和特性を向上させるため、Mgは、本発明に係る導電用アルミニウム合金板に必須の元素である。
Mgの含有量が0.3質量%未満では、所望の応力緩和特性を得られない。一方、Mgの含有量が1.0質量%を超えると、粗大な晶出物、析出物が形成されて、特に曲げ加工性を劣化させる。
したがって、Mgの含有量は0.3〜1.0質量%である。
なお、曲げ加工性と応力緩和特性の向上という効果をより確実なものとするため、Mgの含有量は0.5〜0.8質量%であることが好ましい。
不可避的不純物として、Cu、Fe、Ti等が本発明の効果を妨げない範囲で含有されていてもよい。詳細には、Cu:0.10質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Ti:0.10質量%以下に規制されていてもよい。
理由としては、Cuの含有量が0.10質量%を超えると曲げ加工性が低下してしまうからである。また、Feの含有量が0.50質量%を超えると、曲げ加工性または耐食性が低下してしまうからである。また、Tiの含有量が0.10質量%を超えると、導電性が低下してしまうからである。
なお、Cu、Fe、Tiについては、前記した所定の含有量を超えなければ、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げない。
また、不可避的不純物として、本発明の効果を妨げない程度に、Cu、Fe、Ti以外の元素(例えば、Cr、Zn、Zr、V、Ni、Sn、In、Mn、Gaなど)がそれぞれ0.10質量%以下、好ましくは、0.05質量%以下程度の範囲で含まれていてもよい。
また、Cr、Zn、Zr、V、Ni、Sn、In、Mn、Gaなど(この中でも特に、Cr、Zn、Zr、Mn)について、前記した所定の含有量を超えなければ、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げない。
なお、不可避的不純物として挙げた各元素の含有量は、当然、0質量%であってもよい。
本発明に係る導電用アルミニウム合金板は、板表面における圧延方向の平均結晶粒径が、150μm以下とする。
圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下であると、曲げ加工性を向上させ、曲げ加工時における表面の品質を向上させることができる。一方、圧延方向の平均結晶粒径が150μmを超えると曲げ加工時における表面に肌荒れや亀裂が発生する可能性が高くなる。
なお、圧延方向の平均結晶粒径については、曲げ加工性の向上という効果をより確実なものとするため、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、圧延方向の平均結晶粒径については、過度に小さくしようとすると、製造条件が厳しくなり生産性の低下を招くため、10μm以上が好ましい。
アルミニウム合金板の表面を0.05〜0.1mm機械研磨、電解エッチングし、水洗・乾燥した後に、光学顕微鏡にて100倍で写真撮影する。そして、この顕微鏡写真から圧延方向に切片法を用いて平均結晶粒径の値を算出する。なお、切片法を用いた測定では、1測定ライン長さを0.95mmとし、1視野当たり各3本で合計5視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。
本発明に係る導電用アルミニウム合金板は、最大長さが3μmを超える金属間化合物が板表面において1500個/mm2以下である。
ここで、金属間化合物とは、詳細には、Al−Fe−Si系およびMg−Si系金属間化合物である。なお、ここでのAl−Fe−Si系金属間化合物とは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を含む概念である。
また、最大長さとは、板表面において其々の金属間化合物が呈する最も大きな直径である。
なお、金属間化合物数については、曲げ加工性の向上という効果をより確実なものとするため、好ましくは1000個/mm2以下、より好ましくは、500個/mm2以下である。また、金属間化合物数については、過度に少なくしようとすると、製造条件が厳しくなり生産性の低下を招くため、200個/mm2以上が好ましい。
なお、最大長さが3μmを超える金属間化合物数は、アルミニウム合金板におけるSiの含有量、Mgの含有量、アルミニウム合金板の製造工程における熱間圧延条件によって達成される。
本発明に係る導電用アルミニウム合金板の導電率は、45.0%IACS以上であるのが好ましい。
導電率が45.0%IACS以上であると、電気接続部品としての導電性能を確保することができる。一方、電気抵抗が高い、すなわち導電率が45.0%IACS未満であると、所望の電流を流すために電気接続部品の断面積を増加させる必要が生じ、部品重量の増加に繋がってしまう。
なお、導電率については、高ければ高いほどよく、好ましくは47.0%IACS以上、さらに好ましくは50.0%IACS以上である。
