JP3547647B2 - 接合レンズの調芯装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は接合レンズの調芯装置にかかり、詳しくは、一対の光学レンズを光軸合わせしながら接合する際などに使用される接合レンズの調芯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、一対の光学レンズを光軸合わせして接合する際などには、特開平4−248507号公報で開示されたような接合レンズの調芯装置が使用されており、この調芯装置は図7で示すような構成を有している。すなわち、図7中の符号51,52は光軸合わせされるべき第1レンズ体及び第2レンズ体、53は偏芯顕微鏡、54は自然光を照射する光源、55はコリメーターレンズ、56はレンズホルダー、57,58は第1レンズ体51を回転させるための回転ローラ及びOリング、59,60は第2レンズ体52をその両側から挟み込んで摺動させる一対の押さえ板であり、61は対物レンズ、62はCCDカメラである。
【0003】
そして、光源54から照射された光は十字チャートを具備したコリメーターレンズ55を通過しながら平行化されたうえでレンズ面同士が対面しあった第1レンズ体51及び第2レンズ体52を透過し、これらを透過した十字チャート像は対物レンズ61でもって捕捉されることになっている。なお、対物レンズ61で捕捉され、かつ、CCDカメラ62で撮影された十字チャート像は制御手段である画像処理装置63へと送信されることになり、光軸が一致したか否かを判定する画像処理装置63はドライバ64を介したうえで対物レンズ61及びCCDカメラ62の駆動機構であるZ軸ステージ65、回転手段を構成するステッピングモータ66、摺動手段を構成するXY軸ステージ67それぞれの動作を制御している。
【0004】
また、レンズホルダー56上に載置された下側の第1レンズ体51は、回転ローラ57に外嵌された断面視円形状のOリング58でもってレンズ面の外周方向に沿いながら回転させられることになっており、回転している第1レンズ体51は、そのレンズ面の外周方向とは交差する方向から第1レンズ体51を受け止めるべく設けられた位置規制手段である固定用V型規制板68でもって位置規制されている。一方、レンズ面同士が対面する状態で第1レンズ体51上に載置された第2レンズ体52は第1レンズ体51とともに回転することになり、第1レンズ体51と第2レンズ体52との光軸ずれをなくして光軸を一致させる際には、画像処理装置62からの指示に基づいたうえ、押さえ板59,60でもって第2レンズ体52のレンズ面を第1レンズ体51のレンズ面に沿って摺動させることが実行される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来の調芯装置においては、対面したレンズ面の拡がり方向、つまり、XY方向に沿った摺動のみによって第1レンズ体51及び第2レンズ体52を光軸合わせすることが実行されており、これらのレンズ面同士が平面形状であるか平面に近い形状である場合にはレンズ面と直交するZ方向への移動を考慮する必要がないために高精度の調芯作業が可能となるが、レンズ面の曲率半径が小さいレンズ体51,52である場合には、押さえ板59,60でもって摺動させられる第2レンズ体52のZ方向に沿った移動をも考慮しなければならないため、高精度の調芯作業を行うことが困難となっている。
【0006】
また、従来の構成では、第2レンズ体52が載置された第1レンズ体51を断面視円形状のOリング58でもって回転させており、レンズ面の外周方向と合致する第1レンズ体51の外周端面を基準としながら偏芯量を測定したり位置決めしたりすることが実行されるが、このような構成である限りは、光軸がばらつくことになってしまうのが現状である。さらに、従来の調芯装置が具備している光源54、つまり、第1レンズ体51及び第2レンズ体52の合成焦点像を得るための光源54はハロゲンランプやメタハライドランプなどであるが、自然光を照射する光源54を使用している限りは、色収差や像面湾曲収差が発生する結果として調芯精度に悪影響が及ぶことになっていた。
