JP3539617B2 - クロムフリー表面処理剤及び表面処理金属材料 - Google Patents
クロムフリー表面処理剤及び表面処理金属材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、例えばZn, Ni, Cu, Fe, Al, Co, Cr, Ti, Mg, Mn, Sn, Pb, などの金属1種を鋼板にめっきしためっき鋼板、あるいはこれら金属の2種あるいは3種以上をめっきした合金めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に第3金属または/及びシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの無機物を分散させためっき鋼板、あるいはさらに上記金属の2種あるいは3種以上からなる合金板、例えば亜鉛または亜鉛合金板、銅または銅合金板、アルミニウムまたはアルミニウム合金板、マグネシウムまたはマグネシウム合金板、チタンまたはチタン合金板、ニッケルまたはニッケル合金板、珪素鋼板、ステンレス鋼板、これらの材質の形鋼、パイプ、線材、成形済みの金属体などの表面に塗布、乾燥して防錆皮膜を形成する防錆処理液並びに防錆皮膜を有する表面処理金属材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷延鋼板、Znめっき鋼板、Zn-Ni 系、Zn-Ni-Co系、Zn-Ni-Cr系、Zn- Fe系、Zn-Co 系、Zn-Cr 系、Zn-Mn 系等のZn系合金めっき鋼板あるいはNi、Cu、Pb、Sn、Cd、Al、Ti等の金属めっき鋼板あるいはこれら金属の合金めっき鋼板等の耐蝕性を改善するために、クロメート処理してクロメート皮膜を形成することが一般的に行われている。
このクロメート処理は大別すると電解型クロメート、塗布型クロメートに分けることができる。
電解型クロメートはクロム酸を主成分とし、各種化合物を添加して鋼板を陰極電解処理することによりクロメート皮膜を形成する。
塗布型クロメートは3価及び6価クロムを主成分とし、無機コロイド化合物、無機アニオン及び無機カチオン化合物などを含有する液を塗布することによりクロメート皮膜を形成する。
【0003】
また、塗布型クロメートの1種であるが、有機樹脂を添加した塗布型クロメート、いわゆる樹脂型クロメートが最近開発されている。
例えば、クロム酸の中にアモルファスシリカ、リン酸化合物、ポリアクリル酸で構成し、かつ、皮膜最表層のC/Si比を特定する処理法(特開平2-163385号公報)、クロメート液中にメチルメタクリレート等の共重合体のアクリル系エマルジョンを特定条件で添加して処理する方法(特開平2-179883号公報)、クロム酸、クロム酸還元生成物、アクリルエマルジョン、シリカゾルを特定条件で含有する液を塗布する方法(特開平3-215683号公報)、クロム酸、クロム酸還元生成物、アクリルエマルジョン、湿式タイプシリカゾルを特定条件で含有する液を処理する方法(特開平3-215681号公報)、エチレン系不飽和カルボン酸成分、水酸基含有モノマー成分、その他のエチレン系不飽和化合物からなる水性エマルジョンと水溶性クロム化合物と無機化合物の水系コロイド及び両性金属と反応して難水溶性塩を形成する無機物とを混合してなる金属表面処理用組成物(特開平5-230666号公報) 等を挙げることができる。
【0004】
クロメート皮膜のうち電解によって形成されたクロメート皮膜はCrの溶出は少ないものの耐食性は充分とは言えず、また、加工時の皮膜の耐疵付性は悪く、従って加工後の耐食性は極端に低下する。また、塗布型によって形成されたクロメート皮膜は処理後そのままの状態で使用することはクロメート皮膜は溶出し易く、公害上支障をきたすため、好ましくない。また,耐食性及び塗料密着性も必ずしも充分では無く、加工時においても皮膜に疵が付きやすく加工後の耐食性もかなり低下する。
また、樹脂型クロメートは浴寿命及び形成された皮膜の耐クロム溶出性の点で不充分である。
【0005】
一方、最近の傾向として環境及び公害問題から、クロム(特に6価クロム) に関する規制が大幅に強化されようとしている。
それに応じてクロムを用いない耐食性被覆組成物の開発が行われている。例えば不飽和カルボン酸を特定量含有する重合性不飽和単量体を重合して得られる乳化重合体を被覆するもの(特開平5-222324号公報)、アセトアセチル基含有合成樹脂水性分散液を主剤として被覆するもの(特開平5-148432号公報)、特殊ケト酸と陽イオン、アミン、グアニジン、アミジンから選択される塩基との実質的に非水溶性のモノ- 又はポリ- 塩基性塩の混合物を被覆するもの(特開平5-70715 号公報),不飽和カルボン酸- グリシジル基含有不飽和単量体- アクリル酸アルキルエステルと共重合したモノマー- アクリル酸アルキルエステルの共重合体樹脂を被覆するもの(特開平3-192166号公報) 等をあげることができる。
