JP3540936B2 - 真空容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜装置やエッチング装置におけるチャンバやベルジャなどの真空容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程においては、反応ガスをプラズマ化して半導体ウエハに薄膜を形成する成膜装置や微細加工を施すエッチング装置が用いられており、反応ガスのプラズマ化は高温を要せず比較的低温で処理ができるという利点を有している。
【0003】
例えば、成膜装置は内壁にセラミック片を貼り付けたチャンバ内に半導体ウエハを設置し、上記チャンバ内に反応ガスとして原料ガスとハロゲン系腐食性ガスを導入し、この反応ガスをプラズマ化することにより半導体ウエハ上に薄膜を形成するようになっており、また、エッチング装置は釣鐘状をした石英ガラスからなるベルジャ内に半導体ウエハを設置し、上記ベルジャ内に反応ガスとしてハロゲン系腐食性ガスを導入し、この反応ガスをプラズマ化することにより半導体ウエハに微細加工を施すようになっていた(特開平5−217946号公報参照)。
【0004】
なお、反応ガスのプラズマ化には、チャンバやベルジャなどの真空容器に導入された反応ガスに高周波のマイクロ波を照射してプラズマ化する方法や、真空容器に接続された導入管内の反応ガスに外部よりマイクロ波を照射してプラズマ化したものを真空容器にまで導く方法が採用されている。
【0005】
そして、これら真空容器の少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位には前述したようにセラミックスや石英ガラスが使用され、その表面はプラズマにより腐食されないようにするために平滑に形成されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、反応ガスとして使用されているフッ素系や塩素系などのハロゲン系腐食性ガスは、真空容器の内壁面を構成するセラミックスや石英ガラスと反応して内壁面上にハロゲン化物を生成し、該ハロゲン化物が蒸発したりプラズマによって摩耗して半導体ウエハにパーティクルとして堆積する結果、半導体ウエハに悪影響を与えるといった課題があった。
【0007】
また、上記ハロゲン化物は、真空容器中に導入される混合ガス中の酸素などと反応して酸化物や酸窒化物となって真空容器の低温部に付着するのであるが、ある程度堆積すると剥がれ落ちて半導体ウエハに堆積する結果、ハロゲン化物と同様に半導体ウエハに悪影響を与えるといった課題があった。
【0008】
その為、定期的に装置を停止させて真空容器の内壁面に生成されるハロゲン化物などの反応生成物を除去するメンテナンスを施さなければならないのであるが、この作業を頻繁に行わなければならないことから装置の稼働効率が悪いといった課題があった。
【0009】
【発明の目的】
本発明の目的は、ハロゲン系腐食性ガスとの反応によって生成されるハロゲン化物などの反応生成物がパーティクルとして剥がれ落ちるまでの時間を長くして、定期的に行うメンテナンス回数を減らすことにより装置の稼働効率を高めることができる真空容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課題に鑑み、少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位がセラミックス又は石英ガラスからなり、その表面が中心線平均粗さ(Ra)で2μm以下であるとともに、開口面積3mm2以上、深さ2mm以上の複数個の孔、窪みあるいは溝からなる凹部を有することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は本発明の真空容器を用いたエッチング装置の概略を示す模式図であり、1は釣鐘状をしたベルジャと呼ばれる真空容器で、セラミックス又は石英ガラスからなり、この真空容器1の内壁面2には複数個の凹部3を形成してある。また、上記真空容器1の頂部には一体的に伸びる導入管4を設けてあり、該導入管4の周囲には高周波コイル5が設置してある。そして、真空容器1内には被加工物Wを保持する支持部材6を設置してあり、該支持部材6上に被加工物Wを載置するとともに、上記高周波コイル5によってマイクロ波を発生させて導入管4に対して垂直に照射することにより導入管4に供給される反応ガスをプラズマ化し、真空容器1内へ導くことにより被加工物Wをエッチングして微細加工を施すようになっている。
【0013】
