JP3544574B2 - 樹脂被覆鋼材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、表面が防食樹脂保護層で被覆された樹脂被覆鋼材、特に外面が樹脂で被覆された樹脂被覆鋼管に関する。本発明の樹脂被覆鋼管は、防食性、耐食性、耐候性、難燃性に優れ、埋設、屋外、屋内の何れの環境においても使用可能であって、適用範囲が非常に広く、ガス、石油類、水等の輸送用配管として好適である。
【0002】
【従来の技術】
鋼管を腐食から保護するために、鋼管の外面を比較的厚い熱可塑性樹脂フィルムで被覆して防食保護層とした樹脂被覆鋼管は、石油(原油)用ラインパイプ、都市ガス供給管、プラント配管、水道や温泉水供給管などとして従来から広く使用されている。また、鋼管以外に、鋼管杭、鋼矢板、形鋼、棒鋼などについても、表面を防食樹脂で被覆することが行われてきた。
【0003】
これら鋼材の保護層に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類が主であるが、その他に塩化ビニル樹脂、各種ポリアミド樹脂、各種フッ素系樹脂、各種飽和ポリエステル樹脂等が、使用環境、要求性能に応じて使い分けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの各種熱可塑性樹脂には一長一短があり、あらゆる環境で鋼管を保護できる防食性能を持ったものはほとんどない。例えば、鋼材の防食被覆用に最も多く利用されているポリオレフィン類は、耐薬品性に優れているが、耐熱性や耐候性が低く、燃焼性が高い。また、鋼材との接着性に乏しいため、通常はエポキシプライマーを塗布した後、変性ポリオレフィン接着層を介してポリオレフィン樹脂被覆を行う必要があり、製造操作が複雑になる。
【0005】
塩化ビニル樹脂は、難燃性に優れているが、安定性が低く、脱塩酸反応により徐々に塩酸を放出する。ポリアミドや飽和ポリエステル樹脂は吸水性があり、地中埋設、特に湿潤土壌に埋設されるような環境下では電気抵抗が低くなって、母材が電気腐食を受ける可能性がある。フッ素樹脂は、防食性、難燃性、安定性、電気抵抗のすべてに優れているが、非常に高価である上、鋼材への接着性に乏しく、そのためその防食性を十分に生かすことができない。さらに、融点が高いため、接着に400 ℃以上の高温を要するという問題もある。
【0006】
防食性能を高めるために、2層以上の樹脂被覆を鋼材表面に設けることも提案されている。例えば、特公昭60−595 号および同60−22622 号各公報には、ポリエチレン樹脂層とエチレン/プロピレン共重合体樹脂層またはポリエチレン/ポリプロピレンブレンド樹脂層との2層で鋼管を被覆することが開示されている。しかし、このように被覆層を2層化しても、前記のポリオレフィン樹脂被覆の問題点を根本的に解決することはできない。
【0007】
本発明の目的は、高耐熱性で、燃焼性が低く、防食性、耐候性、耐薬品性、絶縁性に優れ、鋼材との接着性が十分に高く、経済性にも優れた、熱可塑性樹脂で被覆された樹脂被覆鋼材を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため防食保護層に用いる熱可塑性樹脂について検討を重ねた結果、PPEと略称されているポリフェニレンエーテル (別名、ポリフェニレンオキサイド<PPO>) 樹脂が極めて優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、PPE樹脂と略記する)は、耐熱性と耐燃性に優れた非晶質の熱可塑性樹脂であって、機械的性質(特に、耐衝撃性)、電気的性質(絶縁性)、耐薬品性に優れ、吸水性も極めて低いという特徴を有する。ただし、PPE樹脂単独では成形性がよくないため、PPE樹脂との相溶性が高いスチレン系ポリマーで変性した変性PPE樹脂として一般に使用されている。このスチレン系ポリマー変性PPE樹脂は、PPE樹脂の優れた特性から、自動車の内装・電装部品や電気・電子部品(例、ハウジング、キーボード台等)を始めとする各種用途への利用が拡大している。しかし、これまでは射出成形や押出成形等による成形品としての利用がほとんどで、この樹脂を防食保護層として被覆に用いることは試みられてこなかった。
【0010】
ここに、本発明は、下記組成を有するPPE樹脂組成物からなる被覆を有する樹脂被覆鋼材である。
(1)(A)PPE樹脂10〜100 重量%、および(B)スチレン系ポリマー90〜0重量%
からなる樹脂成分:100 重量部、
(2) スチレン系ゴム重合体からなるゴム成分:0〜50重量部、
(3) 難燃剤:〜40重量部。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に従って樹脂被覆される鋼材は、代表的には鋼管であるが、形状は管に限定されるものではなく、従来より防食被覆が施されてきた棒、板、型材、鋼管杭、鋼矢板など各種形状の鋼材に本発明を適用することができる。ただし、説明を簡略化するため、以下では鋼管を樹脂被覆する場合について主に説明する。
【0011】
被覆する鋼管の材質としては、炭素鋼、低合金鋼、さらにはステンレス鋼等の高合金鋼の何れでもよく、特に限定されるものではないが、経済性の観点から、通常、炭素鋼または低合金鋼が使用される。
【0012】
本発明によれば、鋼管の外面をスチレン系ポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物により被覆する。この樹脂組成物は、
