JP3544160B2 - 量子波干渉層を有した受光素子 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規構造の光電気変換素子、即ち、受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、pin接合を有した受光素子が知られている。この構造の受光素子では、pinに逆方向電圧が印加されており、通常、p層側から入力した光がi層で吸収されて、電子正孔対が生成される。このi層で励起された電子正孔対がi層中の逆方向電圧で加速されて、電子はn層へ、正孔はp層へと移動する。これにより、光強度に応じた強さの光電流を出力させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この構造の受光素子において、光/電気の変換効率を向上させるためには、光が吸収されるi層を厚くすれば良い。しかし、このi層を厚くすればする程、キャリアをn層、p層へ引き出すための時間が長くなり、光/電気変換の応答速度が低下する。この応答速度を向上させるためには、逆方向電圧を大きくして、i層における電界を大きくすれば良い。しかし、逆方向電圧を大きくすると、素子分離が困難となり、漏れ電流を生じる原因となる。この結果、光が入力していない時に流れる電流、即ち、暗電流が大きくなるという問題がある。
【0004】
よって、従来の受光素子では、受光感度、検出速度、雑音電流との間に相互関連があり、受光素子の性能に制限があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、受光素子において、全く新規な構造を有したpin接合により、受光感度、応答速度を改善することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、第1層と第1層よりもバンド幅の広い第2層とを多重周期で積層した量子波干渉層を有し、入力光を電気に変換する受光素子において、第1層と第2層の各層の厚さを、各層を伝導するキャリアの、各層における量子波の波長の4分の1の偶数倍に設定した量子波干渉層を、第2層よりもバンド幅の狭いキャリア閉込層を介在させて複数配設したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、量子波の波長を決定するためのキャリアの運動エネルギをキャリアが電子である場合には第2層の伝導帯の底付近、キャリアが正孔である場合には第2層の価電子帯の底付近に設定したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、第1層の厚さDWと第2層の厚さDBを次のように設定したことを特徴とする。
【数1】
DW=nWλW/4=nWh/4[2mW(E+V)]1/2 …(1)
【数2】
DB=nBλB/4=nBh/4(2mBE)1/2 …(2)
但し、hはプランク定数、mWは第1層を伝導するキャリアの有効質量、mBは第2層におけるキャリアの有効質量、Eは第2層を伝導する、第2層の最低エネルギレベル付近におけるキャリアの運動エネルギ、Vは第1層に対する第2層のバンド電位差、nW、nBは偶数である。
【0009】
請求項4の発明は、量子波干渉層を、第2層を伝導するキャリアの運動エネルギを複数の異なる値Ek、第1層におけるその各運動エネルギをEk+Vとし、第2層、第1層の各エネルギに対応した各量子波長をλBk,λWkとする時、第2層、第1層をnBkλBk/4、nWkλWk/4の厚さで、Tk周期繰り返された部分量子波干渉層Ikが値Ekの数だけ繰り返し形成された層、但し、nWk、nBkは偶数、としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、キャリア閉込層のバンド幅は、第1層のバンド幅に等しくしたことを特徴とする。
請求項6の発明は、キャリア閉込層の厚さを、量子波の波長λWとしたことを特徴とする。
請求項7の発明は、第1層と第2層との境界に、第1層と第2層の厚さに比べて充分に薄く、エネルギバンドを急変させるδ層を設けたことを特徴とする。
請求項8の発明は、受光素子は、pin接合構造を有し、量子波干渉層及びキャリア閉込層は、i層に形成されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、量子波干渉層及びキャリア閉込層は、n層、又は、p層に形成されていることを特徴とする。
請求項10の発明は、受光素子は、pn接合構造を有することを特徴とする。
【0011】
【発明の作用及び効果】
〔請求項1、2、3、8、9、10の発明〕
本発明にかかる量子波干渉層の原理を図1、図2に基づいて説明する。図1は、p層とn層との間に順方向に外部電圧が印加された状態を示している。即ち、外部電圧によりi層のバンドは平坦となっている。図1では、i層に4つの量子波干渉層Q1,Q2,Q3,Q4が形成されており、各量子波干渉層の間には、キャリア閉込層C1,C2,C3が形成されている。又、図2は、1つの量子波干渉層Q1の伝導帯のバンド構造を示している。
【0012】
電子が外部電界により図上左から右方向に伝導するとする。伝導に寄与する電子は、第2層Bの伝導帯の底付近に存在する電子と考えられる。この電子の運動エネルギをEとする。すると、第2層Bから第1層Wに伝導する電子は第2層Bから第1層Wへのバンド電位差Vにより加速されて、第1層Wにおける運動エネルギはE+Vとなる。又、第1層Wから第2層Bへ伝導する電子は第1層Wから第2層Bへのバンド電位差Vにより減速されて、第2層Bにおける電子の運動エネルギはEに戻る。伝導電子の運動エネルギは、多重層構造のポテンシャルエネルギによりこのような変調を受ける。
【0013】
一方、第1層Wと第2層Bの厚さが電子の量子波長と同程度となると、電子は波動として振る舞う。電子の量子波の波長は電子の運動エネルギを用いて、(1)、(2)式により求められる。さらに、波の反射率Rは第2層B、第1層Wにおける量子波の波数ベクトルをKB,KWとする時、次式で求められる。
【数3】
R=(|KW|−|KB|)/(|KW|+|KB|)
={[mW(E+V)]1/2−(mBE)1/2}/{[mW(E+V)]1/2+(mBE)1/2}
={1−[mBE/mW(E+V)]1/2}/{1+[mBE/mW(E+V)]1/2}…(3)
又、mB=mWと仮定すれば、反射率は次式で表される。
【数4】
R={1−[E/(E+V)]1/2}/{1+[E/(E+V)]1/2} …(4)
E/(E+V)=xとおけば、(4)式は次式のように変形できる。
【数5】
R=(1−x1/2)/(1+x1/2) …(5)
この反射率Rのxに対する特性は図3のようになる。
【0014】
x≦0.1の時R≧0.52となり、そのためのE,Vの関係は
【数6】
E≦V/9 …(6)
となる。第2層Bにおける伝導電子の運動エネルギEは伝導帯の底付近であることから、(6)式の関係が満足され、第2層Bと第1層Wとの境界での反射率Rは52%以上となる。このようなバンド幅の異なる層で形成された多重層構造により、この量子波干渉層へ注入される電子の量子波を効率良く反射させることができる。
【0015】
又、xを用いて第2層Bの厚さの第1層Wの厚さに対する比DB/DWは次式で求められる。
【数7】
DB/DW=[mW/(mBx)]1/2 …(7)
【0016】
