JP3541836B2 - 駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、盗難防止を兼ねた駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にスクータ型車両のイグニッションキーはハンドルバーの軸支部付近に設けられており、このイグニッションキーにはハンドルロック装置が併設されている。スクータ型車両を駐車させる場合は、このハンドルロック装置でハンドルバーの回動を規制し、盗難を防止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このハンドルロック装置を使用しただけでは後輪が自由に回転できるため、盗難に遭う確率が非常に高い。また、例えば傾斜した路面にサイドスタンドを用いて駐車させる場合に後輪が回転して車体が自然に動き出すことがあり、安定良く駐車させることができない。この場合、チェーンロック等の用具を用いて後輪の回転を規制すれば盗難防止効果が増すとともに駐車状態も安定するが、このようなチェーンロック等の用具を着脱するのは面倒で、しかもこれを収納するスペースが非常に限られているので携帯が困難である。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、駐車時に後輪の回転を容易に規制して盗難防止効果を向上させるとともに駐車状態を安定させることのできる駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明のもう一つの目的は、この駐車ブレーキ装置を構成する部品の点数を削減し、生産性を向上させる駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、ユニットケース内でクランク軸の回転を後輪へ伝達する駆動軸にクラッチハウジングを配設し、このクラッチハウジングの周部に回転側係合部を複数等間隔に突設するとともに、前記ユニットケース外部からの操作により走行位置と駐車位置との間で可動して駐車位置にて前記クラッチハウジングの回転側係合部と係合する固定側係合部を前記ユニットケースに配設し、前記クラッチハウジングと後輪との間に減速装置を配設し、回転側係合部と固定側係合部が係合することにより前記駆動軸の回転を妨げ、後輪の回転を規制するようにしたものである。
【0009】
【作用】
駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両を請求項1に記載したように構成した場合、固定側係合部を外部から操作してユニットケース内で走行位置から駐車位置に可動させれば、この固定側係合部がドラム部材の周部に突設された回転側係合部に当接してドラム部材と駆動軸の回転が妨げられ、後輪の回転が規制される。このため、スクータ型車両の盗難防止効果が向上するとともに、駐車状態が安定する。
【0010】
また、請求項2に記載したようにクラッチ装置のクラッチハウジングをドラム部材としてその周部に回転側係合部を突設すれば、回転側係合部を設けるための専用のドラム部材を駆動軸に設ける必要がなくなり、駐車ブレーキ装置を構成する部品の点数が削減され、生産性が向上する。
【0011】
さらに、ドラム部材と後輪との間に減速装置を配設すれば、固定側係合部を回転側係合部に係合させるとき、駆動軸が回転しても、後輪は殆ど回転せず、後輪の回転を規制させ、安定的に駐車させることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る駐車ブレーキ装置が適用されたスクータ型車両の左側面図である。このスクータ型車両1は、車体の前頭部に前輪2および前輪2操舵用のハンドルバー3が設けられ、車体の後部にはリンク4を介してパワーユニット5が連結されている。このパワーユニット5は、エンジン6とユニットケース7が一体にユニット化されたもので、ユニットケース7の後部に後輪8が直接軸支されている。なお、パワーユニット5の後部はリヤクッションユニット9で車体側に緩衝懸架されている。
【0014】
パワーユニット5の上方には着座シート11が設けられており、この着座シート11と前記ハンドルバー3との間は下方に低く湾入して乗員の足を載せるフロアボード12が設けられている。
【0015】
