JP3545212B2 - セルロースアセテート複合仮撚加工糸及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維との複合仮撚加工糸、及び、その製造法に関する。さらに詳しくは、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を発揮できる、十分な糸集束性を呈した高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維との複合仮撚加工糸及び、その製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアセテート繊維においては、従来よりシルキースパン調の風合い付与といったニーズがあり、その一環としてセルロースアセテート繊維を複合した各種加工糸が多く検討されてきた。
【0003】
例えば、特公昭61−14253号においては、セルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維を引き揃えて仮撚加工を行い、続いて流体装置によりセルロースアセテート繊維に毛羽とループを発生させるとともに糸全体に交絡を与えた加工糸が提案されているが、嵩高で紡績糸様の風合いではあるものの、毛羽やループの存在により光沢感が低下するため、シルキー風合いを有するものではない。
【0004】
また、特開昭59−223336号において、過供給下でエアー攪乱流処理と間歇エアー旋回流処理を行い、糸長手方向に嵩高光沢部分と原糸状光沢を有する低嵩高部分とがランダムな間隔で存在する加工糸が提案されている。しかしながら、かかる方法はシルキースパン調の風合いは得られるものの、旋回流処理時のエアーを間歇噴射させる装置が必要となり、少なからずコストアップは避けられない。
【0005】
特公昭62−11093号では、セルロースアセテート繊維と他の繊維を引き揃えて超過供給下で攪乱流体処理することでループ及び交絡集束を生ぜしめ、次いで同一超過供給域においてエアー仮撚法にて未解撚仮撚加工する方法が知られている。しかし、かかる方法はスパンライクな風合いは得られるもののセルロースアセテート繊維の強度低下を引き起こしやすく、後工程で加工糸のズッコケが発生しやすいとともに、毛羽やループの存在のためにシルキー風合いに劣るというには問題がある。
【0006】
そこで、他の繊維を仮撚加工した後にセルロースアセテート繊維と合糸してエアー交絡処理を施し、仮撚加工糸独特のフクラミ感とセルロースアセテート繊維自身のシルキー感を複合化する検討が為されているが、一般に仮撚加工糸とセルロースアセテートフィラメント糸との交絡処理は難しく、糸集束性が不十分となり製編織等の後工程で糸切れ等の問題を起こしやすい。また、強力なエアー交絡処理を施すことで交絡部を形成することも可能であるが、同時に毛羽やループが形成されて光沢感の低下を引き起こす。
【0007】
また、一般に各種エアー加工や各種仮撚加工が施された加工糸はフクラミ感、ソフトなタッチは得られるものの、フカツキ感が大きくなることから、テキスタイルとしたときに風合いが悪くなるとともに仕立て映えが低下する。従って、各種エアー加工や各種仮撚加工を施した加工糸に追撚工程を付加することでフカツキ感の抑制を行っているが、撚糸効果によりフクラミ感は低下し、且つ、撚糸工程の追加によるコストアップは避けられない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点がなく、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を発揮できる、十分な糸集束性を呈した新規なセルロースアセテート複合仮撚加工糸及びその製造法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、高比重化したセルロースアセテート繊維を用いて、エアー交絡処理並びに仮撚捲縮加工の条件を適正化して糸集束性をコントロールし、仮撚捲縮を付与をすることで、前記課題を解決できることを見いだして本発明に到達した。
即ち、本発明の第1の要旨は、屈折率が1.3〜1.9であり、比重が3.5g/cm3以上の微粒子無機物を5〜30重量%含有してなる高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維との複合仮撚加工糸であって、集束性を維持し、且つ、下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロースアセテート複合仮撚加工糸である。
40≦Wf≦75 ・・(1)
In≦10 ・・(2)
F≦5 ・・(3)
ここで、Wfは高比重セルロースアセテート繊維の複合比率、Inは加工糸中の交絡部数、Fは毛羽及び/又はループ数。
本発明においては、高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維が実質的に分離する部分を有しないことが好ましい。
【0010】