なお、導電率を高くしすぎると、すなわち過度な固溶量減少および析出物粗大化が生じることにより応力緩和特性が低下する傾向にあるため、導電率は60%IACS以下であるのが好ましい。
本発明に係る導電用アルミニウム合金板の耐力(0.2%耐力)は、130MPa以上であることが好ましい。
耐力が130MPa以上であると、電気接続部品に要求される応力緩和特性を確保することができる。一方、耐力が130MPa未満であると、応力緩和特性が低下してしまう。
なお、応力緩和特性の確保という効果をより確実なものとするため、耐力は、好ましくは175MPa以上、さらに好ましくは180MPa以上である。
導電用とは、複数の部材を電気的に接続するためのものという用途を示しており、本発明に係る導電用アルミニウム合金板とは、この用途のための合金板である。
そして、詳細には、本発明に係る導電用アルミニウム合金板は、電気接続部品(特に、板状の合金板に対して曲げ加工が施されるような電気接続部品)に用いる合金板である。
なお、ここでの電気接続部品とは、具体的には、電気を動力源とした各種電動輸送機器等に搭載されている、電池群、インバータ、モータ等の各種の電気機器間または電気機器内部の部品間を電気的に接続するバスバーである。また、電気接続部品とは、ボンディングワイヤ等の部材を表面に接合することが要求される部品でもある。
そして、電気接続部品は、形状について特に限定されないが、所定の厚さを有するとともに、板状・角材状を呈する部品である。例えば、電気接続部品は、図1に示すような形状を呈する部品である。
言い換えると、本発明に係る導電用アルミニウム合金板は、厚さが0.2mm以上の電気接続部品に適用するのが好ましく、より好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1.0〜5.0mmの電気接続部品に適用することで、顕著な効果(応力緩和特性および曲げ加工性の両立という効果)を発揮することとなる。
ここまで、人工時効処理が施された後の状態のアルミニウム合金板(以下、適宜、「人工時効処理後のアルミニウム合金板」という)を説明したが、人工時効処理の前後において、各合金成分は勿論のこと、前記した平均結晶粒径、金属間化合物数についてもほとんど変化しない。
よって、人工時効処理が施される前の状態のアルミニウム合金板(以下、適宜、「人工時効処理前のアルミニウム合金板」という)であっても、前記した要件をみたせば、人工時効処理後のアルミニウム合金板として示した効果と同様の効果を奏することができる。
なお、人工時効処理前のアルミニウム合金板は、人工時効処理後のアルミニウム合金板よりも成形し易いことから、人工時効処理前のアルミニウム合金板を購入したユーザーが、所望の成形処理を施した後で後記する人工時効処理を施す、という使用態様が考えられる。
[導電用アルミニウム合金板の製造方法]
本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、図2に示すように、鋳造工程S1と、均質化熱処理工程S2と、熱間圧延工程S3と、溶体化熱処理工程S4と、を含むことを特徴とする。また、本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、図3に示すように、冷間圧延工程SR(SR1、SR2)を、熱間圧延工程S3と溶体化熱処理工程S4との間、および、溶体化熱処理工程S4の後の少なくとも一方に含んでもよい。また、本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、図2、図3に示すように、さらに人工時効処理工程S5を含んでもよい。
以下、前記各工程を中心に説明する。
鋳造工程S1では、前記の成分組成であるアルミニウム合金を溶解し、DC鍛造法等の公知の鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して厚さ400〜600mm程度の鋳塊とし、必要に応じて面削を行う。
均質化熱処理工程S2では、鋳造工程S1で鋳造した鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理(均熱処理)を施す。鋳塊に均質化熱処理を施すことによって、内部応力が除去され、鋳造時に偏析した溶質元素が均質化され、また、鋳造冷却時やそれ以降に析出した金属間化合物が成長する。
均質化熱処理工程S2における熱処理温度(鋳塊温度)は500〜570℃である。熱処理温度が500℃未満では、鋳造時に晶出したSiあるいはMgが未固溶のまま残存し、溶体化熱処理および人工時効処理後に適度な析出物分布を得ることができず、曲げ加工性が低下する。一方、570℃を超えると、鋳塊の表面で局部的な溶融(バーニング)が生じてしまう。さらに好ましくは、560℃以下である。
均質化熱処理工程S2における熱処理時間(保持時間)は、均質化を完了させるためには1時間以上であればよく、製造効率の点から24時間以下であればよい。
