JP3552193B2 - 基板処理装置および基板処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エッチング処理を施した半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、光ディスク用基板等の薄板状基板(以下、単に「基板」とする)に純水にて洗浄処理を行った後、有機溶剤による乾燥処理を行う基板処理装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記基板の製造工程においては、処理槽に貯留したフッ酸等のエッチング液に基板を浸漬してエッチング処理を施した後、エッチング液を純水に置換して当該基板の洗浄処理を行い、さらにその後純水から引き上げた基板に乾燥処理を行う基板処理装置が用いられている。
【0003】
かかる装置においては、通常、純水による洗浄処理が終了した後、純水から基板を引き上げる前、または基板を引き上げつつ有機溶剤であるイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と称する)の蒸気を基板の周辺に供給し、基板表面にIPAを凝縮させることによって水の乾燥処理を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この乾燥処理の工程においては、基板表面、特にSiOに覆われていない剥き出しのSiのような疎水部にパーティクルが付着する現象がしばしば認められた。そして、乾燥処理において付着したパーティクルは、最終製品たる半導体デバイス等の品質を劣化させ、その歩留まりを低下させるという問題を生じることとなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、有機溶剤を使用した乾燥処理工程において、パーティクルの基板への付着を低減して歩留まりを向上することができる基板処理装置および方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、エッチング処理を施した基板に純水にて洗浄処理を行った後、有機溶剤による乾燥処理を行う基板処理装置であって、(a)前記エッチング処理および前記洗浄処理を行う処理槽と、(b)前記処理槽を収容し、前記乾燥処理を行う処理室と、(c)前記洗浄処理後に前記処理槽に貯留されている純水から基板を引き上げる引き上げ手段と、(d)前記処理室に前記有機溶剤の蒸気を供給する有機溶剤供給手段と、(e)前記処理槽に貯留されている前記純水の液面から前記基板の有効部分が露出した後、前記基板の全面が露出するまでの間に前記有機溶剤の蒸気の供給を開始させるように前記有機溶剤供給手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、前記有機溶剤供給手段からの有機溶剤の蒸気の供給が停止した後、前記処理室に窒素を供給する窒素供給部をさらに備える。
【0008】
また、請求項3の発明は、基板にエッチング処理、洗浄処理および乾燥処理を行う基板処理方法であって、(a)処理室内に収容された処理槽において、前記基板に前記エッチング処理を行うエッチング工程と、(b)前記処理槽において、前記基板に純水による洗浄処理を行う洗浄工程と、(c)前記洗浄処理後に前記処理槽に貯留されている前記純水から前記基板を引き上げる引き上げ工程と、(d)前記処理槽に貯留されている前記純水の液面から前記基板の有効部分が露出した後、前記基板の全面が露出するまでの間に有機溶剤の蒸気の前記処理室への供給を開始する有機溶剤供給工程と、を備えている。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る基板処理方法において、(e)前記有機溶剤が付着した基板を乾燥する乾燥工程、をさらに備えている。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る基板処理方法において、前記乾燥工程に、前記処理室に窒素を供給する工程を含ませている。
【0012】
なお、「基板の有効部分」についての意義は、以下の発明の実施の形態において明らかにする。
【0013】
【発明の実施の形態】
<A.課題解決のための基礎となる知見>
上述した課題、すなわち乾燥処理におけるパーティクル付着の問題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、以下のような知見を見いだしたので、まずそれについて説明する。
【0014】
従来より、上述したような基板処理装置においては、相互に所定の間隔を隔てた状態で配置した複数の基板を一括して処理する、いわゆるバッチ処理方式が採られている。従って、純水による洗浄処理が終了した後、基板を引き上げるときにも複数の基板を相互に所定の間隔を隔てて並べた状態で行われる。図9は、このときの様子を説明する図である。
