JP3545492B2 - 梁の接続構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特に2本以上の型鋼からなる梁を接続金具を介して端部間で接続したとき、接続金具を含む梁のフランジに設けた取付ボルト孔部のピッチを全て同一長にした梁の接続構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄骨構造の建築物に於ける軸組構造として、通し柱を用いこの通し柱に梁を取り付ける通し柱工法と、梁を基準としこの梁の上部或いは下部に柱を取り付ける梁勝ち工法がある。これらの各工法には夫々長所,短所があり、建物に応じて選択的に用いられている。
【0003】
例えば、通し柱工法では、1,2階の柱位置が規定されるため、間取りの自由度が少ないという不都合があり、また柱の頭部に他の部材を取り付けることが出来ないため、屋根架構を構成する際に束材等の取付位置が制約されたり、壁取付用の長尺ファスナー(定規アングル)を柱の頭部で切断しなければならないという問題がある。
【0004】
また梁勝ち工法では、上記通し柱工法に於ける問題を解決することが出来るものの、梁の端部を接続する際に該梁の間に勝ち負けが生じ、梁の種類が増加したり、架構が複雑になって施工が大変になるという問題や、梁に設けられた取付ボルト孔のピッチが梁の端部に於ける接合部位でくずれて壁取付用の定規アングルを取り付けることが出来なくなるという問題が生じる。
【0005】
本件出願人は、梁勝ち工法を採用するに際し、接続される梁に勝ち負けを生じさせることなく、梁の種類を削減することが出来る梁と柱の接続構造を開発して既に特許出願している(特開平3−221635号公報)。この技術は、断面十字形間柱に設けた4枚の接続片に梁のウエブに固着した断面L形接続部材をボルト,ナットによって接続することで、複数の梁を端部間で接続し得るように構成したものである。この技術では、断面十字形間柱を介して複数の梁を端部間で接続することが可能であり、且つ全ての梁を間柱間の距離に対応する長さで構成することが可能となり、梁の間に勝ち負けを生じさせることがない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平3−221635号公報に開示された技術であっても未だ完全なものではなく、梁に設けられた他の構造部材の取付ボルト孔のピッチが断面十字形間柱に設けたボルト孔のピッチと関連性を持たないため、前記間柱を含む梁の端部から定規アングルや他の構造部材を取り付けようとしても、これらの部材を取り付けることが出来ず、フランジに新たなボルト孔を形成しなければならないという問題が生じている。
【0007】
本発明の目的は、上記公報に開示された技術を更に発展させ、梁勝ち工法に於ける梁の上部或いは下部に取り付ける構造部材の取付位置の自由度を向上させることが出来る梁の接続構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る梁の接続構造は、上下フランジに夫々一定のピッチで構造部材用の4個のボルト孔を左右対称に配置した取付ボルト孔部が設けられた複数の型鋼からなる梁を、該梁の上下フランジの巾寸法と等しい寸法を持った方形の上下フランジを有し、かつ梁の高さと等しい高さを有し、さらに梁の前記取付ボルト孔部と同一の4個のボルト孔を左右対称に配置した取付ボルト孔部を有する接続金具を介して端部間で接続する梁の接続構造であって、前記梁の端部に最も近い取付ボルト孔部の中心から前記接続金具の取付ボルト孔部の中心までの長さが梁の上下フランジに設けた取付ボルト孔部の中心のピッチと同一であることを特徴とするものである。
【0009】
【作用】