熱間圧延工程S3では、均質化された鋳塊を熱間圧延する。このときの圧延開始温度を350〜570℃が好ましい。そして、複数のパスからなる熱間圧延を施すことで、所望の板厚の熱間圧延板(ホットコイル)とする。
なお、本発明では、後記のとおり、熱間圧延工程S3の最終圧延パスの終了温度を詳細に規定しており、当該終了温度の条件を満たす場合は、熱間圧延工程S3の圧延開始温度が比較的高い温度(500℃を超えて570℃以下の範囲)であっても、本発明の効果に影響を与えない。
ここで、均質化熱処理後に、熱間圧延を開始する350〜570℃の温度範囲まで冷却する際の態様は、この温度範囲まで直接冷却し、この温度範囲で熱間圧延を開始してもよい(以下、2段均熱とも言う)。また、350℃以下の温度範囲まで冷却し、その後更に、熱間圧延を開始する350〜570℃の温度範囲まで再加熱して、この温度範囲で熱間圧延を開始してもよい(以下、2回均熱とも言う)。また、均質化熱処理後に、冷却することなく、そのまま、熱間圧延を開始してもよい(以下、1回均熱とも言う)。
一方、冷却速度が200℃/hを超えると、鋳塊内での温度分布が不均一となり、熱収縮による変形やソリなどの異常が生じる新たな問題が発生する可能性もある。
熱間圧延工程S3における最終圧延パスの終了温度は、300〜360℃である。終了温度を300℃以上に高温化することで、板表面における最大長さが3μmを超える金属間化合物数の増加抑制を図ることができる。また、終了温度を360℃以下に規制することで、板表面における平均結晶粒径の小径化を図ることができる。
溶体化熱処理工程S4では、熱間圧延工程S3で製造した圧延板、または、後記する冷間圧延工程SR1で製造した圧延板を溶体化熱処理する。ここで、溶体化熱処理工程S4における熱処理温度(鋳塊温度)は500〜570℃である。熱処理温度が500℃未満では、未固溶のSiあるいはMgが残存するため、溶体化熱処理および人工時効処理後に適度な析出物分布を得ることができず、所望の耐力および応力緩和特性を得ることができない。一方、570℃を超えると、板表面で局部的な溶融(バーニング)が生じてしまう。さらに好ましくは、520〜550℃である。
溶体化熱処理工程S4における前記熱処理温度での保持時間については、100秒以内(0秒でもよい)である。100秒を超えると、その効果が飽和するとともに生産性が低下してしまうからである。
なお、保持時間が0秒とは、溶体化温度に到達後、すぐに冷却した場合を示す。
昇温速度を前記速度以上とすることにより、Cube方位が適切に発達するのをより確実なものとすることができる。また降温速度を前記速度以上とすることにより、所望の強度を確実に得ることができる。
冷間圧延工程SRは、図3(a)に示すように、熱間圧延工程S3→冷間圧延工程SR1→溶体化熱処理工程S4→冷間圧延工程SR2→という順序で2回行ってもよいし、図3(b)に示すように、熱間圧延工程S3→冷間圧延工程SR1→溶体化熱処理工程S4→という順序で1回行ってもよいし、図3(c)に示すように、熱間圧延工程S3→溶体化熱処理工程S4→冷間圧延工程SR2→という順序で1回行ってもよい。
そして、冷間圧延工程SR(SR1、SR2)では、熱間圧延工程S3後、または、溶体化熱処理工程S4後の圧延板に再結晶温度以下(例えば、常温)で圧延を施す。
人工時効処理工程S5では、溶体化熱処理工程S4で溶体化熱処理を施した圧延板、または、冷間圧延工程SR2で冷間圧延を施した圧延板に、所定温度・所定時間で人工時効処理を施す。
人工時効処理工程S5における熱処理温度については、特に限定されないが150〜250℃であることが好ましい。150℃未満であると所望の耐力、応力緩和特性を得ることができず、250℃を超えると析出物が粗大化して耐力、応力緩和特性が低下するからである。また、熱処理時間についても、特に限定されないが1〜30時間であることが好ましい。1時間未満であると特に量産時を想定した場合にはコイルあるいはシート内での不均一な温度分布を生じ、材料特性が不安定となりやすい。生産性を考慮して30時間を上限とする。
[供試材の作製]
表1に示す組成のアルミニウム合金(合金1〜22)を、溶解し、半連続鋳造にて鋳塊を作製し、面削処理をした。この鋳塊に、表2に示す条件で均質化熱処理を行ったのち、圧延率99%の熱間圧延を施して、熱間圧延板とした。その後、冷間圧延を施し(一部の供試材を除く)、表2に示す条件で溶体化熱処理を行った。そして、溶体化熱処理後、冷間圧延を施し(一部の供試材を除く)、表2に示す人工時効処理を施すことで(供試材32は施さない)、供試材(厚さ2.0mm)を作製した。
なお、供試材8、9、25については、1回均熱で行い、供試材1〜7、10、11、14〜24、27、28、30、31については、2回均熱で行い、供試材12、13、29については、2段均熱で行った。
(平均結晶粒径の測定)
供試材の表面を0.05〜0.1mm機械研磨、電解エッチングし、水洗・乾燥した後に、光学顕微鏡にて100倍で写真撮影した。そして、この顕微鏡写真から圧延方向に切片法を用いて平均結晶粒径の値を算出した。なお、切片法を用いた測定では、1測定ライン長さを0.95mmとし、1視野当たり各3本で合計5視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとした。
