JP3545651B2 - 吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緯糸が吹き切れたことの検知に用いる吹き切れ検知フィーラの閾値設定方法、及緯糸を検知する緯糸検知フィーラの異常を検知する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアー・ジェットルーム、ウォータ・ジェットル一ム等の織機は、緯糸が所定のタイミングで緯入れされているか否か、緯入れが正しく行われたか否か等を判定するために、緯糸の飛走方向下流側に配置されて緯糸の有無を検知する緯糸検知フイ一ラ、この緯糸検知フィーラより下流側に配置されて緯糸が吹き切れたことを検知する吹き切れ検知フィーラ等、光電式の緯糸検知装置を備えている。
【0003】
この種の緯糸検知装置の1つとして、フィーラの受光素子への入射光量(受光量)に対応したフィーラ信号を、所定の緯糸検知期間にわたって緯糸検知用の閾値と比較し、その比較結果に基づいて緯糸の有無を検知するものがある(特開平7−11544号公報)。この従来技術は、筬打ち後に筬羽の振動が生じ、フィーラ信号が変化する点に着目し、緯糸検知期間よりも前の非緯糸検知期間(緯糸不存在期間)におけるフィーラ信号値の最大値又は最小値に基づいて緯糸検知用閾値を設定している。
【0004】
しかし、上記従来技術においては、二つの問題が存在する。一つの問題は、検知対象となる緯糸が存在しない状況下であっても、緯入れ中から筬打ちまでの間に筬が筬打ち位置に近づくにつれてフィーラ信号が増減する場合について、何も考慮していない、ということにある。したがって、非緯糸検知期間のフィーラ信号値のみによって検知用閾値が設定されるから、その閾値自体が現実的な値ではない。このため、例えば緯糸検知フィーラでは、緯入れミスなどにより緯糸検出できない場合でも、前記フィーラ信号の増加により緯糸検知用閾値を越えてしまうことにより見逃しが発生したり、また、この技術を採用した吹き切れ検知フィーラにおいては、緯糸が検知領域になくても常にフィーラ信号が吹き切れ検知用の閾値を越えることになり、誤って吹き切れ発生と判断するいわゆる空止まりが発生したりする。
【0005】
もう一つの問題は、緯糸検知用閾値の設定の基になるフィーラ信号に対する異常の有・無を判断することができない、ということにある。このため、筬羽の振動などでフィーラ信号が異常に大きく変動する場合、上記作用から、緯糸検知期間よりも前に定められる非緯糸検知期間(緯糸不存在期間)におけるフィーラ信号値の最大値や最小値などを基に閾値を設定するため、緯糸検知用閾値が本来の適正値とは大きくかけ離れた値に設定されてしまう。このため緯糸検知フィーラ、又はこの技術を適用した吹き切れ検知フィーラでは、やはり空止まりや見逃しが発生する。
【0006】
しかも、上記した二つの問題とも、稼働中の織機では、見逃し又は空止まりというトラブルでしか捉えられないことから、このトラブルに至った根本原因を突き止めるには、製織を続けながら、例えばフィーラ信号を実際にオシロスコープなどの測定機器を用いて観測しなければならず、これら測定機器は取り扱いが難しく、しかもフィーラの構造を熟知した経験のある作業者が原因を究明することができるにすぎず、織物品質低下や生産性が低下するなどの問題がある。
【0007】
上記のことをまとめると、従来技術における空止まりや見逃しの原因の一つは、筬に形成された緯糸飛走路に向けて配置した受光素子への入射光量(受光量)、換言すればフィーラ信号が筬打ちが近づくにつれて変化し、しかも閾値がこの変化に対応して設定されないためであり、またもう一つの原因は、筬打ち後の筬羽の振動による前記入射光量が正常時に比べて大きく振動し、本来緯糸検知フィーラの異常と判断してフィーラ周辺部を再調整すべきであるにもかかわらず、異常と判断することなく得られたフィーラ信号の値を利用して閾値が設定されてしまい、本来設定すべき値とは大きくかけ離れた値に設定されるためである。
【0008】
したがって、このような問題から、上記した自動設定する技術は依然として採用できず、これら検知用閾値を従来では手動で設定していた。例えば、緯糸検知フィーラについては、織機運転中に、緯入れのたびに検知対象の緯糸が存在することから、閾値は、実機の状態を見ながら試行錯誤から比較的容易に(かつ短時間に)設定できた。これに対し、他方の吹き切れ検知フィーラについては、通常の状態では検知対象となる緯糸(つまり吹き切れ緯糸)が存在しないことから、状態を見ながら最適値を設定するには莫大な時間と労力を要し、最適な設定ができなかった。
【0009】
本発明者らが、緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクルでの緯糸及び吹き切れを検知する各フィーラのフィーラ信号を観察したところ、緯糸又は吹き切れ検知期間におけるフィーラ信号は筬打ち運動に関連して(すなわち、筬が筬打ち位置に近づくにつれて)、増加又は減少することが確認された。
【0010】
本発明者らの研究によれば、上記信号変化は筬打ち運動の加速度と関連性が強いことが確認されており、これは筬打ち運動により筬に若しくは投光素子又は受光素子の取付部材に撓みが発生するためと考えられる。
【0011】
本発明者らの観察によれば、これら撓みとは別に、筬打ち直後よりフィーラ信号が短い周期で振動するという現象も確認された。この振動は、本発明者らの研究によれば、比較的短い周期でその振幅が筬打ち直後最大になりその後次第に減衰する振動波形が観測され、これらは筬の設定条件(筬羽の刃厚や羽数、材質など)や製織条件(打込密度や回転数など)により変化することが確認されている。
【0012】
【解決しようとする課題】
それ故に、緯糸検知フィーラ、特に最適な閾値設定が困難である吹き切れ検知フィーラにおいて、前記した撓みなどによるフィーラ信号の影響を受けないような閾値を設定することにより、従来織機に生じていた空止まりや見逃しを防止することは重要である。
【0013】
【解決手段、作用及び効果】
本件発明者らは、上記したように吹き切れ検知用フィーラ信号においては、吹き切れが発生しなければ、1緯入れサイクル中の緯糸の影響を受けないフィーラ信号が比較的容易に得られる点に着目し、以下の技術を発明した。
【0014】
本件第1及び第2の発明は、筬打ち部材に取付けられ、緯糸飛走路に向けて光学的な検知領域を形成し、緯入れ糸の到達位置よりも下流側に配置される吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法に関する。
【0015】
本件第1の発明に係る、吹き切れ検知用閾値の設定方法は、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を少なくとも含むように定められる第1の期間における吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値との差の値を求めるとともに、前記吹き切れ検知期間及び第1の期間とは独立して定められて吹き切れ検知フィーラが緯糸を検知したときの信号を含まない第2の期間における吹き切れフィーラ信号の平均値を求め、求めた平均値に前記差の値を加算した値を前記吹き切れ検知用閾値として設定することを含む。
【0016】
筬や筬と一体となって揺動駆動される筬取付部材などの撓みの影響を受け、しかも緯糸が存在しない状況下のフィーラ信号は、筬打ち運動に対応して周期的に増減し、例えば反射型フィーラの場合、筬が後退位置に位置する期間(換言すれば緯入れ中の期間)では、そのフィーラ信号値は低い状態であるが、その後吹き切れ検知期間に入り、筬が前進するにつれてフィーラ信号は次第に増加してゆき、やがて筬打ちタイミングではフィーラ信号値は最大となり、その後筬が筬打ち位置から遠ざかるにつれてフィーラ信号値は元の値に向けて次第に減少する。しかも、吹き切れ検知フィーラでは、緯入れ中に緯糸の吹き切れが発生しない限り、緯糸がその検知領域に存在しない吹き切れフィーラ信号を容易に得ることができる。
【0017】
第1の発明において、緯糸が検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を少なくとも含むように定められる第1の期間における吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値の差の値は、筬、取付部材等の撓み等に起因する信号の変化量(ノイズ)と見なすことができ、しかも吹き切れ検知期間における変化量以上の値が得られる。他方、前記吹き切れ検知期間及び第1の期間とは独立して定められて緯糸を検知したときの信号を含まない第2の期間における吹き切れフィーラ信号の平均値は、緯糸が検知領域に存在しない状態での吹き切れフィーラ信号の基準となる値である。