ところが、第1層Wと第2層Bの厚さがこれらの各層における量子波の波長の1/4の偶数倍、例えば、量子波長の1/2となると、量子波干渉層に定在波が立ち、共鳴的伝導が生じるものと思われる。即ち、定在波による量子波の周期と量子波干渉層のポテンシャル周期とが一致する結果、各層でのキャリアの散乱が抑制され、高移動度の伝導が実現すると考えられる。図1に示すように、pin構造のi層において、このような量子波干渉層Q1,Q2,Q3,Q4をキャリア閉込層C1,C2,C3をそれぞれ間に介在させて設けた受光素子において、i層に光が入射すると、キャリア閉込層C1,C2,C3の伝導帯に光励起された電子が蓄積される。この光励起された電子は、印加された順方向電圧によりp層側に流れようとする。その光励起電子は、閉込られたキャリア閉込層に対してp層側に存在する量子波干渉層による透過条件が満たされていないときは、電子は移動しない。即ち、図1で左端の量子波干渉層Q1を透過した少数の電子はキャリア閉込層C1において基底レベルに緩和され、次の量子波干渉層Q2を透過できない。
【0017】
ところが、このキャリア閉込層C1,C2,C3に閉じこめられた電子が多くなると、より高レベルに電子が存在するようになる。この高レベルに存在する電子の運動エネルギが増加するため、上記の量子波干渉層による透過条件を満たすようになる。この結果、電子は量子波干渉層Q2,Q3,Q4を透過してp層に流れる。これが光電流となる。
【0018】
この受光素子には順方向電圧が印加されることから、低電圧駆動が可能となり、素子間の絶縁分離が容易となる。又、光が入力されない状態では、電子は量子波干渉層で高透過される状態ではないため、暗電流を小さくすることができる。又、電子の移動は、量子波干渉層を波動として伝搬すると考えられるので、応答速度が高速となる。
【0019】
又、価電子帯においても、エネルギレベルが周期的に変動するが、バンド電位差Vが伝導帯のバンド電位差と異なること、第1層W、第2層Bにおける正孔の有効質量が電子の有効質量と異なること等のため、電子に対して高透過性に設定された第1層Wと第2層Bの幅の設定値は正孔に対する高透過性が得られる条件にはならない。よって、上記の構造の量子波干渉層は、電子に対して高透過性(高移動度)となり、正孔に対して高透過性(高移動度)にはならない。
【0020】
又、逆に、価電子帯のバンド電位差、正孔の有効質量を用いて、第1層W、第2層Bの厚さを設計することで、量子波干渉層を正孔に対して高移動度とし、電子に対して通常の移動度とする層とする正孔透過層とすることも可能である。
【0021】
以上の議論を、図4を用いて更に説明する。図4の(a)〜(h)は、多重量子井戸構造のポテンシャルにおける電子の量子波の反射と、多重量子井戸の伝導帯を示すポテンシャルの周期との関係を示したものである。図4の(a)〜(d)は、伝播する電子の量子波の波長の1/4の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重層を用いたときの関係を示し、図4の(e)〜(h)は、伝播する電子の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重層を用いたときの関係を示している。図4の(a)〜(h)では、各層の厚さを等しくしているが、これは視覚的な理解を助けるためのものである。いま、第2層Bの伝導帯の底付近にある電子が、図4の(a)及び(e)上左から右に流れ、図4の(b)或いは(f)のように、第1層Wとの界面に到達するとする。
【0022】
図4の(a)のように、伝播する電子の量子波の波長の1/4の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸に、電子の量子波が第2層Bから第1層Wとの界面に到達すると、図4の(c)のように、入射波QW1に対し、透過波QW2と、透過波QW2と同位相の反射波QW3が生じる。次に、図4の(d)のように、透過波QW2が第1層Wから第2層Bとの界面に到達すると、透過波QW4と、透過波QW4と逆位相の反射波QW5が生じる。界面での透過波と反射波の位相のこれらの関係は、界面での伝導帯のポテンシャルが下がるか、上がるかの違いによるものである。また、やはり視覚的な理解を助けるため、QW1、QW2、QW3、QW4、QW5はすべて同振幅で図示してある。
【0023】
さて、図4の(a)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/4の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、QW1、QW2、QW4で構成される図上左から右へ伝播する電子の量子波と、2つの界面での反射による反射波QW3、QW5で構成される図上右から左へ伝播する電子の量子波は、互いに打ち消しあう関係にあることがわかる(図4の(d))。ここから、図4の(a)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/4の奇数倍厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、電子の量子波を打ち消す、即ち電子を伝播しない反射層として作用することが理解できる。
【0024】
同様の議論で、図4の(e)〜(h)に示すように、伝播する電子の量子波の波長の1/4の偶数倍の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、電子の量子波を定在波とすることが理解できる。
【0025】
即ち、図4の(e)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸に電子の量子波が第2層Bから第1層Wとの界面に到達すると、図4の(g)のように、入射波QW1に対し、透過波QW2と、透過波QW2と同位相の反射波QW3が生じる。次に図4の(h)のように、透過波QW2が第1層Wから次の第2層Bとの界面に到達すると、透過波QW4と、透過波QW4と逆位相の反射波QW5が生じる。図4の(e)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、QW1、QW2、QW4で構成される図上左から右へ伝播する電子の量子波と、第2の界面での反射による反射波QW5で構成される図上右から左へ伝播する電子の量子波は、互いに強めあう関係にあることがわかる(図4の(h))。また逆に、反射波QW3とQW5が打ち消しあい、QW1、QW2、QW4で構成される図4の(e)上左から右へ伝播する電子の量子波が定在波となるとも理解できる。ここから、伝播する電子の量子波の波長の1/4の偶数倍の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、電子の量子波を定在波とする、即ち電子に対して高透過性(高移動度)となる透過層として作用することが理解できる。
【0026】
全く同様の議論が、正孔と、正孔の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸構造についても明らかに成り立つ。
【0027】
上記のキャリアの透過機能を有する量子波干渉層は、0Vから所定の(わずかな)バイアス電圧までキャリアを高透過せず、所定の(わずかな)バイアス電圧で高透過するので、光受光素子をn層だけ、又は、p層だけで形成し、上記の量子波干渉層とキャリア閉込層を、n層又はp層に形成しても良い。同様に、pn接合の受光素子を形成し、そのn層、p層に形成しても良い。
【0028】
〔請求項4の発明〕
請求項4の発明は、図5に示すように、第1層Wと第1層Wよりもバンド幅の広い第2層Bとの多重周期から量子波干渉層を次のように形成したことを特徴とする。 第1層W、第2層Bを、それぞれ、厚さDWk,DBkで任意周期Tkだけ繰り返して部分量子波干渉層Ikとする。
但し、
【数8】
DWk=nWkλWk/4=nWkh/4[2mWk(Ek+V)]1/2 …(8)
