JP3551958B2 - 廃プラスチックの分解処理方法および装置と燃料 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃プラスチック中に含まれる塩素および金属やガラス等の固形異物を効率的に除去し、かつ脱塩素後の廃プラスチックを比較的低温で低粘性の流体燃料に転換し、あるいは室温において粉砕性の良い固体燃料として扱うことを可能とする廃プラスチックの分解処理方法および装置に関する。本発明の処理方法ないし装置は利用先のニーズに応じて処理物の性状を調整できる多機能型の廃プラスチック処理システムである。
【0002】
【従来の技術】
従来、廃プラスチックの分解処理方法は、廃プラスチツクから油を回収することを主体とした油化プロセスと、製鉄所の高炉、セメントのキルン、ガス化等の原料とする固体燃料を製造することを主体としたプロセスとが知られている。油化プロセスはプラスチックから低沸点の炭化水素油を製造するものであり、廃プラスチックを比較的低温で溶融して脱塩した後に350℃〜450℃の高温で長時間加熱することによって、溶融プラスチックの熱分解を促して軽質の熱分解生成物を蒸留分離して軽質油を回収し、残留する重質油分やチャーは熱分解工程に戻して再度熱分解を行う方法である。一方、固体燃料を製造するプロセスでは、廃プラをロータリーキルン方式やスクリュー内部に熱媒体を通して加熱し、280〜350℃程度の温度で20〜40分滞留させて脱塩素を行わせた後に冷却して固体燃料とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の固形燃料の製造プロセスにおいて、ロータリキルンを用いる方式では廃プラスチックを気相雰囲気、多くの場合はさらに減圧下で直接に加熱するために不均一な加熱状態になり、局部的な過剰加熱によって分解生成物がさらに二次分解したガスやチャーの割合が多くなり、液油の回収量が低下すると云う問題がある。また、蒸発するガス量が多いために液油の粘性が高くなり、このため液油に混在する金属やガラス等の固形異物の分離が難しく、これらの固形異物が固体燃料に残留しやすいと云う問題がある。なお、このような固形異物を含む液油が固化すると堅い塊となり粉砕性が悪い。また、有機溶媒を添加して廃プラを分解する方法も知られているが(特願平10−22874号等)、この方法は有機溶媒の回収やリサイクル工程の付加などプロセスが煩雑になり、エネルギー効率も低下すると云う問題を有している。さらに固形燃料は用途が限られ、廃プラスチックの利用動向の変化に柔軟に対応できないと云う問題がある。
【0004】
一方、従来の油化プロセスでは、分解油の粘度を低下させるために廃プラスチック1重量部に対して2重量部以上の蒸留重質油を添加することが知られているが(特開平11−310659号)、蒸留工程から熱分解工程に大量の液油を循環して添加するために設備が複雑になり、処理効率も低下する。また、熱分解工程や蒸留工程で大量の熱量が必要である。さらに、従来の方法は分解油の粘度を指標として熱分解を制御しているが、熱分解して生じた溶融液油は熱分解温度が上昇するとしばしば発泡現象を示すので粘度に依存していると熱分解を十分に制御できない場合がある。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は、従来の廃プラスチック分解処理方法における上記問題を解決したものであり、有機溶媒や蒸留重質油を添加しなくても、粘性が低く、クリーンな分解生成物を液体および固体の何れの状態でも回収することができる分解処理方法を提供する。
【0006】
本発明は、(1)廃プラスチックを油中で熱分解する処理方法において、熱分解で生じた溶融液油の密度を指標とし、含有塩素を熱分解して揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制するように熱分解を進め、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収することを特徴とする廃プラスチックの分解処理方法に関する。
【0007】
本発明の分解処理方法は、(2)廃プラスチックを熱分解して含有塩素を揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制した溶融液油にする溶融分解工程と、溶融液油をさらに熱分解して分解油に改質する改質調整工程とを一段階で行う処理方法であって、溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御して軽質分解油を回収する上記(1)の廃プラスチックの分解処理方法、(3)上記(2)の一段階処理において、加熱温度を320〜420℃、加熱時間を30分以下とし、溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御すると共に溶融液油の粘度を300c.p以下に制御する廃プラスチックの分解処理方法を含む。
【0008】