【0007】
本発明はこれらの不都合に鑑みて創案されたものであり、調芯すべきレンズ体の大きさやレンズ面の曲率半径が異なっても適用が可能であり、簡単かつ安価な構成であるにも拘わらず、高精度の調芯を容易に実行し得る接合レンズの調芯装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる接合レンズの調芯装置は、レンズ面同士が対面させられた第1レンズ体及び第2レンズ体の光軸合わせを実行するものであって、第1レンズ体をレンズ面の外周方向に沿って回転させる回転手段と、第1レンズ体をレンズ面の外周方向とは交差する方向から受け止めて位置規制する位置規制手段と、板バネ部材と、前記板バネ部材の自由端に連結され、レンズ面同士が対面する状態で第1レンズ体上に載置された第2レンズ体を摺動させる際には第2レンズ体を保持する保持部材と、前記板バネ部材の固定端に連結され、前記板バネ部材のねじれ作用および弾性作用を伴うことにより前記板バネ部材及び前記保持部材を介して第2レンズ体を第1のレンズ体へと押し付けながら第2レンズ体を摺動させる摺動手段と、平行化されて第1レンズ体及び第2レンズ体を透過する光を照射する光源と、第1レンズ体及び第2レンズ体を透過した光の焦点像から光軸のずれを検出し、摺動手段を介して第1レンズ体及び第2レンズ体の光軸が一致するまで第2レンズ体のレンズ面を第1レンズ体のレンズ面に沿って摺動させる制御手段とを具備していることを特徴とする。上記構成によれば、レンズ体の大きさやレンズ面の曲率半径が異なっていても調芯することが可能となり、簡単かつ安価な構成であるにも拘わらず、高精度の調芯を容易に実行し得るという利点が確保される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1にかかる接合レンズの調芯装置は、第1レンズ体をレンズ面の外周方向に沿って回転させる回転手段と、第1レンズ体をレンズ面の外周方向とは交差する方向から受け止めて位置規制する位置規制手段と、板バネ部材と、前記板バネ部材の自由端に連結され、レンズ面同士が対面する状態で第1レンズ体上に載置された第2レンズ体を摺動させる際には第2レンズ体を保持する保持部材と、前記板バネ部材の固定端に連結され、前記板バネ部材のねじれ作用および弾性作用を伴うことにより前記板バネ部材及び前記保持部材を介して第2レンズ体を第1のレンズ体へと押し付けながら第2レンズ体を摺動させる摺動手段と、平行化されて第1レンズ体及び第2レンズ体を透過する光を照射する光源と、第1レンズ体及び第2レンズ体を透過した光の焦点像から光軸のずれを検出し、摺動手段を介して第1レンズ体及び第2レンズ体の光軸が一致するまで第2レンズ体のレンズ面を第1レンズ体のレンズ面に沿って摺動させる制御手段とを具備していることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2にかかる接合レンズの調芯装置は請求項1に記載したものであり、制御手段は、第1レンズ体及び第2レンズ体を透過した光の焦点像軌跡から光軸が一致すると予想される仮想位置を割り出し、摺動手段を介して仮想位置に至るまで第2レンズ体を摺動させるものであることを特徴としている。本発明の請求項3にかかる接合レンズの調芯装置は請求項1または請求項2に記載したものであり、保持部材は、第1レンズ体のレンズ面と対面するレンズ面とは対向する位置にある第2レンズ体のレンズ面を滑動不可に支持する支持部材が配設されたものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4にかかる接合レンズの調芯装置は請求項1または請求項2に記載したものであって、保持部材は環状を有しており、第2レンズ体をレンズ面の外周方向と交差する方向から挟み込む面取り部が内周端部に沿って形成されたものであることを特徴としている。本発明の請求項5にかかる接合レンズの調芯装置は請求項1ないし請求項4のいずれかに記載したものであって、位置規制手段は、第1レンズ体の外周縁部の離間した位置毎に当接する一対の当接部材を具備しており、これら当接部材の離間間隔は変更可能とされていることを特徴とする。本発明の請求項6にかかる接合レンズの調芯装置は請求項1ないし請求項5のいずれかに記載したものであって、光源から照射されて第1レンズ体及び第2レンズ体を透過する光は、単色光であることを特徴としている。