【0015】
既述したように、従来においては、ウォーターマークの発生を防止すべく、基板を純水から引き上げる前、または引き上げつつ十分な量のIPA蒸気を当該基板の周辺に供給し、IPAを自然乾燥または減圧乾燥させることによって乾燥処理は終了するのであるが、このときに図10に示すような横すじ状パーティクルが基板の表面に付着することがある。
【0016】
付着した横すじ状パーティクルの成分分析を行った結果、Si、C、F、Oからなる化合物であることが判明した。このことから横すじ状パーティクルは、以下のような過程を経て付着したものと考えられる。
【0017】
すなわち、まず、基板Wにフッ酸によるエッチング処理が行われたときに、基板W表面のSiOの部分が腐食され、SiF(OH)のエッチング残渣が生成される。このエッチング残渣は、その後の純水DIWによる洗浄処理によって大部分は除去されるのであるが、一部は基板W表面のSiOの部分に付着したまま残留する。次に、純水DIWから基板Wを引き上げるときに、エッチング残渣は純水DIW中のIPAによって溶解され、当該基板Wに対向配置される基板W表面のSiの部分にSi、C、F、Oからなる化合物として付着するのである。そして、この化合物が純水DIWの液面から基板Wを引き上げる際に横すじ状パーティクルとなるのである。図11は、基板W表面のSiOの部分に付着したエッチング残渣Qが、当該基板Wに対向配置される基板W表面のSiの部分に付着する様子を模式的に示した図である。
【0018】
換言すれば、基板Wを純水DIWから引き上げる前、または引き上げつつ供給するIPAの蒸気が純水に多量に溶け込み、エッチング残渣Qを発生源とするパーティクルの付着が生じていたのである。本発明者は、以上のような知見に基づいてこの発明を完成させたのである。
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
<B.基板処理装置の構成>
図1は、実施の形態の基板処理装置1の全体構成を示す斜視図である。図示のように、この装置は、未処理基板を収納しているカセットCが投入されるカセット搬入部2と、このカセット搬入部2からのカセットCが載置され内部から複数の基板が同時に取り出される基板取出部3と、カセットCから取り出された未処理基板が順次洗浄処理に供される基板処理部5と、洗浄処理後の複数の処理済み基板が同時にカセットC中に収納される基板収納部7と、処理済み基板を収納しているカセットCが払い出されるカセット搬出部8とを備える。さらに、装置の前側(−Y側)には、基板取出部3から基板収納部7に亙って基板移載搬送機構9が配置されており、洗浄処理前、洗浄処理中及び洗浄処理後の基板を一箇所から別の箇所に搬送したり移載したりする。
【0021】
カセット搬入部2は、水平移動、昇降移動及び垂直軸回りの回転が可能なカセット移載ロボットCR1を備え、カセットステージ2a上の所定位置に載置された一対のカセットCを基板取出部3に移載する。
【0022】
基板取出部3は、昇降移動する一対のホルダ3a、3bを備える。そして、各ホルダ3a、3bの上面にはガイド溝が刻設されており、カセットC中の未処理基板を垂直かつ互いに平行に支持することを可能にする。したがって、ホルダ3a、3bが上昇すると、カセットC中から基板が取り出される。カセットC中から取り出された基板は、基板移載搬送機構9に設けた搬送ロボットTRに受け渡され、水平移動後に基板処理部5に投入される。
【0023】
基板処理部5は、薬液を収容する薬液槽を備える薬液処理部52と、純水を収容する水洗槽を備える水洗処理部54と、単一槽内で各種の薬液処理や水洗処理を行う処理槽562を備える多機能処理部56とから構成される。
【0024】
基板処理部5において、薬液処理部52及び水洗処理部54の後方側(+Y側)には、第1基板浸漬機構55が配置されており、これに設けた上下動及び横行可能なリフタヘッドLH1によって、搬送ロボットTRから受け取った基板を薬液処理部52の薬液槽に浸漬したり、水洗処理部54の水洗槽に浸漬したりする。また、多機能処理部56の後方側には、第2基板浸漬機構57が配置されており、これに設けた上下動可能なリフタヘッド563aによって、搬送ロボットTRから受け取った基板を多機能処理部56の処理槽562内に支持する。
【0025】
基板収納部7は、基板取出部3と同様の構造を有し、昇降可能な一対のホルダ7a、7bによって、搬送ロボットTRに把持された処理済み基板を受け取ってカセットC中に収納する。
【0026】
また、カセット搬出部8は、カセット搬入部2と同様の構造を有し、移動自在のカセット移載ロボットCR2を備え、基板収納部7上に載置された一対のカセットCをカセットステージ8a上の所定位置に移載する。
