JP3554059B2 - アルカリ蓄電池用正極の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アルカリ蓄電池用正極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ蓄電池に組込まれる正極としては、従来より焼結式正極が用いられている。前記焼結式正極は、穿孔鋼またはニッケル網体等の二次元基板にニッケル粒子を焼結し、得られた多孔板の十数ミクロンの孔にニッケル塩水溶液を含浸した後、アルカリ処理して前記含浸ニッケル塩を水酸化ニッケルに変化させることにより製造される。
【0003】
しかしながら、前記焼結式正極はその製造においてニッケル塩の含浸工程およびアルカリ処理工程のような複雑な活物質含浸操作を必要とする。また、所定量の活物質を含浸するには前記操作を通常、4〜10回程度繰り返す必要がある。その結果、製造コストが高くなるという問題がある。さらに、前記焼結により得られたニッケル粒子焼結体は、多孔度が80%を越えると機械的強度を維持することが困難になるため、前記活物質の充填量を増加させることには限界があった。
【0004】
このようなことから、水酸化ニッケル粒子に導電材、結着剤および水を添加、混合してペーストを調製し、このペーストをスポンジ状金属多孔体、金属繊維マットのような3次元構造の導電性芯体に充填して正極を製造することが検討されている。このような方法により製造された正極は、焼結式正極に対して非焼結式正極(またはペースト式正極)と呼ばれといる。前記ペースト式正極は、前記金属多孔体の多孔度および平均孔径が前記焼結式正極に比べて大きいために活物質の充填が容易で、かつ充填量を増加させることができる利点を有する。
【0005】
しかしながら、ペーストが充填される金属多孔体の細孔が焼結式正極の細孔に対して大きいために、活物質と集電体との距離が大きくなって集電性が悪化される。また、活物質の絶対量そのものを増大させるので、導電性の低下はもとより、特に過充電時における電極膨脹率の増大、ひいては充放電効率を含めた利用率の低下を招く。
【0006】
すなわち、ペースト式正極は焼結式正極に比べて容量を増大できるという利点を達成するには、(1) 導電性の向上、(2) 電極膨脹率抑制、(3) 充放電効率の向上、の3つの問題点を解決する必要がある。(1) の導電性の向上は、充放電中における平均充放電分極電位を下げる意味で非常に重要である。前記導電率を向上させるためには、ペーストの調製に際し、水酸化ニッケル粒子にコバルト酸化物、コバルト水酸化物、金属コバルトのようなコバルト化合物の粒子を添加することが一般に行われている。しかしながら、粒子同士または粉末同士の均一混合はむ難しく、通常の混合法によると水酸化ニッケル粒子の利用率を高め、安定化させるためには、少なくとも10重量%程度のコバルト化合物粒子を添加する必要がある。このようなコバルト化合物粒子の添加量の増大によって正極中の水酸化ニッケル粒子の量を相対的に増加させることができなくなるため、容量の向上が妨げられ、さらにコバルト化合物は価格変動も大きいために電池の価格設定のネックになっていた。
【0007】
コバルト化合物の添加量を減らしても従来と同等以上の水酸化ニッケルの利用率を確保するには、水酸化ニッケル粒子と導電剤であるコバルト化合物を均一に混合することが必要である。特開平1−281670号および特開平6−187984号には、水酸化ニッケル粒子とコバルト化合物粒子とをメカノケミカル法により均一に混合することが開示されている。このメカノケミカル法は、水酸化ニッケル粒子を母粒子、コバルト化合物を子粒子として両者を機械的衝撃力によって母粒子表面に子粒子を分散付着ないし分散接合させる表面改質の手法である。
【0008】
しかしながら、水酸化ニッケル粒子の周囲にコバルト化合物粒子を均一に付着ないし接合させるためには、加える衝撃力を相当高くする必要がある。その結果、コバルト化合物粒子の一部が酸化されて四酸化三コバルト(Co )まで転移したり、Ni(OH) 粒子そのものが砕けてしまうことがあった。四酸化三コバルト(Co )は、スピネル構造を有する安定な酸化物であるため、アルカリ電解液中では従来のコバルト化合物から得られる高導電性のオキシ水酸化コバルト(CoOOH)に転移し難い。このため、水酸化ニッケル粒子を高利用率にすることができない。その結果、コバルト化合物の添加量削減には実質的に貢献できなくなる。活性ガス雰囲気での処理も考えられるが、設備コストが高くなり、その上、後者の問題も解消できない。前述した粉砕によりNi(OH) 粒子が微粉末化されると、ペーストの流動性が低下するため、三次元基板への均一充填性に支障となる。