(1)(A)PPE樹脂のみ、または (A)PPE樹脂を (B)スチレン系ポリマーと混合して変性した変性PPE樹脂、からなる樹脂成分に
(2) 難燃剤、必要により
(3) スチレン系ゴム重合体からなるゴム成分
合した組成を有するPPE樹脂組成物である。
【0013】
樹脂成分 (1)
樹脂成分(1) の必須成分であるポリフェニレンエーテル(PPE) 樹脂は、下記一般式〔化1〕で示されるフェノール化合物の1種または2種以上を、酸化カップリング触媒の存在下、酸素または酸素含有ガス中で酸化重合させることにより得られる、熱可塑性の線状重合体である。
【0014】
【化1】
Figure 0003544574
【0015】
上記式中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素、ハロゲン原子、炭化水素基および置換炭化水素基から選ばれ、その少なくとも1個は水素原子である。
【0016】
上記一般式〔化1〕におけるR、R、R、R、およびRの具体例としては、水素、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、メチル、エチル、n−またはiso−プロピル、pri−、sec−またはt−ブチル、クロロエチル、ヒドロキシエチル、フェニルエチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、カルボキシエチル、メトキシカルボニルエチル、シアノエチル、フェニル、クロロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、アリルなどが挙げられる。
【0017】
上記一般式〔化1〕で示されるフェノール化合物の具体例としては、フェノール、o−、m−もしくはp−クレゾール、2,6−、2,5−、2,4−もしくは3,5−ジメチルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,3,5−、2,3,6−もしくは2,4,6−トリメチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、チモール、2−メチル−6−アリルフェノールなどが挙げられる。
【0018】
さらに、上記一般式〔化1〕以外のフェノール化合物、例えば、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシン、ハイドロキノン、ノボラック樹脂等の多価ヒドロキシ芳香族化合物と、上記一般式〔化1〕のフェノール化合物との共重合体も、本発明で用いるPPE樹脂に含まれる。
【0019】
PPE樹脂として好ましいのは、2,6−ジメチルフェノール (別名、2,6−キシレノール) または2,6−ジフェニルフェノールの単独重合体および2,6 −ジメチルフェノールを少量の3−メチル−6−t−ブチルフェノールまたは2,3,6−トリメチルフェノールと共重合させた共重合体である。
【0020】
フェノール化合物の酸化重合に用いる酸化カップリング触媒は、特に限定されるものではなく、一般に遷移金属化合物と塩基性化合物 (例、第一銅化合物と第三アミン) とを主成分とする従来より公知の任意の触媒が使用できる。
【0021】
かかるPPE樹脂の製造法は、例えば、米国特許第3,306,874 号、同第3,306,875 号および同第3,257,357 号各明細書、ならびに特公昭52−17880 号、特開昭50−51197 号および特開平1−304119号各公報等に記載されている。
【0022】
本発明で使用できるPPE樹脂の具体例を次に列挙するが、これらに制限されるものではない:ポリ (2,6−ジメチル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジエチル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−メチル−6− エチル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−メチル−6− プロピル−1,4−フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジプロピル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−エチル−6− プロピル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ブチル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジプロペニル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジラウリル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジフェニル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジメトキシ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジエトキシ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−メトキシ−6− エトキシ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−エチル−6− ステアリルオキシ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−メチル