JP3555996B2 - ゴンドラ用の養生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、構造物の外壁面に沿って移動して作業を行う場合に使用されるゴンドラ用の養生装置に関し、特に構造物壁面全体を養生することが困難な高層構造物の養生装置として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
構造物外壁面に対して塗装や洗浄などの外壁工事を行う場合に、仮設の組足場に替え、屋上などから吊り下げたワイヤロープを介して昇降するゴンドラやさらに横移動もできるゴンドラを設置して作業を行うことも多い。
【0003】
このようなゴンドラに作業者が搭乗して作業を行う場合に、塗料や洗浄液などの落下や飛散を防止する必要があり、従来から養生装置が用いられている。
【0004】
従来から使用されている養生装置としては、例えば構造物の外壁面と対向させて作業空間をあけ、養生台で底部を塞ぐとともに、ネットやシート等で外壁面全体を覆うようにしたものがある。
【0005】
また、短時間に作業が済む場合などの簡易的な作業に対する養生装置の場合には、ゴンドラの周囲の手摺にネットやシート等を取付けて代用することも行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、構造物の外壁面全体を覆うように養生台とシートやネットとを設置する養生装置では、通常のビル等の外壁工事への適用には支障がないものの、高層ビルの外壁工事に適用しようとすると、外壁面全体をネットやシート等で覆って養生しなければならず、事実上、養生装置を設置することは不可能であるという問題がある。
【0007】
また、簡易的にゴンドラの周囲の手摺にシート等を取付けて養生する装置では、養生できる範囲に限界があるとともに、沢山の水を使用する洗浄や動力機械を用いる壁面の剥離作業等を行うことは出来ず、養生した状態でできる作業にも制約がある。
【0008】
さらに、簡易的な養生装置の場合には、作業にともなってゴンドラが揺れたりすると、ゴンドラが外壁面から離れて養生ができなくなってしまうという問題もある。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ゴンドラ自体の周囲のみを養生することができ、高層構造物への適用も可能で外壁などに対して必要なあらゆる作業を行うことができるゴンドラ用の養生装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1記載のゴンドラ用の養生装置の発明は、構造物から吊り下げられ構造物側面に沿って移動されるゴンドラの周囲を囲んで落下や飛散を防止するゴンドラ用の養生装置であって、前記構造物側面側が開口し養生部材が取付けられる養生枠を前記ゴンドラの背部に振動伝達を緩和する弾性連結手段を介して取付けるとともに、この養生枠の開口部を構造物側面に密着固定する吸着機構を当該養生枠に設ける一方、前記養生枠の開口部を構成する縦枠材と横枠材とを変形吸収機構を介して連結したことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2記載のゴンドラ用の養生装置の発明は、請求項1記載の構成に加え、弾性連結部材をコイルばね、またはゴムで構成したことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3記載のゴンドラ用の養生装置の発明は、請求項1記載の構成に加え、変形吸収機構をゴム、または蝶番で構成したことを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
この発明のゴンドラ用の養生装置によれば、ゴンドラの背部にゴンドラの周囲を囲むことができる養生枠を弾性連結手段を介して取付けるようにしてゴンドラ上での作業に伴う振動等が養生枠に伝達されることを緩和できるようにし、この養生枠にネットやシートなどの養生部材を取付けるようにしている。
【0014】
さらに、この養生枠に吸着機構を取付けて構造物側面に吸着させて養生枠を固定できるようにするとともに、養生枠の構造物側面への密着面となる開口部を構成する縦枠材と横枠材とを変形吸収機構を介して連結するようにして変形や歪の影響を受けること無く密着できるようにしている。
【0015】
これにより、ゴンドラの周囲を完全に養生することができ、高層構造物への適用やあらゆる作業への適用を可能としている。
【0016】
また、コイルばね、またはゴムを用いることで弾性連結部材を構成することができ、ゴンドラからの振動の伝達を緩和して養生枠の密着固定状態を保持できるようにしている。
【0017】
さらに、ゴム、または蝶番で変形吸収機構を構成して縦枠材と横枠材を連結するようにし、養生枠の開口部分を完全に構造物側面に密着できるようにし、落下や飛散が完全に防止できるようにしている。
【0018】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1および図2はこの発明のゴンドラ用の養生装置の一実施例にかかり、図1は外観斜視図、図2は正面図及び側面図である。
【0019】