上記梁の接続構造では、該梁の上下フランジの巾寸法と等しい寸法を持った上下フランジを有しかつ梁の高さと等しい高さを有しさらに梁の前記取付ボルト孔部と同一の4個のボルト孔を左右対称に配置した取付ボルト孔部を有する方形の接続金具を介して建物の1階層を構成する全ての型鋼からなる梁を接続したとき、接続金具の取付ボルト孔部の中心となる接続中心から梁の上下フランジに設けた構造部材の取付ボルト孔部の中心までのピッチが全て等しくなる。このため、前記ピッチを建物の最小モジュールに対応させておくことで、定規アングルや耐力壁或いは束等の構造部材を取り付ける位置の自由度を向上させることが出来る。
【0010】
【実施例】
以下、上記梁の接続構造の実施例について図を用いて説明する。図1は本実施例に係る接続構造によって接続した梁の平面図、図2は梁の端部を接続する構造を説明する斜視図、図3は図2の平断面図、図4は梁に構造部材としての柱を取り付ける場合を説明する図、図5は梁に束材を取り付ける場合を説明する図、図6は梁に耐力壁を取り付ける場合を説明する図、図7は梁に壁取付用の定規アングルを取り付ける場合を説明する図である。
【0011】
本発明に係る梁の接続構造について図1〜図3により説明する。この接続構造は、H形鋼からなり上下フランジ1a,1bに柱や束材等の構造部材を取り付ける取付ボルト孔部2を一定のピッチpで設けた複数の型鋼からなる梁1を、直交方向に4つの接続片3cを設けると共に上下フランジ3a,3bに取付ボルト孔部2と同一の取付ボルト孔部4を有する接続金具3によって接続したとき、該接続金具3の接続中心3dから、梁1の最も端部に近い取付ボルト孔部2の振り分け中心2bまでの距離が上下フランジ1a,1bに設けた取付ボルト孔部2のピッチpと同一となるように設定したものである。
【0012】
即ち、1階層分の床或いは天井を構成する全ての梁1を接続金具3を介して接続したとき、該接続金具3の有無に関わらず上フランジ1a及び下フランジ1bに設けた取付ボルト孔部2が全て同一ピッチpで配置される。従って、前記ピッチpを最小モジュールに対応させた場合には、梁1に取り付けるべき構造部材の位置を最小モジュールに対応させて選択することが可能となり、建物の間取りや開口部の位置を選択する際の自由度を向上させることが可能となる。
【0013】
梁1は予め設定された寸法を有するH形鋼からなり、上フランジ1a及び下フランジ1bには複数の取付ボルト孔部2が設けられている。この取付ボルト孔部2は複数のボルト孔(本実施例では4つのボルト孔)2aを有しており、隣接する取付ボルト孔部2の梁1の長手方向に於けるボルト孔2aの振り分け中心2bどうしの間隔が予め設定されたピッチp(最小モジュール)を持って形成されている。
【0014】
梁1の両端部側に配置された取付ボルト孔部2の振り分け中心2bから梁1の端部1cまでの距離は、接続金具3の上下フランジ3a,3bの寸法と梁1を接続金具3に接続したときに両者の間に形成される間隙の寸法を想定して設定されている。即ち、振り分け中心2bから端部1cまでの距離は、梁1を接続金具3に接続したとき、該接続金具3の接続中心3dから振り分け中心2bまでの距離が取付ボルト孔部2のピッチpと等しくなるように設定されている。
【0015】
接続金具3は、梁1の上下フランジ1a,1bの幅寸法と等しい寸法を持った上下フランジ3a,3bと、梁1の高さと等しい高さを有し且つ直交して梁1の接続方向に配置された4つの接続片3cとを有して構成されており、前記接続片3cの板厚方向の中心線が接続中心3dとして形成されている。
【0016】
上下フランジ3a,3bには、梁1の上下フランジ1a,1bに設けた取付ボルト孔部2と同一の構造部材取付用の取付ボルト孔部4が形成されている。即ち、取付ボルト孔部4は4つのボルト孔4aが接続中心3dを振り分け中心として配置されており、この振り分け寸法は、梁1に設けた取付ボルト孔部2に於けるボルト孔2aの振り分け寸法と一致している。また接続金具3の接続片3cには梁1を接続する際に利用されるボルト孔5が形成されている。
【0017】