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1にかかる接合レンズの調芯装置の全体構成を示す断面図であり、図2は調芯装置が備えている調芯機構部を示す斜視図である。そして、これらの図における符号1は第1レンズ体、2は第2レンズ体、3は偏芯顕微鏡、4は自然光を照射する白熱ランプなどの光源、5は十字チャートを備えて光源4から照射された光を平行化するコリメーターレンズ、6はレンズホルダー、7はレンズ面同士が対面させられた第1レンズ体1及び第2レンズ体2の焦点距離を変更する補助レンズ、8,9は第1レンズ体1を回転させるための回転手段を構成する回転ローラ及びOリング、10は位置規制手段となる固定用V型規制板、11,11は固定用V型規制板10上に搭載されて第1レンズ体1の外周端面の離間した位置毎に当接する当接部材として機能する一対のベアリングであり、これらのベアリング11,11は固定用V型規制板10とともに位置規制手段を構成している。
【0014】
また、図中の符号13,14は第2レンズ体2を摺動させる摺動手段となる環状の保持部材及び弾性部材、具体的には板バネ部材であり、15は対物レンズ、16はCCDカメラ、17は制御手段として機能する画像処理装置、例えば、パソコンであり、これら各種の機器や部材を用いることによって調芯装置は構成されている。そして、この際における板バネ部材14は、水平方向及び垂直方向に沿って動作し得るよう、摺動手段として機能するXYZ軸ステージ18に対して固定端部が連結されており、かつ、第2レンズ体2を保持する保持部材13が自由端部に取り付けられたものとなっている。なお、ここでの保持部材13は環状を有しているが、環状である必然性はなく、必要に応じて任意の形状や材質が採用されていればよいものである。さらにまた、板バネ部材14の形状やバネ定数などが限定されることもなく、任意の形状やバネ定数が選択された板バネ部材14であってもよいことは勿論である。
【0015】
すなわち、本実施の形態にかかる調芯装置は、レンズ面同士が互いに対面させられた第1レンズ体1及び第2レンズ体2の光軸合わせを実行するものであり、第1レンズ体1をレンズ面の外周方向に沿って回転させる回転ローラ8及びOリング9と、第1レンズ体1をレンズ面の外周方向とは交差する方向から受け止めて位置規制する一対のベアリング11,11と、レンズ面同士が対面する状態で第1レンズ体1上に載置された第2レンズ体2を摺動させる際には第2レンズ体2を保持する環状の保持部材13と、この保持部材13を介して第2レンズ体2を第1のレンズ体1へと押し付ける板バネ部材14と、保持部材13及び板バネ部材14を介して第2レンズ体2を摺動させるための摺動手段として機能するXYZ軸ステージ18と、コリメーターレンズ5によって平行化されたうえで第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過する光を照射する光源4と、第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過した光の焦点像から光軸のずれを検出し、XYZ軸ステージ18を介して第1レンズ体1及び第2レンズ体2の光軸が一致するまで第2レンズ体2のレンズ面を第1レンズ体1のレンズ面に沿って摺動させる制御手段であるところのパソコン17とを具備している。
【0016】
なお、ここでの回転ローラ8に外嵌されるOリング9はゴムなどのような柔軟素材から作製されたものであり、図1におけるOリング9は断面視矩形状を有しているが、図2で示すような従来同様の断面視円形状を有するOリング9であってもよいことは勿論である。但し、断面視矩形状である際には、断面視円形状である場合よりも良好な摩擦状態が第1レンズ体1の外周端面との間で確保される結果、第1レンズ体1の回転がスムーズになると考えられる。また、ここでのパソコン17が、第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過した光の焦点像軌跡から光軸が一致すると予想される仮想位置を割り出し、XYZ軸ステージ18を介して仮想位置に至るまで第2レンズ体2を摺動させるものであってもよいことは勿論である。