【0018】
したがって、この基準となる平均値に前記信号の差の値を加算した値は、吹き切れ検知期間内における緯糸が検知領域に存在しない状態の吹き切れ検知フィーラ信号の変化量以上の値であるから、この値を吹き切れ検知用閾値として設定することにより、撓みによる信号の増加を考慮した値が設定される。したがって、吹き切れ検知期間において緯糸検知しない緯入れサイクルにあっても、そのときの吹き切れ検知フィーラ信号がそのようにして設定された吹き切れ検知用閾値を越えることはなく、従来のように空止まりは発生せず、吹き切れをより確実に検知することができる。
【0019】
前記第1の期間は、前記したように緯糸が検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を少なくとも含む期間である。この第1の期間は、具体的には、特定されない緯糸が存在しない任意の期間又は時間とすることができる。また第1の期間は、主軸クランク角度で定義される角度期間や所定角度タイミングからの経過時間などで定義することができる。具体的には第1の期間は、織機1回転に対応する期間又はこれ以上の期間とすることもできるし、織機1回転に満たなくとも吹き切れ検知期間の前後の時期を含むように定めることもできる。
【0020】
前記第2の期間についても同様に、具体的には特定されない、緯糸が存在しない任意の期間又は時間とすることができる。またこの第2の期間は、主軸クランク角度で定義される角度期間や所定角度タイミングからの経過時間などで定義することができる。具体的には第2の期間は、織機1回転に対応する期間又はこれ以上の期間とすることもできるし、織機1回転に満たなくても吹き切れ検知期間よりも前に定められる吹き切れ緯糸が存在し得ない期間とすることもできる。
【0021】
本件第2の発明に係る、吹き切れ検知用閾値の設定方法は、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない緯入れサイクル内でかつ所定の吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の最大値以上の値を出力しうる第3のタイミング及び最小値以下の値を出力しうる第4のタイミングをそれぞれ予め定めておき、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない緯入れサイクル内における前記第3及び第4のタイミングのそれぞれにおける吹き切れフィーラ信号から得られる値の差の値を求めるとともに、前記吹き切れ検知期間並びに前記第3及び第4のタイミングとは独立して定められ吹き切れ検知フィーラが緯糸を検知したときの信号を含まない第5の期間における吹き切れ検知フィーラ信号の平均値を求め、求めた平均値に前記差の値を加算した値を前記吹き切れ検知用閾値として設定することを含む。
【0022】
第2の発明において、第3及び第4のタイミングは、これらを緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクル内でかつ所定の吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の最大値以上の値及び最小値以下の値を出力しうるように定めるため、吹き切れフィーラ信号が筬の最後退位置から最前進位置までの間で増減することを考慮して、実質的には吹き切れ検知期間の前後に定められる時点若しくは期間を含むように定めることができる。
【0023】
すなわち、緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクル内における前記第3及び第4のタイミングのそれぞれにおける吹き切れフィーラ信号から得られる値の差の値は、実質的に第1の発明における第1の期間にわたって求めた最大値と最小値との差と同様の値であり、換言すれば、筬、取付部材等の撓み等に起因する信号の変化量(ノイズ)と見なすことができる。
【0024】
前記第5の期間は、第1の発明における第2の期間と同様に定められる期間であり、この期間における吹き切れフィーラ信号の平均値は、緯糸が検知領域に存在しない状態での吹き切れフィーラ信号の基準となる値である。したがって、この基準となる平均値に前記信号の差の値を加算した値は、吹き切れ検知期間内における緯糸が検知領域に存在しない状態の吹き切れ検知フィーラ信号の変化量以上の値であるから、この値を吹き切れ検知用閾値として設定することにより、前記第1の発明と同様の撓みによる信号の増加を考慮した値が設定され、前記第1の発明と同様の効果を奏することができる。
【0025】
第2の発明において、例えば第3及び第4のタイミングを吹き切れ検知期間の前後の任意の時点又は期間にそれぞれ特定して設定することができる。前記したフィーラ信号から得られる値は、特定時点のフィーラ信号値としたり、特定期間におけるフィーラ信号値の最大値、最小値などの、ピーク値、平均値、又はその期間にわたって得た前記平均値以外の統計値とすることもできる。このようにそれぞれ求めた値からそれらの差を求め、求めた差を上記のように利用することができる。
【0026】
なお、前記定める第3及び第4のタイミングは、吹き切れ検知期間を含んだり、各タイミングが相互に重なるように期間を定めたりすることもでき、さらにはともに同一期間に定めることもできる。好ましくは、第3及び第4のタイミングを吹き切れ検知期間の近傍にそれぞれ短く定めれば、吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の変化量とほぼ同じ差の値を得ることができるから、より正確な吹き切れ検知用閾値を設定することが可能になる。
【0027】
第1及び第2の発明に係る、吹き切れ検知用閾値の設定方法において、前記平均値に加算する値は、前記差の値に安全率を乗じた値とすることができる。このようにすれは、余裕を持った吹き切れ検知用閾値を設定することができる。
【0028】
本件第3及び第4の発明は、筬打ち部材に取付けられ、緯糸飛走路に向けて光学的な検知領域を形成し、緯糸先端が到達しうる位置に配置される緯糸検知フィーラとこれより下流に配置される吹き切れ検知フィーラとを有する緯糸検知装置における緯糸検知フィーラの異常検知方法に関する。
【0029】
本件第3の発明に係る、緯糸検知フィーラの異常検知方法は、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を含むように定められる第1の期間における吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値との差の値を求め、前記第1の期間とは独立しかつ緯糸検知フィーラの緯糸検知期間よりも前に定められる緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差に基づく値を求め、前記緯糸フィーラの最大値と最小値との差に基づく値に、前記吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値との差の値を加算し、この加算結果と異常検知用閾値とを比較し、前記加算結果が前記異常検知用閾値を逸脱したことにより警報信号を発生することを含む。
【0030】
反射型又は透過型と呼ばれる検知方式が同じものを緯糸検知フィーラ及び吹き切れ検知フィーラの双方に採用すれば、緯糸検知フィーラにおいても吹き切れ検知フィーラと同様の現象、つまり撓みによる信号変化が発生すると見ることができる。
【0031】
吹き切れ検知フィーラでは、第1の発明と同様、胴切れなどの緯糸吹き切れが発生しない限り、緯糸がその検知領域に存在しない吹き切れフィーラ信号を容易に得ることができる。したがって、緯糸が検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を含むように定められる第1の期間における吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値との差の値は、緯糸無し状態の吹き切れ検知期間内における吹き切れフィーラ信号の変化量の値であり、換言すれば緯糸検知フィーラの緯糸フィーラ信号の変化量の値と見なしてこれを代用することができる。
