JP3554086B2 - 擁壁ブロック製造用型枠 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
前壁部に任意の深彫り紋様の形成が可能で、前壁部背面の控え壁に複数のPC棒鋼の挿通孔を設けた擁壁ブロックの製造時間短縮と省力化生産に有用な擁壁ブロック製造用型枠を提供する。
【0002】
【従来の技術】
順不同であるが、図7を使用し、前壁部背面の控え壁にPC棒鋼の挿通孔を設けた擁壁ブロックBLと、図8を使用し、該擁壁ブロックの使用状態(施工法)を説明する。
【0003】
図7は、本発明で造る擁壁ブロックの斜視図である、この擁壁ブロックBLは、前壁部10の背面側に2枚の控え壁15を突設し、控え壁15部の上下方向にPC棒鋼を挿通する複数の挿通孔20を穿設したもので、二点鎖線で示すBL2,BL3,BL4のように、擁壁高さ(積み上げ段数)の土圧に対応して控え壁の奥行き長さが異なる各サイズがあり、擁壁の下部側には控え壁15の奥行きが長く挿通孔20の孔数の多い擁壁ブロックBLを使用し、上段にBL2更に上段にBL3等を積み上げる。次に擁壁ブロックの施工方法を説明する。
【0004】
図8は、擁壁ブロックの施工説明図である。図に示す擁壁ブロックBL乃至BL4等は、アンカー筋Aを突出させた基礎工1上に、擁壁ブロックBLの挿通孔20部にアンカー筋Aを挿入して、上段に擁壁ブロックBL2を載置し、該擁壁ブロックBL2上面の挿通孔20からPC棒鋼pcを挿通して挿通孔20内に防食兼固着のためのグラウト材を充填し、更に上段に擁壁ブロックBL3を載置し、該擁壁BL3の挿通孔20からPC棒鋼pcを挿通し(空隙部にグラウト材を充填し)更に上段に擁壁ブロックBL3,BL4等を載置し、各擁壁ブロックを順次積み上げ一体化して擁壁を構築する。次に従来の擁壁ブロック製造用型枠Kを説明する。
【0005】
図9は、従来の擁壁ブロック製造用型枠の斜視図であり(以後、型枠Kと称うす)、長さを2分割した複数の挿通孔形成部材9と同じく長さを2分割した中子6を、前・後妻板7,7夫々に固着して、牽引用金具fを設けた前・後妻板7,7を台枠5上に前後動可能に転支し、台枠左右に開閉自在な両側板8,8を設け、前・後妻板7,7と両側板8,8間に既知の締付クランプcまたは図示しない長ボルトによる締結手段を配設し、螺入時に側板8端部8bを押圧可能な多数の押しボルトboを前後妻板の外縁近辺に螺入した開放手段を設け構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の型枠Kでは、脱型時(擁壁ブロックを型枠から取出すため型枠を開く時)に、先ず、前後妻板7,7と両側板8,8間に設けた多数の締付クランプcまたは長ボルトを手動で開放した後前後妻板を開くのであるが、前後妻板7,7の開放は複数の挿通孔形成部材9および中子6とコンクリートとの付着力で強力な引張力を要し、それらの付着を剥離するため、前後部妻板の端部(図9に示す斜線部e)を人力で叩打して中子6・挿通孔形成部材9等の剥離を促しながら開いたり、前後妻板7,7の牽引用金具fを牽引しながら、前後妻板に設けた多数の押しボルトboの先端で、側板8端部8bを押圧して剥離を促す等の作業を併用し妻板を解放している。従って、脱型のための型枠開きと型枠の再組付の工程に4人の作業員で合計約30分を要し、型枠Kの変形・損傷による擁壁ブロックの精度不良等の欠点が多かった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来技術の型枠Kの欠点を排除するため、請求項1では、台枠30前後に前部妻板50と後部妻板60を前後動可能に転支して設け、前後方向に2分割した中子55,65と複数の挿通孔形成部材70を前記前部妻板50と後部妻板60に夫々固着して設け、台枠側面に左右側板80,80を開閉自在に設けた擁壁ブロック製造用型枠において、
