JP3173973B2 - アルカリ蓄電池 - Google Patents

アルカリ蓄電池

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JP3173973B2
JP3173973B2 JP25776995A JP25776995A JP3173973B2 JP 3173973 B2 JP3173973 B2 JP 3173973B2 JP 25776995 A JP25776995 A JP 25776995A JP 25776995 A JP25776995 A JP 25776995A JP 3173973 B2 JP3173973 B2 JP 3173973B2
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誠 若林
雅義 蛭間
哲哉 山根
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ蓄電池に
関し、特に正極を改良したアルカリ蓄電池に係わる。
【0002】
【従来の技術】アルカリ蓄電池に組込まれる正極として
は、従来より焼結式正極が用いられている。前記焼結式
正極は、穿孔鋼またはニッケル網体等の二次元基板にニ
ッケル粒子を焼結し、得られた多孔板の十数ミクロンの
孔にニッケル塩水溶液を含浸した後、アルカリ処理して
前記含浸ニッケル塩を水酸化ニッケルに変化させること
により製造される。
【0003】しかしながら、前記焼結式正極はその製造
においてニッケル塩の含浸工程およびアルカリ処理工程
のような複雑な活物質含浸操作を必要とする。また、所
定量の活物質を含浸するには前記操作を通常、4〜10
回程度繰り返す必要がある。その結果、製造コストが高
くなるという問題がある。さらに、前記焼結により得ら
れたニッケル粒子焼結体は、多孔度が80%を越えると
機械的強度を維持することが困難になるため、前記活物
質の充填量を増加させることには限界があった。
【0004】このようなことから、水酸化ニッケル粒子
に導電材、結着剤および水を添加、混合してペーストを
調製し、このペーストをスポンジ状金属多孔体、金属繊
維マットのような3次元構造の導電性芯体に充填して正
極を製造することが検討されている。このような方法に
より製造された正極は、焼結式正極に対して非焼結式正
極(またはペースト式正極)と呼ばれといる。前記ペー
スト式正極は、前記金属多孔体の多孔度および平均孔径
が前記焼結式正極に比べて大きいために活物質の充填が
容易で、かつ充填量を増加させることができる利点を有
する。
【0005】しかしながら、ペーストが充填される金属
多孔体の細孔が焼結式正極の細孔に対して大きいため
に、活物質と集電体との距離が大きくなって集電性が悪
化される。また、活物質の絶対量そのものを増大させる
ので、導電性の低下はもとより、特に過充電時における
電極膨脹率の増大、ひいては充放電効率を含めた利用率
の低下を招く。
【0006】すなわち、ペースト式正極は焼結式正極に
比べて容量を増大できるという利点を達成するには、
(1) 導電性の向上、(2) 電極膨脹率抑制、(3) 充放電効
率の向上、の3つの問題点を解決する必要がある。(1)
の導電性の向上は、充放電中における平均充放電分極電
位を下げる意味で非常に重要である。前記導電率を向上
させるためには、ペーストの調製に際し、水酸化ニッケ
ル粒子にコバルト酸化物、コバルト水酸化物、金属コバ
ルトのようなコバルト化合物の粒子を添加することが一
般に行われている。しかしながら、粒子同士または粉末
同士の均一混合は難しく、通常の混合法によると水酸化
ニッケル粒子の利用率を高め、安定化させるためには、
少なくとも10重量%程度のコバルト化合物粒子を添加
する必要がある。このようなコバルト化合物粒子の添加
量の増大によって正極中の水酸化ニッケル粒子の量を相
対的に増加させることができなくなるため、容量の向上
が妨げられ、さらにコバルト化合物は価格変動も大きい
ために電池の価格設定のネックになっていた。
【0007】コバルト化合物の添加量を減らしても従来
と同等以上の水酸化ニッケルの利用率を確保するには、
水酸化ニッケル粒子と導電剤であるコバルト化合物を均
一に混合することが必要である。特開平1−28167
0号および特開平6−187984号には、水酸化ニッ
ケル粒子とコバルト化合物粒子とをメカノケミカル法に