【0032】
他方、前記緯糸検知フィーラにおいて、前記第1の期間とは独立しかつその緯糸検知期間よりも前に定められる緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差に基づく値は、緯糸検知フィーラにおける筬羽の振動を含む値である。しかも筬羽の振動は筬打ち後次第に減衰するから、緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差の値に、吹き切れフィーラ信号に基づく値の差を加算した値は、緯糸検知フィーラにおいて、緯糸検知期間における糸無し状態でしかも撓みによる信号の変化とともに筬羽の振動が続いている状態の緯糸フィーラ信号の変動量(幅)と考えることができる。
【0033】
したがって、上記の加算結果を所定の異常検知用閾値と比較し、その加算結果が閾値を逸脱したとき警報信号を発することにより、緯糸検知フィーラにおける緯糸フィーラ信号の振動異常、つまり筬羽の振動異常を報知することができる。しかも、この緯糸フィーラ信号の異常検知には、前記吹き切れフィーラ信号に基づく値を加算することにより筬や取付部材等による撓みの影響が加味されており、しかもこれに対応する異常検知用閾値が緯糸フィーラ信号の比較に用いられるから、緯糸フィーラの異常をより正確に検知することができる。
【0034】
第3の発明において、第1の期間は、緯糸が緯糸検知フィーラの検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を少なくとも含む期間である。この第1の期間は、具体的には、特定されない緯糸が存在しない任意の期間又は時間とすることができる。また第1の期間は、主軸クランク角度で定義される角度期間や所定角度タイミングからの経過時間などで定義することができる。具体的には第1の期間は、織機1回転するに要する期間若しくはこれ以上の期間とすることもできるし、織機1回転に満たなくても吹き切れ検知期間の前後の時期を含むように定めることもできる。また、第2の期間に対しても同様に、具体的には特定されない、緯糸が存在しない任意の期間又は時間とすることができる。
【0035】
本件第4の発明に係る、緯糸検知フィーラの異常検知方法は、緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクル内で所定吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の最大値以上の値を出力しうる第3のタイミング及び最小値以下の値を出力しうる第4のタイミングをそれぞれ予め定めておき、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない緯入れサイクル内における前記第3及び第4のタイミングのそれぞれにおける吹き切れフィーラ信号から得られる値の差の値を求め、前記第3及び第4のタイミングとは独立しかつ緯糸検知フィーラの緯糸検知期間よりも前に定められる緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差に基づく値を求め、前記緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差に基づく値に、前記吹き切れフィーラ信号から得られる値の差の値を加算し、この加算結果と異常検知用閾値とを比較し、前記加算結果が前記異常検知用閾値を逸脱したことにより警報信号を発生することを含む。
【0036】
第4の発明において、緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクル内でかつ所定の吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の最大値以上の値を出力しうる第3のタイミング及び前記最小値以下の値を出力しうる第4のタイミングは、実質的に吹き切れ検知期間の前後に定められる期間を含むように定められる。それ故に、これらそれぞれの期間において得られる吹き切れフィーラ信号から得た値は、実質的に前記第3の発明における第1の期間にわたって求めた最大値と最小値との差と同様の値である。したがって、第3の発明と同様に、緯糸検知フィーラの撓みによる緯糸フィーラ信号の変化量の値と見なしてこれを代用することができる。
【0037】
他方、前記緯糸検知フィーラにおいて、前記第3及び第4のタイミングとは独立しかつ緯糸検知期間よりも前に定められる緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差に基づく値は、緯糸検知フィーラにおける筬羽の振動に対応する値である。したがって、緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差の値に、吹き切れフィーラ信号に基づく値の差を加算した値は、第3の発明と同様に得られる、緯糸検知期間における糸無し状態でしかも撓みによる信号の変化とともに筬羽の振動が続いている状態の緯糸フィーラ信号の変動量(幅)と考えることができる。よって、緯糸検知フィーラにおける機能異常、つまり筬羽の振動異常を検知することができる。またこの緯糸フィーラ信号の異常検知には、前記吹き切れフィーラ信号に基づく値を加算することにより筬や取付部材等による撓みの影響が加味されており、さらにこれに対応する異常検知用閾値と比較されるから、緯糸検知フィーラの異常検知、すなわち筬羽の異常振動をより正確に検知することができる。
【0038】
第4の発明において、第3及び第4のタイミングは吹き切れ検知期間の前後の任意の時点又は期間にそれぞれ特定して設定することができる。また、フィーラ信号から得られる値は、特定時点のフィーラ信号値としたり、特定期間におけるフィーラ信号値の最大値最小値などの、ピーク値、平均値、又はその期間にわたって得た前記以外の統計値とすることもできる。このようにそれぞれ求めた値からそれらの差を求め、求めた差を上記のように利用することができる。
【0039】
なお第4の発明において、前記定める第3及び第4のタイミングは、吹き切れ検知期間を含んだり、各タイミングが相互に重なるように期間を定めたりすることもでき、さらにはともに同一期間に定めることもできる。好ましくは、第3及び第4のタイミングを吹き切れ検知期間の近傍にそれぞれ短く定めれば、吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の変化量とほぼ同じ差の値を得ることができ、より正確な緯糸検知フィーラの異常を検知することが可能になる。
【0040】
第3及び第4の発明において、緯糸不存在期間は、主軸クランク角度で定義される角度期間や所定角度タイミングからの経過時間などで定義することができ、例えば、緯入れがあっても緯糸を検知し得ない期間、すなわち緯糸検知期間よりも前に定められる任意の期間であり、好ましくは、筬の撓みの影響が生じないようにしかも筬羽の振動波形が得られるように、期間を短く定めたり、筬の撓みの影響が比較的生じにくい期間、例えば筬打ち運動の加速度が小さい期間に設定すればよい。また、緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の値の最大値及び最小値に基づく値とは、加算する2つの値の間で一定の比率を保つために所定係数を乗じて補正するものであり、具体的には最大値及び最小値の差の値に係数1/2を乗じた値である。前記加算する他方の値に対応して乗じる所定係数を変更してもよい。
【0041】
前記第3及び第4の発明において、より好ましくは、前記最大値及び最小値の差に基づく値に加算する値は、前記差に基づく値に安全率を乗じた値とすることができる。安全率は1以外の整数とすることができ、このようにすれは、余裕を有する緯糸検知フィーラの異常検知を行うことができる。
【0042】
さらに好ましくは、前記異常検知用閾値として、前記緯糸検知フィーラにおいて緯糸の有無の判定に用いる緯糸検知用閾値を用いることができる。このようにすれば、異常検知機能を利用して緯糸検知用閾値をより正確に設定することができるから、緯糸検知フィーラにおける見逃しを発生しない。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1は、本件第1及び第2の発明に対応する実施例を示す。図1を参照するに、吹き切れ検知フィーラ10は、図示しない筬や筬と一体になって揺動駆動される図示しない筬打ち部材に取付けられ、筬に形成された緯糸飛走路に向けて光学的な検知領域を形成しており、しかも緯糸の有無を検知する緯糸検知フィーラよりも緯糸の飛走方向下流側の位置に配置されている。吹き切れ検知フィーラ10は、通常の緯入れでは緯糸先端が到達せず、緯入れ中に吹き切れが発生したとき、その検知領域に緯糸が存在することを検出して、緯入れされた緯糸が吹き切れしたことを検知する。