また、本発明に用いる高比重セルロースアセテート繊維は、その繊維に含有される微粒子無機物が、その凝集体としての平均粒径が1.5μm以下であること、凝集体を形成する微粒子無機物の平均一次粒径が、0.5μm以下であること、微粒子無機物が硫酸バリウムであること、摩擦係数が0.45〜0.60であることが好ましい。
さらに、本発明に用いる他の繊維としては、ポリエステル繊維が好ましく用いられる。
【0011】
本発明の第2の要旨は、屈折率が1.3〜1.9であり、比重が3.5g/cm3以上の微粒子無機物を5〜30重量%含有してなる高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維とを引き揃えて過供給下でエアー交絡処理を施して交絡数20ヶ/m〜50ヶ/mの範囲に交絡集束させ、引き続いて仮撚数1.0×104/D1/2以上2.9×104/D1/2以下(但し、Dは複合糸の繊度(dTex))の条件で仮撚加工をすることを特徴とするセルロースアセテート複合仮撚加工糸の製造法にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のセルロースアセテート複合仮撚加工糸で用いられる高比重セルロースアセテート繊維は、酢化度53〜57%のセルロースジアセテート糸又は酢化度60〜62%のセルローストリアセテート糸のいずれも使用することが可能である。
【0013】
また、高比重セルロースアセテート繊維と複合される他の繊維としては、熱可塑性合成繊維及び再生繊維を用いることができ、例えば熱可塑性合成繊維ではポリエステル系合成繊維、アクリル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維であり、再生繊維ではレーヨン等を使用することが可能である。
本発明で用いる高比重セルロースアセテート繊維は、屈折率が1.3〜1.9であり、比重が3.5g/cm3以上の微粒子無機物を5〜30重量%含有してなる高比重セルロースアセテート繊維であることが重要である。
【0014】
繊維内に含有する微粒子無機物の比重は3.5g/cm3以上であり、微粒子無機物の比重が高比重でない場合には、繊維物性の低下のない範囲では高比重化が達成できず、満足すべきオチ感を得ることが困難となる。
【0015】
また、用いる微粒子状無機物の屈折率は、セルロースアセテート繊維の屈折率に近いものであり、屈折率が1.3〜1.9の範囲外では、セルロースアセテート繊維の特徴である光沢感、発色性の良さ等を損ねる。かかる無機物としては、具体的には、例えば、炭酸バリウム(屈折率1.53、比重4.4)、硫酸バリウム(屈折率1.64、比重4.1)、酸化亜鉛(屈折率1.9、比重5.6)等が挙げられる。特に硫酸バリウムは、高比重化及び光沢感、さらに、人体への影響(化学的・物理的安定性)等の面でも非常に好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、繊維中へ含有せしめる微粒子無機物の凝集体(集合体)の大きさにより、繊維の物性に差が表れ、紡糸性、後工程通過性等に影響を及ぼすことが判明した。即ち、含有せしめる微粒子無機物の凝集体としての平均粒径が1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは凝集体としての平均粒径1μm以下体である。これより大きいと繊維物性の低下が著しく、紡糸性、後工程通過性等が非常に悪くなる。
【0017】
凝集体としての平均粒径が1.5μm以下にするためには、添加する微粒子無機物の一次粒径(平均粒径)が0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μmである。これより大きいと繊維物性が極端に悪くなり易い、また、繊維形成上、例えば紡糸工程での糸切れ等のトラブルが多発したりする。
【0018】
凝集体の平均粒径が大きくならないように、紡糸原液を調製する必要があり、凝集体の平均粒径を調製する方法として、分散機を用いて行うことが好ましい。例えば、分散機として横型サンドミルを用いる場合、ディスク周速、ビーズ径(0.8〜1.0mmφ)、ビーズ充填率、ベッセル内部での滞在時間などを適宜調整することによって、凝集体の平均粒径が大きくならないようにすることができる。
【0019】
繊維中への微粒子無機物の含有量は5〜30重量%であり、5重量%(繊維の比重1.37g/cm3)未満では、高比重化が達成されず、本発明のセルロースアセテート複合仮撚加工糸に満足すべきオチ感を得ることができない。また、30重量%(繊維の比重1.66g/cm3)を越えると、高比重セルロースアセテート繊維自体の強度及び伸度の低下が著しくなり、本発明におけるエアー交絡処理並びに仮撚加工で糸切れ等が発生しやすくなり、実用上問題となる。
【0020】
本発明で用いる高比重セルロースアセテート繊維の摩擦係数は、0.45〜0.60の範囲にあり、糸加工工程、整経及び製織などの後工程での糸欠点(毛羽)、糸切れなどの原因となるガイド類との接触負荷が軽減され、工程通過性がよくなる。