−6− フェニル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−メチル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2−エトキシ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ(2−クロロ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (3−メチル−6−t− ブチル−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジクロロ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,5−ジプロモ−1,4− フェニレンエーテル) 、ポリ (2,6−ジベンジル−1,4− フェニレンエーテル) 、ならびにこれらの重合体を構成する繰り返し単位の複数種を含む各種共重合体。
【0023】
2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5,6−テトラメチルフェノール等の多置換フェノール化合物と2,6−ジメチルフェノールとの共重合体等もPPE樹脂として使用できる。
PPE樹脂として特に好ましいのは、ポリ (2,6−ジメチル−1,4− フェニレンエーテル) ならびに2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体である。
【0024】
PPE樹脂の分子量は、樹脂被覆鋼管の使用環境によって好適範囲が異なるため、一概にその範囲を定めることは困難であるが、一般に30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度で表わして 0.3〜0.7 dl/g、好ましくは 0.4〜0.6 dl/g、さらに好ましくは 0.4〜0.5 dl/gである。
【0025】
樹脂成分のPPE樹脂(A) は、その成形性を高める目的で従来から行われているように、スチレン系ポリマー(B) と混合 (ポリマーアロイ化) することにより変性して、スチレン系ポリマー変性PPE樹脂として使用してもよい。スチレン系ポリマーはPPE樹脂と完全に相溶し、均質なポリマーアロイ (混合物) を形成するので、PPE樹脂の変性に最も普通に用いられている。
【0026】
本発明においてPPE樹脂(A) の変性に用いるスチレン系ポリマー(B) は、一般に当業者に周知の樹脂であって、スチレンで代表されるビニル芳香族化合物から誘導された下記の一般式の繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体である。
【0027】
【化2】
Figure 0003544574
【0028】
上記式中、Rは水素、低級アルキル、またはハロゲンを、Yは水素、ビニル、ハロゲン、アミノ、または低級アルキルを、そしてnは0または1〜5の整数である。本発明で、「低級アルキル」という用語は、炭素数1〜6のアルキルを意味する。
【0029】
より具体的には、スチレン系ポリマー(B) は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレンおよびその誘導体 (すなわち、ビニル芳香族化合物) から選ばれた1種または複数種の重合単位から成る重合体、ならびにこの重合単位と非芳香族ビニル化合物の重合単位から成る共重合体を包むのものである。具体例としては、ポリスチレン(PS)、ポリクロロスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体 (AS樹脂) 、スチレン/α−メチルスチレン共重合体、スチレン/4−メチルスチレン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/メチルメタクリレート共重合体 (MS樹脂) 等が挙げられる。
【0030】
スチレン系ポリマー(B) はまた、上記重合体または共重合体に、ビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の2以上のビニル基を含有する化合物の1種または複数種を共重合させた共重合体も含む。
【0031】
さらに、スチレン系ポリマー(B) には、ゴム状重合体相がスチレン系樹脂マトリックス中に分散している構造を有する、ゴム変性スチレン系樹脂も含まれる。分散相を構成するゴム状重合体は、ジエン成分を含むゴム状重合体および共重合体からなり、具体例としてはポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、イソプレン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体等、ならびにエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
【0032】
このゴム状重合体をスチレン系樹脂に分散させる方法としては多様な方法が知られており、例えば機械的に混合する方法、溶液ブレンド法、スチレン系モノマーにゴム状重合体を溶解してスチレン系モノマーをグラフト共重合する方法等などが可能である。グラフト共重合の場合の重合法は、乳化重合、塊状重合 (特公昭42−662 号、USP 3,435,096)、溶液重合 (USP 3,538,190 、USP 3,538,191)、ならびに懸濁重合 (特公昭49−10931 号、特公昭57−40166 号、特公昭62−10565 号) 等いずれの重合法でもよい。