より均一に混合することが開示されている。このメカノ
ケミカル法は、水酸化ニッケル粒子を母粒子、コバルト
化合物を子粒子として両者を機械的衝撃力によって母粒
子表面に子粒子を分散付着ないし分散接合させる表面改
質の手法である。
【0008】しかしながら、水酸化ニッケル粒子の周囲
にコバルト化合物粒子を付着ないし接合させた複合水酸
化ニッケル粒子は保存中に酸化されてコバルト化合物粒
子の一部が四酸化三コバルト(Co34 )まで転移す
る。四酸化三コバルト(Co34 )は、スピネル構造
を有する安定な酸化物であるため、アルカリ電解液中で
は従来のコバルト化合物から得られる高導電性のオキシ
水酸化コバルト(CoOOH)に転移し難い。その結
果、水酸化ニッケル粒子を高利用率化することができな
くなるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、水酸化ニッ
ケル粒子表面にコバルト系被膜を付着させた複合水酸化
ニッケル粒子において、保存中に前記金属コバルトもし
くはコバルト化合物が酸化されるのを抑制ないし防止し
てコバルト本体の特性を発揮でき、前記複合水酸化ニッ
ケル粒子を活物質とする正極の利用率の向上が図られた
アルカリ蓄電池を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるアルカリ
蓄電池は、正極活物質を含むペーストを金属多孔体に充
填した構造の正極と、負極と、アルカリ電解液とを備え
たアルカリ蓄電池において、前記正極活物質は、水酸化
ニッケル粒子の表面に酸化防止剤を含有し、かつ金属コ
バルトおよびコバルト化合物から選ばれた少なくとも1
種からなるコバルト系被膜を形成した複合水酸化ニッケ
ル粒子からなることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わるアルカリ蓄
電池(例えば円筒形アルカリ蓄電池)を図1を参照して
詳細に説明する。有底円筒状の容器1内には、正極2と
セパレータ3と負極4とを積層してスパイラル状に捲回
することにより作製された電極群5が収納されている。
前記負極4は、前記電極群5の最外周に配置されて前記
容器1と電気的に接触している。アルカリ電解液は、前
記容器1内に収容されている。中央に孔6を有する円形
の第1の封口板7は、前記容器1の上部開口部に配置さ
れている。リング状の絶縁性ガスケット8は、前記封口
板7の周縁と前記容器1の上部開口部内面の間に配置さ
れ、前記上部開口部を内側に縮径するカシメ加工により
前記容器1に前記封口板7を前記ガスケット8を介して
気密に固定している。正極リード9は、一端が前記正極
2に接続、他端が前記封口板7の下面に接続されてい
る。帽子形状をなす正極端子10は、前記封口板7上に
前記孔6を覆うように取り付けられている。ゴム製の安
全弁11は、前記封口板7と前記正極端子10で囲まれ
た空間内に前記孔6を塞ぐように配置されている。中央
に穴を有する絶縁材料からなる円形の押え板12は、前
記正極端子10上に前記正極端子10の突起部がその押
え板12の前記穴から突出されるように配置されてい
る。外装チューブ13は、前記押え板12の周縁、前記
容器1の側面及び前記容器1の底部周縁を被覆してい
る。
【0012】次に、前記正極2、負極4、セパレータ3
およびアルカリ電解液について詳細に説明する。 1)正極2 この正極2は、複合水酸化ニッケル粒子と結着剤を含む
ペーストを金属多孔体に充填した構造を有する。前記複
合水酸化ニッケル粒子は水酸化ニッケル粒子の表面に金
属コバルトおよびコバルト化合物から選ばれた少なくと
も1種からなるコバルト系被膜を形成し、かつ酸化防止
剤を含有した構造を有する。前記ペーストが充填された
前記金属多孔体は、乾燥後に必要に応じてプレス成形が
施される。
【0013】前記水酸化ニッケル粒子は、平均粒径が5
〜30μm、タップ密度が1.8g/cm3 以上である
ことが好ましい。前記水酸化ニッケル粒子は、比表面積
が8〜25m2 /gであることが好ましい。
【0014】前記水酸化ニッケル粒子は、球状もしくは
それに近似した形状を有することが好ましい。前記コバ
ルト化合物としては、例えば酸化コバルト、水酸化コバ
ルトを用いることができる。特に、水酸化コバルトが好
適である。
【0015】前記コバルト系被膜は、前記水酸化ニッケ