【0017】
つぎに、本実施の形態にかかる調芯装置の動作を説明する。まず、レンズホルダー6上に載置された下側の第1レンズ体1は、回転ローラ8に外嵌されたOリング9でもってレンズ面の外周方向に沿いながら回転させられることになり、回転している第1レンズ体1の外周端面は固定用V型規制板10上の離間した位置毎に搭載された一対のベアリング11,11でもって位置規制される。なお、第1レンズ体1及び第2レンズ体2の調芯を実行し、これらのレンズ体1,2同士を接合する際には、第1レンズ体1のレンズ面上に紫外線硬化型などの接着剤を予め滴下しておくことが行われる。さらに、この際、レンズ面同士が対面する状態として第1レンズ体1上に第2レンズ体2を載置すると、載置された第2レンズ体2は第1レンズ体1とともに回転することになり、光源4から照射された光はコリメーターレンズ5及び補助レンズ7を通過し、平行光となったうえでレンズ面同士が対面しあった第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過することになる。
【0018】
そして、第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過した光の十字チャート像は接合レンズの偏芯量と対応した直径を有する円輪状の焦点像軌跡を対物レンズ15上で描くことになり、対物レンズ15によって捕捉され、かつ、CCDカメラ16によって撮影された十字チャート像は画像処理装置であるパソコン17へと送信される。さらに、送信されてきた十字チャート像はパソコン17の画像メモリへと入力されることになり、サンプリングタイム毎における焦点像の認識を実行し、光軸が一致したか否かを判定しているパソコン17が、光軸が一致していないと判定している限りは、光軸が一致するまでドライバ19を介したうえ、回転手段を構成するサーボモータ21と、摺動手段を構成するXYZ軸ステージ18とのそれぞれをフィードバック制御によって動作させる。
【0019】
そのため、第1レンズ体1と第2レンズ体2との光軸ずれをなくして光軸を一致させる場合には、パソコン17からの指示に基づいたうえでXYZ軸ステージ18に連結された板バネ部材14がXY方向及びZ方向に沿って動作することになり、この板バネ部材14のねじれ作用や弾性作用に伴って保持部材13は、例えば、0.5μmずつというように、第2レンズ体2のレンズ面を第1レンズ体1のレンズ面に沿って摺動させることになる。なお、パソコン17でもって光軸が一致したと判定されるのは、第1レンズ体1及び第2レンズ体2を回転させているにも拘わらず、対物レンズ15上で十字チャート像が移動しなくなったときである。
【0020】
ところで、本実施の形態にかかる調芯装置を従来の調芯装置と比較したうえでの性能比較試験を実行してみたところ、以下のような結果が得られている。すなわち、まず、レンズ面が対面しあった一対のレンズ体からなるビデオカメラ用の接合レンズを作製することとし、性能比較試験に先立っては、外直径が8mm、コバ厚みが2mmであり、単品としての偏芯量が1分以内に収まる両凹レンズを第1レンズ体1(51)とし、また、外直径が6.3mm、外周端面の厚みであるコバ厚みが1.5mm、接合されるレンズ面の曲率半径が3.8mmであって単品としての偏芯量が1分以内に収まる正メニスカスレンズを第2レンズ体2(52)として用意したうえ、粘性が1000CPSの紫外線硬化樹脂を接着剤として用意した。そして、従来構成とされた調芯装置を使用して数十個の接合レンズを作製してみたところ、偏芯量が3分以上にもなって調芯精度の悪いものが発生し、また、押さえ板59,60から第2レンズ体52が外れる結果として調芯が不可能となるものも発生した。
