JP3547018B2 - 逆浸透処理方法および造水方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、逆浸透法による脱塩、分離方法に関するものであり、特に超純水製造、カン水淡水化、海水淡水化、廃水の再利用等の方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
膜による分離技術は、海水及びカン水の淡水化、医療、工業用純水、超純水の製造、工業廃水処理など幅広い分野に利用されている。これらの膜による分離において、微生物による分離装置の汚染は、被処理液中の微粒子、TOC(全有機炭素)を増加させ、得られる透過水の水質を悪化することや、膜面上で微生物が繁殖したり、あるいは微生物およびその代謝物などからなる有機性物質が膜面に付着したりして、膜の透過性、分離性を低下させるなどの問題を生じる。そのため膜分離装置の殺菌は膜分離を行なう上で重要な技術である。膜分離装置の殺菌法は種々提案されており、一般的には殺菌剤を常時、あるいは間欠的に供給液に添加する方法がとられている。
【0003】
殺菌剤としては、古くから塩素系の殺菌剤が用いられてきたが、最近では用いる膜に合せて、クロラミン類、過酸化水素、過酢酸、亜硫酸水素ナトリウムなどの塩素に代る新しい殺菌方法が提案されている。しかし、その価格および操作の容易さから、塩素系殺菌剤が用いられているのが現状である。逆浸透膜はその素材の特徴から塩素などの酸化性物質によって化学的に劣化を生じる。最近では耐酸化剤性の比較的高い膜素材が開発されているがその耐久性も充分なものであるとはいえない。そこで、一般的には塩素系などの殺菌剤をもちいて供給液の殺菌を行ない、逆浸透膜に供給する前に還元剤を用いて遊離塩素を還元して分離操作が行なわれている。還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウムが広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常は、殺菌剤と亜硫酸ナトリウムもしくは亜硫酸水素ナトリウムを用いることによって微生物の発生や殺菌剤による膜性能の劣化の影響なく逆浸透膜装置で安定して脱塩水を製造することが出来る。しかし、近年になって、亜硫酸水素ナトリウムを添加して遊離塩素の無い状態で運転しているにもかかわらず膜性能が低下する現象があることがわかり、これまでの操作方法では必ずしも充分でないことが明らかになってきた。この現象は、ポリアミド系の逆浸透膜や、これよりも耐酸化剤性が高いといわれている酢酸セルロース系の膜においても起きていることが明らかとなってきた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は下記の構成を有する。すなわち、「銅イオン、コバルトイオン、クロムイオンおよびニッケルイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重金属イオンを10〜50ppbの範囲で含む供給液を逆浸透膜を有する分離装置を用いて逆浸透分離を行うに際し、供給液に還元剤を添加する工程、および、分離装置に供給する供給液のpHを6.5以下および温度を30℃以下にする工程を設けることを特徴とする逆浸透処理方法。」、「銅イオン、コバルトイオン、クロムイオンおよびニッケルイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重金属イオンを10〜50ppbの範囲で含む供給液を逆浸透膜を有する分離装置を用いて逆浸透分離を行うに際し、供給液に還元剤を添加する工程、および、分離装置に供給液を供給した後、その分離装置を停機し、この停機中に、供給液のpHを6.5以下および温度を30℃以下にする工程を設けることを特徴とする逆浸透処理方法。」に関するものである。
【0006】
本発明者らは逆浸透膜装置の運転に際して塩素などの酸化性物質を還元剤で完全に消去しているにもかかわらず、膜性能が低下する問題についてその原因究明と対策について検討した結果、銅、クロムなどのイオンが極く少量を存在している系ではこれらの重金属が触媒となって還元剤が反応して酸化性物質が生成することを見出し、さらにこれらの反応速度がpHや温度で大きく変わり、これらpHおよび/または温度を制御することにより膜性能の低下が抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明者らは逆浸透膜装置を用いて脱塩水を製造する際に、問題となる膜性能の低下、殺菌剤を還元剤によって還元しているにもかかわらず、膜性能が低下する問題について鋭意検討を行ない、pHおよび/または温度を制御することで膜の性能低下が顕著に抑制でき、安定して脱塩水を製造できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明において、逆浸透膜分離装置とは造水、濃縮、分離などの目的で被処理液を加圧下で逆浸透膜モジュールに供給し、透過液と濃縮液に分離するための装置をいい、通常は逆浸透膜エレメント、耐圧容器、加圧ポンプなどで構成される。