ル粒子に前記複合水酸化ニッケル粒子に対して金属コバ
ルト換算で1.0重量%以上付着されることが好まし
い。前記コバルト系被膜の付着量を金属コバルト換算で
1.0重量%未満にすると、水酸化ニッケルの利用率を
向上することが困難になる。
【0016】前記コバルト系被膜に含有される酸化防止
剤としては、例えばアスコルビン酸、シュウ酸等を用い
ることができる。このような酸化防止剤は、前記コバル
ト系被膜に対して1重量%以下含有することが好まし
い。前記酸化防止剤の含有量が1重量%を越えると、前
記複合水酸化ニッケルを含む正極を備えたアルカリ蓄電
池の初充電工程においてその粒子表面のコバルト化合物
の導電マトリックス形成に悪影響を及ぼしたり、自己放
電特性を損ねる恐れがある。このような理由から、前記
コバルト系被膜に含有される酸化防止剤は電池組立て前
に酸化分解することが好ましい。
【0017】前記コバルト系被膜は、微量のCo2
3 、Co34 等の酸化コバルトを含むことを許容す
る。前記複合水酸化ニッケル粒子は、例えば次のような
方法により作製される。
【0018】(a)水酸化ニッケル粒子と金属コバルト
およびコバルト化合物から選ばれる少なくとも1種のコ
バルト系粉末とをメカノケミカル法により処理して前記
水酸化ニケッル粒子表面に前記コバルト系粉末を付着さ
せてコバルト系被膜を形成した後、この水酸化ニッケル
粒子を粉末状の微量酸化防止剤と共に混合、転動してさ
らに酸化防止剤を付着させることにより複合水酸化ニッ
ケル粒子を作製する。このメカノケミカル法において、
前記水酸化ニッケル粒子、前記コバルト系粉末および粉
末状の酸化防止剤を一緒に混ぜて行うことにより前記メ
カノケミカル工程で前記コバルト系粉末が酸化されるの
を抑制することも可能になる。
【0019】(b)前記水酸化ニッケル粒子に沈殿法に
よりコバルト系被膜を形成した後、この水酸化ニッケル
粒子を粉末状の微量酸化防止剤と共に混合、転動してさ
らに酸化防止剤を付着させることにより複合水酸化ニッ
ケル粒子を作製する。
【0020】前記結着剤としては、例えばカルボキシメ
チルセルロース、ポリアクリル酸塩、及びフッ素系樹脂
(例えばポリテトラフルオロエチレン)等を挙げること
ができる。このような結着剤は、前記複合水酸化ニッケ
ル粒子に対して0.1〜2重量%の範囲で配合すること
が好ましい。
【0021】前記金属多孔体としては、例えばスポンジ
状金属多孔体、フェルトメッキ基板等を挙げることがで
きる。 2)負極4 この負極4は、例えば水素を吸蔵・放出する水素吸蔵合
金粒子を含む水素吸蔵合金負極からなる。このような負
極は、前記水素吸蔵合金粉末、導電材および結着剤を含
む組成の合剤を集電体である導電性芯体に固定化した構
造を有する。
【0022】前記負極1の合剤中に配合される水素吸蔵
合金としては、例えばLaNi5 、MmNi5 (Mmは
ミッシュメタル)、LmNi5 (LmはLaを含む希土
類元素から選ばれる少なくとも一種)、これら合金のN
iの一部をAl、Mn、Co、Ti、Cu、Zn、Z
r、Cr、Bのような元素で置換した多元素系のもの、
またはTiNi系、TiFe系のものを挙げることがで
きる。特に、一般式LmNiw Cox Mny Alz (原
子比w,x,y,zの合計値は5.00≦w+x+y+
z≦5.50である)で表される組成の水素吸蔵合金は
充放電サイクルの進行に伴う微粉化を抑制して充放電サ
イクル寿命を向上できるための好適である。
【0023】前記導電材としては、例えばカーボンブラ
ック、黒鉛等を挙げることができる。このような導電材
は、前記水素吸蔵合金粉末100重量部に対して0.1
〜4重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0024】前記結着剤としては、例えばポリアクリル
酸ソーダ、ポリアクリル酸カリウムなどのポリアクリル
酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの
フッ素系樹脂、またはカルボキシメチルセルロース(C
MC)等を挙げることができる。このような結着剤は、
前記水素吸蔵合金100重量部に対して0.1〜5重量
部配合することが好ましい。
【0025】前記導電性芯体としては、例えばパンチド
メタル、エキスパンドメタル、金網等の二次元構造のも
の、発泡メタル、網状焼結金属繊維などの三次元構造の