本発明の分解処理方法は、(4)溶融分解工程と改質調整工程を二段階で行う処理方法であって、第一段階の溶融分解工程において溶融液油の密度を400kg/m3 以上〜700kg/m3以下に制御し、第二段階の改質調整工程において分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御して軽質分解油を回収する上記(1)に記載する廃プラスチックの分解処理方法、(5)上記(4)の二段階処理において、溶融分解工程の加熱温度を250〜350℃、加熱時間60分以下とし、溶融液油の密度を400kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御すると共に粘度を600c.p以下に制御し、改質調整工程の加熱温度を350〜420℃、加熱時間30分以下とし、分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御すると共に粘度を300c.p以下に制御する廃プラスチックの分解処理方法を含む。
【0009】
また、本発明は、(6)上記(1)〜(5)の何れかの処理方法によって得た分解油を冷却後、200℃〜300℃に維持して液体原料ないし液体燃料とし、または室温に冷却して固体原料ないし固体燃料とする廃プラスチックの分解処理方法を含む。
【0010】
さらに、本発明は(7)廃プラスチックを油中で熱分解する溶融分解槽、熱分解工程で生じた分解生成物を加熱して液化を促す改質調整槽、各槽を独立の温度に制御する加熱手段、各槽を連通する管路、送液手段、廃プラスチックと油の混合物の密度および粘度を監視する手段を有することを特徴とする廃プラスチックの分解処理装置、(8)上記(1)〜(6)の何れかの方法によって得られる鉛筆硬度3B以下の固体燃料に関する。
【0011】
本発明の分解処理方法は、廃プラスチックを液油中で熱分解する場合、熱分解で生じた溶融液油および分解油の密度を指標とし、含有塩素を熱分解して揮発分離する一方、できるだけ有機揮発分の生成を抑制するように熱分解を進めて軽質な分解油に転換する熱分解方法である。本発明の方法は、廃プラスチックを熱分解して含有塩素を揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制した溶融液油にする溶融分解工程と、溶融液油をさらに熱分解して分解油に改質する改質調整工程とを有する。この溶融分解工程と改質調整工程は単一の処理槽を用いて一段階で行っても良く、溶融分解工程と改質調整工程とを各々の処理槽を用いて二段階で行っても良い。
【0012】
廃プラスチックに含まれる塩素は実質的に溶融分解工程において揮発し、系外に除去される。また、溶融分解工程および改質調整工程を通じて有機揮発分の生成をできるだけ抑制して熱分解を進め、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収する。従って、本発明の方法によれば、従来のような軽質有機成分の蒸留分離を行わず、かつ重質油などを添加せずに廃プラスチックを熱分解し、自己の熱分解で生じた液油中で熱分解を進め、良質で塩素量の少ない低粘度の分解油を回収することができる。また、不純物を除去した液体燃料または固体燃料の何れの形態でも回収することができ、多方面での利用が可能である。
【0013】
なお、先に指摘したように従来のロータリーキルン等を用いた廃プラスチックの熱分解ではガスおよびチャーへの転換率が高く、分解油の回収率が低い。また、従来の油化プロセスでは熱分解工程の後に蒸留工程を設けて軽質有機成分を蒸留分離し、残余の中・重質油を熱分解工程に戻しているので設備が複雑であり、処理効率が低い。一方、本発明の処理方法では有機揮発分の生成を抑制し、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収するので分解油の回収率が高く、かつ分解油の粘性も低い。
【0014】
また、本発明の処理方法は廃プラスチックの熱分解で生じた溶融液油および分解油の密度を指標として熱分解を制御するので、含有塩素の揮発分離と有機揮発分の抑制を巧く行うことができる。密度を指標として熱分解を制御することによって過剰な加熱と液油の発泡をできるだけ生じないようにコントロールする。溶融液油ないし分解油の密度は溶融分解工程と改質調整工程とを一段階で行う場合には300kg/m3以上〜700kg/m3以下とし、溶融分解工程と改質調整工程を二段階で行う場合には、第一段階の熱分解工程において溶融液油の密度を400kg/m3以上〜700kg/m3以下とし、第二段階の改質調整工程において分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御するのが好ましい。
【0015】
なお、密度と共に粘度を制御しても良い。一段階処理の場合、溶融液油の粘度は300c.p以下に制御するのが好ましい。また、二段階処理の場合には溶融分解工程の溶融液油の粘度を600c.p以下とし、改質調整工程の分解油の粘度を300c.p以下に制御するとよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明の処理方法を実施する装置構成の一例を図1〜図3に示す。図1の装置例は溶融分解工程と改質調整工程を一段階で行う例であり、溶融分解槽10において廃プラスチックの熱分解と溶融液油の改質を行う。図2の装置構成は溶融分解槽10による廃プラスチックの熱分解と改質調整槽11による溶融液油の改質を二段階に行う例であり、図3の装置構成は溶融分解槽10および改質調整槽11を有し、さらに改質調整槽11から回収した分解油の一部を熱分解工程に循環する系を有する例である。図1の装置例では溶融分解槽10に密度計12aと粘度計12bが設けられており、図2および図3の装置例では改質調整槽11に密度計12aと粘度計12bが設けられている。また、溶融分解槽10および改質調整槽11には温度調整手段を備えた加熱システム13が設けられている。さらに溶融分解槽10の槽底から改質調整槽11の間には送液ポンプ14と濾過部15が介設されている。
