JP3555829B2 - 咬合器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科患者の上下顎歯牙の歯科保存物、歯科補綴物、或いは歯列矯正器具等の歯科製作物(以下、上下顎模型という。)を製作する際に用いられる咬合器に関する。
【0002】
【従来の技術】
義歯等は、患者個々の顎の形態の特徴に応じて不正噛合が生じないように、咬合器を用いて立体的な調整が施されて製作される。咬合器は、一般に下顎模型が取り付けられる下顎模型取付台が設けられた下顎フレームと、フランクフルト平面を構成して下顎フレームに対して回動自在に組み合わされるとともに上顎模型が取り付けられる上顎模型取付台が設けられた上顎フレームとを備える。また、咬合器は、下顎フレームに設けられたインサイザルテーブルに上顎フレームに設けたインサイザルピンを突き当てることにより、下顎模型と上顎模型との噛合平面の高さ位置を決定する。
【0003】
咬合器は、一般に解剖学的な顎の複雑な動きを正確に再現させることによってより精度の高い義歯等の上下顎模型を製作せんものと、上述した基本構成部材に対して種々の複雑な調整機構が付加されて構成されている。
【0004】
例えば、特開平7−95990号公報には、下顎模型を取り付ける下顎模型用支持台と上顎模型を取り付ける上顎模型用支持台とが相互の回転方向及び高さ方向の組合せ角度並びに前後の組合せ位置を調整自在とするように、下側フレームと上側フレームに対してそれぞれスライド機構と球面継手機構とを介して支持するようにした咬合器が開示されている。また、実公平6−36812号公報には、スタンドに対して上側フレームと下側フレームとが前後方向にそれぞれスライド自在に支持されるとともに、上顎模型を取り付ける上顎模型用支持台と下顎模型を取り付ける下顎模型用支持台とが上側フレームと下側フレームに対してそれぞれ回転自在に支持された咬合器が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の咬合器は、上述したように顎の極めて複雑な動作を正確に再現させるようにするために種々の機構が付設されることによって、必然的に構成部品が増えて全体の構成が複雑で高価となるとともに操作性や耐久性が劣化するといった問題があった。また、従来の咬合器は、比較的高価であるために、歯科医院等で多数組を用意することが困難となり各患者の上下顎模型を製作する都度この上下顎模型を交換して使用しなければならず効率が悪いといった問題があった。
【0006】
咬合器は、一般に義歯等が上顎模型と下顎模型とを石膏を用いて形成されるとともに、洗浄等のために大量の水が使用される。したがって、咬合器は、石膏の粉や破片等を簡単に除去することができるとともに防錆対策が講じられて製作されなければならない。従来の咬合器は、種々の複雑な調整機構が付設されていることから、これら調整機構に侵入した石膏の粉や破片等を除去することが困難であり故障が発生したり錆が発生しやすいといった問題があった。
【0007】
例えば、上述した特開平7−95990号公報の咬合器は、上下顎模型を取り付ける支持台がそれぞれ球面継手機構によってフレームに支持されていることから、この球面継手機構の内部に石膏の粉や破片等が侵入することによって各支持台が円滑に調整動作されなかったり相互の位置決め精度が劣化するといった問題が生じる虞がある。また、実公平6−36812号公報の咬合器においては、スタンドに対して上側フレームと下側フレームとがスムーズにスライド動作されないといった問題が生じる虞があるとともに、基準となる上顎模型も移動されることから基準位置が特定されなくなりかえって調整が困難になるといった問題がある。
【0008】
咬合器は、実際に使用する側からは、多機能の構造を備えたものよりはむしろ操作性やメンテナンス性に優れるとともに、耐久性を有するとともに廉価であるものが望まれている。すなわち、咬合器は、複雑な顎の動作を全て再現する機能が備えられる必要は無く、患者の歯の噛み合いが十分に得られる程度の上下顎模型の製作、補正或いはその調整を可能とする必要最低限の機能を有していればよい。
【0011】
また、咬合器は、上下顎模型の製作、補正或いは調整を行う際に頻繁に手で持って取り扱われることから、いわゆる把持性を有することも必要となる。従来の咬合器においては、もっぱら顎の動作を正確に再現させる機能が重視されているために、複雑な機構が付設されており把持しづらくかつ重量も重いために操作性が悪いといった問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、上述した従来の咬合器の問題点を解決して、上下顎模型の製作或いはその補正、調整が容易であり精度の高い上下顎模型が得られるとともに、構造が簡易で保守性、操作性が良好でありかつ廉価な咬合器を提供することを目的に提案されたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明にかかる咬合器は、下顎フレーム構体と上顎フレーム構体とを備える。下顎フレーム構体は、一対の柱部とこれら柱部間を連結する連結部とが一体に形成されてなるスタンド部材と、スタンド部材の連結部に対して基端部がスライド自在に組み合わされた下顎模型取付部材と、下顎模型取付部材の主面中央部に設けた取付部に取り付けられるとともに主面上に下顎模型が設置される下顎模型取付台と、下顎模型取付部材の他端部に設けられたインサイザルテーブルとから構成される。上顎フレーム構体は、スタンド部材のそれぞれの柱部に対して回動支持機構とスライド支持機構とを介して基部の両側部を回動自在かつスライド自在に支持されてなる上顎模型取付部材と、下顎模型取付台に対応して上顎模型取付部材のフランクフルト平面を構成する主面の中央部に設けた取付部に上記下顎模型取付部材のスライド方向に対して直交する水平方向に対して移動自在に取り付けられる上顎模型取付台と、上顎模型取付部材の先端部にスライド自在かつ首振り自在に支持する支持機構を介して取り付けられるインサイザルピンとから構成される。
