JP4090780B2 - 金属の防錆皮膜形成剤と形成方法 - Google Patents

金属の防錆皮膜形成剤と形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は種々の金属の保護を目的とするものであるが、特に亜鉛又は亜鉛合金、並びにこれらのメッキを施した金属材料の防錆に関するものであり、特に亜鉛及び亜鉛系合金めっきを施した鉄部品の防錆に使用する液体防錆剤とそれを用いた防錆に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に鉄系材料・部品の防錆方法として亜鉛あるいは亜鉛系合金めっき(以下亜鉛めっきと称す)は最も広く一般的に利用されている。しかし、亜鉛めっきされた鉄系材料・部品は、そのまま使用すると亜鉛の錆である白錆がすぐに発生してしまうため、通常は更に保護皮膜を形成させることが一般的である。亜鉛めっきに通常施される保護皮膜としてクロメート皮膜処理は一般的であり、クロメート皮膜処理は更に電解クロメート処理、塗布型クロメート処理、反応型クロメート処理の3種類に分類される。クロメート処理は亜鉛に限らずアルミニウムやカドミニウム、マグネシウムなどにも施される。
【0003】
クロメート皮膜は安価で容易に実用的な耐食性を得られるため広く利用されているが、クロメート処理はいずれも有害な六価クロムを使用するため処理液のみならず、処理品から溶出する六価クロムが人体や環境へ悪影響があるとして近年、大きな問題となっている。これは、クロメート皮膜が皮膜中の六価クロムにより、耐食性を発揮する皮膜である以上、如何ともしがたい問題である。
【0004】
六価クロムの公害上の問題解決のためこれまで種々の発明が出願されており、例えば、特開昭52−92836、特開昭57−145987、特開平9−53192、特開昭57−181379、特開昭50−1934、特開2000−234177などがある。これらの発明は六価クロムを使用していない点で注目できるが、実用上の性能は満足できるものでない。例えばJIS H 2731に規定される塩水噴霧試験において、安定して発揮される耐食性は12〜84時間前後であり、一般に用いられている有色クロメートや黒色クロメートの1/20〜1/2以下でしかない。又、これらの皮膜は自己修復性と呼ばれる皮膜損傷時における耐食性低下抑制能力を持ち合わせていないため、試験片にナイフによるクロスカットや押し出し・折り曲げによる損傷を与えた場合、JIS Z 2731における耐食性は24時間未満しかない。又、得られる色調に限度があり、意匠性にも劣る。更に大きな問題としてこれらのコストは従来の有色クロメートの5〜10倍することに有り、工業的に成り立ちにくいことがある。
【0005】
具体的な問題として、特開昭52−92836はTiと燐酸、フイチン酸、タンニン酸又は過酸化水素からなる群より選択される1種又は2種以上からなる水溶液で亜鉛又は亜鉛合金を処理することを待徴としている。処理後の外観はほとんど無色に近く、耐食性も非常に低い。鋼板上の処理であり複雑で高温且つ長時間の処理の上、塗装を焼き付けても塩水噴霧での耐食性は240時間程度しかない。
特開昭50−1934は鉱酸と三価クロムイオンを生成する化合物とカルボン酸と必要により還元剤からなる亜鉛又は亜鉛合金の無色光沢クロメート組成物について記載されている。この組成物により、亜鉛又は亜鉛合金上に均一な光沢クロメートのような外観を得ることは出来るが、塩水噴霧における耐食性は、白錆発生まで48時間以下という非常に低い性能であり、又、液の安定性に乏しい組成物であった。
特開昭61−587に三価のクロムイオンと珪酸塩、フッ化物及び酸を含有する組成物が記載されているが、この組成物によって得られる被膜も又均一な光沢クロメートのような外観であり、耐食性は白錆発生まで24時間以下という低い性能である。
特開2000−234177は三価クロム化合物とチタン化合物、コバルト化合物、タングステン化合物及びケイ素化合物からなる亜鉛又は亜鉛合金用の化成処理液について記載されている。この処理液により比較的耐食性を有する化成被膜が得られることになっているが、工業的に実用化するにはばらつきが大きい、処理条件が比較的高温で長時間、乾燥温度も従来に比べ高温で長時間であることの他に、記載の処理液の安定性が悪く数日で沈殿が生じてしまう間題を抱えている。得られる被膜は、他と同様に光沢クロメートの様な外観である。