いずれも特殊樹脂あるいは特殊樹脂と無機化合物を混合したものを被覆するものであるが, 耐食性は悪くかなり厚く(例えば3〜5μ)皮膜を形成しても充分な耐食性を確保することは出来ない。また、鉄や各種めっき鋼板など各種金属との密着性も必ずしも良くなく、特にウエットな環境下では密着性は著しく低下し、皮膜は剥離し脱落する。ウエットな環境下でも優れた密着性を維持できる皮膜は皆無である。また、形成された皮膜は加工時破壊されやすく、かつ、剥離し易い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、本発明は上記従来の技術の欠点を解決し、金属、例えばZn, Ni,Cu, Fe, Al, Co, Cr, Ti, Mg, Mn, Sn, Pb,などの金属1種を鋼板にめっきしためっき鋼板、あるいはこれら金属の2種あるいは3種以上をめっきした合金めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に第3 金属または/及びシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの無機物を分散させためっき鋼板、あるいはさらに上記金属の2種あるいは3種以上からなる合金板、例えば亜鉛または亜鉛合金板、銅または銅合金板、アルミニウムまたはアルミニウム合金板、マグネシウムまたはマグネシウム合金板、チタンまたはチタン合金板、ニッケルまたはニッケル合金板、珪素鋼板、ステンレス鋼板等、また、鋼材においても冷延鋼板、黒皮熱延鋼板、酸洗熱延鋼板、厚板、形鋼、パイプ、線材などの上に塗布し、乾燥して素材と優れた密着性を示し、かつ、極めて優れた耐食性及び塗料密着性を確保できるクロムフリーの表面処理剤を提供することを第一の目的とするものであり、また、これらクロムフリーの表面処理皮膜を有する金属材料を提供することを第二の目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は
(1)Alのリン酸化合物、Mn, Mg, Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上、1〜20nmのSiO2のゾル及び造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂を配合し、さらに、液のpHを 1.5〜3.5 に調整した表面処理剤、
(2)Alのリン酸化合物、Mn, Mg, Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上、1〜20nmのSiO2のゾル及び造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂を配合し、かつ酸化剤の1種あるいは2種以上を2〜20重量部配合し、さらに、液のpHを 1.5〜3.5 に調整した表面処理剤、
(3)上記(1)又は(2)に記載の表面処理組成物の皮膜を全固形分換算で0.2 〜20 g/m2 有することを特徴とする表面処理された金属、
である。
これら表面処理剤を冷延鋼板あるいはZn又はZn系合金めっき鋼板をはじめ各種金属上に塗布することにより各種金属と優れた密着性を確保し、極めて優れた耐食性及び塗料密着性を有する表面処理皮膜を形成することが出来る。
この極めて優れた各種金属との密着性はAlのリン酸化合物、Mn, Mg, Ca及びSr化合物と有機樹脂との組合せによって確保される。
また、極めて優れた耐食性はAlのリン酸化合物にMn, Mg, Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上、1〜20nmのSiO2のゾル及び造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂を配合し、さらに、液のpHを 1.5〜3.5 に調整することによって始めて得られる。
また、優れた塗料密着性は有機樹脂とAlのリン酸化合物とMn, Mg, Ca及びSr化合物との組合せに寄って確保される。
以下、本発明に使用するAlのリン酸化合物の混合割合、Mn, Mg, Ca及びSr化合物の1種或いは2種以上の混合割合、SiO2のゾルの粒度及び混合割合及び造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂の混合割合の組合せによって、また、液のpHによって形成された皮膜特性がどのように変化するか示す。
【0008】
本発明で言うAlのリン酸化合物とはAlのリン酸化合物であればいずれでも良いが中でも特に重リン酸Alを用いるのが最も良い。
【0009】
Mn, Mg, Ca及びSr化合物は、化合物の中でもリン酸系化合物が望ましい。また、Mn, Mg, Ca及びSr化合物の中ではMn化合物が望ましい。これら化合物の1種あるいは2種以上をAlのリン酸化合物 100重量部に対し、30〜150 重量部配合する必要がある。
【0010】
SiO2のゾルは粒径が1〜20 nm のものを用いる必要があり、Alのリン酸化合物100重量部に対し、SiO2のゾルを10〜160 重量部配合する必要がある。
【0011】
本発明で言う有機樹脂とは水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂であればいずれでも良い。中でも水酸基含有モノマーを有する有機樹脂が良い。
水酸基含有モノマー成分としては(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3- ヒドロキシブチル、アクリル酸-2,2- ビス(ヒドロキシメチル)エチル、(メタ)アクリル酸-2,3- ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3- クロル-2- ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類、アリルアルコール類及びN-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチロール(メタ)アクリルアミド等のアルコールアミド類の還元性水酸基を含有するモノマー及び酸性液中で水酸基と同様の反応性を期待できるグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、β- メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有するモノマー、アクロレインアミドのアルデヒド基を有するモノマーが使用できるが、特に好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチル- 、メタアクリル酸-2- ヒドロキシエチルである。なお、(メタ)アクリル酸〜は、メタアクリル酸〜及び/又はアクリル酸〜を表している。
