JP3556232B2 - 超音波流量計 - Google Patents
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Description
本発明は、超音波により流体の流量の計測を行う超音波流量計に関するものである。
背景技術
従来のこの種の超音波流量計は、例えば特開平8−233628号公報が知られており、図27Aおよび図27Bに示すように、断面4が矩形の流路1の一部に超音波振動子2と3を対向するよう配置し、超音波振動子2から送信した超音波を超音波振動子3で受信するまでの伝搬時間と、超音波振動子3から送信した超音波を超音波振動子2で受信するまでの伝搬時間の差から流量演算手段5で流体の速度を算出するとともにその時の流体のレイノルズ数から流路1内の流速分布を類推し、補正係数を求め流量を演算していた。
しかしながら、従来の超音波流量計では、流路内壁面で反射された反射波と反射されずに伝搬する直接波の伝搬距離が異なるため、反射波と直接波に位相差が生じ、この反射波と直接波の合成波を受信波として観測しているので反射波と直接波の位相差により受信波の振幅が増減したり、受信波の周期が変化してしまい、測定精度や測定可能な流量範囲が狭くなるという課題を有していた。
発明の開示
本発明は上記課題を解決するするために、直接波と反射波との間の位相差が測定結果に与える影響が低減されるように、流量測定部と一対の超音波振動子を構成したものである。
上記発明によれば、流路測定部内での反射波の影響を小さくすることができるので広範囲にわたって測定精度が向上できる。
本発明の第1の形態の超音波流量計は、一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて、流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部の壁面によって反射される反射波が前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記流量測定部と前記一対の超音波振動子とが構成されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第2の形態の超音波流量計は、超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部は当該流量測定部の壁面に反射することなく前記流量測定部を流れる流体中を伝搬する直接波と前記流量測定部の壁面によって反射される反射波との間の位相差が測定結果に影響を与える構成で、前記直接波と前記反射波との位相差が前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記流量測定部と前記一対の超音波振動子とが構成されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第3の形態の超音波流量計は、超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部は当該流量測定部の壁面に反射することなく前記流量測定部を流れる流体中を伝搬する直接波と前記流量測定部の壁面によって反射される反射波との間の位相差が測定結果に影響を与える構成で、前記直接波と前記反射波との位相差が前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記一対の超音波振動子の周波数と、前記一対の超音波振動子間の距離と、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータとの組合せによって特徴づけられるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第4の形態の超音波流量計は、第3の形態の超音波流量計において、前記直接波は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線に沿って伝搬する波であり、前記反射波は、前記一対の超音波振動子の中心と前記流量測定部の壁面上の点とを結ぶことによって形成される二等辺三角形の二等辺に沿って伝搬する波であり、前記直接波の伝搬距離と前記反射波の伝搬距離との差から生じる伝搬位相差が3π/2以上であるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第5の形態の超音波流量計は、第3の形態の超音波流量計において、前記直接波は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線に沿って伝搬する波であり、前記反射波は、前記流量測定部の壁面によって1回だけ反射される波であり、前記直接波の伝搬時間に比べ前記反射波の最短伝搬時間が長くなるよう前記一対の超音波振動子の有効放射面の1つの辺あるい直径を前記流量測定部の高さより短くしたため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第6の形態の超音波流量計は、第4または第5の形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の周波数は所定値以上に設定されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、時間分解能も向上できるので、さらに高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第7の形態の超音波流量計は、第3の形態の超音波流量計において、前記直接波は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線に沿って伝搬する波であり、前記反射波は、前記一対の超音波振動子の中心と前記流量測定部の壁面上の点とを結ぶことによって形成される二等辺三角形の二等辺に沿って伝搬する波であり、前記直接波の伝搬距離と前記反射波の伝搬距離との差から生じる伝搬位相差が0.2π以下であるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第8の形態の超音波流量計は、第7の形態の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記流量測定部を複数の部分に分割する少なくとも1つ以上の分割板をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第9の形態の超音波流量計は、第8の形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の周波数は所定値以下に設定されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第10の形態の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの形態の超音波流量計において、前記流量測定部の断面形状は矩形であり、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータは前記矩形の高さであるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第11の形態の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの形態の超音波流量計において、前記流量測定部の断面形状は円であり、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータは前記円の直径であるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第12の形態の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線が前記流量測定部の断面の所定方向の中心線に対してシフトするように配置されるため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第13の形態の超音波流量計は、第12の形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の所定方向の中心線とは互いに平行であるため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第14の形態の超音波流量計は、第12の形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の所定方向の中心線とは所定の角度をなしているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第15の形態の超音波流量計は、第1または第2の形態の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記流量測定部の壁面によって1回だけ反射される反射波の発生を阻止する構成をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第16の形態の超音波流量計は、第15の形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の所定方向の中心線とは所定の角度をなしているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第17の形態の超音波流量計は、第1または第2の形態の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記流量測定部に設けられた少なくとも1つの構造体をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第18の形態の超音波流量計は、第17の形態の超音波流量計において、前記少なくとも1つの構造体は、前記一対の超音波振動子の近傍に配置されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第19の形態の超音波流量計は、第17の形態の超音波流量計において、前記少なくとも1つの構造体は、前記流量測定部の壁面に配置されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第20の形態の超音波流量計は、第1または第2の形態の超音波流量計において、前記流量測定部の壁面には、少なくとも1つ以上の凹部または凸部が設けられているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第21の形態の超音波流量計は、第20の形態の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記凹部を覆うメッシュ構造体をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第22の形態の超音波流量計は、第1または第2の形態の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記一対の超音波振動子の少なくとも一方の指向性を示す方向とが所定の角度をなすように配置されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第23の形態の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの形態の超音波流量計において、少なくとも前記流量測定部の上流側に流れの方向を整える整流手段を有しており、流量測定部内の流れの方向を均一化でき、さらに高精度な超音波流量計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施例1における超音波流量計の構成図である。
図2は、同流量計におけるa−a'線を横から見た断面図である。
図3は、同流量計におけるb−b'線を横から見た断面図である。
図4Aおよび図4Bは、流量測定部内での超音波の伝搬経路分布計算結果を示す図である。
図5Aおよび図5Bは、超音波の受信波の計算結果を示す図である。
図6は、同流量計における相対受信電圧を示す特性図である。
図7は、同流量計における受信電圧の変化率を示す特性図である。
図8は、本発明の実施例2における超音波流量計のa−a'線を横から見た断面図である。
図9は、同流量計におけるb−b'線を横から見た断面図である。
図10は、同流量計における相対受信電圧を示す特性図である。
図11は、同流量計における受信電圧の変化率を示す特性図である。
図12は、本発明の実施例3における超音波流量計のa−a'線を横から見た断面図である。
図13は、同流量計におけるb−b'線を横から見た断面図である。
図14は、本発明の実施例4における超音波流量計のb−b線を横から見た断面図である。
図15は、本発明の実施例5における超音波流量計のb−b'線を横から見た断面図である。
図16は、本発明の実施例6における超音波流量計の上面図である。
図17は、同流量計におけるc−c'線を横から見た断面図である。
図18は、同流量計におけるd−d'線を横から見た断面図である。
図19は、本発明の実施例7における超音波流量計のa−a'線を横から見た断面図である。
図20は、同流量計におけるb−b'線を横から見た断面図である。
図21は、本発明の実施例8における超音波流量計のa−a'線を横から見た断面図である。
図22は、同流量計におけるb−b'線を横から見た断面図である。
図23は、本発明の実施例9における超音波流量計のa−a'線を横から見た断面図である。
図24は、同流量計におけるb−b'線を横から見た断面図である。
図25は、本発明の実施例10における超音波流量計を上から見た断面図である。
図26は、本発明の実施例11における超音波流量計の配管への取り付け状態を示す局所断面図である。
図27Aおよび図27Bは、従来の超音波流量計の構成図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお図面中で同一符号を付しているものは同一のものであり、詳細な説明は省略する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の超音波流量計の構成図である。また図2は図1の流路6のa−a'線を横から見た断面図である。図1において、6は流路で、7は流量測定部、8、9は流路6の側壁部で、10、11は側壁部8、9に取り付けられた超音波振動子である。12は超音波振動子10、11に接続された計測部で、13は計測部12に接続された計算部である。図2において、14は流路6の下板部で、15は側壁部8、9に接続された上板部である。また流量測定部7の断面形状は矩形で、幅はW0、高さはH0である。
以上のように構成された超音波流量計の流路の作製方法の一例について図1、図2を用いて説明する。流路6を構成する側壁部8、9、下板部14、上板部15に用いる材料は被測定流体に対して化学変化を生じない材質を用いる。本実施例では被測定流体を例えば空気としたため、材質にはABS樹脂を選択した。側壁部8、9の端面にシール材を介して上板部15をネジどめして、矩形断面の流量測定部7を構成する。また超音波振動子10、11は送受波面が相対するよう側壁部8、9に設けられた取り付け口10a、11aにシール材を介して固定する。
以上のように構成された超音波流量計についてその動作を説明する。超音波振動子10と超音波振動子11の中心を結ぶ距離をLとし、この直線と流れの方向である流量測定部7の長手方向となす角をθとする。また被測定流体である空気の無風状態での音速をC、流量測定部7内での空気の流速をVとする。流路6の上流側に配置された超音波振動子10から送信された超音波は流量測定部7を斜に横断し、下流側に配置された超音波振動子11で受信する。このときの伝搬時間t1は、
で示される。次に送信・受信する超音波振動子を切り替え、超音波振動子11から超音波を送信し、超音波振動子10で受信する。このときの伝搬時間t2は、
で示される。t1とt2の式から空気の音速Cを消去すると、
の式が得られる。Lとθが既知ならば、計測部12にてt1とt2を測定すれば流速Vが求められる。
この流速Vから流量Qは、流量測定部7の断面面積をS、補正係数をKとすれば、計算部13で、
Q=KSV
を演算し、流量を求めることができる。
以上のような動作原理で流量を計測する超音波流量計の流量測定部7での超音波の伝搬について図3を用いて説明する。図3は図1の流路6のb−b'線を横から見た断面図である。
超音波振動子10には指向性があるため送信された超音波は一般的に広がりながら流量測定部7を伝搬する。このため超音波振動子11で受信される超音波は、例えば流量測定部7内の伝搬経路17に沿って伝搬する直接波と、伝搬経路18のように上板部15の内壁面で1回反射して受信される反射波が存在する。ここで、伝搬経路17、18は代表的な伝搬経路であり、伝搬経路17以外の直接波や伝搬経路18以外の反射波も存在し、例えば下板部14で反射されて伝搬する反射波や反射回数も1回だけでなく2回以上反射して受信される反射波も存在する。この結果超音波振動子11で受信される受信波は、直接波と反射波の合成波として観測される。ここで、直接波と反射波は伝搬経路17、18が示すように伝搬距離差が生じる。伝搬経路17と伝搬経路18の伝搬距離差をΔLとすると、
で示される。超音波振動子の波長λより代表伝搬経路17、18の伝搬距離差を伝搬位相差Δθに換算すると、
が得られる。このように流量計側部7の内部を伝搬する超音波に伝搬位相差が存在するため、全ての伝搬経路を伝搬する直接波と反射波の重ねあわせである受信波は伝搬位相差による干渉の影響を受けると考えられる。
そこで直接波に対する反射波の影響を推定するため、直接波と反射波の伝搬経路分布およびそれぞれの波形の計算を行った。本計算では超音波振動子10、11の放射面形状を正方形(一定)、超音波振動子10、11の距離をL、流量測定部7は無限に広い2枚の平行平板からなると仮定した。また被測定流体の流れは無いものとする。