【0021】
一方、本実施の形態で説明した調芯装置における保持部材13の外直径を5.6mm、内直径を3.8mm、厚みを0.5mmとし、かつ、板バネ部材14のバネ定数を1.3g/mmとしたうえ、この調芯装置を使用することによって上記同様の構成とされた接合レンズを作製してみた。なお、この際における補助レンズ7は平凸レンズ、つまり、一方側のレンズ面が平面でありながらも他方側レンズ面の曲率半径が5mmとされた平凸レンズであり、また、接合レンズの最小有効光線径が3.8mmとなることから、レンズホルダー6の内直径と補助レンズ7の有効光線径とは予め3.8mm以上となるように調整されている。その結果、本実施の形態にかかる調芯装置であれば、調芯時に要する作業時間が偏芯量の測定に3秒、調芯に1秒であるに過ぎないばかりか、いずれの接合レンズにおける調芯精度も30秒以内に収まっており、高い調芯精度を確保し得ることが確認された。したがって、本実施の形態にかかる調芯装置を使用する限りは、レンズ面の曲率半径が小さい接合レンズの調芯であっても高精度な調芯が可能であることが理解される。
【0022】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2にかかる調芯装置が備えている調芯機構部を示す断面図であり、図4はその変形例構成を示す断面図である。なお、本実施の形態にかかる調芯装置の全体構成は実施の形態1と同様、つまり、図1で示した通りであるから、ここでの調芯装置そのものの説明は省略することとし、図3及び図4において図1と互いに同一となる部材、部分については同一の符号を付している。
【0023】
本実施の形態にかかる調芯装置が備える調芯機構部は、図3で示すように、レンズ面同士が対面する状態で第1レンズ体1上に載置された第2レンズ体2を必要に応じて摺動させる際に第2レンズ体2を保持する環状の保持部材13と、この保持部材13を介して第2レンズ体2を第1のレンズ体1へと押し付ける弾性部材である板バネ部材14とから構成されており、板バネ部材14は、水平方向及び垂直方向に沿って動作し得るよう、摺動手段であるXYZ軸ステージ18に対して固定端部が連結されているとともに、その自由端部には保持部材13が取り付けられたものとなっている。
【0024】
そして、保持部材13の第2レンズ体2側の表面上、つまり、第2レンズ体2と対面する内側の表面上には、この保持部材13によって第2レンズ体2を滑動不可とするための環状を有する支持部材25、つまり、第2レンズ体2の外側に位置するレンズ面2aと当接しあうことによって滑り止め部品としての機能を発揮する支持部材25が配設されている。なお、支持部材25の形状や材質が限定されることはなく、第2レンズ体2を保持部材13でもって確実に滑動不可となし得るものでありさえすればよい。また、調芯装置が備える調芯機構部の変形例構成では、図4で示すように、環状を有する保持部材13の内周端部に沿って所定角度の面取り部26が形成されており、この面取り部26によっては摺動させるべき第2レンズ体2をレンズ面の外周方向と交差する方向から挟み込むことが行われている。
【0025】
ところで、図2で示した調芯機構部を備えてなる実施の形態1にかかる調芯装置と、図3及び図4で示した調芯機構部のそれぞれを備えてなる実施の形態2にかかる調芯装置との性能比較試験を実行したところ、以下のような結果が得られた。すなわち、ここでもビデオカメラ用の接合レンズを作製することとし、対面するレンズ面の曲率半径が350mmと平面に近くて単品での偏芯量がともに1分以内である一対のレンズ、つまり、外直径が7mm、コバ厚みが1mmである両凸レンズと、外直径が8mm、コバ厚みが0.5mmである両凹レンズとを第1レンズ体1及び第2レンズ体2として用意した。なお、この際においては、保持部材13の外直径が8mm、内直径が6.6mm、厚みが0.5mmである一方、板バネ部材14のバネ定数が4.7g/mmであるとし、第1レンズ体1上に載置された第2レンズ体2に対しては所定の押圧力が加わるように予め調整している。
【0026】