【0021】
本発明のセルロースアセテート複合仮撚加工糸は、高比重セルロースアセテート繊維の複合比率が40重量%〜75重量%、好ましくは50重量%〜65重量%である。該複合比率が40重量%未満では、相対的に複合比率が大きくなる他の繊維(熱可塑性合成繊維或いは再生繊維)の風合いが強調されて、セルロースアセテート繊維独特のドライ感が損なわれ、目的の風合いが得られ難くなる。また、該複合比率が75重量%を越えると、高比重セルロースアセテート繊維自体の強度が元々低く、風合い複合の目的とともに強度等の補完の役割を有する熱可塑性合成繊維或いは再生繊維の相対的な複合比率が小さくなり、エアー交絡加工や仮撚加工により、加工糸の繊維物性が低下して、後工程通過性に問題が生じやすくなるとともに、その用途が限定されるものとなる。
【0022】
本発明のセルロースアセテート複合仮撚加工糸は、該加工糸中の交絡数が10ヶ/m以下、好ましくは1ヶ/m〜5ヶ/mである。交絡部が10ヶ/mを越えると3次元的な絡みが多くなるために糸が硬くなり、織編物としたときにソフト感が低下する。
【0023】
尚、交絡数の測定は次のようにして行う。すなわち、0.88CN/dTexの荷重で試長1mを準備し、糸条を水を張った容器に浮かべたとき、交絡のない部分は元の太さの数倍以上に開繊し、一方交絡部は開繊しないという性質を利用して交絡部の数を目で読みとる。
【0024】
高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維(熱可塑性合成繊維或いは再生繊維)が実質的に分離していないことが好ましい。実質的に分離していないことによって、製編織等の後工程通過性が良好になると共に、織編物としたときに製品欠点となるような光沢斑や染色斑の発生を防止することが可能となる。高比重セルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維或いは再生繊維が実質的に分離しないとは、適当な長さの加工糸の両端を保持して弛ませた状態で、高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維が分離することなく、両繊維が混然一体化して区別できない状態のことを意味する。
【0025】
更に本発明のセルロースアセテート複合仮撚加工糸は、毛羽及び/又はループが5ヶ/cm以下、好ましくは、1〜5ヶ/cmであることが重要である。このことによって、適度な光沢感を発現することが可能となる。毛羽及び/又はループが5ヶ/cmを越えると、加工糸表面の光の乱反射により、加工糸の光沢感が大きく低下し、目的のシルキー感が得られない。
【0026】
次に本発明のセルロースアセテート特殊捲縮加工糸の製造法について説明する。
本発明では、仮撚捲縮加工を施す前に高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維(熱可塑性合成繊維或いは再生繊維)を引き揃えて過供給下でエアー交絡処理を施して交絡数20ヶ/m〜50ヶ/mの範囲に交絡集束させることが重要である。仮撚捲縮加工を施す前に適度な交絡集束を行うことで、高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維とが混繊される結果、仮撚時における引張り応力が高比重セルロースアセテート繊維に集中することが回避されることで毛羽、ループの発生が押さえられると同時に得られた仮撚複合糸のフィラメンテーションが生じにくくなる。更に説明すれば仮撚加工前の交絡数は高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維との混繊度合いの指標であり、仮撚後の複合糸の状態が交絡数ゼロであっても、交絡処理をしないものと比して集束性が大幅に向上する。
交絡数が20ヶ/m未満では仮撚捲縮加工後の糸集束性が低下し、後工程時に糸切れや製品欠点等の問題を引き起こしやすくなる。一方、交絡数が50ヶ/mを越えると仮撚捲縮加工前に糸の光沢低下がおきるとともに、仮撚捲縮加工後においても交絡部の残存が多くなるために織編物としたときの風合いが硬くなる。
【0027】
更に本発明では、攪乱エアー流体処理後に行う仮撚捲縮加工において、仮撚数1.0×104/D1/2〜2.9×104/D1/2、更に好ましくは仮撚数1.4×104/D1/2〜2.5×104/D1/2の条件で行うことが目的の風合いを得るために重要である。仮撚数が1.0×104/D1/2未満では十分な仮撚捲縮が得られず、適度なフクラミ感が得難くなる。一方、仮撚係数が2.9×104/D1/2以上では過度の仮撚捲縮のために加工糸の光沢が大きく低下してしまう。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例にて具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例によって特に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