伝搬経路17、18の伝搬位相差が例えば0.7π〜2.2πとなるように高さ(H0)を変えた場合の、超音波振動子10から送信され超音波振動子11で受信される超音波の伝搬経路分布を求めた計算結果を図4Aおよび図4Bに示す。直接波を実線、1回反射の反射波を破線、2回反射の反射波を1点鎖線とする。図4Aおよび図4Bの横軸はそれぞれの伝搬経路の伝搬距離、縦軸は相対的な経路別強度を示している。
直接波の伝搬経路分布は超音波振動子10、11の形状が一定であるため変化が見られないが、1回反射波の伝搬経路分布は直接波より広いうえ、伝搬位相差が大きいほうが広い傾向を示している。2回反射の反射波の伝搬経路分布は1回反射よりもさらに広い。また直接波の経路別強度が最も大きくなる距離は伝搬経路17の距離とほぼ等しく、1回反射の反射波の経路別強度が最も大きくなる距離も伝搬経路18の距離とほぼ等しい。
次に図4Aおよび図4Bの計算結果に、超音波振動子10、11のパルス応答特性を加えて計算した受信波形を図5Aおよび図5Bに示す。ただし超音波振動子10、11の周波数は270kHzとし、直接波を実線、1回反射の反射波を破線、2回反射の反射波を1点鎖線とする。伝搬位相差が大きいほうが1回反射の反射波の振幅は小さい。また2回反射の反射波は1回反射の反射波よりさらに小さい。これは図4Aおよび図4Bに示されるように代表伝搬経路17、18の伝搬位相差が大きいほど、伝搬経路分布が広くかつ傾斜がなだらかなため、全ての伝搬経路について考えると伝搬位相差が広範囲に存在し、反射波同士の干渉により打ち消しあっている。
また図5Aおよび図5Bにおいて、伝搬位相差が大きいほうが直接波に対する反射波の立上り時間が遅くなる傾向が見られる。
以上の計算結果から、反射波の伝搬経路分布が広くなるよう高さ(H0)を設定すれば、あるいは伝搬経路17、18の伝搬位相差が大きくなるように高さ(H0)を設定すれば、直接波への影響を低減できる。さらに超音波振動子の放射面を高さ(H0)より小さくすれば、直接波に対する反射波の影響をさらに低減できる。
直接波に対する反射波の影響を確認するため、超音波振動子10、11の距離をL、超音波振動子10、11の有効放射面を正方形、幅をW0(一定)とし、高さ(H0)は伝搬経路17、18の伝搬位相差が0.7π〜2.2πとなるように設定し、空気を用いて行った実験結果を図6、図7に示す。なお超音波振動子10、11の周波数は270kHzとする。
図6、図7の横軸は(式5)を用い求めた直接波の伝搬経路17と反射波の伝搬経路18の伝搬位相差である。なおλは、超音波振動子10、11の流れの無い室温での波長とする。図6の縦軸は超音波振動子10、11を開空間に配置して測定した受信電圧に対する流路6に配置して測定した受信電圧の相対受信電圧である。ただし流れは無しとする。また図7の縦軸は流れが無しでの受信電圧に対する6000リットル/時間程度流して得られた受信電圧の変化率である。
流れが無しでの受信電圧は、図6から伝搬位相差がπ〜1.4π程度の時最も小さくなる傾向が見られる。流れによる受信電圧の変化率は図7から伝搬位相差が0.8π〜1.2π程度の場合、超音波振動子10で送信、超音波振動子11で受信での組合せは受信電圧が最も減少し、反対に超音波振動子11で送信、超音波振動子10で受信での組合せは受信電圧が最も増加する。このように受信電圧が増加する現象は、直接波と反射波の重ね合わせにおいて位相的な影響がなければ起こらない。
伝搬位相差が3π/2以上では超音波振動子10で送信、超音波振動子11で受信での組合せも、超音波振動子11で送信、超音波振動子10で受信での組合せも、両組合せともに受信電圧が減少する傾向が見られる。これは流れにより超音波振動子10、超音波振動子11の指向性が偏向されたためと考えられる。
以上の結果より、直接波の伝搬経路17と反射波の伝搬経路18の伝搬位相差が0.8π〜1.4π程度となる高さ(H0)では反射波の影響が大きいため広い測定範囲での高精度な流量計測が困難である。反対に伝搬位相差がおよそ3π/2以上となるように超音波振動子10、11の周波数、超音波振動子10、11の距離(L)、高さ(H0)の組合せを設定すれば反射波の影響を低減でき広い測定範囲での高精度な流量計測が可能となる。また距離(L)、高さ(H0)を一定とすれば、超音波振動子10、11の周波数を高く設定するほうが伝搬位相差を大きくできるので、さらに高精度な流量計測が可能となる。
以上のように、本発明によれば直接波と反射波の伝搬位相差が測定結果に影響を与えるような超音波流量計において、伝搬経路17と伝搬経路18の伝搬位相差が3π/2以上となるよう流量測定部7の高さ(H0)、超音波振動子10、11の距離(L)、周波数の組合せを選択することにより簡易な構成で反射波の影響を低減でき、被測定流体の流量を短時間に広範囲に高精度で測定することができる。また流量測定部7に凹部や凸部を設けないため、流れを乱したり、圧力損失を増加させることが少ない。
なお、実施例1では伝搬経路17、18の伝搬位相差が0.7π〜2.2πとなる高さ(H0)を選択したが、伝搬経路17、18の伝搬位相差が2.2π以上となる高さ(H0)を選択しても構わないし、超音波振動子10、11の距離(L)や周波数を選択しても構わない。
(実施例2)
以下、本発明の実施例2について、図8、9を参照しながら説明する。
図8は本発明の実施例2における超音波流量計の流路6のa−a'線を横から見た断面図である。図9は流路6のb−b'線を横から見た断面図である。図8において14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図2の構成と同様なものである。図9において10、11は超音波振動子で以上は図3の構成と同様なものである。上記のように構成された超音波流量計の流路の作製方法、動作原理は実施例1と同様となるため省略する。
圧力損失を少なくするため一般的に流量測定部7の断面積は、被測定流体を供給する配管の内径と同程度とし、流速分布の観点から高さ(H1)と幅(W1)のアスペクト比(W1/H1)を大きくしいたい場合がある。このような場合、伝搬経路19と伝搬経路20の伝搬位相差が3π/2以上となるような超音波振動子10、11の距離(L)、高さ(H1)、周波数の組合せを選択できない場合がある。そこで、アスペクト比を大きくしながら、反射波の影響を低減する手段について考える。
直接波に対する反射波の影響を確認するため、実施例1と同様に超音波振動子10、11の距離をL、超音波振動子10、11の有効放射面を正方形、幅をW1(一定)とし、高さ(H1)は伝搬経路19、20の伝搬位相差が0.05π〜0.7πとなるように設定し、空気を用いて行った実験結果を図10、図11に示す。なお超音波振動子10、11の周波数は270kHzとする。
図10、図11の横軸は(式5)を用い求めた直接波の伝搬経路19と反射波の伝搬経路20の伝搬位相差である。なおλは、超音波振動子10、11の流れの無い室温での波長とする。図10の縦軸は超音波振動子10、11を開空間に配置して測定した受信電圧に対する流路6に配置して測定した受信電圧の相対受信電圧である。ただし流れは無しとする。また図11の縦軸は流れが無しでの受信電圧に対する6000リットル/時間程度流して得られた受信電圧の変化率である。
図10では伝搬位相差が小さくなるど受信電圧は小さくなっている。これは超音波振動子10、11の有効放射面を一定としたため、高さ(H1)を低くすることにより、下板部14、上板部15で超音波振動子10、11の一部分が遮られたためと考えられる。
図11では伝搬位相差が0.2π以上では超音波振動子10で送信、超音波振動子11で受信での組合せと超音波振動子11で送信、超音波振動子10で受信での組合せの変化率に差が見られる。これに対し伝搬位相差が0:2π以下では、超音波振動子10で送信、超音波振動子11で受信での組合せと超音波振動子11で送信、超音波振動子10で受信での組合せの変化率がほぼ等しくなっている。このように変化率が等しくなったのは、流れにより超音波の伝搬速度が早くなる方向でも遅くなる方向でも、直接波に対する反射波の重なり合わせに位相的な影響がないこと意味し、直接波に対する反射波の影響が低減できたと考えられる。
以上の結果より、伝搬経路19と伝搬経路20の伝搬位相差をおよそ0.2π以下となるように超音波振動子10、11の周波数、超音波振動子10、11の距離(L)、高さ(H1)の組合せを設定すれば反射波の影響を低減でき広い測定範囲での高精度な流量計測が可能となる。また距離(L)、高さ(H1)を一定とすれば、超音波振動子10、11の周波数を低く設定するほうが伝搬位相差を小さくできるので、さらに高精度な流量計測が可能となる。
なお、実施例2では伝搬経路19、20の伝搬位相差が0.05π〜0.7πとなる高さ(H1)を選択したが、伝搬経路19、20の伝搬位相差が0.05π以下となる高さ(H1)を選択しても構わないし、超音波振動子10、11の距離(L)や周波数を選択しても構わない。
(実施例3)
以下、本発明の実施例3について、図面を参照しながら説明する。