【数9】
DBk=nBkλBk/4=nBkh/4(2mBkEk)1/2 …(9)
ここで、Ekは第2層を伝導するキャリアの運動エネルギの複数の異なる値、mWkは第1層における運動エネルギEk+Vを有するキャリアの有効質量、mBkは第2層における運動エネルギEkを有するキャリアの有効質量、nWk、nBkは任意の偶数である。
このように形成された部分量子波干渉層IkをI1,…,Ijと、kの最大値jだけ直列接続して量子波干渉層が形成される。この運動エネルギEkの離散間隔を狭くすれば、連続したあるエネルギ範囲にあるキャリアを高透過(高移動度)させることができる。
【0029】
〔請求項5、6〕
請求項5は、キャリア閉込層のバンド幅を第1層のバンド幅に等しくしている。又、請求項6はそのキャリア閉込層の厚さをその層の量子波の波長λWとしている。これにより、光励起されたキャリアの閉込(蓄積)を効果的に行うとともに、順方向電圧により、隣接する量子波干渉層とともにキャリアの高透過層(高移動度層)に変化し、量子波干渉効果を更に大きくすることができる。
【0030】
〔請求項7〕
図6に示すように、第1層Wと第2層Bとの境界において、エネルギバンドを急変させる厚さが第1層W、第2層Bに比べて十分に薄いδ層を設けても良い。この効果としては、製造技術上の問題から生じる層間のバンドギャップを急峻にするためと考えられる。これを図7に示す。δ層を形成しないとき、図7(a)の如くバンドを形成しようとしても、積層時に第1層Wと第2層Bの成分が層間で一部混合し、急峻なバンドギャップが得られない(図7(b))。しかし、図7(c)の如く層間にδ層を形成するときは、成分が層間で一部混合したとしても、δ層を形成しないときに比較し、急峻なバンドギャップが得られるものと考えられる(図7(d))。
【0031】
このδ層は、図6(a)に示すように、各第1層Wの両側の境界に設けられているが、片側の境界だけに設けても良い。又、δ層は、図6(a)に示すように、境界に第2層Bのバンドの底よりもさらに高い底を有するバンドが形成されるように設けているが、図6(b)に示すように、境界に第1層Wの底よりもさらに低い底を有するバンドを有するように形成しても良い。さらに、図6(c)に示すように、境界に第2層Bよりも高いエネルギレベルを有し第1層Wよりも低いエネルギレベルを有する2つのδ層を形成しても良い。更に、前述の通り、図6(c)で各層の両側の境界に設けられているδ層は、図6(d)に示すように、片側の境界だけに設けても良い。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。なお本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔第1実施例〕
図8は量子波干渉層をi層に形成したpin受光素子の断面図である。GaAsから成る基板10の上に、n−GaAsから成る厚さ0.3μm、電子濃度2×1018/cm3のバッファ層12が形成され、その上にn−Ga0.51In0.49Pから成る厚さ0.13μm、電子濃度2×1018/cm3のn形コンタクト層14が形成されている。n形コンタクト層14の上には、n−Al0.51In0.49Pから成る厚さ0.43μm、電子濃度1×1018/cm3のn層16が形成されている。そのn層16の上には、不純物無添加のi層18が形成され、そのi層18の上にはAl0.51In0.49Pから成る厚さ0.43μm、正孔濃度1×1018/cm3のp層20が形成されている。さらに、そのp層20の上にp−Ga0.51In0.49Pから成る厚さ0.13μm、正孔濃度2×1018/cm3の第2p形コンタクト層22とp−GaAsから成る厚さ0.06μm、正孔濃度2×1018/cm3の第1p形コンタクト層24が形成されている。さらに、基板10の裏面には厚さ0.2μmのAu/Geから成る電極26が形成され、第1p形コンタクト層26の上には厚さ0.2μmのAu/Znから成る電極28が形成されている。
【0034】
上記のi層18の中に、不純物無添加のGa0.51In0.49Pから成る第1層Wと不純物無添加のAl0.51In0.49Pから成る第2層Bを10周期多重化した量子波干渉層Q1、これと同様な構成の量子波干渉層Q2,Q3,Q4と全体で4組設けられている。1つの量子波干渉層Q1の詳細なバンド構造が図6の(a)に示されている。第1層Wの厚さは10nm、第2層Bの厚さは14nmであり、第2層Bと第1層Wとの間には厚さ1.3nmの不純物無添加のAl0.33Ga0.33In0.33Pから成るδ層が形成されている。又、各量子波干渉層Qi,Qi+1間には厚さ20nm、不純物無添加のGa0.51In0.49Pから成るキャリア閉込層Ciが形成されている。第2層Bと第1層Wの厚さの条件は、外部電圧が印加されていない状態で、上記した(1)、(2)式で決定されている。
【0035】
尚、p層20又はn層16に接合する第2層Bは10nmである。又、基板10は、2インチ径の大きさであり、基板の主面は面方位(100)に対して15°方位[011]方向にオフセットしている。
【0036】
この受光素子は、ガスソースMBE法により製造された。ガスソースMBE法は、結晶のエレメント材料全てを固体ソースから供給する従来形のMBE法とは異なり、V族元素(As,P)等をガス状原料(AsH3,PH3)の熱分解により供給し、III族エレメント(In,Ga,Al)は固体ソースから供給する超高真空下の分子線結晶成長法である。なお、有機金属ガス気相成長法(MOCVD)を用いることもできる。
【0037】
上記の構成の受光素子において、p層20とn層16との間に順方向に電圧Vを増加させて行くと、図1に示すように、i層18のバンドの傾斜が平坦となる電位が存在する。キャリア閉込層C1,C2,C3の存在により、キャリア閉込層C1,C2,C3にキャリアが蓄積されていない場合には量子波干渉層Q1〜Q4において電子に対して透過条件が成立していない。
【0038】
次に、キャリア閉込層C1〜C3のバンド幅に共鳴したエネルギの光が入射すると、このキャリア閉込層C1〜C3に電子が励起される。このキャリア閉込層C1〜C3における電子濃度が高くなり、第2層Bの伝導帯の底付近以上の電子が多く存在するようになると、n層16の電子が隣のキャリア閉込層C1に伝導し、キャリア閉込層C1の電子は隣のキャリア閉込層C2に伝導する。このようにして、電子は各キャリア閉込層Ciを介在させて、各量子波干渉層中は電子の波としての性質により高速に伝導すると考えられる。このようにして、光励起により電子は高速にn層16からp層20へと伝導すると考えられる。
【0039】
尚、この光受光素子は、キャリア閉込層C1〜C3に励起される電子がn層16からp層20への電子の伝導に対してゲートスイッチの機能を有しているので、光電気変換効率が高い。さらに、キャリア閉込層C1〜C3に電子が励起されていない場合には、量子波干渉層Q1〜Q4は電子に対して透過条件が満たされていないが、キャリア閉込層C1〜C3に電子が励起された場合にのみ、電子の透過条件が満たされるようになり、量子波干渉層Q1〜Q4を電子は量子波として伝導すると考えられるため、スイッチング速度も高速になると思われる。
【0040】
この光受光素子のV−I特性を測定した。図9に示すように、光を照射した場合には、わずかな順方向電圧により、10−10〜10−7Aまで電流が立ち上がり、0.8Vの順方向電圧により、電流は10−5Aまで急峻に増加しているのが分かる。それに対して、暗電流は量子波干渉層による電子の透過作用の影響が少なく、順方向電圧を印加しても小さい値に抑制されている。尚、光電流の暗電流に対する比は、順方向電圧が1.2V以下の範囲で100倍程度、1.5V付近でも10倍程度あることが理解される。尚、i層18の電位を平坦にする順方向電圧は0.5Vと考えられるが、この0.5Vの電圧で、光電流は約1×10−5Aとなっているのが分かる。