【0033】
ゴム変性スチレン系樹脂中の分散相のゴム状重合体の割合は、一般に樹脂全体の 0.5〜80重量%であり、好ましくは 0.5〜50重量%である。
ゴム変性スチレン系樹脂の具体例としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)として市販されているブタジエンゴム変性ポリスチレン、スチレン/ブタジエンゴム変性ポリスチレン、エチレン/プロピレン/非共役ジエンゴム変性ポリスチレン等の他、ABS樹脂と略称されるアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、およびAES樹脂と略称されるアクリロニトリル− [エチレン/プロピレン/ (非共役ジエン) ゴム] −スチレン共重合体等が挙げられる。
【0034】
PPE樹脂(A) とスチレン系ポリマー(B) は別々に用意してもよいが、これらを均質混合したスチレン系ポリマー変性PPE樹脂が市販されており、これを使用してもよい。市販品は、PPE樹脂に主に耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を混合して変性したものであり、非常に多くの種類および耐熱グレードのものがある。使用可能な市販スチレン系ポリマー変性PPE樹脂の例としては、ノリル(GE社)、ザイロン(旭化成)、ユピエース(三菱瓦斯化学)、アートレックス(住友化学)などの商品名の製品が挙げられる。
【0035】
PPE樹脂またはスチレン系ポリマー変性PPE樹脂は、この樹脂被覆と鋼材との接着強度を高めるために不飽和カルボン酸によって変性することもできる。この変性に使用可能な不飽和カルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、シトラコン酸、ハイミック酸などが挙げられる。これらのカルボン酸の金属塩もしくは無水物も変性に使用することができる。この変性は、PPE樹脂またはスチレン系ポリマー変性PPE樹脂を不飽和カルボン酸(またはその塩もしくは無水物)と溶融混練することによって行うことができ、それにより不飽和カルボン酸がPPE樹脂にグラフト結合する。変性に用いる不飽和カルボン酸の量は、PPE樹脂100 重量部に対して0.01〜30重量部、特に0.01〜20重量部の範囲が好ましい。
【0036】
ゴム成分 (2)
鋼材の被覆に用いるPPE樹脂組成物の耐衝撃性を改善する目的で、必要により、樹脂成分(1) にゴム成分(2) を配合してもよい。本発明では、ゴム成分として、PPE樹脂との相溶性に優れたスチレン系ゴム状重合体を使用する。
【0037】
スチレン系ゴム状重合体とは、スチレンで代表されるビニル芳香族化合物と共役ジエンとのエラストマー性のランダム共重合体またはブロック共重合体である。スチレン系の硬質ブロックとジエン系の軟質ブロックとに分かれたブロック共重合体の方がゴム弾性が大きいので、スチレン系ゴム状共重合体としてはブロック共重合体の方が一般に好ましい。
【0038】
スチレン系ブロック共重合体ゴムとしては、スチレンブロック(S) とブタジエンブロック(B) を有するブロック共重合体(例、SB、SBS 、SBSBS 等の線状ブロック型、およびラジアルブロック型の共重合体)、ならびにブタジエンブロックの一部または全部を、水添ブタジエン、イソプレン、水添イソプレン等の他の軟質ブロックに置換したブロック共重合体が挙げられる。また、酸、エポキシなどの官能基を含有する官能性単量体により変性した変性ゴムを用いてもよい。
【0039】
スチレン系ブロック共重合体ゴムの製造方法としては、多くの方法が提案されているが、代表的な方法は、特公昭40−2798号公報に記載の方法である。この方法では、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中でビニル芳香族化合物と共役ジエンとを逐次重合させる。必要であれば、逐次重合後にカップリング反応で分子を結合し、また軟質ブロックを飽和型とする場合には、重合後に水素添加を行う。
【0040】
水素添加は、例えば特公昭42−8704号、特公昭43−6636号、特公昭46−20814 号各公報に記載されているように、重合で得たスチレン系ブロック共重合体ゴムを不活性溶媒中で水添触媒の存在下に水素と反応させる。水素添加率は、共役ジエン系軟質ブロックの少なくとも50%、好ましくは80%以上であり、同時にスチレン系硬質ブロック中の芳香族性不飽和結合の25%以下も水素添加される。
【0041】
本発明でスチレン系ゴム状重合体として使用するのに適したスチレン系ブロック共重合体ゴムの市販品の代表例は、いずれも米国シェルケミカル社より市販されている CARIFLEX TR1101 (非水添型) およびKRATON−G (水添型) である。
【0042】
スチレン系ブロック共重合体ゴムとしては、ブロック共重合体ゴムの数平均分子量が10,000〜1,000,000 、好ましくは20,000〜300,000 であり、ブロック共重合体ゴム中のビニル芳香族硬質ブロックの数平均分子量が 1,000〜200,000 、好ましくは 2,000〜100,000 、共役ジエン軟質ブロックの数平均分子量が 1,000〜200,000 、好ましくは 2,000〜100,000 であり、ビニル芳香族系硬質ブロック/共役ジエン系軟質ブロックの重量比が2/98〜60/40、好ましくは10/90〜40/60の範囲内のものがよい。
【0043】
難燃剤 (3)