該逆浸透膜装置に供給される被分離液は通常、殺菌剤、凝集剤、さらに還元剤、pH調整剤などの薬液添加と砂濾過、活性炭濾過、保安フィルターなどの前処理が行なわれる。例えば、海水の脱塩の場合には、海水を取込んだ後、沈殿池で粒子などを分離し、またここで殺菌剤を添加して殺菌を行なう。さらに、塩化鉄などの凝集剤を添加して砂濾過を行なう。ろ液は貯槽に貯められ、硫酸などでpHを調整した後高圧ポンプに送られる。この送液中に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加して殺菌剤を消去し、保安フィルターを透過した後、高圧ポンプで昇圧されて逆浸透モジュールに供給される。ただし、これらの前処理は、用いる供給液の種類、用途に応じて適宜採用される。
【0009】
ここで逆浸透膜とは、被分離混合液中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性の膜である。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく使用されている。またその膜構造は膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜がある。膜形態には中空糸、平膜がある。しかし、本発明の方法は、逆浸透膜の素材、膜構造や膜形態によらず利用することができいづれも効果がある。代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらのなかでも、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜に本発明の方法が有効であり、さらに芳香族系のポリアミド複合膜では効果が大きい。
【0010】
酢酸セルロース系の膜としては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミド系の膜としては脂肪族、芳香族のポリアミドで線状ポリマー、架橋ポリマーが挙げられる。
【0011】
逆浸透膜モジュールとは上記逆浸透膜を実際に使用するために形態化したものであり平膜は、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで、また中空糸は束ねた上でモジュールに組み込んで使用することができるが、本発明はこれらの逆浸透膜モジュールの形態に左右されるものではない。
【0012】
一般的に逆浸透膜装置の前処理の段階で添加される殺菌剤は、供給液中あるいは前処理装置中での菌類、微生物の繁殖、付着などを防ぐために添加されるもので、塩素系殺菌剤、過酸化水素類、過酢酸類、クロラミン類などが使用できる。一般には殺菌力の点から酸化性物質が、さらに、価格、殺菌力、取り扱いの容易さなどで塩素系の殺菌剤が使用しやすい。
【0013】
殺菌剤の濃度は、用いる供給水の水質にもよるが一般的に供給液に添加した後の濃度で0.1〜50ppm程度であり、塩素系殺菌剤においては供給液中の残留塩素濃度が0.1〜50ppm、あとの還元剤の添加量を減らすためことと、殺菌に最低必要な添加量を考えると0.1〜20ppm、さらに好ましくは0.1〜10ppmである。残留塩素とは、遊離塩素と結合塩素の合計をいい、残留塩素の濃度測定はJIS−K0101に記載されているオルトトリジン法などによって簡単に行なうことができる。
【0014】
逆浸透膜は酸化力のある殺菌剤、特に塩素系の殺菌剤が直接接触すると膜性能が低下する。特にポリアミド系やポリ尿素系の複合膜は酢酸セルロース系の非対称膜に比較して耐塩素性が劣り、酢酸セルロース系の非対称膜においてもそのpHなど条件によっては大きな性能低下が起こる。そこで、実際のプラントの多くでは塩素系殺菌剤の使用時には逆浸透膜に直接塩素が接触するのを防ぐために、被処理液を逆浸透膜モジュールに供給する前に還元剤を添加して残存する殺菌剤を還元することが必要である。また、クロラミン類など膜性能への影響のない、あるいは少ない殺菌剤の使用時においても運転の安定化、トラブル時の対策のために、還元剤を添加することが好ましい。
【0015】
還元剤としては、水溶性で、還元性が大きく、逆浸透膜への影響のないものを使用することができる。代表的なものとしては亜硫酸塩、重亜硫酸塩が挙げられる。さらに価格が安価である、取り扱いが用意であるなどの点から亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどが好ましい。用いる還元剤の濃度は供給液中に残存している殺菌剤を全て消去するのに充分な量が必要である。また、還元剤は供給液中に溶存している酸素とも反応するので、残存殺菌剤と溶存酸素の量を考慮して殺菌剤添加量の1〜10倍当量添加するのが好ましい。さらに、殺菌剤を完全に消去することと還元剤の使用量を低減することを考慮すると殺菌剤の1.1〜5倍当量の還元剤が好ましい。通常、還元剤は殺菌剤よりも過剰に加えられるので逆浸透膜装置の供給液には未反応の還元剤あるいはその反応生成物が混在している。