【0041】
〔比較例〕
比較のため、上記と同様な受光素子のi層に形成した量子波干渉層を以下のように形成したものを作製した。即ち、i層18は、Ga0.51In0.49Pから成る厚さ5nmの第1層WとAl0.51In0.49Pから成る厚さ7nmの第2層Bと第1層Wの両側に形成された厚さ1.3nmの不純物無添加のAl0.33Ga0.33In0.33Pから成るδ層とを1組として10周期繰り返された量子波干渉層Q1と、これと同一構造の量子波干渉層Q2,…,Q4とを合わせて、全体で4組設けた。1つの量子波干渉層Q1の詳細なバンド構造は図6(a)に示すものと同様である。又、各量子波干渉層Qi,Qi+1間には厚さ20nm、不純物無添加のGa0.51In0.49Pから成るキャリア閉込層C1〜C3が形成されている。第2層Bと第1層Wの厚さの条件は、電極28と電極26間に順方向電圧を印加して、i層18に電位傾斜がない状態において上記した(1)、(2)式で、nW、nBを1(奇数)として決定したものである。これは本発明者らが、本発明のキャリア透過層に対し、逆の働きを持つキャリア反射層と考えているものである。これはすでに図4(a)乃至(d)を用いて説明したものに相当する。尚、n層16又はp層20に接合する第2層Bは0.05μmとした。
【0042】
この光受光素子のV−I特性を測定した。図10に示す。光を照射した場合には、0.2Vの順方向電圧により、電流は4桁程急峻に増加しているが、その値は10−7Aと、図9に示す上記実施例の10−5Aに比して小さい。また、図10の比較例は、微電圧では電流は全く流れないが、図9に示す上記実施例ではわずかな順方向電圧で電流が生じている。
【0043】
上記実施例とこの比較例とを検討すると、光電流と暗電流とでのV−I特性の差、本発明にかかる実施例と比較例とでのV−I特性の差が生ずるのは、単に多重量子井戸構造にしたがためではなく、多重量子井戸構造の各層の膜厚に大きく依存しているためと理解できる。このように、本発明によれば、キャリアを高速に移動させるキャリア透過層となる多重量子井戸構造の量子波干渉層を提供できることがわかった。
【0044】
又、上記実施例では、Q1〜Q4の4つの量子波干渉層をキャリア閉込層C1〜C3を介在させて直列に接続したが、本発明はこれら量子波干渉層とキャリア閉込層の数には限定されない。少なくとも量子波干渉層Q1,キャリア閉込層C1,量子波干渉層Q2の様に、1組形成されていれば良い。
【0045】
上記の実施例の受光素子は、電子の波動的性質を用いたものである。よって電子/正孔透過層における電子/正孔の移動速度は波の伝搬速度となり、高速応答が実現できるとともに、使用帯域を拡大できる。上記実施例では、δ層を形成している。このδ層によりポテンシャル界面でのバンドギャップエネルギの変化を急峻とし、量子波干渉効果(高透過)を著しく向上させることができる。効果は低下するもののδ層がない多重量子井戸構造でも良い。又、上記実施例では、量子波干渉層をGa0.51In0.49PとAl0.51In0.49Pとの多重層で構成し、δ層をAl0.33Ga0.33In0.33Pで構成したが、多重層を構成する第1層及び第2層、並びにδ層は、4元系のAlxGayIn1−x−yP或いはAlxGayIn1−x−yAs(0≦x,y,x+y≦1の任意の値)で組成比を異にして形成しても良い。
【0046】
さらに、量子波干渉層は、他のIII族−V族化合物半導体、II族−VI族化合物半導体、Si/Ge、その他の異種半導体の多重接合で構成することが可能である。具体的には下記のような組み合わせが望ましい。尚、バンド幅の広い層/バンド幅の狭い層//基板を意味し、x、yは明記していない場合は、それぞれ0<x,y<1の任意の値である。
<1> AlxIn1−xP/GayIn1−yP//GaAs
<2> AlxGa1−xAs/GaAs//GaAs
<3> GaxIn1−xP/InP//InP
<4> GaxIn1−xP/GayIn1−yAs//GaAs
<5> AlAs/AlxGa1−xAs//GaAs 0.8≦x≦0.9
<6> InP/GaxIn1−xAsyP1−y//GaAs
<7> Si/SiGex//任意 0.1≦x≦0.3
<8> Si/SiGexCy//任意 0.1≦x≦0.3, 0<y≦0.1
<9> Alx1Gay1In1−x1−y1N/Alx2Gay2In1−x2−y2N//Si,SiC,GaN,サファイア
0≦x1,x2,y1,y2,x1+y1,x2+y2≦1
<10> Alx1Gay1In1−x1−y1Nx2Py2As1−x2−y2/Alx3Gay3In1−x3−y3Nx4Py4As1−x4−y4//任意
0≦x1,x3,y1,y3,x1+y1,x3+y3≦1, 0<x2,x4<1,0≦y2,y4,x2+y2,x4+y4≦1
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念を説明するための説明図。
【図2】本発明の理論を説明するための説明図。
【図3】第2層におけるキャリアの運動エネルギの第1層における運動エネルギに対する比xに対する反射率Rの関係を示した特性図。
【図4】本発明の概念を説明するための説明図。
【図5】本発明の概念を説明するための説明図。
【図6】本発明の概念を説明するための説明図。
【図7】本発明の概念を説明するための説明図。
【図8】本発明の実施例に係る受光素子の構造を示した断面図。
【図9】その受光素子における光の非照射時、照射時のV−I特性の測定図。
【図10】比較例の受光素子における光の非照射時、照射時のV−I特性の測定図。
【符号の説明】
10…基板
12…バッファ層
14…n形コンタクト層
16…n層
18…i層
20…p層
22…第2p形コンタクト層
24…第1p形コンタクト層
26,28…電極
Q1〜Q4…量子波干渉層
B…第2層
W…第1層
C,C1〜C3…キャリア閉込層
【発明の属する技術分野】
本発明は新規構造の光電気変換素子、即ち、受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、pin接合を有した受光素子が知られている。この構造の受光素子では、pinに逆方向電圧が印加されており、通常、p層側から入力した光がi層で吸収されて、電子正孔対が生成される。このi層で励起された電子正孔対がi層中の逆方向電圧で加速されて、電子はn層へ、正孔はp層へと移動する。これにより、光強度に応じた強さの光電流を出力させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この構造の受光素子において、光/電気の変換効率を向上させるためには、光が吸収されるi層を厚くすれば良い。しかし、このi層を厚くすればする程、キャリアをn層、p層へ引き出すための時間が長くなり、光/電気変換の応答速度が低下する。この応答速度を向上させるためには、逆方向電圧を大きくして、i層における電界を大きくすれば良い。しかし、逆方向電圧を大きくすると、素子分離が困難となり、漏れ電流を生じる原因となる。この結果、光が入力していない時に流れる電流、即ち、暗電流が大きくなるという問題がある。
【0004】
