JP3543976B2 - 磁気軸受装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば半導体製造装置等で用いられる磁気軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気軸受装置は、非接触、無潤滑、長寿命という特徴を有することから多方面で様々な研究、用途開発が進められている。そして半導体製造装置の磁気浮上搬送装置やハンドリング装置などではリニアモーション型の磁気軸受装置が実用されている。しかし、減圧された清浄な雰囲気を必要とする半導体基板に所定成分の薄膜を成膜する化学気相成長装置(CVD装置)等のような装置では、回転体を回転支持する軸受装置には主に玉軸受が用いられ、磁気軸受装置は実用化が検討されている状況にあった。
【0003】
以下、従来のCVD装置での軸受装置について図9及び図10を参照して説明する。図9は回転支持に玉軸受を使用したものの要部の概略構成を示す断面図であり、図10は回転支持に磁気軸受を使用したものの要部の概略構成を示す断面図である。
【0004】
先ず、玉軸受を使用したものについて図9により説明する。図において、1はチャンバ2の減圧された内部に設けられた縦型の回転体である。この回転体1の回転軸3とチャンバ2の下部との間には、回転体1を回転支持するための上部玉軸受4及び下部玉軸受5が設けられており、チャンバ2の外部に設けられた電動機6の気密に貫通する駆動軸により回転体1は回転駆動される。また回転体1には、上部に水平面内で回転するサセプタ7が設けられており、このサセプタ7の上に薄膜が成膜される半導体基板が載置される。
【0005】
そして半導体基板に薄膜を成膜している間は、半導体基板が載置された回転体1は回転し、両玉軸受4,5の内輪も同時に回転をする。このため両玉軸受4,5の潤滑油がチャンバ2内に拡散して半導体基板に成膜される薄膜を汚損し、製品の歩留を低下させてしまう虞があった。
【0006】
また、両玉軸受4,5に錆びの発生があるとチャンバ2内を汚染してしまうと共に、発錆した軸受にかじりが生じて回転体1が回転しなくなってしまう。このような場合には玉軸受の交換を要するが、交換は多大な時間を費やすものであった。
【0007】
一方、上述のような回転支持に玉軸受を用いたものでの状況から、磁気軸受装置を用いたものの検討がなされている。次に、その磁気軸受装置を使用したものについて図10により説明する。図において、8はチャンバ9の減圧された内部に収納された縦型の回転体である。この回転体8は上部に薄膜を成膜する半導体基板を載置し水平面内で回転するサセプタ10が設けられ、下部に回転軸11が設けられている。そして回転軸11の部分には真空シールド12が近接して設けられている。
【0008】
また回転体8は、その回転軸11の上部及び下部に設けられたラジアル磁気軸受13,14と、両軸受13,14の間に設けられたスラスト磁気軸受16によって浮上支持され、電動機15によって回転駆動される。ラジアル磁気軸受13,14は回転軸11に軸方向に積層して設けられた積層継鉄17,18と、これらに真空シールド12を介して対向するチャンバ9に固定された上部電磁石19及び下部電磁石20とで構成され、スラスト磁気軸受16は同じくチャンバ9に固定された電磁石21を設けて構成されている。
【0009】
さらにチャンバ9には、回転軸11の軸方向に沿って変位センサ22,23が回転軸11に真空シールド12を介して対向するように取着されており、この変位センサ22,23によって回転体8の軸方向及び半径方向の変位が検出され、これにもとづく図示しない制御部からの制御信号によってラジアル磁気軸受13,14及びスラスト磁気軸受15が制御される。なお24は同じくチャンバ9に固定された電動機16のステータである。
【0010】
このように構成されたものでは、各磁石19,20,21及び変位センサ22,23、さらにステータ24が回転軸方向に平行な方向に配列されることになるため、磁気軸受装置が同一軸方向に長いものとなってしまう。また真空シールド12を介在させて回転体8を非接触に支持するため、電磁石の磁気空隙が大きくなり、必然的に支持に要する力が大きくなり装置が大型のものとなってしまう。
【0011】
さらに、回転軸11に設けられた積層継鉄17,18が減圧されたチャンバ9の内部に積層端面が露出するものであるため、端面が錆びるような状況にあると回転体8の回転と共に錆びが飛散することとなってその端面が発塵源となり、玉軸受のように発錆により回転しなくなったり軸受の交換に手間がかかるようなことがないものの、同様にチャンバ2内を汚染し製品の歩留を低下させてしまう虞があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来は、玉軸受では筐体内に露出する玉軸受の発錆や潤滑油の蒸発等によって筐体内を汚染してしまう虞があり、さらに発錆した玉軸受の交換に多大な時間を要してしまうものであり、また磁気軸受装置では筐体内に露出する積層継鉄の端面の発錆によって筐体内を汚染してしまう虞があり、さらに電磁石等がシールドを介して軸方向に長く並んで設けられので、軸方向に長く大型のものとなる等していた。このような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは筐体内の汚染を低減することができ、小形化した磁気軸受装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気軸受装置は、筐体内に収納され回転軸の一端側にスラスト円板を設けた縦型の回転体と、スラスト円板の上,下面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ回転体をスラスト方向に非接触に支持する上,下部スラスト電磁石と、スラスト円板の面を検出面として設けられ上,下部スラスト電磁石を制御するための信号を出力するスラスト変位センサと、スラスト円板の外周部に固定され外周積層端面が第1のカバーで覆われた第1のラジアル積層継鉄と、この第1のラジアル積層継鉄の外周積層端面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ回転体の一端部をラジアル方向に非接触に支持する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に第1のカバーの外面を検出面として取着され該第1のラジアル電磁石を制御するための信号を出力する一端側のラジアル変位センサと、回転軸の他端側に固定され外周積層端面が第2のカバーで覆われた第2のラジアル積層継鉄と、この第2のラジアル積層継鉄の外周積層端面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ回転体の他端部をラジアル方向に非接触に支持する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に第2のカバーの外面を検出面として取着され該第2のラジアル電磁石を制御するための信号を出力する他端側のラジアル変位センサとを具備したことを特徴とするものであり、また、スラスト変位センサが、断面コ字形状で円環状をなす上,下部スラスト電磁石のいずれか一方の電磁石の磁極間に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