【0014】
咬合器は、下顎フレーム構体の各構成部材と上顎フレーム構体の各構成部材とが、それぞれの外周縁部の全体に緩やかな円弧状の面取りを施して構成される。また、咬合器は、下顎模型取付部材の主面に固定される基台部と、この基台部に対して高さ位置が調整自在とされるとともに下顎模型取付部材の主面に対する角度が調整自在に組み合わされた上顎模型取付基準台とからなる模型取付調整装置が用いられて、上顎模型が上顎フレーム構体を構成する上顎模型取付部材に設けた上顎模型取付台に装着される。
【0015】
以上のように構成された本発明にかかる咬合器によれば、下顎模型取付台上に下顎模型が設置されるとともに上顎模型取付台上に上顎模型が設置される。咬合器においては、左右のスタンド部材に対して上顎模型取付部材をスライド操作することによって患者の左右の顎関節位置が正確に再現されて下顎模型と上顎模型との左右の高さ位置がそれぞれ調整される。咬合器においては、上顎模型取付部材に対して上顎模型取付台をスライド操作することによって患者の左右の噛合状態が正確に再現されて下顎模型と上顎模型との左右方向の噛み合わせ状態が調整される。咬合器によれば、スタンド部材に対して下顎模型取付部材をスライド操作することによって患者の前後の噛合状態が正確に再現されて下顎模型と上顎模型との前後方向の噛み合わせ状態が調整される。咬合器によれば、インサイザルピンをインサイザルテーブルの中心部に突き当てるように調整することにより患者の下顎と上顎との間隔に対応して下顎フレーム構体と上顎フレーム構体との対向間隔を設定してフランクフルト平面の高さ位置を再現する。咬合器は、スタンド部材に対する上顎模型取付部材の左右の高さ位置を調整することによってセンタがずれたインサイザルピンが、上顎模型取付部材に対して回動することによって調整される。咬合器においては、上述した各部の調整操作によって、必要最小限で患者の顎の動きが正確に再現されることから下顎模型と上顎模型の補正、調整が精密に行われるようにする。
【0016】
また、咬合器によれば、下顎フレーム構体の各構成部材と上顎フレーム構体の各構成部材の外周縁部の全体に円弧状に面取りを施すことによって把持性が図られる。さらに、咬合器は、下顎模型取付部材に取り付けられる模型取付調整装置が用いられ、フランクフルト面に対してその上顎模型取付基準台の角度及び高さを調整した状態で上顎模型を仮止めする。咬合器は、上顎模型取付基準台を基準として上顎模型が上顎模型取付台に装着される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。咬合器10は、図1乃至図3に示すように、下顎模型1が取り付けられる側面形状が略L字状を呈して組み立てられた下顎フレーム構体11と、この下顎フレーム構体11に対して回動自在に組み合わされるとともに上顎模型4が取り付けられる上顎フレーム構体12とから構成される。下顎フレーム構体11は、スタンド部材13と、下顎模型取付部材14と、下顎模型取付台15と、インサイザルテーブル16等の各部材によって構成される。上顎フレーム構体12は、上顎模型取付部材17と、上顎模型取付台18と、板バネ部材19と、インサイザルピン20と、インサイザルピン保持部材21等の各部材によって構成される。
【0018】
咬合器10は、詳細を後述する回動支持機構22及びスライド支持機構23とによって、下顎フレーム構体11に対して上顎フレーム構体12が回動自在かつ高さ方向にスライド自在に組み合わされてなる。咬合器10は、回動支持機構22を介して下顎フレーム構体11に対して上顎フレーム構体12が着脱自在に組み合わされてなる。咬合器10は、詳細を後述するスライドガイド機構24によって、下顎フレーム構体11を構成するスタンド部材13に対して下顎模型取付部材14がスライド自在に組み合わされてなる。
【0019】
咬合器10は、スライドガイド機構24を介してスタンド部材13に対して調整自在とされた下顎模型取付部材14を所定の位置に設定して固定するための第1の固定ねじ部材25と、下顎模型取付部材14に対して下顎模型取付台15を固定するための第2の固定ねじ部材26とを備える。咬合器10は、スライド支持機構23を介してスタンド部材13に対して高さ位置を調整自在とされた上顎模型取付部材17を所定の位置に設定して固定するための左右一対の第3の固定ねじ部材27(27a,27b)を備える。咬合器10は、上顎模型取付部材17に対して上顎模型取付台18を固定するための第4の固定ねじ部材28を備える。咬合器10は、上顎模型取付部材17に対してインサイザルピン保持部材21を固定するための第5の固定ねじ部材29を備える。
【0020】
咬合器10は、図2に示すように、通常下顎フレーム構体11と上顎フレーム構体12とが側面形状を略コ字状を呈するようにして組み合わされ、下顎模型1と上顎模型4の製作が行われる。咬合器10は、この状態で上顎フレーム構体12側のインサイザルピン20の下端が下顎フレーム構体11側のインサイザルテーブル16に突き当てられることにより、下顎フレーム構体11と上顎フレーム構体12との間隔がフランクフルト平面に対応して設定される。咬合器10は、下顎フレーム構体11に対して上顎フレーム構体12が回動操作された場合に、図3に示すように、90°以上回動された位置において停止保持される。咬合器10は、詳細を後述するが、回動支持機構22を介して下顎フレーム構体11に対して上顎フレーム構体12の取外しが可能とされる。
