JP3544682B2 - 9ベータ,10アルフア−5,7−ジエンステロイド類の製造方法 - Google Patents
9ベータ,10アルフア−5,7−ジエンステロイド類の製造方法 Download PDFInfo
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Description
本発明は、フィルターをかけた(filtered)紫外光で対応する9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイドもしくはセコ−ステロイド(seco−steroid)を照射することによって、9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイドを製造する方法に関する。
【0002】
9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類は、一般に、人体中で有効な機能を果し得る薬学的に興味の持たれている化合物を合成する時の中間体である。ホルモンの類似物である6−デヒドロ−9ベータ,10アルファ−プロゲステロン(9ベータ,10アルファ−プレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオン)またはジドロゲステロンは、経口活性を示すプロゲステロン性(progestative)ホルモンであり、そして一般に、体内のプロゲステロンの不足を補うために用いられている。
【0003】
従って、利用可能であるか或は容易に入手可能な原料からこの物質および他の9ベータ,10アルファ−ステロイド類を合成するための良好な可能性は非常に重要である。種々の9アルファ,10ベータ−ステロイド類、例えばエルゴステロール、プレグネノロンおよびプロゲステロンは、9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類を製造するための原料として利用できる。プレグネノロンからジドロゲステロンを製造することは、Rappoldt他著、 Recueil trav. Chim. 1961、 80、 43および1971、 90、 27に記述されている。ジドロゲステロンの合成における重要な中間体は、ルミステロール2(lumisterol2)、3−(エチレンジオキシ)−9ベータ,10アルファ−プレグナ−5,7−ジエン−20−オンおよび3,20−ビス(エチレンジオキシ)−9ベータ,10アルファ−プレグナ−5,7−ジエンである。これらの中間体は、それぞれ相当する9アルファ,10ベータ異性体、即ちエルゴステロール、9アルファ,10ベータ−3−(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエン−20−オンおよび9アルファ,10ベータ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンを紫外光で照射することによって製造され得る。この照射は、好適には、フィルターをかけた紫外光を用いて行われる。この目的で、今までは中間圧または高圧水銀ランプが用いられてきた。上述した出版物では、このような光化学的異性化中に、所望の9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類が、変換した9アルファ,10ベータ−異性体を基に計算して20%のみの収率で生じていた。このUV照射を2段階で行う場合、即ち最初に短波のUV照射を用いた後、NL 112,521に記述されている如き長波のUV照射を用いる場合、単離することができる所望の9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイドの収率は、変換した出発材料を基準に計算して、まだ20%でなかった。明らかに、このような光化学異性化で、高価な開始材料のかなりの部分が損失しており、これは恐らくは、望まれていない副生成物が生じることによるものであろう。従って、このことが、このような光化学的変換における収率を改良することが非常に重要であることの理由である。
【0004】
DaubenおよびPhillips(J. Am. Chem. Soc. 1982、 104、 355および5780)は、レーザー光分解を用いることで、所望の9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類の生成が改良され得る、と述べている。しかしながら、DaubenおよびPhillipsの結果は、Malatesta他:J. Am. Chem. Soc. 1981、 103、 6781の結果とは一致していない。このような問題となり得る結果とは別に、実際上の産業的製造では、取得コストが高いことと高いエネルギーを消費することから、レーザーの使用は非常に魅力的であるとは言えない。従って、特定の光化学的変換を生じさせるためには、ランプを用いた照射の方がレーザー照射よりも遥かに好適である。
【0005】
RappoldtおよびMos(EP 0,152,138)によって、通常の中圧水銀ランプの代わりにアンチモンランプをその光源として用いると、9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイド類または適切なセコ−ステロイド類(セコ−ステロイド類)から相当する9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類への光化学的変換をかなりの高収率で行うことが可能である、ことが見付け出された。望まれるならば、2つの異なるランプを連続して用いることで、即ち最初にUV放射線を生じる通常の光源、例えば中圧水銀ランプを用い、続いてアンチモンランプを用いることで、上記照射を行うことも可能であり、これによって、1個のランプを用いた照射に匹敵する結果を得ることが可能である。このようにして、6から7時間の反応時間、相当する9アルファ,10ベータ化合物を変換することにより、開始材料を基準に計算しておおよそ30%の収率、或は変換した材料を基準に計算して約75%の収率で、9ベータ,10アルファ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンを製造することが可能であった(EP 0,152,138の実施例IおよびVII)。
【0006】