PPE樹脂は、燃焼試験において非滴下性で、炎を遠ざけると燃焼が止まる自己消火性も併せ持ち、耐燃性に優れた本質的に難燃性の樹脂である。しかし、特にスチレン系ポリマー(B) やスチレン系ゴム重合体(2) を配合した場合には、配合量が増すにつれて耐燃性が低下するので、難燃剤(3) を配合して、被覆に用いるPPE樹脂組成物の難燃性を強化する。
【0044】
本発明で用いる難燃剤(3) の種類は特に制限されないが、変性PPE樹脂に対する難燃剤としては、一般にリン酸エステル系化合物が使用されており、本発明においてもこれを難燃剤として使用することが好ましい。即ち、PPE樹脂の耐燃性が高いことから、最も普通に用いられる難燃剤であるハロゲン系難燃剤を使用する必要はなく、熱安定性の高いリン酸エステル系難燃剤で十分に難燃性を付与することができる。それにより、ハロゲン系難燃剤で問題となる金属腐食の問題を回避することができる。
【0045】
難燃剤として用いるリン酸エステルは、好ましくは次式で示される芳香族リン酸トリエステルである。
【0046】
【化3】
Figure 0003544574
【0047】
上記式中、各Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリール置換アルキル基およびそれらの組合わせから成る群より選ばれた同種または異種の基であって、Rの少なくとも1つはアリール基である。
【0048】
〔化3〕で示されるリン酸エステルの具体例としては、リン酸フェニルビスドデシル、リン酸フェニルビスネオペンチル、リン酸フェニルビス(3,5,5’−トリメチルヘキシル) 、リン酸エチルジフェニル、リン酸2−エチルヘキシル (p−トリル) 、リン酸トリトリル、リン酸ビス (2−エチルヘキシル) フェニル、リン酸トリ (ノニルフェニル) 、リン酸トリフェニル、リン酸ジブチルフェニル、リン酸p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル) 、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル等が挙げられる。
【0049】
特に好ましいリン酸エステルは、R基がすべてアリール基であるリン酸トリアリール型化合物、例えば、リン酸トリフェニルである。リン酸トリフェニルの3個のフェニル基の一部または全部が置換されていてもよい (例、イソプロピル化リン酸トリフェニル) 。
【0050】
難燃剤として用いるリン酸エステルはまた、次式で表される二官能性もしくは多官能性化合物または重合体あるいはそれらの混合物であってもよい。
【0051】
【化4】
Figure 0003544574
【0052】
上記式中、R、R、Rは互いに独立に選ばれた炭化水素基、R、R、R、Rは互いに独立に選ばれた炭化水素基または炭化水素オキシ基、X、X、Xは互いに独立に選ばれた炭化水素基、m、rは0〜4の整数、そしてn、pは1〜30の整数である。
【0053】
〔化4〕で示されるリン酸エステルの具体例としては、レゾルシノール、ヒドロキノンおよびビスフェノールAのビス (リン酸ジフェニル) エステルならびにそれらの重合体が挙げられる。
【0054】
なお、前述した市販のスチレン系ポリマー変性PPE樹脂 (特に、難燃性グレードの高いもの) には、リン酸エステル系難燃剤を配合したものが多い。即ち、PPE樹脂+スチレン系ポリマー+難燃剤の配合組成を有するPPE樹脂組成物が各種市販されており、それらを本発明のおける鋼材の被覆に使用することもできる。
【0055】
配合割合
本発明において鋼材の被覆に用いるPPE樹脂組成物の配合割合は次の通りである。
(1) (A) PPE樹脂10〜100 重量%、(B) スチレン系ポリマー90〜0重量%からなる樹脂成分合計100 重量部に対して、
(2) スチレン系ゴム状重合体0〜50重量部、
(3) 難燃剤〜40重量部。
【0056】
即ち、鋼材の防食保護層を構成する被覆は、PPE樹脂のみからなる組成 (この場合も、便宜上PPE樹脂組成物と称する)でもよい。従来は成形性を向上させる(例、クラック発生を防止する) ためPPE樹脂をスチレン系ポリマー等により変性していたが、本発明では被覆として利用するため、成形性はあまり重要ではなく、PPE樹脂単独でも使用できる。
【0057】
また、場合により、PPE樹脂の成形性向上の目的でスチレン系ポリマー(B) を、耐衝撃性向上の目的でスチレン系ゴム状重合体(2) を、および/または難燃性および成形性向上の目的で難燃剤(3) を、それぞれ上記範囲内の量で配合することができる。
【0058】
樹脂成分中のPPE樹脂(A) の配合量が10重量%未満では、得られるPPE樹脂組成物の耐熱性が低下し、スチレン系ゴム状重合体(2) が50重量部を越えると機械的強度が低下し、難燃剤(3) が40重量部を越えると、難燃性向上効果が飽和し経済的に不利になるばかりでなく、機械的強度が低下する。
【0059】
好ましい配合割合は、樹脂成分中のPPE樹脂が10〜100 重量%、スチレン系ポリマーが90〜0重量%であり、樹脂成分100 重量部に対してスチレン系ゴム状重合体が0〜40重量部、難燃剤が〜30重量部である。より好ましくは、樹脂成分中のPPE樹脂が20〜100 重量%、スチレン系ポリマーが80〜0重量%であり、樹脂成分100 重量部に対してスチレン系ゴム状重合体が0〜30重量部、難燃剤が〜20重量部である。
【0060】
任意添加成分
本発明において鋼材の被覆に用いるPPE樹脂組成物には、上記以外の他の高分子化合物や各種添加剤をさらに配合することも可能である。
【0061】
