JP3552008B2 - 建築構造物の制振構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨造やSRC造等の建築構造物の制振構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建築構造物の制震安定性を高めるための技術として免震構造や制振構造が注目を集めている。高度に情報化の進んだ現在の社会においては、建築構造物だけでなく、その内部に収納されているコンピューター等の電子機器や通信施設といった設備が非常に重要な意味をもつようになってきたためである。もしも大地震によってこれらの設備の機能が停止あるいは破壊されたならば社会に与える影響は極めて大きなものになると予想される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の制振構造は非常に複雑であるため、この制振構造を備える建築構造物を構築する場合には、資材も多く必要となるばかりでなく工期も長引き、施工コストが嵩むといった問題があった。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、構造が単純でありながら制振性に優れた鉄骨造やSRC造の建築構造物の制振構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、複数の階層を有する建築構造物において、1層もしくは複数の階層を挟んで離間した階層の間にブレースを配設し、ブレースが固定されてこれと一体化された階層と、ブレースと一体化されずに分離した階層とを設け、さらにブレースが跨がる階層とブレースとの間にダンパーを設置する。
ブレースと一体化された階層は水平剛性が大きく、ブレースと分離された階層は水平剛性が小さくなるため、この建築構造物には、水平剛性の大きい階層と小さい階層とが積層した構造的なスキップフロアが構築される。
この建築構造物に地震による振動(横揺れ)が伝わると、ブレースと一体化された階層は振動せず、ブレースと分離された階層のみが振動し、さらにこの分離された階層の振動をダンパーが吸収して振動が制御される。
なお、ブレースに替えて耐震壁を配設してもよい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に係る建築構造物の制振構造の第1の実施形態を図1ないし図4に示して説明する。
図1ないし図3は鉄骨造の建築構造物の一部を示している。この建築構造物は複数の階層を有しており、立設された柱1間に各階層を形成する大梁2が上下に離間して配設され、各大梁2上にはそれぞれ床スラブ3が配設されている。
【0007】
各階層をなす大梁2のうち、1階層おきに配設された大梁2Aの間に鉄骨ブレース(ブレース)4が交差して架設されている。これら鉄骨ブレース4は両端が柱1と大梁2Aとの接合部分に剛結されているが、大梁2Aの間に配設された大梁2Bには接合されておらず、大梁2Bによって形成された階層を跨ぐようにして架設されている。
【0008】
大梁2Bで形成される階層と鉄骨ブレース4との間には制振装置としてオイルダンパー5が設置されている。大梁2Bの高さには、その上下の一体階に接合された鉄骨ブレース4の交差部分が位置しており、オイルダンパー5は、両側の柱1から大梁2Bに連続して突設された突設部材5aと鉄骨ブレース4の交差部分に設けられたリブ5bとの間にそれぞれ介装され、鉄骨ブレース4の交差部分を挟んで直列に配列されている。
これらオイルダンパー5は突設部材5a、リブ5bから取り外し可能に設置されており、必要に応じて交換できるようになっている。
【0009】
鉄骨ブレース4の交差部分を挟んで直列に配列されたオイルダンパー5の両側にはオイルダンパー5を挟むように小梁2Cが配設されており、この階層に配設される床スラブ3を支持している。
【0010】
この建築構造物には、各柱1と1階層おきに配設された大梁2Aとによって構成される矩形の空間にそれぞれ上記の制振構造が設けられている。
【0011】
上記のように構成された制振構造を備える建築構造物の振動形態を多質点モデルとして図4に示す。
図において、大梁2Aによって形成された各階層は鉄骨ブレース4が架設されることによって一体化が図られており、水平剛性が大きい。この階層を一体階とする。また、大梁2Bによって形成された各階層は鉄骨ブレース4と分離されており、一体階に比べて水平剛性が小さい。この階層を分離階とする。
【0012】
この建築構造物に地震による振動が伝わると、1階層おきに設けられた一体階は水平剛性が大きく、各一体層が一体となった耐力構造的な要素を残しており振動しにくい。これに対して分離階は水平剛性が小さく積極的に振動するが、この振動が各分離階に設置されているオイルダンパー5によって吸収される。
【0013】
上記のように構成された制振構造を備える建築構造物は、オイルダンパー5が設置された分離階以外に振動する部分がなく、エネルギーロスのほとんどない単純な構造を有しており、効果的に減衰性能を発揮することができる。
【0014】
一体階を設けることにより建築構造物の剛性が確保されているので、地震応答解析により検出される鉄骨ブレース4の残留変形は最大変形と比較して十分小さい。したがって、地震後に有害な残留変形を残さず、建築構造物としての機能を維持することができる。
【0015】
しかも、この制振構造は外観上の形態は鉄骨ブレース4を用いた一般的な鉄骨耐震構造とほぼ同じであり、構造計画、建築計画上の特別な制約を受けないため、従来の耐震設計と同様の設計作業でこの制振構造を盛り込むことができる。さらに、制振装置を設けることにより地震時の応答が小さくなるので、通常の鉄骨構造と比較して各部材の断面を小さくすることができ、資材コストの削減が可能になる。
【0016】
また、この制振構造を構成するオイルダンパー5は交換可能なように設置されているので、地震や火災等によってダンパーが損傷した場合にこのダンパー部分のみを交換することで、建築構造物に常に安定した制振性能をもたせることができる。
【0017】