そして、まず、図2で示した調芯機構部を備えてなる調芯装置を使用して接合レンズを作製してみたところ、板バネ部材14によって第2レンズ体2に加わる押圧付勢力を調整しているにも拘わらず、第2レンズ体2の摺動が安定しないため、調芯精度の高い接合レンズを作製するのは困難であることが判明した。これに対し、図3で示した調芯機構部を備えてなる調芯装置を使用した際には、調芯時に要する作業時間が偏芯量の測定に3秒、調芯に1秒であるに過ぎず、接合レンズにおける調芯精度も30秒以内に収まることが確認された。さらに、曲率半径の異なる複数種類の接合レンズを作製したみたところ、板バネ部材14の加圧力に伴って多少の変動はあるものの、曲率半径が100mm未満の調芯に際しては図3で示した調芯機構部を用いることが好ましく、また、曲率半径が100mm以上の調芯を行う際には図4で示した調芯機構部を用いることが好ましいことが確認されている。
【0027】
(実施の形態3)
図5は実施の形態1にかかる調芯装置が備えてなる調芯機構部を示す平面図であり、図6は実施の形態3にかかる調芯装置が備えてなる調芯機構部を示す平面図である。なお、実施の形態3にかかる調芯装置そのものの全体構成は実施の形態1と同様、つまり、図1で示した通りであるから、ここでの詳しい説明は省略することとし、図5及び図6において図1と互いに同一となる部材、部分については同一の符号を付している。
【0028】
本実施の形態にかかる調芯装置の調芯機構部は、実施の形態1にかかる調芯機構部と同様、固定用V型規制板10と、回転する第1レンズ体1の外周端面の離間した位置毎に当接する当接部材として機能する一対のベアリング11,11とから構成される位置規制手段を具備したものであるが、実施の形態1と異なるのは、固定用V型規制板10上に搭載されたベアリング11,11同士の離間間隔が変更可能とされている点にある。すなわち、既に説明した実施の形態1では、図5で示すように、固定用V型規制板10上に搭載されたベアリング11,11同士の離間間隔が一定とされていたが、本実施の形態にあっては、例えば、ベアリング11,11を結ぶ方向の長孔を固定用V型規制板10に形成しておき、各ベアリング11の中心軸が長孔を挿通したうえで固定用V型規制板10に対して着脱自在で固定されたような構成(図示省略)を採用することにより、ベアリング11,11のそれぞれが位置変更可能な状態とされたうえで固定用V型規制板10に取り付けられている。なお、ここでの回転ローラ8に外嵌されたOリング9は、断面視矩形状を有するものとなっている。
【0029】
ところで、外直径が3mmで厚みが0.5mmの第1レンズ体1と、外直径が4.2mmで厚みが1.5mmの第2レンズ体2とを用意したうえ、実施の形態1にかかる調芯装置を使用して接合レンズを作製してみたところ、以下のような不都合のあることが判明した。すなわち、実施の形態1にかかる調芯装置の調芯機構部では、ときとして断面視円形状のOリング9から第1レンズ体1に対して十分な回転力が伝達されなくなり、第1レンズ体1とOリング9との間における当接力F1を500g/cm2 程度としておいたのでは第1レンズ体1をスムーズに回転させることが困難となる。そこで、回転力を十分な状態で伝達する必要上、例えば、当接力F1を1kg/cm2 程度にまで上昇させてみると、第2レンズ体2が第1レンズ体1上から外れて飛散するという事態が引き起こされてしまう。
【0030】
そして、本発明の発明者がこのような不都合の発生原因を追及してみると、実施の形態1では、図5で示すように、Oリング9によって回転させられる第1レンズ体1を受け止めて位置規制するベアリング11,11同士の離間間隔が一定であることから、各ベアリング11の中心位置と第2レンズ体2の中心位置とで定まる相対的な角度Aが100゜以上となっており、当接力F1の変化が敏感に反映されるとともに、第1レンズ体1及びOリング9間の密着度が低いためである、と考えられることが分かった。なお、図5においては、各ベアリング11によって受け止められる当接力F1の分散力をF2と表記している。
【0031】
