JP3536053B2 - トリインドール誘導体 - Google Patents

トリインドール誘導体

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JP3536053B2
JP3536053B2 JP2000071119A JP2000071119A JP3536053B2 JP 3536053 B2 JP3536053 B2 JP 3536053B2 JP 2000071119 A JP2000071119 A JP 2000071119A JP 2000071119 A JP2000071119 A JP 2000071119A JP 3536053 B2 JP3536053 B2 JP 3536053B2
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貴志 大久保
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  • Light Receiving Elements (AREA)
  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)
  • Nitrogen Condensed Heterocyclic Rings (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なトリインド
ール誘導体に関し、詳しくは、ドナー性材料として非常
に有用である新規なトリインドール誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】下記構造式で表されるカルバゾールは、
光導電性材料として古くから注目されている分子であ
る。特に、このカルバゾールを含む高分子であるポリビ
ニルカルバゾール(下記構造式)は、有機材料として広
く利用されている。
【0003】
【化5】
【0004】例えば、ポリビニルカルバゾールにピリリ
ウム塩を加えたものは、複写機のドラム感光体として実
用化されている。また、このポリビニルカルバゾールに
アクセプターとしてフラーレンをドープしたものは、無
機結晶を凌駕するほどのフォトリフラクティブ特性を示
すことが明らかとなっている。カルバゾールはこのよう
に光導電性材料として利用されているが、更に優れた特
性を有する材料の研究が活発に行われているのが現状で
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等
は、このカルバゾールを骨格に含み、平面性の三回対称
構造を有するトリインドールに着目した。これまでトリ
インドール骨格を有する化合物は、生物系の分野におい
て、下記構造式におけるRが、H、CH3、又はCH2
2N(CH2CH22Oであるものしか合成されていな
い。しかも、これらの化合物については、材料、物性
(例えば、光導電性等)の観点からの報告例はなされて
いない。
【0006】
【化6】
【0007】本発明者等は、上記トリインドール骨格を
有する化合物とメチルカルバゾールのドナー性につい
て、MOPACを用いた分子軌道計算及び表面分析装置
(AC−1、理研機器株式会社)によって見積もった。
分子軌道計算の結果を図1に示す。ここで簡単のため、
上記構造式におけるRはメチル基として計算を行った。
得られたメチルカルバゾールのHOMOは−8.2eV
であるのに対し、トリメチルインドールのHOMOは−
7.9eVであり、ドナー性の向上が確認された。ま
た、表面分析装置AC−1を使ってイオン化ポテンシャ
ルを測定した結果、オクタデシルカルバゾール(R=C
1837)のイオン化ポテンシャルが5.9eVであるの
に対し、トリメチルインドールでは5.3eVであっ
た。以上の結果から、トリインドール骨格を有する化合
物は、ドナー性材料として非常に有用であることが予想
される。
【0008】ところが、これまで知られている上記3種
のトリインドール骨格を有する化合物は、生物系の分野
において副生成物として合成されてはいるものの、材料
として使用する場合には、アモルファス性がでないため
に、薄膜化ができないという問題があった。そこで、本
発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、
本発明は、上記のような問題点を克服し得、ドナー性材
料として非常に有用である新規なトリインドール誘導体
を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決すべく鋭意検討した結果、カルバゾールを骨格に
含み、高いドナー性と、導電性の獲得に有利な広い平面