図2は図1のII−II線に沿うパワーユニット5の横断面図である。このパワーユニット5のエンジン6は単気筒エンジンであり、そのクランクケース13からシリンダアッセンブリ14が前方に突き出ている。また、ユニットケース7はクランクケース13の左側に一体に連設されて後方に延びるケース本体15と、このケース本体15の左側開口部に着脱可能に被装されるケースカバー16とから構成され、ユニットケース7の内部にはエンジン6の動力を後輪8に伝達するVベルト自動変速装置17と、ギヤ列で構成された減速装置18が内蔵される。なお、後輪8はユニットケース7の最後部に軸支されたアクスル軸19に支持されている。
【0016】
エンジン7のクランク軸21はクランクケース13内で車幅方向に軸支されており、その左端部はユニットケース7内の前方に突出していて、ここにVベルト自動変速装置17のドライブプーリ22が回転一体に固定されている。また、ユニットケース7内の後部に軸支された駆動軸23には、Vベルト自動変速装置17のドリブンプーリ24と、遠心式のクラッチ装置25が軸支され、ドライブプーリ22とドリブンプーリ24との間にVベルト26が巻かれている。
【0017】
クラッチ装置25は、原動側部材となるクラッチシューアッセンブリ27と、従動側部材としてクラッチシューアッセンブリ27の周囲を覆うクラッチハウジング28とから構成されており、クラッチシューアッセンブリ27はドリブンプーリ24と一体に駆動軸23の周囲を回転自在であり、クラッチハウジング28は駆動軸23に回転一体に設けられている。
【0018】
エンジン6の出力、即ちクランク軸21の回転はドライブプーリ22からVベルト26を経てドリブンプーリ24に伝達され、ドリブンプーリ24の回転はクラッチ装置25のクラッチシューアッセンブリ27に伝達される。クラッチシューアッセンブリ27の回転速度が高まると、遠心力で複数のクラッチシューが遠心方向に拡張し、クラッチハウジング28の内側に摩擦係合する。このためクラッチハウジング28が回り出し、その回転が駆動軸23に伝達される。そして、駆動軸23が減速装置18を介して後輪8を駆動する。
【0019】
図3(A),(B)は、図2のIII−III線に沿う縦断面図であり、本発明に係る駐車ブレーキ装置30の第一実施例を示している。この駐車ブレーキ装置30は以下のように構成されている。
【0020】
まず、駆動軸23に回転一体に設けられたクラッチハウジング28は、駐車ブレーキ装置30を構成するドラム部材として兼用されており、その周部、つまり外周面には2個の回転側係合部31が180゜間隔で突設されている。この回転側係合部31は3個以上設けても構わないが、出来るだけクラッチハウジング28の円周上で等間隔に配置する必要がある。
【0021】
一方、ユニットケース7内には固定側係合部32が設けられている。この固定側係合部32は、クラッチハウジング28の上方でケースカバー16の天井部に固定された板バネ33の下面略中央部に固着されている。板バネ33の両端はビス34でケースカバー16に固定されており、その中央部、即ち固定側係合部32が固着された部分が上下にしなることができる。
【0022】
通常、板バネ33は図3(A)に示すようにケースカバー16の天井部にほぼ密着しており、この時の固定側係合部32の位置が走行位置となる。また、図3(B)のように板バネ33が下方にしなると、固定側係合部32の位置が下がり、その時の位置が駐車位置となる。
【0023】
そして、ユニットケース7の上部には操作レバー35が設けられる。この操作レバー35は、例えばリヤクッションユニット9の下部をユニットケース7に締結するボルト36の部分から前方に延びており、このボルト36を軸に上下に回動することができる。操作レバー35の先端部には手で掴むための把持部37が取り付けられており、操作レバー35の中間部には下方に延びてユニットケース7内に挿入されるプッシュロッド38と、上方に起立するロックプレート39とが一体的に設けられている。なお、プッシュロッド38がユニットケース7内に挿入される部分には防水および防塵用のシール部材41が嵌装されており、ロックプレート39の中央には孔42が穿設されている。
【0024】