他の高分子化合物としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレン/エチレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ペンテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1) 等のオレフィン重合体もしくは共重合体;オレフィンとこれに共重合可能なビニル単量体 (例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、グリシジル (メタ) アクリレート等) との共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピリジン、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどの付加重合型高分子化合物;ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンエステル (例えば、ユニチカ (株) のUポリマー) 、ポリフェニレンスルフィド、6−ナイロン、6,6−ナイロン、 12−ナイロンなどのポリアミド、ポリアセタールなどの縮合型高分子化合物;シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド;ならびにフェノール樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの各種熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら他の高分子化合物の配合量は、樹脂成分(1) 100 重量部に対して500 重量部以下、特に100 重量部以下とすることが好ましい。
【0062】
本発明で用いるPPE樹脂組成物には、強化・機能付与等を目的に充填材を配合して用いることができる。使用可能な充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、アルミニウムやステンレスなどの金属繊維およびウィスカーを含む強化用繊維;ならびにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリン、硫酸マグネシウム、カーボンブラック、TiO、ZnO 、Sb などの無機充填材が挙げられる。これら充填材の配合量は、樹脂成分(1) 100 重量部に対して100 重量部以下、特に50重量部以下とすることが好ましい。
【0063】
PPE樹脂組成物に配合可能な他の添加剤としては、Sb などの難燃助剤、ミネラルオイル等の滑剤、フタル酸エステルなどの可塑剤、さらには染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候性付与剤等が挙げられる。これらの添加剤を添加する場合には、従来と同様の配合量とすればよい。
【0064】
PPE樹脂組成物の調製
本発明で鋼材の被覆に用いるPPE樹脂組成物は、樹脂成分(1) を構成するPPE樹脂、スチレン系ポリマー変性PPE樹脂、またはPPE樹脂とスチレン系ポリマーの両者に、難燃剤、必要によりスチレン系ゴム状重合体、さらには他の任意添加成分を配合して均質に混合することにより得られる。この混合は、溶液混合、溶融混練等の各種の方法が採用可能であるが、温度 150〜350 ℃、好ましくは 200〜300 ℃の範囲で溶融混練する方法を用いるのが普通である。
【0065】
溶融混練を採用する場合、各成分の添加順序は任意である。例えば、押出機等で溶融混練する場合、各成分をすべて配合して混練してもよいし、一つの押出機において複数のフィード口を設けシリンダーに沿って1種以上の各成分を順次フィードしてもよい。溶融混練により得られたPPE樹脂組成物は、そのまま直ちに本発明による鋼材の被覆に使用してもよく、或いは冷却固化してペレット、粉末等の形態にしてもよい。
【0066】
鋼材の被覆方法
PPE樹脂組成物による鋼材の被覆は、従来より鋼材の樹脂フィルム被覆に用いられてきた任意の被覆方法を利用して行うことができる。被覆する鋼材は、常法に従って前処理をすることができる。前処理としては、表面清浄化のための脱脂、酸洗、ショットブラスト処理など、耐食性向上のためのクロメート処理、リン酸塩処理などがあり、これらを組合わせて行うこともできる。
【0067】
また、被覆するPPE樹脂組成物の接着性に応じて、必要であれば、被覆層と鋼材との間に、接着強度を高めるために接着層を介在させてもよい。この接着層は、鋼材表面に例えばエポキシ樹脂系プライマーを塗布し、焼付・乾燥して形成したプライマー層でよい。或いは、ポリオレフィン被覆の場合と同様に、接着性熱可塑性樹脂、例えばマレイン酸、フマル酸等の有機酸または有機酸無水物で変性されたポリエチレンの薄いフィルムを接着層として先に鋼材表面に被覆しておいてもよい。
【0068】
鋼材の樹脂フィルム被覆方法としては、例えば、▲1▼鋼管表面に押出機から溶融樹脂をフィルム状に押出して被覆する押出被覆法、▲2▼粉末状の樹脂を空気の噴出により流動状態にした流動層内に、予熱した鋼管を浸漬して、樹脂を被覆する流動浸漬法、および▲3▼粉末状の樹脂を予熱した鋼管に静電粉体ガンにより吹き付ける吹付被覆法を用いることができる。特に小径鋼管の被覆においては、その生産性から、押出被覆法および流動浸漬法が好適である。押出被覆法は、丸ダイとTダイのいずれを用いる方式でもよいが、一般に小径鋼管・鋼材には丸ダイ方式が、大径鋼管・鋼材にはTダイ方式が適している。また、異形鋼材の被覆には流動浸漬法や吹付被覆法が好適である。