性を有するトリインドール骨格を有する化合物(以下、
「トリインドール誘導体」と呼ぶ。)に対し、分子中の
3つの窒素原子に結合するアルキル基の炭素数を特定の
値にすることにより、アモルファス性を発現させ、薄膜
化することができ、例えば、光導電性材料、非線形光学
材料、フォトリフラクティブ(PR)材料、エレクトロ
ルミネッセンス(EL)材料等のドナー性材料として非
常に有用であることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0010】前記課題を解決するための手段は、以下の
通りである。即ち、 <1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする
トリインドール誘導体である。
【0011】
【化7】
【0012】(前記一般式(1)において、R1は、炭
素数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。) <2> 下記一般式(2)又は(3)で表されることを
特徴とするトリインドール誘導体である。
【0013】
【化8】
【0014】(前記一般式(2)及び(3)において、
1は、炭素数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を
表し、R2は、−CHO及び−NO2の少なくとも一つを
表す。) <3> 下記一般式(4)で表されることを特徴とする
トリインドール誘導体である。
【0015】
【化9】
【0016】(前記一般式(4)において、R1は、炭
素数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3
は、−CN及び下記構造式で表される基の少なくとも一
つを表す。)
【0017】
【化10】
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。 −第1の発明− 本願の第1の発明は、下記一般式(1)で表されること
を特徴とするトリインドール誘導体である。
【0019】
【化11】
【0020】前記一般式(1)において、R1は、炭素
数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。R1
表されるアルキル基は、すべて同一の基でもよく、互い
に異なる基でもよい。トリインドールを上記ドナー性材
料として利用する場合、この化合物自身の薄膜性を向上
させる必要がある。前記一般式(1)において、R1
メチル基のように短い場合、結晶化が起こってしまうた
めデバイスの安定性を維持することができない。本発明
においては、前記R1として、アルキルがより長い化合
物、分岐のアルキルを有する化合物を製造することによ
り、アモルファス性を発現させ、この薄膜性を向上させ
ることに成功した。
【0021】前記R1は、炭素数2〜24の直鎖又は分
岐のアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜14の
アルキル基を表し、特に好ましくは分岐のアルキル基で
ある2−エチルヘキシル基(−CH2CH(C25
(CH23CH3)を表す。前記R1が、炭素数25以上
のアルキル基を表す場合、デバイスとしての機能性を示
すクロモファの密度が低くなってしまうため、材料の機
能性が小さくなってしまう。
【0022】分子軌道計算の結果、第1の発明のトリイ
ンドール誘導体は、カルバゾールより高い縮退したHO
MOレベルを有することが明らかとなった。即ち、電子
が詰まっている軌道のエネルギーが上がり、そこから電
子を出し易くなり、光をあてると電子を移動させること
ができる。そのため、光導電性材料、エレクトロルミネ
ッセンス(EL)のホール輸送材料、発光材料等として
利用することができる。また、第1の発明のトリインド
ール誘導体は、青色の発光色を得ることができる。
【0023】以下に、第1の発明のトリインドール誘導
体の製造方法を示すが、本発明はこの製造方法に制限さ
れず、前記一般式(1)で表されるトリインドール誘導
体を製造することができる限り、いずれの製造方法を用
いてもよい。
【0024】
【化12】
【0025】第1の発明のトリインドール誘導体は、2
つの工程を経ることによって合成することができる。ま
ず、第1の工程(スキーム1)として、オキシンドール
のアルキル化を行う。オキシンドールとハロゲン化アル
キルの他に、溶媒としてテトラヒドロフラン、塩基とし
て炭酸カリウム、触媒として18−クラウン−6−エー
テルを用いる。これらを窒素雰囲気下で24時間以上還
流する。このとき、オキシンドール、ハロゲン化アルキ