【作用】
上記のように構成された磁気軸受装置は、筐体内に収納された回転体の回転軸の一端側に設けたスラスト円板の上,下面に対向する上,下部スラスト電磁石と、スラスト円板の外周部に固定された第1のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第1のカバーに対向する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に取着され第1のカバーの外面を検出面とする一端側のラジアル変位センサと、回転軸の他端側に固定された第2のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第2のカバーに対向する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に取着され第2のカバーの外面を検出面とする他端側のラジアル変位センサとを具備しているので、第1のラジアル積層継鉄あるいは第2のラジアル積層継鉄の積層端面に錆びが発生するようなことがあっても、第1のカバーあるいは第2のカバーによって錆びの飛散が防止される。さらに、上,下部スラスト電磁石と第1のラジアル電磁石とが回転軸の軸方向に配置されたものとならず、また一端側のラジアル変位センサ及び他端側のラジアル変位センサが、両者共に第1のラジアル電磁石及び第2のラジアル電磁石と回転軸の軸方向で同じ位置に配置されたものとなる。このために筐体内の汚染が低減でき、小形化した磁気軸受装置とすることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図1乃至図8を参照して説明する。図1はCVD装置の要部の縦断面図であり、図2はCVD装置の全体構成の概略を示す断面図であり、図3は電動機の要部の縦断面図であり、図4は上部ラジアル磁気軸受部の上部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図であり、図5は下部ラジアル磁気軸受部の下部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図であり、図6は上部ラジアル磁気軸受部の横断面図であり、図7は下部ラジアル磁気軸受部の横断面図であり、図8は変位センサによる変位の検出を説明するための図で、図8(a)はラジアル変位センサが検出する変位を説明する図であり、図8(b)はラジアル変位センサ及びスラスト変位センサが検出する変位を説明する図である。
【0016】
図1乃至図7において、31はCVD装置であって、その半導体基板を収納して所定の薄膜の気相成長を行なうチャンバ32は、ベース33の上面に上部ケース34を気密に取着するようにして構成される。ベース33には排気管35がチャンバ32の内部に端部が開口するように設けられていて、これに接続された図示しない真空ポンプ等によってチャンバ32の内部の減圧状態が維持される。また上部ケース34にはガス供給管36が同じくチャンバ32の内部に端部が開口するように設けられていて、ここからは図示しないガス供給源から所定の原料ガスがチャンバ32の内部に供給される。前述した排気管35はポートを切替えて原料ガスの回収も行っている。
【0017】
さらに、チャンバ32の内部には上面に半導体基板を載置するサセプタ37がガス供給管36の下方に配置されており、このサセプタ37はベース33に貫通するようにして取り付けられた縦型の回転体38の上部に設けられている。そしてサセプタ37は、気相成長が行われる間、半導体基板に均一な薄膜が成層されるように回転する。
【0018】
一方、回転体38は略筒状をなすもので、ベース33の下面に取り付けられた磁気軸受装置40によって非接触に支持される。磁気軸受装置40はベース33の下面に気密に取り付けられた軸受ケース41内に、回転体38の回転軸42の軸方向に沿って設けられた上部ラジアル軸受部43と下部ラジアル軸受部44、及び下部ラジアル軸受部44と一体に設けられたスラスト軸受部45を設けて構成されており、同時に軸受ケース41内には回転体38を回転駆動する電動機46が、上部ラジアル軸受部43と下部ラジアル軸受部44及びスラスト軸受部45との間に設けられている。
【0019】
なお回転体38の内部には、下部が軸受ケース41に気密に取り付けられヒーター支持部材47が軸方向に貫通して設けられていると共に、ヒーター支持部材47の上部のヒーターユニット48がサセプタ37の部分に設けられており、ヒーターユニット48によってサセプタ37の上面に載置された半導体基板が昇温するようになっている。そしてヒーターユニット48の温度調節は図示しない制御部によって行われる。
【0020】
また、磁気軸受装置40の上部ラジアル軸受部43は軸受ケース41の内面に固定された略円環状の上部ラジアル電磁石49と、これの内径面に積層外面が対向するように回転軸42の外面に圧入された上部ラジアル積層継鉄50とを設けて構成されている。そしてこの上部ラジアル積層継鉄50は円環状の珪素鋼板を軸方向に積層してなるもので、その積層端面にはステンレス鋼板製のカバー51が設けられていて、直接積層端面が外部に露出しないようになっている。
【0021】
さらに上部ラジアル電磁石49は、略円環状の上部ラジアル磁極リング52の4等配された位置から内方に対を成して突出し、上部ラジアル積層継鉄50の積層端面に設けられたカバー51との間に微小間隙を形成する8個の突状磁極53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hを有し、これらの突状磁極53a,53b,…,53hには夫々にコイル54a,54b,54c,54d,54e,54f,54g,54hが巻かれている。
【0022】
そして、その内の一対の突状磁極53a,53bと、その両側に隣接する突状磁極53c,53dと突状磁極53g,53hの間には、それぞれ第1及び第2のラジアル変位センサ55,56が同一の平面内で90度の角度を持ち、上部ラジアル積層継鉄50の積層面を覆うカバー51との間に間隙を設け、カバー51の外面を変位検出面とするようにして上部ラジアル磁極リング52に固着され配置されている。
【0023】