そして、本発明によれば、真空容器1の少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される内壁面2に複数個の凹部3を形成し、真空容器1内の表面積を大きくしてあることから、真空容器1を構成するセラミックスや石英ガラスがハロゲン系腐食性ガスや混合ガス中の酸素などと反応して反応生成物を生成したとしても、該反応生成物がパーティクルとして剥がれ落ちるまでの時間を長くすることができる。しかも、プラズマは凹部3内に回り込み易いことから反応生成物を凹部3内に積極的に生成させることができ、真空容器1の内壁面2における反応生成物の生成量を少なくすることができるため、真空容器1のメンテナンス回数を減らし、装置の稼働効率を高めることができる。
【0014】
その上、真空容器1の側部では凹部3内に生成された反応生成物が剥がれ落ちたとしても凹部3内に保持することができるため、内壁面が平滑面からなる従来の真空容器と比較して単位時間当たりの被加工物Wへのパーティクル量を低減することができる。
【0015】
ところで、内壁面2に形成する凹部3としては、孔や窪みあるいは溝を凹部3として用いることができる。例えば、図2(a)は内壁面2にドリル加工等によって円形の孔3aをほぼ等間隔に複数個穿設したものであり、図2(b)は図2(a)の孔3aに対してざぐり孔3bを設け、断面形状を階段状とすることにより表面積をさらに大きくしたものである。一方、図2(c)は内壁面2にダイヤモンドホイールによって細長い窪み3cをある一定の間隔で複数個刻設したものである。また、図2(d)〜(f)はいずれも内壁面2に断面形状がコ字状、V字状、階段状をした溝3dを等間隔に複数個刻設したものであり、図2(g)は内壁面2に溝3dを縦横にそれぞれ複数個刻設して格子状としたものである。
【0016】
なお、凹部3の形状としては図2(a)〜(g)だけに限定されるものではなく、例えば、孔3a、窪み3c、溝3dのうち2つ以上が混在したものでも良く、また、孔3aの形状も円形だけに限定されるものではなく、三角形や四角形などの多角形をしたものや楕円形をしたものなどどのような形状をしたものでも構わない。
【0017】
ただし、内壁面2に存在する一つの凹部3の開口面積は3mm2 以上、凹部3の深さは2mm以上が良い。これは、凹部3の開口面積が3mm2 未満では凹部3内へプラズマが回り込み難くなり、凹部3を設けたことによるパーティクル低減効果が小さいからであり、また、凹部3の深さが2mm未満では表面積をそれほど大きくすることができず、パーティクル低減効果が小さいからである。
【0018】
また、内壁面2と凹部3とのエッジ部には、テーパ状や曲面状の面取りを施しておくことが望ましい。これは、プラズマエネルギーが鋭利な部分に集中して腐食摩耗させ易いからであり、予め内壁面2と凹部3とのエッジ部にテーパ状や曲面状の面取りを施して鋭利な部分をなくしておくことにより、摩耗を抑えることができる。
【0019】
さらに、真空容器1の内壁面2は中心線平均粗さ(Ra)で2μm以下、好ましくは1μm以下とすることが良い。これは内壁面2に大きな凹凸があると、プラズマエネルギーが凸や凹のエッジに集中して腐食摩耗させ易く、中心線平均粗さ(Ra)が2μmより大きいと腐食摩耗が激しいからである。なお、より好ましくは内壁面2の凹凸が丸みを有していることが良く、例えば、焼成後の表面粗さが上記範囲にある場合には焼成したままの面とし、研磨加工を施した場合には熱処理を加えて凹凸に丸みを持たせることが好ましい。
【0020】
また、このような真空容器1を構成するセラミックスとしては、窒化珪素や窒化アルミニウムなどの窒化物セラミックスや、アルミナ、マグネシア、アルミニウム−イットリウム−ガーネット(YAG)などの酸化物セラミックスを用いることができる。さらに、上記セラミックスや石英ガラスはできるだけ高純度のものが良く、純度が99.5%以上、好ましくは99.8%以上のものが耐摩耗性を高める上で好適である。
【0021】
さらに、上記セラミックスや石英ガラスからなる真空容器1の内壁面2側には、3000kg/mm2 以上のビッカース硬度を有する硬質炭素膜7を被着することもできる。
【0022】
ここで硬質炭素膜7とは、ラマン分光スペクトルにおいて、1160±40cm-1、1340±40cm-1、及び1500±60cm-1のいずれかにピークが存在するものであり、例えば、1340±40cm-1と1500±60cm-1にピークを有し、1500±60cm-1をメインピークに持つ非晶質構造のダイヤモンドライクカーボンや、1160±40cm-1、1340±40cm-1、及び1500±60cm-1にそれぞれピークを有し、かつ1340±40cm-1をメインピークに持つ結晶質構造のダイヤモンドライクカーボン、あるいは1340±40cm-1にのみピークを持つダイヤモンドが挙げられる。
【0023】
これらの硬質炭素7は原子間の結合力が強く、緻密であることから、ビッカース硬度で3000kg/mm2 以上、結晶質構造のダイヤモンドライクカーボンやダイヤモンドにあっては8000kg/mm2 以上と高硬度を有するため、腐食性の強いハロゲン系腐食性ガス下でプラズマに曝されても大きく腐食摩耗することがない。
【0024】