ル、炭酸カリウムの混合比は、モル比で1:2:2が好
ましい。また、18−クラウン−6−エーテルは触媒量
加える。還流した後、反応溶液を濾過し、溶媒を留去し
た後、カラムクロマトグラフィーによって精製する。第
2の工程(スキーム2)として、得られたアルキルオキ
シンドールの環化を行う。このとき反応溶媒、兼脱水剤
としてオキシ塩化リンを用いる。オキシ塩化リンは、ア
ルキルオキシンドールの10倍当量程度が好ましい。反
応温度は100℃、反応時間は12時間程度が好まし
い。反応生成物はカラムクロマトグラフィーによって精
製する。以上により、前記一般式(1)で表されるトリ
インドール誘導体を好適に製造することができる。
【0026】−第2の発明− 本願の第2の発明は、下記一般式(2)又は(3)で表
されることを特徴とするトリインドール誘導体である。
【0027】
【化13】
【0028】前記一般式(2)及び(3)において、R
1は、炭素数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表
し、R2は、−CHO及び−NO2の少なくとも一つを表
す。R1で表されるアルキル基は、すべて同一の基でも
よく、互いに異なる基でもよい。前記一般式(3)にお
いて、R2は、両方とも同一の基でもよく、互いに異な
る基でもよい。
【0029】前記R1は、炭素数2〜24の直鎖又は分
岐のアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜14の
アルキル基を表し、特に好ましくは分岐のアルキル基で
ある2−エチルヘキシル基(−CH2CH(C25
(CH23CH3)を表す。前記R1が、炭素数2〜24
の直鎖又は分岐のアルキル基を表すと、アモルファス性
を発現させ、薄膜性を向上させることができ、ドナー性
材料として好ましく使用することができる。前記R
1が、炭素数25以上のアルキル基を表す場合、デバイ
スとしての機能性を示すクロモファの密度が低くなって
しまうため、材料の機能性が小さくなってしまう。前記
一般式(2)及び(3)において、R2で表される−C
HO又は−NO2は、トリインドールの窒素の位置から
見てメタ位(m)とパラ位(p)に導入されたものが好
ましい。置換基の位置が異なると、吸収スペクトルや色
が異なる。R2が−CHO(ホルミル基)であるトリイ
ンドール誘導体の好ましい例を示す。
【0030】
【化14】
【0031】第2の発明のトリインドール誘導体は、第
1の発明のトリインドール誘導体と同様に、平面性があ
り、ドナー性が高く電子を出し易いという特性を有して
おり、エレクトロルミネッセンス(EL)材料等に利用
することができる。また、第2の発明のトリインドール
誘導体は、電子吸引性基であるホルミル基が存在するた
め、発光色が第1の発明のトリインドール誘導体より長
波長シフトして、緑色の発光色を得ることができる。
【0032】次に、第2の発明のトリインドール誘導体
(R2がホルミル基の場合)の製造方法を示すが、本発
明はこの製造方法に制限されず、前記一般式(2)又は
(3)で表されるトリインドール誘導体を製造すること
ができる限り、いずれの製造方法を用いてもよい。
【0033】
【化15】
【0034】第2の発明のトリインドール誘導体(R2
がホルミル基の場合)は、上記第1の発明のトリインド
ール誘導体に対し、Vilsmeier(フィルスマイ
ヤー)反応によるホルミル基の導入を行うことによって
製造することができる。まず、ジメチルホルムアミドと
オキシ塩化リンとを反応させてフィルスマイヤー錯体を
つくる。反応温度は0℃で窒素雰囲気下30分反応させ
る。この反応溶液に、1,2−ジクロロエタンに溶かし
た上記第1の発明のトリインドール誘導体を加えホルミ
ル化を行う。反応温度は70℃で、反応時間は12時間
以上が好ましい。生成物に水を加え加水分解した後、カ
ラムクロマトグラフィーによって精製する。以上によ
り、前記一般式(2)又は(3)で表されるトリインド
ール誘導体(R2がホルミル基の場合)を好適に製造す
ることができる。
【0035】次に、第2の発明のトリインドール誘導体
(R2がニトロ基の場合)の製造方法を示すが、本発明
はこの製造方法に制限されず、前記一般式(2)又は
(3)で表されるトリインドール誘導体を製造すること
ができる限り、いずれの製造方法を用いてもよい。ま
ず、上記第1の発明のトリインドール誘導体の酢酸溶液
に硝酸を滴下する。1時間程度攪拌した後、反応溶液を
氷水に注ぐ。析出した沈殿(オイル)を集めた後、カラ
ムクロマトグラフィーによって精製する。以上により、
前記一般式(2)又は(3)で表されるトリインドール