また、電動機46は軸受ケース41の上部ラジアル軸受部43の下方側に設けられており、軸受ケース41の内面に固定され内側に複数の突起を有する珪素鋼板を軸方向に積層したステータコア57の突起に複数のコイル58を巻回したステータ59と、回転軸42の上部ラジアル積層継鉄50の下方側に設けられたロータ60によって構成されている。そしてステータコア57の積層端面にも合成樹脂を成形、あるいは合成樹脂塗料を塗布してなるカバー61が設けられていて、同様に直接積層端面が外部に露出しないようになっている。またロータ60は、回転軸42の上部ラジアル積層継鉄50の下方側に圧入された中間スリーブ62に永久磁石63が合成樹脂材料64を成形して固定されると共に、外面にカバーとしてステンレス鋼板製の固定円筒65が装着されている。
【0024】
さらに、電動機46の下方側に設けられたスラスト軸受部45は回転軸42の下部に固定されたスラスト円板66と、このスラスト円板66の上面側と下面側に上部スラスト電磁石67と下部スラスト電磁石68とを設けて構成されている。これら上部スラスト電磁石67及び下部スラスト電磁石68は、断面形状が夫々下向き及び上向きに開いた略コ字状をなす円環状継鉄69,70にスラストコイル71,72が設けられている。
【0025】
そして上部スラスト電磁石67及び下部スラスト電磁石68は夫々の2つの環状磁極73a,73b,74a,74bがスラスト円板66の上面と下面に対し微小間隙を設けて対向している。また上部スラスト電磁石67には固定円板75が設けられていて、スラストコイル71が落下しないように固定されており、この固定円板75には、上部ラジアル電磁石49の一対の突状磁極53a,53bに対応する位置にスラスト変位センサ76がスラスト円板66の上面に対して間隙を設け、この上面を変位検出面とするようにして取着されている。
【0026】
またさらに、下部ラジアル軸受部44は軸受ケース41の内面に固定された略円環状の下部ラジアル電磁石77と、これの内径面に積層外面が対向するようにスラスト円板66の最外周部分に圧入された下部ラジアル積層継鉄78とを設けて構成されている。下部ラジアル積層継鉄78は円環状の珪素鋼板を軸方向に積層してなるもので、その積層端面にはステンレス鋼板製のカバー79が設けられていて、直接積層端面が外部に露出しないようになっている。
【0027】
さらに下部ラジアル電磁石77は、略円環状の下部ラジアル磁極リング80の4等配された位置から内方に対を成して突出し、下部ラジアル積層継鉄78の積層端面に設けられたカバー79との間に微小間隙を形成する8個の突状磁極81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81hを有し、これらの突状磁極81a,81b,…,81hには夫々にコイル82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82hが巻かれている。
【0028】
そして、その内の一対の突状磁極81a,81bと、その両側に隣接する突状磁極81c,81dと突状磁極81g,81hの間には、それぞれ第3及び第4のラジアル変位センサ83,84が同一の平面内で90度の角度を持ち、下部ラジアル積層継鉄78の積層面を覆うカバー79との間に間隙を設け、カバー79の外面を変位検出面とするようにして下部ラジアル磁極リング80に固着され、第1及び第2のラジアル変位センサ55,56と同位相で変位を検出するよう配置されている。
【0029】
また、85、86は静止体であるベース33及び下部スラスト電磁石68に夫々取付板87,88によって外レースが固定された真空環境仕様の玉軸受で、その内レースは回転軸42に対して一定の空隙を有するように設けられていて、回転体38が磁気浮上していない時に回転体38を支持するものであり、非常用の軸受としても用いられる。
【0030】
さらに、89は上部ラジアル軸受部43と電動機46のステータ59の間に軸受ケース41に取着して設けられた上部遮蔽リングであり、90はステータ59とスラスト軸受部45の間に上部スラスト電磁石67に取着して設けられた下部遮蔽リングである。これらの両遮蔽リング89,90を設けることで軸受ケース41内の電気配線が回転軸42等の回転部分に接触し損傷するのを防止すると共に、電動機46の発生する電気的ノイズの遮蔽を行っている。
【0031】
このように構成された本実施例では、CVD装置31での半導体基板上への薄膜の気相成長を行うに先立ち、上部ラジアル軸受部43、下部ラジアル軸受部44及びスラスト軸受部45を作動させて回転体38を磁気浮上させて非接触に支持する。その後チャンバ32の内部を減圧し、電動機46によって回転体38を回転駆動し、ヒーターユニット48によってサセプタ37を所定温度に維持しながら原料ガスをチャンバ32内に導入して気相成長が行われる。
【0032】
そして回転体38を磁気浮上させて非接触に支持し、回転させている間の回転体38の位置及び姿勢の制御は、スラスト方向についてはスラスト軸受部45の上部スラスト電磁石67と下部スラスト電磁石68の強さを調節することによって行う。なお、このスラスト方向の調節でヒーターユニット48に対向するサセプタ37の下面との間隔が変えられ、これによってサセプタ37の温度の調節が行なえる。このため薄膜の気相成長の状況に合わせ半導体基板の温度を、浮上している回転体38のスラスト方向の調節を行なうことで調整することができ、良好な薄膜の成層を行なえる。
【0033】
さらに、ラジアル方向についての制御は上部ラジアル軸受部43及び下部ラジアル軸受部44の上部ラジアル電磁石49の各コイル54a,54b,…,54h、下部ラジアル電磁石77の各コイル82a,82b,…,82hに流す電流値を調節することによって行う。
【0034】
一方、スラスト変位センサ76の取付け位置が回転軸42の回転軸中心から離れているので、回転体38が傾斜しているとその傾きを軸方向の変位と同時にスラスト変位センサ76が検出することになる。このため軸方向の変位を所定値になるよう是正する制御が行なわれると、傾き分だけ軸方向に回転体38を加振することになり、安定した回転体38の回転が得られなくなる。
【0035】
このようなことから回転体38の傾きについては、制御部によって各ラジアル変位センサ55,56,83,84の信号から傾き成分を算出し、算出結果によってスラスト変位センサ76の信号を補正することによって行うようにしている。これについて図8を参照して次に説明する。
【0036】
先ず、上部ラジアル軸受部43に設けた第1及び第2のラジアル変位センサ55,56の検出した夫々の値から上部ラジアル電磁石49の一対の突状磁極53a,53bの突出方向に平行な方向の変位量Δx1 を算出し、また下部ラジアル軸受部44に設けた第3及び第4のラジアル変位センサ83,84の検出した夫々の値から下部ラジアル電磁石77の一対の突状磁極81a,81bの突出方向に平行な方向の変位量Δx1 と同位相の変位量Δx2 を算出する。