また、メカノケミカル法による市販衝撃設備では水酸化ニッケル粒子の周囲にコバルト化合物粒子が均一付着したものを製造する際の収率が最高でせいぜい90%であるため、実用化の妨げになっていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のようなミキサによる混合やメカノケミカル法によるコバルト化合物での表面改質に比べて少ないコバルト化合物量で利用率の高いアルカリ蓄電池用正極を製造し得る方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるアルカリ蓄電池用正極の製造方法は、亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子の表面に沈殿法によりコバルト化合物層を形成して複合水酸化ニッケル粒子を作製する工程と、
この複合水酸化ニッケル粒子および結着剤を含むペーストを調製する工程と、
このペーストを耐アルカリ性金属多孔体に充填する工程と
を具備し、
前記コバルト化合物層は、前記亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子に前記複合水酸化ニッケル粒子に対して金属コバルト換算で1.0重量%以上、4.0重量%以下の量で付着されていることを特徴とするものである。
【0011】
前記水酸化ニッケル粒子は、平均粒径が5〜30μm、タップ密度が1.8g/cm 以上であることが好ましい。前記水酸化ニッケル粒子は、比表面積が8〜25m /gであることが好ましい。
【0012】
前記水酸化ニッケル粒子は、球状もしくはそれに近似した形状を有することが好ましい。
前記コバルト化合物としては、水酸化コバルトが好適である。ただし、このコバルト化合物は微量のCoO 、Co 等の酸化コバルトを含むことを許容する。
【0013】
前記水酸化ニッケル粒子は、球状もしくはそれに近似した形状を有することが好ましい。
前記コバルト化合物としては、水酸化コバルトが好適である。ただし、このコバルト化合物は微量のCo3 4等の酸化コバルトを含むことを許容する。
【0014】
前記結着剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、及びフッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等を挙げることができる。このような結着剤は、前記複合水酸化ニッケル粒子に対して0.1〜2重量%の範囲で配合することが好ましい。
【0015】
前記耐アルカリ性金属多孔体としては、例えばスポンジ状金属多孔体、フェルトメッキ基板等を挙げることができる。
前記ペーストが充填された前記耐アルカリ性金属多孔体は、その後に乾燥され、さらに必要に応じてプレス成形が施される。
【0016】
本発明により製造された正極を備えたアルカリ蓄電池(例えば円筒形アルカリ蓄電池)を図1を参照して詳細に説明する。
負極1は、正極2との間にセパレータ3を介在して渦巻状に捲回され、有底円筒状の容器4内に収納されている。アルカリ電解液は、前記容器4内に収容されている。中央に穴5を有する円形の封口板6は、前記容器4の上部開口部に配置されている。リング状の絶縁性ガスケット7は、前記封口板6の周縁と前記容器4の上部開口部内面の間に配置され、前記上部開口部を内側に縮径するカシメ加工により前記容器4に前記封口板6を前記ガスケット7を介して気密に固定している。正極リード8は、一端が前記正極2に接続、他端が前記封口板6の下面に接続されている。帽子形状をなす正極端子9は、前記封口板4上に前記穴5を覆うように取り付けられている。ゴム製の安全弁10は、前記封口板4と前記正極端子9で囲まれた空間内に前記穴5を塞ぐように配置されている。
【0017】
次に、前記負極1、セパレータ3およびアルカリ電解液について詳細に説明する。
1)負極1
この負極1は、例えば水素を吸蔵・放出する水素吸蔵合金粒子を含む水素吸蔵合金負極からなる。このような負極は、前記水素吸蔵合金粉末、導電材および結着剤を含む組成の合剤を集電体である導電性芯体に固定化した構造を有する。
【0018】
前記負極1の合剤中に配合される水素吸蔵合金としては、例えばLaNi 、MmNi (Mmはミッシュメタル)、LmNi (LmはLaを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種)、これら合金のNiの一部をAl、Mn、Co、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Bのような元素で置換した多元素系のもの、またはTiNi系、TiFe系のものを挙げることができる。特に、一般式LmNi Co Mn Al (原子比w,x,y,zの合計値は5.00≦w+x+y+z≦5.50である)で表される組成の水素吸蔵合金は充放電サイクルの進行に伴う微粉化を抑制して充放電サイクル寿命を向上できるための好適である。