誘導体(R2がニトロ基の場合)を好適に製造すること
ができる。
【0036】−第3の発明− 本願の第3の発明は、下記一般式(4)で表されること
を特徴とするトリインドール誘導体である。
【0037】
【化16】
【0038】前記一般式(4)において、R1は、炭素
数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R
3は、−CN及び下記構造式で表される基の少なくとも
一つを表す。
【0039】
【化17】
【0040】R1で表されるアルキル基は、すべて同一
の基でもよく、互いに異なる基でもよい。前記一般式
(4)において、R3は、両方とも同一の基でもよく、
互いに異なる基でもよい。前記R1は、炭素数2〜24
の直鎖又は分岐のアルキル基を表すが、好ましくは炭素
数8〜14のアルキル基を表し、特に好ましくは分岐の
アルキル基である2−エチルヘキシル基(−CH2CH
(C25)(CH23CH3)を表す。前記R1が、炭素
数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表すと、アモ
ルファス性を発現させ、薄膜性を向上させることがで
き、ドナー性材料として好ましく使用することができ
る。前記R1が、炭素数25以上のアルキル基を表す場
合、デバイスとしての機能性を示すクロモファの密度が
低くなってしまうため、材料の機能性が小さくなってし
まう。
【0041】前記一般式(4)において、−CH=C
(CN)(R3)で表される基は、トリインドールの窒
素の位置から見てメタ位(m)とパラ位(p)に導入さ
れたものが好ましい。該置換基の位置が異なると、吸収
スペクトルや色が異なる。以下に、R3が−CN(シア
ノ基)であるトリインドール誘導体の好ましい例を示
す。
【0042】
【化18】
【0043】上記4種のトリインドール誘導体のR1
−C817である化合物(トリインドール二置換ジシア
ノビニル体の4種類の異性体(10-5mol/l溶
液))の吸収スペクトルと、第1の発明のトリインドー
ル誘導体のR1が−C817であるトリオクチルインドー
ル(10-5mol/l溶液)の吸収スペクトルを図2に
示す。トリオクチルインドールは320nm付近にπ−
π*に起因する吸収が観測された。それに対し、アクセ
プターを導入したトリインドール二置換ジシアノビニル
体は、450〜520nmにトリインドールからアクセ
プターであるジシアノビニル基への電荷移動吸収が観測
された。それぞれの異性体において、吸収スペクトルが
非常に異なっていることが明らかとなり、このことは置
換基の位置を変えることによって物性をコントロールで
きる可能性があることを示している。
【0044】一方、カルバゾールにジシアノビニル基が
ついた化合物の吸収スペクトルを図3に示す。カルバゾ
ールの一置換ジシアノビニル体は、420nm付近にジ
シアノビニル基への電荷移動吸収が観測された。それに
対し、トリインドールの系では対応する電荷移動吸収が
長波長シフトしており、このことからドナー−アクセプ
ター間のエネルギーギャップが小さくなっていることが
わかる。即ち、トリインドール誘導体のドナー性が高い
ことがこのことから言える。
【0045】第3の発明のトリインドール誘導体は、第
1の発明のトリインドール誘導体と同様に、平面性があ
り、ドナー性が高く電子を出し易いという特性を有して
おり、更に、アクセプター性の置換基を導入しているた
め、非線形光学材料、エレクトロルミネッセンス(E
L)材料等に利用することができる。また、第3の発明
のトリインドール誘導体は、強力な電子吸引性基である
シアノビニル基が存在するため、発光色が長波長シフト
し、オレンジから赤色の発光色を得ることができる。
【0046】第3の発明のトリインドール誘導体は、上
述の通り、非線形光学材料として使用することができる
が、以下に、3次の非線形光学定数について、電場変調
スペクトルと共に説明する。電場変調スペクトルとは、
透過光強度(I)と電場変調シグナル(ΔI)を測定す
ることにより得られる吸収係数変化(Δα)スペクトル
のことである。無摂動状態の吸収スペルトルが図4の上
側の実線で表される場合、外部電界を印加すると半励起
状態となるために吸収バンドがレッドシフトして点線で
示されるようになったと仮定すると、電界が印加された
状態の吸収スペクトル(点線)から無摂動状態の吸収ス
ペクトル(実線)を減算すると、下側のようなスペクト
ルになる。この図4の下側のスペクトルが電場変調スペ
クトルに相当する。
【0047】物質に光が入射すると、線形感受率(χ
(1))を比例係数として光電界(E)に比例した下記式