さらに、操作レバー35の右側に隣接してロック機構43が設けられている。このロック機構43は、ケース本体15に固定されたロックボディ44にキーシリンダ45とロックピン46を設けたもので、キーシリンダ45にスクータ型車両1のイグニッションキー等を差し込んで捻ることにより、ロックピン46が操作レバー35の長手方向に対して直角方向にロックボディ44内から出没するように構成されている。このロックピン46から操作レバー35の支点となっているボルト36までの直線距離と、操作レバー35に設けられたロックプレート39の孔42からボルト36までの直線距離は同じに設定されている。
【0025】
以上のように構成された駐車ブレーキ装置30を用いてスクータ型車両1を駐車させる場合には、操作レバー35を下方に押し下げてからキーシリンダ45をキーで操作し、操作レバー35をロックする。
【0026】
操作レバー35が下方に押し下げられると、図3(B)のようにプッシュロッド38の先端部が板バネ33の中央部を押圧して板バネ33を下方にしならせるため、固定側係合部32が駐車位置に置かれる。また、キーシリンダ45の操作によりロックピン46がロックボディ44から突出し、突出したロックピン46が操作レバー35のロックプレート39に穿設された孔42に右側から差し込まれて操作レバー35の回動がロックされるので、固定側係合部32が駐車位置に保持される。
【0027】
この状態でクラッチハウジング28が回転しようとしても、クラッチハウジング28の周部に設けられた回転側係合部31が固定側係合部32に当接するため、クラッチハウジング28と駆動軸23の回転が妨げられて後輪8の回転が規制される。
【0028】
また、キーでロック機構43のロックを解除すれば、図3(A)のように板バネ33の反発力で固定側係合部32が走行位置に戻り、クラッチハウジング28と駆動軸23の回転の妨げがなくなって後輪8が回転可能になる。
【0029】
このように、本発明に係る駐車ブレーキ装置30を用いれば後輪8の回転を容易に規制することができるので、ハンドルロック装置と併せて使用すればスクータ型車両1の盗難防止効果を大幅に向上させることができる。また、例えば傾斜した路面にサイドスタンドを用いてスクータ型車両1を駐車させる場合に、後輪8が回転して車体が自然に動き出すといった事態を防止でき、駐車状態を安定させることができる。
【0030】
そして、この駐車ブレーキ装置30は、クラッチ装置25のクラッチハウジング28をドラム部材として兼用しているため、専用のドラム部材を駆動軸23に設ける必要がない。このため、駐車ブレーキ装置30を構成する部品の点数を削減して生産性を向上させることができる。
【0031】
なお、この実施例では固定側係合部32が駐車位置に置かれていてもクラッチハウジング28が180゜近く回動可能であるが、このクラッチハウジング28の回動は減速装置18により13分の1程度に減速されてから後輪8に伝達されるため、後輪8の回動角は僅かなものとなる。
【0032】
ところで、図4(A),(B)は、本発明に係る駐車ブレーキ装置の第二実施例を示している。この駐車ブレーキ装置50は、その操作レバー51およびロック機構52以外の部材が図3に示す第一実施例の駐車ブレーキ装置30のものと同一の構成、作用を持つため、同一の符号を付して説明を省く。
【0033】
操作レバー51の全長は、第一実施例に示す操作レバー35の約半分であり、把持部は設けられておらず、その先端部には下方に延びてユニットケース7内に挿入されるプッシュロッド53と、上方に起立するロックプレート54とが一体的に設けられている。このロックプレート54には、操作レバー35の長手方向に沿う長円孔55が穿設されている。
【0034】
一方、ロック機構52は、ケース本体15に固定されたロックボディ56にキーシリンダ57とロックピン58が設けられる点は第一実施例に示すロック機構43と同じだが、キーシリンダ57にキーを差し込んで捻った場合に、ロックピン58はロックボディ56から突出したままの状態で上下方向に移動する。そして、このロックピン58は操作レバー51の長円孔55に嵌合されている。
【0035】
キーシリンダ57の操作によりロックピン58が上下に移動すると、これに連動して操作レバー51が上下に回動する。その際、ロックピン58はロックプレート54の長円孔55内を長手方向に移動する。
【0036】
図4(A)の状態ではロックピン58が上側に位置しており、操作レバー51も上方に回動した状態にあるため、プッシュロッド53は板バネ33を下方に押圧せず、固定側係合部32は走行位置に置かれて後輪8の回転が妨げられることはない。
【0037】