これらの硬質炭素膜7を内壁面2に被覆する方法としては、CVD法、イオン化蒸着法、イオンビーム法等の周知の薄膜形状手段を用いることができる。
【0025】
なお、このような効果を得るためには、硬質炭素膜7としてダイヤモンドライクカーボンを用いる時にはその厚み幅は0.1〜2.0μmの範囲が良く、また、硬質炭素膜7としてダイヤモンドを用いる時にはその厚み幅は0.1〜10.0μm、好ましくは、1.0〜10.0μmの範囲が良い。
【0026】
以上のように、本実施形態では、ベルジャをセラミックスや石英ガラスにより一体的に形成した例を示したが、真空容器1の内壁面に接着やボルト止め等の手段によってセラミック片や石英ガラス片を接合したものなど、少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位をセラミックスや石英ガラスにより形成したものであれば良い。また、本実施形態ではベルジャを例にとって説明したが、チャンバにも適用できることは言うまでもない。
【0027】
(実施例)
ここで、本発明の真空容器と従来の真空容器をRIEタイプのエッチング装置に組み込んで、6インチサイズの半導体ウエハをエッチングする作業を160時間(1日8時間を20日間)繰り返したあとに真空容器の摩耗具合を測定する実験を行った。
【0028】
本実験では、いずれも真空容器を純度99.5%のアルミナセラミックスにより形成し、この真空容器内の真空度を10-4torrとした状態で、反応ガスとしてSF6 を導入するとともに、13.56MHzのマイクロ波を照射してプラズマを発生させることにより半導体ウエハにエッチングを施し、真空容器の摩耗具合を半導体ウエハ上に見られるパーティクル数をカウントすることにより評価した。なお、評価はSEM(走査電子顕微鏡)により5000倍に拡大し、視野80mm×60mmの写真上で0.5mm以上のパーティクルが5個未満を○、5個以上で10個未満を△、10個以上を×として判断した。
【0029】
また、本発明の真空容器には、凹部を図2(a)に示すような円形の孔3aを等間隔に複数個穿設したものを使用した。
【0030】
それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0031】
【表1】
【0032】
この結果、試料No.1の従来の真空容器は、内壁面に凹部がないために80時間処理後において既に5〜10個のパーティクルが発生し、160時間処理後においては10個以上のパーティクルが発生していた。
【0033】
これに対し、試料No.2〜13の本発明の真空容器は、内壁面に凹部を設けてあることから160時間処理後においてもパーティクルを10個未満に抑えることができた。
【0034】
特に、試料No.4,8のように凹部の開口部の直径と凹部の深さを同じにすれば、160時間処理後におけるパーティクル数を5個未満にまで抑えることができ優れていた。
【0035】
このように、真空容器の内壁面に複数個の凹部を形成することにより、摩耗を低減し、真空容器のメンテナンス回数を低減できることが判る。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、チャンバやベルジャをなす真空容器の少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位をセラミックス又は石英ガラスにより形成し、その表面に複数個の凹部を設けたことから、真空容器を構成するセラミックスや石英ガラスがハロゲン系腐食性ガスや混合ガス中の酸素などと反応して反応生成物を生成したとしても、該反応生成物がパーティクルとして被加工物に悪影響を与えるまでの時間を長くすることができるため、真空容器のメンテナンス回数を減らし、装置の稼動効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の真空容器を用いたエッチング装置の概略を示す模式図である。
【図2】(a)〜(h)は真空容器の内壁面におけるさまざまな凹部を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
1・・・真空容器、2・・・内壁面、3・・・凹部、3a・・・孔、
3b・・・ざぐり孔、 3c・・・窪み、3d・・・溝、4・・・導入管、
5・・・高周波コイル、6・・・支持部材、W・・・被加工物
Claims (1)
- 少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位がセラミックス又は石英ガラスからなり、その表面が中心線平均粗さ(Ra)で2μm以下であるとともに、開口面積3mm 2 以上、深さ2mm以上の複数個の孔、窪みあるいは溝からなる凹部を有することを特徴とする真空容器。
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