(1)で表される分極(P0)が生じる。 P0=χ(1)E 式(1) 物質に外部電界(F)が印加された状態では、分極(P
F)は印加電界により誘起された項を含むようになり、
下記式(2)のように表される。 PF=χ(1)E+χ(3)E|F|2 式(2) ここでχ(3)は3次の非線形光学定数である。電場変調
スペクトル測定では印加電界により誘起される吸収変化
を測定するので、分極に関しては上記式(1)と上記式
(2)との差、 ΔP=PF−P0=χ(3)E|F|2 式(3) を測定することになる。従って、電場変調スペクトル測
定では3次非線形光学定数に起因した成分のみを検出し
ていることになり、電場変調スペクトルより3次非線形
光学定数を求めることができる。
【0048】3次非線形光学定数(χ(3)(−ω;ω,
0,0))は下記式(4)で表される。
【0049】
【数1】
【0050】屈折率(n),消衰係数(k)と吸収係数
(α)とはKramers−Kronigの関係によ
り、下記式(5)のように表される。
【0051】
【数2】
【0052】ここで、cは光速であり、Pは主値積分を
表す。外部電界により誘起される吸収変化Δα(電場変
調スペクトル)は局所的なものであり、1つのバンドの
他のバンドに対する寄与は小さい。従って、屈折率変化
(Δn)、消衰係数変化(Δk)は、吸収変化が零でな
いω1〜ω2の範囲で積分を行うことにより、電場変調ス
ペクトル(Δα)から下記式(6)を用いて求めること
ができる。
【0053】
【数3】
【0054】このように、上記式(4)と上記式(6)
を用いることにより、電場変調スペクトルより3次非線
形光学定数をスペクトルとして求めることができる。
【0055】次に、電場変調スペクトルの測定方法につ
いて説明する。本発明においては、まず、図5に示すよ
うな試料を作製した。図5におけるサンプル薄膜は、第
3の発明のトリインドール誘導体(以下、「サンプル」
と呼ぶことがある。)を溶解させたクロロホルム(CH
Cl3)溶液とPMMAを溶解させたCHCl3溶液とを
混合することにより、サンプルドープしたPMMAのC
HCl3溶液を調製し、ITOガラス基板上にキャスト
(cast:塗布)した後に、真空乾燥を行うことによ
って、10wt%のサンプルドープしたPMMA薄膜を
作製した。その薄膜表面に半透明金電極を真空蒸着し、
図5のような試料を作製した。このような試料では、金
電極とITO電極との間に電界を印加することができ
る。このような試料を用いて、図6に示す実験系により
サンプルドープPMMA薄膜の電場変調スペクトル測定
を行った。
【0056】電場変調スペクトルの測定では、タングス
テン・ランプ(ウシオ電機;JC12V−50W)から
の光をモノクロメーター(リツー応用光学;MC−10
N)で分光して試料に入射させ、透過光をフォトダイオ
ード(浜松ホトニクス;S2281−01)によりディ
テクトした。タングステン・ランプの駆動電源は、直流
定電圧定電流装置(東京スタビライザー;NC−020
M)を使用した。モノクロメーターの波長掃引はパルス
ステージコントローラ(シグマ光機;Mark5−5
A)、ドライバ(シグマ光機;CSG−502)により
GPIB(GeneralPurpose Interface Bus)を介してパー
ソナルコンピュータ(NEC;PC−9801VX)で
制御を行った。
【0057】フォトダイオードからのシグナルは、フォ
トセンサアンプ(浜松ホトニクス;C2719)により
I−V変換、増幅された後、ロックインアンプ(STANFOR
D RESEARCH SYSTEMS;MODEL SR530)でロックイン検出し
た。電界を印加していないときの透過光強度Iの測定で
は、チョッパ(STANFORD RESEARCH SYSTEMS;MODEL SR54
0)をロックイン検出のリファレンスとして用いた。ま
た、電場変調成分ΔIの測定においては、ファンクショ
ン・ジェネレータ(NF ELECTRONIC INSTRUMENTS;FG-122)
からの正弦波をロックイン検出のリファレンスとして用
いた。電場変調成分の測定では、ファンクション・ジェ
ネレータからの交流電圧を高電圧アンプ(DAINIPPON pri
nting;HV-004)により増幅して試料に印加し、ロックイ
ンアンプのリファレンスを印加電界の2倍の周波数とし
てロックイン検出を行った。
【0058】ここで、ポリマー系の化合物で3次非線形
光学定数が最も大きいものは、ポリジアセチレンとされ
ており、χ(3)は10-11esuのオーダーである。それ
に対し、フタロシアニンは、H2Pc(t−bu)4
1.9×10-12esu、NiPc(t−bu)4が2.