【0012】
また、水酸基含有モノマーにエチレン系不飽和カルボン酸やその他のエチレン系不飽和化合物を共重合した樹脂も良い。
エチレン系不飽和カルボン酸成分としては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等のエチレン系不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のエチレン系不飽和ジカルボン酸と、それらのカルボン酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が使用できる。
また、エチレン系不飽和化合物としてはエチレン系不飽和カルボン酸成分と水酸基含有モノマー成分の例示以外のエチレン系不飽和化合物であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びその共重合体樹脂、およびその他のビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物などである。
上記以外にポリアクリル酸エステル及びその共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル及びその共重合体樹脂、エポキシ及びその共重合体樹脂、アクリル変成エポキシ及びその共重合体樹脂、エステル変成エポキシ及びその共重合体樹脂、ウレタン変成エポキシ及びその共重合体樹脂等も使用することができる。
これらから選ばれた1種又は2種以上を併用することができる。
水酸基含有モノマーを有さない有機樹脂でも乾燥によって造膜機能を有する有機樹脂であればいずれも使用することが出来る。
また,本発明の目的を損なわない範囲で上述した化合物以外の化合物等を含有させておくことも差し支えない。
ここで、Alのリン酸化合物 100重量部に対し有機樹脂 100〜1600重量部配合する必要がある。
【0013】
また、本発明の液のpHは 1.5〜3.5 が良好であり、特に 2.3〜2.7 がより最適である。
【0014】
以下、Alのリン酸化合物、Mn, Mg,Ca 及びSr化合物の1種あるいは2種以上、1〜20nmのSiO2ゾル及び有機樹脂の共存する浴を作成し、かつ、pHを調整し、めっき鋼板に皮膜を形成し特性がどのように変化するかを示す。
重リン酸Al 100重量部に対し、4〜6nm のコロイダルシリカを65重量部添加し、有機樹脂を 600重量部添加し、pHを2.5 に固定し、リン酸Mnを種々の割合で添加した。
ここで有機樹脂としては造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョン或いは水溶性有機樹脂であればいずれでも良いが、例えばヒドロキシエチルアクリレート−メタアクリル酸メチル−アクリル酸を共重合した樹脂を用いた。
これら水性液よりなる表面処理浴を作成し、電気Znめっき鋼板(付着量:20g/m2)に乾燥後 1.0μとなるように塗布し、 120℃で乾燥した場合の皮膜について素材(電気Znめっき鋼板)との密着性、塗料密着性、平板及び加工部の裸耐食性がどのように変化するかを調べた。
【0015】
ここで、素材と本発明による表面処理皮膜との密着性は皮膜を乾燥後沸騰水に30分浸漬し、その後2mmゴバン目に皮膜をカットしテープ剥離して、塗膜の剥離面積を評価した。
◎: 皮膜剥離面積 0 %
○: 〃 0 %超〜1 %
△: 〃 1 %超〜10 %
×: 〃 10 %超〜50 %
××: 〃 50 %超
【0016】
塗料との密着性は得られた表面処理皮膜上にメラミン系低温焼付け塗料(焼付け温度:110℃)を焼付け後30μとなるようにスプレー塗装し、その後沸騰水に30分間浸漬し、その後2mmゴバン目に塗膜をカットしテープ剥離して、塗膜の剥離面積を評価した。
◎: 塗膜剥離面積 0 %
○: 〃 0 %超〜1 %
△: 〃 1 %超〜10 %
×: 〃 10 %超〜50 %
××: 〃 50 %超
【0017】
加工部の裸耐蝕性は6 mmエリクセン押し出し加工を行い、その後腐食試験を行い、エリクセン押し出し部の白錆の発生状況で評価した。
腐食試験はJIS-Z-2371規格に準拠した塩水噴霧試験により(塩水濃度5%,槽内温度35℃、噴霧圧力20PSI)発錆状況を示し、◎、○、△、×、××の5段階で評価し、◎が最良である。
◎: 白錆発生率 0 %
○: 〃 0 % 超〜1 %
△: 〃 1 % 超〜10 %
×: 〃 10 % 超〜50 %
××: 〃 50 % 超
【0018】
リン酸Mnが30〜150 重量部で極めて優れた耐食性を示し、SST480時間で平板部では変化が認められず、加工部ではSST360時間で変化は認められず(◎)、480 時間で僅かに白錆が発生するに過ぎない(○)。
リン酸Mnが30重量部未満或いは 150重量部超では耐食性は低下する。
Alのリン酸化合物以外のAl化合物を用いても上記と同じような優れた耐食性は得られなかった。また、Al以外の重金属化合物とリン酸Mnを組み合わせても上記と同じような優れた耐食性は得られなかった。すなわち、Alのリン酸化合物とMn化合物が共存し両者が特定の割合になると著しい耐食性を示すことがわかった。
この原因について現時点では必ずしも明確ではないが、Mn化合物がAlのリン酸化合物に対し架橋剤として作用し、緻密な皮膜を形成すると共に両者が共存した状態で金属(亜鉛めっき)の表面に吸着すると表面の電位をかなり卑に移行することによるものと思われる。
