JP3556948B2 - 磁気共鳴イメージング用の円錐台形磁石 - Google Patents

Description

発明の背景
本発明は一般に磁気共鳴イメージングに関するものであり、更に詳しくは複数の冷却された超伝導コイルを使用する開放型円錐台形磁石構成に関するものである。
磁気共鳴イメージング（MRI）は現在、広く受け入れられている医用診断手順であり、その使用はますます普及しつつある。MRIシステムでは、MR画像を作成するために一様な磁界と無線周波放射が必要とされる。磁界を形成するため、様々な型の磁石が現在使用されている。どんな型の磁石を使用するにしても、磁界の一部が非常に均一であることが必要である。ここではイメージング容積と呼ぶ磁界のこの部分は、イメージングの対象領域をカバーする磁界の部分である。イメージング容積内の磁界の均一性は、上質の画像を得るために必要である。したがって、比較的大きなイメージング容積を作り得る磁石を持つことが、多くのイメージング用途で有利である。
現在、全身用イメージング用として最も普通に使用される磁石は、比較的狭い中心内腔（bore）を有する長い円筒構造の中に収容されるように構成されている。狭い内腔は、患者がイメージングのために入らなければならない閉じた小室を形成する。通常、これらの構造は長さが約2.4メートルで、内腔の直径が約１メートルである。これらの円筒形の構成は多くの有利な特徴を有するが、難点もある。たとえば、かなりの割合の患者が通常のMRIシステムの閉塞された感じに敏感である。これらの患者にとっては、MRIプロセスは不快であるか、または耐え難いものですらある。更に患者によっては、単に大き過ぎるために通常のMRIシステムの狭い内腔に入らないことがある。患者をIVシステム等の医用装置に接続したままにしなければならない場合には、患者を閉じた小室に入れるのにも困難が生じ得る。通常の閉じたシステムは獣医用として使うのも難しい。多くの動物は閉じた小室をこわがるからである。
通常の閉じたシステムに比べて出入りを容易にするための代案として、種々の開放型MRI磁石が提案されてきた。たとえば、1989年10月24日発行の発明者キンヤ・マツタニ（Kinya Matsutani）の米国特許第4,875,485号、および発明者エバンゲロス・ティー・ラスカリス（Evangelos T.Laskaris）の米国特許第4,924,198号はともに、間隔を置いて平行に配置された二つの超伝導コイルを有する磁石集合体を示している。二つのコイルの間の開放空間は患者を受け入れるのに適しており、閉所恐怖症の反応を引き起こしにくい。これらの構成は有効ではあるが、均一度はもっと向上できるはずである。したがって、通常のシステムより開放感があって、均一度のすぐれたより大きなイメージング容積を形成するMRI装置を提供することが望ましい。
発明の概要
したがって、本発明の一つの目的は全身用MRイメージング用の、閉じた空間に敏感な患者を含むすべての患者の出入り（アクセス）を容易にする構成を提供することである。
更に詳しく述べると本発明の一つの目的は、大きなイメージング容積の中に非常に均一な磁界を維持するMRイメージング用の開放型円錐台形磁石装置を提供することである。
更に本発明の一つの目的は、獣医学用のMRイメージングを利用できるようにすることである。
本発明ではこれらの目的および他の目的を達成するため、円錐台形状に類似するように軸に沿って配置された直径の異なる複数の軸対称な超伝導コイルを設ける。すなわち、直径が逐次大きくなるような順序でコイルが配列される。この円錐台の形状により、通常の円筒形の磁石の場合に比べて患者出入り用の著しく大きな開口が得られる。更に全体の長さは、通常の磁石の長さに比べてずっと小さい。広い開口と短い長さのこの組み合わせにより、患者の出入りが容易になり、開放感が得られる。更に、装置を水平面に対して傾けて、開放感を増すこともできる。
本発明の他の目的および利点は、付図を参照して以下の詳細な説明および請求の範囲を読むことにより明らかとなるはずである。
発明と考えられる主題は請求の範囲に記載してあるが、本発明は、付図を参照した以下の説明から最も良く理解することができよう。
【図面の簡単な説明】
図１は本発明のMRI磁石の斜視図である。
図２は本発明の第一の実施例を示す断面図である。
図３は本発明の第二の実施例を示す断面図である。
図４は図３の実施例の磁石を傾斜させた変形を示す断面図である。
発明の詳細な説明
図を通じて、同じ参照番号は同じ素子を表す。図１は本発明によるMRI磁石10を示す。磁石10には、外表面がほぼ円筒形のシェルまたはケーシング12が含まれている。ケーシング12内には、超伝導磁石、常伝導磁石、または永久磁石のような磁気的手段が収容されている。後で述べるように、超伝導磁石が好ましい。内腔14が磁石10の縦軸に沿って形成され、磁石10の前面20から後面22まで伸びる。内腔は、前面20に比較的大きな開口を形成し、後面22により小さな開口を形成する。したがって、内腔14の内表面はより大きな開口からより小さな開口へ先細になるので、ほぼ円錐台の形（すなわち、切頭円錐の形）が形成される。イメージングのため内腔14内に患者18を支持するために、内腔14の中に水平ベッド16が配置される。MRイメージングの分野で知られているように、MR画像を得るためにRFコイルおよび勾配コイル（図示しない）が設けられる。