【0027】
基板移載搬送機構9は、水平移動及び昇降移動が可能な搬送ロボットTRを備える。そして、この搬送ロボットTRに設けた一対の回転可能なハンド91、92よって基板を把持することにより、基板取出部3のホルダ3a、3bに支持された基板を基板処理部5の第1基板浸漬機構55に設けたリフタヘッドLH1側に移載したり、このリフタヘッドLH1側から隣の第2基板浸漬機構57に設けたリフタヘッド563a側に移載したり、このリフタヘッド563a側から基板収納部7のホルダ7a、7bに移載したりする。
【0028】
次に、多機能処理部56の正面断面図および側面断面図である図2および図3を用いて、その構成および概略動作を説明する。
【0029】
多機能処理部56は主にケーシング560、シャッタ561、処理槽562、リフタ563、リフタ駆動部564、IPA・N供給部565およびN供給部566を備えている。なお、ケーシング560が「処理室」に相当し、リフタ563およびリフタ駆動部564が「引き上げ手段」を構成し、IPA・N供給部565が「有機溶剤供給手段」に相当する。
【0030】
ケーシング560は上面に基板搬出入口TOを備え、その周囲にシール部材560aを固着し、また、底面には排気用の配管560bを備えている。
【0031】
シャッタ561は遮蔽板561aとそれを前後から挟むようにしてケーシング560の側面上端に設けられたガイド561bを備えており、当該ガイド561bのガイドレールに沿って遮蔽板561aが若干上下動するとともに水平方向にスライドすることによって開閉する。なお、ケーシング560上面に設けられたシール部材560aにより、シャッタ561が閉じた状態ではケーシング560の気密性が保たれている。
【0032】
処理槽562はエッチング液であるフッ酸(HF)および洗浄液である純水DIW(以下、併せて「処理液」という。)を貯留することが可能で、それらに基板Wが浸漬されて、それぞれエッチング処理や洗浄処理が行われる。また、処理槽562の底面には処理液の帰還用の配管562c、廃液用の配管562d、処理液供給用の配管562eが連結されている。さらに、処理槽562の四方の外側面の上端には処理液回収溝562aが設けられており、それには処理液回収用の配管562bが連結されている。
【0033】
リフタ563はリフタヘッド563aと保持板563bとの間に、基板Wが保持される保持溝を所定間隔で多数備えた基板ガイド563cを3本備えている。
【0034】
リフタ駆動部564はサーボモータ564aに取り付けられたタイミングベルト564bに、その長手方向が鉛直方向となっているシャフト564cが連結されるとともに、シャフト564cの上端はリフタ563のリフタヘッド563aに連結されており、サーボモータ564aの駆動によりリフタ563およびそれに保持された複数の基板Wを昇降させ、図2および図3に示した基板Wの搬送ロボットTRとの受け渡し位置TP、基板Wの乾燥位置DR、基板Wの上記処理液への浸漬位置DPに位置させることが可能となっている。
【0035】
IPA・N供給部565はケーシング560の内部側面に一対のIPA・N供給管565aがそれぞれブラケット565bにより、処理槽562に貯留されている処理液の液面(処理槽562の上端)より下の位置に取り付けられ、IPA・N供給管565aには有機溶剤であるIPAをキャリアガスNとともに供給するための複数の供給口IOが上向きに開孔して設けられている。また、図2および図3には図示しないがIPA・N供給管565aには配管565c(図4参照)が連結されている。
【0036】
供給部566もケーシング560の内部側面に一対のN供給管566aがそれぞれブラケット566bにより取り付けられ、N供給管566aにはNを供給するための複数の供給口NO(図3には一部にのみ参照符号を付した)が設けられている。また、図2および図3には図示しないがN供給管566aには配管566c(図4参照)が連結されている。
【0037】
図4は多機能処理部56の構造を示す模式図である。多機能処理部56は上記機構的構成以外に制御部567aを備えている。図5は、多機能処理部56の制御機構を示すブロック図である。制御部567aはCPUによって構成されており、多機能処理部56の制御を統括する主制御手段568a、主として駆動機構を制御する駆動制御手段568bおよび主としてバルブの開閉を制御するバルブ制御手段568cを備えている。
【0038】
多機能処理部56を構成する各機構は、制御部567aに電気的に接続され、制御部567aによって制御されている。具体的には、駆動制御手段568bがリフタ563に保持される基板Wの高さ位置を検出するセンサ569からの信号に基づいてリフタ563の動作を制御する。一方、バルブ制御手段568cは、後述する三方弁V1、V6の流路を切替えるとともに、バルブV2〜V5、V7の開閉を制御する。