回動頭部151を設けた螺杆152を前部妻板50に設けたスラスト軸受52で支承し、螺杆152の螺刻部153に長方形の締付ナット160を螺嵌して前部側中子55端部から突設し、後部側中子65の端部に前記締付ナット160が両中子55,65当接時潜り抜け可能な長方形(横長)の締付孔66を穿設し、該締付孔66背面側に締付ナット160の垂直位置停止用の回動制限片67と水平位置停止用の回動制限片68を設けた前部・後部妻板50,60間の締結手段200と、左右側板80,80の前後にL形リンク270の中点部270Cを枢着し、下端部に揺動自在なナット部材260L,260Rを夫々軸着し、回動頭部251を設け前後夫々に逆位相の螺刻部252L,252Rを設けた螺杆252を前記ナット部材260L,260Rに螺嵌し、螺杆252の回転運動を前部・後部妻板50,60の内側からの押圧運動に変換可能な開放手段300を設けた、ことを特徴とする擁壁ブロック製造用型枠を構成している。
【0008】
請求項2では、前部・後部妻板50,60間の締結手段200Bが、両中子55,65の分離状態時に長方形の締付ナット160を常時水平位置に保持し、両中子55,65当接時に後退可能な長方形筒状のガイド180を締付ナット160に遊嵌した締結手段200Bである、ことを特徴とする請求項1記載の擁壁ブロック製造用型枠を構成している。
【0009】
請求項3では、前部・後部妻板50,60間の締結手段200Cが、回動頭部151を設けた螺杆152を前部妻板50のスラスト軸受52で支承し、螺杆152螺刻部153に、前部妻板50側に制限杆165を突設した長方形の締付ナット160cを螺嵌し、制限杆165を前部側中子65端部に設けた1/4円周の回動制限溝170内に常時係合且つ摺動可能に挿入して設け、後部側中子65の端部に前記締付ナット160cが両中子55,65当接時潜り抜け可能な長方形の締付孔66を穿設した締結手段200Cである、ことを特徴とする請求項1又は2何れか1項記載の擁壁ブロック製造用型枠を構成している。
【0010】
【作用】
図1乃至図3を使用し、本発明の請求項1に係る擁壁ブロック製造用型枠(以後、型枠TKと称うす)作用を説明する。図3(a)は型枠閉じ(締結した)状態を示す図で、型枠TK開き時(脱型時)に前部妻板50にスラスト軸受52で支承された締結手段200の回動頭部151を左回転(矢符L)すれば、前部側の中子55と後部側中子65間を緊締していた長方形の締付ナット160が押圧を解いて後退して緩み、螺嵌部の接触摩擦により締付ナット160は左回転し、締付孔66背面に設けた水平位置停止用の回動制限片68により水平状態になり、該締付ナット160は長方形の締付孔66を潜り抜け可能となる、次に、両側板80,80の前端部に突出した開放手段300(図1,図2参照)の回動頭部251を左回転すれば、L形リンク270先端部のローラ270rが前後妻板50,60を内側から強力に押圧しながら転動し、両中子55,65及び複数の挿通孔形成部材70とコンクリート面が瞬時に剥離する(この時点で回動頭部を逆転し開放手段300を復帰しておく)、剥離以後両妻板50,60は図3(b)に示すように手動でも容易に開くことができ、型枠TK側方へ簡単に脱型でき作業員2人の場合約5分間(試作試験による)で擁壁ブロックの脱型工程を終えることができる。
【0011】
また、型枠TK組付時(打設時)に、両側板80,80を起こし前部・後部妻板50,60を両中子55,65端面が当着する位置まで押し込んだ後、締結手段200の回動頭部151を右回転すれば両側板80,80を挟持したまま前部妻板50と後部妻板60が締付られ型枠TKの締結工程が完了する。締結手段200と開放手段300が全て前部妻板60側からの数秒間の回動操作で行えるため、簡単な電動・空気工具(インパクトレンチ)等で省力化でき、型枠組付工程が作業員2人の場合約5分間(試作試験による)で終了し、生産効率が飛躍的に向上する。なお、締結手段200は螺杆152をスラスト軸受52で支承しているため、締結用の電動・空圧工具使用時の締付トルクを大幅に軽減できる。