【0021】
スタンド部材13は、例えばアルミダイキャストやステンレス材等の防錆性に優れた金属材料により、一対の柱部13a,13bと、これら柱部13a,13bを下方部において一体に連結する連結部13cとからなる略上向きコ字状を呈して成形されてなる。スタンド部材13は、図1及び図2に示すように、連結部13cの底面の両側部分がそれぞれ下方へと円弧状凸部として膨出されて台座部13d,13eを構成している。スタンド部材13は、顎をイメージさせながら下顎模型1と上顎模型4の製作が行われるように、図2に示すように、柱部13a,13bの側面形状が顎骨の張り具合、すなわちエラの形状に対応した緩やかな円弧状を付されて形成されている。スタンド部材13は、外周縁部の全体にやや大きな曲率の面取りを施すことによって把持性の向上が図られている。
【0022】
スタンド部材13には、柱部13a,13bに、図1及び図4,図5に示すように、詳細を後述するスライド支持機構22を構成する高さ方向のスライドガイド孔13f,13gが上端面に開口して形成されている。柱部13a,13bには、これらスライドガイド孔13f,13gに連通するねじ孔13h,13iが側面に開口して設けられている。スタンド部材13には、図6に示すように、連結部13cの底面の中央部に位置して詳細を後述する下顎模型取付部材14をスライド自在に支持するスライドガイド機構24の構成部位が設けられている。スライドガイド機構24は、その構成部位が、前後方向のスライドガイド凸部13jと、このスライドガイド凸部13jに沿って形成された一対のスライドガイド溝13k,13lと、スライドガイド凸部13jに連通するねじ孔13mとからなる。
【0023】
下顎模型取付部材14は、例えばアルミダイキャストやステンレス材等により全体板状を呈して形成されてなり、中央部が詳細を後述する下顎模型取付台15を取り付ける台取付部14aとして両側に円弧状に膨出形成されてなり、先端部に詳細を後述するインサイザルテーブル16が装着されるテーブル取付溝14bが形成され、さらに基端部にスライドガイド機構24の構成部位が形成されている。台取付部14aには、その中心位置に後述する下顎模型取付台15を取り付けるためのねじ孔14cが形成されている。
【0024】
スライドガイド機構24は、図6に示すようにその構成部位が、台取付部14aの後端部からスタンド部材13の連結部13cの厚み寸法分を段落ちされて一体に突設された一対のスライド凸片部14d,14eと、これらスライド凸片部14d,14e間に構成された前後方向のスライドガイド溝14fとからなる。スライド凸片部14d,14eは、幅寸法がスタンド部材13のスライドガイド溝13k,13lの溝幅寸法とほぼ等しい。スライドガイド溝14fは、溝幅寸法がスタンド部材13のスライドガイド凸部13jの幅寸法とほぼ等しい。なお、下顎模型取付部材14には、先端部の底面に円弧状凸部として膨出されて台座部14gが形成されている。また、一方のスライド凸片部14dには、図6に示すように、その側面に指標14hが設けられている。指標14hは、後述するようにスタンド部材13に対して下顎模型取付部材14をスライド操作した際のスライド量を表示する。
【0025】
以上の部位によって構成されたスライドガイド機構24は、スライドガイド溝13k,13lにスライド凸片部14d,14eがそれぞれ相対係合されるとともにスライドガイド凸部13jがスライドガイド溝14fに相対係合されることによって、スタンド部材13の連結部13cに対して下顎模型取付部材14の基端部を前後方向にスライド自在に片持ち支持する。下顎模型取付部材14は、上述したように第1の固定ねじ部材25を締め付けることによってスタンド部材13に対して固定される。
【0026】
第1の固定ねじ部材25は、図6に示すように、円盤状の操作部25aと、この操作部25aの中心に設けられたねじ部25bとからなる。第1の固定ねじ部材25は、下顎模型取付部材14の底面側から、スライドガイド溝14fを介してねじ部25bがスタンド部材13のねじ孔13mにねじ込まれる。第1の固定ねじ部材25は、操作部25aの内面によってスライド凸片部14d,14eをスライドガイド溝13k,13l内に押し付けることによって、下顎模型取付部材14をスタンド部材13の連結部13cに固定する。
【0027】
咬合器10においては、上述したスライドガイド機構24を介して、スタンド部材13に対して下顎模型取付部材14が図4に示した状態から前方へとスライドガイド溝14fの範囲で調整される。咬合器10は、第1の固定ねじ部材25を緩めた状態で、スタンド部材13に対して下顎模型取付部材14が前方へとスライド操作される。咬合器10は、図5に示すように指標14hを基準として下顎模型取付部材14を所定の引出量Δxスライド操作した状態で、第1の固定ねじ部材25を締め付けることによって、この下顎模型取付部材14がスタンド部材13に対して固定される。咬合器10は、これによって患者の前後方向の噛合状態が再現されて、下顎模型1と上顎模型4との前後方向の噛合状態の調整が行われるようにする。
【0028】
なお、上述したスライドガイド機構24において、スタンド部材13側のスライドガイド凸部13jとスライドガイド溝13k,13lとの構成を下顎模型取付部材14側に形成するとともに、下顎模型取付部材14側のスライド凸片部14d,14eとスライドガイド溝14fとの構成をスタンド部材13側に形成するようにしてもよい。また、スタンド部材13側のスライドガイド凸部13jとスライドガイド溝13k,13lとは、1個のスライドガイド凸部と長孔とされたスライドガイド溝とによって構成してもよい。
【0029】