【0016】
逆浸透膜装置の供給液には陽イオンとしてナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属のイオン、アンモニウムイオンなどが含まれているが、重金属イオンが含まれている場合も多い。特に、廃水や海水を供給液とする場合には、重金属イオンが含まれている。ここで、重金属イオンとは元素周期表における第I〜VII のb族および第VIII族の金属のイオンのことである。また、これらの濃度は、例えば、海水では、おおよそ10〜20ppm程度の範囲である。これらの中でも特に銅、コバルト、クロム、ニッケルは後述の通り酸化性物質の生成が多く、膜性能の低下を引き起こす物質であるので本発明の効果が大きい。
【0017】
本発明者らは亜硫酸水素ナトリウムが存在するような供給液の系では供給液中に重金属、特に銅、コバルト、クロム、ニッケルなどの金属が存在する場合には、これらの重金属が触媒となって亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、ここから酸化性の過硫酸、さらにこの過硫酸が供給液中の塩素イオンと反応して、過塩素酸イオン、塩素が発生することを見出した。また、その反応の条件と過硫酸、塩素の発生量、さらに膜性能の変化について検討した結果、pHが6.5以下あるいは温度30℃以下ではこれら酸化性物質の発生量が非常に少ないこと、そのため膜性能の変化が少ないことを見出した。酸化性物質の発生量はpHおよび温度が低いほど少なく、同時に膜性能の低下もpHおよび温度が低いほど少なくなるが、特にpHは6.5以下、温度は30℃以下で膜性能の安定性が大きい。pHのコントロールには通常硫酸や塩酸を添加し、温度のコントロールには冷却機が必要でありこれらの薬品の添加量および冷却機の運転コストの面などから、本発明における逆浸透膜装置の運転方法においては、pHは3〜6.5、好ましくは5〜6.5さらに好ましくは6〜6.4である。pHが低すぎると薬品費がかさみ、また弱荷電性の膜の場合は充分な膜性能が発揮できない。また、pHが高い場合には酸化性物質の発生が大きく膜性能の低下が大きく好ましくない。これまでの実際の逆浸透膜装置の運転においてはpHを6〜7の範囲に調製していることが多いが、pHが6.5以上になった場合には膜性能の低下が起こるため、本発明においてはpHの調節範囲、特にpH6.5以下での調節が重要である。一方、供給液の温度は通常冷却などの特別な手段を用いずに運転を行なっているため、気温などの環境温度による供給液自身の温度の上昇やポンプの発熱などによる供給液の加熱により30℃を越える温度となる場合があった。通常の逆浸透膜装置の運転は25℃を基準としているものが多いが、夏場など一時的に温度が上がる場合は特に問題ないとされてきた。しかしながら、極く短い時期であっても供給液温度が上昇すると酸化性物質の発生と、それによる膜性能の低下が引き起こされるため、本発明では常に供給液温度を30℃以下とすることが重要である。温度の範囲は15〜30℃、好ましくは20〜30℃、さらに好ましくは、20〜25℃である。温度が高すぎると膜性能の低下が大きく、温度が低すぎると透過水量が下がり、経済的でなく、冷却費もかさみ、好ましくない。
【0018】
本発明においては、pHや温度は供給液中で重金属が触媒する重亜硫酸塩などからの酸化性物質の生成反応に作用し、反応速度、反応率を低下させるものと考えられる。
【0019】
逆浸透膜装置の供給液としては河川水や地下水などのカン水、海水、工場廃水などを前処理し、還元剤を含んだ溶液をあげることができる。本発明はいずれの供給液でも効果を得ることができるが、特に海水の場合に効果が大きい。
【0020】
本発明における逆浸透膜分離装置の停機とは、プラントの前処理、あるいは逆浸透膜分離装置のトラブルや定期点検、あるいはその他の理由によって、逆浸透膜装置の運転を一定時間停止する場合のことをいう。停機の時間は数分〜数日、長い場合には数カ月〜数年にわたる場合がある。本発明の停機時にキレート剤を添加する方法は、特に停機中に膜性能が低下する現象に対して膜性能の維持に効果がある。重金属イオンによる重亜硫酸塩などからの酸化性物質の生成には数秒〜数分の反応時間を必要とする。よって、例えば、海水の場合では、逆浸透膜分離装置の供給液のpHを6.5以下および温度を30℃以下とする条件を満たさない状態である時間の総計が、5分以下、より好ましくは2分以下、さらに好ましくは1分以下であることが好ましい。ゆえに、寒冷期には、水温が30℃以下であっても、夏場に1日でも、それどころか、たとえ1時間でも、30℃を越えることは好ましくはない。また、水温が30℃を越えることがない寒冷地であっても、一般に、逆浸透膜分離装置では、供給液の送液用に用いる圧縮ポンプにより、40℃程度に昇温してしまうので、かかる地域でも、冷却装置があることが好ましい。