【0012】
次に図4を使用し請求項2に係る締結手段の作用を説明する。この締結手段200Bは、前記(請求項1記載の締結手段)作用に加え、型枠開き時の掃除工程において、締付ナット160に遊嵌した長方形筒状のガイド180が、該締付ナット160の自由回転を防止し常時水平状態を保持するため、型枠閉じ時に作業の円滑が計れ該当部材の衝突による損傷事故を未然に防止できる。
【0013】
次に図5を使用し、請求項3に係る締結手段200Cの作用を説明する。この締結手段200Cは、型枠開き時に締結手段の回動頭部151を左回転して緩めれば、螺杆152と締付ナット160c間の摩擦のため、該締付ナット160cは必然的に90°左回転して水平状態で停止し(制限溝170内に遊挿した制限杆165のため)、次回の型枠組付工程が円滑に行える、また型枠の締付時には螺杆252と締付ナット160c間の摩擦のため、該締付ナット160cは確実に90°右回転して垂直状態で停止して締付けられるため、型枠全体の締結が円滑に行える。
【0014】
次に図6を使用し、開放手段の別の実施例の作用を説明する。図6(a)に型枠TK開放前の状態で示すこの実施例300Bは、型枠TKの側板80の高さがより高い場合に有用であって、両側板80,80の前端部に突出した開放手段300Bの回動頭部251を左回転すれば、螺杆252に螺嵌したナット部材260Lと260Rは互いに接近する方向に移動し、図6(b)に示すように、両ナット部材260Lと260Rの軸部267に連結孔270hを軸着された上側のL形リンク270と、該軸部267に連結長孔271hにより摺動自在に連結された下側のリンク271の先端部270rが前後妻板50,60の内側の上下部分を均等に押圧しながら転動し、側板80の高さが高い場合も、両中子55,65及び複数の挿通孔形成部材70とコンクリート面が瞬時に剥離する(この時点で回動頭部を逆転し開放手段300を復帰しておく)、剥離以後両妻板50,60は手動でも容易に開くことができる。
【0015】
【実施例】
図1乃至図6は、本発明の実施例を示すもので、図1は、請求項1に係る擁壁ブロック製造用型枠の一部分解した斜視図、図2は、請求項1に係る締結手段の構成及び作用を示す説明図、図3は、請求項1に係る開放手段の構成及び作用を示す説明図、図4は、請求項2に係る締結手段の構成及び作用を示す説明図、図5は、請求項3に係る締結手段の構成及び作用を示す説明図、図6は、開放手段の別の実施例の構成及び作用を示す説明図、図7は、本発明で造る擁壁ブロックの斜視図、図8は、擁壁ブロックの施工断面図、図9は、従来の擁壁ブロック製造用型枠の斜視図である。
【0016】
以下、図1乃至図6を参照して本発明の型枠TKの構成を説明する。
【0017】
図1は、請求項1に係る型枠TKの一部分解した斜視図で、本実施例の概略構成を示すため前部妻板60と後部妻板70を僅か開き、左側板80を脱型位置まで開き右側板80は図下部に取外して示しているが、型枠TKの側方への脱型を容易にするため何れかの側板80を全開可能にするのが好ましい、なお、両側板に設けた開放手段300は一部を拡大し示している。図2は、締結手段200の構成と作用を示す説明図で、要部以外を省略し一部を破断している、図3は、開放手段300の構成と作用を示す説明図で、る。以上の図により本発明の実施例を詳記する。
【0018】
図1,図2に示す締結手段200は、型枠TK閉じ時に前部妻板50と後部妻板60を介して型枠全体を締結するもので、