下顎模型取付部材14には、台取付部14a上に下顎模型取付台15が取り付けられる。下顎模型取付台15には、図1乃至図3に示すように、装着用石膏2と金属プレート3を介して下顎模型1が装着される。下顎模型取付台15は、図7に示すように、略円盤状を呈する基板部15aと、この基板部15aの主面に一体に突設された環状凸部15bとからなる。基板部15aには、その中心に環状凸部15bの内面に貫通するねじ孔15cが設けられている。環状凸部15bには、その内部に下顎模型1の金属プレート3をマグネットチャッキングする円盤状のマグネット板30が取り付けられている。
【0030】
下顎模型取付台15は、上述したように第2の固定ねじ部材26によって下顎模型取付部材14の台取付部14a上に固定される。第2の固定ねじ部材26は、図7に示すように、円盤状の操作部26aと、この操作部26aの中心に設けられたねじ部26bとからなる。第2の固定ねじ部材26は、同図に示すようにねじ部26bが下顎模型取付部材14の底面側からそのねじ孔14cを介して下顎模型取付台15のねじ孔15cにねじ込まれることによって、下顎模型取付台15を下顎模型取付部材14の台取付部14a上に固定する。
【0031】
下顎模型取付部材14には、テーブル取付溝14bにインサイザルテーブル16が着脱自在に組み合わされる。インサイザルテーブル16は、詳細を省略するが、テーブル取付溝14bに相対係合する前後方向の係合凸部が側面に形成された基部16aと、この基部16aの先端部に一体に形成されたテーブル部16bとからなる。テーブル部16bは、その主面が前下がりの傾斜面として構成されるととともに、後述するようにインサイザルピン20の先端部が突き当てられる略V字状の突当溝16cが形成されてなる。インサイザルテーブル16は、患者の下顎の形態によって突当溝16cの開き角度が異なるために、適合する角度を有するものが選択されて下顎模型取付部材14に取り付けられる。インサイザルテーブル16は、下顎模型取付部材14の先端からテーブル取付溝14bに対して挿脱操作することによって交換される。
【0032】
上顎模型取付部材17は、例えばアルミダイキャストによって一体に形成されてなり、スタンド部材13と対向する基部31と、この基部31の中央部から前方へと一体に突設されて下顎模型取付部材14と平行に対峙する上顎模型取付部32とからなる略T字状を呈している。上顎模型取付部材17には、図8に示すように、基部31の底面に、その長手方向の両側に位置して後述する回転支持機構22を構成する係合凸部31a,31bによって側面と前面側とが開放された係合溝31c,31dがそれぞれ形成されている。係合溝31c,31dは、詳細を省略するが底面部が円弧状を呈している。上顎模型取付部材17には、基部31の中央部に位置して板バネ部材19を取り付けるための板バネ取付部31eが形成されている。上顎模型取付部材17には、板バネ取付部31eの両側に図示しないコイルスプリングがそれぞれ装填されるコイル取付部31f,31gが形成されている。
【0033】
以上のように構成された基部31には、板バネ取付部31eに板バネ部材19が取り付けられる。板バネ部材19は、両端部に前方側へと突出された係止片19a,19bが一体に形成されることによって略クランク状に折曲されてなる。板バネ部材19は、上顎模型取付部材17に取り付けられることによって係合溝31c,31dの底面部を構成する。また、板バネ部材19は、詳細を省略するが、コイル取付部31f,31gに装填されたコイルスプリングによって係止片19a,19bが係合溝31c,31dの溝幅を拡げる方向に付勢されている。板バネ部材19は、基部31に回動自在に取り付けられた図示しないロック部材によってコイルスプリングの弾性力に抗して係止片19a,19bが係合溝31c,31dの溝幅を狭める方向に押圧されてなる。
【0034】
上顎模型取付部32は、中央部が詳細を後述する上顎模型取付台18を取り付ける台取付部32aとして両側に円弧状に膨出形成されてなり、先端部に詳細を後述するインサイザルピン保持部材21が取り付けられる取付部32bが形成されてなる。また、上顎模型取付部32には、台取付部32aの中心位置に上顎模型取付台18を取り付けるための左右方向の長孔とされた長孔32cが形成されるとともに、この長孔32cを挟んで一対の係合ピン32d,32eが立設されている。上顎模型取付部32には、台取付部32a上に上顎模型取付台18が取り付けられる。
【0035】
上顎模型取付台18には、図1乃至図3に示すように、装着用石膏5と金属プレート6を介して上顎模型4が装着される。上顎模型取付台18は、図9に示すように、略円盤状を呈する基板部18aと、この基板部18aの主面に一体に突設された環状凸部18bとからなる。基板部18aには、その中心に環状凸部18bの内面に貫通するねじ孔18cが設けられている。環状凸部18bには、その内部に上顎模型4の金属プレート6をマグネットチャッキングする円盤状のマグネット板33が取り付けられている。また、上顎模型取付台18には、ねじ孔18cを挟んで左右位置に長溝18d,18eが形成されている。これら長溝18d,18eには、上顎模型取付台18を上顎模型取付部材17に組み合わせた状態において、上顎模型取付台18に立設した係合ピン32d,32eが相対係合する。
【0036】
上顎模型取付台18は、上述したように第4の固定ねじ部材28によって上顎模型取付部材17の台取付部32a上に左右方向の位置を調整自在にして固定される。第4の固定ねじ部材28は、図9に示すように、円盤状の操作部28aと、この操作部28aの中心に設けられたねじ部28bとからなる。第4の固定ねじ部材28は、同図に示すようにねじ部28bが上顎模型取付部32の上面側からその長孔32cを介して上顎模型取付台18のねじ孔18cにねじ込まれることによって、上顎模型取付台18を上顎模型取付部材17の台取付部32a上に固定する。この場合、上顎模型取付台18は、上顎模型取付部32の長孔32cの長さ範囲において同図矢印で示すように左右方向の位置が調整される。また、上顎模型取付台18は、長溝18d,18eに係合された係合ピン32d,32eによって回転方向の移動が規制される。