しかしながら、上記公知方法はいくつかの点で未だ満足できるものではない。最初に、この製造容量、即ち時間単位当たり(時当たり)の変換率は、充分には製造業者の期待に到達していない。照射過程の本質的な容量は、照射すべき溶液を希釈する必要があるため、常にかなり小さい。従って、時間単位当たりの改良された変換率は、商業的および技術的に興味が持たれる方法にとって非常に重要である。更に、アンチモンランプを用いた操作は、中圧水銀ランプに比較して高価である。
【0007】
対応する9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイド類またはセコ−ステロイド類を照射することによって9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類を製造する時の容量を、相当に改良すると共に、その操作コストも低下させることが、本発明の目的である。
【0008】
この目的は、本発明に従い、インジウムランプからの、フィルターをかけた紫外光で、上記出発材料である9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイドまたはセコ−ステロイドを照射することによって達成され得る。インジウムランプは、インジウムを与えた中圧もしくは高圧水銀ランプである。本発明の方法でこのような光源を用いることにより、アンチモンランプを用いるよりも操作技術および施設がずっと容易で簡単になる。後記実施例から明らかなように、この製造容量、即ち時間単位当たりの所望変換率は、放射線源としてインジウムランプを用いることにより、既知のアンチモンランプに比較して約2倍改良され得る。
【0009】
本発明の方法に従って、ランプを取り巻いている貯槽にステロイド溶液を通すか、或は照射すべき溶液の中にこのランプを浸漬することにより、上記インジウムランプを用いることができる。前者の照射方法では、数多くのインジウムランプを用い、これらのランプの回りに照射すべき溶液を連続流で通過させることにより、製造容量を改良することが可能である、ことは明らかであろう(環状流れ反応槽)。後者の方法では、浸漬ランプを用いて、これを反応容器中に収容されている溶液中に浸漬することができる(浸漬光化学反応槽)。適切な様式で、上記反応容器の寸法を決定することが可能であり、高電力のインジウムランプ、即ち100kwに及ぶインジウムランプを用いることが可能である。
【0010】
好適には、最適の結果を達成する目的で、このインジウムランプを用いた照射を行う前に、UV放射線を生じる通常の光源、一般に通常の中圧もしくは高圧水銀ランプを用いた照射操作を行う。
【0011】
原則として、本発明の光化学的変換に適した出発材料として、全ての9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイド類またはセコ−ステロイド類を用いることができるが、但し好適には、この分子中の感光性置換基が保護されていることを条件とする。例えば通常、この材料に本発明に従う光化学的変換を受けさせるに先立って、この開始材料中に任意に存在している敏感なケトン官能をケタール化(ketalize)するのが望ましい。上記変換に適切なセコ−ステロイド類は、プレビタミンD化合物およびタキステロール化合物である。
【0012】
本発明に従う方法は、より詳細には、一般式
【0013】
【化1】
【0014】
〔式中、
R1は、水素原子;エーテル化されているか、エーテル化されていないか、エステル化されているか、またはエステル化されていないヒドロキシ基;或はケタール化されているか、またはケタール化されていないオキソ官能基であり、そしてR2は、所望によりフッ素原子、エーテル化されているか、エーテル化されていないか、エステル化されているか、またはエステル化されていないヒドロキシ基、シクロプロピル基、およびケタール化されているか、またはケタール化されていないオキソ官能基から選択される1個以上の置換基で置換されている、1−16個の炭素原子を有する分枝状もしくは非分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族ヒドロカルビル基である〕
を有する原料ステロイド類またはセコ−ステロイド類から9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイド類を製造することに関する。
【0015】
上記分子中のヒドロキシ基に適切なエステル化剤は、2から5個の炭素原子を有するアルキルクロロカーボネート、または芳香族カルボン酸(例えば安息香酸、またはハロ−、ニトロ−もしくは(C1−C4)アルキル置換安息香酸)、1から4個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、またはこのエステル化反応に適切なこれらの酸類の誘導体(例えば酸クロライドまたは酸無水物)である。
【0016】
ヒドロキシ基のエーテル化では、原則として、下記の種々のエーテル化剤が適切である:例えば、トリフェニルメチルハライド、2,3−ジヒドロピラン、トリアルキルシリルハライド、ジフェニルアルキルシリルハライド、アルコキシアルキルハライド、トリアルキルシリルエトキシメチルハライド、またはそれらの誘導体であり、それらのアルキル基は1から6個の炭素原子を有する。
【0017】
上記の用語「ケタール化(ketalized)」はまた、チオケタール化も包含している。ケタール化の目的で、種々のアルコール類、チオール類、オルソエステル類またはジ(チ)オール類が適切であり、後者が環状ケタール類を生じる。それらの例はメタノール、エタノール、エタンチオール、オルト蟻酸トリ(メ)エチル、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールおよびエチレンジチオールである。
【0018】
