JP3544857B2 - 電動機鉄心 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを有する電動機鉄心に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばアウタロータ形DCブラシレスモータには、環状鋼板を積層することに基づいてステータコアが形成されたものがある。この構成の場合、環状鋼板を打抜く際の材料取りの面積が大きくなるので、廃材量が増える。そこで、複数の帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいてステータコアを形成することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の場合、帯状鋼板にスリットを形成し、帯状鋼板をスリットを潰すようにして曲げ加工している。しかしながら、帯状鋼板の曲げ時に応力が集中し、帯状鋼板が応力の集中部分を中心にいびつな形状に曲がってしまい、曲げコアの寸法精度が悪化する虞れがあった。また、帯状鋼板の打抜き時にスリットの内面に生じるばりが邪魔になり、スリットの変形量が設計値に至らず、曲げコアの寸法精度が悪化する虞れがあった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げコアを寸法精度良く形成できる電動機鉄心を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、前記帯状鋼板に前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口する長尺な第1のスリットと、第1のスリットと同方向に開口する短尺な第2のスリットとが形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の打抜き時に生じるばりの影響で長尺な第1のスリットの変形量が設計値に至らないことがあっても、短尺な第2のスリットが変形するので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0006】
請求項2記載の電動機鉄心は、第2のスリットの長さ寸法が帯状鋼板の短手方向の幅寸法の1/3以下に設定されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、磁気回路を形成する上で第2のスリットが抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0007】
請求項3記載の電動機鉄心は、第2のスリットが第1のスリットの両側に形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、両側に位置する第2のスリットが略均等に変形するので、曲げコアの寸法精度が一層再現され易くなる。
【0008】
請求項4記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、一端部が前記帯状鋼板の略長手方向へ延び且つ他端部が前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが前記帯状鋼板に形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の設計上の曲げ支点と実際の曲げ部とがずれるので、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散して作用する。このため、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0009】
請求項5記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが前記帯状鋼板に形成され、前記スリットの対向する両内面に同一形状の円弧部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の曲げが進むに連れて応力の集中部分が移動するので、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散して作用する。このため、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0010】
請求項6記載の電動機鉄心は、各円弧部が一方向へ膨らむ第1の円弧部と、第1の円弧部と反対方向へ膨らむ第2の円弧部とを備えているところに特徴を有している。
上記手段によれば、スリットの両内面間の接触面積が増え、スリットが磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0011】
請求項7記載の電動機鉄心は、スリットの対向する両内面に直状部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の打抜き時にばりや寸法誤差等が生じたときには、直状部間に隙間が形成され、ばりや寸法誤差等が吸収される。このため、円弧部間が密着状態で接触し易くなるので、磁気的な抵抗が少なくなり、回転特性の悪化が抑えられる。
【0012】
請求項8記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが前記帯状鋼板に形成され、前記スリットの一方の内面に案内突部が形成され、前記スリットの他方の内面に前記案内突部が係合する案内溝部が形成され、前記案内突部のうち前記帯状鋼板の長手方向に沿う両面および前記案内溝部のうち前記案内突部の両面に係合する両内面に同一形状の円弧部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の曲げが案内突部の円弧部および案内溝部の円弧部により案内され、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形状できる。
【0013】
請求項9記載の電動機鉄心は、スリットの一方の内面に係合突部が形成され、スリットの他方の内面に係合突部が係合する係合溝部が形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、係合突部および係合溝部間が係合し、スリットの両内面が機械的な連結状態に保持されるので、曲げコアの機械的な強度が向上する。これと共に、スリットの両内面が磁気的な連結状態に保持されるので、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
【0014】
請求項10記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて曲げコアが形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板を曲げ加工した後に積層する場合とは異なり、各帯状鋼板の曲げ加工精度のばらつきで、曲げコアの寸法精度が悪化することが防止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図3に基づいて説明する。尚、本実施例は、洗濯機の洗濯槽および撹拌体を回転駆動するアウタロータ形3相DCブラシレスモータのステータコアに本発明を適用したものである。まず、図1の(a)において、帯状コア1は、複数の帯状鋼板(図示せず)を積層して加圧カシメすることから構成されたものであり、18個の単位コア2を幅狭な繋ぎ桟3を介して連結した形態をなしている。これら各単位コア2は、単位ヨーク2aおよびT字状のティース2bを有するものであり、各単位ヨーク2aの長手方向の両面は、図1の(b)に示すように、寸法がR1 およびR2 の円弧状に形成されている。尚、軸方向各端面に位置する帯状鋼板には、図1の(a)に示すように、各ティース2bの先端部に位置して切欠部1bが形成されている。