【0017】
廃プラスチックの溶融分解工程と溶融液油の改質調整工程を一段階で行う図1の処理システムでは、廃プラスチックの熱分解によって生じた溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御し、軽質の有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収する。また、好ましくは加熱温度を320〜420℃、好ましくは360〜400℃とし、加熱時間を30分以下として溶融液油の密度を上記範囲に制御すると共に溶融液油の粘度を300c.p以下に制御する。なお、一段階処理では溶融液油と分解油は同一槽内で生成するので槽内の溶融液油の密度を指標としてもよく、抜き出した分解油の密度を指標としても良い。溶融液油の密度とは両者の場合を含む。
【0018】
上記一段階の処理システムにおいては、具体的には、例えば、溶融分解槽の加熱温度および時間を上記範囲に調整し、熱分解によって生じた溶融液油の密度を上記範囲に維持して、有機揮発分の生成を抑制して廃プラスチックの熱分解を進め溶融液油を生成させる。廃プラスチックに含まれる塩素は熱分解によって揮発するので、これを系外に導いて除去する。さらに熱分解を進めて溶融液油の液化を促し、生成した分解油を槽底から抜き出し、ポンプ13によって濾過部15に導き、フィルターを通して金属やガラス等の固形異物を取り除いて分解油を回収する。フィルターの孔径は分解油の粘性に応じ、例えば0.1mm〜10mm程度のものを用いると良い。この分解油は軽質の有機成分を含み粘性が低いので容易に金属やガラス等の固形異物を分離することができる。回収した分解油は冷却器16を通じ、約200℃〜300℃程度に冷却して系外に取り出す。
【0019】
廃プラスチックの溶融分解工程と溶融液油の改質調整工程を二段階で行う図2の処理システムにおいては、第一段階の溶融分解を温度250〜350℃、好ましくは300〜340℃で60分以下行い、溶融液油の密度を500kg/m3以上および粘度600c.p以下とし、第二段階の改質調整を温度350〜420℃、好ましくは360〜400℃で30分以下行い、密度300kg/m3以上および粘度300c.p以下の分解油に転換する。なお、加熱温度は廃プラスチックの種類や混合割合に応じて定めれば良い。
【0020】
図2および図3の処理装置において、溶融分解槽10に投入した廃プラスチックは上記温度で加熱分解されて溶融液油となる。また、廃プラスチックに含まれる塩素は溶融分解槽において揮発し脱塩されるので、これを系外に導く。一方、溶融液油は槽底から抜き出して濾過部15に送り、金属やガラスなどの固形異物を除去した後に改質調整槽11に送る。この改質調整槽11において、溶融液油の密度と粘度を上記範囲に制御して液化を促進する。この改質調整槽11の最適温度は改質調整槽11に設けた密度計12aおよび粘度計12bによって測定した分解油の密度および粘度に基づいて定めれば良い。密度を上記範囲に調整することによって改質調整槽内の過剰分解や発泡現象を防止することができる。また粘度を上記範囲に調整して低粘性の分解油を得ることができる。なお、この温度は廃プラスチックの種類や混合割合によつて異なるので、この種類や割合に基づいて調整すると良い。
【0021】
改質調整槽11において、溶融プラスチックを350℃〜420℃の温度下に短時間、例えば5分〜60分程度に保持することにより、プラスチックの液化が促進され、粘性の低い分解油を得ることができ、また揮発による有機分のロスも少なくなる。改質調整槽11で生成した分解油を槽底から抜出し、冷却器16に送り、約200℃〜300℃程度に冷却する。この冷却によって熱分解の進行を抑制し、揮発成分のロスを防止する。
【0022】
改質調整槽11での熱分解は、改質調整槽内に設置した密度計12aおよび粘度計12bを用いて制御すると良い。槽内の溶融液油は温度の増加と共に熱分解速度が上昇し、熱分解ガスの発生により発泡現象を示す。この発泡現象は見かけ密度あるいは粘性の変化として現れるので、この変化を測定して改質調整槽の温度を制御する。発泡現象は溶融プラスチックの成分割合等によっても変化するが、概ね350℃〜420℃の温度範囲で生じる。この発泡温度を目安にし、かつ加熱時間を短時間にすることにより有機揮発成分の損失を防ぎつつ、粘性の低い分解油を得ることができる。なお、従来の処理方法では熱分解ないし液化促進での滞留時間が長いため、熱分解の進行に伴って有機揮発成分が抜けだすので分解油は炭素分の多い粘性の高い生成物になり、さらにこれが熱分解するとガスとコークスになる。
【0023】