【0044】
図示の例では、吹き切れ検知フィーラ10は、筬に形成された緯糸飛走路に向けて投光素子及び受光素子を配置して光学的な検知領域を形成する反射型のフィーラを用いている。吹き切れ検知フィーラ10のフィーラヘッド12は、光を緯糸飛走路に指向させる投光器14と、緯糸飛走路を形成する筬及び緯糸からの反射光を受光する受光器16とを備える。
【0045】
投光器14には、所定のデューティー比を有する高い周波数のパルス状電流が給電される。これにより、投光器14は、点滅を繰り返して、パルス状の光を発生する。受光器16は、パルス状の反射光を受光して、入射光量に対応したレベルを有するパルス状の電気信号を感知回路18に出力する。
【0046】
感知回路18は、受光器16の出力信号を増幅器20において増幅し、増幅器20の出力信号を検波器22において検波する。増幅器20は、ゲインを可変可能の一般的な増幅器である。検波器22は、一般的なピークホールド回路であり、増幅器20の出力信号を投光器14の発光周期に同期してクランプして直流信号に変換し、その直流信号を吹き切れフイーラ信号S1として出力する。
【0047】
吹き切れフィーラ信号S1は、その平均値S2を算出する平均値演算器24と、吹き切れ検知用閾値SV1及びSV2を設定する閾値設定回路26及び28と、吹き切れを検知する吹き切れ検知回路30とに供給される。
【0048】
織機の主軸32の回転角度は、エンコーダ34において検出されて、電気的なクランク角度信号θとして織機主軸の回転に対応して信号を出力する信号発生手段であるタイミング信号発生器36に出力される。タイミング信号発生器36は、エンコーダ34の出力信号(クランク角度信号)θを基に、図2に示す各種のタイミング信号TMG0からTMG4を発生する。
【0049】
タイミング信号TMGOは、クランク角度信号θが筬打ちタイミングである0度から所定角度(例えば、30度)間での間低レベル(オフ)になる矩形波信号である。タイミング信号TMG2は、吹き切れ検知のタイミングを指示する信号で、例えばクランク角度信号θが200度から310度まで高レベル(オン)になる矩形波信号であり、吹き切れの有無を検知する吹き切れ検知期間に対応するタイミング信号である。
【0050】
タイミング信号TMG3及びTMG4は、最大値及び最小値(ピーク値)を検知するタイミングを指示する信号、例えばクランク角度信号θが330度から0度まで及び160度から200度まで高レベル(オン)になる矩形波信号であり、それぞれ吹き切れ検知期間よりも後及び前に定められる第3及び第4のタイミングに対応するタイミング信号である。
【0051】
これに対し、タイミング信号TMG1は、緯糸が光学的検知領域に存在しない期間のフィーラ信号の平均値を算出するタイミングを指示する信号で、例えばクランク角度信号θが100度から200度まで高レベル(オン)になる矩形波信号であり、前記第2及び第5の期間に対応するタイミング信号である。このタイミング信号は糸(つまり吹き切れ)検知期間よりも前で、比較的安定する信号が得られる時期に定められており、その期間は緯入れ緯糸がその検知領域に存在しない(到達し得ない)緯糸不存在期間に定められる。
【0052】
平均値演算器24は、緯糸不存在期間に対応するタイミング信号TMG1における吹き切れフィーラ信号S1の平均値S2を算出し、緯糸不存在期間の終了時(タイミング信号TMG1の立ち下がり時、すなわち200度)に平均値S2をゲイン発生器38と閾値設定回路26,28とに供給する。
【0053】
ゲイン発生器38は、緯糸不存在期間に対応するタイミング信号TMG1におけるフィーラ信号S1の平均値S2を基に、増幅器20のゲインS3を決定し、所定のタイミング毎(例えば、タイミング信号TMGOの立ち下がり時、すなわちクランク角度信号θが0度になるたび)にそのゲインS3を増幅器20に供給し、次の緯入れサイクルの0度までそのゲインに維持する。
【0054】
換言すれば、ゲイン発生器38は、吹き切れフィーラ信号S1の平均値S2が常に一定のレベルを基準に出力されるように、増幅器20のゲインを自動的に修正するAGC回路を構成している。上記した各タイミング信号及び吹き切れが発生しない緯入れサイクルにおける吹き切れフィーラ信号S1の波形の一例を図2に示す。
【0055】
本件第1及び第2の発明の主要構成である、吹き切れ検知用閾値を設定する閾値設定回路26は、第3及び第4のタイミング信号TMG3、TMG4に対応するフィーラ信号検出器としての最大・最小検出器40及びその2つの出力値から差の値を演算する演算器42とを含む第1の演算手段と、前記した平均値演算器24を含む平均値演算手段と、前記2つの手段に接続される演算器44を含む設定手段とを有する。
【0056】
吹き切れ検知用の閾値設定回路26は、フィーラ信号S1の最大値(S1max)及び最小値(S1min)を最大・最小検出器40においてタイミング信号TMG3及びTMG4を用いて検出し、検出した最大値及び最小値の差に基づく値S4(S1max−S1min)を演算器42において算出し、算出した差に基づく値S4を演算器44に供給する。
【0057】
演算器44は、緯糸不存在期間におけるフィーラ信号S1の平均値S2に差に基づく値S4を加算して反射色緯糸の検知に用いる吹き切れ検知用閾値SV1を吹き切れ検知回路30に出力する。すなわち、演算器44は、S2+S4=SV1の演算を行うことにより、吹き切れ検知用閾値SV1を求め、求めた吹き切れ検知用閾値SV1を吹き切れ検知回路30に設定する。
【0058】
閾値設定回路28は、閾値設定回路26と同様の手法で、S2−S4=SV2の演算を行うことにより吸収色緯糸に対応する吹き切れ検知用閾値SV2を求め、求めた吹き切れ検知用閾値SV2を吹き切れ検知回路30に設定することもできる。閾値設定回路28は平均値演算器24において算出した平均値S2を用いてもよく、この場合閾値設定回路28は演算器44と同様の演算器を備える。また、吹き切れ検知用閾値SV2は、予め設定された一定の値であってもよい。
【0059】
上記のように吹き切れの検知に2種類の閾値SV1,SV2を用いる理由は、次のとおりである。
【0060】
反射型センサにおいては、緯糸からの反射光レベルがバックからの反射光レベルよりも大きいと、緯糸存在時のフィーラ信号は、緯糸からの反射光の影響を受けて緯糸不存在時よりも大きい信号レベルとなるため、大きい方の閾値SV1が利用される。これに対し、緯糸からの反射光レベルがバックからの反射光レベルよりも小さいと、緯糸存在時のフィーラ信号は、緯糸からの反射光が少なくなり、緯糸不存在時よりも小さい信号レベルとなるため、小さい方の閾値SV2が利用される。
【0061】
使用する緯糸が単色の場合は、糸種により定まる2つの閾値のうちいずれか一方のみが利用される。これとは逆に、多色の緯糸(色が異なる複数の緯糸)を使用しかつ1つの緯糸からの反射光レベルがバックからの反射光レベルを上回り、他の緯糸からの反射光レベルがバックからの反射光レベルを下回るときは、2つの閾値が利用される。
【0062】
吹き切れ検知回路30は、比較器46において吹き切れ検知期間の間(タイミング信号TMG2がオンの間)、吹き切れフィーラ信号S1と2つの閾値SV1及びSV2とを比較し、フイーラ信号S1が閾値SV1及びSV2のいずれかを越えているとき、その旨を意味するオン信号S6を停止信号発生器48に出力する。すなわち、比較器46は、S1>SV1及びS1<SV2の比較を行って、フィーラ信号S1が閾値SV1及びSV2の閾値幅を逸脱しているか否かを判定する。
【0063】
閾値SV1及びSV2の閾値幅を逸脱していること(すなわち、オン信号S5が発生されたこと)は吹き切れ有り(緯糸有り)を意味し、閾値SV1及びSV2の閾値幅を逸脱していないこと(すなわち、オン信号S34が発生されないこと)は吹き切れ無し(緯糸無し)を意味する。
【0064】
停止信号発生器48は、信号S5が出力されたことを吹き切れ検知期間にわたって監視し、その期間にオン信号S5が発生されたならば、吹き切れ有りと判断して、吹き切れ検知期間の終了時(タイミング信号TMG2の立ち下がり時)に織機停止信号S6を出力する。