もの等を挙げることができる。
【0026】3)セパレータ3 このセパレータ3としては、例えばポリプロピレン不織
布、ナイロン不織布、ポリプロピレン繊維とナイロン繊
維を混繊した不織布等からなるものを挙げることができ
る。特に、表面が親水化処理されたポリプロピレン不織
布はセパレータ3として好適である。
【0027】4)アルカリ電解液 このアルカリ電解液としては、例えば水酸化ナトリウム
(NaOH)と水酸化リチウム(LiOH)の混合液、
水酸化カリウム(KOH)とLiOHの混合液、又はN
aOH、KOH及びLiOHの混合液等を用いることが
できる。
【0028】なお、前述した図1では負極1および非焼
結式正極2の間にセパレータ3を介在して渦巻状に捲回
し、有底円筒状の容器4内に収納したが、複数の負極お
よび複数の正極の間にセパレータをそれぞれ介在して積
層物とし、この積層物を有底矩形筒状の容器内に収納し
てもよい。
【0029】本発明に係わるアルカリ蓄電池によれば、
水酸化ニッケル粒子の表面に金属コバルトおよびコバル
ト化合物から選ばれた少なくとも1種からなるコバルト
系被膜を形成し、かつ酸化防止剤を含有した複合水酸化
ニッケル粒子からなる活物質を含むペーストを金属多孔
体に充填した構造の正極を備える。前記複合水酸化ニッ
ケル粒子は、表面のコバルト系被膜中にアスコルビン酸
のような酸化防止剤が含有されているため、保存中にお
ける酸化を防止でき、金属コバルトまたは水酸化コバル
トのようなコバルト化合物の粒子の一部が四酸化三コバ
ルト(Co34 )まで転移するのを防止できる。その
結果、アルカリ電解液中において前記コバルト系被膜の
コバルト化合物等を容易に高導電性のオキシ水酸化コバ
ルト(CoOOH)に転移させることができるため、水
酸化ニッケル粒子を利用率を高めることができる。した
がって、前記複合水酸化ニッケル粒子からなる活物質を
含むペーストを金属多孔体に充填した構造の正極を備え
たアルカリ蓄電池は充電効率が向上されるため、十分な
実容量(放電容量)を得ることができる。
【0030】特に、前記複合水酸化ニッケル粒子のコバ
ルト系被膜を形成を前述したように沈澱法により行うこ
とによって、メカノケミカル法で同様なコバルト系被膜
を形成する時に問題になる水酸化ニッケル粒子の粉砕を
防止できる。このため、前記複合水酸化ニッケル粒子お
よび結着剤を含むペーストは、良好な流動性を有するた
め、金属多孔体に均一に充填することができ、利用率等
の正極特性を一層向上するすることが可能になる。
【0031】
【実施例】以下、好ましい本発明の実施例を前述した図
面を参照して詳細に説明する。 (実施例1)まず、平均粒径10μmの水酸化ニッケル
粒子を一定濃度のコバルトイオンのみが存在する溶液に
浸漬し、一定時間撹拌し、水酸化ニッケル粒子の細孔に
コバルトイオンを十分に滲み込ませた後、一旦この溶液
と水酸化ニッケルを濾別し、水酸化ニッケル細孔にコバ
ルトイオン溶液が滲み込んだ状態でこれを対流を起こさ
せた水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、前記水酸化ニッ
ケル粒子の表面に水酸化コバルト被膜を形成した。この
水酸化コバルト被膜の量は、水酸化コバルト被膜が被覆
された水酸化ニッケル粒子に対して金属コバルト換算で
3重量%であった。ひきつづき、表面に水酸化コバルト
被膜が被覆された水酸化ニッケル粒子を酸化防止剤であ
る粉末状のシュウ酸と共に混合、転動させて前記水酸化
コバルト被膜の表面に粉末状のシュウ酸を付着させるこ
とにより複合水酸化ニッケル粒子を作製した。この複合
水酸化ニッケル粒子は、前記粉末状のシュウ酸が前記水
酸化コバルト被膜に対して0.7重量%付着されてい
た。この複合水酸化ニッケル粒子を45℃、93%RH
の雰囲気中に1日間貯蔵し、貯蔵前後の複合水酸化ニッ
ケル粒子の色彩変化を観察した。その結果を下記表1に
示す。
【0032】次いで、作製した直後の複合水酸化ニッケ
ル粒子およびこの複合水酸化ニッケル粒子を45℃、9
3%RHの雰囲気中に1日間貯蔵したものをカルボキシ
ルメチルセルロースとポリアクリル酸ナトリウムの結着
剤と水と共にそれぞれ混練することにより2種のペース
トを調製した。これらペーストを多孔度95%、平均孔
径100μmのニッケルメッキ多孔体にそれぞれ塗布し
て充填した後、乾燥し、成形することにより2種の非焼
結式正極を作製した。