これら現象はMn化合物のかわりにMg, Ca及びSr化合物を用いてもほぼ同様の結果が得られた。
【0019】
鋼板(亜鉛めっき)との皮膜の密着性はリン酸Mnが30重量部以上で優れた密着性を示し(◎)、30重量部未満では密着性はやや低下した。
塗料と皮膜との密着性も同様でリン酸Mnが30重量部以上で優れた密着性を示し(◎)、30重量部未満では密着性はやや低下した。
【0020】
次に重リン酸Al 100重量部に対し、リン酸Mn65重量部、有機樹脂を 600重量部添加し、pHを 2.5に固定し、6〜6nm のコロイダルシリカを種々の割合で添加した液を電気亜鉛めっき鋼板(付着量:20g/m2)に乾燥後 1.0μとなるように塗布し、 120℃で乾燥後特性評価を行った。
4〜6nm のコロイダルシリカが10〜160 重量部で優れた耐食性を示し、SST480時間で平板部では変化が認められない(◎)。加工部ではSST360時間で変化は認められず(◎)、480 時間で僅かに白錆が発生するに過ぎない(○)。
4〜6nm のコロイダルシリカが10重量部未満或いは160 重量部超では耐食性は低下するが、平板部より加工部が急激に低下する。
【0021】
コロイダルシリカの添加量を65重量部に固定し粒度の異なるコロイダルシリカを添加し、塗布し 120℃で乾燥して乾燥後 1.0μとなるように皮膜を形成した。
形成した皮膜のZnめっき鋼板との密着性は添加したコロイダルシリカの粒度によって影響を受け、粒径が20nm超ではZnめっき鋼板との密着性は低下する。
塗料密着性も添加したコロイダルシリカの粒度によって影響を受け、粒径が20nm超では塗料密着性は低下する。
耐食性は添加したコロイダルシリカの粒度によって大きな影響を受け、粒径が1〜20nmで平板部及び加工部共裸耐食性は著しく向上する(◎)。1nm未満では加工部裸耐食性はやや低下し(○)、20nm超では平板部及び加工部共低下する(△)。
コロイダルシリカの効果については現時点で必ずしも明確ではないが、一般にコロイダルシリカは樹脂の表面に吸着し、いわゆる架橋剤的機能を発揮し、より緻密で強靱な皮膜を形成するため、腐食因子(例えばCl- 等)の外部からの拡散を遮断するとともに、素材(亜鉛めっき鋼板)の加工にも追従するため、加工部での耐食性も確保されるものと思われる。
本系では1〜20nmの粒径で添加量が10〜160 重量部の領域で上記効果が最も発揮される。
【0022】
次に重リン酸Al 100重量部に対し、リン酸Mnを65重量部添加し、4〜6nm のコロイダルシリカを65重量部添加し、pHを2.5 に固定し、有機樹脂を種々の割合で添加した。
ここで有機樹脂としてはヒドロキシエチルアクリレート−メタアクリル酸メチル−アクリル酸を共重合した樹脂を用いた。
本系液を電気亜鉛めっき鋼板に塗布し、120 ℃で乾燥し、乾燥後 1.0μとなるように皮膜を形成した。
重リン酸Al 100重量部に対し、有機樹脂を 100〜1600重量部添加すると耐食性は平板部及び加工部共著しく向上する。 100重量部未満或いは1600重量部超では耐食性は平板部及び加工部共低下する。
素材(電気亜鉛めっき鋼板)との密着性及び塗料との密着性は有機樹脂が100 重量部以上で安定して優れた結果を示す。
上記結果は有機樹脂としてヒドロキシエチルアクリレート−メタアクリル酸メチル−アクリル酸を共重合した樹脂を用いた場合について説明したが、造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂であればいずれもほぼ同じ結果が得られる。
本系液で用いた有機樹脂と本発明による重リン酸Al- リン酸Mn- 微粒コロイダルシリカの無機物質が共存し、しかも重リン酸Al 100重量部に対し、有機樹脂を100重量部〜1600重量部共存した場合、最も緻密な皮膜が形成され、優れた耐食性が得られ、また、同時に延性に富んだ強靱な皮膜が形成されるため加工部も優れた耐食性が確保されるものと思われる。
【0023】
次に重リン酸Al 100重量部に対し、リン酸Mnを65重量部添加し、4〜6nm のコロイダルシリカを65重量部添加し、ヒドロキシエチルアクリレート−メタアクリル酸メチル−アクリル酸を共重合した樹脂を 600重量部添加し、種々のpHに調整した液を作成した。
本系液を電気亜鉛めっき鋼板に塗布し、 120℃で乾燥し、乾燥後 1.0μとなるように皮膜を形成した。
本系液のpHが 1.5〜3.5 で優れた耐食性を示し、中でも 2.3〜2.7 で平板部及び加工部共極めて優れた耐食性を示す。
pHが 1.5未満あるいは 3.5超では耐食性は低下する。
また、pHが 1.5〜3.5 で素材(電気亜鉛めっき鋼板)と皮膜は優れた密着性を示し、かつ、塗料とも優れた密着性を示す。
pHが 1.5未満あるいは 3.5超では素材と皮膜の密着性及び塗料と皮膜の密着性は低下する。
ここで、pHが 1.5未満では素材(電気亜鉛めっき鋼板)に本系液を塗布する際素材からZn++が皮膜に多量に溶出するため、皮膜に共存する無機物の機能が阻害されるものと思われる。また、pHが3.5 超になると本系液は不安定となりややもするとゲル化したり、沈降する。そのため、塗布しても緻密で強靱な比較は形成できず、耐食性及び塗料密着性共低下する。
【0024】
以上の結果から、本発明ではAlのリン酸化合物 100重量部に対し、Mn, Mg, Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上を30〜150 重量部と、1〜20nmのSiO2のゾルを10〜160 重量部配合し、かつ、造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂 100〜1600重量部配合し、さらに、液のpHを 1.5〜3.5 に調整した表面処理剤とする。
【0025】