図12は本発明の実施例3における超音波流量計の流路6のa−a'線を横から見た断面図である。図12において8、9、14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図2の構成と同様なものである。図2の構成と異なるのは、流量測定部の断面が分割板21a、21bで3分割され、分割流量測定部22a〜22cとなっている点である。
流量測定部7の断面積と被測定流体を供給する配管の内径と同程度としながら高さ(H2)と幅(W2)のアスペクト比(W2/H2)を大きくすると、流路6を小型化しにくい場合がある。そこで、流量計測部7の断面を複数に分割し、それぞれの分割流量測定部の高さと幅のアスペクト比を大きくする手段を考える。
まず超音波流量計の流路6の作製方法の一例について簡単に説明する。例えば高さ(H2)と幅(W2)とのアスペクト比(W2/H2)が5である流量測定部7に対し、厚み0.2mmのSUS製の分割板21a、21bを下板部14の内壁面に平行となるよう側壁部8、9に接着剤にて固定する。分割板21a、21bを側壁部8、9に固定した後、上板部15を側壁部8、9の端面にシール材を介してネジどめ固定する。なお分割流量測定部(22a、22c)のアスペクト比は約20、分割流量測定部(22b)のアスペクト比は約17となるように高さ(H2a、H2b、H2c)を設定する。
また分割流量測定部(22b)には伝搬経路23と伝搬経路24に約0.04πの伝搬位相差が生じ、分割流量測定部(22a)には伝搬経路25と伝搬経路26に約0.1πの伝搬位相差が生じるよう、超音波振動子10、11の距離(L)を選択する。なお超音波振動子10、11の有効放射面は正方形、周波数は270kHzとする。以上のように構成された超音波流量計への超音波振動子の取り付け方法、動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に分割流量測定部22内での超音波の伝搬について、図13に示すような伝搬経路23〜26を用いて説明する。なお伝搬経路23〜26は代表的な伝搬経路であり、実施例1と同様に図示されていない伝搬経路が存在する。図13は流路6のb−b'線を横から見た断面図である。
分割流量測定部22bにおいて、直接波は伝搬経路23のように伝搬し、反射波は伝搬経路24のように分割板21bで反射されながら伝搬する。また分割流量測定部22aでは、直接波は伝搬経路25のように伝搬し、反射波は伝搬経路26のように上板部15で反射されながら伝搬する。分割流量測定部22cの高さ(H2c)は分割流量測定部22aの高さ(H2a)と等しく設定してあるので、直接波と反射波の関係は分割流量測定部22aと同様になる。
超音波振動子11では分割流路(H2a、H2b、H2c)内を伝搬する全ての直接波と反射波の合成派を受信波として観測する。実施例2で示したように、直接波と反射波の伝搬位相差が0.2π以下となるように分割流量測定部(22a〜22c)の高さを設定したため、各分割流量測定部22a〜22c内での直接波と反射波の重なり合わせの位相的な関係は、流れにより影響を受けない。この結果、直接波に対する反射波の影響が低減できる。
上記構成のように流量測定部を3分割し、被測定流体である空気を約6000リットル/時問流して行った実験結果では、超音波振動子10で送信、超音波振動子11で受信での組合せの変化率と超音波振動子11で送信、超音波振動子10で受信での組合せの変化率がほぼ等しくなることを確認した。
以上のように、本発明よれば分割板により流量測定部を複数に分割することにより、反射波の影響を低減でき、さらに流れの安定化も図ることができ、被測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお実施例3では、流量測定部を3分割したが、直接波に対する反射波の位相差が小さくできるなら2分割でも4分割以上でも構わないし、高さ(H2a〜H2c)の高さは適宜変更して設定しても構わない。また全ての分割流量測定部に超音波が伝搬するとしたが、流量計測の精度が満足可能ならば全ての分割流量測定部に超音波を伝搬させる必要はない。
(実施例4)
以下、本発明の実施例4について、図面を参照しながら説明する。
図14は本発明の実施例4における超音波流量計の流路6のb−b'線を横から見た断面図である。図14において8、9、14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図3の構成と同様なものである。図3の構成と異なるのは、超音波振動子10、11の中心を結ぶ線27と高さ(H3)の中心線29が平行でかつ同一線上とならないように、超音波振動子10、11を側壁部8、9に配置している点である。
高精度な流量計を得るには反射波の影響を低減することが必要で、下板部14の内壁面からの反射波と上板部15から反射波に伝搬位相差を設けることを考える。その方法の1つとして、下板部14の内壁面からの反射波と上板部15から反射波が異なる位相で超音波振動子に到達するように、流量測定部28の高さ(H3)の中心線29に対し、一対の超音波振動子の中心を結ぶ線27を平行にシフトさせて配置する方法を選択した。
上記のように構成された超音波流量計の流路の作成方法の一例について説明する。例えば直接波の伝搬経路27と下板部14での反射波の伝搬経路30との伝搬位相差が0.7π、伝搬経路27と上板部15での反射波の伝搬経路31との伝搬位相差が2.2πとなるように、超音波振動子10、11を側壁部8、9にシール材を介してネジどめ固定する。また上板部15を側壁部8、9の端面にシール材を介してネジどめ固定する。なお超音波振動子10、11の距離、有効放射面形状、周波数、被測定流体は実施例1と同様とする。以上のように構成された超音波流量計の動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に流量測定部28での超音波の伝搬について、伝搬経路の一例を用いて説明する。直接波は中心を結ぶ線27に沿って伝搬し、反射波は下板部14の内壁面で反射される伝搬経路30と上板部15の内壁面で反射される伝搬経路31があり、超音波振動子11の中心付近で受信される。なお図示された直接波と反射波の伝搬経路は代表的な伝搬経路であり、図示されていない伝搬経路も実施例1と同様に存在する。中心を結ぶ線27と中心線29が一致している場合は、伝搬経路30と伝搬経路31の伝搬距離が等しいため伝搬位相差は生じない。しかし、中心を結ぶ線27と中心線29を一致させないと、伝搬経路30と伝搬経路31の伝搬距離が異なるため伝搬位相差が生じる。このため反射波同士が干渉の影響を受け、直接波に対する影響を低減させることが可能となる。
上記構成で空気を約6000リットル/時間流して行った実験では、図8の伝搬位相差が2.2πの結果とほぼ同様の結果になることを確認した。
以上のように、本発明によれば流量測定部の高さ(H3)の中心線に対し超音波振動子の中心を結ぶ線を平行にシフトさせて配置することにより、下板部と上板部で反射される反射波の伝搬位相差を変えることができ、直接波に対する反射波の影響を低減でき被測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお実施例4では直接波の伝搬経路27と下板部14での反射波の伝搬経路30との伝搬位相差が0.7π、伝搬経路27と上板部15での反射波の伝搬経路31との伝搬位相差が2.2πとなるように、超音波振動子の中心を結ぶ線27と流量計側部の高さ(H7)の中心線29を平行にシフトして配置するとしたが、上記条件に限定されるわけではなく、適宜変えて構成することができる。
(実施例5)
以下、本発明の実施例5について、図面を参照しながら説明する。
図15は本発明の実施例5における超音波流量計の流路6のb−b'線を横から見た断面図である。図15において8、9、14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図3の構成と同様なものである。図3の構成と異なるのは、超音波振動子10、11の中心を結ぶ線32と流量測定部36の高さ(H4)の中心線33とが所定の角度(θ4)となるように、超音波振動子10、11を側壁部8、9に斜めに配置している点である。
実施例4と同様に、高精度な流量計を得るには反射波の影響を低減することが必要で、下板部14の内壁面からの反射波と上板部15から反射波に伝搬位相差を設けることを考える。その方法の1つとして、一対の超音波振動子の中心を結ぶ線32と高さ(H4)の中心線33とが所定の角度(θ4)を有すよう超音波振動子10、11を配置する方法を選択した。