ジドロゲステロン製造における中間体としての役割を果す適切な原料ステロイド類の例は、エルゴステロール、9アルファ,10ベータ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンおよび9アルファ,10ベータ−3−(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエン−20−オンである。実施例から明らかになるように、これらの化合物を、便利に、本発明の方法を用いて、それぞれ所望の9ベータ,10アルファ異性体、即ちルミステロール2、9ベータ,10アルファ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンおよび相当するモノケタールに変換することが可能である。他の適切な出発材料は、セコ−ステロイド類、特にプレビタミン類およびタキステロール類である。例えば、本発明に従う方法を用いて、プレビタミンD2および6Z−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエンを容易に、それぞれルミステロール2および9ベータ,10アルファ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンに変換することができ、タキステロール2および6E−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエンをそれぞれ照射することによって同じ生成物を製造することができる。
【0019】
以下に示す特定実施例を参照して、本発明をここにより詳しく説明する。
【0020】
【実施例】
9ベータ,10アルファ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンの製造
40gの9アルファ,10ベータ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンを4リットルの酢酸メチルに溶解する。この得られる溶液を、次に、冷却しながら窒素雰囲気中、1500Wの中圧水銀ランプ(Philips HOVR)で照射する。260nm以下の波長を有する全ての光を吸収するフィルターを用いる。1.3時間後溶液が得られ、これに溶解している物質は、HPLC分析に従い、下記の組成を有している:49.5%(19.8g)の開始材料、33.9%(13.6g)の6Z−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエン、3.3%(1.3g)の6E−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエン、および9.1%(3.6g)の9ベータ,10アルファ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエン。その後、この水銀ランプをインジウムランプ(Philips HOV 32/2000R)に置き換えた後、300nm以下の波長を有する全ての光を吸収するフィルター液を取り付ける。
【0021】
該溶液を2.2時間照射した後、再びHPLCで分析することにより、溶解している物質は下記の組成を有していた:59.9%(24.0g)の開始材料、4.7%(1.9g)の6Z−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエン、0.2%(0.08g)の6E−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエン、および31.0%(12.4g)の9ベータ,10アルファ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエン。従って、消費された開始材料を基づく所望生成物の収率は77.3%である。
【0022】
本発明の特徴および態様は以下のとうりである。
【0023】
1.フィルターをかけた紫外光で相当する9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイドもしくはセコ−ステロイドを照射することにより、9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイドを製造する方法において、インジウムランプを用いて照射を行うことを特徴とする方法。
【0024】
2.インジウム混合水銀放電ランプを用いた該照射に先立って、UV放射線を生じる通常の光源で該原料ステロイドもしくはセコ−ステロイドを照射することを特徴とする第1項記載の方法。
【0025】
3.該原料ステロイドもしくはセコ−ステロイドが、一般式
【0026】
【化2】
【0027】
〔式中、
R1は、水素原子;エーテル化されているか、エーテル化されていないか、エステル化されているか、またはエステル化されていないヒドロキシ基;或はケタール化されているか、またはケタール化されていないオキソ官能基であり、そしてR2は、所望に応じてフッ素原子、エーテル化されているか、エーテル化されていないか、エステル化されているか、またはエステル化されていないヒドロキシ基、シクロプロピル基、およびケタール化されているか、またはケタール化されていないオキソ官能基から選択される1個以上の置換基で置換されている、1−16個の炭素原子を有する分枝状もしくは非分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族ヒドロカルビル基である〕
を有する化合物であることを特徴とする第1または2項記載の方法。
【0028】
4.該原料ステロイドがエルゴステロール、9アルファ,10ベータ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエンまたは9アルファ,10ベータ−3−(エチレンジオキシ)−プレグナ−5,7−ジエン−20−オンであることを特徴とする第3項記載の方法。
【0029】
5.該原料セコ−ステロイドがプレビタミンD3または6Z−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエンであることを特徴とする第3項記載の方法。
【0030】
6.該原料セコ−ステロイドがタキステロール3または6E−9,10−セコ−3,20−ビス(エチレンジオキシ)−プレグナ−5(10),6,8−トリエンであることを特徴とする第3項記載の方法。
Claims (1)
- フィルターをかけた紫外光で対応する9アルファ,10ベータ−5,7−ジエンステロイドもしくはセコ−ステロイドを照射することにより、9ベータ,10アルファ−5,7−ジエンステロイドを製造する方法において、インジウムランプを用いて照射を行うことを特徴とする方法。
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