図3に示す処理装置では、改質調整槽11で一定時間滞留させた分解油の一部を溶融分解槽10に戻して槽内の油と混合する。この混合によって熱分解油は槽内温度250℃〜350℃に冷却される。また、溶融分解槽10に戻される分解油は、従来の熱分解における蒸留重質油とは異なり、有機揮発分の蒸留分離を行わず熱分解したものであるので軽質有機成分を含み、溶融分解槽内の油の粘性を低下させる溶媒としても作用する。なお、溶融分解槽10に循環する分解油の量は廃プラスチックの投入量の0.1〜10倍が適当である。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明の処理方法では、溶融分解槽による一段階処理、または溶融分解槽と改質調整槽による二段階処理における滞留時間、温度、循環量などに基づいて、槽内の密度をパラメータとし、また好ましくは密度と共に粘度をパラメータとして熱分解工程および液化促進工程を制御することによって、溶融分解槽および改質調整槽から得られる分解油の性状を所望の状態に調整することができる。具体的には、密度300kg/m3以上および粘度300c.p以下とすることにより十分な流動性を有し、金属やガラスなどの固形異物を含まず、かつ塩素含有量が極めて少ないクリーンな分解油を得ることができる。また、本発明の処理方法によって得られた分解油は室温に冷却すると粉砕性の良い固体となるので、固体原料ないし固体燃料としても利用することができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。
〔実施例1〜3〕
図1、図2および図3に示す分解処理方法の装置構成によって、加熱温度と槽内滞留時間、循環量、分解油等の密度を表1に示す値に制御して廃プラスチックの熱分解処理を行った。廃プラスチックはPVC,PE,PP,PSを含むものを用いた。回収した分解油の粘度と収率および塩素残留率を表1に示した。また分解油の温度と粘度の関係を図4に示した。表1の結果に示すように、本発明の処理方法によれば、一段階処理(図1の装置例:実施例1)によって、粘度10c.p〜830c.pの低粘性分解油を91.8〜96.4%の高率で得ることができる。また、二段階処理(図2の装置例:実施例2)によれば、粘度23c.p〜530c.pの低粘度分解油を93.1〜96.2%の高率で得ることができる。さらに分解油を循環した二段階処理(図3の装置例:実施例3)によれば、粘度35c.p〜75c.pの極低粘度分解油を94.1〜95.2%の高率で得ることができる。また、本発明の処理方法に係る分解油の塩素残留率は極めて低い。
【0026】
〔比較例1、2〕
図1および図3の処理構成において、溶融分解槽または改質調整槽の加熱温度を500℃としたほかは本発明の処理条件内で廃プラスチックの分解処理を行った。この結果を表1に対比して示した。加熱温度が高い比較例は何れも過剰分解し、収率が低下した。
【0027】
【表1】
【0028】
〔実施例4、比較例3〕
実施例1で得た分解油からなる固形物(実施例4)と、従来の小型ロータリーキルンを用いて廃プラスチックを熱分解した固形物(比較例3)について、図5に示す粉砕試験機を用いて粉砕性を調べた。試験方法は試験機内部のロータスピードミル51(20000rpm)に固形物を入れ、その粉砕物を篩い52(80mesh)にかけ、残留物を戻して粉砕を繰り返した。この結果(粉砕回数に対する通過残留率)を図6のグラフに示した。図示するように、本発明の実施例に係る固形物は粉砕性が良く、10回程度の粉砕で残留率20wt%程度であるが、比較例の固形物は粉砕性が悪く、粉砕を12回行っても80wt%程度が残留する。また、比較例3の固形物の鉛筆硬度は概ね2Hであるが、実施例4の固形物の鉛筆硬度は概ね3B以下であった。この固形物は粉砕性が良いので固形燃料として好適であり、また多方面の用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一段階処理の装置構成例を示す概念図。
【図2】本発明の二階処理の装置構成例を示す概念図。
【図3】本発明の二段階処理と循環系を有する装置構成例を示す概念図。
【図4】分解油(流出油)温度と粘度の関係を示すグラフ。
【図5】粉砕試験機の概略図
【図6】粉砕試験の結果を示すグラフ
【符号の説明】
10−溶融分解槽、11−改質調整槽、12a密度計、12b−粘度計、13−加熱システム、14−送液ポンプ、15−濾過部、16−冷却器。
51−ロータスピードミル、52−篩い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃プラスチック中に含まれる塩素および金属やガラス等の固形異物を効率的に除去し、かつ脱塩素後の廃プラスチックを比較的低温で低粘性の流体燃料に転換し、あるいは室温において粉砕性の良い固体燃料として扱うことを可能とする廃プラスチックの分解処理方法および装置に関する。本発明の処理方法ないし装置は利用先のニーズに応じて処理物の性状を調整できる多機能型の廃プラスチック処理システムである。
【0002】
【従来の技術】
従来、廃プラスチックの分解処理方法は、廃プラスチツクから油を回収することを主体とした油化プロセスと、製鉄所の高炉、セメントのキルン、ガス化等の原料とする固体燃料を製造することを主体としたプロセスとが知られている。油化プロセスはプラスチックから低沸点の炭化水素油を製造するものであり、廃プラスチックを比較的低温で溶融して脱塩した後に350℃〜450℃の高温で長時間加熱することによって、溶融プラスチックの熱分解を促して軽質の熱分解生成物を蒸留分離して軽質油を回収し、残留する重質油分やチャーは熱分解工程に戻して再度熱分解を行う方法である。