前部妻板50のスラスト軸受52,軸受部53により螺杆152を支承し、螺杆152の螺刻部153(右螺子を螺刻)に長方形の締付ナット160を螺嵌して前部側中子55端部から突出させて設け、後部側中子65の端部に前記締付ナット160が両中子55,65当接時潜り抜け可能な長方形の締付孔66を穿設し、該締付孔66背面側(図2上部に背面視で示す)に締付ナット160の右回転時に垂直位置で停止可能な回動制限片67と、左回転時に水平位置で停止可能な回動制限片68を配設し構成している。なお、図2の符号Mは前壁部に紋様形成のため型枠TKに載置した面プレートMである。
【0019】
図2(a)は型枠TK閉じ時を示す図で、
両中子55,65の端面が当接する位置まで前部・後部妻板50,60を閉じ、螺杆152の回動頭部151を右回転すれば、既に締付孔66を潜り抜けていた締付ナット160は螺刻部との接触摩擦のため、90°右回転して回動制限片67により垂直位置で停止し、締付ナット160は右回転が進行するに従い垂直状態のまま型枠全体を強力に締結する。
【0020】
また、図2(b)は型枠TK開き時を示す図で、
回動頭部151を左回転すれば、締付ナット160が垂直位置のまま緩み、締付孔66背面側との当接が離れた時点で螺刻部153との接触摩擦のため、締付ナット160は左回転し始め回動制限片68のため水平状態で停止し、締付孔66を潜り抜け可能となるため開放手段300を操作すれば前部・後部妻板50,60を開くことができる。次に、型枠の開放手段300を説明する。
【0021】
図1及び図3に示す開放手段300は、両側板80に設けた螺杆252の回転運動を前部・後部妻板50,60の内側からの押圧運動に変換するL形のリンク機構であって、
倒立させたL形リンク270の水平部先端に開放を円滑にするローラ270rを軸着し、該L形リンク270の中間支点270cを左右側板80,80に固着した基部87に枢着し、L形リンク270の下端部に連結孔270hを設け、一方回動頭部251を設け螺杆252の前後部に夫々逆位相の螺刻部252L,252Rを螺刻し、該両螺刻部252L,252Rに、両側に軸部267を設けた両ナット部材260L,260Rを螺嵌し、軸部267を前記L形リンクの夫々の連結孔270hに揺動自在に軸着し、前記回動頭部251が両側板80,80に設けた長孔85から突出する如く設け、また、両側板の前後にL形リンク先端部が突出可能な開口部27を設け、開口部近辺にL形リンクの揺動範囲を規制するストッパstを設けた開放手段300を構成している。
【0022】
図3(a)に示すのは、前後部妻板50,60の開放操作前を示す図で、両ナット部材260L,260Rは互いに離反し、L形リンク270先端のローラ270rは前後妻板とは未だ接触していない。型枠TK開放時に螺杆252を左回転すれば、両ナット部材260L,260Rは互いに接近し、L形リンク270先端のローラ270rが、図3(b)のように前記開口部27から突出して前後部妻板50,60を内側から強力に押圧して両中子55,65及び複数の挿通孔形成部材70とコンクリート面が瞬時に剥離して(この時点で回動頭部を逆転し開放手段300を復帰しておく)両妻板は開放される。剥離以後両妻板50,60は手動でも容易に開くことができる。
【0023】
なお、製造用型枠の側板高さがより高い場合(控え壁の奥行きの長い擁壁ブロックBLの場合)には、同様のL形リンク270,271を上下に組み合わせた(図6を参照し後述する)開放手段300Bにしてもよい。次に、図4により請求項2に係る締結手段200Bを説明する。
【0024】
図4は請求項2に係る締結手段200Bで、図4(a)に型枠開き状態の中子断面(側面視の)を示している。