【0037】
以上のように構成された上顎模型取付部材17は、回動支持機構22及びスライド支持機構23とによって下顎フレーム構体11を構成するスタンド部材13の上部に回転自在かつ上下方向に移動自在に組み合わされる。回動支持機構22は、軸受部材35(35a,35b)と、支軸36(36a,36b)と、関節軸受部材37(37a,37b)との各部材によって構成される。スライド支持機構23は、軸受部材35とスライド軸34(34a,34b)との各部材によって構成される。回動支持機構22は、上述したようにスタンド部材13に対して上顎模型取付部材17を所定の角度範囲で回動自在に支持するとともに、この上顎模型取付部材17をスタンド部材13に対して着脱自在とする。スライド支持機構23は、スタンド部材13に対して上顎模型取付部材17の高さ位置を調整自在とする。
【0038】
スライド軸34は、それぞれの下端部が、スタンド部材13の柱部13a,13bに設けたスライドガイド孔13f,13gに挿通されている。スライド軸34には、上端部がそれぞれ軸受部材35に固定されている。スライド軸34には、図11に示すように、後述するスタンド部材13に対する上顎模型取付部材17の高さ位置の調整に際してスライド量の表示するための指標34cが設けられている。
【0039】
軸受部材35には、それぞれ図示しないが水平方向の軸孔が貫通して設けられており、これら軸孔に支軸36が回転自在に軸装されている。支軸36には、それぞれその先端部に球形の関節軸受部材37が一体に形成されている。関節軸受部材37は、図8に示すように上顎模型取付部材17の基部31に形成した係合溝31c,31dにそれぞれ相対係合している。関節軸受部材37は、係合溝31c,31dに相対係合された状態において、上述したように図示しないロック部材により係合溝31c,31dの溝幅を狭める方向に押圧された板バネ部材19の係止片19a,19bによってこれら係合溝31c,31dの底面に押し付けられている。関節軸受部材37は、患者の顎関節に対応する。
【0040】
咬合器10は、以上の部材によって構成された回動支持機構22を備えることにより、例えば上顎模型取付部材17に上顎模型4を取り付ける場合やこの上顎模型4或いは下顎模型1を調整する場合等において、図3に示すようにスタンド部材13に対して上顎模型取付部材17を回動操作するようにする。また、咬合器10は、スタンド部材13に対して上顎模型取付部材17が回動操作された状態において、図示しないロック部材のロック解除操作により係合溝31c,31dが板バネ部材19の係止片19a,19bによる溝幅を狭められた状態を解除されることによって、関節軸受部材37を係合溝31c,31dから取り外し可能とする。咬合器10においては、上顎模型取付部材17が、スタンド部材13から同図矢印で示す方向に取り外される。
【0041】
咬合器10は、上述した部材によって構成されるスライド支持機構23を備えることにより、スタンド部材13に対して上顎模型取付部材17を高さ方向にスライド操作して下顎模型1と上顎模型4との噛合高さの調整或いは左右の噛合調整が行われる。すなわち、咬合器10においては、図10に示した状態から第3の固定ねじ部材27が緩められてスライドガイド孔13f,13g中におけるスライド軸34のロック状態が解除される。咬合器10は、この状態で指標34cを目安として、スタンド部材13に対して上顎模型取付部材17が上方へと持ち上げられる。咬合器10は、スタンド部材13に対して上顎模型取付部材17を所定の高さ位置に持ち上げた状態において第3の固定ねじ部材27を締め付けることにより、図11に示すように上顎模型取付部材17が所定の高さ位置に設定される。したがって、咬合器10は、上述した操作により患者の噛合高さ位置が再現され、下顎模型1と上顎模型4との噛合高さの調整が行われるようにする。
【0042】
咬合器10は、上述したスタンド部材13に対する上顎模型取付部材17の高さ調整操作が左右のスライド支持機構23a,23bにおいてそれぞれ独立して行われる。咬合器10は、これによってスタンド部材13に対する上顎模型取付部材17の左右の高さ位置がそれぞれ独立に調整される。したがって、咬合器10は、この操作により患者の左右の噛合状態が再現され、下顎模型1と上顎模型4との左右の噛合調整が行われるようにする。
【0043】
ところで、咬合器10においては、左右のスライド支持機構23a,23bを独立に調整することにより、上顎模型取付部材17が傾いてインサイザルピン20の垂直度が保持されなくなることから、図12及び図13に示すようにこのインサイザルピン20の角度を調整自在とする機構が付設されている。角度調整機構は、台取付部32aの先端部に形成された取付部32bと、この取付部32bに取り付けられたインサイザルピン保持部材21等の部材によって構成される。すなわち、取付部32bには、図13に示すように前端部に開口する水平方向の取付孔32fが形成されるとともにこの取付孔32fに連通するねじ孔32gが形成されている。ねじ孔32gには、同図に示すように、円盤状の操作部29aと、この操作部29aの中心に設けられたねじ部29bとからなる第5の固定ねじ部材29がそのねじ部29bをねじ込まれる。
【0044】