特開昭61−119677に三価クロムと鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、マンガン、アルミニウム、ランタン、セリウム、ランタニド、これらの混合物、硝酸を含有する酸性組成物が記載されている。更に有機カルボン酸、ケイ酸塩を含有する組成物が記載されている。この組成物により、亜鉛又は亜鉛合金上に均一な光沢クロメートのような外観を得ることは出来るが、塩水噴霧における耐食性は、十分ではなく白錆発生まで約72時間であった。又、待に有機酸を用いた組成物は液の安定性に乏しく、処理外観や液のpHが数日〜数週間で変化する間題を抱えていた。以上のように、従来技術は総じて耐食性の不足、単一外観(光沢クロメートのような弱い干渉色、無彩色系外観)、安定性の不足、コストパフオーマンス(処理条件に対する得られる性能の低さ)の低さという間題を抱えていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金属、特に亜鉛又は亜鉛合金表面に保護皮膜を形成させるにあたり、有害な六価クロムを使用せず、均一で良好な外観と耐食性を兼ね備えた皮膜を生成させることにある。特に、これまで発明されてきた代替え技術の実用化の障害となっている優れた耐食性、意匠性、コストパフォーマンスを得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来技術における問題を解決するため、本発明者らが鋭意研究した結果、種々の金属を主体とし、且つ整理された特定のグループを適当な組み合わせで、適切に配合することにより、これまでにない優れた耐食性、意匠性、コストパフォーマンスを得ること見出した。
すなわち、本発明は(A)三価のクロムイオン、(B)W、Ti、Co及びアルカリ土類金属からなる群のうちの1種以上、(C)V、Cu及びAgからなる群のうちの1種以上、(D)塩素、硫酸イオン、硝酸イオンからなる群のうちの1種以上、(E)Si、Al、有機酸からなる群のうちの1種以上を含有し、pH1.5〜3を有する液体組成物よりなる防錆皮膜形成剤及びそれを用いて被処理金属に防錆皮膜を形成する方法である。
前記液体組成物には更に安定剤を含むことができる。
本発明が適用される被処理金属は、特に亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金より選択した金属である。更に好ましくは亜鉛めっき(Zn)、亜鉛−鉄合金めっき(Zn/Fe)、亜鉛−ニッケル合金めっき(Zn/Ni)の何れかである。
【0008】
本発明では更に上記液体組成物により防錆皮膜を生成した後、更にSi、樹脂、ワックスからなる群のうち少なくとも1種を含有する液体組成物に接触させることを特徴とする金属の保護皮膜形成方法を提供する。これにより、前述の更なる特性の向上の他、摩擦係数の制御などが図れ、又従来の有色クロメートに匹敵する耐食性を得られることが判明した。
【0009】
【発明の実施の形態】
より具体的には本発明の液体組成物は、水1Lにつき、0.01〜150g/l好ましくは0.1〜50g/lの三価のクロムイオンと、0.01〜100g/l好ましくは0.1〜40g/lのW、Ti、Co、アルカリ土類金属の1種以上と、0.001〜200g/l好ましくは0.01〜50g/lのV、Cu、Agの1種以上と、0.05〜200g/l好ましくは0.1〜100g/lの塩素、硫酸イオン、硝酸イオンの1種以上と、0.1〜300g/l好ましくは0.5〜100g/lのSi、Al及び有機酸からなる群から選択した1種以上を含有する液体組成物により防錆皮膜を形成する方法、あるいは更にSi、樹脂、ワックスの一種以上を含有する液体組成物により保護皮膜を形成する方法により、従来の有色クロメートと同等あるいはそれ以上の耐食性を得られることができ、又光沢クロメートのような外観以外の外観も得られることが判明した。いずれの成分ともこれらの範囲より少ないと効果が得られなくなる。反対に過剰であると効果が頭打ちになり、経済的な損失が大きいだけでなく、場合によっては過剰な皮膜生成は耐食性の低下を招くため好ましくない。
【0010】
更に加えるならば、三価クロムとW、Ti、Co、アルカリ土類金属からなる群の比は1:500〜1:0.002、好ましくは1:10〜1:0.001、三価クロムと、V、Cu、Agからなる群の比は1:500〜1:0.0002、好ましくは1:30〜0.002、三価のクロムとSi、Alからなる群の比は1:1000〜1:0.01、好ましくは1:10〜1:0.02とするとより優れた耐食性の皮膜を安定して得ることが出来る
【0011】