【0037】
次いでこれらの変位量Δx1 、変位量Δx2 から、回転軸38の上部ラジアル電磁石49の位置での下部ラジアル電磁石77の位置での回転中心を基準とした変位量がΔx1 −Δx2 として求められる。そして上下部に設けられた第1及び第2のラジアル変位センサ55,56と第3及び第4のラジアル変位センサ83,84との間の回転軸方向距離をlbとし、スラスト変位センサ76の回転中心からの距離をlsとすると、傾きの補正量δは
δ=ls/lb×(Δx1 −Δx2 )
で算出される。
【0038】
この算出された傾きの補正量δにもとづいてスラスト変位センサ76の信号が補正される。これにより回転体38の傾きによる見掛上の軸方向の変位をキャンセルすることができ、回転体38の安定した回転が得られることになる。
【0039】
また以上のように構成されたものであることから、上部ラジアル積層継鉄50や下部ラジアル積層継鉄78、さらにはステータコア57の積層端面に錆びが発生するようなことがあっても、積層端面が外部に露出しないように設けられたカバー51,61,79によって錆びが外部に飛散するのを防止することができる。これによってチャンバ32の内部が錆びによって汚染されることがなく、製品の歩留を低下させることがない。またカバー51,61は平滑な外面が各ラジアル変位センサ55,56,83,84に対向することになるので正確な変位を検出することができる。
【0040】
また、減圧側に支持されている回転体38と静止体との間を仕切っている真空シールドが不要となるので、回転体38を非接触に支持するために要する力が少なく各軸受部43,44,45は小形化したものとなる。さらに下部ラジアル軸受部44とスラスト軸受部45とは一体的に設けられているので軸方向に長くならず、また第1,第2,第3,第4のラジアル変位センサ55,56,83,84はそれぞれが上部ラジアル電磁石49及び下部ラジアル電磁石77の磁極間に設けられることになるので、さらにスラスト変位センサ76は上部スラスト電磁石67の磁極間に取着されているので、夫々が軸方向に配置されて長くなってしまうようなことがなく、短く非常にコンパクトなものとすることができる。
【0041】
尚、本発明は上記の実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明は、筐体内に収納された回転体の回転軸の一端側に設けたスラスト円板の上,下面に対向する上,下部スラスト電磁石と、スラスト円板の外周部に固定された第1のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第1のカバーに対向する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に取着され第1のカバーの外面を検出面とする一端側のラジアル変位センサと、回転軸の他端側に固定された第2のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第2のカバーに対向する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に取着され第2のカバーの外面を検出面とする他端側のラジアル変位センサとを具備する構成としたことにより、筐体内の汚染が低減できると共に小形化した磁気軸受装置を提供することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るCVD装置の要部の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るCVD装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るロータの縦断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る上部ラジアル磁気軸受部の上部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係る下部ラジアル磁気軸受部の下部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係る上部ラジアル磁気軸受部の横断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係る下部ラジアル磁気軸受部の横断面図である。
【図8】本発明の一実施例に係る変位センサによる変位の検出を説明するための図で、図8(a)はラジアル変位センサが検出する変位を説明する図であり、図8(b)はラジアル変位センサ及びスラスト変位センサが検出する変位を説明する図である。
【図9】従来の玉軸受を使用したCVD装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図10】従来の磁気軸受を使用したCVD装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
32…チャンバ
38…回転体
42…回転軸
49…上部ラジアル電磁石
50…上部ラジアル積層継鉄
51,79…カバー
53a,53b,53c,53d,53g,53h,81a,81b,81c
,81d,81g,81h…突状磁極
55…第1のラジアル変位センサ
56…第2のラジアル変位センサ
66…スラスト円板
69…上部スラスト電磁石
70…下部スラスト電磁石
76…スラスト変位センサ
77…下部ラジアル電磁石
78…下部ラジアル積層継鉄
83…第3のラジアル変位センサ
84…第4のラジアル変位センサ
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば半導体製造装置等で用いられる磁気軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気軸受装置は、非接触、無潤滑、長寿命という特徴を有することから多方面で様々な研究、用途開発が進められている。そして半導体製造装置の磁気浮上搬送装置やハンドリング装置などではリニアモーション型の磁気軸受装置が実用されている。しかし、減圧された清浄な雰囲気を必要とする半導体基板に所定成分の薄膜を成膜する化学気相成長装置(CVD装置)等のような装置では、回転体を回転支持する軸受装置には主に玉軸受が用いられ、磁気軸受装置は実用化が検討されている状況にあった。
【0003】
以下、従来のCVD装置での軸受装置について図9及び図10を参照して説明する。図9は回転支持に玉軸受を使用したものの要部の概略構成を示す断面図であり、図10は回転支持に磁気軸受を使用したものの要部の概略構成を示す断面図である。
