JP3542122B2 - 底面肉厚が極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法 - Google Patents

底面肉厚が極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、薄肉の板状本体の板面片側に底面肉厚が極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
ICカード、メモリーカード等のカード基板として使用されている薄肉の樹脂製の板状製品では、ICモジュールやフラッシュメモリ等を収納する凹所を板面に有する。このカード基板では電子機器の小型化に伴い板状本体も肉厚の薄いものが要求され、必然的に凹所の底面肉厚も薄く成形する必要が生じている。
【0003】
この凹所の成形には、板状本体を成形するキャビティの型面を部分的に凸面に形成して凹所成形型面とし、その凸面により板状本体の一部に凹所を同時に射出成形する成形方法、また凹所成形用のコアを圧縮代を残して予めキャビティ内に可動自在に突設し、射出充填した樹脂を部分的に圧縮して凹所を成形する方法などがある。
【0004】
キャビティ型面を形成した凸面により凹所を形成する上記成形方法では、凹所底面の肉厚を薄くして、凹所を深く形成するために、凸面の突出寸法を大きく設定して流動間隙を狭く形成すると、凸面による流動抵抗と流動摩擦の増大から下流側への樹脂の流れに乱れが生じて、ショートショットになり易く、またウエルドが発生し易い。このためコアの突出量が制限されるので、底面肉厚を薄く形成して凹部の深さ増すことは極めて困難とされている。
【0005】
またキャビティ内に樹脂を射出充填したのちに、その樹脂をコアにより部分的に圧縮して凹所を形成する成形方法では、コアによる流動抵抗や樹脂流の乱れはないが、圧縮代を大きく設定すると余剰樹脂量が多くなり、この処理に課題があって薄肉化に限界が生じて、凸面による場合と同様に、底部肉厚を薄く形成して凹部の深さ増すことは極めて困難とされている。
【0006】
上記余剰樹脂の解決策として、樹脂の射出充填量を制限してキャビティ末端部に未充填部を生じさせ、コアよりさらに下流まで樹脂の充填を行ってから圧縮を行うことも考えられている。この成形方法では射出充填時のコアによる影響が少なく、また充填する樹脂量の制限によって、圧縮前に生じているキャビティ末端部のスペースを、圧縮により生ずる余剰樹脂が埋めることができるので、肉厚分布が整った薄肉の製品が得られるとのことであるが、コアにより押圧されて生じた余剰分の樹脂の全てが、キャビティ末端部のスペースに押し出されるものではなく、ゲート側にも逆流するので、成形が不安定となり易い。
【0007】
またコアがキャビティ内に突出位置し、そのコアに向けて上流側のゲートから樹脂の射出充填を行う限り、コアによる流動抵抗や流動摩擦は生じ、コア下側とコア両側の樹脂流の流動速度差は解消されないので、コアにより下流側のキャビティ末端部が未充填の状態であっても、コア廻りの樹脂によるウエルドの発生やコア下側の充填遅れによるショートショットは避けられない。
【0008】
いずれにしても、従来の上記成形方法では、面積が2cm2 以上の凹所の底面肉厚を0.3mm以下の極薄肉に形成することは困難で、出来たとしてもウエルドによる強度低下、残留応力による反りや捩じれによる変形、ガス焼けなどの不良が生じ、良品の成形は望めないものであった。
【0009】
この発明は上記従来の課題を解決するために考えられたものであって、その目的は、コアによる樹脂流の流動速度の差から生じがちな未充填部分を、圧縮により生じた余剰樹脂により凹所の下流側から補完することにより、凹所底面を極薄肉に形成して凹所を深く成形することができる新たな板状製品の射出成形方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的によるこの発明は、板状本体の面内片側を極薄肉の凹所に圧縮形成するコアを、凹所底面の肉厚の2〜5倍の圧縮代を残してキャビティ内に可動自在に突設し、そのコアと対向するキャビティサイドの中央部にゲートを設けて、サイドゲートから下流側のコアに向け樹脂を射出充填するとともに、該コアによる流動抵抗を利用して上流側の二隅部の射出充填を先行し、 その樹脂の射出充填を、コアにより一次的に成形された凹所の下流側と、キャビティ末端部の両方の中央部とが未完状態で流動スペースがあるときに停止し、その状態で上記コアにより凹所底面を極薄肉に圧縮成形すると同時に、凹所の余剰樹脂を上記流動スペースに押出して、未完部分の樹脂の補完を行う、というものである。