磁石10の前面20の開口の直径は、通常の円筒形のMRI磁石の内径に比べて著しく大きい。更に、磁石10の全長は通常の円筒形の磁石の長さに比べて著しく短い。より大きな開口とより短い長さの組み合わせにより、患者にはより大きな開放感が与えられ、これにより、イメージングプロセスに伴う不安の多くが軽減される。先細になった内腔14が充分大きくて患者の頭または脚が容易に入るので、この構成では出入りが更にずっと容易になる。
図２は磁石10を更に詳しく示している。磁石10は、イメージング容積29がコイル群の内側に位置するように内腔14の縦軸に沿って間隔をおいて軸対称に配置された５個の超伝導コイル24−28を含むことが好ましい。本発明は特に５個のコイルに限定されず、充分な磁界強度と均一度を生じる適当などんな組み合わせでも使用することができる。図２に示すように、５個のコイルは内腔14の縦軸に沿って直径が逐次大きくなるような順序で配置される。すなわち、図２の最も左側にある第一のコイル24は直径が最も小さく、コイルの直径が逐次大きくなり、最も右側のコイル28は直径が最も大きくなる。
コイルはニオブスズ（Nb3Sn）超伝導材料を一様な層の巻線とした後、エポキシ含浸したもので作ることが好ましい。代りに、コイル24−28をニオブチタン（NbTi）で作り、ヘリウム内で動作させてもよい。磁石は外表面が円筒形の真空容器30の中に封入される。真空容器30の内表面は超伝導コイルによって形成される全体的な輪郭に従っている。これにより、内腔14のほぼ円錐台状の形状が形成される。電磁力によるコイルの動きを防止するように作られた支持構造（図示しない）によって、コイル24−28は定められた位置に保持される。この構造は、動作温度まで冷却されたとき、コイルをそれらの正しい位置に維持しなければならない。この構造は、コイル群を通じて一様な温度を維持するためにステンレス鋼のような熱伝導性材料で作ることが好ましい。
２段の低温冷却器、たとえばギフォード−マクマホン（Gifford−McMahon）サイクルで動作する低温冷却器によって、磁石は約10゜Kに冷却される。低温冷却器の第一段は、コイル群を取り囲む熱シールド（図示しない）に熱配置される。低温冷却器の第二段は支持構造に熱配置される。コイル、支持構造および熱シールドの特定の構成は当業者には一般に知られており、それら自身は本発明を構成しない。したがって、それらについて更に詳細に説明する必要はない。
図２の実施例の好ましい構成では、磁石10の前面20の開口の直径は1.86メートルであり、後面22の開口の直径は0.74メートルである。磁石10の全長は1.4メートルである。コイル24、25、26および28はすべて同じ円周方向に電流を通すが、第四のコイルは逆の円周方向に電流を通す。中心磁界強度が0.5テスラのとき、この構成の均一度の計算値は、40cmのイメージング容積で41ppmであり、30cmのイメージング容積で7ppmである。
図３は本発明の第二の実施例を示す。この実施例では、コイル24−28はやはりほぼ円錐台形の内腔14を形成するが、図２の実施例と異なり、完全に直径が逐次大きくなる順序に配置されていない。図３でわかるように、第四のコイル27は直径が第三のコイル26に比べて少し小さい。ただし、第五のコイル28は他のすべてのコイルより大きい。この構成でも、特大の患者が前面20の開口および内腔14の円錐台形の内表面の中に出入りすることができ、これにより、磁石10に所望の開口感が得られる。非常に良好な均一のイメージング容積29を提供するこの実施例の好ましい構成は、直径の大きな開口が1.85メートル、直径の小さい開口が0.85メートル、全長が1.4メートルである。コイル24、25、26、および28はすべて同じ円周方向に電流を通すが、第四のコイル27は反対の円周方向に電流を通す。磁界強度が0.5テスラの場合、この構成の均一度の計算値は、40cmのイメージング容積で26.8ppm、30cmのイメージング容積で5.2ppmである。
図４は図３の実施例を少し変形したものである。磁石10の基部を水平面に対して傾けることにより、内腔14の上表面と患者を支持するベッド16との間の傾斜角度を大きくする。この構成では、ベッド16上に横たわっている患者にはより大きな開放感が得られ、イメージング手順の間に生じ得る不安感が更に軽減される。図４でわかるように、ベッド16はイメージング容積29に隣接した状態に維持されて、患者のイメージングが行えるように位置決めされる。しかし磁界の方向がもはやベッド16に平行でないという点を補償するように、RFコイルおよび勾配コイルを調整しなければならない。
以上、大きな均一なイメージング容積を形成しつつ、出入りが容易で、開放感が得られるMRイメージング用の円錐台形の磁石について説明してきた。本発明の特定の実施例について説明したが、熟練した当業者には明らかなように請求の範囲に規定された本発明の趣旨と範囲を逸脱することなくこれらの実施例に種々の変形を加えることができる。