【0021】
また、海水以外の場合については、一般的に該時間は、重金属イオン濃度に依存するので、該時間は下記の数式で示されるT分以下であることが好ましい。
【0022】
T=7142.8÷{c× exp( exp((t−25)×0.15))}
(t:温度[℃]、c:重金属イオン濃度[ppb])
より好ましくはT×0.5分以下、さらに好ましくは、T×0.2分以下である。
【0023】
通常運転中では供給液が常に流れているため酸化剤が発生する前に、液は排出されてプラントによっては、膜性能の低下が認められない場合もある。しかし、停機時には液が流れず、膜に接触した液中で酸化性物質が生成し、膜性能の劣化を引き起こす。従って、本発明は特に停機時に効果がある。停機中のpHは供給液側に充填する溶液に硫酸、塩酸などを添加して調節する。停止中に供給液側溶液のpHが変化する可能性があるので、燐酸、炭酸などを加えて充填液を緩衝液としておいてもかまわない。
【0024】
【実施例】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0025】
なお、実施例において排除(脱塩)率は次式により求めた。
【0026】
排除率(%) ={1−(透過液中の溶質濃度)/(供給液中の溶質濃度)}×100
塩透過率(SP)は100から排除率を引いた値で示す。
【0027】
また、造水量は単位時間に単位面積当たりの膜を透過する透過水量あるいは単位時間にエレメントを透過する透過水量で求めた。
【0028】
参考例1
芳香族ポリアミド複合膜である東レ株式会社製UTC−70膜を逆浸透膜評価装置にセットし、1500ppmの食塩水を供給液として圧力15 kg/cm2 、pH6.7、温度25℃の条件で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.72%(SP=0.28)、造水量1.05 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.69%(SP=0.31)、造水量1.03 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.67%(SP=0.33)、造水量1.09 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は99.67%(SP=0.33)、造水量1.08 m3 /m2 ・d であった。
【0029】
参考例2
芳香族ポリアミド複合膜である東レ株式会社製UTC−80膜を逆浸透膜評価装置にセットし、35000ppmの食塩水を供給液として圧力56 kg/cm2 、pH6.8、温度25℃の条件で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.50%(SP=0.50)、造水量0.7 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.50%(SP=0.50)、造水量0.68 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.49%(SP=0.51)、造水量0.67 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は99.48%(SP=0.52)、造水量0.68 m3 /m2 ・d であった。
【0030】
実施例1
芳香族ポリアミド複合膜である東レ株式会社製UTC−70膜を逆浸透膜評価装置にセットし、1500ppmの食塩水を供給液とし、これに50ppbの銅と20ppmの亜硫酸水素ナトリウムを添加して圧力15 kg/cm2 、pH6.3、温度25℃の条件で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.71%(SP=0.29)、造水量1.1 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.69%(SP=0.31)、造水量1.09 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.66%(SP=0.34)、造水量1.06 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は99.64%(SP=0.36)、造水量1.07 m3 /m2 ・d であった。
【0031】
実施例2