これに対し、本実施の形態にかかる調芯装置が備える調芯機構部にあっては、図6で示すように、固定用V型規制板10上に搭載されたベアリング11,11同士の離間間隔を変更可能としているので、上記した相対的な角度Aを100゜以下、例えば、80゜というように小さく設定することが可能となる。そこで、第1レンズ体1との相対的な角度Aが80゜となるようにベアリング11,11の離間間隔を調整して位置設定し、かつ、断面視矩形状を有するOリング9としたうえ、第1レンズ体1とOリング9との間における当接力F1が0.5〜2kg/cm2 程度となるようにしながら、上記したのと同一形状を有する第1レンズ体1及び第2レンズ体2とからなる接合レンズを作製してみたところ、調芯精度の高い接合レンズを容易に作製することができた。なお、ここで使用しているベアリング11,11それぞれの外径や厚みなどが特定されないことも、発明者によって確認されている。
【0032】
(実施の形態4)
実施の形態4にかかる調芯装置は、実施の形態1で説明した調芯装置と全体構成が相違していないものの、光源4から照射されてコリメーターレンズ5によって平行化されたうえ、第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過することになる光が単色光であることになっている。すなわち、本実施の形態にかかる調芯装置が備える光源4は、例えば、赤色LEDを用いて構成されたものとなっている。なお、ここでは、光源4そのものが赤色LEDを用いて構成されたものであるとしているが、必ずしも光源4そのものが単色光を照射するものである必然性はないのであり、自然光を照射する通常の白熱ランプなどの外周囲を赤色フィルターなどで覆ったものであってもよい。
【0033】
ところで、既に説明した実施の形態1にかかる調芯装置では光源4が自然光を照射する白熱ランプであるとしているが、白熱ランプである光源4から照射された光がコリメーターレンズ5、補助レンズ7、第1レンズ体1及び第2レンズ体2を透過して対物レンズ15に到達し、かつ、対物レンズ15によって十字チャート像が捕捉される構成である場合には、対物レンズ15のピントを合わせたとしても、ぼやけた状態の十字チャート像しか捕捉されないことがある。なお、コリメーターレンズ5の具備する十字チャートが線幅が細くなるほど、シャープで良好な十字チャート像が得られる傾向はあるものの、線幅が細くなるのに伴って十字チャートが高価となるため、このような十字チャートを利用するのは困難である。また、自然光を利用している限りは、色収差や像面湾曲収差が発生することもあった。
【0034】
本実施の形態にかかる調芯装置は、このような不都合を解消するためになされたものであり、単色光を照射する光源4、例えば、赤色LEDである光源4を用いることが行われている。そして、本発明の発明者が性能比較試験を行ってみたところによれば、実施の形態1との比較において、色収差や像面湾曲収差が低減しており、CCD感度特性が向上することとなる結果、対物レンズ15で捕捉される十字チャート像がより一層鮮明となっており、光軸一致の認識精度が2倍程度にまで向上することが確認された。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる接合レンズの調芯装置によれば、調芯すべきレンズ体の大きさやレンズ面の曲率半径が異なっても適用が可能であり、簡単かつ安価な構成であるにも拘わらず、高精度の調芯を容易に実行し得るという効果が得られる。そして、特に、請求項1及び請求項2にかかる構成であれば、調芯されるレンズ面の曲率半径が小さいレンズ体や大きいレンズ体であっても、曲率半径には依存しない高精度な調芯が可能となり、接合レンズを量産する際の生産ロスを低減し得るという利点が確保される。
【0036】
また、請求項3ないし請求項5にかかる構成であれば、第2レンズ体を確実に保持することが可能となり、厚みの厚いレンズ体や外直径の小さなレンズ体であってもスムーズに回転させ得ることとなる結果、さまざまな組み合わせの接合レンズを高歩留まりで生産することができる。さらにまた、請求項6にかかる構成であれば、色収差や像面湾曲収差が発生せず、より一層鮮明な焦点像が得られることとなる結果、調芯精度の向上を実現できるという利点が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる接合レンズの調芯装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態1にかかる調芯装置が備えている調芯機構部を示す斜視図である。