【0065】
緯糸は、所定のタイミングで、緯入れ装置により経糸開口内に緯入れされ、筬により織り前に筬打ちされる。緯入れ中に緯糸の胴切れなどの吹き切れが発生して緯糸の先端が、吹き切れ検知フィーラ10のフィーラヘッド12の設置位置に到達すると、受光器16への入射光量が変化する。この変化は、吹き切れフィーラ信号S1の変化として現れる。
【0066】
上記の結果、比較器46においてSV1≦S1≦SV2となると、吹き切れ検知期間の終了時に吹き切れ無し(緯糸無し)が検知されて、織機停止信号S6は出力されない。しかし、比較器46においてフィーラ信号S1が閾値SV1、SV2から(すなわちSV1<S1又はS1<SV2となって)逸脱すると、吹き切れ検知期間の終了時に吹き切れ有り(緯糸有り)と判定されて織機停止信号S6が出力される。
【0067】
織機運転中、筬打ち運動にともなって筬や筬と一体に揺動駆動される取付部材などに撓みが生じる。この撓み量は、筬打ち加速度に関連があり、筬最前進時及び最後退時において前後方向の撓み量がそれぞれ最大になる。そして、筬、取付部材等に撓み等の異常が生じると、受光器16への入射光量が大きく変化し、この変化はフィーラ信号S1の変化として現れる。
【0068】
筬及び緯糸からの反射光を受光する反射型吹き切れ検知フィーラの吹き切れフィーラ信号の一例を図5に示す。フィーラへの入射光量は、筬とフィーラとの間隔が筬及びその取付部材の揺動方向への撓みにより変化するから、筬の前進時に増加し、筬の後退時に減少する。したがって、撓み量換言すればフィーラ信号は、筬打ち時に最大になり、筬の最後退時に最小になる。
【0069】
例えば、緯糸検知用閾値を設定する従来技術である特開平7−11544号の技術のように、緯糸不存在期間における最大値又は最小値のみの値に基づいて閾値を設定する技術では、フィーラ信号が筬やその取付部材の撓みにより増減する場合に対して何ら考慮していない。したがって、従来のように自動設定された閾値SV1、SV2では、緯糸が存在しないにもかかわらず、撓みにより変化する吹き切れフィーラ信号S1が閾値SV1,SV2のいずれかから逸脱し、織機停止信号S6が出力されてしまい、吹き切れ検知フィーラの空止まりが発生する。
【0070】
しかし、前記したように、第3及び第4のタイミングに対応するタイミング信号TMG3及びTMG4の発生時期は、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない緯入れサイクル内でかつ所定の吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の最大値以上の値及び前記最小値以下の値を出力しうるように定めるため、しかもフィーラ信号が筬が最後退する位置から最前進する位置の間で増減するから、実質的には吹き切れ検知期間の前後に定められる時点若しくは期間を含むように定められる。
【0071】
よって、緯糸が吹き切れ検知フィーラの検知領域に存在しない緯入れサイクル内における前記第3及び第4のタイミングのそれぞれにおける吹き切れフィーラ信号から得られる値の差の値は、筬、取付部材等の撓み等に起因する信号の変化量(ノイズ)と見なすことができる。また第5の期間に対応するタイミング信号TMG1は、吹き切れ検知期間並びに第3及び第4のタイミングとは独立しかつ緯入れ中に緯糸が到達し得ない吹き切れ検知期間よりも前の期間に定められているため、タイミング信号TMG1における吹き切れフィーラ信号の平均値は、緯糸が検知領域に存在しない状態での吹き切れフィーラ信号の基準となる値である。
【0072】
したがって、この基準となる信号に前記信号の差の値を加算した値は、吹き切れ検知期間内における緯糸が検知領域に存在しない状態の吹き切れ検知フィーラ信号の変化量以上の値であるから、この値を吹き切れ検知用閾値として設定することにより、撓みによる信号の増加を考慮した値が設定される。よって、吹き切れ検知期間において緯糸検知しない緯入れサイクルにあっても、吹き切れ検知フィーラ信号がそのようにして設定された吹き切れ検知用閾値を越えることはなく、従来のように空止まりは発生せず、より確実に吹き切れ検知できる。
【0073】
第3及び第4のタイミングに対応するタイミング信号TMG3及びTMG4の発生時期は、吹き切れ検知期間の前後の任意の時点、又は期間にそれぞれ特定して設定することができる。例えば、第3のタイミングは、吹き切れ検知期間終了時から筬打ちタイミングまでの間、又はこの間における出力と同等の値が得られる時点又は期間ならばいずれに設定してもよい。この第3のタイミングで求める吹き切れフィーラ信号から得られる値は、前記した特定期間に得られるピーク値である最大値のほか、平均値や最頻値などの期間に対応して得られる統計値とすることができ、さらには、上記期間内における特定時点のフィーラ信号値とすることもできる。
【0074】
他方、第4のタイミングは、筬が最後退するタイミングから吹き切れ検知開始時までの間、又はこの間における出力と同等の値が得られる時点又は期間ならばいずれに設定してもよい。この第4のタイミングで求める吹き切れフィーラ信号から得られる値は、前記した特定期間に得られるピーク値である最小値のほか、平均値や最頻値などの期間に対応して得られる統計値とすることができ、さらには、上記期間内における特定時点のフィーラ信号値とすることもできる。好ましくは、前記第3のタイミングにおいて得られる値に合わせて適宜選択することが望ましい。これらに合わせて上記したフィーラ信号検出器としての最大/最小検出器40を所望の値をそれぞれ検出する別途検出器に置換すればよい。
【0075】
これに対し、平均値を算出するための第1のタイミングは、第3及び第4のタイミングとは独立して定められ、しかも緯糸を検知したときの信号を含まないように定める。前記では、タイミング信号TMG1を、筬の撓みにより吹き切れフィーラが影響を受けないように、しかも緯糸が検知領域に到達しえないように、例えば100度から200度にわたってオンにするように定めたが、筬の撓みによる信号変化が含まれるように設定してもよく、この期間の長さには限定されない。緯糸の影響を受けないように設定されていれば十分である。さらに簡略化するならば、緯糸が存在しない緯入れ1サイクル内に定めることもできる。
【0076】
さて、上記実施例では、2つのタイミングおける吹き切れフィーラ信号から撓みによる信号の変化を求めるようにしているが、吹き切れ緯糸が存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を少なくとも含むように定められる1つの期間における吹き切れフィーラ信号の最大値及び最小値を求めることによっても、上記同様に撓みによる信号の変化を求めることができ、前記同様に吹き切れ検出用の閾値を設定することができる。
【0077】
例えば、上記した実施例の閾値設定回路26内にある最大/最小検出器40に供給する第3及び第4のタイミング信号に代えて、第1の期間に対応するタイミング信号を双方の入力端に供給することによって、1つの期間における吹き切れフィーラ信号の最大値及び最小値を検出することができる。よって、演算器42は、第1の期間における最大値及び最小値の差の値を出力することができる。
【0078】
他方、吹き切れフィーラ信号の平均値は、吹き切れ検知期間及び第1の期間とは独立して定められる第2の期間であって、かつ緯糸を検知したときの信号を含まない第2の期間における平均値、例えば平均値演算器24からの平均値を用いればよい。この平均値は、緯糸が検知領域に存在しない状態での吹き切れフィーラ信号の基準となる値である。
【0079】
したがって、この基準となる平均値に前記信号の差の値を加算した値は、吹き切れ検知期間内における緯糸が検知領域に存在しない状態の吹き切れ検知フィーラ信号の変化量以上の値であるから、この値を閾値を設定することにより、撓みによる信号の増加を考慮した値が吹き切れ検知用閾値として設定され、前記した実施例と同様の効果を奏することができる。
【0080】
なお、第1の期間は、具体的には、特定されない緯糸が存在しない任意の期間又は時間とすることができる。また第1の期間は、主軸クランク角度で定義される角度期間や所定角度タイミングからの経過時間などで定義することができる。具体的には第1の期間は、織機1回転するに要する期間若しくはこれ以上の期間とすることもできるし、織機1回転に満たなくとも吹き切れ検知期間の前後の時期を含むように定めることもできる。
【0081】
