JP3529380B2 - 走査型光学顕微鏡 - Google Patents

走査型光学顕微鏡

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JP3529380B2
JP3529380B2 JP2003322166A JP2003322166A JP3529380B2 JP 3529380 B2 JP3529380 B2 JP 3529380B2 JP 2003322166 A JP2003322166 A JP 2003322166A JP 2003322166 A JP2003322166 A JP 2003322166A JP 3529380 B2 JP3529380 B2 JP 3529380B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】本発明は、標本からの蛍光を複数の波長域
に分光し、各波長域の蛍光を検出する走査型光学顕微鏡
に関する。
【背景技術】
【0002】特開平8−43739号公報には、レーザ
ー光を対物レンズにより集光して標本上にスポット光を
結ばせ、光走査手段によりそのスポット光を標本上で2
次元に走査し、標本からの蛍光をグレーティングにより
分光し、分光された光の幅を可変可能なスリットを通し
て検出する共焦点走査型レーザー顕微鏡が開示されてい
る。
【0003】図6は、上記共焦点走査型レーザー顕微鏡
の構成を示す図である。図6に示すように、レーザー光
源101から出射されたレーザー光は、ビームエクスパ
ンダ102、ダイクロイックミラー104、X−Y走査
光学系105、瞳投影レンズ106、顕微鏡107を順
次介して標本109に導かれる。また測光分離手段は、
標本109からの蛍光を分離するダイクロイックミラー
104、共焦点光学系108、グレーティング119、
光の幅を変更可能なスリット110,111,112、
集光レンズ116,117,118、光検出器113,
114,115からなる。
【0004】このような構成において、標本109から
の蛍光は、顕微鏡107、瞳投影レンズ106、X−Y
走査光学系105、ダイクロイックミラー104、共焦
点光学系108を順次通過した後、グレーティング11
9に至り、その波長に合わせ分光される。分光された各
蛍光には、それぞれスリット110,111,112、
及び光検出器113,114,115が対応しており、
各スリット110,111,112の幅を変化させるこ
とで、検出する各蛍光波長範囲を選択することができ
る。
【0005】また特開平9−502269号公報には、
蛍光光束をプリズム等のスペクトル分解手段により分光
し、一方では第一スペクトル範囲を絞り込み、他方では
絞りを通過しないスペクトル範囲の少なくとも一部分を
反射して第二スペクトル範囲をなす二つの光路を構成
し、それぞれの光路に対して光検出器を設けた共焦点走
査型レーザー顕微鏡が開示されている。
【0006】図7は、上記共焦点走査型レーザー顕微鏡
の構成を示す図である。図7に示すように、レーザー光
源202から出射されたレーザー光束203は、方向変
更ミラー204、レーザーラインフィルタ205、レン
ズ206、絞り207を介してダイクロイックミラー2
08で反射され、レンズ209、X−Y走査光学系21
0、瞳投影レンズ211、対物レンズ212を経て標本
213に達する。標本213からの反射光及び蛍光から
なる光束214は、対物レンズ212、瞳投影レンズ2
11、X−Y走査光学系210、レンズ209を経てダ
イクロイックミラー208に戻る。そして、光束214
はダイクロイックミラー208を透過し、共焦点絞り2
15を介して分光器216に入る。
【0007】図8は、分光器216の構成を示す図であ
る。選択装置225は、光束214を分解するスペクト
ル分解手段227と、一方では第一スペクトル範囲22
9を絞り込み他方では絞りを通過しないスペクトル範囲
の少なくとも一部分230を反射する手段228とを有
している。光検出装置226は、絞り込まれた第一スペ
クトル範囲229の光路に配置された第一光検出器23
1と、反射されたスペクトル範囲の光路に設置された第
二光検出器232とを有している。さらに選択装置22
5は、反射されたスペクトル範囲230の光路に設置さ
れ、第二スペクトル範囲234を絞り込む手段233を
有する。第二光検出器232は、絞り込まれた第二スペ
クトル範囲234の光路に設置されている。
【0008】一方、近年蛍光観察においては、単染色の
みならず、多重染色が多用されている。もとより、蛍光
染色は細胞、組織内の特定対象を視認可能にするために