【0019】
前記導電材としては、例えばカーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。このような導電材は、前記水素吸蔵合金粉末100重量部に対して0.1〜4重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0020】
前記結着剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸カリウムなどのポリアクリル酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂、またはカルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。このような結着剤は、前記水素吸蔵合金100重量部に対して0.1〜5重量部配合することが好ましい。
【0021】
前記導電性芯体としては、例えばパンチドメタル、エキスパンドメタル、金網等の二次元構造のもの、発泡メタル、網状焼結金属繊維などの三次元構造のもの等を挙げることができる。
【0022】
2)セパレータ3
このセパレータ3としては、例えばポリプロピレン不織布、ナイロン不織布、ポリプロピレン繊維とナイロン繊維を混繊した不織布等からなるものを挙げることができる。特に、表面が親水化処理されたポリプロピレン不織布はセパレータ3として好適である。
【0023】
3)アルカリ電解液
このアルカリ電解液としては、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化リチウム(LiOH)の混合液、水酸化カリウム(KOH)とLiOHの混合液、又はNaOH、KOH及びLiOHの混合液等を用いることができる。
【0024】
なお、前述した図1では負極1および非焼結式正極2の間にセパレータ3を介在して渦巻状に捲回し、有底円筒状の容器4内に収納したが、複数の負極および複数の正極の間にセパレータをそれぞれ介在して積層物とし、この積層物を有底矩形筒状の容器内に収納してもよい。
【0025】
【作用】
本発明に係わるアルカリ蓄電池用正極の製造方法によれば、水酸化ニッケル粒子の表面に沈殿法によりコバルト化合物層を形成して作製した複合水酸化ニッケル粒子を用いるため、従来のようなミキサによるコバルト化合物の混合やメカノケミカル法によるコバルト化合物での表面改質に比べて少ないコバルト化合物量で水酸化ニッケル粒子の利用率を向上できる。その結果、水酸化ニッケル粒子が相対的に高密度化された正極を製造でき、ひいては高容量のアルカリ蓄電池を実現できる。また、高価なコバルトまたはコバルト化合物を低減できるために正極の低コスト化を図ることが可能になる。
【0026】
水酸化ニッケルは、通常、金属ニッケルを硫酸溶液等の酸に溶解させ、これを水酸化ナトリウム溶液のような塩基で中和、沈殿することによって得られる。
このような沈殿法に着目して、水酸化ニッケル粒子表面に水酸化コバルトを沈殿させることによって簡単な工程で、水酸化ニッケル粒子表面全体に水酸化コバルト粒子を均一に付着ないし接合させた複合水酸化ニッケル粒子を得ることができる。前記水酸化ニッケル粒子の表面に付着ないし接合された水酸化コバルトは、比較的容易に均一なものにすることができるので、少ない水酸化コバルト量で前記水酸化ニッケル粒子の利用率を向上できる。前記水酸化コバルト量は、前記複合水酸化ニッケルに対して金属コバルト換算で0.5重量%程度から水酸化ニッケル粒子の利用率の向上効果が発現され、2.0重量%程度で従来の混合添加法と同等の水酸化ニッケル粒子の利用率が得られる。これを従来の水酸化ニッケル粒子を水酸化コバルト粒子の混合添加に換算すると、3.2重量%に相当するため、コバルト化合物の添加量を大幅に低減することができる。したがって、前記複合水酸化ニッケル粒子を結着剤の存在下で水等の分散媒体と混合してペーストを調製し、このペーストを耐アルカリ性金属多孔体に充填することによって、従来のようなミキサによるコバルト化合物の混合やメカノケミカル法によるコバルト化合物での表面改質に比べて少ないコバルト量で水酸化ニッケル粒子の利用率を向上でき、水酸化ニッケル粒子が相対的に高密度化された正極を製造できるため、この正極から高容量のアルカリ蓄電池を実現できる。