0×10-12esu、VOPc(t−bu)4が6.0×
10-12esuである(尚、Pcはフタロシアニン、
(t−bu)4は4つのターシャリーブチル基を表
す。)。これらの値は単分子系(ポリマーでない系)と
してはかなり大きな値である。フタロシアニンは、この
ような大きな非線形性と熱的安定性を有しているため、
有用な3次非線形光学材料として期待されている。
【0059】上記で示した値は、第三高調波発生(TH
G)の測定から見積もった値である。3次非線形光学定
数は、比較的測定方法に依存するため、直接その他の方
法で見積もった値と比較することができないことがあ
る。電場変調分光法によって見積もったフタロシアニン
のχ(3)/Nは、H2Pc(t−bu)4が2.7×10-
32esu・cm3、PbPc(t−bu)4が1.1×1
-32esu・cm3である。ここでχ(3)をNで割って
いるのは、一分子あたりの3次非線形光学特性を比較す
るためである。χ(3)はバルクの値であるため、分子あ
たりの3次非線形光学特性を比較することは難しい。従
って、単位体積中の分子数で割ることによって、その分
子の本来持っている3次非線形光学特性を比較できるよ
うにする必要がある。本発明において、第3の発明のト
リインドール誘導体は、一分子あたりの3次非線形光学
定数(χ(3)/N)が3.0×10-32esu・cm3
上であることが、有用な3次非線形光学材料として使用
する観点から好ましい。
【0060】以下に、第3の発明のトリインドール誘導
体の製造方法を示すが、本発明はこの製造方法に制限さ
れず、前記一般式(3)で表されるトリインドール誘導
体を製造することができる限り、いずれの製造方法を用
いてもよい。
【0061】
【化19】
【0062】第3の発明のトリインドール誘導体は、上
記ホルミル化した第2の発明のトリインドール誘導体に
対し、Knoevenagel(クノーベナゲル)縮合
によるアクセプターの導入を行うことによって製造する
ことができる。上記第2の発明のトリインドールのホル
ミル体を、下記構造式で表されるマロノニトリル、シア
ノ酢酸メチルエステル、あるいは4−ニトロフェニルア
セトニトリルと縮合させる。溶媒としてテトラヒドロフ
ラン、塩基としてジメチルアミノピリジンを用い、一時
間程度反応させる。反応生成物は、カラムクロマトグラ
フィーによって精製する。以上により、前記一般式
(4)で表されるトリインドール誘導体を好適に製造す
ることができる。生成物の具体的な構造式を下記に示
す。
【0063】
【化20】
【0064】
【化21】
【0065】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明するが、本発
明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。 (実施例1) [前記一般式(1)で表されるトリインドール誘導体] −オクチルオキシンドールの合成− オキシンドール25g、1−ヨードオクタン100g、
炭酸カリウム150g、及び18−クラウン−6−エー
テル1.5gを窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン溶媒
中で一晩還流した。反応溶液を濾過し、濾液から溶媒を
留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、
溶出液:ジクロロメタン)で精製することによりオクチ
ルオキシンドールを得た(18.1g;収率39%)。
得られたオクチルオキシンドールのNMRの結果を示
す。1 H NMR(300MHz,CDCl3,TMS):
0.81−0.89(m,3H,CH3),1.14−
1.33(m,10H,CH2),1.67(quin
t.,J=7.5Hz,2H,CH2),3.51
(s,2H,CH2),3.69(t,J=7.2H
z,2H,NCH2),6.82(d,J=8.1H
z,1H,CHarom),7.02(t,J=8.1
Hz,1H,CHarom),7.22−7.28
(m,2H,CHarom).