一方、固体燃料を製造するプロセスでは、廃プラをロータリーキルン方式やスクリュー内部に熱媒体を通して加熱し、280〜350℃程度の温度で20〜40分滞留させて脱塩素を行わせた後に冷却して固体燃料とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の固形燃料の製造プロセスにおいて、ロータリキルンを用いる方式では廃プラスチックを気相雰囲気、多くの場合はさらに減圧下で直接に加熱するために不均一な加熱状態になり、局部的な過剰加熱によって分解生成物がさらに二次分解したガスやチャーの割合が多くなり、液油の回収量が低下すると云う問題がある。また、蒸発するガス量が多いために液油の粘性が高くなり、このため液油に混在する金属やガラス等の固形異物の分離が難しく、これらの固形異物が固体燃料に残留しやすいと云う問題がある。なお、このような固形異物を含む液油が固化すると堅い塊となり粉砕性が悪い。また、有機溶媒を添加して廃プラを分解する方法も知られているが(特願平10−22874号等)、この方法は有機溶媒の回収やリサイクル工程の付加などプロセスが煩雑になり、エネルギー効率も低下すると云う問題を有している。さらに固形燃料は用途が限られ、廃プラスチックの利用動向の変化に柔軟に対応できないと云う問題がある。
【0004】
一方、従来の油化プロセスでは、分解油の粘度を低下させるために廃プラスチック1重量部に対して2重量部以上の蒸留重質油を添加することが知られているが(特開平11−310659号)、蒸留工程から熱分解工程に大量の液油を循環して添加するために設備が複雑になり、処理効率も低下する。また、熱分解工程や蒸留工程で大量の熱量が必要である。さらに、従来の方法は分解油の粘度を指標として熱分解を制御しているが、熱分解して生じた溶融液油は熱分解温度が上昇するとしばしば発泡現象を示すので粘度に依存していると熱分解を十分に制御できない場合がある。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は、従来の廃プラスチック分解処理方法における上記問題を解決したものであり、有機溶媒や蒸留重質油を添加しなくても、粘性が低く、クリーンな分解生成物を液体および固体の何れの状態でも回収することができる分解処理方法を提供する。
【0006】
本発明は、(1)廃プラスチックを油中で熱分解する処理方法において、熱分解で生じた溶融液油の密度を指標とし、含有塩素を熱分解して揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制するように熱分解を進め、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収することを特徴とする廃プラスチックの分解処理方法に関する。
【0007】
本発明の分解処理方法は、(2)廃プラスチックを熱分解して含有塩素を揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制した溶融液油にする溶融分解工程と、溶融液油をさらに熱分解して分解油に改質する改質調整工程とを一段階で行う処理方法であって、溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御して軽質分解油を回収する上記(1)の廃プラスチックの分解処理方法、(3)上記(2)の一段階処理において、加熱温度を320〜420℃、加熱時間を30分以下とし、溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御すると共に溶融液油の粘度を300c.p以下に制御する廃プラスチックの分解処理方法を含む。
【0008】
本発明の分解処理方法は、(4)溶融分解工程と改質調整工程を二段階で行う処理方法であって、第一段階の溶融分解工程において溶融液油の密度を400kg/m3 以上〜700kg/m3以下に制御し、第二段階の改質調整工程において分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御して軽質分解油を回収する上記(1)に記載する廃プラスチックの分解処理方法、(5)上記(4)の二段階処理において、溶融分解工程の加熱温度を250〜350℃、加熱時間60分以下とし、溶融液油の密度を400kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御すると共に粘度を600c.p以下に制御し、改質調整工程の加熱温度を350〜420℃、加熱時間30分以下とし、分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御すると共に粘度を300c.p以下に制御する廃プラスチックの分解処理方法を含む。
【0009】
また、本発明は、(6)上記(1)〜(5)の何れかの処理方法によって得た分解油を冷却後、200℃〜300℃に維持して液体原料ないし液体燃料とし、または室温に冷却して固体原料ないし固体燃料とする廃プラスチックの分解処理方法を含む。
【0010】
さらに、本発明は(7)廃プラスチックを油中で熱分解する溶融分解槽、熱分解工程で生じた分解生成物を加熱して液化を促す改質調整槽、各槽を独立の温度に制御する加熱手段、各槽を連通する管路、送液手段、廃プラスチックと油の混合物の密度および粘度を監視する手段を有することを特徴とする廃プラスチックの分解処理装置、(8)上記(1)〜(6)の何れかの方法によって得られる鉛筆硬度3B以下の固体燃料に関する。
【0011】