よって、従来の受光素子では、受光感度、検出速度、雑音電流との間に相互関連があり、受光素子の性能に制限があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、受光素子において、全く新規な構造を有したpin接合により、受光感度、応答速度を改善することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、第1層と第1層よりもバンド幅の広い第2層とを多重周期で積層した量子波干渉層を有し、入力光を電気に変換する受光素子において、第1層と第2層の各層の厚さを、各層を伝導するキャリアの、各層における量子波の波長の4分の1の偶数倍に設定した量子波干渉層を、第2層よりもバンド幅の狭いキャリア閉込層を介在させて複数配設したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、量子波の波長を決定するためのキャリアの運動エネルギをキャリアが電子である場合には第2層の伝導帯の底付近、キャリアが正孔である場合には第2層の価電子帯の底付近に設定したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、第1層の厚さDWと第2層の厚さDBを次のように設定したことを特徴とする。
【数1】
DW=nWλW/4=nWh/4[2mW(E+V)]1/2 …(1)
【数2】
DB=nBλB/4=nBh/4(2mBE)1/2 …(2)
但し、hはプランク定数、mWは第1層を伝導するキャリアの有効質量、mBは第2層におけるキャリアの有効質量、Eは第2層を伝導する、第2層の最低エネルギレベル付近におけるキャリアの運動エネルギ、Vは第1層に対する第2層のバンド電位差、nW、nBは偶数である。
【0009】
請求項4の発明は、量子波干渉層を、第2層を伝導するキャリアの運動エネルギを複数の異なる値Ek、第1層におけるその各運動エネルギをEk+Vとし、第2層、第1層の各エネルギに対応した各量子波長をλBk,λWkとする時、第2層、第1層をnBkλBk/4、nWkλWk/4の厚さで、Tk周期繰り返された部分量子波干渉層Ikが値Ekの数だけ繰り返し形成された層、但し、nWk、nBkは偶数、としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、キャリア閉込層のバンド幅は、第1層のバンド幅に等しくしたことを特徴とする。
請求項6の発明は、キャリア閉込層の厚さを、量子波の波長λWとしたことを特徴とする。
請求項7の発明は、第1層と第2層との境界に、第1層と第2層の厚さに比べて充分に薄く、エネルギバンドを急変させるδ層を設けたことを特徴とする。
請求項8の発明は、受光素子は、pin接合構造を有し、量子波干渉層及びキャリア閉込層は、i層に形成されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、量子波干渉層及びキャリア閉込層は、n層、又は、p層に形成されていることを特徴とする。
請求項10の発明は、受光素子は、pn接合構造を有することを特徴とする。
【0011】
【発明の作用及び効果】
〔請求項1、2、3、8、9、10の発明〕
本発明にかかる量子波干渉層の原理を図1、図2に基づいて説明する。図1は、p層とn層との間に順方向に外部電圧が印加された状態を示している。即ち、外部電圧によりi層のバンドは平坦となっている。図1では、i層に4つの量子波干渉層Q1,Q2,Q3,Q4が形成されており、各量子波干渉層の間には、キャリア閉込層C1,C2,C3が形成されている。又、図2は、1つの量子波干渉層Q1の伝導帯のバンド構造を示している。
【0012】
電子が外部電界により図上左から右方向に伝導するとする。伝導に寄与する電子は、第2層Bの伝導帯の底付近に存在する電子と考えられる。この電子の運動エネルギをEとする。すると、第2層Bから第1層Wに伝導する電子は第2層Bから第1層Wへのバンド電位差Vにより加速されて、第1層Wにおける運動エネルギはE+Vとなる。又、第1層Wから第2層Bへ伝導する電子は第1層Wから第2層Bへのバンド電位差Vにより減速されて、第2層Bにおける電子の運動エネルギはEに戻る。伝導電子の運動エネルギは、多重層構造のポテンシャルエネルギによりこのような変調を受ける。
【0013】
一方、第1層Wと第2層Bの厚さが電子の量子波長と同程度となると、電子は波動として振る舞う。電子の量子波の波長は電子の運動エネルギを用いて、(1)、(2)式により求められる。さらに、波の反射率Rは第2層B、第1層Wにおける量子波の波数ベクトルをKB,KWとする時、次式で求められる。
【数3】
R=(|KW|−|KB|)/(|KW|+|KB|)
={[mW(E+V)]1/2−(mBE)1/2}/{[mW(E+V)]1/2+(mBE)1/2}
={1−[mBE/mW(E+V)]1/2}/{1+[mBE/mW(E+V)]1/2}…(3)
又、mB=mWと仮定すれば、反射率は次式で表される。
【数4】
R={1−[E/(E+V)]1/2}/{1+[E/(E+V)]1/2} …(4)
E/(E+V)=xとおけば、(4)式は次式のように変形できる。
【数5】
R=(1−x1/2)/(1+x1/2) …(5)
この反射率Rのxに対する特性は図3のようになる。
【0014】
x≦0.1の時R≧0.52となり、そのためのE,Vの関係は
【数6】
E≦V/9 …(6)
となる。第2層Bにおける伝導電子の運動エネルギEは伝導帯の底付近であることから、(6)式の関係が満足され、第2層Bと第1層Wとの境界での反射率Rは52%以上となる。このようなバンド幅の異なる層で形成された多重層構造により、この量子波干渉層へ注入される電子の量子波を効率良く反射させることができる。
【0015】
又、xを用いて第2層Bの厚さの第1層Wの厚さに対する比DB/DWは次式で求められる。
【数7】
DB/DW=[mW/(mBx)]1/2 …(7)
【0016】
ところが、第1層Wと第2層Bの厚さがこれらの各層における量子波の波長の1/4の偶数倍、例えば、量子波長の1/2となると、量子波干渉層に定在波が立ち、共鳴的伝導が生じるものと思われる。即ち、定在波による量子波の周期と量子波干渉層のポテンシャル周期とが一致する結果、各層でのキャリアの散乱が抑制され、高移動度の伝導が実現すると考えられる。図1に示すように、pin構造のi層において、このような量子波干渉層Q1,Q2,Q3,Q4をキャリア閉込層C1,C2,C3をそれぞれ間に介在させて設けた受光素子において、i層に光が入射すると、キャリア閉込層C1,C2,C3の伝導帯に光励起された電子が蓄積される。この光励起された電子は、印加された順方向電圧によりp層側に流れようとする。その光励起電子は、閉込られたキャリア閉込層に対してp層側に存在する量子波干渉層による透過条件が満たされていないときは、電子は移動しない。即ち、図1で左端の量子波干渉層Q1を透過した少数の電子はキャリア閉込層C1において基底レベルに緩和され、次の量子波干渉層Q2を透過できない。
【0017】
ところが、このキャリア閉込層C1,C2,C3に閉じこめられた電子が多くなると、より高レベルに電子が存在するようになる。この高レベルに存在する電子の運動エネルギが増加するため、上記の量子波干渉層による透過条件を満たすようになる。この結果、電子は量子波干渉層Q2,Q3,Q4を透過してp層に流れる。これが光電流となる。
【0018】
この受光素子には順方向電圧が印加されることから、低電圧駆動が可能となり、素子間の絶縁分離が容易となる。又、光が入力されない状態では、電子は量子波干渉層で高透過される状態ではないため、暗電流を小さくすることができる。又、電子の移動は、量子波干渉層を波動として伝搬すると考えられるので、応答速度が高速となる。
【0019】