前記した第2の期間に対しても同様に、具体的には特定されない、緯糸が存在しない任意の期間又は時間とすることができる。この第2の期間は、主軸クランク角度で定義される角度期間や所定角度タイミングからの経過時間などで定義することができる。具体的には第2の期間は、織機1回転に対応する期間若しくはこれ以上の期間とすることもできるし、織機1回転するに満たなくとも吹き切れ検知期間よりも前に定められる吹き切れ緯糸が存在し得ない期間とすることもできる。
【0082】
図3は閾値設定回路の他の実施例を示す。図3に示す例では、閾値設定回路50は、フィーラ信号のピーク値(最大値及び最小値)の差に基づく値S4を設定する設定器52と、フィーラ信号の平均値S2と最大値及び最小値の差に基づく値S4とを用いて吹き切れ検知用閾値SV1,SV2を発生する演算器54とを備えている。
【0083】
図3に示す実施例の場合、フィーラ信号のピーク値(最大値及び最小値)は、オシロスコープのような測定器によりタイミング信号TMG3,TMG4を用いて予め測定され、測定されたピーク値の差に基づく値S4は予め設定器52に作業者により又は自動的に設定される。
【0084】
演算器54は、通常の製織の間、吹き切れフイーラ信号S1の平均値S2に最大値及び最小値の差に基づく値S4を加算及び減算してそれぞれ吹き切れ検知用閾値SV1及びSV2を発生し、閾値SV1及びSV2を比較器46に設定する。
【0085】
上記したように図3の構成によっても前記同様に吹き切れ検知用閾値を設定することもできる。なお、吹き切れ検知用閾値を設定するために、吹き切れフィーラ信号の平均値に加算する値は、吹き切れフィーラ信号の最大値及び最小値の差、又は第3及び第4のタイミングにおけるフィーラ信号から得られた値の差の値に安全率を乗じた値とすることもできる。いずれの場合も、吹き切れ検知用閾値の設定に余裕を持たせることができる。
【0086】
上記した吹き切れ検知用閾値の設定は、機掛け後の織付け時などの織機調整作業として行われ、上記した閾値設定回路26,28は、図示しない織機制御回路からの設定指令や作業者の操作により作動させることができる。しかも、その作動時期には、緯糸の吹き切れが生じない時期に作動させることが好ましい。なぜならば、吹き切れが発生し、所定の検知領域に緯糸が存在すると、吹き切れフィーラ信号は緯糸存在により大きく変化するため、当初の目的である緯糸が存在しないときのフィーラ信号の変化を捉えることができないからである。
【0087】
例えば、上記閾値設定回路26,28を作動させる時期について、例えば吹き切れ緯糸が発生しない緯入れサイクル内が考えられる。好ましくは、回路を作動させる時期は、吹き切れが発生しえない状態であるとき、例えば吹き切れしない緯糸緯入れ時とし緯糸選択信号にしたがって作動させてもよいが、より簡略化するならば、とりあえず作動させて上記測定を行い、その測定結果が吹き切れ発生しなかったときの値であることを確認した後、前記閾値を演算出力するように構成することも考えられる。
【0088】
図4は、本件第3及び第4の発明に対応する実施例で、吹き切れ検知用フィーラの信号変化を緯糸検知フィーラにおける異常検知に用いる例であり、異常検知装置を備えた緯糸検知フィーラ60の一実施例を示す。緯糸検知フィーラ60は、吹き切れ検知フィーラ10より緯糸の飛走方向上流側で通常の緯入れにより緯糸が到達し得る位置に光学的検知領域を形成するように配置されており、正常に緯入れされた緯糸の先端を検知する。
【0089】
緯糸検知フィーラ60は、図1に示すタイミング信号発生器36において発生された各種のタイミング信号を用いると共に、図1に示す吹き切れ検知フィーラ10の演算器42で発生された吹き切れフィーラ信号S1の最大値及び最小値の差に基づく値S4を用いる。なお、タイミング信号発生器36には、図示のほかに、緯糸検知期間に対応するタイミング信号TMG5を出力可能に設けられており、クランク角度200度から290度にわたりオン出力する矩形波信号が出力される。
【0090】
緯糸検知フィーラ60は、図1に示す吹き切れ検知フィーラ10と同様に、投光素子と受光素子とを筬に形成された緯糸の飛走路に向けて配置した反射型のフィーラを用いている。フィーラヘッド62は、光を緯糸飛走路に指向させる投光器64と、筬及び緯糸からの反射光を受光する受光器66とを備える。
【0091】
投光器64は、図1に示す投光器14同様に、所定のデューティー比を有する高い周波数のパルス状電流が給電されて、点滅を繰り返し、パルス状の光を発生する。受光器66も、図1に示す受光器16と同様に、パルス状の反射光を受光して、入射光量に対応したレベルを有するパルス状の電気信号を感知回路68に出力する。
【0092】
感知回路68は、図1に示す感知回路18と同様に、受光器66の出力信号を増幅器70において増幅し、増幅器70の出力信号を検波器72において検波する。増幅器70は、図1に示す増幅器20と同様に、ゲインを可変可能の一般的な増幅器である。検波器72は、図1に示す検波器22と同様に、一般的なピークホールド回路であり、増幅器70の出力信号を投光器64の発光周期に同期してクランプした直流信号を緯糸フィーラ信号S11として出力する。
【0093】
緯糸フィーラ信号S11は、その平均値S12を算出する平均値演算器74と、機器の異常を検知して警報信号を発生する警報回路76と、緯糸の有無を検知する緯糸検知回路78とに供給される。
【0094】
平均値演算器74は、緯糸不存在期間(タイミング信号TMG2オンの間)における緯糸フィーラ信号S11の平均値S12を算出し、緯糸不存在期間の終了時(タイミング信号TMG2の立ち下がり時、すなわち200度)に平均値S12をゲイン発生器80と緯糸検知用の閾値設定回路82に供給する。
【0095】
ゲイン発生器80は、図1に示すゲイン発生器38と同様に、増幅器70のゲインを自動的に修正するAGC回路を構成しており、したがって緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号S11の平均値S12を基に、増幅器70のゲインを決定し、所定のタイミング毎(図示の例では、タイミング信号TMGOの立ち下がり時、すなわちクランク角度信号θが0度になるたび)にそのゲインS3を増幅器70に供給し、次の緯入れサイクルの0度までそのゲインに維持する。
【0096】
閾値設定回路82の設定器84には、所定の値2a(すなわち、±a)が設定されている。それらの値2aは、平均値S12を中心として光を反射する反射色緯糸及び光を吸収する吸収色緯糸のそれぞれに対し、糸なし状態と判定するための閾値幅を表す値である。
【0097】
閾値設定回路82の演算器86は、設定器84に設定された値2aの1/2の値(すなわち±a)をそれぞれ平均値S12に加算及び減算して、反射色緯糸及び吸収色緯糸にそれぞれ対応する2つの緯糸検知用閾値SV3及びSV4を比較器46に出力する。
【0098】
すなわち、演算器86は、S12+a=SV3及びS12−a=SV4の演算を行うことにより緯糸検知用閾値SV3及びSV4を求め、求めた緯糸検知用閾値SV3及びSV4を緯糸検知回路78の比較器88に設定する。
【0099】
上記のように緯糸検知に2種類の緯糸検知用閾値を用いる理由は、前記した吹き切れ検知に2種類の閾値SV1,SV2を用いる理由と同じである。
【0100】
反射色緯糸及び吸収色緯糸にそれぞれ対応する緯糸検知用閾値SV3及びSV4が緯糸フィーラ信号S11の平均値S12(Vavr)から同じ幅aを有するように設定する代わりに、緯糸検知用閾値SV3及びSV4の幅(閾値幅)を色彩に対応して異なる値に設定する等、緯糸検知用閾値SV3及びSV4を他の手法(技術)により設定してもよい。
【0101】
緯糸検知回路78の比較器88は、タイミング信号TMG5を用いて緯糸検知期間の間、緯糸フィーラ信号S11と2つの緯糸検知用閾値SV3及びSV4とを比較し、緯糸フィーラ信号S11が緯糸検知用閾値SV3及びSV4のいずれかを越えているとき、その旨を意味するオン信号S13を停止信号発生器90に出力する。すなわち、比較器88は、S11>SV3及びS11<SV4の比較を行って、緯糸フィ一ラ信号S11が緯糸検知用閾値SV3及びSV4の閾値幅を逸脱しているか否かを判定する。
【0102】
緯糸検知用閾値SV3及びSV4の閾値幅を逸脱していること(すなわち、オン信号S13が発生されたこと)は緯糸ありを意味し、緯糸検知用閾値SV3及びSV4の閾値幅を逸脱していないこと(すなわち、オン信号S13が発生されないこと)は緯糸無しを意味する。