【0033】また、市販のMm(ミッシュ・メタル;希
土類元素の混合物)、Ni、Co、Mn、Alを重量比
でそれぞれ4.0:0.4:0.3:0.3の割合にな
るように秤量した後、高周波溶解炉で溶解し、その溶湯
を冷却することによりMmNi4.0 Co0.4 Mn0.3
0.3 の組成からなる合金インゴットを作製した。つづ
いて、前記合金インゴットを機械粉砕し、篩分けするこ
とにより粒径50μm以下の水素吸蔵合金粉末とした。
ひきつづき、この水素吸蔵合金粉末にカルボキシメチル
セルロース、カーボンおよびを水を加えてペーストを調
製した。その後、前記ペーストをパンチドメタルに塗布
し、乾燥し、成形することにより負極を作製した。
【0034】得られた2種の正極および負極の間に親水
処理したポリプロピレン不織布からなるセパレータをそ
れぞれ配置し、これら電極群を金属容器に収納した後、
水酸化カリウムを主成分とする電解液を前記容器内に収
容し、金属蓋体等の各部材を用いて前述した図1に示す
構造を有する2種の円筒形ニッケル水素蓄電池を組み立
てた。
【0035】(実施例2)実施例1と同様な方法により
得られた表面に水酸化コバルト被膜が被覆された水酸化
ニッケル粒子を酸化防止剤である粉末状のアスコルビン
酸と共に混合、転動させて前記水酸化コバルト被膜の表
面に粉末状のアスコルビン酸を付着させることにより複
合水酸化ニッケル粒子を作製した。この複合水酸化ニッ
ケル粒子は、前記粉末状のアスコルビン酸が前記水酸化
コバルト被膜に対して0.7重量%付着されていた。こ
の複合水酸化ニッケル粒子を45℃、93%RHの雰囲
気中に1日間貯蔵し、貯蔵前後の複合水酸化ニッケル粒
子の色彩変化を観察した。その結果を下記表1に示す。
【0036】次いで、作製した直後の複合水酸化ニッケ
ル粒子およびこの複合水酸化ニッケル粒子を45℃、9
3%RHの雰囲気中に1日間貯蔵したものを用いて実施
例1と同様な方法により2種の非焼結式正極を作製し
た。これら2種の正極を用いて実施例1と同様に負極の
間に親水処理したポリプロピレン不織布からなるセパレ
ータをそれぞれ配置し、これら電極群を金属容器に収納
した後、水酸化カリウムを主成分とする電解液を前記容
器内に収容し、金属蓋体等の各部材を用いて前述した図
1に示す構造を有する2種の円筒形ニッケル水素蓄電池
を組み立てた。
【0037】(参照例)実施例1と同様な方法により平
均粒径10μmの水酸化ニッケル粒子を一定濃度のコバ
ルトイオンのみが存在する溶液に浸漬し、一定時間撹拌
し、水酸化ニッケル粒子の細孔にコバルトイオンを十分
に滲み込ませた後、一旦この溶液と水酸化ニッケルを濾
別し、水酸化ニッケル細孔にコバルトイオン溶液が滲み
込んだ状態でこれを対流を起こさせた水酸化ナトリウム
水溶液に滴下し、前記水酸化ニッケル粒子の表面に水酸
化コバルト被膜を形成することにより酸化防止剤無添加
の複合水酸化ニッケル粒子を作製した。この複合水酸化
ニッケル粒子を45℃、93%RHの雰囲気中に1日間
貯蔵し、貯蔵前後の複合水酸化ニッケル粒子の色彩変化
を観察した。その結果を下記表1に示す。
【0038】次いで、作製した直後の複合水酸化ニッケ
ル粒子およびこの複合水酸化ニッケル粒子を45℃、9
3%RHの雰囲気中に1日間貯蔵したものを用いて実施
例1と同様な方法により2種の非焼結式正極を作製し
た。これら2種の正極を用いて実施例1と同様に負極の
間に親水処理したポリプロピレン不織布からなるセパレ
ータをそれぞれ配置し、これら電極群を金属容器に収納
した後、水酸化カリウムを主成分とする電解液を前記容
器内に収容し、金属蓋体等の各部材を用いて前述した図
1に示す構造を有する2種の円筒形ニッケル水素蓄電池
を組み立てた。
【0039】
【表1】
【0040】前記表1から明らかなように実施例1、2
で作製した複合水酸化ニッケル粒子は、45℃、高い湿
度下で1日間貯蔵後において貯蔵前と同様な薄緑を呈
し、表面の水酸化コバルト被膜が変化していないことが
わかる。これに対し、アスコルビン酸のような酸化防止
剤無添加の参照例で作製した複合水酸化ニッケル粒子は
45℃、高い湿度下で1日間貯蔵後において四酸化三コ
バルト(Co34 )の生成に起因する黒色を呈した。
【0041】また、前述した6種のニッケル水素蓄電池
を45℃下、24時間のエージングを行った後、0.1
CmAで15時間充電し、30分間の休止を行い、1.