【0027】
【実施例】
実施例1〜3および参照例1、2
以下、好ましい本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
まず、金属ニッケル(Ni)、金属亜鉛(Zn)および金属コバルト(Co)を硫酸水溶液に溶解させ、ニッケル錯イオン、亜鉛錯イオンおよびコバルト錯イオンを生成し、これを対流を起こさせた水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、徐々に亜鉛およびコバルトが固溶化された水酸化ニッケル粒子を成長させた。このような対流した水酸化ナトリウム水溶液中で結晶化させることによって、球状の水酸化ニッケル粒子を生成できると共に、結晶成長そのものを穏やかにできるためにポアのない高密度の水酸化ニッケル粒子を生成できる。また、転移温度近傍 (40℃程度)に温度コントロールし、弱塩基を用いて中和に近い準安定領域 (pH11付近)にpHコントロールすることにより高密度の水酸化ニッケル粒子を得ることができた。このような方法によりXRDによる(101)面のピーク半価幅が0.95゜/2θ、平均粒径10μmの亜鉛5重量%、コバルト1重量%共沈水酸化ニッケル粒子が得られた。前記水酸化ニッケル粒子中の亜鉛およびコバルトの共沈量は、水酸化ニッケル粒子を塩酸に溶解させて公知の原子吸光分析法で定量すると共に、公知のX線粉末回折法によって亜鉛およびコバルト単独のピークが現れないことを確認し、亜鉛5重量%、コバルト1重量%共沈水酸化ニッケル粒子であることを確認した。同時に、(101)面のXRD回折ピークの全幅半価幅が0.95゜/2θであることを確認した。また、前記水酸化ニッケル粒子は、電子顕微鏡に形状が球状であることが確認された。なお、水酸化ニッケル粒子の粒径についてはを公知のレーザ法により粒度分布を測定し、その累積50%の値をもって平均粒径とした。
【0028】
得られた亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子を水洗、乾燥した後、一定濃度のコバルトイオンのみが存在する溶液に移し、一定時間撹拌し、水酸化ニッケル粒子の細孔にコバルトイオンを十分に浸み込ませた。つづいて、この溶液を対流を起こさせた水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、前記水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルト層を形成して複合水酸化ニッケル粒子を作製した。この複合水酸化ニッケル粒子の表面に形成された水酸化コバルトの量は、前記コバルトイオンのみが存在する溶液の濃度規制により生成された複合水酸化ニッケル粒子全体に対して金属コバルト換算で0.25重量%(参照例1)、0.5重量%(参照例2)、1.0重量%(実施例)、2.0重量%(実施例)、4.0重量%(実施例)とした。また、複合水酸化ニッケル粒子の表面に形成された水酸化コバルト量(金属コバルト換算)は、この粒子を塩酸に溶解させて公知の原子吸光分析法により定量し、予め水酸化ニッケル粒子中に共沈されたコバルト量を差し引くことにより算出した。
【0029】
このようにして得られた水酸化コバルト量の表面付着量が異なる複合水酸化ニッケル粒子をカルボキシルメチルセルロースとポリアクリル酸ナトリウムの結着剤と水と共にそれぞれ混練することにより5種のペーストを調製した。これらペーストを多孔度95%、平均孔径100μmのニッケルメッキ多孔体にそれぞれ塗布して充填した後、乾燥し、成形することにより5種の非焼結式正極を作製した。
【0030】
また、市販のMm(ミッシュ・メタル;希土類元素の混合物)、Ni、Co、Mn、Alを重量比でそれぞれ4.0:0.4:0.3:0.3の割合になるように秤量した後、高周波溶解炉で溶解し、その溶湯を冷却することによりMmNi4.0 Co0.4 Mn0.3 Al0.3 の組成からなる合金インゴットを作製した。つづいて、前記合金インゴットを機械粉砕し、篩分けすることにより粒径50μm以下の水素吸蔵合金粉末とした。ひきつづき、この水素吸蔵合金粉末にカルボキシメチルセルロース、カーボンおよびを水を加えてペーストを調製した。その後、前記ペーストをパンチドメタルに塗布し、乾燥し、成形することにより負極を作製した。
【0031】
得られた5種の正極および負極の間に親水処理したポリプロピレン不織布からなるセパレータをそれぞれ配置し、これら電極群を金属容器に収納した後、水酸化カリウムを主成分とする電解液を前記容器内に収容し、金属蓋体等の各部材を用いて前述した図1に示す構造を有する5種の円筒形ニッケル水素蓄電池を組み立てた。