【0011】
またこの発明は、上記キャビティのサイドゲートの対向部位にオーバーフロータブを設けてなり、上記コアによる凹所の圧縮成形は、射出圧を零に設定して行い、圧縮力による上流側の樹脂の逆流をゲートサイドから漏れさせて圧抜きを行ったのち、樹脂の再充填を行うというものである。また上記キャビティの上流側の両型面を凸面に形成し、その凸面により上記板状本体の両面にラベル貼着用の凹所を上記凹所と並行に成形してなるというものである。さらに、この発明は上記射出成形をプリプラ式射出成形機により行うというものでもある。
【0012】
【発明の実施の形態】
図中1は一対の分割金型からなるキャビティ金型で、分割金型のパーティング面には、型閉じにより平面形状が四辺形で肉厚が1.0mm以下の板状本体10(図5参照)を形成するキャビティ2の半部がそれぞれ凹設してある。
【0013】
3は圧縮成形用のコアで、上記板状本体10の面内片側に底面肉厚が極薄肉(例えば0.3mm以下)で枠縁11に囲まれた幅方向に長い四辺形の凹所12(図5参照)を圧縮成形する平断面形状からなり、該凹所12の底面肉厚の2〜5倍の圧縮代を残して、一方の分割金型から他方の分割金型に向けて可動自在に、キャビティ2の面内片側に下流側に片寄せて突設してある。
【0014】
4はキャビティのゲートで、コア3と対向する上流側のキャビティサイドの中央に幅広に設けられており、そのサイドゲート4から下流側のコア3に向けて樹脂をキャビティ2に射出充填することができるようにしてある。
【0015】
このサイドゲート4から、キャビティ2に射出充填した溶融状態の樹脂5は、均一な平行流となって先ずコア3のある下流へと幅を広げながら、鎖線で示すように流動する。しかし、キャビティ内に突出位置したコア3によって、さらに下流側へは、図1(A1)及び(B1)に示すように、コア下側と両側に別れて流動するようになる。
【0016】
また樹脂5はコア3による流動抵抗により、下流側よりも流動抵抗が小さい上流側に先に満みちるようになって、通常では樹脂5の充填が意外に遅いサイドゲート4に隣接した上流側の二隅部2a,2aまで十分に充填が行われるようになる。
【0017】
上記コア3が位置するキャビティ2の下流側では、コア3により流動間隙が小さく制限されたコア下側と、制限を受けないコア両側とでは流動摩擦に差が生じて、コア下側の樹脂流5aの流動速度がコア両側の樹脂流5b,5bよりも遅くなり、図1(A2)及び(B2)に示すよう、両方の樹脂流の先端位置(フロントフロー)に差が生ずる。
【0018】
この状態で、従来のように樹脂の充填を続けると、コア両側の樹脂流5b,5bがキャビティ2の末端部で先に合流してウエルドラインが生じたり、あるいはコア下流側に空気が取り込まれた未充填部分が生じて、図7に示すようなに、窓孔aが凹所12の底面に生じた不良品となりやすい。
【0019】
そこで樹脂5の射出充填を、図1(A3)及び(B3)に示すように、不完全ながらコア3により厚肉に一次成形された凹所の下流側の中央部と、キャビティ末端部の中央部(コア両側からの樹脂流5b,5bの先端間)とに流動スペース6,7が残存して、共に未完の状態にあるときに停止する。そして樹脂が流動性を失う前にコア3を圧縮作動して、凹所を底面肉厚が0.3mm以下の極薄肉に圧縮成形する。
【0020】
上記射出充填の停止のタイミングは、成形に用いた射出成形機の射出スクリュやプランジャ位置で制御するのがよく、また圧縮成形タイムは精度1/1000秒のタイマーを採用して行うのがよい。
【0021】