本発明の分解処理方法は、廃プラスチックを液油中で熱分解する場合、熱分解で生じた溶融液油および分解油の密度を指標とし、含有塩素を熱分解して揮発分離する一方、できるだけ有機揮発分の生成を抑制するように熱分解を進めて軽質な分解油に転換する熱分解方法である。本発明の方法は、廃プラスチックを熱分解して含有塩素を揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制した溶融液油にする溶融分解工程と、溶融液油をさらに熱分解して分解油に改質する改質調整工程とを有する。この溶融分解工程と改質調整工程は単一の処理槽を用いて一段階で行っても良く、溶融分解工程と改質調整工程とを各々の処理槽を用いて二段階で行っても良い。
【0012】
廃プラスチックに含まれる塩素は実質的に溶融分解工程において揮発し、系外に除去される。また、溶融分解工程および改質調整工程を通じて有機揮発分の生成をできるだけ抑制して熱分解を進め、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収する。従って、本発明の方法によれば、従来のような軽質有機成分の蒸留分離を行わず、かつ重質油などを添加せずに廃プラスチックを熱分解し、自己の熱分解で生じた液油中で熱分解を進め、良質で塩素量の少ない低粘度の分解油を回収することができる。また、不純物を除去した液体燃料または固体燃料の何れの形態でも回収することができ、多方面での利用が可能である。
【0013】
なお、先に指摘したように従来のロータリーキルン等を用いた廃プラスチックの熱分解ではガスおよびチャーへの転換率が高く、分解油の回収率が低い。また、従来の油化プロセスでは熱分解工程の後に蒸留工程を設けて軽質有機成分を蒸留分離し、残余の中・重質油を熱分解工程に戻しているので設備が複雑であり、処理効率が低い。一方、本発明の処理方法では有機揮発分の生成を抑制し、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収するので分解油の回収率が高く、かつ分解油の粘性も低い。
【0014】
また、本発明の処理方法は廃プラスチックの熱分解で生じた溶融液油および分解油の密度を指標として熱分解を制御するので、含有塩素の揮発分離と有機揮発分の抑制を巧く行うことができる。密度を指標として熱分解を制御することによって過剰な加熱と液油の発泡をできるだけ生じないようにコントロールする。溶融液油ないし分解油の密度は溶融分解工程と改質調整工程とを一段階で行う場合には300kg/m3以上〜700kg/m3以下とし、溶融分解工程と改質調整工程を二段階で行う場合には、第一段階の熱分解工程において溶融液油の密度を400kg/m3以上〜700kg/m3以下とし、第二段階の改質調整工程において分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御するのが好ましい。
【0015】
なお、密度と共に粘度を制御しても良い。一段階処理の場合、溶融液油の粘度は300c.p以下に制御するのが好ましい。また、二段階処理の場合には溶融分解工程の溶融液油の粘度を600c.p以下とし、改質調整工程の分解油の粘度を300c.p以下に制御するとよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明の処理方法を実施する装置構成の一例を図1〜図3に示す。図1の装置例は溶融分解工程と改質調整工程を一段階で行う例であり、溶融分解槽10において廃プラスチックの熱分解と溶融液油の改質を行う。図2の装置構成は溶融分解槽10による廃プラスチックの熱分解と改質調整槽11による溶融液油の改質を二段階に行う例であり、図3の装置構成は溶融分解槽10および改質調整槽11を有し、さらに改質調整槽11から回収した分解油の一部を熱分解工程に循環する系を有する例である。図1の装置例では溶融分解槽10に密度計12aと粘度計12bが設けられており、図2および図3の装置例では改質調整槽11に密度計12aと粘度計12bが設けられている。また、溶融分解槽10および改質調整槽11には温度調整手段を備えた加熱システム13が設けられている。さらに溶融分解槽10の槽底から改質調整槽11の間には送液ポンプ14と濾過部15が介設されている。
【0017】
廃プラスチックの溶融分解工程と溶融液油の改質調整工程を一段階で行う図1の処理システムでは、廃プラスチックの熱分解によって生じた溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御し、軽質の有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収する。また、好ましくは加熱温度を320〜420℃、好ましくは360〜400℃とし、加熱時間を30分以下として溶融液油の密度を上記範囲に制御すると共に溶融液油の粘度を300c.p以下に制御する。なお、一段階処理では溶融液油と分解油は同一槽内で生成するので槽内の溶融液油の密度を指標としてもよく、抜き出した分解油の密度を指標としても良い。溶融液油の密度とは両者の場合を含む。
【0018】