【0066】−トリオクチルインドールの合成− 得られたオクチルオキシンドール18.1gを、オキシ
塩化リン100mlを溶媒として空気中、100℃で一
晩撹拌した。反応溶液を氷の中にゆっくり注ぎ込みオキ
シ塩化リンをつぶした後、溶液を水酸化ナトリウム水溶
液で中和した。この溶液からクロロホルムで化合物を抽
出した後、硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。濾過で
硫酸マグネシウムを取り除いた後、濾液から溶媒を留去
し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:
ジクロロメタン−ヘキサン(1:9))で精製すること
により、トリオクチルインドール(前記一般式(1)で
表されるトリインドール誘導体)を得た(4.8g;収
率10%)。得られたトリオクチルインドールのNMR
の結果を示す。
【0067】1H NMR(300MHz,CDCl3
TMS):0.82(t,J=7.8Hz,9H,CH
3),1.18−1.27(m,30H,CH2),1.
99(br,6H,CH2),4.92(t,J=9.
0Hz,6H,NCH2),7.33(t,J=8.7
Hz,3H,CHarom),7.45(t,J=9.
0Hz,3H,CHarom),7.63(d,J=
9.0Hz,3H,CHarom),8.28(d,J
=9.0Hz,3H,CHarom):m/z(FAB
−MS)682(MH+).Elemental an
alysis calcd for C4863
3(%):C84.53,H9.31,N6.16;f
ound:C84.44,H9.37,N6.13.
【0068】(実施例2) [前記一般式(3)で表されるトリインドール誘導体]
実施例1で得られたトリオクチルインドールをホルミル
化することによって、前記一般式(3)で表されるトリ
インドール誘導体を製造した。窒素雰囲気下、0℃で脱
水したジメチルホルムアミド25mlとオキシ塩化リン
7mlとを反応させた。30分撹拌後、ジクロロエタン
50mlに溶かした上記トリオクチルインドール4.8
gを反応溶液にゆっくり滴下した。この溶液を70℃で
一晩撹拌後、水を加え加水分解した後、クロロホルムで
抽出した。硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた後、濾過
し、濾液から溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフ
ィー(シリカゲル、溶出液:ジクロロメタン)で精製す
ることにより、下記に示すトリオクチルインドールの二
置換ホルミル体3a(0.83g;収率16%)、3b
(0.95g;収率18%)、3c(1.20g;収率
23%)、及び3d(0.55g;収率11%)を得
た。このとき同時に副生成物として、下記に示すトリオ
クチルインドールの一置換ホルミル体2a及び2bを得
たが、これらはカラムクロマトグラフィーによって分離
精製することができなかった。
【0069】
【化22】
【0070】得られたトリオクチルインドールの二置換
ホルミル体3dのNMRの結果を示す。1 H NMR(300MHz,CDCl3,TMS):
0.79−0.95(m,9H,CH3),1.22−
1.40(m,30H,CH2),1.99(br,6
H,CH2),4.84−4.97(m,6H,NC
2),7.29(t,J=7.2Hz,1H,CHa
rom),7.42(t,J=7.2Hz,1H,CH
arom),7.52−7.56(m,2H,CHar
om),7.73(d,J=8.1Hz,1H,CHa
rom),7.86(d,J=8.4Hz,1H,CH
arom),7.95(s,1H,CHarom),
8.11(d,J=7.8Hz,1H,CHaro
m),8.17(d,J=8.4Hz,1H,CHar
om),8.56(s,1H,CHarom),10.
03(s,1H,CHO),10.08(s,1H,C
HO):m/z(FAB−MS)738(MH+).