平均酢化度61.3%のセルロースアセテートを塩化メチレンとメタノールの混合溶剤に溶解し、濃度21.9重量%のセルロースアセテート溶液を調整した。一方、硫酸バリウム(屈折率1.64、比重4.1)を別途塩化メチレンとメタノールの混合溶剤に均一に分散させた硫酸バリウム分散液を調整した。繊維全体の固形分に対して、硫酸バリウムが18.5重量%になるように前記のセルロースアセテート溶液と硫酸バリウム分散液を混合攪拌して高比重セルロースアセテート繊維用紡糸原液を作製した。
この紡糸原液を用いて、紡糸速度500m/分で乾式紡糸し、150dTex/33fの高比重セルロースアセテート繊維(比重1.51)を得た。
また、別途常法に従って、通常セルロースアセテート繊維用紡糸原液を作製し、紡糸速度500m/分で乾式紡糸し、前述で得られた高比重セルロースアセテート繊維と糸断面積がほぼ同等になるように繊度を設定して、135dTex/33fの通常セルロースアセテート繊維(比重1.32)を得た。
次いで、得られた高比重セルロースアセテート繊維及びポリエステル繊維(56dTex/24f)を用い、図1の工程に従ってエアー交絡加工と仮撚捲縮加工を連続して行った。この際の加工条件を表1に示す。ここで、仮撚加工機として三菱重工(株)製LS―6を用いた。
このとき、エアー交絡加工後の複合糸の交絡数は32ヶ/mであり、また仮撚捲縮加工後の加工糸は交絡数が3ヶ/mでセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が実質的に分離することなく十分な糸集束性を呈し、且つ、毛羽及び/又はループが1ヶ/cm未満であり、得られた捲縮加工糸を筒編地をして沸水リラックスしたものをハンドリングにより風合い評価した結果、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を有するものであった。
一方、比較例1は、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及びセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を有するものであったが、オチ感が不十分なものであった。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施例2〜3、比較例2〜3)
実施例1の条件のうち、高比重セルロースアセテート繊維の複合比率を複合するポリエステル繊維の繊度を変更することで変えて加工を行った。その結果を表2に示す。
実施例2及び実施例3では、高比重セルロースアセテート繊維を適正な複合比率に設定することで、仮撚後もセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が実質的に分離することなく、且つ毛羽及び/又はループが5ヶ/cm以下であり、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を有するものが得られた。
一方、比較例2では、複合糸の繊維物性低下に伴う毛羽の発生により光沢感が低下するとともに、後工程での糸切れ等が発生した。
さらに比較例3ではポリエステル繊維の風合いが強調されて、セルロースアセテート繊維独特のドライ感が低下したものが得られた。
【0032】
【表2】
【0033】
(実施例4〜5、比較例4〜6)
実施例1の条件のうち、エアー交絡加工処理後の複合糸の交絡数をエアー圧力を変更することで変えて加工を行った。その結果を表3に示す。
実施例4では、エアー交絡加工後の交絡数を20ヶ/mと適正な糸集束状態とすることで、仮撚加工後の交絡数は0ヶ/mとなるものの、仮撚後もセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が実質的に分離することなく、且つ毛羽及び/又はループが5ヶ/cm未満であり、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を有するものが得られた。
また、実施例5においてもエアー交絡加工後の交絡数を50ヶ/mと適正な糸集束状態とすることで、仮撚加工後の交絡数が10ヶ/mと適度に糸集束されているために、仮撚加工後もセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が実質的に分離することなく十分な糸集束性を呈し、且つ、毛羽及び/又はループが5個/cm以下であり、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を有するものが得られた。
一方、比較例4ではエアー交絡加工後の交絡数を0ヶ/m、即ちセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が引き揃えられた状態で仮撚加工を施すために、仮撚加工後も両繊維は分離し易い状態であり、製編織工程等の糸切れが発生し易いと共に、織編物に光沢斑や染色斑が発生した。