この締結手段200Bは、前部妻板50のスラスト軸受52(符号53は補助軸受部)で支承した螺杆152の螺刻153に長方形の締付ナット160を螺嵌し、前部側中子55の端部の長方形開口部56から突出させて設け、該長方形開口部56内に、前面端部を拡幅した長方形筒状のガイド180を摺動自在に挿通し、前記締付ナット160にガイド180を遊嵌し、該ガイド180を長方形開口部56外方へ付勢する湾曲した板スプリング185を前記ガイド180と前部中子55間に設け、型枠TK閉じ時の両中子55,65の当接時に締付ナット160が締付孔66を潜り抜けるまで常時水平状態に保持可能に構成している。なお、板スプリング185は鎖線で示す蔓巻スプリング186にすることもできる。
【0025】
上記の如く構成した締結手段200Bは、
図4(b)に示すように前部・後部妻板50,60を閉じれば(この時点では両中子端面間に僅かな間隙gがある)、ガイド180に保持され水平状態である締付ナット160は後部中子65の締付孔66を水平状態のまま潜り抜け、この時点で螺杆152を右回転(矢符R)すれば締付ナット160は螺刻部の接触摩擦のため矢符R2のように右回転して、垂直位置停止用の回動制限片67で二点鎖線で示す垂直位置160’で停止する、以後、右回転が進行すれば図4(c)に示すように締付孔66背面の上下部分を強力に締付け両中子端面が密着(矢符g2)し型枠TK全体が締結される。この締結手段200Bは、締付ナット160の自由回転を防止し常時水平状態を保持するため、型枠閉じ時に作業の円滑が計れ該当部材の衝突による損傷事故を未然に防止できる。
【0026】
図5は請求項3に係る締結手段200Cで、図5(a)に型枠開き状態の中子断面(側面視の)を示している。
この締結手段200Cは、螺杆152を前部妻板50のスラスト軸受52と前部側中子55端部の軸受部53で支承し、該軸受部53の同心円上に1/4円周の制限溝170を設け、前記軸受部53から突出した螺杆152の螺刻部153に、前方へ向けて制限杆165を突設した長方形の締付ナット160cを、制限杆165が常時前記制限溝170内にあって90°の範囲内を回動可能に螺刻部153に螺嵌し構成している。
【0027】
上記の如く構成した締結手段200cは、
図5(b)に示すように前部・後部妻板50,60を閉じれば(この時点では両中子端面間に僅かな間隙gがある)、水平状態である締付ナット160cは後部中子65の締付孔66を水平状態のまま潜り抜け、この時点で螺杆152を右回転(矢符R)すれば締付ナット160cは螺刻部153との接触摩擦のため矢符R2のように右回転して、制限溝170に挿通した制限杆165のため正確に二点鎖線で示す垂直位置160c’で停止し、以後、螺杆152の右回転が進行すれば図4(c)に示すように締付孔66背面の上下部分を強力に締付け両中子端面が密着(矢符g2)し型枠TK全体が締結される。また、型枠開き時に、螺杆152を左回転すれば締付ナット160cは後退し当接が解除された時点で、螺刻部153との接触摩擦のため90°確実に左回転して、制限溝170に挿通した制限杆165のため水平位置で停止し、締付孔66を潜り抜け可能となる。
【0028】
次に図6を使用し、型枠TKの側板80の高さがより高い場合に有用な開放手段の別の実施例を説明する。
図6(a)に示す実施例300Bは、要部以外を省略した前部・後部妻板50,60の開放前の図で(締結手段200が緩んでいても未だ両妻板と両側板間は略密着状態である)。