【0016】
帯状コア1には、図1の(b)に示すように、単位コア2間に位置して第1のスリット4が形成されている。これら各スリット4は、帯状コア1の長手方向の一面に開口する扇形部4aと、扇形部4aの基端部に位置する円形部4bとを有するものであり、各扇形部4aの開口角度θは、繋ぎ桟3の支点1cを中心に「(360°/36極)=10°」に設定されている。尚、第1のスリット4は、帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0017】
帯状コア1には、第1のスリット4の両側に位置して第2のスリット5,5が形成されている。これら各スリット5は、第1のスリット4と同一方向へ開口する直状をなすものであり、各スリット5の長さ寸法は、単位ヨーク2aの短手方向の幅寸法の「1/3」以下に設定されている。尚、第2のスリット5は、帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0018】
帯状コア1は、図1の(c)に示すように、各繋ぎ桟3の支点1cを中心に曲げ加工され、各第1のスリット4は、扇形部4aの内面相互間が密着状態に接触している。図2の(a)は、帯状コア1,1を曲げ加工することに基づいて形成された半円環状の曲げコア6,6を示すものであり、両曲げコア6は端面相互間が溶接され、円環状のステータコア7を形成している。尚、符号1dは曲げコア6の溶接部を示している。
【0019】
ステータコア7には、図3の(b)に示すように、軸方向両側から合成樹脂製の絶縁カバー8,8が被せられている。これら両絶縁カバー8は、図3の(a)および(b)に示すように、ステータコア7のうち各ティース2bの外周面を除く表面全体を覆うものであり、各ティース2bには、両絶縁カバー8の上からコイル9が巻装されている。
【0020】
上方の絶縁カバー8には、図3の(a)に示すように、複数の取付片8aが一体形成されている。これら各取付片8aには、図3の(b)に示すように、貫通孔8bが形成されており、各貫通孔8b内には、下方からボルト(図示せず)が挿入されている。そして、ステータコア7は、複数のボルトを洗濯機のベース(図示せず)に締結することに伴い、洗濯機に組付けられている。
【0021】
上記実施例によれば、板材から帯状鋼板を打抜いた。このため、材料取りの面積が小さくなるので、廃材量が減り、材料費が低減される。また、帯状コア1に長尺な第1のスリット4および短尺な第2のスリット5を形成した。このため、帯状鋼板の打抜き時に第1のスリット4の内面に生じるばりが邪魔になり、第1のスリット4の変形量が設計値に至らないことがあっても、図1の(c)に示すように、第2のスリット5が変形するので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0022】
また、第1のスリット4の近傍に第2のスリット5を形成した。このため、帯状コア1の曲げ加工時に第2のスリット5が変形し易くなるので、曲げコア6の寸法R1 およびR2 が再現され易くなる。しかも、第1のスリット4の両側に第2のスリット5を形成した。このため、両側に位置する第2のスリット5が略均等に変形するので、この点からも、曲げコア6の寸法R1 およびRr2 が再現され易くなる。
【0023】
また、第2のスリット5の長さ寸法を帯状コア1の短手方向の幅寸法の「1/3」以下に設定した。このため、磁気回路を形成する上で第2のスリット5が抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が極力抑えられる。
【0024】
また、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて曲げコア6を形成した。このため、帯状鋼板を曲げ加工した後に積層する場合とは異なり、各帯状鋼板の曲げ加工精度のばらつきで、曲げコア6の寸法精度が悪化することが防止される。
【0025】
尚、上記第1実施例においては、第1のスリット4の両側に第2のスリット5を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1のスリット4の一方側のみに第2のスリット5を形成しても良い。
また、上記第1実施例においては、第1のスリット4の近傍に第2のスリット5を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1のスリット4から離間するティース2bの延長部分等に第2のスリット5を形成しても良い。
また、上記第1実施例においては、第1のスリット4の開口角度θを10°に設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、ばりの影響を考慮して10°より若干大きく設定しても良い。
【0026】
次に本発明の第2実施例を図4に基づいて説明する。尚、上記第1実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、以下、異なる部材についてのみ説明を行う。まず、図4の(a)において、帯状コア1には、単位コア2間に位置してスリット10が形成されている。これら各スリット10は、帯状コア1の長手方向の一面に開口する本体部10aと、本体部10aの基端部に位置する円形部10bとを有するものであり、各本体部10aの基端部は帯状コア1の略長手方向へ延びている。
【0027】
各本体部10aの対向する両内面には第1の円弧部10cおよび10dが形成されている。これら各組の円弧部10cおよび10dは寸法R3 およびR4 が等しく設定されたものであり、開口角度θが支点1eを中心に「(360°/36極)=10°」に設定されている。
【0028】
各本体部10aの対向する両内面には、第1の円弧部10cおよび10dと反対方向へ膨らむ第2の円弧部10eおよび10fが形成されており、各半円部10aの対向する両内面は巴形状をなしている。これら各組の円弧部10eおよび10fは寸法R5 およびR6 が等しく設定されたものであり、帯状コア1の曲げ加工時には、帯状コア1が幅狭な繋ぎ桟3を中心に曲げられ、図4の(b)に示すように、各組の第1の円弧部10cおよび10dが密着状態に接触し、各組の第2の円弧部10eおよび10fが密着状態に接触する。尚、符号11aは第1の円弧部10cおよび第2の円弧部10eから構成される巴形の円弧部、符号11bは第1の円弧部10dおよび第2の円弧部10fから構成される巴形の円弧部を示している。
【0029】
各スリット10の一方の内面には、図4の(a)に示すように、爪部10gが形成されている。これら各爪部10gは係合突部に相当するものであり、帯状コア1に切欠部1fを設けることに基づいて形成されている。そして、各スリット10の他方の内面には係合溝部10hが形成されており、帯状コア1の曲げ加工時には、図4の(b)に示すように、各爪部10gおよび係合溝部10h間が係合する。尚、スリット10,爪部10g,係合溝部10hは帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0030】