【0103】
緯糸検知フィーラ60においては、緯入れが正しく行われると、緯入れされた緯糸の先端がフィーラの検知領域に到達し、比較器88は、オン信号S13を出力することができる。それゆえに、停止信号発生器90は、オン信号S13が出力されなかったことを緯糸検知期間にわたって監視し、その期間にオン信号S13が発生されなければ、緯糸無しと判断して、緯糸検知期間の終了時(タイミング信号TMG5の立ち下がり時290度)に織機停止信号S14を出力する。
【0104】
本件第3及び第4の発明の主要部を構成する緯糸フィーラの異常検知装置である警報回路76は、前記第1及び第2の発明で吹き切れ検知フィーラに用いられた吹き切れフィーラ信号に基づき値を求める最大・最小検出器40及び演算器42を含む第1の演算手段と、緯糸検知フィーラに付設される最大・最小検出器94及び演算器96を含む第2の演算手段と、この第2の演算手段の演算出力を比較する比較器98を含む警報手段とを有している。
【0105】
詳しくは、警報回路76は、警報用閾値を設定する設定器92と、緯糸フィーラ信号S11の最大値と最小値とを検出する最大・最小検出器94と、検出した最大値と最小値との差S15を算出する演算器96と、最大・最小検出器94の出力信号S15を警報用閾値2bと比較する比較器98と、比較器98のオン信号S16を基に警報信号S17を発生する警報信号発生器100とを備えている。
【0106】
設定器92には、警報用の閾値幅2bが設定されている。この閾値幅2bは、図1に示す緯糸検知回路78及び設定器84と同様に、緯糸フィーラ信号S11の平均値S12を中心とする値(すなわち、±b)である。
【0107】
最大・最小検出器94は、緯糸フィーラ信号S11とタイミング信号TMG1を受け、緯糸不存在期間(タイミング信号TMG1のオン時)における緯糸フイーラ信号S11の最大値(S11max)及び最小値(S11min)を検出し、検出した最大値(S11max)及び最小値(S11min)をタイミング信号TMG1の立ち下がり時200度に演算器96に出力する。
【0108】
演算器96は、図1に示す吹き切れ検知フィーラ10から吹き切れフィーラ信号S1の最大値及び最小値の差に基づく値S4とタイミング信号TMG1とを受ける一方、最大・最小検出器94からの最大値(S11max)及び最小値(S11min)が入力されている。演算器96は、緯糸検知期間の直前(緯糸不存在期間の終了時、すなわちタイミング信号TMG1の立ち下がり時の200度)に、緯糸フィーラ信号S11の最大値及び最小値の差(S11max−S11min)を算出し、この算出した差の値に対して係数1/2を乗じた値に、吹き切れ検知フィーラ10からの最大値及び最小値の差に基づく値S4を加算し、この加算結果信号S15=1/2(S11max−S11min)+S4を比較器98に出力する。
【0109】
比較器98は、タイミング信号TMG5と加算結果信号S15と閾値幅信号2bとを受ける。この閾値幅信号2bは、緯糸検知用の閾値と同様、幅状に設定されているため、比較器98は、その閾値幅の1/2の値すなわちbを閾値として加算結果信号S15と比較し、加算結果信号S15が閾値幅bを越えているとき、オン信号S16を警報信号発生器100に出力する。
【0110】
警報信号発生器100は、オン信号S16が比較器98から出力されたか否かを緯糸検知期間(タイミング信号TMG5がオンの間)を監視し、緯糸検知期間にオン信号S16が供給されたことにより、機器が異常であることを意味する警報信号S17を緯糸検知期間の終了時(タイミング信号TMG5の立ち下がり時290度)で出力する。
【0111】
緯糸は、所定のタイミングで、緯入れ装置により経糸の開口に緯入れされ、筬により織り前に筬打ちされる。緯糸が緯糸検知フィーラ60のフィーラヘッド62の設置位置に到達すると、受光器66への入射光量が変化する。この変化は、緯糸フィーラ信号S11の変化として現れる。
【0112】
上記の結果、緯糸検知回路では、比較器88においてタイミング信号TMG5がオン出力中に緯糸フィーラ信号S11が、緯糸検知用閾値SV3,SV4から逸脱する(S11>SV3、S11<SV4)と、緯糸検知期間の終了時に緯糸有りと判定され、緯糸検知用閾値SV3、SV4から逸脱しなければ(SV4≦S11≦SV3)、緯糸検知期間終了時に緯糸無しと判定され、織機停止信号S14が出力される。
【0113】
緯糸検知フィーラ60では、織機運転中緯入れされるごとに緯糸を検知する。緯糸フィーラ信号S11は、緯糸存在しない緯入れサイクルでは、図6に示す実線のように筬及びその取付部材の撓みにより筬打ちタイミングに近づくにつれて増減するほか、筬打ち直後より筬羽の振動により短い上下振動が重畳する形となっている。これに対し緯糸が織端に達して緯糸が検知されると、緯糸フィーラ信号S11は、一点鎖線に示すように、緯糸の反射を受けて大きく信号が増加する。このため、緯糸検知回路では比較器88の作用により、上記した一連の緯糸の有・無の判定が行われる。
【0114】
しかし、緯糸検知フィーラでは、何らかの理由で筬羽の振動が異常に大きくなると、短い周期の上下の振動の波形がさらに大きくなり、緯糸検知用の閾値の設定によっては糸無しにもかかわらずフィーラ信号が緯糸検知用閾値を逸脱することにより、誤って緯糸有りと判断する見逃しが発生する危険性がある。しかも、織機運転中は、緯入れ緯糸が常に到達が検知され、そのたびに緯糸フィーラ信号は実線に示すように緯糸からの反射による影響を受けて大きくなる。したがって緯糸検知フィーラでは筬羽の振動異常検知するための信号が得られず、しかも筬やその取付部材などの撓みによる信号の変化も考慮して異常を確実に検知することはできない。
【0115】
そこで、同じ検知方式のものを緯糸フィーラ及び吹き切れフィーラの双方に採用すれば、緯糸検知フィーラにおいても吹き切れ検知フィーラと同様の現象、すなわち撓みによる信号変化が発生すると見ることができる。しかも吹き切れ検知フィーラにおいては、前記第1の発明と同様、胴切れなどの緯糸吹き切れが発生しない限り、緯糸がその検知領域に存在しない吹き切れフィーラ信号を容易に得ることができる。このため、前記第3及び第4のタイミングにおける吹き切れフィーラ信号の差の値S4は、すなわち緯糸無し状態の吹き切れ検知期間内における吹き切れフィーラ信号の変化量の値であり、換言すれば緯糸検知フィーラの緯糸フィーラ信号の変化量の値と見なしてこれを代用することができる。
【0116】
他方緯糸検知フィーラにおいて、緯糸検知期間よりも前に定められる緯糸不存在期間に得る緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差に基づく値1/2(S11max−S11min)は、すなわち緯糸検知フィーラにおける筬羽の振動に対応する値である。しかも、筬羽の振動は筬打ち後次第に減衰するから、緯糸不存在期間における緯糸フィーラ信号の最大値と最小値との差の値に、吹き切れフィーラ信号に基づく値の差を加算した値S15=1/2(S11max−S11min)+S4は、緯糸検知フィーラ60で、緯糸検知期間における糸無し状態で、しかも撓みによる信号の変化とともに筬羽の振動が続いている状態の緯糸フィーラ信号の変動量(幅)と考えることができる。
【0117】
したがって、上記の加算結果信号S15を所定の異常検知用閾値幅bと比較し、その加算結果が閾値を逸脱したとき警報信号を発することにより、緯糸検知期間において緯糸が実際に存在しない状態の緯糸フィーラ信号を検知することなく、緯糸フィーラ信号の振動が異常であることを検知できる。またこの緯糸フィーラ信号の異常検知には、前記加算により筬や取付部材等による撓みの影響が加味されており、しかもこれに対応して設定される異常検知用閾値bが緯糸フィーラ信号の比較に用いられるから、より正確な異常報知が可能になる。以上のような異常検知により作業者は異常に対する対処(例えば筬羽の振動を抑えるなどの)を行うことができる。
【0118】
本件第3及び第4の発明では、撓みによる信号変化を検出するために、図1の吹き切れ検知フィーラ10の演算器42から受ける吹き切れフィーラ信号の差の値は、前記した第3及び第4のタイミングにおける吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値の差としてもよいが、第1及び第2の発明のところで述べたように、第3及び第4のタイミングにおいて吹き切れフィーラ信号の統計的な値などから得られる値の差の値としてもよいし、2つ特定時点での吹き切れフィーラ信号の値の差の値としてもよいし、さらには、1つの期間において得られる吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値の差の値としてもよい。