【0004】
先ず、玉軸受を使用したものについて図9により説明する。図において、1はチャンバ2の減圧された内部に設けられた縦型の回転体である。この回転体1の回転軸3とチャンバ2の下部との間には、回転体1を回転支持するための上部玉軸受4及び下部玉軸受5が設けられており、チャンバ2の外部に設けられた電動機6の気密に貫通する駆動軸により回転体1は回転駆動される。また回転体1には、上部に水平面内で回転するサセプタ7が設けられており、このサセプタ7の上に薄膜が成膜される半導体基板が載置される。
【0005】
そして半導体基板に薄膜を成膜している間は、半導体基板が載置された回転体1は回転し、両玉軸受4,5の内輪も同時に回転をする。このため両玉軸受4,5の潤滑油がチャンバ2内に拡散して半導体基板に成膜される薄膜を汚損し、製品の歩留を低下させてしまう虞があった。
【0006】
また、両玉軸受4,5に錆びの発生があるとチャンバ2内を汚染してしまうと共に、発錆した軸受にかじりが生じて回転体1が回転しなくなってしまう。このような場合には玉軸受の交換を要するが、交換は多大な時間を費やすものであった。
【0007】
一方、上述のような回転支持に玉軸受を用いたものでの状況から、磁気軸受装置を用いたものの検討がなされている。次に、その磁気軸受装置を使用したものについて図10により説明する。図において、8はチャンバ9の減圧された内部に収納された縦型の回転体である。この回転体8は上部に薄膜を成膜する半導体基板を載置し水平面内で回転するサセプタ10が設けられ、下部に回転軸11が設けられている。そして回転軸11の部分には真空シールド12が近接して設けられている。
【0008】
また回転体8は、その回転軸11の上部及び下部に設けられたラジアル磁気軸受13,14と、両軸受13,14の間に設けられたスラスト磁気軸受16によって浮上支持され、電動機15によって回転駆動される。ラジアル磁気軸受13,14は回転軸11に軸方向に積層して設けられた積層継鉄17,18と、これらに真空シールド12を介して対向するチャンバ9に固定された上部電磁石19及び下部電磁石20とで構成され、スラスト磁気軸受16は同じくチャンバ9に固定された電磁石21を設けて構成されている。
【0009】
さらにチャンバ9には、回転軸11の軸方向に沿って変位センサ22,23が回転軸11に真空シールド12を介して対向するように取着されており、この変位センサ22,23によって回転体8の軸方向及び半径方向の変位が検出され、これにもとづく図示しない制御部からの制御信号によってラジアル磁気軸受13,14及びスラスト磁気軸受15が制御される。なお24は同じくチャンバ9に固定された電動機16のステータである。
【0010】
このように構成されたものでは、各磁石19,20,21及び変位センサ22,23、さらにステータ24が回転軸方向に平行な方向に配列されることになるため、磁気軸受装置が同一軸方向に長いものとなってしまう。また真空シールド12を介在させて回転体8を非接触に支持するため、電磁石の磁気空隙が大きくなり、必然的に支持に要する力が大きくなり装置が大型のものとなってしまう。
【0011】
さらに、回転軸11に設けられた積層継鉄17,18が減圧されたチャンバ9の内部に積層端面が露出するものであるため、端面が錆びるような状況にあると回転体8の回転と共に錆びが飛散することとなってその端面が発塵源となり、玉軸受のように発錆により回転しなくなったり軸受の交換に手間がかかるようなことがないものの、同様にチャンバ2内を汚染し製品の歩留を低下させてしまう虞があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来は、玉軸受では筐体内に露出する玉軸受の発錆や潤滑油の蒸発等によって筐体内を汚染してしまう虞があり、さらに発錆した玉軸受の交換に多大な時間を要してしまうものであり、また磁気軸受装置では筐体内に露出する積層継鉄の端面の発錆によって筐体内を汚染してしまう虞があり、さらに電磁石等がシールドを介して軸方向に長く並んで設けられので、軸方向に長く大型のものとなる等していた。このような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは筐体内の汚染を低減することができ、小形化した磁気軸受装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気軸受装置は、筐体内に収納され回転軸の一端側にスラスト円板を設けた縦型の回転体と、スラスト円板の上,下面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ回転体をスラスト方向に非接触に支持する上,下部スラスト電磁石と、スラスト円板の面を検出面として設けられ上,下部スラスト電磁石を制御するための信号を出力するスラスト変位センサと、スラスト円板の外周部に固定され外周積層端面が第1のカバーで覆われた第1のラジアル積層継鉄と、この第1のラジアル積層継鉄の外周積層端面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ回転体の一端部をラジアル方向に非接触に支持する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に第1のカバーの外面を検出面として取着され該第1のラジアル電磁石を制御するための信号を出力する一端側のラジアル変位センサと、回転軸の他端側に固定され外周積層端面が第2のカバーで覆われた第2のラジアル積層継鉄と、この第2のラジアル積層継鉄の外周積層端面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ回転体の他端部をラジアル方向に非接触に支持する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に第2のカバーの外面を検出面として取着され該第2のラジアル電磁石を制御するための信号を出力する他端側のラジアル変位センサとを具備したことを特徴とするものであり、また、スラスト変位センサが、断面コ字形状で円環状をなす上,下部スラスト電磁石のいずれか一方の電磁石の磁極間に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
【作用】