【0039】
図4に戻り、配管562bには三方弁V1、ポンプPおよびフィルタFが介挿されており、さらにフィルタFには配管562cが連結されている。また、三方弁V1の配管562bに連結されていないポートは配管562bcを通じて処理槽および施設内の排液ラインに連通する配管562dに連結されており、さらに配管562dのその先にバルブV2が介挿されている。そして、制御部567aは三方弁V1の制御により所定のタイミングで、処理槽562から処理液回収溝562aに溢れた処理液の処理槽562への帰還と、排液ラインへの排出とを切替える。
【0040】
配管562eは2つに分岐しており、その一方はバルブV3を介してHF供給源567bに連結され、他方はバルブV4および純水温度調節部567dを介して純水供給源567cに連結されており、制御部567aはバルブV3、V4の制御によりHFと純水DIWのいずれかを処理槽562に所定のタイミングで供給する。
【0041】
配管560bはバルブV5およびエアポンプAPを介して施設内の排気ラインに連通されており、制御部567aはバルブV5の制御によりケーシング560内の雰囲気を所定のタイミングで排出する。
【0042】
配管565cは三方弁V6を介してN供給源567fおよびIPA供給源567eに連結されている。制御部567aは三方弁V6の制御によりIPA・N供給管565aを通じてケーシング560内にIPA蒸気をNをキャリアガスとして供給したり、Nガスのみを供給したり、さらにはガス供給を停止したりすることを所定のタイミングで行う。
【0043】
配管566cはバルブV7を介してN供給源567fに連結されており、制御部567aはバルブV7の制御によりN供給管566aを通じてケーシング560内にNを所定のタイミングで供給する。
【0044】
この多機能処理部56において、純水温度調節部567dは純水供給源567cから供給される純水DIWの温度を計測する温度センサと純水DIWを冷却するヒートポンプよりなる冷却手段とを備えており、制御部567aは温度センサによる純水DIWの温度計測結果を基に、その温度計測結果が所定温度以上になると冷却手段を駆動し、その所定温度以下になると停止するという制御を行い、純水DIWを所定温度に冷却、維持可能としている。
【0045】
また、多機能処理部56のIPA・N供給部565は処理槽562の上端より下方位置で処理槽562の側方において設けられ、その供給口IOは上方に向けられている。これによりIPA蒸気が直接純水DIWの表面に吹き付けられることはなくなり、純水DIWへのIPAの溶解量が減少し、IPAの消費量を低減することができる。
【0046】
さらに、この実施の形態の多機能処理部56では図2に示すようにケーシング560の上部に設けられたN供給部566の供給口NOは斜め下方に向けて設けられている。そして、N供給部566からNを供給することにより、ケーシング560内の空気をNに置換し、その雰囲気を窒素雰囲気とすることができる。
【0047】
<C.処理手順>
以上のような構成を有する基板処理装置1の多機能処理部56における処理手順について説明する。本実施形態の多機能処理部56では、
▲1▼HFによる基板Wのエッチング処理、
▲2▼純水DIWによる洗浄処理、
▲3▼基板Wの引き上げ、
▲4▼IPA蒸気の供給、
▲5▼減圧乾燥、
という手順に従って一連の処理が実行される。なお、ここで説明する一連の処理は制御部567aによって制御されているものである。
【0048】
まず、制御部567aがバルブV3を開いて処理槽562にHFを貯留し、そのHF中にリフタ563が複数の基板Wを浸漬位置DPまで降下させて浸漬させることにより、当該基板Wに対するエッチング処理が行われる。エッチング処理では、基板W表面のSiの部分に形成された自然酸化膜(SiO膜)の除去が行われるのであるが、同時に基板W表面のSiOの部分の腐食も進行し、エッチング残渣(SiF(OH))が生成される。
【0049】
次いで、排液ラインに連通する配管562dを介してHFが排出された後、バルブV4が開かれて処理槽562に純水DIWが貯留される。この工程では、リフタ563は動作を行わないため、基板Wは浸漬位置DPに維持され、処理槽562に純水DIWが満たされることによって複数の基板Wは自動的に純水DIW中に浸漬されることとなる。なお、後述する理由により、供給される純水は、純水温度調節部567dによって所定温度以下(室温よりも10℃程度低い温度)に冷却しておく方が好ましい。
【0050】