インサイザルピン保持部材21は、取付部32bとほぼ等しい厚みを有する矩形を呈するとともに外周縁の全体に面取りが施されてなる。インサイザルピン保持部材21には、上下主面を貫通してインサイザルピン取付孔21aが設けられている。インサイザルピン保持部材21には、取付部32bとの対向側面に開口する水平方向の取付孔21bが設けられている。インサイザルピン保持部材21には、その側面にインサイザルピン取付孔21aに連通するねじ孔21cが設けられている。インサイザルピン保持部材21には、インサイザルピン取付孔21aにインサイザルピン20が貫通されて支持される。インサイザルピン保持部材21には、取付孔21bに先端部を突出させて連結軸38が嵌合されている。インサイザルピン保持部材21には、ねじ孔21cに固定ねじ部材39がねじ込まれる。
【0045】
インサイザルピン保持部材21は、連結軸38が取付部32bの取付孔32fに挿通されることによって、上顎模型取付部材17に対して回動自在かつ前後方向にスライド自在に組み合わされる。インサイザルピン保持部材21は、ねじ孔32gにねじ込まれた第5の固定ねじ部材29によって連結軸38が固定されることによって上顎模型取付部材17の取付部32bの先端部に固定される。なお、連結軸38には、図13に示すように取付部32bに対してインサイザルピン保持部材21の突出量を表示するための指標38aが設けられている。
【0046】
インサイザルピン20には、高さ方向の中央位置に指標20aが刻印され、図1に示すように先端がインサイザルテーブル16の突当溝16cに突き当てられるようにしてインサイザルピン保持部材21に支持される。インサイザルピン20は、上述したようにインサイザルピン取付孔21aに貫通されるが、ねじ孔21cにねじ込まれる固定ねじ部材39によって固定される。インサイザルピン20は、上述したようにスライド支持機構23を介してスタンド部材13に対して上顎模型取付部材17が高さ位置を左右独立に調整されることから、インサイザルテーブル16に対して高さ調整とともに左右方向のズレ調整も必要となる。
【0047】
すなわち、咬合器10においては、スタンド部材13に対する上顎模型取付部材17の調整操作によって、図12に示すようにインサイザルピン20がインサイザルテーブル16に対してやや傾いた状態で突き当てられるようになる。咬合器10は、このインサイザルピン20の傾きを角度調整機構によって補正する。咬合器10は、第5の固定ねじ部材29を緩めて連結軸38を支点としてインサイザルピン保持部材21が上顎模型取付部材17に対して回動され、インサイザルピン20がインサイザルテーブル16の突当溝16cに突き当てられるようにする。咬合器10は、しかる後第5の固定ねじ部材29が締め付けられてインサイザルピン保持部材21を上顎模型取付部材17に対して固定し、インサイザルピン20がインサイザルテーブル16の突当溝16cに突き当てられた状態を保持する。
【0048】
一方、咬合器10は、上述したようにスライドガイド機構24を介してスタンド部材13に対して下顎模型取付部材14をスライド操作させて下顎模型1と上顎模型4との前後方向の噛合調整が行われるようにする。咬合器10は、下顎模型取付部材14のスライド操作によってインサイザルテーブル16とインサイザルピン20との相対位置が変化する。咬合器10は、第5の固定ねじ部材29が緩められて、指標38aを目安として連結軸38を介してインサイザルピン保持部材21が上顎模型取付部材17から引き出される。咬合器10は、しかる後第5の固定ねじ部材29を締め付けることによってインサイザルピン20の前後方向の位置が規定される。
【0049】
以上のように構成された咬合器10について、下顎模型1と上顎模型4の取付操作と、これら下顎模型1と上顎模型4との噛合調整の方法について以下説明する。なお、下顎模型1と上顎模型4との噛合調整とは、実際には患者の顎の形態に応じて咬合器10の各部の位置を再現する操作であり、再現された各部を基準として下顎模型1と上顎模型4とが3次元方向で正常に噛み合わされるように調整或いは補正が行われる。咬合器10には、上述したように上顎模型取付台18の主面上に上顎模型4が装着される。上顎模型4は、図1に示すようにインサイザルピン20の指標20aに噛合位置を合わせるようにして接着用石膏5の厚み量が調整され、またこの接着用石膏5に金属プレート6が埋設されてなる。上顎模型4は、金属プレート6がマグネット板33にマグネットチャッキングされることによって上顎模型取付台18上に装着される。
【0050】
咬合器10には、上顎模型4を装着した上顎模型取付台18が、上顎模型4の状態に応じて長孔32cの長さ範囲において左右方向に調整移動されて位置決めされた後、第4の固定ねじ部材28を締め付けることにより上顎模型取付部材17の上顎模型取付部32の主面上に固定される。咬合器10には、下顎模型取付台15の主面上に下顎模型1が装着される。下顎模型1は、インサイザルピン20の指標20aに噛合位置を合わせるようにして接着用石膏2の厚み量が調整され、またこの接着用石膏2に金属プレート3が埋設されてなる。下顎模型1は、金属プレート3がマグネット板30にマグネットチャッキングされることによって下顎模型取付台15上に装着される。
【0051】
咬合器10は、下顎模型1と上顎模型4との噛合高さの調整がスライド支持機構23を操作することによって行われるとともに、インサイザルピン20の高さ調整が行われる。咬合器10は、この場合左右のスライド支持機構23a,23bをそれぞれ独立して操作することにより、下顎模型1と上顎模型4の左右の噛合高さの調整が行われる。咬合器10は、これによって生じるインサイザルピン20の傾きがインサイザルピン保持部材21を回動操作することによって調整される。咬合器10は、下顎模型1と上顎模型4との前後方向の噛合調整がスライドガイド機構24を操作することによって行われる。
【0052】