上記のように構成された磁気軸受装置は、筐体内に収納された回転体の回転軸の一端側に設けたスラスト円板の上,下面に対向する上,下部スラスト電磁石と、スラスト円板の外周部に固定された第1のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第1のカバーに対向する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に取着され第1のカバーの外面を検出面とする一端側のラジアル変位センサと、回転軸の他端側に固定された第2のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第2のカバーに対向する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に取着され第2のカバーの外面を検出面とする他端側のラジアル変位センサとを具備しているので、第1のラジアル積層継鉄あるいは第2のラジアル積層継鉄の積層端面に錆びが発生するようなことがあっても、第1のカバーあるいは第2のカバーによって錆びの飛散が防止される。さらに、上,下部スラスト電磁石と第1のラジアル電磁石とが回転軸の軸方向に配置されたものとならず、また一端側のラジアル変位センサ及び他端側のラジアル変位センサが、両者共に第1のラジアル電磁石及び第2のラジアル電磁石と回転軸の軸方向で同じ位置に配置されたものとなる。このために筐体内の汚染が低減でき、小形化した磁気軸受装置とすることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図1乃至図8を参照して説明する。図1はCVD装置の要部の縦断面図であり、図2はCVD装置の全体構成の概略を示す断面図であり、図3は電動機の要部の縦断面図であり、図4は上部ラジアル磁気軸受部の上部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図であり、図5は下部ラジアル磁気軸受部の下部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図であり、図6は上部ラジアル磁気軸受部の横断面図であり、図7は下部ラジアル磁気軸受部の横断面図であり、図8は変位センサによる変位の検出を説明するための図で、図8(a)はラジアル変位センサが検出する変位を説明する図であり、図8(b)はラジアル変位センサ及びスラスト変位センサが検出する変位を説明する図である。
【0016】
図1乃至図7において、31はCVD装置であって、その半導体基板を収納して所定の薄膜の気相成長を行なうチャンバ32は、ベース33の上面に上部ケース34を気密に取着するようにして構成される。ベース33には排気管35がチャンバ32の内部に端部が開口するように設けられていて、これに接続された図示しない真空ポンプ等によってチャンバ32の内部の減圧状態が維持される。また上部ケース34にはガス供給管36が同じくチャンバ32の内部に端部が開口するように設けられていて、ここからは図示しないガス供給源から所定の原料ガスがチャンバ32の内部に供給される。前述した排気管35はポートを切替えて原料ガスの回収も行っている。
【0017】
さらに、チャンバ32の内部には上面に半導体基板を載置するサセプタ37がガス供給管36の下方に配置されており、このサセプタ37はベース33に貫通するようにして取り付けられた縦型の回転体38の上部に設けられている。そしてサセプタ37は、気相成長が行われる間、半導体基板に均一な薄膜が成層されるように回転する。
【0018】
一方、回転体38は略筒状をなすもので、ベース33の下面に取り付けられた磁気軸受装置40によって非接触に支持される。磁気軸受装置40はベース33の下面に気密に取り付けられた軸受ケース41内に、回転体38の回転軸42の軸方向に沿って設けられた上部ラジアル軸受部43と下部ラジアル軸受部44、及び下部ラジアル軸受部44と一体に設けられたスラスト軸受部45を設けて構成されており、同時に軸受ケース41内には回転体38を回転駆動する電動機46が、上部ラジアル軸受部43と下部ラジアル軸受部44及びスラスト軸受部45との間に設けられている。
【0019】
なお回転体38の内部には、下部が軸受ケース41に気密に取り付けられヒーター支持部材47が軸方向に貫通して設けられていると共に、ヒーター支持部材47の上部のヒーターユニット48がサセプタ37の部分に設けられており、ヒーターユニット48によってサセプタ37の上面に載置された半導体基板が昇温するようになっている。そしてヒーターユニット48の温度調節は図示しない制御部によって行われる。
【0020】
また、磁気軸受装置40の上部ラジアル軸受部43は軸受ケース41の内面に固定された略円環状の上部ラジアル電磁石49と、これの内径面に積層外面が対向するように回転軸42の外面に圧入された上部ラジアル積層継鉄50とを設けて構成されている。そしてこの上部ラジアル積層継鉄50は円環状の珪素鋼板を軸方向に積層してなるもので、その積層端面にはステンレス鋼板製のカバー51が設けられていて、直接積層端面が外部に露出しないようになっている。
【0021】
さらに上部ラジアル電磁石49は、略円環状の上部ラジアル磁極リング52の4等配された位置から内方に対を成して突出し、上部ラジアル積層継鉄50の積層端面に設けられたカバー51との間に微小間隙を形成する8個の突状磁極53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hを有し、これらの突状磁極53a,53b,…,53hには夫々にコイル54a,54b,54c,54d,54e,54f,54g,54hが巻かれている。
【0022】
そして、その内の一対の突状磁極53a,53bと、その両側に隣接する突状磁極53c,53dと突状磁極53g,53hの間には、それぞれ第1及び第2のラジアル変位センサ55,56が同一の平面内で90度の角度を持ち、上部ラジアル積層継鉄50の積層面を覆うカバー51との間に間隙を設け、カバー51の外面を変位検出面とするようにして上部ラジアル磁極リング52に固着され配置されている。
【0023】
また、電動機46は軸受ケース41の上部ラジアル軸受部43の下方側に設けられており、軸受ケース41の内面に固定され内側に複数の突起を有する珪素鋼板を軸方向に積層したステータコア57の突起に複数のコイル58を巻回したステータ59と、回転軸42の上部ラジアル積層継鉄50の下方側に設けられたロータ60によって構成されている。そしてステータコア57の積層端面にも合成樹脂を成形、あるいは合成樹脂塗料を塗布してなるカバー61が設けられていて、同様に直接積層端面が外部に露出しないようになっている。またロータ60は、回転軸42の上部ラジアル積層継鉄50の下方側に圧入された中間スリーブ62に永久磁石63が合成樹脂材料64を成形して固定されると共に、外面にカバーとしてステンレス鋼板製の固定円筒65が装着されている。
【0024】
さらに、電動機46の下方側に設けられたスラスト軸受部45は回転軸42の下部に固定されたスラスト円板66と、このスラスト円板66の上面側と下面側に上部スラスト電磁石67と下部スラスト電磁石68とを設けて構成されている。これら上部スラスト電磁石67及び下部スラスト電磁石68は、断面形状が夫々下向き及び上向きに開いた略コ字状をなす円環状継鉄69,70にスラストコイル71,72が設けられている。