基板Wが純水DIWに浸漬されることにより、基板Wに付着しているHFが洗浄されるとともに、基板W表面のSiOの部分に存在するエッチング残渣も除去される。しかしながら、上述の如く、エッチング残渣の一部は純水洗浄後も依然として基板W表面のSiOの部分に残留することとなる。
【0051】
次に、リフタ563が複数の基板Wを純水DIWから引き上げる。すなわち、リフタ563が基板Wを浸漬位置DPから乾燥位置DRまで上昇させる。このときの引き上げ速度は5mm/sec.程度である。ここで、基板Wの引き上げに先立って、N供給部566によりケーシング560内の空気を窒素雰囲気、すなわち不活性ガス雰囲気に置換しておく必要がある。ケーシング560内を不活性ガス雰囲気とするのは、純水DIWから引き上げられた基板Wの周辺に空気(より正確には空気中の酸素)が存在すると、基板W表面のSiの部分が自然酸化されるからである。なお、ケーシング560内の雰囲気置換に際しては、IPA・N供給部565からNのみを噴出させ、N供給部566と協働させるようにしてもよい。
【0052】
但し、純水DIWから基板Wを引き上げる前にIPA・N供給部565からIPA蒸気を供給してはならない。この理由は、上述したように、IPA蒸気が純水DIWに多量に溶け込むことによって、エッチング残渣に起因する横すじ状パーティクルが発生するためである。
【0053】
リフタ563が基板Wを引き上げるにつれて、基板Wはその上端が純水DIWの液面から露出し始め、やがて基板Wの全面が露出するに至る。そして、制御部567aは、基板Wの全面が純水DIWの液面から露出した旨の検知信号をセンサ569から受け取ったときに三方弁V6を作動させて、配管565cをN供給源567fおよびIPA供給源567eにつなぎ、IPA・N供給部565からNをキャリアガスとしてIPA蒸気を供給する。基板Wはさらに上昇して乾燥位置DRに至るとともに、その表面にはケーシング560内に供給されたIPA蒸気が凝縮して洗浄用の純水と置き換わる。
【0054】
次いで、三方弁V6を閉じてIPA・N供給部565からのIPA蒸気の供給を停止するとともに、バルブV7を開いてN供給部566より乾燥位置DRに位置するリフタ563の基板ガイド563c付近に向けてNを供給し、その保持溝内に残った純水DIWを吹き飛ばす。また、バルブV2が開かれ、処理槽562内の純水DIWは配管562dから排液ラインに排出される。
【0055】
次に、三方弁V6を作動させて、N供給源567fのみを配管565cにつなぎ、IPA・N供給部565からもNのみを供給し、ケーシング560内をほぼ完全に窒素雰囲気で満たす。さらにその後、バルブV5を開き、配管560bによりケーシング560内の雰囲気を配管560bを通じて排気し、ケーシング560内の気圧を減圧することによって基板Wに凝縮したIPAを完全に乾燥させる。なお、この減圧乾燥は本実施形態において必須のものではなく、窒素雰囲気中での自然乾燥としてもよい。
【0056】
最後に、シャッタ561を開いて大気解放し、リフタ563を受け渡し位置TPまで上昇させることにより基板Wをケーシング560外に取り出して、一連の基板処理を終了する。
【0057】
このようにすれば、基板Wの全面が純水DIWの液面から露出した後にIPA蒸気の供給を開始しているため、純水DIWに溶け込んだIPAを介して基板W表面のSiの部分にパーティクルが付着するのを防止することができる。
【0058】
なお、基板Wの全面が純水DIWの液面から露出した状態で長時間放置しておくとウォーターマーク発生の原因となるため、基板Wの全面が純水DIWの液面から露出した後なるべく迅速にIPA蒸気の供給を開始する必要がある。具体的には、基板Wの全面が純水DIWの液面から露出した後60秒以内に、好ましくは露出した直後に、IPA蒸気の供給を開始するとよい。
【0059】
また、処理槽562に供給される純水は、純水温度調節部567dによって室温以下に冷却されているため、純水DIWから引き上げられた直後の基板Wの温度はIPA蒸気の温度よりも低く、IPA蒸気は容易に基板Wの表面に凝縮する。なお、純水を冷却するのに代えて、配管565cの途中にヒータを設け、ケーシング560に供給するNガスの温度を高くするようにしても基板Wの温度はIPA蒸気の温度よりも相対的に低くなるため、同様の効果が得られる。
【0060】
ところで、基板Wの主面は、その全体がデバイス等として利用されるのではなく、周縁部分については利用されないのが通常である。すなわち、図6に示す如く、基板Wの主面はデバイス等として利用される有効部分EAと、利用されない非有効部分NAとを含んでいる。そして、非有効部分NAについては、仮にパーティクルが付着して汚染されたとしても最終製品として使用される部分ではないため、歩留まりが低下するという問題は生じない。
【0061】