上記実施例によれば、スリット10の本体部10aの基端部を帯状コア1の略長手方向へ延ばした。このため、帯状コア1の設計上の曲げ支点1eと幅狭な実際の曲げ部(支点1c付近)とがずれるので、帯状コア1に曲げ加工時の応力が分散して作用する。従って、繋ぎ桟3が滑らかに伸ばされて円弧状に曲がるので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0031】
また、スリット10の対向する両内面に同一形状の円弧部11aおよび11bを設けた。このため、帯状コア1の曲げが進行するのに伴って応力の集中部分が移動し、帯状コア1に曲げ加工時の応力が分散して作用する。従って、繋ぎ桟3が滑らかに伸ばされて円弧状に曲がるので、この点からも、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。これと共に、スリット10の両内面間の接触面積が増え、スリット10が磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0032】
また、スリット10の両内面に爪部10gおよび係合溝部10hを設け、爪部10gおよび係合溝部10h間を係合させた。このため、スリット10の両内面が機械的な連結状態に保持されるので、曲げコア6の機械的な強度が向上する。これと共に、スリット10の両内面が磁気的な連結状態に保持されるので、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
【0033】
また、一方の円弧部11aを第1の円弧部10cおよび第2の円弧部10eからなる巴形に形成し、他方の円弧部11bを第1の円弧部10dおよび第2の円弧部10fからなる巴形に形成した。このため、スリット10の両内面間の接触面積が一層増え、スリット10が磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が一層抑えられる。
【0034】
次に本発明の第3実施例を図5に基づいて説明する。尚、上記第2実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、以下、異なる部材についてのみ説明を行う。まず、図5の(a)において、各スリット10の両内面には、円形部10b側に位置して第1の直状部10iおよび10jが形成されており、各組の直状部10iおよび10jは帯状コア1の長手方向に延びている。これら各組の直状部10iおよび10j間の開口角度θは支点1eを中心に「(360°/36極)=10°」に設定されており、帯状コア1の曲げ加工時には、帯状コア1が幅狭な繋ぎ桟3を中心に曲げられ、図5の(b)に示すように、各組の直状部10iおよび10jが密着状態で接触する。
【0035】
各スリット10の両内面には、図5の(a)に示すように、第2の直状部10kおよび10lが形成されている。これら各組の直状部10kおよび10l間の開口角度θは「(360°/36極)=10°」に設定されており、帯状コア1の曲げ加工時には、各組の直状部10kおよび10l間が密着状態で接触する。尚、直状部10i〜10lは帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0036】
上記実施例によれば、スリット10の基端部(第1の直状部10iおよび10j)を帯状コア1の長手方向へ延ばした。このため、帯状コア1の設計上の曲げ支点1eと幅狭な実際の曲げ部(支点1c付近)とがずれるので、帯状コア1に曲げ加工時の応力が分散して作用する。従って、繋ぎ桟3が滑らかに伸ばされて円弧状に曲がるので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0037】
また、スリット10の対向する両内面に第2の直状部10kおよび10lを設けた。このため、帯状鋼板の打抜き時にばりや寸法誤差等が生じたときには、図5の(b)に示すように、第2の直状部10kおよび10l間に隙間が形成され、ばりや寸法誤差等が吸収される。このため、円弧部10cおよび10d間が密着状態で接触し易くなるので、磁気的な抵抗が少なくなり、回転特性の悪化が抑えられる。
【0038】
尚、上記第3実施例においては、第2の直状部10kおよび10lの開口角度θを両者が密着状態で接触する「10°」に設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、「10°」より若干大きく設定し、両者の間に隙間を形成しても良い。
【0039】
次に本発明の第4実施例を図6に基づいて説明する。尚、上記第1実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、以下、異なる部材についてのみ説明を行う。まず、図6の(a)において、各スリット4の一方の内面には3個の案内突部12が形成されており、各案内突部12のうち帯状コア1の長手方向に沿う両面には曲げ支点1cを中心とする円弧部12aが形成され、各案内突部12のうち帯状コア1の短手方向に沿う先端面は直状に形成されている。尚、符号R7 は、下段に位置する円弧部12aの寸法を示している。
【0040】
各スリット4の他方の内面には3個の案内溝部13が形成されており、各案内溝部13のうち帯状コア1の短手方向に沿う一内面は直状に形成され、各案内溝部13のうち帯状コア1の長手方向に沿う両内面には円弧部13aが形成されている。これら各円弧部13aは、帯状コア1の長手方向に対向する円弧部12aと同一形状をなしており、帯状コア1の曲げ加工時には、図6の(b)に示すように、各案内突部12が案内溝部13内に係合し、各案内突部12の円弧部12aが案内溝部13の円弧部13aに密着状態で接触する。
【0041】
各スリット4の一方の内面には、図6の(a)に示すように、爪部14が形成されている。これら各爪部14は係合突部に相当するものであり、帯状コア1に切欠部1fを設けることに基づいて形成されている。そして、各スリット4の他方の内面には係合溝部15が形成されており、帯状コア1の曲げ加工時には各爪部14が係合溝部15内に係合する。尚、案内突部12,案内溝部13,爪部14,係合溝部15は帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0042】
上記実施例によれば、スリット4の対向する両内面に案内突部12および案内溝部13を形成し、案内突部12のうち帯状コア1の長手方向に沿う両面および案内溝部13のうち帯状コア1の長手方向に沿う両面に曲げ支点1cを中心とする円弧部12aおよび13aを設けた。このため、帯状コア1の曲げが円弧部12aおよび13aにより案内され、繋ぎ桟3が支点1cを中心に滑らかな円弧状に曲がるようになるので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0043】
また、スリット4の両内面に爪部14および係合溝部15を設け、爪部14および係合溝部15間を係合させた。このため、スリット4の両内面が機械的な連結状態に保持されるので、曲げコア6の機械的な強度が向上する。これと共に、スリット4の両内面が磁気的な連結状態に保持されるので、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