【0025】
そして上部スラスト電磁石67及び下部スラスト電磁石68は夫々の2つの環状磁極73a,73b,74a,74bがスラスト円板66の上面と下面に対し微小間隙を設けて対向している。また上部スラスト電磁石67には固定円板75が設けられていて、スラストコイル71が落下しないように固定されており、この固定円板75には、上部ラジアル電磁石49の一対の突状磁極53a,53bに対応する位置にスラスト変位センサ76がスラスト円板66の上面に対して間隙を設け、この上面を変位検出面とするようにして取着されている。
【0026】
またさらに、下部ラジアル軸受部44は軸受ケース41の内面に固定された略円環状の下部ラジアル電磁石77と、これの内径面に積層外面が対向するようにスラスト円板66の最外周部分に圧入された下部ラジアル積層継鉄78とを設けて構成されている。下部ラジアル積層継鉄78は円環状の珪素鋼板を軸方向に積層してなるもので、その積層端面にはステンレス鋼板製のカバー79が設けられていて、直接積層端面が外部に露出しないようになっている。
【0027】
さらに下部ラジアル電磁石77は、略円環状の下部ラジアル磁極リング80の4等配された位置から内方に対を成して突出し、下部ラジアル積層継鉄78の積層端面に設けられたカバー79との間に微小間隙を形成する8個の突状磁極81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81hを有し、これらの突状磁極81a,81b,…,81hには夫々にコイル82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82hが巻かれている。
【0028】
そして、その内の一対の突状磁極81a,81bと、その両側に隣接する突状磁極81c,81dと突状磁極81g,81hの間には、それぞれ第3及び第4のラジアル変位センサ83,84が同一の平面内で90度の角度を持ち、下部ラジアル積層継鉄78の積層面を覆うカバー79との間に間隙を設け、カバー79の外面を変位検出面とするようにして下部ラジアル磁極リング80に固着され、第1及び第2のラジアル変位センサ55,56と同位相で変位を検出するよう配置されている。
【0029】
また、85、86は静止体であるベース33及び下部スラスト電磁石68に夫々取付板87,88によって外レースが固定された真空環境仕様の玉軸受で、その内レースは回転軸42に対して一定の空隙を有するように設けられていて、回転体38が磁気浮上していない時に回転体38を支持するものであり、非常用の軸受としても用いられる。
【0030】
さらに、89は上部ラジアル軸受部43と電動機46のステータ59の間に軸受ケース41に取着して設けられた上部遮蔽リングであり、90はステータ59とスラスト軸受部45の間に上部スラスト電磁石67に取着して設けられた下部遮蔽リングである。これらの両遮蔽リング89,90を設けることで軸受ケース41内の電気配線が回転軸42等の回転部分に接触し損傷するのを防止すると共に、電動機46の発生する電気的ノイズの遮蔽を行っている。
【0031】
このように構成された本実施例では、CVD装置31での半導体基板上への薄膜の気相成長を行うに先立ち、上部ラジアル軸受部43、下部ラジアル軸受部44及びスラスト軸受部45を作動させて回転体38を磁気浮上させて非接触に支持する。その後チャンバ32の内部を減圧し、電動機46によって回転体38を回転駆動し、ヒーターユニット48によってサセプタ37を所定温度に維持しながら原料ガスをチャンバ32内に導入して気相成長が行われる。
【0032】
そして回転体38を磁気浮上させて非接触に支持し、回転させている間の回転体38の位置及び姿勢の制御は、スラスト方向についてはスラスト軸受部45の上部スラスト電磁石67と下部スラスト電磁石68の強さを調節することによって行う。なお、このスラスト方向の調節でヒーターユニット48に対向するサセプタ37の下面との間隔が変えられ、これによってサセプタ37の温度の調節が行なえる。このため薄膜の気相成長の状況に合わせ半導体基板の温度を、浮上している回転体38のスラスト方向の調節を行なうことで調整することができ、良好な薄膜の成層を行なえる。
【0033】
さらに、ラジアル方向についての制御は上部ラジアル軸受部43及び下部ラジアル軸受部44の上部ラジアル電磁石49の各コイル54a,54b,…,54h、下部ラジアル電磁石77の各コイル82a,82b,…,82hに流す電流値を調節することによって行う。
【0034】
一方、スラスト変位センサ76の取付け位置が回転軸42の回転軸中心から離れているので、回転体38が傾斜しているとその傾きを軸方向の変位と同時にスラスト変位センサ76が検出することになる。このため軸方向の変位を所定値になるよう是正する制御が行なわれると、傾き分だけ軸方向に回転体38を加振することになり、安定した回転体38の回転が得られなくなる。
【0035】
このようなことから回転体38の傾きについては、制御部によって各ラジアル変位センサ55,56,83,84の信号から傾き成分を算出し、算出結果によってスラスト変位センサ76の信号を補正することによって行うようにしている。これについて図8を参照して次に説明する。
【0036】
先ず、上部ラジアル軸受部43に設けた第1及び第2のラジアル変位センサ55,56の検出した夫々の値から上部ラジアル電磁石49の一対の突状磁極53a,53bの突出方向に平行な方向の変位量Δx1 を算出し、また下部ラジアル軸受部44に設けた第3及び第4のラジアル変位センサ83,84の検出した夫々の値から下部ラジアル電磁石77の一対の突状磁極81a,81bの突出方向に平行な方向の変位量Δx1 と同位相の変位量Δx2 を算出する。
【0037】
次いでこれらの変位量Δx1 、変位量Δx2 から、回転軸38の上部ラジアル電磁石49の位置での下部ラジアル電磁石77の位置での回転中心を基準とした変位量がΔx1 −Δx2 として求められる。そして上下部に設けられた第1及び第2のラジアル変位センサ55,56と第3及び第4のラジアル変位センサ83,84との間の回転軸方向距離をlbとし、スラスト変位センサ76の回転中心からの距離をlsとすると、傾きの補正量δは
δ=ls/lb×(Δx1 −Δx2 )
で算出される。
【0038】
この算出された傾きの補正量δにもとづいてスラスト変位センサ76の信号が補正される。これにより回転体38の傾きによる見掛上の軸方向の変位をキャンセルすることができ、回転体38の安定した回転が得られることになる。
【0039】