Claims (16)

1. 直径の異なる複数の軸対称の超伝導コイルを含み、これらのコイルは軸に沿って、かつ、間隔を置いて、直径が逐次大きくなる順序で配置されており、小さな直径を持つコイルが、前記軸に沿った第１の端に配置され、大きな直径を持つコイルが、前記軸に沿った第２の端に配置されている全身磁気共鳴イメージング用磁石アッセンブリ。
2. 直径の異なる複数の軸対称の超伝導コイルを含み、これらのコイルがほぼ円錐台形を形成するように配列されている全身磁気共鳴イメージング用磁石アッセンブリ。
3. 上記磁石アッセンブリの全長が約1.4メートルである請求項１または２に記載の磁石アッセンブリ。
4. 上記複数のコイルが５個のコイルよりなる請求項１または２に記載の磁石アッセンブリ。
5. 上記複数のコイルの内の一つのコイルの電流の方向が、残りのコイルの電流とは逆の方向である請求項１または２に記載の磁石アッセンブリ。
6. 上記軸が水平面に対して傾けられている請求項１記載の磁石アッセンブリ。
7. 上記コイルは軸に沿って配置されており、上記軸が水平面に対して傾けられている請求項２記載の磁石アッセンブリ。
8. 直径の異なる複数の軸対称の超伝導コイルを含み、これらのコイルがほぼ円錐台形を形成するように配列されている全身磁気共鳴イメージング用磁石アッセンブリと、
   患者を受け入れる内腔を有し、内部に前記磁石アッセンブリが配置されるケーシングとをそなえた全身磁気共鳴イメージング用磁気共鳴イメージング装置。
9. 上記内腔の中には患者支持用の水平ベッドが配置されている請求項８記載の磁気共鳴イメージング装置。
10. 上記内腔の縦軸が上記ベッドに対して傾けられている請求項９記載の磁気共鳴イメージング装置。
11. 上記内腔の最も広い直径が約1.86メートルである請求項８記載の磁気共鳴イメージング装置。
12. 上記装置の全長が約1.4メートルである請求項８記載の磁気共鳴イメージング装置。
13. 上記磁石が直径の異なる複数の超伝導コイルを含んでいる請求項８記載の磁気共鳴イメージング装置。
14. 上記複数のコイルが５個のコイルよりなる請求項13記載の磁気共鳴イメージング装置。
15. 上記複数のコイルの内の一つのコイルの電流の方向が、残りのコイルの電流とは逆の方向である請求項13記載の磁気共鳴イメージング装置。
16. 上記複数のコイルは直径が逐次大きくなる順序で、かつ、間隔を置いて、配置されており、小さな直径を持つコイルが、前記軸に沿った第１の端に配置され、大きな直径を持つコイルが、前記軸に沿った第２の端に配置されている請求項13記載の磁気共鳴イメージング装置。

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