好ましくは圧縮成形時に一旦射出圧を零に設定して、圧縮力による上流側の樹脂5の逆流を、サイドゲート4からランナースプル、ノズル(図4参照)を経て成形機側に漏れさせ、これにより圧抜きを行って残留応力の影響を低減し、圧縮後に再充填を行うのがよい。これにより反りや捩じれなどが生じ難い薄肉の板状製品が得られるようになる。
【0022】
上記コア3の圧縮によって、厚肉であった凹所の底面肉厚は極薄肉に形成されるようになり、同時に流動性を有する余剰樹脂がコア3の周囲に押出されるようになる。下流側には流動スペース6,7が残されているので、圧縮と同時に余剰樹脂はコア両側の樹脂5b,5bを内部から押圧して流動スペース7へと押し出すと同時に、凹所のコア下側の流動スペース6を埋め、さらに狭められた流動スペース7を内側から埋めて両側からの樹脂5b,5bの先端間を補完し、一体のものとなす。
【0023】
これにより、凹所の下流側の未充填が解消されて、凹所底面の肉厚が極薄肉でありながら、肉厚分布は±1/100に収まり、またコア両側の樹脂流の先端相互の合流によるウエルドの課題も解消された板状製品、例えば図1(A4)及び(B4)に示すような板状本体10の面内片側に、枠縁11に囲まれた凹所12が圧縮形成された板状製品が得られるようになる。
【0024】
図2は、上記キャビティ2のサイドゲート4の対向部位にオーバーフロータブ8を設け、凹所12の圧縮成形による余剰樹脂を、さらにオーバーフロータブ8まで押出して、余剰樹脂の流れをスムーズにし、これにより未完部位の補完とウエルドの強度向上とを確実なものとなすともに、凹所周囲の残留応力による反りや捩じれの発生を防止してなるものである。
【0025】
図3は、図6に示す板状製品の金型1で、コア3の圧縮面を二段に形成し、またキャビティ2の上流側の両型面を凸面9,9に形成したものからなる。このような金型1では、上記コア3により板状本体10の凹所12の面内に、底面肉厚がさらに薄肉の凹所12’を形成することができる。また凸面9,9により、板状本体10の両面にラベル貼着用の凹所13を上記凹所12と並行に成形することができる。
【0026】
図4は、この発明による射出成形方法をプリプラ式射出成形機を採用して行う場合の1例を示すものである。
プリプラ式射出成形機は、射出用のプランジャ21を進退自在に内装した射出シリンダ22の後部に、プランジャ移動装置23を備えた射出装置24と、可塑化用のスクリュ25を回転自在に内装した可塑化シリンダ26の後部に、スクリュ移動及び回転装置27を備えた可塑化装置28とを、射出シリンダ先端部のプランジャ前進限に当たる部分の流入路と、可塑化シリンダ先端の流出路とにわたり設けた開閉バルブ付き樹脂路29により連通し構成からなる。
【0027】
ここに例示したプリプラ式射出成形機は、上記スクリュ25の先端を開閉バルブ30に形成して、そのスクリュ25を回転かつ進退自在に可塑化シリンダ26に内装し、スクリュ25の進退移動により樹脂路29を開閉するものであるが、樹脂路29に回動バルブを取付けて開閉操作を行う構造であっても、同様に採用することができる。
【0028】
このプリプラ式射出成形機では、スクリュ回転により可塑化した樹脂を樹脂路29から射出シリンダ22のプランジャ前部内に充填して計量を行い、計量後にスクリュ前進によりバルブ30を閉じて可塑化装置側と遮断したのち、プランジャ21の前進移動すると、プランジャ前部の計量樹脂が、ノズル31からスプル32及びランナー33を通過して、型閉じされた上記金型1のサイドゲート4からキャビティ2に射出充填される。
【0029】
金型内では、射出充填の終了と殆ど同時に圧縮用の油圧シリンダ34が作動して、ラム35により押圧板36に固設した上記コア3をキャビティ内に押出し、図では省略したが、キャビティ2により形成された板状本体に極薄肉の凹所を形成する。
【0030】
このような射出手段では、樹脂の計量誤差が極めて僅かで、射出時の計量樹脂の漏れも殆どないことから、樹脂の可塑化と射出充填とを射出シリンダ内に回転かつ進退自在に内装した射出スクリュにより行うインラインスクリュ式射出成形機を採用したときよりも、射出途中の停止時点での射出充填量が安定するので、製品も肉厚分布が整った成形精度の高いものとなる。