また、比較例5においても仮撚加工前の糸集束性が不十分であり、比較例1同様に仮撚加工後にセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が分離した部分が多く形成され、製編織工程等の糸切れが発生し易いと共に、織編物に光沢斑や染色斑が発生した。
更に、比較例6では仮撚加工前の交絡数が多く、従って仮撚加工後の交絡数が過度となり、フクラミ感、ソフト感が低下したものが得られた。
【0034】
【表3】
【0035】
(実施例6〜7、比較例7〜8)
実施例1の条件のうち、仮撚スピンドル回転数を変更することで仮撚数を変えて加工を行った。その結果を表4に示す。
実施例6及び実施例7では、適正な仮撚数を設定することで、仮撚後もセルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維が実質的に分離することなく、且つ毛羽及び/又はループが5ヶ/cm以下であり、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を有するものが得られた。
一方、比較例7では、仮撚捲縮の低下に起因してフクラミ感が不十分なものが得られた。
さらに比較例8では仮撚数が過剰なために毛羽が発生して光沢感が低下したものが得られた。
【0036】
【表4】
【0037】
【発明の効果】
本発明は、エアー交絡加工により高比重セルロースアセテート繊維と熱可塑性合成繊維或いは再生繊維を適正に交絡集束させ、次いで仮撚捲縮加工条件を適正化することで、従来の加工糸では困難であった適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度なオチ感、並びにセルロースアセテート繊維独特のドライ感と適度な光沢感を発揮できる、十分な糸集束性を呈した新規なセルロースアセテート複合仮撚加工糸を提供することを可能としたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加工糸の一実施態様を示す外観図である。
【符号の説明】
1 セルロースアセテート繊維
2 ポリエステル繊維
3 第一フィードローラー
4 エアー交絡ノズル
5 第二フィードローラー
6 第一ヒーター
7 仮撚治具
8 第一デリベリローラー
9 第二ヒーター
10 第二デリベリローラー
11 ワインダー
Claims (8)
- 屈折率が1.3〜1.9であり、比重が3.5g/cm3以上の微粒子無機物を5〜30重量%含有してなる高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維との複合仮撚加工糸であって、集束性を維持し、且つ、下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
40≦Wf≦75 ・・(1)
In≦10 ・・(2)
F≦5 ・・(3)
ここで、Wf(重量%)は高比重セルロースアセテート繊維の複合比率、In(ケ/m)は加工糸中の交絡部数、F(ケ/cm)は毛羽及び/又はループ数。 - 高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維が実質的に分離する部分を有しない請求項1記載のセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
- 高比重セルロースアセテート繊維に含有される微粒子無機物が、その凝集体としての平均粒径が1.5μm以下である請求項1又は請求項2記載のセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
- 凝集体を形成する微粒子無機物の平均一次粒径が、0.5μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
- 微粒子無機物が硫酸バリウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
- 高比重セルロースアセテート繊維の摩擦係数が0.45〜0.60である請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
- 他の繊維がポリエステル繊維である請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアセテート複合仮撚加工糸。
- 屈折率が1.3〜1.9であり、比重が3.5g/cm3以上の微粒子無機物を5〜30重量%含有してなる高比重セルロースアセテート繊維と他の繊維とを引き揃えて過供給下でエアー交絡処理を施して交絡数20ヶ/m〜50ヶ/mの範囲に交絡集束させ、引き続いて仮撚数1.0×104/D1/2 (T/M)以上2.9×104/D1/2 (T/M)以下(但し、Dは複合糸の繊度(dTex))の条件で仮撚加工をすることを特徴とするセルロースアセテート複合仮撚加工糸の製造法。
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