又、価電子帯においても、エネルギレベルが周期的に変動するが、バンド電位差Vが伝導帯のバンド電位差と異なること、第1層W、第2層Bにおける正孔の有効質量が電子の有効質量と異なること等のため、電子に対して高透過性に設定された第1層Wと第2層Bの幅の設定値は正孔に対する高透過性が得られる条件にはならない。よって、上記の構造の量子波干渉層は、電子に対して高透過性(高移動度)となり、正孔に対して高透過性(高移動度)にはならない。
【0020】
又、逆に、価電子帯のバンド電位差、正孔の有効質量を用いて、第1層W、第2層Bの厚さを設計することで、量子波干渉層を正孔に対して高移動度とし、電子に対して通常の移動度とする層とする正孔透過層とすることも可能である。
【0021】
以上の議論を、図4を用いて更に説明する。図4の(a)〜(h)は、多重量子井戸構造のポテンシャルにおける電子の量子波の反射と、多重量子井戸の伝導帯を示すポテンシャルの周期との関係を示したものである。図4の(a)〜(d)は、伝播する電子の量子波の波長の1/4の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重層を用いたときの関係を示し、図4の(e)〜(h)は、伝播する電子の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重層を用いたときの関係を示している。図4の(a)〜(h)では、各層の厚さを等しくしているが、これは視覚的な理解を助けるためのものである。いま、第2層Bの伝導帯の底付近にある電子が、図4の(a)及び(e)上左から右に流れ、図4の(b)或いは(f)のように、第1層Wとの界面に到達するとする。
【0022】
図4の(a)のように、伝播する電子の量子波の波長の1/4の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸に、電子の量子波が第2層Bから第1層Wとの界面に到達すると、図4の(c)のように、入射波QW1に対し、透過波QW2と、透過波QW2と同位相の反射波QW3が生じる。次に、図4の(d)のように、透過波QW2が第1層Wから第2層Bとの界面に到達すると、透過波QW4と、透過波QW4と逆位相の反射波QW5が生じる。界面での透過波と反射波の位相のこれらの関係は、界面での伝導帯のポテンシャルが下がるか、上がるかの違いによるものである。また、やはり視覚的な理解を助けるため、QW1、QW2、QW3、QW4、QW5はすべて同振幅で図示してある。
【0023】
さて、図4の(a)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/4の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、QW1、QW2、QW4で構成される図上左から右へ伝播する電子の量子波と、2つの界面での反射による反射波QW3、QW5で構成される図上右から左へ伝播する電子の量子波は、互いに打ち消しあう関係にあることがわかる(図4の(d))。ここから、図4の(a)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/4の奇数倍厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、電子の量子波を打ち消す、即ち電子を伝播しない反射層として作用することが理解できる。
【0024】
同様の議論で、図4の(e)〜(h)に示すように、伝播する電子の量子波の波長の1/4の偶数倍の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、電子の量子波を定在波とすることが理解できる。
【0025】
即ち、図4の(e)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸に電子の量子波が第2層Bから第1層Wとの界面に到達すると、図4の(g)のように、入射波QW1に対し、透過波QW2と、透過波QW2と同位相の反射波QW3が生じる。次に図4の(h)のように、透過波QW2が第1層Wから次の第2層Bとの界面に到達すると、透過波QW4と、透過波QW4と逆位相の反射波QW5が生じる。図4の(e)のような、伝播する電子の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、QW1、QW2、QW4で構成される図上左から右へ伝播する電子の量子波と、第2の界面での反射による反射波QW5で構成される図上右から左へ伝播する電子の量子波は、互いに強めあう関係にあることがわかる(図4の(h))。また逆に、反射波QW3とQW5が打ち消しあい、QW1、QW2、QW4で構成される図4の(e)上左から右へ伝播する電子の量子波が定在波となるとも理解できる。ここから、伝播する電子の量子波の波長の1/4の偶数倍の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸においては、電子の量子波を定在波とする、即ち電子に対して高透過性(高移動度)となる透過層として作用することが理解できる。
【0026】
全く同様の議論が、正孔と、正孔の量子波の波長の1/2の厚さの第2層Bと第1層Wとが周期的に形成された多重量子井戸構造についても明らかに成り立つ。
【0027】
上記のキャリアの透過機能を有する量子波干渉層は、0Vから所定の(わずかな)バイアス電圧までキャリアを高透過せず、所定の(わずかな)バイアス電圧で高透過するので、光受光素子をn層だけ、又は、p層だけで形成し、上記の量子波干渉層とキャリア閉込層を、n層又はp層に形成しても良い。同様に、pn接合の受光素子を形成し、そのn層、p層に形成しても良い。
【0028】
〔請求項4の発明〕
請求項4の発明は、図5に示すように、第1層Wと第1層Wよりもバンド幅の広い第2層Bとの多重周期から量子波干渉層を次のように形成したことを特徴とする。 第1層W、第2層Bを、それぞれ、厚さDWk,DBkで任意周期Tkだけ繰り返して部分量子波干渉層Ikとする。
但し、
【数8】
DWk=nWkλWk/4=nWkh/4[2mWk(Ek+V)]1/2 …(8)
【数9】
DBk=nBkλBk/4=nBkh/4(2mBkEk)1/2 …(9)
ここで、Ekは第2層を伝導するキャリアの運動エネルギの複数の異なる値、mWkは第1層における運動エネルギEk+Vを有するキャリアの有効質量、mBkは第2層における運動エネルギEkを有するキャリアの有効質量、nWk、nBkは任意の偶数である。
このように形成された部分量子波干渉層IkをI1,…,Ijと、kの最大値jだけ直列接続して量子波干渉層が形成される。この運動エネルギEkの離散間隔を狭くすれば、連続したあるエネルギ範囲にあるキャリアを高透過(高移動度)させることができる。
【0029】
〔請求項5、6〕
請求項5は、キャリア閉込層のバンド幅を第1層のバンド幅に等しくしている。又、請求項6はそのキャリア閉込層の厚さをその層の量子波の波長λWとしている。これにより、光励起されたキャリアの閉込(蓄積)を効果的に行うとともに、順方向電圧により、隣接する量子波干渉層とともにキャリアの高透過層(高移動度層)に変化し、量子波干渉効果を更に大きくすることができる。
【0030】
〔請求項7〕
図6に示すように、第1層Wと第2層Bとの境界において、エネルギバンドを急変させる厚さが第1層W、第2層Bに比べて十分に薄いδ層を設けても良い。この効果としては、製造技術上の問題から生じる層間のバンドギャップを急峻にするためと考えられる。これを図7に示す。δ層を形成しないとき、図7(a)の如くバンドを形成しようとしても、積層時に第1層Wと第2層Bの成分が層間で一部混合し、急峻なバンドギャップが得られない(図7(b))。しかし、図7(c)の如く層間にδ層を形成するときは、成分が層間で一部混合したとしても、δ層を形成しないときに比較し、急峻なバンドギャップが得られるものと考えられる(図7(d))。