0CmA/1.0Vカットの放電を行った(これを初充
電という)。さらに、初充電後の各蓄電池を0.3Cm
Aの電気量で150%の深度まで充電し、1.0CmA
/1.0Vカットの放電を行う操作を20サイクル繰り
返し、20サイクル目の水酸化ニッケルの利用率を測定
した。この結果を図2に示す。
【0042】図2から明らかなように表面に粉末状のシ
ュウ酸、粉末状のアスコルビン酸がそれぞれ付着された
水酸化コバルト被膜を有し、45℃、高湿度下で1日間
貯蔵後の複合水酸化ニッケル粒子を含有した正極(実施
例1、2)は、貯蔵前の同複合水酸化ニッケル粒子を含
有した正極と同等の高い水酸化ニッケル利用率を有する
ことがわかる。これに対し、粉末状のシュウ酸のような
酸化防止剤が付着されていない水酸化コバルト被膜を有
し、45℃、高湿度下で1日間貯蔵後の複合水酸化ニッ
ケル粒子を含有した正極(参照例)は貯蔵前の同複合水
酸化ニッケル粒子を含有した正極に比べて水酸化ニッケ
ル利用率が著しく低下することがわかる。
【0043】なお、前記実施例1、2ではコバルト系被
膜である水酸化コバルト被膜を沈殿法により形成した
後、前記水酸化コバルト被膜表面に粉末状のシュウ酸、
粉末状のアスコルビン酸を付着させて複合水酸化ニッケ
ル粒子を作製したが、水酸化コバルト被膜をメカノケミ
カル法により形成した後、その表面に粉末状のシュウ
酸、粉末状のアスコルビン酸を付着させても同様な優れ
た効果を有する複合水酸化ニッケル粒子を作製すること
ができた。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば水
酸化ニッケル粒子表面にコバルト系被膜を形成した複合
水酸化ニッケル粒子において、保存中に前記コバルト系
被膜が酸化されるのを抑制ないし防止してコバルト本体
の特性を発揮でき、前記複合水酸化ニッケル粒子を活物
質とする正極の利用率の向上が図られ、ひいては充電効
率が向上された高容量のアルカリ蓄電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるニッケル水素二次電池を示す部
分分解斜視図。
【図2】本発明の実施例1、2および参照例における正
極中の水酸化ニッケルの利用率を示す特性図。
【符号の説明】
1…容器、2…正極、4…負極、7…封口板、8…絶縁
性ガスケット、10…正極端子、11…安全弁。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山根 哲哉 東京都品川区南品川3丁目4番10号 東 芝電池株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−134990(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/32 H01M 4/36 - 4/62

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極活物質を含むペーストを金属多孔体
    に充填した構造の正極と、負極と、アルカリ電解液とを
    備えたアルカリ蓄電池において、 前記正極活物質は、水酸化ニッケル粒子の表面に金属コ
    バルトおよびコバルト化合物から選ばれた少なくとも1
    種からなるコバルト系被膜を形成し、かつ酸化防止剤を
    含有した複合水酸化ニッケル粒子からなることを特徴と
    するアルカリ蓄電池。
  2. 【請求項2】 前記コバルト系被膜は、前記水酸化ニッ
    ケル粒子に前記複合水酸化ニッケル粒子に対して金属コ
    バルト換算で1.0重量%以上付着されていることを特
    徴とする請求項1記載のアルカリ蓄電池。
  3. 【請求項3】 前記酸化防止剤は、アスコルビン酸もし
    くはシュウ酸であることを特徴とする請求項1記載のア
    ルカリ蓄電池。
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