そこで上記のように構成された超音波流量計の流路の作成方法の一例について説明する。例えば高さ(H4)の中心線33に対し、超音波振動子10、11の中心を結ぶ線32が約2.5度だけ傾くように側壁部8、9に超音波振動子10、11をシール材を介してネジどめ固定する。また上板部15を側壁部8、9の端面にシール材を介してネジどめ固定する。なお超音波振動子10、11の距離、有効放射面形状、周波数、被測定流体は実施例1と同様とする。以上のように構成された超音波流量計の動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に流量測定部36での超音波の伝搬について、伝搬経路の一例を用いて説明する。例えば直接波は中心を結ぶ線32に沿って伝搬する。超音波振動子10の中心付近から下板部14と上板部15のそれぞれの方向に同じ角度で放射される伝搬経路34と伝搬経路35を反射波の代表例の1つとして考える。なお図示された直接波と反射波の伝搬経路は代表的な伝搬経路であり、図示されていない伝搬経路も実施例1と同様に存在する。伝搬経路34に沿って伝搬する超音波は下板部14で反射され、伝搬経路35に沿って伝搬する超音波は上板部15で反射される。伝搬経路34と伝搬経路35を伝搬する反射波は、伝搬距離が異なるため伝搬位相差が生じる。
中心を結ぶ線32と中心線33が一致している場合は、伝搬経路34と伝搬経路35の伝搬距離が等しいため伝搬位相差は生じず、超音波振動子11の同じ位置で受信していた。しかし、中心を結ぶ線32と中心線33が2.5度傾いているため、伝搬経路34と伝搬経路35の伝搬距離が異なり伝搬位相差が生じる。さらに超音波振動子11の異なる位置で受信される。このため反射波同士が干渉の影響を受け、直接波に対する影響を低減させることが可能となる。
なお実施例5では、高さ(H4)の中心線33に対し超音波振動子10、11の中心を結ぶ線32を約2.5度傾けるとしたが、上記条件に限定されるわけでなく、2.5度よりも大きくしても小さくしても構わない。
(実施例6)
以下、本発明の実施例6について、図面を参照しながら説明する。
図16は本発明の実施例6における超音波流量計の流路の上面図である。また図17は図16の流路のc−c'線を横から見た断面図である。また図18は図16の流路のd−d'線を横から見た断面図である。各図において、37は流路で、38は流路37の上板部で、39は上板部38に設けられた超音波振動子10の取付部aである。40は流路37の下板部で、41は下板部40に設けられた超音波振動子11の取付部bで、42、43は流路37の側壁部で、44は流量測定部である。
高精度な流量計を得るには反射波の影響を低減することが必要で、反射波の中でも特に1回反射の反射波の影響を低減することが重要となる。また流速分布の観点から、高さ(H5)と幅(W5)のアスペクト比(W5/H5)を大きくしたい場合もある。そこで流量測定部44の形状にかかわらず、流量測定部44内で1回反射が生じない位置に一対の超音波振動子を配置する方法について考える。
上記のように構成された超音波流量計の流路の作成方法の一例について説明する。流路37を構成する上板部38、下板部40、取付部39、41、側壁部42、43に用いる材料は被測定流体に対して化学変化を生じない材質を用いる。本実施例では被測定流体を例えば空気としたため、材質にはABS樹脂を選択した。まず上板部38の長軸方向と超音波振動子10の取付方向d−d'の角度(θ5)が例えば30度となるように取付部39を上板部38に接着固定する。下板部40の長軸方向と超音波振動子11の取付方向d−d'の角度(θ5)も30度となるように取付部41を上板部40に接着固定する。この上板部38を側壁部42、43の端面にシール剤を介してネジ止めし、断面形状が矩形の流量測定部44を構成する。次に超音波振動子10、11の中心を結ぶ線47とd−d'断面の高さ(H5)の中心線となす角(θ6)が30度となるように、取付部39、41に超音波振動子10、11をシール材45、46を介して固定する。なお超音波振動子10、11の距離、有効放射面形状、周波数は実施例1と同様とする。以上のように構成された超音波流量計の動作原理は実施例1と同様になるため説明を省略する。
次に流量測定部44内での超音波の伝搬について図18に示すような伝搬経路47〜49を用いて説明する。なお伝搬経路47〜49は代表的な伝搬経路であり、図示されていない伝搬経路も存在する。超音波振動子10から送信された直接波は伝搬経路47に沿って超音波振動子11に伝搬する。超音波振動子10から送信される超音波は一般的に広がりながら伝搬するため、伝搬経路48、49に沿って伝搬する超音波も存在する。しかし伝搬経路48に沿って伝搬した超音波は、下板部40で反射されたのち、流量測定部44の壁面でもう1回反射され超音波振動子11に到達することはできない。また伝搬経路49に沿って伝搬した超音波も側壁部42で反射されたのち、流量測定部44の壁面でもう1回反射され超音波振動子11に到達することはできない。このような位置関係に配置された超音波振動子10、11においては、流量測定部44で1回だけ反射されて受信される反射波は存在しない。この結果、直接波に影響を与える反射波は2回反射以上であり、2回反射以上の反射波が直接波に与える影響は1回反射の反射波に比べるとかなり小さいため、反射波の影響が低減できる。
上記のように構成した流量測定部44を用い、被測定流量である空気を約6000リットル/時間流して行った実験結果では、実施例1の伝搬位相差が2.2πと同等の結果になることを確認した。この結果より、流路37の長軸方向と流量測定部44の高さ(H5)方向のそれぞれに角度(θ5、θ6)を有し、1回反射の反射波が生じない位置に1対の超音波振動子10、11を配置すれば、流量測定部44の断面寸法に依存せずに被測定流体の流量を広範囲に高精度で測定することができる。
なお実施例6では、流路37の長軸方向と超音波振動子の取付方向d−d'の角度(θ5)が30度、一対の超音波振動子の中心を結ぶ線47と高さ(H5)の中心線とのなす角(θ6)が30度傾けるとしたが、上記条件に限定されるわけでなく、適当な角度に変えて構成することができる。
(実施例7)
以下、本発明の実施例7について、図面を参照しながら説明する。
図19は本発明の実施例7における超音波流量計の流路6のa−a'線を横から見た断面図である。図19において8、9、14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図2の構成と同様なものである。図2の構成と異なるのは、流量測定部52を層状に分割しない寸法を有す構造体50、51が側壁部8、9に配置されている点である。
反射波の影響を低減するため、反射波と直接波の伝搬位相差を所望の大きさに設定するよう流量測定部52に反射板を設ける方法について考える。
上記のように構成された超音波流量計の流路の作成方法の一例について説明する。例えば流量測定部52に対し、厚み0.2mm、長さ(L6)が7mmのSUS製の2枚の構造体50a、50bを下板部14の内壁面に平行となるよう超音波振動子10が配置されている側壁部8に接着剤にて固定する。同様に超音波振動子11が配置されている側壁部9にも構造体51a、51bを接着剤にて固定する。構造体50および構造体51を側壁部8、9に固定した後、上板部15を側壁部8、9の端面にシール材を介してネジどめ固定する。なお超音波振動子10、11の距離、有効放射面形状、周波数、被測定流体は実施例1と同様とする。以上のように構成された超音波流量計への超音波振動子の取り付け方法、動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に流量測定部52内での超音波の伝搬について、図20に示すような伝搬経路53、54を用いて説明する。なお伝搬経路53、54は代表的な伝搬経路であり、実施例1と同様に図示されていない伝搬経路も存在する。図20は流路6のb−b'線を横から見た断面図である。直接波は伝搬経路53に沿って伝搬する。また反射波は伝搬経路54のように構造体50a、下板部14で反射を繰り返しながら伝搬する。伝搬経路54で伝搬する反射波は、上板部15で一回のみ反射する伝搬経路より伝搬距離が延びる。また構造体51により受信を阻害される図示されていない反射波の伝搬経路も存在する。このため直接波に対する反射波の影響を低減することが可能となる。
以上のように、本発明よれば構造体により直接波と反射波の伝搬位相差を所望の大きさにすることができるため、反射波の影響を低減でき被測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお実施例7では構造体の厚みを0.2mm、長さ(L6)を7mm、SUS製としたが、上記条件に限定されるわけではなく、寸法、材質を適宜変えて構成することができる。また構造体50、51を側壁部8、9に接着固定するとしたが、側壁部8、9以外の場所に配置してもよい。また構造体の枚数を全部で4枚としたが、1枚以上ならば何枚でも構わない。
(実施例8)
以下、本発明の実施例8について、図面を参照しながら説明する。
図21は本発明の実施例8における超音波流量計の流路6のa−a'線を横から見た断面図である。図21において8、9、14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図2の構成と同様なものである。図2の構成と異なるのは、流量測定部56を層状に分割しない構造体55a、55bが下板部14、上板部15に配置されている点である。