【0044】
尚、上記第4実施例においては、スリット4の内面に複数の案内突部12および案内溝部13を形成したが、これに限定されるものではなく、要は、1個以上の案内突部12および案内溝部13が形成されていれば良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、ステータコア7に絶縁カバー8を被せたが、これに限定されるものではなく、例えば、ステータコア7を成形型内に収納して溶融樹脂を注入することに伴い、ステータコア7に樹脂層を形成しても良い。
【0045】
また、上記第1〜第4実施例においては、帯状コア1を半円環状に曲げ加工したが、これに限定されるものではなく、例えば半角環状に曲げ加工しても良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、半円環状をなす2つの帯状コア1を溶接する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、1つの帯状コア1を円環状に曲げ加工し、帯状コア1の両端部を溶接しても良い。
【0046】
また、上記第1〜第4実施例においては、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工したが、これに限定されるものではなく、例えば、曲げ加工した後に積層しても良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、本発明をステータコアに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばロータコアに適用しても良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、本発明をDCブラシレスモータに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばコンデンサ誘導モータに適用しても良い。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の電動機鉄心は次の効果を奏する。
請求項1記載の手段によれば、帯状鋼板に長尺な第1のスリットと短尺な第2のスリットとを形成した。このため、ばりの影響で長尺な第1のスリットの変形量が設計値に至らないことがあっても、短尺な第2のスリットが変形するので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
請求項2記載の手段によれば、第2のスリットの長さ寸法を帯状鋼板の短手方向の幅寸法の1/3以下に設定した。このため、第2のスリットが磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0048】
請求項3記載の手段によれば、第1のスリットの両側に第2のスリットを形成した。このため、第2のスリットが略均等に変形するので、曲げコアの寸法精度が一層再現され易くなる。
請求項4記載の手段によれば、スリットの一端部を帯状鋼板の略長手方向へ延ばした。このため、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散し、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0049】
請求項5記載の手段によれば、スリットの対向する両内面に同一形状の円弧部を設けた。このため、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散して作用し、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
請求項6記載の手段によれば、円弧部を第1の円弧部および第2の円弧部を有する巴形に形成した。このため、スリットの両内面間の接触面積が増え、スリットが磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0050】
請求項7記載の手段によれば、スリットの対向する両内面に直状部を設けた。このため、ばりや寸法誤差等が吸収され、円弧部間が密着状態で接触し易くなるので、磁気的な抵抗が少なくなり、回転特性の悪化が抑えられる。
請求項8記載の手段によれば、帯状鋼板の曲げを案内突部の円弧部および案内溝部の円弧部により案内した。このため、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0051】
請求項9記載の手段によれば、スリットの両内面に係合突部および係合溝部を形成したので、曲げコアの機械的な強度が向上する上、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
請求項10記載の手段によれば、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて曲げコアを形成した。このため、各帯状鋼板の曲げ加工精度のばらつきで、曲げコアの寸法精度が悪化することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す図(aは帯状コアを示す平面図,bはX部を拡大して示す図、cはX部を帯状コアの曲げ状態で示す図)
【図2】(a)はステータコアを示す平面図、(b)はX1 −X1 線に沿う断面図
【図3】(a)はステータコアをコイルの巻装状態で示す平面図、(b)はX2 −X2 線に沿う断面図
【図4】本発明の第2実施例を示す図(aは図1のb相当図、bは図1のc相当図)
【図5】本発明の第3実施例を示す図4相当図
【図6】本発明の第4実施例を示す図4相当図
【符号の説明】
4は第1のスリット、5は第2のスリット、6は曲げコア、10はスリット、10cおよび10dは第1の円弧部、10eおよび10fは第2の円弧部、10gは爪部(係合突部)、10hは係合溝部、10kおよび10lは第2の直状部(直状部)、11aおよび11bは円弧部、12は案内突部、12aは円弧部、13は案内溝部、13aは円弧部、14は爪部(係合突部)、15は係合溝部を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを有する電動機鉄心に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばアウタロータ形DCブラシレスモータには、環状鋼板を積層することに基づいてステータコアが形成されたものがある。この構成の場合、環状鋼板を打抜く際の材料取りの面積が大きくなるので、廃材量が増える。そこで、複数の帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいてステータコアを形成することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の場合、帯状鋼板にスリットを形成し、帯状鋼板をスリットを潰すようにして曲げ加工している。しかしながら、帯状鋼板の曲げ時に応力が集中し、帯状鋼板が応力の集中部分を中心にいびつな形状に曲がってしまい、曲げコアの寸法精度が悪化する虞れがあった。また、帯状鋼板の打抜き時にスリットの内面に生じるばりが邪魔になり、スリットの変形量が設計値に至らず、曲げコアの寸法精度が悪化する虞れがあった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げコアを寸法精度良く形成できる電動機鉄心を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、前記帯状鋼板に前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口する長尺な第1のスリットと、第1のスリットと同方向に開口する短尺な第2のスリットとが形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の打抜き時に生じるばりの影響で長尺な第1のスリットの変形量が設計値に至らないことがあっても、短尺な第2のスリットが変形するので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0006】