本発明による極めて優れた耐食性及び塗料密着性はAlのリン酸化合物と、Mn,Mg,Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上と1〜20nmのSiO2のゾルと、造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂を共存させ、かつ、これら化合物を特定の割合にし、pHを特定域にコントロールすることによって始めてえられるものである。しかも、クロム化合物を一切使用せず、従来のクロメートをはるかに凌ぐ耐食性及び塗料密着性を示し、全く新しい表面処理剤である。
【0026】
次に上記表面処理剤に酸化剤の1種あるいは2種以上を2〜20重量部配合することによって耐食性をさらに向上することができる。
例えば、重リン酸Al 100重量部に対し、リン酸Mnを65重量部添加し、4〜6nm のコロイダルシリカを65重量部添加し、ヒドロキシエチルアクリレト−メタアクリル酸メチル−アクリル酸を共重合した樹脂を 600重量部添加し、pHを2.3 に調整した液にHNO3を種々の割合で添加し、冷延鋼板に乾燥後 1.0μとなるように塗布し、 120℃で乾燥した場合の皮膜特性について調査した。
【0027】
加工部の裸耐蝕性は6mmエリクセン押し出し加工を行い、その後腐食試験を行い、エリクセン押し出し部の赤錆の発生状況で評価した。
腐食試験はJIS-Z-2371規格に準拠した塩水噴霧試験により(塩水濃度5%, 槽内温度35℃、噴霧圧力20PSI)発錆状況を示し、◎、○、△、×、××の5段階で評価し、◎が最良である。
◎: 赤錆発生率 0 %
○: 〃 0 % 超〜1 %
△: 〃 1 % 超〜10 %
×: 〃 10 % 超〜50 %
××: 〃 50 % 超
【0028】
HNO3が2〜20重量部で極めて優れた耐食性を示し、平板部はSST36 時間で変化は認められず、加工部ではSST24 時間で変化は認められず(◎)、36時間で僅かに赤錆が発生するに過ぎない(○)。HNO3が2重量部未満あるいは20重量部超では耐食性はやや低下した。
次に冷延鋼板との密着性及び塗料との密着性について調査した。調査方法は前出の通りである。冷延鋼板との密着性及び塗料との密着性ともHNO3の添加によっておおきな影響は受けなかった。
上記結果はHNO3の代わりに上記結果はHNO3の代わりに各種無期酸化剤あるいは有機酸化剤を用いてもほぼ同様の結果が得られるが、中でもN2O4, N2O3, N2O, Cu(NO3)2, AgNO3, NH4NO3, BaO2, FeCl2, CuSO4, Cu(CH3COO)2, Hg(CH3COO)2, Bi(CH3COO)3, Ag2O, CuO, Bi2O3, HMnO4及びMnO2を用いると良い。また、これらの1種あるいは2種以上を使用しても同様の結果が得られる。
なお、酸化剤が本願発明の特許請求項1で規定された化合物の範疇に入る場合、その酸化剤は請求項1で規定した化合物としても扱う。
【0029】
以上の結果から、Alのリン酸化合物 100重量部に対し、Mn, Mg, Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上を30〜150 重量部と、1〜20nmのSiO2のゾルを10〜160 重量部配合し、造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂を50〜1600重量部配合し、かつ、酸化剤の1種あるいは2種以上を2〜20重量部配合し、さらに、液のpHを 1.5〜3.5 に調整した表面処理剤とする。
【0030】
この表面処理剤は各種金属の中でも特に冷延鋼板、黒皮鋼板、酸洗熱延鋼板、厚板、形鋼、パイプ線材などの鋼材、銅または銅合金、チタンまたはチタン合金、ニッケルまたはニッケル合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金、ステンレスなど不働熊化し易い金属、或いはFe, Ni, Cr, Cu, Al, Mg, Tiなどの不働熊化し易い元素を含有するめっき層に処理するとより効果がでる傾向にある。
その理由について現地点では必ずしも明確ではないが、表面処理剤を各種金属に塗布した際、各種金属が一部イオンとして表面処理被膜中に溶出するが、これらイオンは表面処理被膜の組成のいずれかに吸着あるいは結合した組成の機能を低下させ、被膜全体の機能を低下させる場合が多々ある。これに対し、表面処理剤に酸化剤を共存させ、塗布時金属表面が不動態化すると表面処理被膜へのイオンの溶出が極力抑えられるため、イオン溶出による弊害が抑制され、その結果として、より優れた皮膜性能が安定して確保されるものと思われる。
【0031】
本発明における表面処理組成物の皮膜の付着量は0.2g/m2 以上で優れた素材との密着性、塗料密着性、加工部裸耐食性及び加工部耐疵付性が得られる。上限は特に制限は無いが経済的観点から20g/m2とする。
また、本発明による表面処理剤を各種めっき鋼板に塗布するには、ロールコー、スプレー塗装、刷毛塗り、浸漬塗装、カーテンフロー等いずれの塗装方法を用いても良い。
【0032】