従って、本発明に係る基板処理技術において、ケーシング560にIPA蒸気の供給を開始するタイミングは、基板Wの全面が純水DIWの液面から露出した後に限られるものではなく、基板Wの有効部分EAが露出した後、全面が露出するまでの間であってもよい。この内容について、図7および図8を用いつつ、さらに詳述する。図7は、基板Wが純水DIWから引き上げられる過程を経時段階的に示した模式図である。また、図8は、IPAの供給状態を示すタイムチャートである。
【0062】
図7(a)は、基板Wに対する純水洗浄処理が終了し、基板Wの引き上げを開始する段階を示している。この段階は、図8における時刻tの時点に対応しており、基板Wの全面が純水DIWに浸漬されている。そして、既述したように、この段階においては、横すじ状パーティクルの発生を防止すべく、IPAの供給を開始することはできない。
【0063】
図7(b)は、基板Wの引き上げは開始されたが、基板Wの有効部分EAの一部が未だ純水DIWに浸かっている段階を示している。この段階は、図8における時刻tと時刻tとの間(時刻tは除く)に対応している。この段階において、IPA蒸気の供給を開始すると、IPA蒸気が直ちに純水DIWに溶け込み、有効部分EAの一部に横すじ状パーティクルが付着する可能性がある。よって、この段階でもIPAの供給は開始できない。
【0064】
図7(c)は、基板Wの有効部分EAは純水DIWの液面から完全に露出しているが、基板Wの全面は露出していない、すなわち非有効部分NAの一部が未だ純水DIWに浸かっている段階を示している。この段階は、図8における時刻tから時刻tまでの間(時刻tおよび時刻tを含む)に対応している。この段階において、IPA蒸気の供給を開始しても、純水DIWに溶け込んだIPAによって横すじ状パーティクルが付着するのは非有効部分NAである。よって、この段階は、IPA蒸気の供給開始が可能な段階である。
【0065】
図7(d)は、基板Wがさらに引き上げられ、基板Wの全面が純水DIWの液面から完全に露出している段階を示している。この段階は、図8における時刻tよりも後(時刻tを除く)の状態に対応している。この段階において、IPA蒸気の供給を開始しても、基板Wに横すじ状パーティクルが付着する懸念はない。但し、ウォーターマーク発生防止を考慮した露出許容限時刻tまでの間に、IPA蒸気の供給を開始する必要がある。
【0066】
結局、IPA蒸気の供給は、基板Wの有効部分EAが純水DIWの液面から完全に露出する時刻tから基板Wの全面露出が許容される時刻tまでの間(図8において斜線を付した期間)に開始すればよいことになる。もっとも、基板Wの全面が純水DIWの液面から完全に露出した時刻tから基板Wの全面露出が許容される時刻tまでの間にIPA蒸気の供給を開始した方が基板Wへのパーティクル付着をより完全に防止できる。なお、図8においては、一例として、IPA蒸気の供給を基板Wの全面が純水DIWの液面から完全に露出した時刻tの直後に開始する場合について示している。
【0067】
IPA蒸気の供給は、その後のN供給時刻tまで続けられた後、停止される。
【0068】
<D.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における多機能処理部56では有機溶剤としてIPAを用い、不活性ガスとしてNを用いたが、これに限られず、有機溶剤としてエタノールやメタノール等のその他の有機溶剤、不活性ガスとしてヘリウムガスやアルゴンガス等のその他の不活性ガスを用いてもよい。
【0069】
また、エッチング処理の処理液としてはフッ酸に限られず、バッファードフッ酸(HF+NHOH)、アンモニア水、リン酸等であっても本発明にかかる基板処理技術の適用は可能である。
【0070】
また、上記実施形態における多機能処理部56ではN供給部566を備えるものとしたが、N供給部566を設けないでIPA・N供給部565のみによりIPA蒸気やNを供給してもよい。
【0071】
また、上記実施形態における多機能処理部56ではIPA・N供給部565を処理槽562の上端より下方位置の側方に供給口IOを上方に向けた状態で設け、それによりIPA蒸気を上向きに供給するものとしたが、これに限定されるものではなく、ケーシング560内にIPA蒸気を供給できる供給部であれば、その設置位置、蒸気供給方向は任意に定めることができる。例えば、IPA・N供給部565を処理槽562の上端より上に設け、さらに、供給口IOを斜め上方向に向けて設けてもよい。また、N供給部566からIPA蒸気を供給するようにしてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態においては、処理槽562に貯留されている純水DIWからリフタ563によって基板Wを引き上げることにより基板Wを露出させるようにしていたが、これを配管562dを介して純水DIWを排出することにより実現するようにしてもよい。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1および請求項2の発明によれば、処理槽に貯留されている純水の液面から基板の有効部分が露出した後、基板の全面が露出するまでの間に有機溶剤の蒸気の供給を開始しているため、有効部分が純水中に浸かっているときに純水に有機溶剤が溶け込むことはなくなり、有機溶剤を使用した乾燥処理工程においても純水に溶け込んだ有機溶剤によってパーティクルが生じて基板表面に付着することが防止でき、歩留まりを向上することができる。