【0031】
このδ層は、図6(a)に示すように、各第1層Wの両側の境界に設けられているが、片側の境界だけに設けても良い。又、δ層は、図6(a)に示すように、境界に第2層Bのバンドの底よりもさらに高い底を有するバンドが形成されるように設けているが、図6(b)に示すように、境界に第1層Wの底よりもさらに低い底を有するバンドを有するように形成しても良い。さらに、図6(c)に示すように、境界に第2層Bよりも高いエネルギレベルを有し第1層Wよりも低いエネルギレベルを有する2つのδ層を形成しても良い。更に、前述の通り、図6(c)で各層の両側の境界に設けられているδ層は、図6(d)に示すように、片側の境界だけに設けても良い。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。なお本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔第1実施例〕
図8は量子波干渉層をi層に形成したpin受光素子の断面図である。GaAsから成る基板10の上に、n−GaAsから成る厚さ0.3μm、電子濃度2×1018/cm3のバッファ層12が形成され、その上にn−Ga0.51In0.49Pから成る厚さ0.13μm、電子濃度2×1018/cm3のn形コンタクト層14が形成されている。n形コンタクト層14の上には、n−Al0.51In0.49Pから成る厚さ0.43μm、電子濃度1×1018/cm3のn層16が形成されている。そのn層16の上には、不純物無添加のi層18が形成され、そのi層18の上にはAl0.51In0.49Pから成る厚さ0.43μm、正孔濃度1×1018/cm3のp層20が形成されている。さらに、そのp層20の上にp−Ga0.51In0.49Pから成る厚さ0.13μm、正孔濃度2×1018/cm3の第2p形コンタクト層22とp−GaAsから成る厚さ0.06μm、正孔濃度2×1018/cm3の第1p形コンタクト層24が形成されている。さらに、基板10の裏面には厚さ0.2μmのAu/Geから成る電極26が形成され、第1p形コンタクト層26の上には厚さ0.2μmのAu/Znから成る電極28が形成されている。
【0034】
上記のi層18の中に、不純物無添加のGa0.51In0.49Pから成る第1層Wと不純物無添加のAl0.51In0.49Pから成る第2層Bを10周期多重化した量子波干渉層Q1、これと同様な構成の量子波干渉層Q2,Q3,Q4と全体で4組設けられている。1つの量子波干渉層Q1の詳細なバンド構造が図6の(a)に示されている。第1層Wの厚さは10nm、第2層Bの厚さは14nmであり、第2層Bと第1層Wとの間には厚さ1.3nmの不純物無添加のAl0.33Ga0.33In0.33Pから成るδ層が形成されている。又、各量子波干渉層Qi,Qi+1間には厚さ20nm、不純物無添加のGa0.51In0.49Pから成るキャリア閉込層Ciが形成されている。第2層Bと第1層Wの厚さの条件は、外部電圧が印加されていない状態で、上記した(1)、(2)式で決定されている。
【0035】
尚、p層20又はn層16に接合する第2層Bは10nmである。又、基板10は、2インチ径の大きさであり、基板の主面は面方位(100)に対して15°方位[011]方向にオフセットしている。
【0036】
この受光素子は、ガスソースMBE法により製造された。ガスソースMBE法は、結晶のエレメント材料全てを固体ソースから供給する従来形のMBE法とは異なり、V族元素(As,P)等をガス状原料(AsH3,PH3)の熱分解により供給し、III族エレメント(In,Ga,Al)は固体ソースから供給する超高真空下の分子線結晶成長法である。なお、有機金属ガス気相成長法(MOCVD)を用いることもできる。
【0037】
上記の構成の受光素子において、p層20とn層16との間に順方向に電圧Vを増加させて行くと、図1に示すように、i層18のバンドの傾斜が平坦となる電位が存在する。キャリア閉込層C1,C2,C3の存在により、キャリア閉込層C1,C2,C3にキャリアが蓄積されていない場合には量子波干渉層Q1〜Q4において電子に対して透過条件が成立していない。
【0038】
次に、キャリア閉込層C1〜C3のバンド幅に共鳴したエネルギの光が入射すると、このキャリア閉込層C1〜C3に電子が励起される。このキャリア閉込層C1〜C3における電子濃度が高くなり、第2層Bの伝導帯の底付近以上の電子が多く存在するようになると、n層16の電子が隣のキャリア閉込層C1に伝導し、キャリア閉込層C1の電子は隣のキャリア閉込層C2に伝導する。このようにして、電子は各キャリア閉込層Ciを介在させて、各量子波干渉層中は電子の波としての性質により高速に伝導すると考えられる。このようにして、光励起により電子は高速にn層16からp層20へと伝導すると考えられる。
【0039】
尚、この光受光素子は、キャリア閉込層C1〜C3に励起される電子がn層16からp層20への電子の伝導に対してゲートスイッチの機能を有しているので、光電気変換効率が高い。さらに、キャリア閉込層C1〜C3に電子が励起されていない場合には、量子波干渉層Q1〜Q4は電子に対して透過条件が満たされていないが、キャリア閉込層C1〜C3に電子が励起された場合にのみ、電子の透過条件が満たされるようになり、量子波干渉層Q1〜Q4を電子は量子波として伝導すると考えられるため、スイッチング速度も高速になると思われる。
【0040】
この光受光素子のV−I特性を測定した。図9に示すように、光を照射した場合には、わずかな順方向電圧により、10−10〜10−7Aまで電流が立ち上がり、0.8Vの順方向電圧により、電流は10−5Aまで急峻に増加しているのが分かる。それに対して、暗電流は量子波干渉層による電子の透過作用の影響が少なく、順方向電圧を印加しても小さい値に抑制されている。尚、光電流の暗電流に対する比は、順方向電圧が1.2V以下の範囲で100倍程度、1.5V付近でも10倍程度あることが理解される。尚、i層18の電位を平坦にする順方向電圧は0.5Vと考えられるが、この0.5Vの電圧で、光電流は約1×10−5Aとなっているのが分かる。
【0041】
〔比較例〕
比較のため、上記と同様な受光素子のi層に形成した量子波干渉層を以下のように形成したものを作製した。即ち、i層18は、Ga0.51In0.49Pから成る厚さ5nmの第1層WとAl0.51In0.49Pから成る厚さ7nmの第2層Bと第1層Wの両側に形成された厚さ1.3nmの不純物無添加のAl0.33Ga0.33In0.33Pから成るδ層とを1組として10周期繰り返された量子波干渉層Q1と、これと同一構造の量子波干渉層Q2,…,Q4とを合わせて、全体で4組設けた。1つの量子波干渉層Q1の詳細なバンド構造は図6(a)に示すものと同様である。又、各量子波干渉層Qi,Qi+1間には厚さ20nm、不純物無添加のGa0.51In0.49Pから成るキャリア閉込層C1〜C3が形成されている。第2層Bと第1層Wの厚さの条件は、電極28と電極26間に順方向電圧を印加して、i層18に電位傾斜がない状態において上記した(1)、(2)式で、nW、nBを1(奇数)として決定したものである。これは本発明者らが、本発明のキャリア透過層に対し、逆の働きを持つキャリア反射層と考えているものである。これはすでに図4(a)乃至(d)を用いて説明したものに相当する。尚、n層16又はp層20に接合する第2層Bは0.05μmとした。
【0042】
この光受光素子のV−I特性を測定した。図10に示す。光を照射した場合には、0.2Vの順方向電圧により、電流は4桁程急峻に増加しているが、その値は10−7Aと、図9に示す上記実施例の10−5Aに比して小さい。また、図10の比較例は、微電圧では電流は全く流れないが、図9に示す上記実施例ではわずかな順方向電圧で電流が生じている。