【0069】
本発明の鋼材の被覆部位は特に制限されない。即ち、必ずしも鋼材表面の全面がPPE樹脂組成物により被覆されている必要はなく、少なくとも表面の一部が被覆されていればよい。例えば、鋼管の場合には、一般に外面を本発明に従ってPPE樹脂組成物で被覆する。内面は未処理でもよく、或いは樹脂塗装その他の処理を施してもよいが、場合によっては内面もPPE樹脂組成物で被覆することも可能である。
【0070】
本発明のPPE樹脂被覆鋼材の用途は特に限定されるものではないが、防食性、耐候性、難燃性に優れるため、種々の環境での使用が可能であり、特に小径用ガス管被覆に最適である。すなわち、小径用ガス管は家屋やビルへの埋設引き込み管、立ち上げ管、屋内配管として、地中埋設、屋内、屋外のいずれにも使用されるが、従来は上記の特性を全て十分に満たす被覆鋼管は存在せず、このため使用場所ごとにポリエチレン被覆鋼管、亜鉛メッキ鋼管、塩ビ被覆鋼管などを使い分けてきた。本発明の被覆鋼管は上記の特性を高レベルで有するため、1種類の被覆鋼管で全ての場所に対応でき、作業性、経済性の点でも有利である。
【0071】
【実施例】
以下に、鋼管をPPE樹脂系熱可塑性樹脂組成物で被覆した実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例によりその範囲を限定されるものではない。なお、実施例中、%は特に指定のない限り重量%である。
【0072】
被覆に用いたPPE樹脂組成物
表1に組成を示す樹脂組成物A〜Fを用いて鋼管の被覆を行った。これらの樹脂組成物は溶融混練法により調製した。
これらの樹脂組成物のメルトフローレート(MFR) 、熱変形温度 (ASTM D648 準拠、18.6 kg/cm のファイバーストレス下で測定) 、酸素指数 (ASTM D2863準拠、試験片支持方法 A−1号) 、および耐候性 (サンシャインウェザオメーター6000時間照射 <水スプレー12分/60分> 後の伸び保持率(%) 、シート厚み1mm) の試験結果を次の表1に示す。
【0073】
【表1】
Figure 0003544574
【0074】
表1に記載した各成分の詳細は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂 (30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度: 0.5 dl/g)
PS: スチレン系ポリマー (住友化学、エスブライトE197N, Mw=35×10
SEBS:水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体からなるスチレン系ゴム重合体 (シェルケミカル、KRATON G1651)
EPS2:スチレングラフトEPDMからなるスチレン系ゴム重合体 (スチレン含有量49.6%、EPDM <エチレン−プロピレン−ジエン系ターポリマー> 住友化学、エスプレンE502)
TPP :リン酸トリフェニル。
【0075】
供試鋼管
外径60.5 mm 、肉厚3.8 mmのJIS G 3452に定められる配管用炭素鋼管を被覆用原管として使用した。この供試鋼管を、予めオルソ珪酸ナトリウム水溶液に15分間浸漬して脱脂した後、水洗浄し、インヒビターを添加した硫酸浴に15分間浸漬して酸洗を行った。さらに水洗浄後、90℃のクロメート浴に1分間浸漬し、その保有熱で乾燥させるとともに、鋼管表面に薄いクロメート皮膜を形成させた。
【0076】
鋼管の被覆方法
上記の前処理を施した鋼管を、押出被覆法または流動浸漬法により上記樹脂A〜Fのいずれかで被覆した。押出被覆法の被覆材の一部は、樹脂被覆の前にエポキシ系プライマーの塗布を行った。
比較のために、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂 (接着層) /中密度ポリエチレン樹脂 (被覆層) の2層樹脂Gおよびポリアミド樹脂H (ナイロン−6) で同様に被覆を行った。
【0077】
押出被覆法では、供試鋼管を管移動速度13 m/minで搬送ロールにより移動させながら、エポキシ系プライマー被覆材については、鋼管温度が50℃になるように誘導加熱機を用いて加熱し、エポキシ系プライマーを20〜40μmの厚みになるようにしごき塗布法により塗布し、続いて誘導加熱器により所定温度に加熱してプライマー樹脂を硬化させた。この硬化プライマー層の上に、溶融丸ダイ装置により、所定の樹脂を被覆厚が1mmになるように押出被覆した。プライマーなしの被覆材については、鋼管を誘導加熱器により所定温度に加熱後、溶融丸ダイ装置により、所定の樹脂を被覆厚が1mmになるように押出被覆した。
【0078】
ポリエチレン系2層樹脂Gを用いた比較例1、2では、上記と同様の手法で被覆したが、押出に際しては共押出機を用い、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂が鋼面側に、ポリエチレン樹脂が外側になるように被覆し、被覆厚は無水マレイン酸変性ポリエチレンが0.3 mm、ポリエチレンが0.7 mmの計1mmになるように調整した。
流動浸漬法では、50〜100 メッシュの粉体樹脂を用い、これを流動浸漬槽内で流動状態にし、誘導加熱器で300 ℃に予熱された鋼管をこの流動層に1分間浸漬し、被覆を行った。被覆厚は約1mmになった。
【0079】
被覆層と鋼管の接着強度の測定方法