高精度な流量計を得るには反射波の影響を低減することが必要で、反射波が受信されにくいよう流量測定部56に反射板を設ける方法について考える。
上記のように構成された超音波流量計の流路の作成方法の一例について説明する。例えば流量測定部56に対し、厚み0.2mm、長さ(L7)が1mmのSUS製の構造体55a、55bを下板部14、上板部15の内壁面に垂直で、幅(W7)の中央部あたりとなるよう接着剤にて固定する。構造体55を固定した後、上板部15を側壁部8、9の端面にシール材を介してネジどめ固定する。なお超音波振動子10、11の距離、有効放射面形状、周波数、被測定流体は実施例1と同様とする。以上のように構成された超音波流量計への超音波振動子の取り付け方法、動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に流量測定部56での超音波の伝搬について、図22に示すような伝搬経路57、58を用いて説明する。なお伝搬経路57、58は代表的な伝搬経路であり、実施例1と同様に図示されていない伝搬経路も存在する。図22は流路6のb−b'線を横から見た断面図である。超音波振動子10から送信された超音波は広がりながら伝搬し、例えば直接波は伝搬経路57に沿って伝搬する。また広がった超音波は上板部15や下板部14で反射され、超音波振動子11で反射波として受信される。しかし構造体55aを上板部15に設けることにより、例えば伝搬経路58の反射波は構造体55aにより伝搬を阻害される。このため、伝搬経路58での反射波は超音波振動子11では受信されない。反射波の伝搬経路は伝搬経路58以外にも存在するが、構造体55a、55bによって反射波の一部の伝搬が阻害できるため、直接波に対する反射波の影響を低減することが可能となる。
以上のように、本発明よれば構造体により反射波の一部の伝搬を阻害できるため、構造体を配置する位置および枚数を適切に選択することにより反射波の影響を低減でき被測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお実施例8では構造体55a、55bの厚みを0.2mm、長さ(L7)を1mm、SUS製で、幅(W7)の中央あたりに位置するとしたが、上記条件に限定されるわけではなく、寸法、位置、材質を適宜変えて構成することができる。また構造体55a、55bを下板部10、上板部15上に接着固定するとしたが、下板部14、上板部15以外の場所に配置しても構わない。また構造体を2枚配置したが、1枚以上ならば何枚でも構わない。
(実施例9)
以下、本発明の実施例9について、図面を参照しながら説明する。
図23は本発明の実施例9における超音波流量計の流路6のa−a'線を横から見た断面図である。図23において8、9、14、15は流路6の側壁部、下板部、上板部で、以上は図2の構成と同様なものである。図2の構成と異なるのは、下板部14に凹部59と、凹部59の上方にメッシュ構造体60を設けた点である。
流量測定部61の高さ(H8)と幅(W8)のアスペクト比(W8/H8)を大きくしながら反射波の影響を低減するため、流量測定部61に凹部を設け、さらにその凹部に流れを乱さないようメッシュ構造体を設ける方法について考える。
上記のように構成された超音波流量計の流路の作成方法の一例について説明する。例えばアスペクト比(W8/H8)が5である流量測定部61の下板部14の中央付近に、伝搬経路62と伝搬経路63の伝搬位相差が2.2πとなるよう凹部59をフライス盤を用い構成する。凹部59には被測定流体である空気の流れが生じないように、凹部59を覆うようにメッシュ構造体を上方に固定する。メッシュ構造体は超音波が透過するように、例えばメッシュサイズは100番程度とする。また伝搬経路62と伝搬経路64の伝搬位相差が1.2πとなるように、上板部15を、側壁部8、9の端面にシール材を介してネジどめ固定する。なお超音波振動子10、11の距離、有効放射面形状、周波数、被測定流体は実施例1と同様とする。以上のように構成された超音波流量計への超音波振動子の取り付け方法、動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に流量測定部61での超音波の伝搬について、図24に示すような伝搬経路の一例を用いて説明する。図24は流路6のb−b'線を横から見た断面図である。直接波は伝搬経路62に沿って伝搬する。一方下板部14での反射波は伝搬経路63のように凹部59の底部で反射され伝搬する。また上板部15での反射波は伝搬経路64のように反射され伝搬する。なお伝搬経路62〜64は代表的な伝搬経路であり、実施例1と同様に図示されていない伝搬経路も存在する。またメッシュ構造体60を透過せず、メッシュ構造体60の表面で反射される反射波も存在する。
伝搬経路62と伝搬経路63の伝搬位相差が2.2π、伝搬経路62と伝搬経路64の伝搬位相差が1.2πとしたため、それぞれの反射波の伝搬経路分布が異なり、下板部14と上板部15からの反射波同士が干渉の影響を受ける。このように下板部14の構成と上板部15の構成を非対称にすることにより、直接波に対する影響が低減できる。また凹部59にはメッシュ構造体60が設けてあるため、空気は凹部59を除く流量測定部61を流れ、流れに対し乱れを生じない。また超音波は凹部59を含む流量測定部61を伝搬させることができる。
以上のように、本発明よれば構造体により直接波と反射波の伝搬位相差を所望の大きさにすることができるうえ、測定流量範囲において安定した流速分布を実現できるため、反射波の影響を低減でき被測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお第9の実施例では伝搬経路62と伝搬経路63の伝搬位相差が2.2πとなるよう凹部59を設けたが、上記条件に限定されるわけではなく、適宜変えて構成することができる。また凹部59の上方に100番程のメッシュ構造体60を設けるとしたが、その他のメッシュ構造体でも構わないし、凹部59が流れに対し測定上問題になる影響を与えないなら設ける必要はない。また凹部59を下板部14の中央付近に設けるとしたが、反射波の影響を低減するため必要な場所に必要な数だけ設ければよく、上板部15にも設けてもいいし、凹部59だけでなく凸部を設けても構わない。
(実施例10)
以下、本発明の実施例10について、図面を参照しながら説明する。
図25は本発明の実施例10における超音波流量計の流路6を上から見た断面図である。図25において6は流路、8、9は流路6の側壁部で、以上は図1の構成と同様なものである。図1の構成と異なるのは、超音波振動子10、11の中心を結ぶ線65に対し超音波振動子10の中心方向66を上流側にθ10(約5度)、超音波振動子11の中心方向67を下流側にθ11(約5度)だけずらして配置した点である。流路の作成方法、超音波振動子の取り付け方法、動作原理は実施例1と同様なため省略する。また超音波振動子10、11の距離、放射面形状、周波数被測定流体は実施例1と同様とする。
一般的に超音波振動子の指向性は超音波振動子の中心方向に強い傾向がある。このため開空間では超音波振動子10、11の指向性を一致させて対向した場合、受信電圧は最も大きくできる。ところが流路6のような閉空間で超音波の送受信を行う場合、受信される反射派も比較的強い指向性の部分であるため大きな受信電圧となり、直接波に対する影響が大きくなってしまう。そこで、中心を結ぶ線65に対し中心方向66、67をθ10、θ11だけずらして超音波振動子10、11を配置する。このような配置では直接波の受信電圧は下がるが、反射波は比較的弱い指向性の部分となるので反射波の受信電圧も小さくなり反射波の影響を小さくすることが可能となる。
超音波振動子10の中心方向66を下流側に、超音波振動子11の中心方向67を上流側に約5度ずらした構成で実施例1と同様に空気を約6000リットル/時間流して行った実験では図7の伝搬位相差が2π程度と同程度の結果が得られた。
以上のように、本発明によれば超音波振動子の中心を結ぶ線と超音波振動子の中心線をずらして配置することにより、直接波に対する反射波の影響を低減でき被測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお実施例10では65超音波振動子の中心を結ぶ線に対し超音波振動子の中心方向66、67を5度ずらすとしたが、上記条件に限定されるわけではなく、角度を適宜変えて構成することができる。また超音波振動子10、11の中心線をずらす方向を流れの上流側、下流側としたが、下板部方向、上板部方向でも、どの方向の組み合わせでも構わない。
(実施例11)
以下、本発明の実施例11について、図面を参照しながら説明する。
図26は本発明の実施例11における超音波流量計の配管への取り付け状態を示す局所断面図である。図26において10a、11aは取り付け口で、14、15は流路6の下板部、上板部で、68は整流手段で、69は流量測定部で、70、71は配管である。図示していない流量測定部69の構成は、実施例1から実施例10のいずれかの構成と同様とする。実施例1から実施例10と異なるのは、流量測定部69に整流手段68を設けた点である。例えば整流手段68はアルミ製のハニカム構造体からなり、空気の流れにより移動しないよう下板部14、上板部15と図示していない側壁部に接着剤により接着固定する。超音波流量計の流路の組み立て方法、超音波振動子の取り付け方法、動作原理は実施例1と同様になるため省略する。