梁1の両端部1cであってウエブ1dの一方の面には長さの異なる2つの片6a,6bからなる不等辺アングル状の連結金具6が溶接等の手段で固着されている。連結金具6の片6bには対向する接続金具3の接続片3cに形成されたボルト孔5と等しいボルト孔5が形成され、また片6aにはナット7bが嵌入する孔8が形成されている。
【0018】
上記の如く構成された接続金具3を介して複数の梁1を接続する場合、梁1のウエブ1dを接続金具3の接続片3cに対向させると共に連結金具6の片6a,6bを夫々2つの接続片3cに当接させ、片6bと接続片3cのボルト孔5にボルト7aを挿通すると共にナット7bを螺合し、梁1のレベルを調整して両者を締結する。
【0019】
例えば図3に示すように、接続金具3に4本の梁1を接続したとき、隣接した梁1に取り付けられた連結金具6の片6bを締結するナット7bは、隣接する連結金具6の片6aに形成された孔8に嵌入し、他の梁1の接続金具3に対する接続に悪影響を与えることはない。
【0020】
上記の如くして接続された梁1に於いて、接続金具3の接続中心3dと梁1の最も端部側の取付ボルト孔部2の振り分け中心2bとの距離(ピッチp)は、梁1の端部1cから連結金具6の片6bまでの距離によって規定される。即ち、接続金具3と梁1の取り合い部分に於けるピッチpの精度は、梁1に対する連結金具6の取付精度に依存することとなる。然し、梁1に対する連結金具6の取付工程を工場段階で実施することで、前記精度を予め設定された公差範囲内の値に保障することは可能である。
【0021】
従って、接続金具3を介して複数の梁1を端部間で接続したとき、直線方向に配置された2本の梁、或いは直交方向に配置された2本の梁1の上下フランジ1a,1bに設けた取付ボルト孔部2のピッチpは全て等しくなる。即ち、1階層分の全ての梁1を接続金具3によって接続することで、梁1に沿って一定のピッチpで取付ボルト孔部2が連続的に形成される。このため、躯体を構成する構造部材の梁1に対する取付位置の自由度を向上させることが可能となる。
【0022】
例えば図4(a)に示すように、間取りの構造或いは開口部の設置位置に応じて1階の間柱10を2階の柱11の直下に配置することが出来ず、該間柱10を矢印方向に移動させて点線で示す位置に設置するような場合、取付ボルト孔部2のピッチpに対応させて移動することで、梁1の下フランジ1bに新たな取付ボルト孔部2を形成することなく、予め設けられている取付ボルト孔部2を利用することが可能である。
【0023】
また同図(b)に示すように、1階の間柱10のみならず2階の間柱10であっても、接続金具3の位置に関わらず取付ボルト孔部2のピッチpに対応させて移動させて所望の位置に設置することが可能である。即ち、構造部材となる間柱10の設置位置の選択の自由度を向上させることが可能である。
【0024】
図5は建物の屋根を構成する際に梁1に構造部材としての束材12a〜12dを取り付ける場合の説明図である。図に於いて、束材12a,12cは下階の柱11の上部に取り付けられ且つ束材12b,12dは下階に柱位置とは無関係に梁1に取り付けられている。このように梁1に束材12a〜12dを取り付けたとき、束材12a,12bの間隔及び束材12c,12dの間隔は梁1に設けた取付ボルト孔部2のピッチpの整数倍となる。
【0025】
従って、屋根を設計する際に、屋根を支持するに必要な束材の数を設定した後は、これらの束材を梁1に設けた取付ボルト孔部2のピッチpに対応させて配置することが可能であり、梁1に対する束材の取付位置の自由度を向上させることが可能である。
【0026】
図6は建物の躯体を構成する際に梁1に構造部材としての耐力壁13を取り付ける場合の説明図である。図に於いて、耐力壁13は躯体の隅部に配置され、交叉する2つの壁面を構成し得るように構成されている。この場合、中央の柱13aは接続金具3に取り付けられ、両側の柱13bは梁1に取り付けられる。