請求項2記載の電動機鉄心は、第2のスリットの長さ寸法が帯状鋼板の短手方向の幅寸法の1/3以下に設定されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、磁気回路を形成する上で第2のスリットが抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0007】
請求項3記載の電動機鉄心は、第2のスリットが第1のスリットの両側に形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、両側に位置する第2のスリットが略均等に変形するので、曲げコアの寸法精度が一層再現され易くなる。
【0008】
請求項4記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、一端部が前記帯状鋼板の略長手方向へ延び且つ他端部が前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが前記帯状鋼板に形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の設計上の曲げ支点と実際の曲げ部とがずれるので、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散して作用する。このため、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0009】
請求項5記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが前記帯状鋼板に形成され、前記スリットの対向する両内面に同一形状の円弧部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の曲げが進むに連れて応力の集中部分が移動するので、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散して作用する。このため、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0010】
請求項6記載の電動機鉄心は、各円弧部が一方向へ膨らむ第1の円弧部と、第1の円弧部と反対方向へ膨らむ第2の円弧部とを備えているところに特徴を有している。
上記手段によれば、スリットの両内面間の接触面積が増え、スリットが磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0011】
請求項7記載の電動機鉄心は、スリットの対向する両内面に直状部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の打抜き時にばりや寸法誤差等が生じたときには、直状部間に隙間が形成され、ばりや寸法誤差等が吸収される。このため、円弧部間が密着状態で接触し易くなるので、磁気的な抵抗が少なくなり、回転特性の悪化が抑えられる。
【0012】
請求項8記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが前記帯状鋼板に形成され、前記スリットの一方の内面に案内突部が形成され、前記スリットの他方の内面に前記案内突部が係合する案内溝部が形成され、前記案内突部のうち前記帯状鋼板の長手方向に沿う両面および前記案内溝部のうち前記案内突部の両面に係合する両内面に同一形状の円弧部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板の曲げが案内突部の円弧部および案内溝部の円弧部により案内され、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形状できる。
【0013】
請求項9記載の電動機鉄心は、スリットの一方の内面に係合突部が形成され、スリットの他方の内面に係合突部が係合する係合溝部が形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、係合突部および係合溝部間が係合し、スリットの両内面が機械的な連結状態に保持されるので、曲げコアの機械的な強度が向上する。これと共に、スリットの両内面が磁気的な連結状態に保持されるので、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
【0014】
請求項10記載の電動機鉄心は、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて曲げコアが形成されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、帯状鋼板を曲げ加工した後に積層する場合とは異なり、各帯状鋼板の曲げ加工精度のばらつきで、曲げコアの寸法精度が悪化することが防止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図3に基づいて説明する。尚、本実施例は、洗濯機の洗濯槽および撹拌体を回転駆動するアウタロータ形3相DCブラシレスモータのステータコアに本発明を適用したものである。まず、図1の(a)において、帯状コア1は、複数の帯状鋼板(図示せず)を積層して加圧カシメすることから構成されたものであり、18個の単位コア2を幅狭な繋ぎ桟3を介して連結した形態をなしている。これら各単位コア2は、単位ヨーク2aおよびT字状のティース2bを有するものであり、各単位ヨーク2aの長手方向の両面は、図1の(b)に示すように、寸法がR1 およびR2 の円弧状に形成されている。尚、軸方向各端面に位置する帯状鋼板には、図1の(a)に示すように、各ティース2bの先端部に位置して切欠部1bが形成されている。
【0016】
帯状コア1には、図1の(b)に示すように、単位コア2間に位置して第1のスリット4が形成されている。これら各スリット4は、帯状コア1の長手方向の一面に開口する扇形部4aと、扇形部4aの基端部に位置する円形部4bとを有するものであり、各扇形部4aの開口角度θは、繋ぎ桟3の支点1cを中心に「(360°/36極)=10°」に設定されている。尚、第1のスリット4は、帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0017】
帯状コア1には、第1のスリット4の両側に位置して第2のスリット5,5が形成されている。これら各スリット5は、第1のスリット4と同一方向へ開口する直状をなすものであり、各スリット5の長さ寸法は、単位ヨーク2aの短手方向の幅寸法の「1/3」以下に設定されている。尚、第2のスリット5は、帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0018】