芳香族ポリアミド複合膜である東レ株式会社製UTC−80膜を逆浸透膜評価装置にセットし、35000ppmの食塩水を供給液とし、これに10ppbの銅と20ppmの亜硫酸水素ナトリウム、10ppmのヘキサメタ燐酸ナトリウム塩を添加して圧力56 kg/cm2 、pH6.2、温度24℃の条件で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.51%(SP=0.49)、造水量0.66 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.51%(SP=0.49)、造水量0.64 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.47%(SP=0.53)、造水量0.63 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は99.45%(SP=0.55)、造水量0.64 m3 /m2 ・d であった。
【0032】
実施例3
銅10ppb、クロム10ppb、ニッケル10ppbを含む海水に塩素殺菌、砂濾過などの前処理を行なった液に、亜硫酸水素ナトリウム20ppmを添加し、硫酸でpHを6.4に調製した後、25℃で56 kg/cm2 に昇圧した供給液を東レ製逆浸透膜モジュールSU−810に供給し、回収率10%で運転を行なった。初期脱塩率99.67%(SP=0.33)、造水量4.4 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.65%(SP=0.35)、造水量4.3 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.62%(SP=0.38)、造水量4.2 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は99.60%(SP=0.40)、造水量4.1 m3 /m2 ・d であった。
【0033】
比較例1
pH7.0とした以外は実施例1と同様の方法で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.69%(SP=0.31)、造水量1.07 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.54%(SP=0.46)、造水量1.13 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.31%(SP=0.69)、造水量1.19 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は98.82%(SP=1.18)、造水量1.4 m3 /m2 ・d であった。
【0034】
比較例2
温度を35℃とした以外は実施例1と同様の方法で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.70%(SP=0.30)、造水量1.1 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.48%(SP=0.52)、造水量1.2 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.24%(SP=0.76)、造水量1.35 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は98.86%(SP=1.14)、造水量1.5m3 /m2 ・d であった。
【0035】
比較例3
pHを6.8とした以外は実施例2と同様の方法で逆浸透分離を行なったところ、脱塩率99.49%(SP=0.51)、造水量0.69 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.26%(SP=0.74)、造水量0.71 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率98.92%(SP=1.08)、造水量0.78 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は98.28%(SP=1.72)、造水量0.88 m3 /m2 ・d であった。
【0036】
比較例4
温度を32℃とする以外は実施例2と同様の方法で逆浸透分離を行なったところ、初期脱塩率99.48%(SP=0.52)、造水量4.3 m3 /m2 ・d であった。さらに同じ条件で連続して装置の運転を行なったところ、100時間後、脱塩率99.27%(SP=0.73)、造水量4.3 m3 /m2 ・d 、500時間後、脱塩率99.22%(SP=0.78)、造水量4.4 m3 /m2 ・d であり、1000時間後、脱塩率は98.48%(SP=1.52)、造水量4.5 m3 /m2 ・d であった。