上記一段階の処理システムにおいては、具体的には、例えば、溶融分解槽の加熱温度および時間を上記範囲に調整し、熱分解によって生じた溶融液油の密度を上記範囲に維持して、有機揮発分の生成を抑制して廃プラスチックの熱分解を進め溶融液油を生成させる。廃プラスチックに含まれる塩素は熱分解によって揮発するので、これを系外に導いて除去する。さらに熱分解を進めて溶融液油の液化を促し、生成した分解油を槽底から抜き出し、ポンプ13によって濾過部15に導き、フィルターを通して金属やガラス等の固形異物を取り除いて分解油を回収する。フィルターの孔径は分解油の粘性に応じ、例えば0.1mm〜10mm程度のものを用いると良い。この分解油は軽質の有機成分を含み粘性が低いので容易に金属やガラス等の固形異物を分離することができる。回収した分解油は冷却器16を通じ、約200℃〜300℃程度に冷却して系外に取り出す。
【0019】
廃プラスチックの溶融分解工程と溶融液油の改質調整工程を二段階で行う図2の処理システムにおいては、第一段階の溶融分解を温度250〜350℃、好ましくは300〜340℃で60分以下行い、溶融液油の密度を500kg/m3以上および粘度600c.p以下とし、第二段階の改質調整を温度350〜420℃、好ましくは360〜400℃で30分以下行い、密度300kg/m3以上および粘度300c.p以下の分解油に転換する。なお、加熱温度は廃プラスチックの種類や混合割合に応じて定めれば良い。
【0020】
図2および図3の処理装置において、溶融分解槽10に投入した廃プラスチックは上記温度で加熱分解されて溶融液油となる。また、廃プラスチックに含まれる塩素は溶融分解槽において揮発し脱塩されるので、これを系外に導く。一方、溶融液油は槽底から抜き出して濾過部15に送り、金属やガラスなどの固形異物を除去した後に改質調整槽11に送る。この改質調整槽11において、溶融液油の密度と粘度を上記範囲に制御して液化を促進する。この改質調整槽11の最適温度は改質調整槽11に設けた密度計12aおよび粘度計12bによって測定した分解油の密度および粘度に基づいて定めれば良い。密度を上記範囲に調整することによって改質調整槽内の過剰分解や発泡現象を防止することができる。また粘度を上記範囲に調整して低粘性の分解油を得ることができる。なお、この温度は廃プラスチックの種類や混合割合によつて異なるので、この種類や割合に基づいて調整すると良い。
【0021】
改質調整槽11において、溶融プラスチックを350℃〜420℃の温度下に短時間、例えば5分〜60分程度に保持することにより、プラスチックの液化が促進され、粘性の低い分解油を得ることができ、また揮発による有機分のロスも少なくなる。改質調整槽11で生成した分解油を槽底から抜出し、冷却器16に送り、約200℃〜300℃程度に冷却する。この冷却によって熱分解の進行を抑制し、揮発成分のロスを防止する。
【0022】
改質調整槽11での熱分解は、改質調整槽内に設置した密度計12aおよび粘度計12bを用いて制御すると良い。槽内の溶融液油は温度の増加と共に熱分解速度が上昇し、熱分解ガスの発生により発泡現象を示す。この発泡現象は見かけ密度あるいは粘性の変化として現れるので、この変化を測定して改質調整槽の温度を制御する。発泡現象は溶融プラスチックの成分割合等によっても変化するが、概ね350℃〜420℃の温度範囲で生じる。この発泡温度を目安にし、かつ加熱時間を短時間にすることにより有機揮発成分の損失を防ぎつつ、粘性の低い分解油を得ることができる。なお、従来の処理方法では熱分解ないし液化促進での滞留時間が長いため、熱分解の進行に伴って有機揮発成分が抜けだすので分解油は炭素分の多い粘性の高い生成物になり、さらにこれが熱分解するとガスとコークスになる。
【0023】
図3に示す処理装置では、改質調整槽11で一定時間滞留させた分解油の一部を溶融分解槽10に戻して槽内の油と混合する。この混合によって熱分解油は槽内温度250℃〜350℃に冷却される。また、溶融分解槽10に戻される分解油は、従来の熱分解における蒸留重質油とは異なり、有機揮発分の蒸留分離を行わず熱分解したものであるので軽質有機成分を含み、溶融分解槽内の油の粘性を低下させる溶媒としても作用する。なお、溶融分解槽10に循環する分解油の量は廃プラスチックの投入量の0.1〜10倍が適当である。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明の処理方法では、溶融分解槽による一段階処理、または溶融分解槽と改質調整槽による二段階処理における滞留時間、温度、循環量などに基づいて、槽内の密度をパラメータとし、また好ましくは密度と共に粘度をパラメータとして熱分解工程および液化促進工程を制御することによって、溶融分解槽および改質調整槽から得られる分解油の性状を所望の状態に調整することができる。具体的には、密度300kg/m3以上および粘度300c.p以下とすることにより十分な流動性を有し、金属やガラスなどの固形異物を含まず、かつ塩素含有量が極めて少ないクリーンな分解油を得ることができる。また、本発明の処理方法によって得られた分解油は室温に冷却すると粉砕性の良い固体となるので、固体原料ないし固体燃料としても利用することができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。
〔実施例1〜3〕