【図3】実施の形態2にかかる調芯装置が備えている調芯機構部を示す断面図である。
【図4】実施の形態2にかかる調芯装置の変形例構成を示す断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる調芯装置が備えてなる調芯機構部を示す平面図である。
【図6】実施の形態3にかかる調芯装置が備えてなる調芯機構部を示す平面図である。
【図7】従来の形態にかかる調芯装置の全体構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 第1レンズ体
2 第2レンズ体
4 光源
8 回転ローラ
9 Oリング
10 固定用V型規制板(位置規制手段)
11 ベアリング(位置規制手段)
13 保持部材
14 板バネ部材(弾性部材)
18 XYZ軸ステージ(摺動手段)
17 パソコン(制御手段)
21 サーボモータ
Claims (6)
- レンズ面同士が対面させられた第1レンズ体及び第2レンズ体の光軸合わせを実行する接合レンズの調芯装置であって、
第1レンズ体をレンズ面の外周方向に沿って回転させる回転手段と、
第1レンズ体をレンズ面の外周方向とは交差する方向から受け止めて位置規制する位置規制手段と、
板バネ部材と、
前記板バネ部材の自由端に連結され、レンズ面同士が対面する状態で第1レンズ体上に載置された第2レンズ体を摺動させる際には第2レンズ体を保持する保持部材と、
前記板バネ部材の固定端に連結され、前記板バネ部材のねじれ作用および弾性作用を伴うことにより前記板バネ部材及び前記保持部材を介して第2レンズ体を第1のレンズ体へと押し付けながら第2レンズ体を摺動させる摺動手段と、
平行化されて第1レンズ体及び第2レンズ体を透過する光を照射する光源と、
第1レンズ体及び第2レンズ体を透過した光の焦点像から光軸のずれを検出し、摺動手段を介して第1レンズ体及び第2レンズ体の光軸が一致するまで第2レンズ体のレンズ面を第1レンズ体のレンズ面に沿って摺動させる制御手段とを具備していることを特徴とする接合レンズの調芯装置。 - 請求項1に記載した接合レンズの調芯装置であって、
制御手段は、第1レンズ体及び第2レンズ体を透過した光の焦点像軌跡から光軸が一致すると予想される仮想位置を割り出し、摺動手段を介して仮想位置に至るまで第2レンズ体を摺動させるものであることを特徴とする接合レンズの調芯装置。 - 請求項1または請求項2に記載した接合レンズの調芯装置であって、
保持部材は、第1レンズ体のレンズ面と対面するレンズ面とは対向する位置にある第2レンズ体のレンズ面を滑動不可に支持する支持部材が配設されたものであることを特徴とする接合レンズの調芯装置。 - 請求項1または請求項2に記載した接合レンズの調芯装置であって、
保持部材は環状を有しており、第2レンズ体をレンズ面の外周方向と交差する方向から挟み込む面取り部が内周端部に沿って形成されたものであることを特徴とする接合レンズの調芯装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載した接合レンズの調芯装置であって、
位置規制手段は、第1レンズ体の外周縁部の離間した位置毎に当接する一対の当接部材を具備しており、これら当接部材の離間間隔は変更可能とされていることを特徴とする接合レンズの調芯装置。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載した接合レンズの調芯装置であって、
光源から照射されて第1レンズ体及び第2レンズ体を透過する光は、単色光であることを特徴とする接合レンズの調芯装置。
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