【0075】
また、請求項3、請求項4および請求項5の発明によれば、処理槽に貯留されている純水の液面から基板の有効部分が露出した後、基板の全面が露出するまでの間に有機溶剤の蒸気の処理室への供給を開始しているため、有効部分が純水中に浸かっているときに純水に有機溶剤が溶け込むことはなくなり、有機溶剤を使用した乾燥処理工程においても純水に溶け込んだ有機溶剤によってパーティクルが生じて基板表面に付着することが防止でき、歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板処理装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の基板処理装置の多機能処理部の正面断面図である。
【図3】図1の基板処理装置の多機能処理部の側面断面図である。
【図4】図1の多機能処理部の構造を示す模式図である。
【図5】図1の多機能処理部の制御機構を示すブロック図である。
【図6】基板の有効部分を示す図である。
【図7】基板が純水から引き上げられる過程を経時段階的に示した模式図である。
【図8】IPAの供給状態を示すタイムチャートである。
【図9】従来における、基板の引き上げの様子を説明する図である。
【図10】従来における乾燥処理後の基板の横すじ状パーティクルを示す図である。
【図11】従来において、基板表面のSiの部分にパーティクルが付着する様子を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 基板処理装置
56 多機能処理部
560 ケーシング
562 処理槽
563 リフタ
565 IPA・N供給部
567a 制御部
W 基板

Claims (5)

  1. エッチング処理を施した基板に純水にて洗浄処理を行った後、有機溶剤による乾燥処理を行う基板処理装置であって、
    (a) 前記エッチング処理および前記洗浄処理を行う処理槽と、
    (b) 前記処理槽を収容し、前記乾燥処理を行う処理室と、
    (c) 前記洗浄処理後に前記処理槽に貯留されている純水から基板を引き上げる引き上げ手段と、
    (d) 前記処理室に前記有機溶剤の蒸気を供給する有機溶剤供給手段と、
    (e) 前記処理槽に貯留されている前記純水の液面から前記基板の有効部分が露出した後、前記基板の全面が露出するまでの間に前記有機溶剤の蒸気の供給を開始させるように前記有機溶剤供給手段を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  2. 請求項1記載の基板処理装置において、
    前記有機溶剤供給手段からの有機溶剤の蒸気の供給が停止した後、前記処理室に窒素を供給する窒素供給部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
  3. 基板にエッチング処理、洗浄処理および乾燥処理を行う基板処理方法であって、
    (a) 処理室内に収容された処理槽において、前記基板に前記エッチング処理を行うエッチング工程と、
    (b) 前記処理槽において、前記基板に純水による洗浄処理を行う洗浄工程と、
    (c) 前記洗浄処理後に前記処理槽に貯留されている前記純水から前記基板を引き上げる引き上げ工程と、
    (d) 前記処理槽に貯留されている前記純水の液面から前記基板の有効部分が露出した後、前記基板の全面が露出するまでの間に有機溶剤の蒸気の前記処理室への供給を開始する有機溶剤供給工程と、
    を備えることを特徴とする基板処理方法。
  4. 請求項3記載の基板処理方法において、
    (e) 前記有機溶剤が付着した基板を乾燥する乾燥工程、
    をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
  5. 請求項4記載の基板処理方法において、
    前記乾燥工程は、前記処理室に窒素を供給する工程を含むことを特徴とする基板処理方法。
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