次に整流手段の動作について説明する。一般的に流量測定では流速分布や流れの方向を安定化するため、流量計測部の上流側に直径に対し十分長い(10倍程度)直管部を設ける。しかし超音波流量計を小型化や設置場所の制限により流量計測部69の上流側に直径に対し十分長い直管部を設けることは困難で、さらに配管70を流路6に垂直に取り付ける場合もある。このような構成では、空気は流れの方向が乱れた状態で流量測定部69を流れ、測定精度に影響を与えてしまう。
そこで、配管70から流量測定部69に流入する空気の流れを安定化するためハニカム構造を有す整流手段68を設ける。整流手段68を通過した空気は流れの方向が均一化され、下板部14や上板部15に対しほぼ平行となる。
以上のように、本発明によれば整流手段68を流量測定部69の上流側に設けることにより流れの方向を安定化することができ、実施例1から実施例10の反射波の影響を低減する手段と組みあわせることにより、測定流体の流量を短時間に高精度で測定することができる。
なお第11の実施例では整流手段68をアルミ製のハニカム構造体としたが、整流効果が得られるならばパイプ、網目構造体、平板でも構わないし、SUSのような金属や樹脂、複合体でも構わない。配管70、71を上板部15に垂直に取り付けるとしたが、上板部15以外の部位に取り付けても構わないし、また水平に取り付けても構わない。整流手段68を上流側に設けるとしたが、上流側と下流側の両方に設けても構わない。
また実施例1〜3、7では高さ(H0、H1、H2、H6)と超音波振動子10、11の高さが等しくなるよう図示しているが、高さ(H0、H1、H2、H6)より超音波振動子10、11の高さを低くしても高くしても構わない。
また実施例1〜5、7〜11では超音波振動子10、11を側壁部8、9に流れに対し斜めに設けるとしたが、流れが計測可能ならば側壁部8、9以外の場所に配置して構わないし、流れに対し平行となる位置に配置しても構わない。また流量測定部の断面形状を矩形としたが、超音波振動子10、11を流れに対し平行となる位置に配置するなら、円形や楕円形でも構わない。
また実施例1〜11では超音波振動子10、11の有効放射面は正方形としたが、上記条件に限定されるわけではなく、円形、楕円形、他の多角形でも構わない。また超音波振動子10、11の周波数は270kHzとしたが、上記条件に限定されるわけではなく、270kHz以上でも以下でも構わない。また流量測定部の断面形状を矩形としたが、上記形状に限定されるわけでなく、矩形の一部を変形した形状、矩形以外の多角形でも構わない。また被測定流体を空気としたが、空気以外の例えばLPガスや都市ガスのような気体や水のような液体でも構わない。また流路6の材質をABS樹脂としたが、被測定流体によって化学的変化を受けない材質ならばなんでもよく、被測定流体がLPガス、都市ガス等であればSUSやアルミダイカストのような金属でも構わない。圧力損失を少なくするため一般的に流量測定部の断面積は、被測定流体を供給する配管の内径と同程度とするとしたが、必要に応じて断面積を大きくしても小さくしても構わない。また本発明の超音波流量計を家庭用ガスメータを想定した超音波式ガスメータや被測定流体の流速を測定する流速計に用いても構わない。また複数の実施例の構成を組みあわせてよいことは言うまでもない。
産業上の利用可能性
以上のように本発明の第1の超音波流量計は、一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて、流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部の壁面によって反射される反射波が前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記流量測定部と前記一対の超音波振動子とが構成されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第2の超音波流量計は、超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部は当該流量測定部の壁面に反射することなく前記流量測定部を流れる流体中を伝搬する直接波と前記流量測定部の壁面によって反射される反射波との間の位相差が測定結果に影響を与える構成で、前記直接波と前記反射波との位相差が前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記流量測定部と前記一対の超音波振動子とが構成されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第3の超音波流量計は、超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部は当該流量測定部の壁面に反射することなく前記流量測定部を流れる流体中を伝搬する直接波と前記流量測定部の壁面によって反射される反射波との間の位相差が測定結果に影響を与える構成で、前記直接波と前記反射波との位相差が前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記一対の超音波振動子の周波数と、前記一対の超音波振動子間の距離と、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータとの組合せによって特徴づけられるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第4の超音波流量計は、第3の超音波流量計において、前記直接波は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線に沿って伝搬する波であり、前記反射波は、前記一対の超音波振動子の中心と前記流量測定部の壁面上の点とを結ぶことによって形成される二等辺三角形の二等辺に沿って伝搬する波であり、前記直接波の伝搬距離と前記反射波の伝搬距離との差から生じる伝搬位相差が3π/2以上であるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第5の超音波流量計は、第3の超音波流量計において、前記直接波は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線に沿って伝搬する波であり、前記反射波は、前記流量測定部の壁面によって1回だけ反射される波であり、前記直接波の伝搬時間に比べ前記反射波の最短伝搬時間が長くなるよう前記一対の超音波振動子の有効放射面の1つの辺あるい直径を前記流量測定部の高さより短くしたため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第6の超音波流量計は、第4または第5の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の周波数は所定値以上に設定されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、時間分解能も向上できるので、さらに高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第7の形態の超音波流量計は、第3の超音波流量計において、前記直接波は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線に沿って伝搬する波であり、前記反射波は、前記一対の超音波振動子の中心と前記流量測定部の壁面上の点とを結ぶことによって形成される二等辺三角形の二等辺に沿って伝搬する波であり、前記直接波の伝搬距離と前記反射波の伝搬距離との差から生じる伝搬位相差が0.2π以下であるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第8の超音波流量計は、第7の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記流量測定部を複数の部分に分割する少なくとも1つ以上の分割板をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第9の超音波流量計は、第8の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の周波数は所定値以下に設定されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第10の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの超音波流量計において、前記流量測定部の断面形状は矩形であり、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータは前記矩形の高さであるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第11の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの超音波流量計において、前記流量測定部の断面形状は円であり、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータは前記円の直径であるため、簡易な構成で流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第12の形態の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの超音波流量計において、前記一対の超音波振動子は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線が前記流量測定部の断面の所定方向の中心線に対してシフトするように配置されるため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第13の超音波流量計は、第12の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の所定方向の中心線とは互いに平行であるため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第14の超音波流量計は、第12の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の所定方向の中心線とは所定の角度をなしているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第15の超音波流量計は、第1または第2の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記流量測定部の壁面によって1回だけ反射される反射波の発生を阻止する構成をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第16の超音波流量計は、第15の超音波流量計において、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の所定方向の中心線とは所定の角度をなしているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第17の超音波流量計は、第1または第2の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記流量測定部に設けられた少なくとも1つの構造体をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第18の超音波流量計は、第17の超音波流量計において、前記少なくとも1つの構造体は、前記一対の超音波振動子の近傍に配置されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第19の超音波流量計は、第17の超音波流量計において、前記少なくとも1つの構造体は、前記流量測定部の壁面に配置されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
本発明の第20の形態の超音波流量計は、第1または第2の形態の超音波流量計において、前記流量測定部の壁面には、少なくとも1つ以上の凹部または凸部が設けられているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第21の超音波流量計は、第20の超音波流量計において、前記超音波流量計は、前記凹部を覆うメッシュ構造体をさらに備えているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第22の超音波流量計は、第1〜5、7のいづれかの超音波流量計において、前記一対の超音波振動子は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記一対の超音波振動子の少なくとも一方の指向性を示す方向とが所定の角度をなすように配置されているため、流量測定部内での反射波の影響を低減でき、高精度な超音波流量計を得ることができる。
また第23の超音波流量計は、第1から第22の超音波流量計において、少なくとも前記流量測定部の上流側に流れの方向を整える整流手段を有しており、流量測定部内の流れの方向を均一化でき、さらに高精度な超音波流量計を得ることができる。
Claims (14)
- 超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、断面形状が矩形であり、かつ流体が流れる流量測定部と、前記流体中を伝搬する超音波を送受信する一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて、前記流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部の壁面に反射することなく流体中を伝搬する直接波の伝搬距離と前記流量測定部の壁面によって反射され流体中を伝搬する反射波の伝搬距離との差から生じる前記測定結果に与える影響が低減されるように、前記流量測定部と前記一対の超音波振動子は、前記一対の超音波振動子の周波数と、前記一対の超音波振動子間の距離と、前記流量測定部の断面形状に関連するパラメータとの組合せを選択して構成される、超音波流量計。
- 超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、断面形状が矩形であり、かつ流体が流れる流量測定部と、流路の側壁部に設けられ前記流体中を伝搬する超音波を送受信する一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて前記流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部の壁面に反射することなく流体中を伝搬する直接波の伝搬距離と前記流量測定部の壁面によって反射され流体中を伝搬する反射波の伝搬距離との差から生じる伝搬位相差を小さくするように、前記流量測定部と前記一対の超音波振動子は、超音波を送受信する方向に垂直でかつ前記側壁部の壁面に略平行な方向の前記流量測定部の断面高さを設定するとともに、前記一対の超音波振動子の周波数は所定値以下に設定する超音波流量計。
- 前記反射波は、前記流量測定部の壁面に1回だけ反射して伝搬する波であり、前記伝搬位相差が0.2π以下である請求項1または2記載の超音波流量計。
- 前記流量測定部の断面を複数の部分に分割する少なくとも1つ以上の分割板をさらに備えている請求項1から3のいずれかに記載の超音波流量計。
- 超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計において、流体が流れる流量測定部と、前記流体中を伝搬する超音波を送受信する一対の超音波振動子と、前記一対の超音波振動子間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部の出力に基づいて前記流量測定部を流れる流体の量を計算する計算部とを備え、前記流量測定部および前記一対の超音波振動子は、前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ直線が前記流量測定部の断面の中心線に対してシフトするように、構成される超音波流量計。
- 前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の中心線とは互いに平行である、請求項5に記載の超音波流量計。
- 前記一対の超音波振動子の中心を結ぶ線と前記流量測定部の断面の中心線とは、前記一対の超音波振動子が超音波を送受信する方向に垂直な前記断面高さ方向に所定の角度をなしている、請求項5に記載の超音波流量計。
- 前記流量測定部および前記一対の超音波振動子は、前記流量測定部の壁面によって1回だけ反射される反射波の受信を阻止するように構成される、請求項7に記載の超音波流量計。
- 前記流量測定部は、前記伝搬位相差を所望の大きさに設定する少なくとも1つの構造体を備えている、請求項1または2に記載の超音波流量計。
- 前記構造体は、前記一対の超音波振動子の近傍に配置されている、請求項9に記載の超音波流量計。
- 前記構造体は、前記流量測定部の壁面に配置されている請求項9に記載の超音波流量計。
- 前記流量側面部の壁面には、少なくとも1つ以上の凹部または凸部が設けられている請求項項1または2に記載の超音波流量計。
- 前記凹部を覆うメッシュ構造体をさらに備えている請求項12記載の超音波流量計。
- 少なくとも流量測定部の上流側に流れの方向を整える整流手段を備えた請求項1,2,5のいずれか1項に記載の超音波流量計。
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