いずれの金属の供給方法にも特に指定はなく、塩化物、硫酸塩、硝酸塩など無機系の塩の他に有機酸塩やオキソ酸、オキソ酸塩などで供給すれば、他の必要成分、例えば酸イオンなども供給できるため都合がよく、特に硫酸化合物や硝酸化合物は耐食性が良い。
SiやAlはこれら以外に酸化物あるいはコロイド状の酸化物で供給する事が出来る。又この液体組成物中に安定剤を添加することは、耐食性や意匠性の安定のために有効である。
【0012】
安定剤としては、0.1〜100g/l好ましくは0.5〜50g/lの界面活性剤、過酸化水素、尿素類、脂肪族アミン、アンモニウム塩よりなる群から選択した前記液体組成物の安定剤が好ましい。
【0013】
保護皮膜形成用のSi、Alの含有量としては0.01〜500g/l好ましくは1〜300g/lが適当であり、不足の場合は効果が得られなくなり、過剰の場合は白色の外観不良を生ずることがある。防錆皮膜、保護皮膜のいずれにおいてもケイ素化合物としては珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、あるいは粒径100nm以下、より好ましくは50nm以下のコロイダルシリカが好ましい。アルミニウム化合物としては、硫酸アルミ、塩化アルミ、アルミナゾル、ステアリン酸アルミニウム、珪酸アルミニウムなどが好ましい。
【0014】
樹脂としては特に規定はないが、中でもテフロン樹脂やエポキシ樹脂被膜、アクリル樹脂皮膜、メラミン樹脂、アクリルシリカ樹脂、アクリルテフロン樹脂が好ましい。耐食性や外観(艶、液たまり、ムラ)などにより適当な濃度を選択する必要があり、1〜800g/l好ましくは10〜500g/lが高い耐食性を得やすい。有機酸としては琥珀酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、アクリル酸、蟻酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、イノシン酸、乳酸などのカルボン酸類などが考えられる。含有量としては0.1〜500g/l好ましくは1〜200g/lが適当である。不足の場合は効果が得られなくなり、過剰の場合は効果が頭打ちになり経済的損失が増加すると共に外観不良を生ずることがある。ワックスとしては種々のワックスが有るが、石油系ワックス、ポリウレタン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリアクリル酸エステルが好ましい。求められる特性(摩擦係数など)により一概には特定できないが、一般的に0.01〜200g/lの範囲で有れば、他の特性にほとんど影響せずに使用できる。
【0015】
又、液体組成物による防錆皮膜作製の好ましい処理条件としては、処理時間15〜60秒、処理温度25〜40℃、pH1.5〜3である。Siなどを含む保護皮膜の好ましい処理条件としては、処理時間1〜60秒、処理温度5〜80℃、pH7.5〜14、より好ましくは処理時間10〜40秒、処理温度15〜60℃、pH8〜13であり、特に樹脂によっては処理温度10〜30℃である。
【0016】
これらの組み合わせにより得られた保護皮膜は、有色クロメートと同等かそれ以上の耐食性が得られるだけでなく、皮膜損傷時の耐食性低下抑制能力も付加された実用的な保護皮膜が得られることが判明した。この耐食性低下抑制能力は、例えば自動車部品などにおける飛び石などによる皮膜損傷時の錆発生を抑制する物であり、これまでの発明ではほとんど得られなかった性能であるが、工業上非常に重要な性能である。又、従来得られなかった均一性のある色調も得られるようになり、意匠性も向上した。この方法は、40〜80℃の高温や45〜90秒の比較的長時間処理を行うことも出来るが、用途によっては従来の反応型クロメートの処理設備をそのまま使用できる経済的メリットもこの方法の特徴でもある。皮膜生成する処理条件は従来のクロメート処理を行う条件(液温20〜35℃、処理時間20〜40秒、攪拌有り)で処理可能であり、ケイ素や樹脂、ワックスを含む組成物による保護皮膜作製のための処理条件も液温20〜50℃で20〜40秒間浸漬するだけで良く、一連の処理は非常に容易である。
【0017】
【作用】
本発明に規定する酸性水溶液を用いることにより、有害な六価クロムを使用せず、従来の反応型クロメートと同一処理設備、処理条件、処理方法で亜鉛表面に不溶性の強固な皮膜を生成することが可能である。これにより処理物からの六価クロム溶出を心配する一般ユーザーのみならず、従来クロム酸の有害性にさらされていたクロメート製造者やクロメート処理業者の健康面での影響や野生動物への影響に関する問題を解決することが可能となる。
【0018】
本発明記載の5つに分けられたグループから選択された三価クロム含有組成物により、単に六価クロムの公害問題を解決するだけでなく、更に従来の代替え技術では得難かった皮膜損傷時の腐食抑制能力も提供することが可能になる。すなわち従来、特開昭52−92836、特開昭50−1934、特開昭61−587、特開2000−234177、特開昭61−119677などの六価クロムを用いない防錆皮膜が提案されてきた。しかしこれらの皮膜は従来のクロメート皮膜で言われる自己修復能力がないか非常に弱いため、皮膜が損傷を受けると塩水噴霧試験における耐食性は24〜72時間程度を示し実用的でない。又、ボルトなどの処理のように適度の重量のものが大量に落下したり、ぶつかり合って処理され(処理中の共ズレ)、対象が種々雑多なものでは、多くの傷が付き実際の生産ラインでは、良好な性能が発揮されなかった。又、処理液の安定性を欠く組成物の場合もあった。本発明で、これらを解消することが出来たのは、これら従来技術が本発明で示す5つのグループをすべて満たさず、一部を欠いたものであったためと考えられる。更に本発明は、従来以上の耐食を提供するだけではなくワックスなどの添加により摩擦係数を制御する事を可能にした。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。試験は試験片を脱脂、硝酸浸漬などの適当な前処理を行った後、市販の薬剤(日本表面化学(株)製)を用いて亜鉛めっき(Zn)、亜鉛−鉄合金めっき(Zn/Fe)、亜鉛−ニッケル合金めっき(Zn/Ni)のいずれかを施してめっきの膜厚8−9μmとした後、表1に挙げた組成(水1L当たりの量)の防錆皮膜形成剤を用い、記載の処理温度及び処理時間条件に従って防錆皮膜を形成した。
比較には、同じ公知の組成を使用して防錆皮膜を形成した。
評価はJIS Z 2301に従う塩水噴霧試験を行った。白錆が5%発生した時間を示す。特に記載のないものは1週間の放置後に、液外観、pH、処理外観に変化を認めなかった。
【0020】
【表1】
Figure 0004090780
【0021】
【表2】
Figure 0004090780
【0022】
【表3】
Figure 0004090780

Claims (8)

  1. (A)三価のクロムイオン、(B)W、Ti、Co及びアルカリ土類金属からなる群から選択した1種以上、(C)V、Cu及びAgからなる群から選択した1種以上、(D)塩素、硫酸イオン及び硝酸イオンからなる群から選択した1種以上、(E)Si、Al及び有機酸からなる群から選択した1種以上を含有し、pH1.5〜3を有する液体組成物により防錆皮膜を形成することを特徴とする、被処理金属の防錆皮膜形成方法。
  2. 界面活性剤、過酸化水素、尿素類、脂肪族アミン、アンモニウム塩よりなる群から選択した、前記液体組成物の安定剤をさらに含む前記液体組成物で皮膜形成を行うことを特徴とする請求項1記載の被処理金属の防錆皮膜形成方法。
  3. 請求項1又は2の方法を実施後に更にSi、樹脂、ワックスからなる群のうちの1種以上を含有する液体組成物に接触させることを特徴とする被処理金属の防錆皮膜形成方法。
  4. 被処理金属が亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金である請求項1、2又は3記載の被処理金属の防錆皮膜形成方法。
  5. (A)三価のクロムイオン、(B)W、Ti、Co及びアルカリ土類金属からなる群から選択した1種以上、(C)V、Cu及びAgからなる群から選択した1種以上、(D)塩素、硫酸イオン及び硝酸イオンからなる群から選択した1種以上、(E)Si、Al及び有機酸からなる群から選択した1種以上を含有し、pH1.5〜3を有する液体組成物よりなることを特徴とする被処理金属の防錆皮膜形成剤。
  6. 界面活性剤、過酸化水素、尿素類、脂肪族アミン、アンモニウム塩よりなる群から選択した、前記液体組成物の安定剤をさらに含む液体組成物で皮膜形成を行うことを特徴とする請求項5記載の被処理金属の防錆皮膜形成剤。
  7. 請求項5又は6の前記液体組成物と、Si、樹脂、ワックスからなる群のうち少なくとも1種を含有する液体組成物との組み合わせよりなる、被処理金属の防錆皮膜形成用液体組成物の組み合わせ。
  8. 被処理金属が亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金より選択される請求項5〜6のいずれかの被処理金属の防錆皮膜形成剤。
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