【0043】
上記実施例とこの比較例とを検討すると、光電流と暗電流とでのV−I特性の差、本発明にかかる実施例と比較例とでのV−I特性の差が生ずるのは、単に多重量子井戸構造にしたがためではなく、多重量子井戸構造の各層の膜厚に大きく依存しているためと理解できる。このように、本発明によれば、キャリアを高速に移動させるキャリア透過層となる多重量子井戸構造の量子波干渉層を提供できることがわかった。
【0044】
又、上記実施例では、Q1〜Q4の4つの量子波干渉層をキャリア閉込層C1〜C3を介在させて直列に接続したが、本発明はこれら量子波干渉層とキャリア閉込層の数には限定されない。少なくとも量子波干渉層Q1,キャリア閉込層C1,量子波干渉層Q2の様に、1組形成されていれば良い。
【0045】
上記の実施例の受光素子は、電子の波動的性質を用いたものである。よって電子/正孔透過層における電子/正孔の移動速度は波の伝搬速度となり、高速応答が実現できるとともに、使用帯域を拡大できる。上記実施例では、δ層を形成している。このδ層によりポテンシャル界面でのバンドギャップエネルギの変化を急峻とし、量子波干渉効果(高透過)を著しく向上させることができる。効果は低下するもののδ層がない多重量子井戸構造でも良い。又、上記実施例では、量子波干渉層をGa0.51In0.49PとAl0.51In0.49Pとの多重層で構成し、δ層をAl0.33Ga0.33In0.33Pで構成したが、多重層を構成する第1層及び第2層、並びにδ層は、4元系のAlxGayIn1−x−yP或いはAlxGayIn1−x−yAs(0≦x,y,x+y≦1の任意の値)で組成比を異にして形成しても良い。
【0046】
さらに、量子波干渉層は、他のIII族−V族化合物半導体、II族−VI族化合物半導体、Si/Ge、その他の異種半導体の多重接合で構成することが可能である。具体的には下記のような組み合わせが望ましい。尚、バンド幅の広い層/バンド幅の狭い層//基板を意味し、x、yは明記していない場合は、それぞれ0<x,y<1の任意の値である。
<1> AlxIn1−xP/GayIn1−yP//GaAs
<2> AlxGa1−xAs/GaAs//GaAs
<3> GaxIn1−xP/InP//InP
<4> GaxIn1−xP/GayIn1−yAs//GaAs
<5> AlAs/AlxGa1−xAs//GaAs 0.8≦x≦0.9
<6> InP/GaxIn1−xAsyP1−y//GaAs
<7> Si/SiGex//任意 0.1≦x≦0.3
<8> Si/SiGexCy//任意 0.1≦x≦0.3, 0<y≦0.1
<9> Alx1Gay1In1−x1−y1N/Alx2Gay2In1−x2−y2N//Si,SiC,GaN,サファイア
0≦x1,x2,y1,y2,x1+y1,x2+y2≦1
<10> Alx1Gay1In1−x1−y1Nx2Py2As1−x2−y2/Alx3Gay3In1−x3−y3Nx4Py4As1−x4−y4//任意
0≦x1,x3,y1,y3,x1+y1,x3+y3≦1, 0<x2,x4<1,0≦y2,y4,x2+y2,x4+y4≦1
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念を説明するための説明図。
【図2】本発明の理論を説明するための説明図。
【図3】第2層におけるキャリアの運動エネルギの第1層における運動エネルギに対する比xに対する反射率Rの関係を示した特性図。
【図4】本発明の概念を説明するための説明図。
【図5】本発明の概念を説明するための説明図。
【図6】本発明の概念を説明するための説明図。
【図7】本発明の概念を説明するための説明図。
【図8】本発明の実施例に係る受光素子の構造を示した断面図。
【図9】その受光素子における光の非照射時、照射時のV−I特性の測定図。
【図10】比較例の受光素子における光の非照射時、照射時のV−I特性の測定図。
【符号の説明】
10…基板
12…バッファ層
14…n形コンタクト層
16…n層
18…i層
20…p層
22…第2p形コンタクト層
24…第1p形コンタクト層
26,28…電極
Q1〜Q4…量子波干渉層
B…第2層
W…第1層
C,C1〜C3…キャリア閉込層
Claims (10)
- 第1層と第1層よりもバンド幅の広い第2層とを多重周期で積層した量子波干渉層を有し、入力光を電気に変換する受光素子において、
前記第1層と前記第2層の各層の厚さを、各層を伝導するキャリアの、各層における量子波の波長の4分の1の偶数倍に設定した量子波干渉層を、前記第2層よりもバンド幅の狭いキャリア閉込層を介在させて複数配設したことを特徴とする量子波干渉層を有した受光素子。 - 前記量子波の波長を決定するための前記キャリアの運動エネルギをキャリアが電子である場合には第2層の伝導帯の底付近、キャリアが正孔である場合には前記第2層の価電子帯の底付近に設定したことを特徴とする請求項1に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記第1層における前記量子波の波長λWはλW=h/[2mW(E+V)]1/2で決定され、前記第2層における前記量子波の波長λBはλB=h/(2mBE)1/2で決定され、前記第1層の厚さDWはDW=nWλW/4、前記第2層の厚さDBはDB=nBλB/4で決定される、但し、hはプランク定数、mWは第1層におけるキャリアの有効質量、mBは第2層におけるキャリアの有効質量、Eは第2層に流入されるキャリアの運動エネルギ、Vは第1層に対する第2層のバンド電位差、nW、nBは偶数であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記量子波干渉層は、前記第2層を伝導するキャリアの運動エネルギを複数の異なる値Ek、前記第1層におけるその各運動エネルギをEk+Vとし、第2層、第1層の各エネルギに対応した各量子波長をλBk,λWkとする時、第2層、第1層をnBkλBk/4、nWkλWk/4の厚さで、Tk周期繰り返された部分量子波干渉層Ikが前記値Ekの数だけ繰り返し形成された層、但し、nWk、nBkは偶数、であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記キャリア閉込層のバンド幅は、前記第1層のバンド幅に等しいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記キャリア閉込層の厚さは、前記量子波の波長λWであることを特徴とする請求項5に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記第1層と前記第2層との境界には、前記第1層と前記第2層の厚さに比べて充分に薄く、エネルギバンドを急変させるδ層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記受光素子は、pin接合構造を有し、前記量子波干渉層及び前記キャリア閉込層は、i層に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記量子波干渉層及び前記キャリア閉込層は、n層、又は、p層に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
- 前記受光素子は、pn接合構造を有することを特徴とする請求項9に記載の量子波干渉層を有した受光素子。
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