下顎模型1と上顎模型4とは、咬合器10を用いてその上顎模型取付部材17に装着した上顎模型4を基準として下顎模型1の調整や補正が行われて製作される。したがって、咬合器10においては、上顎模型取付部材17に対して上顎模型4を精度よく装着するために模型取付調整装置50が用いられる。模型取付調整装置50は、図14及び図15に示すように、基台部材51と、連結軸部材52と、支持部材53と、回動部材54と、上顎模型取付基準台55等の部材によって構成される。
【0053】
基台部材51は、円盤状の基部51aと、この基部51aの中心部から一体に立設されるとともに上端に開口する取付孔51cが設けられて円筒状とされた支持部51bとからなる。取付孔51cは、基部51aを貫通しており、その下端部にはねじブッシュ51eが嵌合されている。支持部51bには、その側面に取付孔51cに貫通するねじ孔51dが設けられている。連結軸部材52は、下端部が取付孔51cに挿入されるとともに上端部に支持部材53が一体化されてなる。連結軸部材52には、インサイザルピン20の指標20aに対応して噛み合いの高さ位置を表示する指標52aが設けられている。連結軸部材52は、ねじ孔51dにねじ込まれる止めねじ59によって基台部材51に固定される。連結軸部材52は、止めねじ59を緩めることによって取付孔51c内をスライド操作され、上顎模型取付基準台55の高さ位置を調整するようにする。
【0054】
支持部材53は、図15に示すように、一方の側面に回動部材54が組み付けられる空間部53aが切り欠き形成されることにより断面が略L字状を呈している。また、支持部材53には、この空間部53aに位置して水平方向のねじ孔53bが設けられている。回動部材54は、支持部材53の空間部53aとほぼ等しい厚みを有する支点部54aとその上端に一体に形成された水平な略半円形を呈する取付部54bとからなる。回動部材54には、支点部54aを空間部53aに重ね合わせて支持部材53に組み合わせた状態において、ねじ孔53bに連通する貫通孔54cが設けられている。
【0055】
回動部材54には、側面に回動量を表示するための指標54dが設けられている。回動部材54は、ねじ部56aを貫通孔54cを介してねじ孔53bにねじ込んだ固定ねじ部材56によって支点部54aが支持部材53に対して固定される。回動部材54は、固定ねじ部材56を緩めることによって、支持部材53に対して指標54dを目安として所定の角度量を回動操作される。
【0056】
上顎模型取付基準台55は、板状を呈しており回動部材54の取付部54b上に重ね合わされてねじ止め固定されている。回動部材54は、図示しないが先端の中央に位置して、位置決めピン57が組み付けられる前後方向のスリットが形成されている。位置決めピン57は、上顎模型4の中心位置(正中縫合線)を規定する部材であり、図14に示すようにスリットに沿って前後方向にスライド操作された状態で上下一対の止め固定ねじ部材58a,58bを締め付けることによって固定される。
【0057】
以上のように構成された模型取付調整装置50は、図16に示すように、下顎模型取付台15が取り外された咬合器10の下顎模型取付部材14上に第2の固定ねじ部材26によって取り付けられる。模型取付調整装置50は、連結軸部材52がその指標52aをインサイザルピン20の指標20aに合わせるようにしてその高さ位置が調整される。模型取付調整装置50は、この操作によってフランクフルト平面に対する上顎模型取付基準台55の高さ位置が規定される。模型取付調整装置50は、固定ねじ部材56を緩めた状態で支持部材53に対して回動部材54を所定の角度回動操作することにより患者のフランクフルト平面に対する噛合面の傾きに応じて上顎模型取付基準台55の傾きが設定される。模型取付調整装置50には、上顎模型取付基準台55の主面上に、図16に示すように上顎模型4が仮止めされる。
【0058】
上顎模型4は、仮止めされる際に、位置決めピン57を介してその中心を位置決めされる。上顎模型4には、図17に示すように、上顎模型取付台18との間を埋める装着用石膏5が盛り込まれてこの上顎模型取付台18に固定される。なお、装着用石膏5には、金属プレート6が埋設される。上顎模型4は、上顎模型取付台18に固定された状態で模型取付調整装置50の上顎模型取付基準台55から取り外される。
【0059】
咬合器10には、下顎模型取付部材14に第2の固定ねじ部材26によって下顎模型取付台15が取り付けられるとともに、この下顎模型取付台15上に装着用石膏2と金属プレート3を介して下顎模型1が装着される。咬合器10は、上顎模型取付部材17に対して位置決めされた状態で装着された上顎模型4を基準として下顎模型取付部材14に対して下顎模型1を装着するようにする。勿論、咬合器10は、模型取付調整装置50を用いること無く下顎模型1と上顎模型4とを装着するようにしてもよい。
【0060】
上述した模型取付調整装置50は、基台部材51と上顎模型取付基準台55との間に高さ調整と角度調整とを行うために、連結部材52と、支持部材53及び回動部材54を設けたが、かかる構成に限定されるものでは無いことは勿論である。模型取付調整装置50は、例えば上顎模型取付基準台55の角度調整機構を備え、基台部材51に対してこの上顎模型取付基準台55を直接回動自在に組み合わせて構成してもよい。