【0027】
上記の如く、接続金具3を挟んで2方向の梁1に渡る耐力壁13を取り付ける場合であっても、接続金具3に形成された取付ボルト孔部4を含む取付ボルト孔部2のピッチpが全て同一であるため、梁1又は接続金具3に対する新たな加工を必要とすることなく容易に取り付けることが可能である。
【0028】
図7は建物の躯体を構成する際に梁1に構造部材として壁取付用の定規アングル14を取り付ける場合の説明図である。図に於いて、定規アングル14は長尺のアングル材によって構成され、図示しないZ型金物を利用して壁パネルを取り付ける際の取付金物及び壁パネルの内面を規制する定規としての機能を有するものである。この定規アングル14には予め梁1に設けた取付ボルト孔部2の整数倍のピッチで複数のボルト孔14aが形成されている。
【0029】
上記の如く構成された定規アングル14を梁1に取り付ける場合であっても、該アングル14に形成されたボルト孔14aは接続金具3の有無の関わらず該接続金具3に形成された取付ボルト孔部4を含む梁1に設けた取付ボルト孔部2と一致する。従って、定規アングル14を切断することなく梁1に取り付けることが可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る梁の接続構造では、複数の型鋼からなる梁の端部間に方形の接続金具を介在させて梁を接続したとき、該接続金具に形成された4個のボルト孔を左右対称に設けた取付ボルト孔部の中心から梁の上下フランジに形成された個のボルト孔を左右対称に設けた取付ボルト孔部の中心までのピッチが全て等しくなる。このため、梁に取り付けるべき柱,間柱,束材或いは耐力壁等の構造部材の取付位置の選択の自由度が向上し、間取りや開口部の設置位置の自由度を向上させることが出来る。
【0031】
また定規アングル等の長尺状の構造部材を取り付ける場合、この構造部材に梁に設けた取付ボルト孔部のピッチの整数倍のピッチでボルト孔を形成しておくことで、該部材或いは梁に対する追加工を必要とせずに容易に且つ正確に取り付けることが出来る等の特徴を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る接続構造によって接続した梁の平面図である。
【図2】梁の端部を接続する構造を説明する斜視図である。
【図3】図2の平断面図である。
【図4】梁に構造部材としての柱を取り付ける場合を説明する図である。
【図5】梁に束材を取り付ける場合を説明する図である。
【図6】梁に耐力壁を取り付ける場合を説明する図である。
【図7】梁に壁取付用の定規アングルを取り付ける場合を説明する図である。
【符号の説明】
p ピッチ
1 梁
1a,1b,3a,3b フランジ
2,4 取付ボルト孔部
2a,4a,5 ボルト孔
2b 振り分け中心
3 接続金具
3c 接続片
3d 接続金具の中心
6 連結金具
6a,6b 片
7a ボルト
7b ナット
8 孔
10 間柱
11 柱
12a〜12d 束材
13 耐力壁
13a,13b 柱
14 定規アングル
14a ボルト孔

Claims (1)

  1. 上下フランジに夫々一定のピッチで構造部材用の4個のボルト孔を左右対称に配置した取付ボルト孔部が設けられた複数の型鋼からなる梁を、該梁の上下フランジの巾寸法と等しい寸法を持った方形の上下フランジを有し、かつ梁の高さと等しい高さを有し、さらに梁の前記取付ボルト孔部と同一の4個のボルト孔を左右対称に配置した取付ボルト孔部を有する接続金具を介して端部間で接続する梁の接続構造であって、前記梁の端部に最も近い取付ボルト孔部の中心から前記接続金具の取付ボルト孔部の中心までの長さが梁の上下フランジに設けた取付ボルト孔部の中心のピッチと同一であることを特徴とする梁の接続構造。
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