供試材の表面を0.05〜0.1mm機械研磨し、水洗・乾燥した後に、走査電子顕微鏡(SEM)にて観察倍率500倍、20視野で写真撮影した。得られたSEM組織を画像解析することにより、金属間化合物(Al−Fe−Si系およびMg−Si系金属間化合物)の最大長さが3μmを超える化合物数をカウントし、面積1.0mm2あたりの数を算出した。そして、20視野の其々において算出した化合物数の平均値を算出した。
ここで、金属間化合物は、走査電子顕微鏡(SEM)の組成(COMPO)像において母相とのコントラストで識別でき、Al−Fe−Si系金属間化合物はAl母相より白く写り、Mg−Si系金属間化合物はAl母相より黒く写る。
なお、最大長さとは、板表面において其々の金属間化合物が呈する最も大きな直径である。また、ここでのAl−Fe−Si系金属間化合物とは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を含む概念である。
供試材から引張方向が圧延方向と垂直になるようにJIS5号の試験片を切り出した。この試験片を用いて、JISZ2241:2011に準拠して引張試験を実施し、引張強さ、耐力(0.2%耐力)、および伸びを測定した。
なお、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
導電率の測定は、日本フェルスター株式会社製の渦流導電率測定装置[型式「シグマテストD2.068」]によって測定した。また、導電率の測定は、供試材表面の互いに間隔を100mm以上開けた任意の5箇所で行った。そして、本発明における導電率は、測定された各導電率を平均化したものとした。この伝導率の値が45.0%IACS以上であると、電気接続部品としての導電性能を確保できると評価した。
供試材から試験片長手方向が圧延方向と垂直になるようにJIS3号(JISZ2204)の試験片を切り出した。この試験片を、JISZ2248:2006に準拠してVブロック法により曲げ試験を実施し(図3参照)、曲げ加工性を評価した。なお、曲げ試験は、θ(曲げ角度):90°、r(内側曲げ半径):0mm、t(供試材板厚):2mmという条件で実施した。
曲げ試験後の曲げ部(湾曲部、幅:30mm)の割れの発生状況を観察し、5枚の試験片のうち、全ての試験片において肌荒れおよび割れとも発生しなかったものを極めて良好(○)、いずれか1枚以上に許容レベルのわずかな肌荒れまたは割れが生じたものを良好(△)、顕著な肌荒れまたは亀裂長さ2mm以上の割れが1枚以上に発生したもの(×)、または亀裂長さ2mm以上の割れが5枚すべてに生じたもの(××)を不良と評価した。
応力緩和率は、片持ち梁方式によって測定した。即ち、長手方向が、板材の圧延方向に垂直方向(T.D.)となるように、各実施例及び比較例の板材を幅10mm、長さ150mmの短冊状試験片に切り出し、その一端を剛体試験台に固定し、試験片の各長手方向に合わせて、固定端に0.2%耐力の80%に相当する表面応力を負荷した。スパン長さは、日本伸銅協会技術標準(JCBA−T309:2004)に規定されている「銅及び銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法」により算出した。一端部が剛体試験台に固定され、固定端からスパン長さに離隔した位置にたわみを与えた状態で、各試験片を一定温度に加熱したオーブン中に保持した後に取り出し、たわみ量d(10mm)を取り去ったときの永久ひずみδを測定し、応力緩和率RS(RS=(δ/d)×100)を測定した。加熱条件は、例えば(社)自動車技術会のJASOにおいて、150℃で1000時間の加熱条件が規定されている。
150℃×1000時間での応力緩和率が30%以下のものを極めて良好(○)、30%を超え、60%以下のものを良好(△)、60%を超えるものを不良(×)と評価した。
供試材1〜20については、本発明の規定する要件を満たしていることから、内曲げR=0mmと非常に厳しい曲げ加工条件とした場合にも、曲げ加工性が良好(△)以上という評価となるとともに、電気接続部品に要求される応力緩和特性を有するという評価となった。
供試材23(合金17)は、Mgの含有量が本発明で規定する数値範囲の下限値未満であるとともに、平均結晶粒径が大きかったため、導電率が45.0%IACS未満となり、導電率が不良となるとともに、曲げ加工性が不良であり、応力緩和性に優れないという結果となった。
供試材25は、平均結晶粒径が大きかったため、曲げ加工性が不良という結果となった。
供試材27は、金属間化合物数が多かったため、曲げ加工性が不良という結果となった。
供試材29は、溶体化熱処理の熱処理温度が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えてしまったため、バーニングが発生してしまい、以降の製造および試験を行うことができなくなった。