本発明はこれまで、電気Znめっき鋼板に処理した場合を主に述べてきた。しかし、本発明は金属、例えばZn, Ni, Cu, Fe, Al, Co, Cr, Ti, Mg, Mn, Sn, Pb, などの金属の1種を鋼板にめっきしためっき鋼板、あるいはこれら金属の2種あるいはこれら金属の2種あるいは3種以上をめっきした合金めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に第3金属または/及びシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの無機物を分散させためっき鋼板、あるいはさらに上記金属の2種あるいは3種以上からなる合金板、例えば亜鉛または亜鉛合金板、銅または銅合金板、アルミニウムまたはアルミニウム合金板、マグネシウムまたはマグネシウム合金板、チタンまたはチタン合金板、ニッケルまたはニッケル合金板、珪素鋼板、ステンレス等、また、鋼材においても冷延鋼板、黒皮熱延鋼板、酸洗熱延鋼板、厚板、形鋼、パイプ、線材など被塗工物を選ぶものでは無く、腐食を生じやすい金属であれば用いることが出来る。これら金属被塗工物に塗布、乾燥、必要により後硬化等させることにより、素材と優れた密着性を示し、かつ、極めて優れた耐食性及び塗料密着性を示すクロムフリ−の表面処理皮膜を有する金属材料を提供することが出来る。
【0033】
本発明の用途としては、特に電気洗濯機、テレビ、パソコン、ワープロ等を始めとする家電用部品あるいは事務用部品、屋根・壁材あるいはガードレール、各種鉄柱等を始めとする建材用部材、ボデーやガソリンタンクを始めとする自動車部品などを挙げることが出来る。
さらに、造船用部材、厚板や形鋼より形成された橋梁型鋼、線材より形成されたワイアーロープ類、パイプより形成された各種輸送用配管、冷延鋼板より形成されるスチール家具や簡易家具類、あるいは黒皮熱延鋼板、酸洗熱延鋼板より形成されるドラム缶を始めとする容器類、コンテナを始めとするボックス、車両用部材などを挙げることが出来る。
また、クロムを使用しない無公害の表面処理剤であることから、食缶や雑缶をはじめとする容器関連や玩具類などにも使用することができ用途は大きく広がる。
また、形成された皮膜は優れた絶縁性を示すことから電磁鋼板(珪素鋼板)、中でも無方向性電磁鋼板用コーティング剤としても使用することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例について詳しく述べる。
〔実施例1〕
電気Znめっき鋼板(目付量:20 g/m2)に重リン酸Al100 重量部、リン酸Mn60重量部、4〜6nm のコロイダルシリカ70重量部及びアクリル酸−1-ヒドロキシブチル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン−メタアクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1200重量部を配合し、pHを2.5 に調整した液を塗布し、120 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.2 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0035】
〔実施例2〕
溶融Znめっき鋼板(目付量:90 g/m2)に重リン酸Al100 重量部、リン酸Mn80重量部、7〜8nm のコロイダルシリカ50重量部及び 2- ビス(ヒドロキシメチル)エチル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1000重量部を配合し、pHを2.1 に調整した液を塗布し、100 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が0.9 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0036】
〔実施例3〕
Zn-Ni 系合金めっき鋼板(目付量:20 g/m2、Ni=11.5%)に重リン酸Al 100重量部、リン酸Ca55重量部、15〜20nmのコロイダルシリカ100 重量部及び 2- ビス(ヒドロキシメチル)エチル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1400重量部を配合し、pHを3.0 に調整した液を塗布し、150 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.7 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0037】
〔実施例4〕
Zn-Ni 系合金めっき鋼板(目付量:20 g/m2、Ni=12.3%)に重リン酸Al 100重量部、リン酸Mg30重量部、10〜12nmのコロイダルシリカ 150重量部及びメタアクリル酸2,3 - ジヒドロキシプロピル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−メタアクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン 900重量部を配合し、pHを2.6 に調整した液を塗布し、 130℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.2 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0038】
〔実施例5〕
Zn-Fe 系合金めっき鋼板(目付量:20g/m2 、Fe=12.8%)にリン酸Al 100重量部、酢酸Mn60重量部、4〜6nm のコロイダルシリカ 120重量部及びアクリル酸ヒドロキシエステル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン−グリシジルメタアクリレート−メタアクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1000重量部を配合し、pHを2.3 に調整した液を塗布し、80℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が0.8 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0039】