帯状コア1は、図1の(c)に示すように、各繋ぎ桟3の支点1cを中心に曲げ加工され、各第1のスリット4は、扇形部4aの内面相互間が密着状態に接触している。図2の(a)は、帯状コア1,1を曲げ加工することに基づいて形成された半円環状の曲げコア6,6を示すものであり、両曲げコア6は端面相互間が溶接され、円環状のステータコア7を形成している。尚、符号1dは曲げコア6の溶接部を示している。
【0019】
ステータコア7には、図3の(b)に示すように、軸方向両側から合成樹脂製の絶縁カバー8,8が被せられている。これら両絶縁カバー8は、図3の(a)および(b)に示すように、ステータコア7のうち各ティース2bの外周面を除く表面全体を覆うものであり、各ティース2bには、両絶縁カバー8の上からコイル9が巻装されている。
【0020】
上方の絶縁カバー8には、図3の(a)に示すように、複数の取付片8aが一体形成されている。これら各取付片8aには、図3の(b)に示すように、貫通孔8bが形成されており、各貫通孔8b内には、下方からボルト(図示せず)が挿入されている。そして、ステータコア7は、複数のボルトを洗濯機のベース(図示せず)に締結することに伴い、洗濯機に組付けられている。
【0021】
上記実施例によれば、板材から帯状鋼板を打抜いた。このため、材料取りの面積が小さくなるので、廃材量が減り、材料費が低減される。また、帯状コア1に長尺な第1のスリット4および短尺な第2のスリット5を形成した。このため、帯状鋼板の打抜き時に第1のスリット4の内面に生じるばりが邪魔になり、第1のスリット4の変形量が設計値に至らないことがあっても、図1の(c)に示すように、第2のスリット5が変形するので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0022】
また、第1のスリット4の近傍に第2のスリット5を形成した。このため、帯状コア1の曲げ加工時に第2のスリット5が変形し易くなるので、曲げコア6の寸法R1 およびR2 が再現され易くなる。しかも、第1のスリット4の両側に第2のスリット5を形成した。このため、両側に位置する第2のスリット5が略均等に変形するので、この点からも、曲げコア6の寸法R1 およびRr2 が再現され易くなる。
【0023】
また、第2のスリット5の長さ寸法を帯状コア1の短手方向の幅寸法の「1/3」以下に設定した。このため、磁気回路を形成する上で第2のスリット5が抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が極力抑えられる。
【0024】
また、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて曲げコア6を形成した。このため、帯状鋼板を曲げ加工した後に積層する場合とは異なり、各帯状鋼板の曲げ加工精度のばらつきで、曲げコア6の寸法精度が悪化することが防止される。
【0025】
尚、上記第1実施例においては、第1のスリット4の両側に第2のスリット5を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1のスリット4の一方側のみに第2のスリット5を形成しても良い。
また、上記第1実施例においては、第1のスリット4の近傍に第2のスリット5を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1のスリット4から離間するティース2bの延長部分等に第2のスリット5を形成しても良い。
また、上記第1実施例においては、第1のスリット4の開口角度θを10°に設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、ばりの影響を考慮して10°より若干大きく設定しても良い。
【0026】
次に本発明の第2実施例を図4に基づいて説明する。尚、上記第1実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、以下、異なる部材についてのみ説明を行う。まず、図4の(a)において、帯状コア1には、単位コア2間に位置してスリット10が形成されている。これら各スリット10は、帯状コア1の長手方向の一面に開口する本体部10aと、本体部10aの基端部に位置する円形部10bとを有するものであり、各本体部10aの基端部は帯状コア1の略長手方向へ延びている。
【0027】
各本体部10aの対向する両内面には第1の円弧部10cおよび10dが形成されている。これら各組の円弧部10cおよび10dは寸法R3 およびR4 が等しく設定されたものであり、開口角度θが支点1eを中心に「(360°/36極)=10°」に設定されている。
【0028】
各本体部10aの対向する両内面には、第1の円弧部10cおよび10dと反対方向へ膨らむ第2の円弧部10eおよび10fが形成されており、各半円部10aの対向する両内面は巴形状をなしている。これら各組の円弧部10eおよび10fは寸法R5 およびR6 が等しく設定されたものであり、帯状コア1の曲げ加工時には、帯状コア1が幅狭な繋ぎ桟3を中心に曲げられ、図4の(b)に示すように、各組の第1の円弧部10cおよび10dが密着状態に接触し、各組の第2の円弧部10eおよび10fが密着状態に接触する。尚、符号11aは第1の円弧部10cおよび第2の円弧部10eから構成される巴形の円弧部、符号11bは第1の円弧部10dおよび第2の円弧部10fから構成される巴形の円弧部を示している。
【0029】
各スリット10の一方の内面には、図4の(a)に示すように、爪部10gが形成されている。これら各爪部10gは係合突部に相当するものであり、帯状コア1に切欠部1fを設けることに基づいて形成されている。そして、各スリット10の他方の内面には係合溝部10hが形成されており、帯状コア1の曲げ加工時には、図4の(b)に示すように、各爪部10gおよび係合溝部10h間が係合する。尚、スリット10,爪部10g,係合溝部10hは帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0030】
上記実施例によれば、スリット10の本体部10aの基端部を帯状コア1の略長手方向へ延ばした。このため、帯状コア1の設計上の曲げ支点1eと幅狭な実際の曲げ部(支点1c付近)とがずれるので、帯状コア1に曲げ加工時の応力が分散して作用する。従って、繋ぎ桟3が滑らかに伸ばされて円弧状に曲がるので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0031】
また、スリット10の対向する両内面に同一形状の円弧部11aおよび11bを設けた。このため、帯状コア1の曲げが進行するのに伴って応力の集中部分が移動し、帯状コア1に曲げ加工時の応力が分散して作用する。従って、繋ぎ桟3が滑らかに伸ばされて円弧状に曲がるので、この点からも、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。これと共に、スリット10の両内面間の接触面積が増え、スリット10が磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0032】