図1、図2および図3に示す分解処理方法の装置構成によって、加熱温度と槽内滞留時間、循環量、分解油等の密度を表1に示す値に制御して廃プラスチックの熱分解処理を行った。廃プラスチックはPVC,PE,PP,PSを含むものを用いた。回収した分解油の粘度と収率および塩素残留率を表1に示した。また分解油の温度と粘度の関係を図4に示した。表1の結果に示すように、本発明の処理方法によれば、一段階処理(図1の装置例:実施例1)によって、粘度10c.p〜830c.pの低粘性分解油を91.8〜96.4%の高率で得ることができる。また、二段階処理(図2の装置例:実施例2)によれば、粘度23c.p〜530c.pの低粘度分解油を93.1〜96.2%の高率で得ることができる。さらに分解油を循環した二段階処理(図3の装置例:実施例3)によれば、粘度35c.p〜75c.pの極低粘度分解油を94.1〜95.2%の高率で得ることができる。また、本発明の処理方法に係る分解油の塩素残留率は極めて低い。
【0026】
〔比較例1、2〕
図1および図3の処理構成において、溶融分解槽または改質調整槽の加熱温度を500℃としたほかは本発明の処理条件内で廃プラスチックの分解処理を行った。この結果を表1に対比して示した。加熱温度が高い比較例は何れも過剰分解し、収率が低下した。
【0027】
【表1】
【0028】
〔実施例4、比較例3〕
実施例1で得た分解油からなる固形物(実施例4)と、従来の小型ロータリーキルンを用いて廃プラスチックを熱分解した固形物(比較例3)について、図5に示す粉砕試験機を用いて粉砕性を調べた。試験方法は試験機内部のロータスピードミル51(20000rpm)に固形物を入れ、その粉砕物を篩い52(80mesh)にかけ、残留物を戻して粉砕を繰り返した。この結果(粉砕回数に対する通過残留率)を図6のグラフに示した。図示するように、本発明の実施例に係る固形物は粉砕性が良く、10回程度の粉砕で残留率20wt%程度であるが、比較例の固形物は粉砕性が悪く、粉砕を12回行っても80wt%程度が残留する。また、比較例3の固形物の鉛筆硬度は概ね2Hであるが、実施例4の固形物の鉛筆硬度は概ね3B以下であった。この固形物は粉砕性が良いので固形燃料として好適であり、また多方面の用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一段階処理の装置構成例を示す概念図。
【図2】本発明の二階処理の装置構成例を示す概念図。
【図3】本発明の二段階処理と循環系を有する装置構成例を示す概念図。
【図4】分解油(流出油)温度と粘度の関係を示すグラフ。
【図5】粉砕試験機の概略図
【図6】粉砕試験の結果を示すグラフ
【符号の説明】
10−溶融分解槽、11−改質調整槽、12a密度計、12b−粘度計、13−加熱システム、14−送液ポンプ、15−濾過部、16−冷却器。
51−ロータスピードミル、52−篩い。
Claims (8)
- 廃プラスチックを油中で熱分解する処理方法において、熱分解で生じた溶融液油の密度を指標とし、含有塩素を熱分解して揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制するように熱分解を進め、軽質有機成分を蒸留分離せずに分解油を回収することを特徴とする廃プラスチックの分解処理方法。
- 廃プラスチックを熱分解して含有塩素を揮発除去すると共に有機揮発分の生成を抑制した溶融液油にする溶融分解工程と、溶融液油をさらに熱分解して分解油に改質する改質調整工程とを一段階で行う処理方法であって、溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御して軽質分解油を回収する請求項1の廃プラスチックの分解処理方法。
- 請求項2の一段階処理において、加熱温度を320〜420℃、加熱時間を30分以下とし、溶融液油の密度を300kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御すると共に溶融液油の粘度を300c.p以下に制御する廃プラスチックの分解処理方法。
- 溶融分解工程と改質調整工程を二段階で行う処理方法であって、第一段階の溶融分解工程において溶融液油の密度を400kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御し、第二段階の改質調整工程において分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御して軽質分解油を回収する請求項1に記載する廃プラスチックの分解処理方法。
- 請求項4の二段階処理において、溶融分解工程の加熱温度を250〜350℃、加熱時間60分以下とし、溶融液油の密度を400kg/m3以上〜700kg/m3以下に制御すると共に粘度を600c.p以下に制御し、改質調整工程の加熱温度を350〜420℃、加熱時間30分以下とし、分解油の密度を300kg/m3以上〜600kg/m3以下に制御すると共に粘度を300c.p以下に制御する廃プラスチックの分解処理方法。
- 請求項1〜5の何れかの処理方法によって得た分解油を冷却後、200℃〜300℃に維持して液体原料ないし液体燃料とし、または室温に冷却して固体原料ないし固体燃料とする廃プラスチックの分解処理方法。
- 廃プラスチックを油中で熱分解する溶融分解槽、熱分解工程で生じた分解生成物を加熱して液化を促す改質調整槽、各槽を独立の温度に制御する加熱手段、各槽を連通する管路、送液手段、廃プラスチックと油の混合物の密度および粘度を監視する手段を有することを特徴とする廃プラスチックの分解処理装置。
- 請求項1〜6の何れかの方法によって得られる鉛筆硬度3B以下の固体燃料。
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