〔実施例6〕
Zn-Mg 系合金めっき鋼板(目付量:30g/m2 、Mg= 1.2%)に重リン酸Al 100重量部、酢酸Ca70重量部、7 〜10nmのコロイダルシリカ 160重量部及びN-メチロールアクリルアミド−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−メタアクリル酸−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン 800重量部を配合し、pHを1.7 に調整した液を塗布し、 180℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.8 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0040】
〔実施例7〕
Zn-Ni 系合金めっき鋼板(目付量:20g/m2 、Ni=12.4%)に重リン酸Al 100重量部、蟻酸Mn65重量部、1〜4nm のコロイダルシリカ10重量部及びアリルグリシジルエ−テル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1600重量部を配合し、pHを3.5 に調整した液を塗布し、110 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.3 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0041】
〔実施例8〕
Zn-Mg 系合金めっき鋼板(目付量:30g/m2 、Mg= 1.2%)にリン酸Al 100重量部、リン酸Mn65重量部、 2〜5nm のコロイダルシリカ 120重量部及びグリシジルメタアクリレート−メタアアクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−メタアクリル酸−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン900重量部配合し、pHを2.5 に調整した液を塗布し、100 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.0 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0042】
〔実施例9〕
電気Znめっき鋼板(目付量:20g/m2)にリン酸水素Al 100重量部、リン酸Ca75重量部、10〜15 nm のコロイダルシリカ80重量部及びグリシジルメタアクリレート−メタアクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−メタアクリル酸−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1100重量部を配合し、pHを1.7 に調整した液を塗布し、130 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.0 g/m2となるように皮膜を形成した。
【0043】
〔実施例10〕
溶融Znめっき鋼板(目付量:120 g/m2)にリン酸二水素Al 100重量部、リン酸Mg35重量部、7〜10 nm のコロイダルシリカ 100重量部及びメタアクリル酸-3- クロル-2- ヒドロキシプロピル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1000重量部を配合し、pHを3.1 に調整した液を塗布し、 130℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.5g/m2 となるように皮膜を形成した。
【0044】
〔実施例11〕
電気Znめっき鋼板(目付量:20g/m2)にリン酸三水素Al 100重量部、リン酸Sr45重量部、4〜6 nmのコロイダルシリカ80重量部及びN-プトキシメチロ- ルメタアクリルアミド−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタアクリル酸−アクリル酸−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン1200重量部を配合し、pHを2.7 に調整した液を塗布し、120 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が0.9g/m2 となるように皮膜を形成した。
【0045】
〔実施例12〕
冷延鋼板に重リン酸Al 100重量部、リン酸Mn65重量部、8〜10nmのコロイダルシリカ80重量部及びメタアクリル酸-3- クロル-2- ヒドロキシプロピル−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン80重量部,HNO3 6重量部を配合し、pHを2.5 に調整した液を塗布し、100 ℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が1.2g/m2 となるように皮膜を形成した。
【0046】
〔実施例13〕
ショットブラストにより黒皮を除去した造船用厚板材重リン酸Al 100重量部、リン酸Mn80重量部、8〜10nmのコロイダルシリカ40重量部及びグリシジルメタアクリレート−メタアクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−メタアクリル酸−アクリル酸の共重合体からなる水系有機樹脂エマルジョン80重量部、MnO2 10 重量部配合し、pHを1.7 に調整した液を塗布し、80℃で乾燥し、乾燥後の皮膜の重量が4.0g/m2 となるように皮膜を形成した。