また以上のように構成されたものであることから、上部ラジアル積層継鉄50や下部ラジアル積層継鉄78、さらにはステータコア57の積層端面に錆びが発生するようなことがあっても、積層端面が外部に露出しないように設けられたカバー51,61,79によって錆びが外部に飛散するのを防止することができる。これによってチャンバ32の内部が錆びによって汚染されることがなく、製品の歩留を低下させることがない。またカバー51,61は平滑な外面が各ラジアル変位センサ55,56,83,84に対向することになるので正確な変位を検出することができる。
【0040】
また、減圧側に支持されている回転体38と静止体との間を仕切っている真空シールドが不要となるので、回転体38を非接触に支持するために要する力が少なく各軸受部43,44,45は小形化したものとなる。さらに下部ラジアル軸受部44とスラスト軸受部45とは一体的に設けられているので軸方向に長くならず、また第1,第2,第3,第4のラジアル変位センサ55,56,83,84はそれぞれが上部ラジアル電磁石49及び下部ラジアル電磁石77の磁極間に設けられることになるので、さらにスラスト変位センサ76は上部スラスト電磁石67の磁極間に取着されているので、夫々が軸方向に配置されて長くなってしまうようなことがなく、短く非常にコンパクトなものとすることができる。
【0041】
尚、本発明は上記の実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明は、筐体内に収納された回転体の回転軸の一端側に設けたスラスト円板の上,下面に対向する上,下部スラスト電磁石と、スラスト円板の外周部に固定された第1のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第1のカバーに対向する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に取着され第1のカバーの外面を検出面とする一端側のラジアル変位センサと、回転軸の他端側に固定された第2のラジアル積層継鉄の積層端面を覆う第2のカバーに対向する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に取着され第2のカバーの外面を検出面とする他端側のラジアル変位センサとを具備する構成としたことにより、筐体内の汚染が低減できると共に小形化した磁気軸受装置を提供することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るCVD装置の要部の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るCVD装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るロータの縦断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る上部ラジアル磁気軸受部の上部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係る下部ラジアル磁気軸受部の下部ラジアル積層継鉄部分の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係る上部ラジアル磁気軸受部の横断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係る下部ラジアル磁気軸受部の横断面図である。
【図8】本発明の一実施例に係る変位センサによる変位の検出を説明するための図で、図8(a)はラジアル変位センサが検出する変位を説明する図であり、図8(b)はラジアル変位センサ及びスラスト変位センサが検出する変位を説明する図である。
【図9】従来の玉軸受を使用したCVD装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図10】従来の磁気軸受を使用したCVD装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
32…チャンバ
38…回転体
42…回転軸
49…上部ラジアル電磁石
50…上部ラジアル積層継鉄
51,79…カバー
53a,53b,53c,53d,53g,53h,81a,81b,81c
,81d,81g,81h…突状磁極
55…第1のラジアル変位センサ
56…第2のラジアル変位センサ
66…スラスト円板
69…上部スラスト電磁石
70…下部スラスト電磁石
76…スラスト変位センサ
77…下部ラジアル電磁石
78…下部ラジアル積層継鉄
83…第3のラジアル変位センサ
84…第4のラジアル変位センサ
Claims (2)
- 筐体内に収納され回転軸の一端側にスラスト円板を設けた縦型の回転体と、前記スラスト円板の上,下面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ前記回転体をスラスト方向に非接触に支持する上,下部スラスト電磁石と、前記スラスト円板の面を検出面として設けられ前記上,下部スラスト電磁石を制御するための信号を出力するスラスト変位センサと、前記スラスト円板の外周部に固定され外周積層端面が第1のカバーで覆われた第1のラジアル積層継鉄と、この第1のラジアル積層継鉄の外周積層端面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ前記回転体の一端部をラジアル方向に非接触に支持する第1のラジアル電磁石と、この第1のラジアル電磁石の磁極間に前記第1のカバーの外面を検出面として取着され該第1のラジアル電磁石を制御するための信号を出力する一端側のラジアル変位センサと、前記回転軸の他端側に固定され外周積層端面が第2のカバーで覆われた第2のラジアル積層継鉄と、この第2のラジアル積層継鉄の外周積層端面に間隙を設けるようにして磁極を対向させ前記回転体の他端部をラジアル方向に非接触に支持する第2のラジアル電磁石と、この第2のラジアル電磁石の磁極間に前記第2のカバーの外面を検出面として取着され該第2のラジアル電磁石を制御するための信号を出力する他端側のラジアル変位センサとを具備したことを特徴とする磁気軸受装置。
- スラスト変位センサが、断面コ字形状で円環状をなす上,下部スラスト電磁石のいずれか一方の電磁石の磁極間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の磁気軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP15982793A JP3543976B2 (ja) | 1993-06-30 | 1993-06-30 | 磁気軸受装置 |
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