【0071】(実施例3) [前記一般式(4)で表されるトリインドール誘導体]
実施例2で得られたトリオクチルインドールの二置換ホ
ルミル体に、アクセプターを導入することにより、前記
一般式(4)で表されるトリインドール誘導体を製造し
た。上記トリオクチルインドールの二置換ホルミル体3
d500mg、マロノニトリル、及びジメチルアミノピ
リジンをテトラヒドロフラン溶媒中、室温で1時間反応
させ、溶媒を留去後、カラムクロマトグラフィー(シリ
カゲル、溶出液:ジクロロメタン)によって精製するこ
とにより、下記に示すアクセプター導入型トリオクチル
インドール4d(302mg;収率53%)を得た。
【0072】
【化23】
【0073】得られたアクセプター導入型トリオクチル
インドール4dのNMRの結果を示す。1 H NMR(300MHz,CDCl3,TMS):
0.73−0.85(m,9H,CH3),1.05−
1.30(m,30H,CH2),1.80(br,2
H,CH2),1.91(br,2H,CH2),2.0
5(br,2H,CH2),4.84−4.98(m,
6H,NCH2),7.41(t,J=7.2Hz,1
H,CHarom),7.55(t,J=7.5Hz,
1H,CHarom),7.65−7.70(m,2
H,CHarom),7.84(d,J=6.6Hz,
1H,CHarom),7.85(s,1H,CHar
om),7.91(s,1H,CHarom),8.0
5(d,J=10.02Hz,1H,CHarom),
8.22−8.28(m,3H,CHarom),8.
66(s,1H,CHarom):m/z(FAB−M
S)834(MH+).Elemental anal
ysis calcd for C56637(%):
C80.63,H7.61,N11.75;foun
d:C80.63,H7.65,N11.55.
【0074】<評価>得られたアクセプター導入型トリ
オクチルインドール4dの電場変調スペクトルを、上述
した方法により測定した。電場変調スペクトルは、電場
をかけた時の吸収スペクトルと電場をかけていない時の
吸収スペクトルとの差で表すことができる。図7に測定
結果を示す。共鳴領域よりやや長波長側の550nm付
近に大きな吸収変化が観測された。このデータから計算
によって3次の非線形光学定数であるχ(3)が求まる。
計算の結果、一分子あたりの3次非線形光学定数、χ
(3)/Nは6.0×10-32esu・cm3であった。こ
の値は、3次の非線形光学材料として注目されているフ
タロシアニン(1×10-32〜3×10-32esu・cm
3程度)に比べても十分に大きな値であることが明らか
となった。
【0075】
【発明の効果】本発明によれば、これまで困難であった
薄膜化を可能とし、ドナー性材料として非常に有用であ
る新規なトリインドール誘導体を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トリメチルインドール及びメチルカルバゾー
ルのMOPACを用いた分子軌道計算の結果である。
【図2】 本発明のトリインドール誘導体の吸収スペク
トルを示す図である。
【図3】 カルバゾール誘導体の吸収スペクトルを示す
図である。
【図4】 電場変調スペクトルを説明するための図であ
る。
【図5】 電場変調スペクトルを測定するための試料を
示す概略構成図である。
【図6】 電場変調スペクトルを測定する装置を示す概
略図である。
【図7】 実施例3で測定した電場変調スペクトル(Δ
α)を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 487/14 G02F 1/361 G03G 5/06 315 H01L 31/08 H01L 51/10 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1)で表されることを特徴
    とするトリインドール誘導体。 【化1】 (前記一般式(1)において、R1は、炭素数2〜24
    の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)
  2. 【請求項2】 下記一般式(2)又は(3)で表される
    ことを特徴とするトリインドール誘導体。 【化2】 (前記一般式(2)及び(3)において、R1は、炭素
    数2〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R
    2は、−CHO及び−NO2の少なくとも一つを表す。)
  3. 【請求項3】 下記一般式(4)で表されることを特徴
    とするトリインドール誘導体。 【化3】 (前記一般式(4)において、R1は、炭素数2〜24
    の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は、−CN及
    び下記構造式で表される基の少なくとも一つを表す。) 【化4】
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