このゴンドラ用の養生装置10は、構造物1の屋上などに設置されるルーフカーに設けた巻取装置に連結されたワイヤロープ2を介して吊り下げられて昇降されるゴンドラ3や構造物1の屋上などに固定されたワイヤロープ2をゴンドラ4に設けたワインダに巻き掛けて昇降されるゴンドラ4など構造物側面に沿って昇降されるあらゆる形式のゴンドラ3,4に設置されて落下や飛散を防止するものである。
【0020】
このゴンドラ用の養生装置10は、構造物1の側面のある位置に停止したゴンドラ3,4上から作業を行うことが可能な範囲を覆うものであり、天井部分が傾斜した略直方体状に枠組みされた養生枠11を備えている。
【0021】
この養生枠11の構造物1側の枠組み部分が開口部11aとされ、この開口部11aの大きさがゴンドラ3,4上からの作業に必要な範囲に形成されており、養生枠11の奥行き(構造物側面に垂直方向の奥行き)がゴンドラ3,4の奥行きより余裕をもって大きく形成してある。
【0022】
このような養生枠11は、縦枠材12および横枠材13と、これらを連結して補強する図示しない斜材とで構成されており、養生枠11の開口部11aを構成する縦枠材12と横枠材13以外は、ボルト・ナットや溶接などで連結されて枠組みされている。
【0023】
一方、養生枠11の開口部11aを構成する縦枠材12と横枠材13とは、開口部11aを構造物1の側面に密着した状態で設置する必要から変形吸収機構14を介して連結されており、具体的には、図3(a),(b)に示すように、縦枠材12と横枠材13とがゴムやコイルばね等の弾性のある中空弾性体14aを介して両端部のブラケット14b,14cをボルト・ナットで締付けて連結することで開口部11aの縦枠材12と横枠材13と歪の影響を除去するようにしたり、縦枠材12と横枠材13とに蝶番部材14d,14eを取付けて垂直軸回りに回動するピン14fで連結することで蝶番14gを構成して開口部11aの縦枠材12と横枠材13と歪の影響を除去するようにする。
【0024】
このような養生枠11には、開口部分と天井部分を除いて背面と左右の両側面の3つの面に養生部材15としてネットやシート15aが取付けられるとともに、底部分の養生部材15となる底板15bが養生枠11の下端部より上方に取付けてあり、落下物の落下や飛散物の飛散を防止できるようにしてある。
【0025】
また、ゴンドラを用いて行う作業の内容によっては、作業空間を密閉した状態で養生する必要がある場合があり、この場合には、天井部分にも養生部材15としてのネットやシート15aを取付けるようにする。なお、天井部分にシートを取付けるようにして雨天などでもその影響を受けずに作業を継続できるようにすることも可能である。
【0026】
このようにして養生部材15が取付けられた養生枠11内には、ゴンドラ3,4が収納されるように配置され、ゴンドラ3,4の背面の手摺5と養生枠11の背面の枠材12(または枠材13)との間に弾性連結手段16が介挿されてゴンドラ3,4の振動が伝達されて養生枠11の開口部11aが構造物1から離れることを極力防止できるようにしてある。
【0027】
この弾性連結手段16は、図4に具体的な構造を示すように、ゴンドラ3,4の手摺5と養生枠11の平面の枠材である縦枠材12との間に、両端部に取付板16aを備えたコイルばね16bを介装して構成されたり、両端部に取付板16cを備えた中空円筒状のゴム16dを介挿して構成され、それぞれの取付板16a,16cを手摺5と縦枠材12とにボルト・ナット等で取付けて構成される。
【0028】
したがって、コイルばね16bや中空円筒状のゴム16dにより、ゴンドラ3,4の左右への振動や構造物1から離れたり接近する方向の振動の養生枠11への伝達を極力防止するようになっている。
【0029】
このような弾性連結手段16でゴンドラ3,4と連結された養生枠11を構造物1の側壁に密着させるため、養生枠11の底板15bの下側に吸着機構17が設けてある。
【0030】
この吸着機構17は、養生枠11の作業両側にそれぞれ先端に真空吸着パッド17aを備え、油圧又は空気圧シリンダ17bで伸縮駆動されるように養生枠11に取付けてあり、真空ポンプ17cと油圧又は空気圧供給装置17dも設置してある。
【0031】
さらに、養生枠11の開口部11aを構成する縦枠材12及び横枠材13の構造物1との対向面には、作業内容に応じて、図5中に示すように、スポンジゴム18をブラシ状にするなどして取付けるようにして密着性の向上を図るようにする。
【0032】
このように構成したゴンドラ用の養生装置10では、次のようにしてゴンドラ作業に対する養生を行う。
【0033】
まず、ゴンドラ3,4をルーフカー側の巻取装置やゴンドラ自体のワインダによって構造物1の作業を行う位置に昇降する(図5(a)参照)。
【0034】
この後、真空ポンプ17cと油圧又は空気圧供給装置17dとを運転し、油圧又は空気圧シリンダ17bのロッドを伸長して先端の真空吸着パッド17aを構造物1の側面に吸着させる(図5(b)参照)。
【0035】
次いで、真空吸着パッド17aを吸着させた状態で油圧又は空気圧シリンダ17bのロッドを縮める(図5(c)参照)。
【0036】
すると、ロッドの先端の真空吸着パッド17aが構造物1の側面に吸着されて固定された状態であり、ゴンドラ3,4に養生枠11が連結されて吊り下げられた状態であることから養生枠11が構造物1の側面に引き寄せられ、開口部11aを密着させることができる。
【0037】
この養生枠11は真空吸着パッド17aが上下、左右の4箇所に取付けてあり、これらを構造物1に吸着させるため安定して固定することができるとともに、周囲のスポンジゴム18によって壁面に密着させることができる。