被覆層と鋼管との接着強度は、図1に示すように、被覆鋼管の試験片の被覆2に、鋼材1の表面に達する直径20mmの環状スリット3を入れ、環状スリット内の円形被覆の上に円柱状のドーリー5をエポキシ系接着剤4で接着し、鋼材とドーリー間を引張試験機で引っ張ってドーリーが鋼材から離れた時の引張力を測定するという、突き合わせ接着力の測定により求めた。
【0080】
ただし、樹脂Gを用いた比較例1、2については、エポキシ系接着剤とポリエチレン樹脂との接着性が乏しいため、被覆鋼材の試験片の被覆に、鋼面に達する10 mm 幅の平行スリットを入れ、この10 mm 幅の被覆樹脂層を鋼面に対し90°の角度で引っ張る方法でピーリング接着力を測定した。
一般に、突き合わせ接着力で20 kg/cm 以上、ピーリング接着力で3.6 kg/cm以上あれば、鋼材と被覆間の接着強度は良好であると言える。
【0081】
被覆層の電気抵抗の測定方法
被覆鋼管の試験片を50℃の塩水に30日間浸漬した後、試験片の水分を軽く拭き取り、その被覆面に50×50 mm のアルミ箔を導電性のり (カルボキシメルセルロースに食塩を加え、お湯に溶かしたもの) で接着し、1時間放置した後、絶縁抵抗計でアルミ箔と鋼材間の絶縁抵抗を測定した。
一般に、塗膜抵抗としては、10Ω・m以上の絶縁抵抗を維持していれば、埋設環境でも十分な防食性を発揮できると言われている。
【0082】
被覆鋼管の防食性評価
被覆鋼管の試験片を、その被覆に鋼面に達するスリット疵を入れてから、50℃の3%食塩水に30日間浸漬し、浸漬後のスリット疵からの被覆密着性低下 (被覆のフクレ) の幅(mm)で評価した。
【0083】
耐陰極電解剥離性評価
樹脂被覆鋼管は電気防食法が併用されることがあり、このとき被覆欠陥部はカソードとなり、アルカリが発生する。このアルカリにより被覆の剥離が生じることがあるので、その抵抗性 (即ち、耐陰極電解剥離性) が要求される。
【0084】
陰極電解剥離試験は、被覆鋼管試験片にドリルにより直径5mmの人工欠陥を作製し、これを3%食塩水に浸漬して、カーボン板を対極 (アノード) とし、ポテンショスタットにより鋼管疵部表面が飽和カロメル電極基準で−1.5 Vになるように調整した。水溶液温度は23℃の一定温度になるようヒーターと冷凍機で制御し、この試験を30日間行った後、サンプルの人工欠陥端部からの被覆剥離幅(mm)で評価した。
樹脂被覆条件と測定結果を表2にまとめて示す。
【0085】
【表2】
Figure 0003544574
【0086】
本発明に従ってPPE樹脂を鋼管に被覆した実施例1〜5では、絶縁抵抗性、耐陰極電解剥離性含む防食性が非常に優れており、かつ耐候性 (表1参照) 、難燃性にも優れ、使用場所に何ら制限受けることなく使用できることがわかる。PPE樹脂は、従来は被覆用に使用されてこなかったが、エポキシ系プライマーの塗布を行わずに被覆した場合にも、鋼材に非常に高い接着強度で密着した被覆層を形成することができ、優れた防食性を発揮できることがわかる。ただし、エポキシ系プライマーの塗布を行うと防食性はさらに向上し、またPPE樹脂を不飽和カルボン酸で変性すると鋼材との接着強度がさらに向上する。
【0087】
一方、ポリエチレン樹脂G (比較例1、2) の場合は、耐候性、燃焼性の点で屋外や屋内の使用に問題があり、接着強度が比較的低いため、エポキシプラスチックの塗布を行わないと防食性が低下した。一方、またポリアミド樹脂H (比較例3) の場合は絶縁抵抗性に劣り、防食性が著しく低下した。
【0088】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の樹脂被覆鋼材は、被覆に用いるPPE樹脂組成物が耐熱性と難燃性に優れ、耐候性、耐薬品性、絶縁性にも優れている上、被覆樹脂と鋼材との接着強度が高いため、防食性が著しく高く、地中埋設、屋外、屋内の何れの環境でも十分な防食性を発揮できる。従って、本発明によりPPE樹脂で被覆した鋼管は、配管材料として幅広い使用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着強度測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1:鋼材、2:被覆、3:スリット、4:接着剤、5:ドーリー

Claims (5)

  1. 鋼材表面に、下記組成を有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物からなる被覆を有する樹脂被覆鋼材。
    (1)(A)ポリフェニレンエーテル樹脂10〜100 重量%、および(B)スチレン系ポリマー90〜0重量%
    からなる樹脂成分:100 重量部、
    (2) スチレン系ゴム重合体からなるゴム成分:0〜50重量部、
    (3) 難燃剤:〜40重量部。
  2. 鋼材と前記被覆との間に接着層を有する請求項1記載の樹脂被覆鋼材。
  3. ポリフェニレンエーテル樹脂が不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性されている請求項1および2の樹脂被覆鋼材。
  4. 前記被覆が押出被覆法により形成されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂被覆鋼材。
  5. 前記被覆が流動浸漬法により形成されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂被覆鋼材。
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