この状態でキーシリンダ57をキーで操作すると、図4(B)のようにロックピン58が下側に移動し、これに伴って操作レバー51が下方に回動する。このため、プッシュロッド53の先端部が板バネ33の中央部を押圧して固定側係合部32を駐車位置に置き、これによりクラッチハウジング28と駆動軸23の回転が妨げられて後輪8の回転が規制される。
【0038】
このように構成された駐車ブレーキ装置50の場合、操作レバー51を手で操作することなく、キーシリンダ57の操作のみで後輪8の回転を規制または解除することができるため、片手で簡単に操作できて操作性が良い。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両は、固定側係合部を外部から操作してユニットケース内で走行位置から駐車位置に可動させれば、この固定側係合部がドラム部材の周部に突設された回転側係合部に当接してドラム部材と駆動軸の回転が妨げられ、後輪の回転が規制される。このため、スクータ型車両の盗難防止効果が向上するとともに、駐車状態が安定する。
【0040】
また、クラッチ装置のクラッチハウジングをドラム部材としてその周部に回転側係合部を突設すれば、回転側係合部を設けるための専用のドラム部材を駆動軸に設ける必要がなくなり、駐車ブレーキ装置を構成する部品の点数が削減され、生産性が向上する。
【0041】
さらに、ドラム部材と後輪との間に減速装置を配設すれば、固定側係合部を回転側係合部に係合させるとき、駆動軸が回転しても後輪は殆ど回転せず、後輪の回転を規制させ、安定的に駐車させることができる。
【0042】
このように、後輪の回転を容易に規制することができるので、スクータ型車両の盗難防止効果を大幅に向上させるとともに、傾斜路面等における駐車状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駐車ブレーキ装置が適用されたスクータ型車両の左側面図。
【図2】図1のII−II線に沿うパワーユニットの横断面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う縦断面により本発明の第一実施例を示すもので、(A)は固定側係合部が走行位置に置かれた状態を示す図、(B)は固定側係合部が駐車位置に置かれた状態を示す図。
【図4】本発明の第二実施例を示すもので、(A)は固定側係合部が走行位置に置かれた状態を示す図、(B)は固定側係合部が駐車位置に置かれた状態を示す図。
【符号の説明】
1 スクータ型車両
5 パワーユニット
7 ユニットケース
8 後輪
17 Vベルト自動変速装置
18 減速装置
23 駆動軸
25 クラッチ装置
28 クラッチ装置の従動側部材であり、駐車ブレーキ装置のドラム部材となるクラッチハウジング
30 駐車ブレーキ装置
31 回転側係合部
32 固定側係合部
33 板バネ
35 操作レバー
Claims (1)
- ユニットケース内でクランク軸の回転を後輪へ伝達する駆動軸にクラッチハウジングを配設し、このクラッチハウジングの周部に回転側係合部を複数等間隔に突設するとともに、前記ユニットケース外部からの操作により走行位置と駐車位置との間で可動して駐車位置にて前記クラッチハウジングの回転側係合部と係合する固定側係合部を前記ユニットケースに配設し、前記クラッチハウジングと後輪との間に減速装置を配設し、回転側係合部と固定側係合部が係合することにより前記駆動軸の回転を妨げ、後輪の回転を規制するようにしたことを特徴とする駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両。
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JP2002014023A JP3541836B2 (ja) | 2002-01-23 | 2002-01-23 | 駐車ブレーキ装置付きスクータ型車両 |
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2002
- 2002-01-23 JP JP2002014023A patent/JP3541836B2/ja not_active Expired - Fee Related
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