【0061】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明にかかる咬合器によれば、上顎模型取付部材に対して上顎模型取付台を左右方向に調整自在に組み合せ、上顎模型取付部材をスタンド部材に対して左右独立して高さ方向に調整自在に組み合せ、スタンド部材に対して下顎模型取付部材を前後方向に調整自在に組み合せ、インサイザルピンを上顎模型取付部材に対して回転方向かつ高さ方向に対して調整自在に組み合せることにより各方向の調整をそれぞれ独立した部位において行って患者の顎の形態を精密に再現するように構成したことにより、構造の簡易化が図られるとともに調整が容易となり精度の高い上顎模型と下顎模型とが効率的に製作することが可能となる。また、咬合器は、下顎模型の取付台部分に直接各調整部位が設けられていないことから錆や石膏の付着等によって調整不能といった事態の発生が防止され、保守性が良好であるとともに取り扱いが簡便である。
【0062】
また、咬合器は、下顎模型取付部材に取り付けられる模型取付調整装置が用いられて上顎模型が上顎模型取付台に精度よく装着されることから、より高精度の上顎模型と下顎模型とが効率的に製作される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態として咬合器の一部切欠き正面図である。
【図2】同咬合器の側面図である。
【図3】同咬合器について、上顎模型取付部材を回動した状態を示す側面図である。
【図4】同咬合器を構成するスタンド部材及び下顎模型取付部材の構成を示す一部切欠き平面図である。
【図5】同咬合器において、スタンド部材に対して下顎模型取付部材を前方へと引き出した状態を示す一部切欠き平面図である。
【図6】同咬合器において、スタンド部材と下顎模型取付部材との間に構成されるスライドガイド機構を説明する分解斜視図である。
【図7】同咬合器を構成する下顎模型取付部材と下顎模型取付台との組合せ構造を説明する要部縦断面図である。
【図8】同咬合器を構成する上顎模型取付部材の構成を説明する底面図である。
【図9】同咬合器を構成する上顎模型取付部材と上顎模型取付台との組合せ構造を説明する要部縦断面図である。
【図10】同咬合器において、スタンド部材に対して上顎模型取付部材の高さ位置を調整するスライド支持機構の操作を説明する要部側面図であり、上顎模型取付部材が最下部に位置された状態を示す。
【図11】同咬合器において、スタンド部材に対して上顎模型取付部材の高さ位置を調整するスライド支持機構の操作を説明する要部側面図であり、上顎模型取付部材を上方へとスライド操作した状態を示す。
【図12】同咬合器において、インサイザルピンの角度調整操作を説明する要部正面図である。
【図13】同咬合器において、インサイザルピンの支持構造を説明する要部分解斜視図である。
【図14】同咬合器に用いられて、上顎模型取付部材に対して上顎模型を装着する際の基準治具を構成する模型取付調整装置の側面図である。
【図15】同模型取付調整装置の縦断面図である。
【図16】同模型取付調整装置を咬合器に取り付けるとともに、この模型取付調整装置によって上顎模型を位置決めした状態を説明する図である。
【図17】同模型取付調整装置によって位置決めされた上顎模型を上顎模型取付部材に対して装着する操作を説明する図である。
【符号の説明】
1 下顎模型、4 上顎模型、10 咬合器、11 下顎フレーム構体、12上顎フレーム構体、13 スタンド部材、14 下顎模型取付部材、15 下顎模型取付台、16 インサイザルテーブル、17 上顎模型取付部材、18 上顎模型取付台、20 インサイザルピン、21 インサイザルピン保持部材、22 回動支持機構、23 スライド支持機構、24 スライドガイド機構、25乃至29 固定ねじ部材、30,33 マグネット板、31 上顎模型取付部材の基部、32 同上顎模型取付部、34 スライド軸、35 軸受部材、36 支軸、37 関節軸受、38 連結ピン、50 模型取付調整装置、51 基台部材、52 連結軸部材、53 支持部材、54 回動部材、55 上顎模型取付基準台

Claims (3)

  1. 一対の柱部とこれら柱部間を連結する連結部とが一体に形成されてなるスタンド部材と、上記スタンド部材の連結部に対して基端部が水平方向に対してスライド自在に組み合わされた下顎模型取付部材と、上記下顎模型取付部材の主面中央部に設けた取付部に取り付けられるとともに主面上に下顎模型が設置される下顎模型取付台と、上記下顎模型取付部材の他端部に設けられたインサイザルテーブルとから構成された下顎フレーム構体と、
    上記スタンド部材のそれぞれの柱部に対して回動支持機構とスライド支持機構とを介して基部の両側部を回動自在かつスライド自在に支持されてなる上顎模型取付部材と、上記下顎模型取付台に対応して上記上顎模型取付部材のフランクフルト平面を構成する主面の中央部に設けた取付部に上記下顎模型取付部材のスライド方向に対して直交する水平方向に対して移動自在に取り付けられる上顎模型取付台と、上記上顎模型取付部材の先端部にスライド自在かつ首振り自在に支持する支持機構を介して取り付けられるインサイザルピンとから構成された上顎フレーム構体と
    を組み合わせて構成してなる咬合器。
  2. 上記下顎フレーム構体の各構成部材と上記上顎フレーム構体の各構成部材には、それぞれの外周縁部が円弧状を呈するように全体に面取りが施されていることを特徴とする請求項1に記載の咬合器。
  3. 上記下顎模型取付部材の主面に固定される基台部と、この基台部に対して高さ位置が調整自在とされるとともに上記下顎模型取付部材の主面に対する角度が調整自在に組み合わされた上顎模型取付基準台とからなる模型取付調整装置が用いられ、
    上記上顎模型は、上記下顎模型取付部材に取り付けられてフランクフルト面に対する角度及び高さが調整された上記上顎模型取付基準台上に仮止めされた後、この上顎模型取付基準台を基準として上記上顎模型取付台に装着されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の咬合器。
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