【0038】
こうして養生枠11の開口部11aを構造物1の側面に密着させた後、ゴンドラ3,4内から構造物1の側面に対して作業を行う。そして、作業にともなって落下物や飛散物が生じても養生部材15が取付けられた養生枠11で作業空間が完全に覆われるとともに、開口部11aが密着しているので、落下や飛散を防止することができる。
【0039】
また、ゴンドラ3,4上での作業に伴ってゴンドラ3,4が揺れることがあっても養生枠11と弾性連結手段16を介して連結してあるので、コイルばね16bや中空円筒状のゴム16dによって振動の伝達が緩和され、養生枠11が離れることなどを防止して完全な養生状態を保持することができる。
【0040】
したがって、ゴンドラ上からの作業の制約がなく、洗浄や剥離作業などの落下物や飛散物が多くなる作業も支障なく行うことができる。
【0041】
また、高層ビルのようにビル全体を養生することが困難な場合にもゴンドラの周囲だけを養生してゴンドラ作業を行うことができる。
【0042】
さらに、養生枠11を吸着機構17で構造物1の側面に吸着して使用するが、この養生枠11とゴンドラ3,4とが弾性連結手段16で連結してあるので、ゴンドラ自体の揺れも少なくなり、安定した状態で作業を行うことができる。
【0043】
こうして、ゴンドラを停止して作業を行った後、次の作業位置に移動する場合には、作業開始とは逆に、真空吸着パッド17aの吸着を解放した後、ゴンドラ3,4を昇降するようにし、移動後は既に説明した手順にしたがって養生枠11を密着状態にすれば良い。
【0044】
なお、この出願の発明は、上記実施例に限らず、構造物の側面に沿って昇降だけでなく、横移動もできるゴンドラ等に広く適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上、一実施例とともに具体的に説明したようにこの発明のゴンドラ用の養生装置によれば、ゴンドラの背部にゴンドラの周囲を囲むことができる養生枠を弾性連結手段を介して取付けるようにしたので、ゴンドラ上での作業に伴う振動等が養生枠に伝達されることを緩和することができるとともに、この養生枠にネットやシートなどの養生部材を取付けることで、完全な養生を行うことができる。
【0046】
さらに、この養生枠に吸着機構を取付けて構造物側面に吸着させて養生枠を固定できるようにするとともに、養生枠の構造物側面への密着面となる開口部を構成する縦枠材と横枠材とを変形吸収機構を介して連結するようにしたので、変形や歪の影響を受けること無く養生枠を密着させることができる。
【0047】
これにより、ゴンドラの周囲を完全に養生することができ、高層構造物への適用やあらゆる作業への適用が可能となる。
【0048】
また、コイルばねまたはゴムを用いて弾性連結部材を構成することで、ゴンドラからの振動の伝達を緩和して養生枠の密着固定状態を保持できるとともに、ゴンドラも安定した状態にして作業を行うことができる。
【0049】
さらに、ゴムまたは蝶番で変形吸収機構を構成して縦枠材と横枠材を連結するようにしたので、養生枠の開口部分を完全に構造物側面に密着することができ、落下や飛散を完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のゴンドラ用の養生装置の一実施例にかかる外観斜視図である。
【図2】この発明のゴンドラ用の養生装置の一実施例にかかる正面図及び側面図である。
【図3】この発明のゴンドラ用の養生装置の一実施例にかかる変形吸収機構の部分斜視図である。
【図4】この発明のゴンドラ用の養生装置の一実施例にかかる弾性連結手段の部分斜視図である。
【図5】この発明のゴンドラ用の養生装置の一実施例にかかる動作説明図である。
【符号の説明】
1 構造物
2 ワイヤロープ
3,4 ゴンドラ
5 手摺
10 ゴンドラ用の養生装置
11 養生枠
11a 開口部
12 縦枠材
13 横枠材
14 変形吸収機構
14a 中空弾性体
14b,14c ブラケット
14d,14e 蝶番部材
14f ピン
14g 蝶番
15 養生部材
15a ネット又はシート
15b 底板
16 弾性連結部手段
16a 取付板
16b コイルばね
16c 取付板
16d ゴム
17 吸着機構
17a 真空吸着パッド
17b 油圧又は空気圧シリンダ
17c 真空ポンプ
17d 油圧又は空気圧供給装置
18 スポンジゴム

Claims (3)

  1. 構造物から吊り下げられ構造物側面に沿って移動されるゴンドラの周囲を囲んで落下や飛散を防止するゴンドラ用の養生装置であって、前記構造物側面側が開口し養生部材が取付けられる養生枠を前記ゴンドラの背部に振動伝達を緩和する弾性連結手段を介して取付けるとともに、この養生枠の開口部を構造物側面に密着固定する吸着機構を当該養生枠に設ける一方、前記養生枠の開口部を構成する縦枠材と横枠材とを変形吸収機構を介して連結したことを特徴とするゴンドラ用の養生装置。
  2. 前記弾性連結部材をコイルばねまたはゴムで構成したことを特徴とする請求項1記載のゴンドラ用の養生装置。
  3. 前記変形吸収機構をゴムまたは蝶番で構成したことを特徴とする請求項1記載のゴンドラ用の養生装置。
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