また、スリット10の両内面に爪部10gおよび係合溝部10hを設け、爪部10gおよび係合溝部10h間を係合させた。このため、スリット10の両内面が機械的な連結状態に保持されるので、曲げコア6の機械的な強度が向上する。これと共に、スリット10の両内面が磁気的な連結状態に保持されるので、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
【0033】
また、一方の円弧部11aを第1の円弧部10cおよび第2の円弧部10eからなる巴形に形成し、他方の円弧部11bを第1の円弧部10dおよび第2の円弧部10fからなる巴形に形成した。このため、スリット10の両内面間の接触面積が一層増え、スリット10が磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が一層抑えられる。
【0034】
次に本発明の第3実施例を図5に基づいて説明する。尚、上記第2実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、以下、異なる部材についてのみ説明を行う。まず、図5の(a)において、各スリット10の両内面には、円形部10b側に位置して第1の直状部10iおよび10jが形成されており、各組の直状部10iおよび10jは帯状コア1の長手方向に延びている。これら各組の直状部10iおよび10j間の開口角度θは支点1eを中心に「(360°/36極)=10°」に設定されており、帯状コア1の曲げ加工時には、帯状コア1が幅狭な繋ぎ桟3を中心に曲げられ、図5の(b)に示すように、各組の直状部10iおよび10jが密着状態で接触する。
【0035】
各スリット10の両内面には、図5の(a)に示すように、第2の直状部10kおよび10lが形成されている。これら各組の直状部10kおよび10l間の開口角度θは「(360°/36極)=10°」に設定されており、帯状コア1の曲げ加工時には、各組の直状部10kおよび10l間が密着状態で接触する。尚、直状部10i〜10lは帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0036】
上記実施例によれば、スリット10の基端部(第1の直状部10iおよび10j)を帯状コア1の長手方向へ延ばした。このため、帯状コア1の設計上の曲げ支点1eと幅狭な実際の曲げ部(支点1c付近)とがずれるので、帯状コア1に曲げ加工時の応力が分散して作用する。従って、繋ぎ桟3が滑らかに伸ばされて円弧状に曲がるので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0037】
また、スリット10の対向する両内面に第2の直状部10kおよび10lを設けた。このため、帯状鋼板の打抜き時にばりや寸法誤差等が生じたときには、図5の(b)に示すように、第2の直状部10kおよび10l間に隙間が形成され、ばりや寸法誤差等が吸収される。このため、円弧部10cおよび10d間が密着状態で接触し易くなるので、磁気的な抵抗が少なくなり、回転特性の悪化が抑えられる。
【0038】
尚、上記第3実施例においては、第2の直状部10kおよび10lの開口角度θを両者が密着状態で接触する「10°」に設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、「10°」より若干大きく設定し、両者の間に隙間を形成しても良い。
【0039】
次に本発明の第4実施例を図6に基づいて説明する。尚、上記第1実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、以下、異なる部材についてのみ説明を行う。まず、図6の(a)において、各スリット4の一方の内面には3個の案内突部12が形成されており、各案内突部12のうち帯状コア1の長手方向に沿う両面には曲げ支点1cを中心とする円弧部12aが形成され、各案内突部12のうち帯状コア1の短手方向に沿う先端面は直状に形成されている。尚、符号R7 は、下段に位置する円弧部12aの寸法を示している。
【0040】
各スリット4の他方の内面には3個の案内溝部13が形成されており、各案内溝部13のうち帯状コア1の短手方向に沿う一内面は直状に形成され、各案内溝部13のうち帯状コア1の長手方向に沿う両内面には円弧部13aが形成されている。これら各円弧部13aは、帯状コア1の長手方向に対向する円弧部12aと同一形状をなしており、帯状コア1の曲げ加工時には、図6の(b)に示すように、各案内突部12が案内溝部13内に係合し、各案内突部12の円弧部12aが案内溝部13の円弧部13aに密着状態で接触する。
【0041】
各スリット4の一方の内面には、図6の(a)に示すように、爪部14が形成されている。これら各爪部14は係合突部に相当するものであり、帯状コア1に切欠部1fを設けることに基づいて形成されている。そして、各スリット4の他方の内面には係合溝部15が形成されており、帯状コア1の曲げ加工時には各爪部14が係合溝部15内に係合する。尚、案内突部12,案内溝部13,爪部14,係合溝部15は帯状鋼板の打抜き時に一体形成されたものである。
【0042】
上記実施例によれば、スリット4の対向する両内面に案内突部12および案内溝部13を形成し、案内突部12のうち帯状コア1の長手方向に沿う両面および案内溝部13のうち帯状コア1の長手方向に沿う両面に曲げ支点1cを中心とする円弧部12aおよび13aを設けた。このため、帯状コア1の曲げが円弧部12aおよび13aにより案内され、繋ぎ桟3が支点1cを中心に滑らかな円弧状に曲がるようになるので、曲げコア6を設計値通りの寸法R1 およびR2 に形成し易くなる。
【0043】
また、スリット4の両内面に爪部14および係合溝部15を設け、爪部14および係合溝部15間を係合させた。このため、スリット4の両内面が機械的な連結状態に保持されるので、曲げコア6の機械的な強度が向上する。これと共に、スリット4の両内面が磁気的な連結状態に保持されるので、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
【0044】
尚、上記第4実施例においては、スリット4の内面に複数の案内突部12および案内溝部13を形成したが、これに限定されるものではなく、要は、1個以上の案内突部12および案内溝部13が形成されていれば良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、ステータコア7に絶縁カバー8を被せたが、これに限定されるものではなく、例えば、ステータコア7を成形型内に収納して溶融樹脂を注入することに伴い、ステータコア7に樹脂層を形成しても良い。
【0045】
また、上記第1〜第4実施例においては、帯状コア1を半円環状に曲げ加工したが、これに限定されるものではなく、例えば半角環状に曲げ加工しても良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、半円環状をなす2つの帯状コア1を溶接する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、1つの帯状コア1を円環状に曲げ加工し、帯状コア1の両端部を溶接しても良い。
【0046】