【0031】
【実施例】
材料樹脂 PC、PC+ABSアロイ、PBT等
成形機 FN1000/TM3UH(日精樹脂工業(株)製)
板状本体の面積 3.7×4.5cm2 肉厚 0.80mm
凹所の面積 2.0×1.5cm2 底面肉厚 0.10mm
キャビティの容積 1.4cm3 圧縮代 0.40mm
樹脂量 1.5g
射出速度 1000mm/sec
射出圧力 1800Kgf
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の射出成形方法を工程順に示す説明図で、(A)は金型の略示平面図、(B)は金型の略示縦断面図である。
【図2】この発明の他の実施形態の金型の略示平面図(A)と金型の略示縦断面図(B)である。
【図3】この発明を図6に示す板状製品の成形に適用し得る金型の略示平面図(A)と金型の略示縦断面図(B)である。
【図4】この発明の射出成形方法の実施に用いられるプリプラ式射出成形機と金型の縦断面図である。
【図5】この発明の射出成形対象となる板状製品の斜視図である。
【図6】この発明の射出成形対象となる他の板状製品の斜視図である。
【図7】従来の射出成形方法による板状製品の斜視図である。
【符号の説明】
1 金型
2 キャビティ
3 凹所成形用のコア
4 サイドゲート
5 樹脂
5a コア下側の樹脂流
5b コア両側の樹脂流
6 凹所下流側の流動スペース
7 キャビティ末端部の流動スペース
8 オーバーフロータブ
21 射出用のプランジャ
24 射出装置
25 可塑化用のスクリュ
27 可塑化装置
29 樹脂路

Claims (5)

  1. 板状本体の面内片側を極薄肉の凹所に圧縮形成するコアを、凹所底面の肉厚の2〜5倍の圧縮代を残して、キャビティ内の下流側に片寄せて可動自在に突設し、
    そのコアと対向する上流側のキャビティサイドの中央部にゲートを設け、該サイドゲートから下流側のコアに向けて樹脂を射出充填するとともに、該コアによる流動抵抗を利用して上流側の二隅部の射出充填を先行し、
    その樹脂の射出充填を、コアにより一次的に厚肉に成形された凹所の下流側とキャビティ末端部の両方の中央部が、未完状態で流動スペースがあるときに停止し、
    その状態で上記コアにより凹所底面を極薄肉に圧縮成形すると同時に、凹所の余剰樹脂を上記流動スペースに押出して未完部分の樹脂の補完を行うことを特徴とする極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法。
  2. 上記キャビティのサイドゲートの対向部位にオーバーフロータブを設けてなることを特徴とする請求項1記載の底面肉厚が極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法。
  3. 上記コアによる凹所の圧縮成形は射出圧を零に設定して行い、圧縮力による上流側の樹脂の逆流をゲートサイドから漏れさせて圧抜きを行ったのち、樹脂の再充填を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の底面肉厚極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法。
  4. 上記キャビティの上流側の両型面を凸面に形成し、その凸面により上記板状本体の両面にラベル貼着用の凹所を上記凹所と並行に成形してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の底面肉厚極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法。
  5. 上記射出成形はプリプラ式射出成形機により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の底面肉厚が極薄肉の凹所を有する板状製品の射出成形方法。
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