ところで、本実施形態においては制振装置としてオイルの粘性を利用したオイルダンパー5を採用したが、これに限らず、建築構造物の形態や用途、設計仕様に応じてゴムアルファルトや高減衰ゴム等を利用した粘弾性体ダンパー、鋼材の降伏を利用した鋼材ダンパー、接触面の摩擦力を利用した摩擦ダンパー、鉛ダンパー等を採用しても構わない。また、粘弾性体ダンパーと鋼材ダンパーというように種類の異なるダンパーを組み合わせて使用してもよい。
【0018】
次に、本発明に係る建築構造物の制振構造の第2の実施形態を図5ないし図7に示して説明する。なお、前記第1の実施形態において説明した構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図に示すように、1階層おきに配設された大梁2Aの間にはRC耐震壁(耐震壁)14が架設されている。このRC耐震壁14は上下の辺部14aが大梁2Aに接合されているが、大梁2Aの間に配設された大梁2Bには一切接合されていない。また、RC耐震壁14の両側の辺部14bは柱1との間に僅かに間隔を空けて離間している。
【0019】
大梁2B上に配設された床スラブ3とRC耐震壁14との間には制振装置として粘弾性体ダンパー15が設置されている。この粘弾性体ダンパー15は、RC耐震壁14に固定されたL型プレート15aと、床スラブ3上面に固定された下部プレート15bと、これらプレート間の間隙に介装された粘弾性体15cとから構成されている。
L型プレート15aは、一方のリブ面を床スラブ3上面に対向させ、他方のリブ面をRC耐震壁14の側面に固定されている。下部プレート15bはL型プレート15aの一方のリブ面との間に間隙を設けて対向するように床スラブ3上面に貼設されている。これらのプレートは床スラブ3、RC耐震壁14にそれぞれケミカルアンカー16を使用して固定されており、これらプレート間の間隙に粘弾性体15cが介装されることによって床スラブ3とRC耐震壁14とが接続されている。
【0020】
上記のように構成された制振構造を備える建築構造物の振動形態を多質点モデルは、図4の第1の実施形態の場合とほぼ同じになる。すなわち、この制振構造を備える建築構造物は第1の実施形態の場合と同様に粘弾性体ダンパー15が設置された分離階以外に振動する部分がなく、エネルギーロスのほとんどない単純な構造を有しており、効果的に減衰性能を発揮することができる。
【0021】
しかも、この制振構造は外観上の形態は耐震壁を用いた一般的な鉄骨耐震構造とほぼ同じであり、構造計画、建築計画上の特別な制約を受けないため、従来の耐震設計と同様の設計作業でこの制振構造を盛り込むことができる。さらに、制振装置を設けることにより地震時の応答が小さくなるので、通常の構造躯体と比較して各部材の断面を小さくすることができ、施工コストの削減が可能になる。
【0022】
また、制振装置に粘弾性体ダンパー15を採用することで、微少変形や風荷重時にも有効な制振構造とすることができ、居住性の向上が図れる。
【0023】
なお、上記第1、第2の各実施形態においては鉄骨造の建築構造物を例に挙げているが、鉄骨造構造物に限らず、SRC造構造物にこの制振構造を採用しても構わない。また、各実施形態においては一体階と分離階とを一階層おきに構成したが、ブレースもしくは耐震壁を複数の階層を跨ぐように設置し、一体階の間に2層、3層の分離階を設けてもよい。
【0024】
【発明の効果】
本発明の建築構造物の制振構造によれば、制振装置が設置された分離階以外に振動する部分がなく、エネルギーロスのほとんどない単純な構造を有しており、効果的に減衰性能を発揮することができる。すなわち、一体階を設けることにより建築構造物の剛性が確保され、地震応答解析により検出されるブレースや耐震壁の残留変形が非常に小さいので、地震後に有害な残留変形を残さず、建築構造物としての機能を維持することができる。
しかも、この制振構造は外観上の形態はブレースや耐震壁を用いた一般的な鉄骨造やSRC造の耐震構造とほぼ同じであり、構造計画、建築計画上の特別な制約を受けないため、従来の耐震設計と同様の設計作業でこの制振構造を盛り込むことができる。さらに、制振装置を設けることにより地震時の応答が小さくなるので、通常の構造躯体と比較して各部材の断面を小さくすることができ、資材コストの削減が可能になる。
以上のように本発明によれば、従来の鉄骨造やSRC造等の耐震構造において多用されているブレースや耐震壁を従来と同様の施工の仕方で利用して、地震エネルギーの吸収効率のより大きな制振構造を容易に、かつ施工コストを抑えて構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建築構造物の制振構造の第1の実施形態を示す側方図である。
【図2】図1におけるII−II線矢視断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線矢視断面図である。
【図4】本発明の制振構造を備える建築構造物の振動形態を示す多質点モデル図である。
【図5】本発明に係る建築構造物の制振構造の第2の実施形態を示す側方図である。
【図6】図5におけるVI−VI線矢視断面図である。
【図7】図6の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 柱
2A、2B 大梁
2C 小梁
3 床スラブ
4 鉄骨ブレース(ブレース)
5 オイルダンパー(ダンパー)
14 RC耐震壁(耐震壁)
15 粘弾性体ダンパー(ダンパー)
Claims (2)
- 複数の階層を有する建築構造物の制振構造であって、1層もしくは複数の階層を挟んで離間した階層の間にブレースを配設し、該ブレースが跨がる1もしくは複数の階層とブレースとの間にはそれぞれダンパーを設置することを特徴とする建築構造物の制振構造。
- 複数の階層を有する建築構造物の制振構造であって、1もしくは複数の階層を挟んで離間した階層の間に耐震壁を配設し、該耐震壁が跨がる1層もしくは複数の階層と耐震壁との間にはそれぞれダンパーを設置することを特徴とする建築構造物の制振構造。
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