【0047】
〔比較例1〕
電気Znめっき鋼板にクロム酸(6価Cr100%クロム酸)100重量部、リン酸70重量部配合した水性液をロールで塗布し、160 ℃で乾燥して付着量がCr換算で62mg/m2 のクロメート皮膜を形成した。
【0048】
〔比較例2〕
溶融Znめっき鋼板(目付量:110g/m2)にクロム酸(6価Cr100%クロム酸)100重量部、リン酸50重量部、10〜15nmコロイダルシリカ60重量部配合した水性液をロ−ルで塗布し、180 ℃で乾燥して付着量がCr換算で48 mg/m2のクロメート皮膜を形成した。
【0049】
〔比較例3〕
電気Znめっき鋼板(付着量:20g/m2)にクロム酸(6価Cr100%クロム酸)100重量部、リン酸50重量部、オレフィン−アクリル酸共重合体樹脂エマルジョン 120重量部配合した水性液をロールで塗布し、120 ℃で乾燥して付着量がCr換算で72mg/m2 のクロメート皮膜を形成した。
【0050】
〔比較例4〕
Zn-Ni 系合金めっき鋼板(付着量:20 g/m2、Ni=12.9%)にクロム酸(6価Cr100%クロム酸)100重量部、リン酸60重量部、オレフィン−アクリル酸共重合体樹脂エマルジョン200 重量部配合した水性液をロールで塗布し、160 ℃で乾燥して付着量がCr換算で92 mg/m2のクロメート皮膜を形成した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
表1, 2及び3 はZnあるいはZn系合金めっき鋼板に処理した場合の実施例1〜11及び比較例1〜4の素材との密着性、塗料密着性、平板裸耐蝕性及び加工部裸耐食性を示したものである。評価方法は前出に準じる。
表から明らかなように,Znめっき鋼板あるいはZn系合金めっき鋼板に本発明による表面処理を実施した場合、形成された皮膜の素材との密着性及び塗料密着性は良好で剥離は皆無である。また、Znめっき鋼板に本発明による表面処理を実施した場合の平板部の裸耐食性は、 480時間で変化無く、 600時間で僅かに白錆が発生する。加工部の裸耐食性は 360時間で殆ど変化無く、 480時間で僅かに白錆が発生する。Zn系合金めっき鋼板に本発明による表面処理を実施した場合、平板部の裸耐蝕性は 840時間で殆ど変化無く、 960時間で僅かに白錆が発生するにすぎない。また、加工部裸耐食性は 600時間で変化無く、 720時間で僅かに白錆が発生するに過ぎない。
【0057】
これに対し、公知のクロメート皮膜組成の場合(比較例1,2)は形成された皮膜の素材との密着性はある程度確保されるが、塗料密着性はかならずしも十分とは言えない。また、平板部耐食性は 168時間で白錆が発生している。加工部耐食性は 100時間でかなり白錆が発生している。
樹脂クロメートの場合(比較例3)、素材との密着性及び塗料密着性はある程度確保されているが、平板耐食性は 168時間で僅かに白錆が発生し、加工部は120 時間でかなり白錆が発生している。
また、Zn系合金めっき鋼板に樹脂クロメートした場合(比較例4)、素材との密着性、塗料密着性は良好であるが平板耐食性は 240時間で僅かに白錆が発生し、加工部耐食性は 120時間でかなり白錆が発生する。
【0058】
表4及び表5は冷延鋼板あるいは厚板鋼板に処理した場合の実施例12〜13及び比較例5〜6の素材との密着性、塗料密着性、平板裸耐蝕性及び加工部裸耐食性を示したものである。評価方法は前出に準じる。
表から明らかなように冷延鋼板あるいは厚板鋼板に表面処理をした場合、形成された皮膜の素材との密着性及び塗料との密着性は良好で剥離は皆無である。また、冷延鋼板における平板部耐食性はSST48 時間後で僅かに赤錆が発生するにすぎず、加工部は36時間で僅かに赤錆が発生するに過ぎない。また、厚板鋼板では平板部耐食性はSST240時間で僅かに赤錆が発生するに過ぎない。
【0059】
これに対し、公知のクロメート皮膜組成の場合(比較例5,6)は形成された皮膜の素材との密着性はある程度確保されるが、塗料密着性はかならずしも十分とは言えない。また、冷延鋼板では平板部耐食性は8時間で赤錆が発生している。加工部耐食性はSST2時間で赤錆が発生している。また、厚板鋼板においても冷延鋼板の場合とほぼ同様であり、平板部では8 時間で赤錆が発生している。
【0060】
【発明の効果】
以上示したように本発明による表面処理剤はクロムを使用しない、いわゆるノンクロメート剤であるにもかかわらず、各種金属に塗布することにより素材との密着性に優れ、塗料密着性にも優れ、かつ、平板部及び加工部とも従来公知のクロメート剤を圧倒的に凌駕する極めて優れた耐食性を示し、全く新しいノンクロ表面処理剤である。したがって、本ノンクロ表面処理剤を各種金属に塗布することにより塗料密着性に優れ高耐食性の表面処理金属材料を提供することが出来、自動車業界、家電・建材業界、土木・建築業界、パイプ業界を始め容器関連、食器関連、玩具類、屋内用建材にいたるまで用途は大幅に広がる。
Claims (3)
- Alのリン酸化合物 100重量部に対し、Mn,Mg,Ca及びSr化合物の1種あるいは2種以上を合計30〜150 重量部と、1〜20nmのSiO2のゾルを10〜160 重量部含有し、かつ造膜性を有する水系有機樹脂エマルジョンあるいは水溶性樹脂を50〜1600重量部含有し、さらに、液のpHが 1.5〜3.5 である表面処理剤。
- 特許請求項1に記載の表面処理剤であって、酸化剤の1種あるいは2種以上を2〜20重量部配合したことを特徴とする表面処理剤。
- 請求項1または2に記載の表面処理組成物の皮膜を全固形分換算で0.2 〜20 g/m2 有することを特徴とする表面処理された金属。
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