両側板80に設けた開放手段300Bは、倒立させた上側のL形リンク270の水平部先端に開放を円滑にするローラ270rを軸着し、該L形リンク270の中間支点270cを左右側板80,80に固着した基部87aに枢着し、L形リンク270の下端部に連結孔270hを設け、回動頭部251が両側板80,80前端の長孔85から突出する如く設けた螺杆252の、前後部に夫々逆位相の螺刻部252L(左螺子部),252R(右螺子部)を螺刻し、該両螺刻部252L,252Rに、両側に軸部267を設けた両ナット部材260L,260Rを螺嵌し、軸部267を前記L形リンクの夫々の連結孔270hに揺動自在に枢着し、前記上側のL形リンク270と上下逆に基部87bに枢着した下側のL形リンク271を設け、該L形リンク271の直立部端部に連結長孔271hを設け、該連結長孔271h部を前記両ナット部材260Lと260Rの軸部267に摺動可能に挿入し、両側板の前後端部に上下のL形リンク先端部が突出可能な開口部27を設け、開口部近辺に上下のL形リンク270,271の揺動範囲を規制するストッパstを設けた開放手段300Bを構成している。
【0029】
上記のように開放手段300Bを構成すれば、
図6(b)に示す型枠TKの開放時に、両側板80,80の前端部の長孔85から突出した回動頭部251を左回転すれば、螺杆252に螺嵌したナット部材260Lと260Rは互いに接近する方向に移動し、両ナット部材260Lと260Rの軸部267に軸着された上側のL形リンク270と、該軸部267に連結長孔271hにより摺動自在に連結された下側リンク271の先端部のローラ270rが前後妻板50,60の内側の上下部分を均等に押圧しながら転動し、側板80の高さが高い場合も、両中子55,65及び複数の挿通孔形成部材70とコンクリート面が瞬時に剥離して(この時点で回動頭部を逆転し開放手段300Bを復帰しておく)前部・後部妻板50,60は開放される。剥離以後両妻板50,60は手動でも容易に開くことができる。
【0030】
【発明の効果】
請求項1記載の擁壁ブロック製造用型枠は、脱型時に締結手段200の回動頭部151を左回転すれば、前部側の中子55と後部側中子65間を締結していた締付ナット160が、押圧を解いて左回転し締付孔66背面に設けた回動制限片68により水平位置で停止し、該ナット160は締付孔66を潜り抜け可能となる、次に、両側板80,80の前端部に突出している開放手段300の回動頭部251を左回転すれば、L形リンクの先端部のローラ270rが前後妻板50,60を内側から強力に押圧しながら転動し、両中子55,65及び複数の挿通孔形成部材70とコンクリート面が瞬時に剥離し、開放手段300のリンク系の弾性により、押圧最終位置よりも惰性で余分に開く、以後、両妻板50,60は手動でも容易に開くことができ、型枠TK側方へ簡単に脱型でき作業員2人の場合約5分間(試作試験による)で擁壁ブロックの脱型工程を終えることができる。
【0031】
また、型枠TK組付時(打設時)に、両側板80,80を閉じ、前部・後部妻板50,60を両中子55,65端面が当着するまで押し込んだ後、締結手段200の回動頭部151を右回転すれば両側板80,80を挟持したまま前部妻板50と後部妻板60が締付られ型枠TKの緊締工程が完了する。締結手段200と開放手段300が全て前部妻板60側からの数秒間の回動操作で行えるため、簡単な空気・電動工具等で省力化でき、型枠組付工程が作業員2人の場合約5分間(試作試験による)で終了し、生産効率が飛躍的に向上する効果がある。
【0032】
請求項2に係る締結手段200Bを適用すれば、前記(請求項1記載の締結手段)作用に加え、型枠開き時の掃除工程において、締付ナット160に遊嵌した長方形筒状のガイド180が、該締付ナット160の自由回転を防止し常時水平状態を保持するため、次回型枠閉じ時に作業が円滑に行えて省力化が計れ、該当部材の衝突による損傷事故を未然に防止できる効果がある。
【0033】
また、請求項3に係る締結手段200Cを適用すれば、型枠開き時に締結手段の回動頭部251を左回転して緩めれば、該締付ナット160が確実に90°左回転して水平状態で停止しするため、次回の型枠組付工程が円滑に行える、また型枠の締付時には締付ナット160が確実に90°右回転して垂直状態で停止するため、型枠全体の締結が円滑に行えて省力化が計れ、構造が簡単なため型枠コストが下がりメンテナンスも簡単になる効果がある。