【0119】
緯糸フィーラ信号の最大値及び最小値を検出する緯糸不存在期間は、前記ではTMG2の設定(すなわち100度から200度までの)クランク角度期間として定め、吹き切れ検知フィーラ及び緯糸検知フィーラにおける基準となるフィーラ信号の平均値を求めるタイミング信号と兼用したが、このタイミングと独立する別途タイミングとしてもよい。好ましくは、筬の撓みの影響が生じないように、しかも筬羽の振動波形が得られるように、期間を短く定めたり、筬の撓みの影響が比較的生じにくい期間、例えば筬打ち運動の加速度が小さい期間に設定することもできる。このようにすれば、緯糸検知フィーラにおける撓みの影響を受けない筬羽の振動によるフィーラ信号のみを検出することができるから、緯糸検知フィーラの異常検知をより正確に行うことができる。
【0120】
警報回路76において、設定器92に設定する警報用閾値の幅2bを、緯糸有無の判定に用いる緯糸検知用閾値と同じ幅2aにしてもよい。例えば、2つの色彩(反対色及び吸収色)にそれぞれ対応して異なる値a1及びa2が緯糸検知用閾値幅として設定されるならば、緯糸検知用の上限閾値SV3及び下限閾値SV4は、それぞれ、a1及びa2となり、警報用閾値幅Sbはa1+a2となる。
【0121】
このようにすれば、警報回路76の作動結果を利用して、緯糸フィーラ信号S11の振動レベルと緯糸検知用閾値との大小関係を知ることができるから、緯糸検知用閾値をより正確に設定することができる。
【0122】
警報用閾値幅は、上記のような値2a,2bを直接用いる代わりに、それらに安全率αを乗じた値2a・α、2b・αを用いてもよい。また、各閾値に安全率を乗じる代わりに、フィーラ信号、その最大値及び前記最小値又はそれらの差に安全率αを乗じてもよい。いずれの場合も、織機停止信号、警報信号等を発生する条件に余裕が生じる。
【0123】
上記した警報回路76における警報のための閾値との比較を、幅状に設定された異常検知用閾値と比較する相対的な値による比較を行っているが、絶対的な値による比較すなわち信号値レベルとしてフィーラ信号及び異常検知用閾値を捉えて異常検知することもできる。これについては、吹き切れ検知回路30、緯糸検知回路78についても同様である。
【0124】
上記実施例において、吹き切れフィーラ信号S1及び緯糸フィーラ信号S11の最大値及び最小値を算出するタイミングを、クランク角度を基準に設定する代わりに、基準のタイミングからの経過時間、筬の位置等、他の条件を基準に設定してもよい。
【0125】
また、そのようなタイミングを、2時点間の期間とする代わりに、特定の時点としてもよい。そのようなタイミングを期間とすると、筬羽の振動のような機器の振動に起因する信号の振動を考慮した閾値を設定することができる。これに対し、そのようなタイミングを時点とすると、ストロボ発光のような突発的な光学的ノイズの影響を排除した閾値を設定することができる。
【0126】
吹き切れフィーラ信号S1の最大値及び最小値の差S4及び緯糸フィーラ信号S11の最大値及び最小値の差S14を用いる代わり、フィーラ信号S1,S11の実測値、実測値から求めたピーク値や平均値のような統計値等、他の値を用いてもよい。比較器46,88,98における信号の比較を、相対値(閾値幅)とする代わりに、信号の絶対値(信号レベル)としてもよい。
【0127】
吹き切れ検知用閾値SV1,SV2及び緯糸検知用閾値SV3,SV4の設定は、緯入れ毎に行ってもよいし、周期的に行ってもよく、さらには織機の調整運転時(織り付け時)のみに行ってもよい。しかし、吹き切れ検知用閾値及び緯糸検知用閾値の設定は、平均値S4及びS12の更新に併せて行うことが好ましい。
【0128】
反射色緯糸、吸収色緯糸に対応する閾値SV1,SV2及びSV3,SV4が平均値S2から同じ幅S4及びS14を有するように設定する代わりに,閾値SV1,SV2及びSV3,SV4の幅(閾値幅)を色彩に対応して異なる値に設定する等、閾値SV1,SV2及びSV3,SV4を他の手法(技術)により設定してもよい。また、閾値設定回路26,28,50,82は、平均値S2,S12に一定値を加算又は減算することにより閾値SV1,SV2及びSV3、SV4を求めてもよい。
【0129】
増幅器20,70のゲイン調整を、緯入れ(ピック)のたび実行する代わりに、複数回の緯入れ毎(数ピック毎)、所定の時間毎、平均値が所定のレベルに達したとき等、他の適宜な時期に実行してもよい。また、AGC回路を用いる代わりに、ゲインを手動で設定してもよい。
【0130】
本発明は、反射型のフィーラのみならず、光が緯糸の飛走路を通過する透過型のフイーラにも適用することができる。
【0131】
本発明は、上記実施例に限定されず、その旨を逸脱しない限り、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吹き切れ検知フィーラの一実施例を示す電気回路のブロック図
【図2】図1の吹き切れ検知フィーラにおける電気信号の波形の一実施例を示す図
【図3】吹き切れ用の閾値設定回路の他の実施例のブロック図
【図4】異常検知装置を備えた緯糸検知フィ一ラの一実施例を示す電気回路のブロック図
【図5】本発明に係る吹き切れ検知フィーラの吹き切れフィーラ信号及び吹き切れ検知用閾値を示す概念図
【図6】本発明に係る緯糸検知フィーラの緯糸フィーラ信号の異常検知に用いる加算結果信号S15を示す概念図
【符号の説明】
10 吹き切れ検知フィーラ
12,62 フィーラヘッド
18,68 感知回路
26,28 閾値設定回路
32 織機の主軸
34 エンコーダ
60 緯糸検知フィーラ
76 警報回路
S1 吹き切れフィーラ信号
S6,S14 織機停止信号
S11 緯糸フィーラ信号
S15 加算結果信号
S17 警報信号
Claims (4)
- 筬打ち部材に取付けられ、緯糸飛走路に向けて光学的な検知領域を形成し、緯入れ糸の到達位置よりも下流側に配置される吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法であって、
緯糸が検知領域に存在しない状態で吹き切れ検知期間の前後の時期を少なくとも含むように定められる第1の期間における吹き切れフィーラ信号の最大値と最小値との差の値を求めるとともに、
前記吹き切れ検知期間及び前記第1の期間とは独立して定められ緯糸を検知したときの信号を含まない第2の期間における吹き切れフィーラ信号の平均値を求め、
求めた平均値に前記差の値を加算した値を前記吹き切れ検知用閾値として設定することを含む、吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法。 - 前記第1の期間は、織機1回転に対応する期間に定める、請求項1に記載の吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法。
- 筬打ち部材に取付けられ、緯糸飛走路に向けて光学的な検知領域を形成し、緯入れ糸の到達位置よりも下流側に配置される吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法であって、
緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクル内でかつ所定の吹き切れ検知期間における吹き切れフィーラ信号の最大値以上の値を出力しうる第3のタイミング及び最小値以下の値を出力しうる第4のタイミングをそれぞれ予め定めておき、緯糸が検知領域に存在しない緯入れサイクル内における前記第3及び第4のタイミングのそれぞれにおける吹き切れフィーラ信号から得られる値の差の値を求めるとともに、
前記吹き切れ検知期間並びに前記第3及び第4のタイミングとは独立して定められかつ緯糸を検知したときの信号を含まない第5の期間における吹き切れ検知フィーラ信号の平均値を求め、
求めた平均値に前記差の値を加算した値を前記吹き切れ検知用閾値として設定することを含む、吹き切れ検知フィーラの吹き切れ検知用閾値の設定方法。 - 前記平均値に加算する値は、前記差の値に安全率を乗じた値である、請求項1、2又は3に記載の設定方法。
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