また、上記第1〜第4実施例においては、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工したが、これに限定されるものではなく、例えば、曲げ加工した後に積層しても良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、本発明をステータコアに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばロータコアに適用しても良い。
また、上記第1〜第4実施例においては、本発明をDCブラシレスモータに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばコンデンサ誘導モータに適用しても良い。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の電動機鉄心は次の効果を奏する。
請求項1記載の手段によれば、帯状鋼板に長尺な第1のスリットと短尺な第2のスリットとを形成した。このため、ばりの影響で長尺な第1のスリットの変形量が設計値に至らないことがあっても、短尺な第2のスリットが変形するので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
請求項2記載の手段によれば、第2のスリットの長さ寸法を帯状鋼板の短手方向の幅寸法の1/3以下に設定した。このため、第2のスリットが磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0048】
請求項3記載の手段によれば、第1のスリットの両側に第2のスリットを形成した。このため、第2のスリットが略均等に変形するので、曲げコアの寸法精度が一層再現され易くなる。
請求項4記載の手段によれば、スリットの一端部を帯状鋼板の略長手方向へ延ばした。このため、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散し、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0049】
請求項5記載の手段によれば、スリットの対向する両内面に同一形状の円弧部を設けた。このため、帯状鋼板に曲げ加工時の応力が分散して作用し、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
請求項6記載の手段によれば、円弧部を第1の円弧部および第2の円弧部を有する巴形に形成した。このため、スリットの両内面間の接触面積が増え、スリットが磁気的な抵抗になり難くなるので、回転特性の悪化が抑えられる。
【0050】
請求項7記載の手段によれば、スリットの対向する両内面に直状部を設けた。このため、ばりや寸法誤差等が吸収され、円弧部間が密着状態で接触し易くなるので、磁気的な抵抗が少なくなり、回転特性の悪化が抑えられる。
請求項8記載の手段によれば、帯状鋼板の曲げを案内突部の円弧部および案内溝部の円弧部により案内した。このため、帯状鋼板が曲げ部から滑らかに曲がるので、曲げコアを寸法精度良く形成できる。
【0051】
請求項9記載の手段によれば、スリットの両内面に係合突部および係合溝部を形成したので、曲げコアの機械的な強度が向上する上、磁気抵抗が少なくなり、回転特性が向上する。
請求項10記載の手段によれば、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて曲げコアを形成した。このため、各帯状鋼板の曲げ加工精度のばらつきで、曲げコアの寸法精度が悪化することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す図(aは帯状コアを示す平面図,bはX部を拡大して示す図、cはX部を帯状コアの曲げ状態で示す図)
【図2】(a)はステータコアを示す平面図、(b)はX1 −X1 線に沿う断面図
【図3】(a)はステータコアをコイルの巻装状態で示す平面図、(b)はX2 −X2 線に沿う断面図
【図4】本発明の第2実施例を示す図(aは図1のb相当図、bは図1のc相当図)
【図5】本発明の第3実施例を示す図4相当図
【図6】本発明の第4実施例を示す図4相当図
【符号の説明】
4は第1のスリット、5は第2のスリット、6は曲げコア、10はスリット、10cおよび10dは第1の円弧部、10eおよび10fは第2の円弧部、10gは爪部(係合突部)、10hは係合溝部、10kおよび10lは第2の直状部(直状部)、11aおよび11bは円弧部、12は案内突部、12aは円弧部、13は案内溝部、13aは円弧部、14は爪部(係合突部)、15は係合溝部を示す。
Claims (10)
- 帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、
前記帯状鋼板には、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口する長尺な第1のスリットと、第1のスリットと同方向に開口する短尺な第2のスリットとが形成されていることを特徴とする電動機鉄心。 - 第2のスリットの長さ寸法は、帯状鋼板の短手方向の幅寸法の1/3以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載の電動機鉄心。
- 第2のスリットは、第1のスリットの両側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電動機鉄心。
- 帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、
前記帯状鋼板には、一端部が前記帯状鋼板の略長手方向へ延び且つ他端部が前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが形成されていることを特徴とする電動機鉄心。 - 帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、
前記帯状鋼板には、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが形成され、
前記スリットの対向する両内面には、同一形状の円弧部が設けられていることを特徴とする電動機鉄心。 - 各円弧部は、一方向へ膨らむ第1の円弧部と、第1の円弧部と反対方向へ膨らむ第2の円弧部とを有していることを特徴とする請求項5記載の電動機鉄心。
- スリットの対向する両内面には直状部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の電動機鉄心。
- 帯状鋼板を積層および曲げ加工することに基づいて形成された曲げコアを備え、
前記帯状鋼板には、前記帯状鋼板の長手方向の一面に開口するスリットが形成され、
前記スリットの一方の内面には案内突部が形成され、
前記スリットの他方の内面には前記案内突部が係合する案内溝部が形成され、
前記案内突部のうち前記帯状鋼板の長手方向に沿う両面および前記案内溝部のうち前記案内突部の両面に係合する両内面には、同一形状の円弧部が設けられていることを特徴とする電動機鉄心。 - スリットの一方の内面には係合突部が形成され、
スリットの他方の内面には、係合突部が係合する係合溝部が形成されていることを特徴とする請求項1,4,5,8のいずれかに記載の電動機鉄心。 - 曲げコアは、帯状鋼板を積層した後に曲げ加工することに基づいて形成されていることを特徴とする請求項1,4,5,8のいずれかに記載の電動機鉄心。
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