【0034】
また、開放手段の別の実施例300Bは、前述した開放手段300S同様に開放手段300Bの回動頭部251を左回転すれば、螺杆252に螺嵌したナット部材260Lと260Rは互いに接近する方向に移動し、両ナット部材260Lと260Rの軸部267に軸着された上側のL形リンク270と、該軸部267に長孔277により摺動自在に連結された下側リンク271の先端部270rが前後妻板50,60の内側の上下部分を均等に押圧し、側板90の高さが高い場合も、両中子55,65及び複数の挿通孔形成部材70とコンクリート面が瞬時に剥離する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、請求項1に係る擁壁ブロック製造用型枠の一部分解した斜視図。
【図2】は、請求項1に係る締結手段の構成及び作用を示す説明図。
【図3】は、請求項1に係る開放手段の構成及び作用を示す説明図。
【図4】は、請求項2に係る締結手段の構成及び作用を示す説明図。
【図5】は、請求項3に係る締結手段の構成及び作用を示す説明図。
【図6】は、開放手段の別の実施例の構成及び作用を示す説明図。
【図7】は、本発明で造る擁壁ブロックの斜視図である。
【図8】は、擁壁ブロックの施工断面図。
【図9】は、従来の擁壁ブロック製造用型枠の斜視図。

Claims (3)

  1. 台枠30前後に前部妻板50と後部妻板60を前後動可能に転支して設け、前後方向に2分割した中子55,65と複数の挿通孔形成部材70を前記前部妻板50と後部妻板60に夫々固着して設け、台枠側面に左右側板80,80を開閉自在に設けた擁壁ブロック製造用型枠において、
    回動頭部151を設けた螺杆152を前部妻板50に設けたスラスト軸受52で支承し、螺杆152の螺刻部153に長方形の締付ナット160を螺嵌して前部側中子55端部から突設し、後部側中子65の端部に前記締付ナット160が両中子55,65当接時潜り抜け可能な長方形の締付孔66を穿設し、該締付孔66背面側に締付ナット160の回動制限片67,68を設けた前部・後部妻板50,60間の締結手段200と、左右側板80,80の前後にL形リンク270の中点部270Cを枢着し、下端部に揺動自在なナット部材260L,260Rを夫々軸着し、回動頭部251を設け前後夫々に逆位相の螺刻部252L,252Rを設けた螺杆252を前記ナット部材260L,260Rに螺嵌し、螺杆252の回転運動を前部・後部妻板50,60の内側からの押圧運動に変換可能な開放手段300を設けた、ことを特徴とする擁壁ブロック製造用型枠。
  2. 前部・後部妻板50,60間の締結手段200が、両中子55,65の分離状態時に長方形の締付ナット160を常時水平位置に保持し、両中子55,65当接時に後退可能な長方形筒状のガイド180を締付ナット160に遊嵌した締結手段200である、ことを特徴とする請求項1記載の擁壁ブロック製造用型枠。
  3. 前部・後部妻板50,60間の締結手段200が、回動頭
    部151を設けた螺杆152を前部妻板50のスラスト軸受52で支承し、螺杆152螺刻部153に、前部妻板50側に制限杆165を突設した長方形の締付ナット160を螺嵌し、制限杆165を前部側中子65端部に設けた1/4円周の回動制限溝170内に常時係合且つ摺動可能に挿入して設け、後部側中子65の端部に前記締付ナット160が両中子55,65当接時潜り抜け可能な長方形の締付孔66を穿設した締結手段200である、ことを特徴とする請求項1又は2何れか1項記載の擁壁ブロック製造用型枠。
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