【0037】
実施例4
銅10ppb、クロム10ppb、ニッケル10ppbを含む海水に塩素殺菌、砂濾過などの前処理を行なった液に、亜硫酸水素ナトリウム20ppmを添加し、硫酸でpHを6.3に調製した後、25℃で56 kg/cm2 に昇圧した供給液を東レ製逆浸透膜モジュールSU−810に供給し、回収率10%で運転を行なった。初期脱塩率99.64%(SP=0.36)、造水量4.4 m3 /m2 ・d であった。24時間運転後、10ppmのヘキサメタ燐酸ナトリウムを含む1000ppmの亜硫酸水素ナトリウム水溶液で供給液側を置換した後、pH6.4、温度25℃に保って装置を停止した。10日間の停止の後、再度上述の条件で運転を行なったところ、脱塩率99.62%(SP=0.38)、造水量4.3m3 /m2 ・d であった。
【0038】
比較例4
停機時の置換液のpHを6.8、停止期間の温度を34℃とした以外は実施例4と同様の方法で逆浸透分離装置の運転、停止、及び再運転を行なったところ、停止前脱塩率99.66%(SP=0.34)、造水量4.4 m3 /m2 ・d 、停止後脱塩率99.21%(SP=0.77)、造水量4.7 m3 /m2 ・d であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、従来逆浸透膜装置で脱塩水を製造する上で、装置を安定に運転するために、殺菌剤を添加し、さらに還元剤で殺菌剤を消去していたにもかかわらず、逆浸透膜の性能が低下していた現象および逆浸透膜装置の停機時に膜性能が低下した現象に対して、原水の水質にかかわらず、常に安定して、信頼性よく、また経済的に脱塩水を製造することが可能となった。
Claims (10)
- 銅イオン、コバルトイオン、クロムイオンおよびニッケルイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重金属イオンを10〜50ppbの範囲で含む供給液を逆浸透膜を有する分離装置を用いて逆浸透分離を行うに際し、供給液に還元剤を添加する工程、および、分離装置に供給する供給液のpHを6.5以下および温度を30℃以下にする工程を設けることを特徴とする逆浸透処理方法。
- 銅イオン、コバルトイオン、クロムイオンおよびニッケルイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重金属イオンを10〜50ppbの範囲で含む供給液を逆浸透膜を有する分離装置を用いて逆浸透分離を行うに際し、供給液に還元剤を添加する工程、および、分離装置に供給液を供給した後、その分離装置を停機し、この停機中に、供給液のpHを6.5以下および温度を30℃以下にする工程を設けることを特徴とする逆浸透処理方法。
- 還元剤として、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を用いる、請求項1または2に記載の逆浸透処理方法。
- 逆浸透膜として酢酸セルロース系またはポリアミド系の膜を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の逆浸透処理方法。
- ポリアミド系の膜として芳香族ポリアミド系の膜を用いる、請求項4に記載の逆浸透処理方法。
- 逆浸透膜が複合膜である、請求項1〜5のいずれかに記載の逆浸透処理方法。
- 供給液のpHが6.5以下および温度が30℃以下とする条件を満たさない時間を5分以下にする、請求項1〜6のいずれかに記載の逆浸透処理方法。
- 供給液のpHが6.5以下および温度が30℃以下とする条件を満たさない時間を次式で表されるT分以下にする、請求項1〜7のいずれかに記載の逆浸透処理方法。
T=7142.8/(c×exp(exp((t−25)×0.15)))
(ただし、tは温度(℃)、cは重金属イオン濃度(ppb)を示す) - 請求項1〜8のいずれかに記載の逆浸透処理方法を行うための分離装置であって、逆浸透膜を組み込んだ逆浸透膜モジュールと、この逆浸透膜モジュールに供給液を供給する高圧ポンプと、この供給液を冷却する冷却装置とを備えていることを特徴とする分離装置。
- 海水を供給水とし、請求項1〜8のいずれかに記載の逆浸透処理方法または請求項9に記載の分離装置を用いることを特徴とする造水方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12886894A JP3547018B2 (ja) | 1994-06-10 | 1994-06-10 | 逆浸透処理方法および造水方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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