【0032】
比較例
正極の活物質として水酸化コバルト層を被覆しない亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子を用いた以外、実施例1と同様な方法により円筒形ニッケル水素蓄電池を組み立てた。
【0033】
得られた実施例1〜3、参照例1、2および比較例のニッケル水素蓄電池を45℃下、24時間のエージングを行った後、0.1CmAで15時間充電し、30分間の休止を行い、1.0CmA/1.0Vカットの放電を行った(これを初充電という)。さらに、初充電後の各蓄電池を0.3CmAの電気量で150%の深度まで充電し、1.0CmA/1.0Vカットの放電を行う操作を300サイクル繰り返し、水酸化ニッケルの利用率の推移を測定した。この結果を図2に示す。
【0034】
図2から明らかなように表面に水酸化コバルトが付着された複合水酸化ニッケル粒子(実施例1〜)は、水酸化コバルトが表面付着されない比較例1の亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子に比べて水酸化ニッケルの利用率が高いことがわかる。特に、表面に水酸化コバルトが金属コバルト換算で1.0重量%以上被覆された複合水酸化ニッケル粒子(実施例1〜3)は参照例1、2に比べて水酸化ニッケルの利用率が高く、かつサイクル進行に伴う安定性も優れていることがわかる。なお、複合水酸化ニッケル粒子表面の水酸化コバルト量(金属コバルト換算)が1.0〜4.0重量%とは、従来の水酸化コバルト粒子の混合添加法にあてはめると約1.6〜6.3重量%に相当し、従来の10重量%程度の添加に比べて大幅な削減に繋がることがわかる。換言すれば、従来の混合添加法やメカノケミカル法による表面改質ではこのような少ないコバルト量で水酸化ニッケルの利用率の向上とサイクル特性の安定性が得られないことが明らかである。
【0035】
以上、水酸化ニッケル粒子の表面に沈殿法により水酸化コバルトを形成した複合水酸化ニッケル粒子を用いることによって水酸化ニッケルの利用を高めることができ、特に水酸化コバルト量(金属コバルト換算)が1.0〜4.0重量%である複合水酸化ニッケル粒子はサイクル進行に伴う安定性も十分に確保できる。
【0036】
なお、本実施例ではベースとなる水酸化ニッケル粒子としてZn5重量%、Co1重量%が共沈されたものを例にして説明したが、これに限定されない。例えば、Bi、Ce、Cu、Fe、Ga、In、La、Sc、Y、Mn、Coから選ばれる2種以上を共沈した水酸化ニッケル粒子も同様に複合水酸化ニッケルのベース材料として用いることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば従来のようなミキサによるコバルト化合物の混合やメカノケミカル法によるコバルト化合物での表面改質に比べて少ないコバルト量で水酸化ニッケル粒子の利用率を向上でき、水酸化ニッケル粒子が相対的に高密度化された正極を製造でき、ひいてはこの正極から高容量のアルカリ蓄電池を得ることができる等顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるニッケル水素二次電池を示す部分分解斜視図。
【図2】本発明の実施例1〜3、参照例1、2および比較例における正極中の水酸化ニッケルの利用率を示す特性図。
【符号の説明】
1…負極、2…正極、4…容器、6…封口板、7…絶縁性ガスケット、9…正極端子。

Claims (2)

  1. 亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子の表面に沈殿法によりコバルト化合物層を形成して複合水酸化ニッケル粒子を作製する工程と、
    この複合水酸化ニッケル粒子および結着剤を含むペーストを調製する工程と、
    このペーストを耐アルカリ性金属多孔体に充填する工程と
    を具備し、
    前記コバルト化合物層は、前記亜鉛−コバルト共沈水酸化ニッケル粒子に前記複合水酸化ニッケル粒子に対して金属コバルト換算で1.0重量%以上、4.0重量%以下の量で付着されていることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極の製造方法。
  2. 前記コバルト化合物は、水酸化コバルトであることを特徴とする請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極の製造方法。
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