供試材31(合金20)は、Tiの含有量が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えているとともに、金属間化合物数が多かったため、導電率が45.0%IACS未満となり、導電率が不良となるとともに、曲げ加工性が不良という結果となった。
また、供試材33(合金22)は、Cuの含有量が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えているとともに、金属間化合物数が多かったため、曲げ加工性が不良という結果となった。
1a 連結部
また、本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金が、Cu:0.10質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Ti:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
また、本発明に係る導電用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金は、Mn:0.10質量%以下、Cr:0.10質量%以下、Zn:0.10質量%、Zr:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
鋳造工程S1では、前記の成分組成であるアルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して厚さ400〜600mm程度の鋳塊とし、必要に応じて面削を行う。
また、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金は、Mn:0.05質量%以下、Cr:0.05質量%以下、Zn:0.05質量%、Zr:0.05質量%以下のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
Claims (7)
- Si:0.3〜1.5質量%、Mg:0.3〜1.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、
板表面における圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下、最大長さが3μmを超える金属間化合物が板表面において1500個/mm2以下であることを特徴とする導電用アルミニウム合金板。 - Cu:0.10質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Ti:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の導電用アルミニウム合金板。
- Mn:0.10質量%以下、Cr:0.10質量%以下、Zn:0.10質量%、Zr:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電用アルミニウム合金板。
- Si:0.3〜1.5質量%、Mg:0.3〜1.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊を製造する鋳造工程と、
前記鋳塊に500〜570℃、1〜24時間の均質化熱処理を施す均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理を施した鋳塊に、最終圧延パスの終了温度が300〜360℃である複数のパスからなる圧延を施す熱間圧延工程と、
500〜570℃、100秒以下保持する溶体化熱処理を施す溶体化熱処理工程と、
を順に行うことを特徴とする導電用アルミニウム合金板の製造方法。 - 前記各工程のうち最後の工程の後に、人工時効処理を施す人工時効処理工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の導電用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記アルミニウム合金は、Cu:0.10質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Ti:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の導電用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記アルミニウム合金は、Mn:0.10質量%以下、Cr:0.10質量%以下、Zn:0.10質量%、Zr:0.10質量%以下のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の導電用アルミニウム合金板の製造方法。
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