行なわれる。このため多重染色観察では、各染色部位が
明確な色の差、即ち蛍光波長の違いとして検出されなけ
ればならない。しかも、蛍光波長の部分的な重なり(ク
ロスオーバー部分)を効率良く除去して検出する必要が
ある。さらに蛍光観察においては、高いコントラストと
高い光学分解能が要求される。走査型共焦点レーザー顕
微鏡はこれらの要求を満たすものであり、近年、生物分
野の研究目的で広く利用されるようになっている。
【0009】上記特開平8−43739号公報及び特開
平9−502269号公報では、いずれも走査型共焦点
レーザー顕微鏡をベースに、多重染色の蛍光分離手段と
して、プリズムや回折格子のようなスペクトル分解手段
と、蛍光波長域を制限するためのスリットで構成するこ
とにより、共焦点顕微鏡のもつ高コントラストと高分解
能を実現しつつ、多重染色標本からの蛍光をクロスオー
バーさせることなく、高い効率で検出することを可能に
している。
【特許文献1】特許文献1は、特開平8−43739号
公報である。
【特許文献2】特許文献2は、特開平9−502269
号公報である。
【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】
【0010】一般的に標本からの蛍光は、光検出器にフ
ォトマルチプライヤーを必要とするほど微弱である。ま
た、蛍光標本は励起光(レーザー光)を強く当てるほど
退色が激しくなるので、通常観察者は、標本の退色と得
られる画像ノイズのバランスを見て、許容できる範囲内
で可能な限り励起光量を下げようとする。したがってこ
の種の装置では、蛍光の損失を極力抑えることが極めて
重要なポイントになる。
【0011】ここで例として、二つの蛍光色素(DAP
I,CY5)で標識された標本をとりあげる。DAPI
はUV域(340〜365nm)に吸収波長域を有し、
放出される蛍光波長は、そのピークがほぼ450nmに
現れる。一方、CY5は赤色域(630〜650nm)
に吸収波長域を有し、蛍光波長は、そのピークがほぼ6
70nmに現れる。
【0012】以下、これらの蛍光が結像位置で形成され
るスポットについて、図7を基に述べる。対物レンズ2
12で標本213上にレーザースポットを形成し、標本
から放射される蛍光は、対物レンズ212、瞳投影レン
ズ211、X−Y走査光学系210を経て、レンズ20
9に入射する。さらに光束214はダイクロイックミラ
ー208を透過し、共焦点絞り215が配置されている
位置、すなわちレンズ209による結像位置にそのスポ
ットを結ぶ。なお、そのスポット径(回折径)は次式で
表わされる。
【0013】φ=1.22×λ/NAここでNAはレン
ズ209を出射する出射NAであり、λは波長である。
この式から、DAPI(蛍光波長450nm)とCY5
(蛍光波長670nm)のスポット径を比べると、CY
5の方が約1.5倍ほど大きい。
【0014】したがって上述した従来の技術では、共焦
点効果を確保するためにDAPIのスポット径に合わせ
て共焦点絞り215の径を設定することになる。これは
DAPIに対しては最適に設定されていることになる
が、CY5に対しては、不必要に共焦点絞り215によ
り絞られてしまい、貴重な蛍光を失ってしまう。逆に、
共焦点絞り215の径をCY5に合わせると、DAPI
は十分な共焦点効果が得られないという欠点がある。
【0015】また、図8に示した特開平9−50226
9号公報の構成では、光束214がスペクトル分解手段
227でスペクトル分解され、一方では第一スペクトル
範囲229を絞り込み、他方では絞りを通過しないスペ
クトル範囲の少なくとも一部分230を反射する手段2
28(可変スリット)で、各蛍光の波長域に分割してい
る。しかし、スペクトル分解手段として図8に示すよう
なプリズムを用いている場合は、光束214の光束径が
大きいと、十分な精度で各検出光路に分割されないとい
う欠点がある。
【0016】本発明の第一の目的は、多重染色時の各蛍
光波長に対して、共焦点効果を落とすことなく、かつ蛍
光を損失することなく光検出器に導くことができる走査
型光学顕微鏡を提供することにある。本発明の第二の目
的は、多重染色時の各蛍光波長に対して、精度良く各検
出光路に分割することができる走査型光学顕微鏡を提供
することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】上記課題を解決し目的を達成するために、
本発明の走査型光学顕微鏡は以下の如く構成されてい
る。 (1)本発明の走査型光学顕微鏡は、レーザー光源から
のレーザー光で標本を走査する走査型光学顕微鏡におい
て、前記標本からの蛍光を前記レーザ光源と前記標本を
結ぶ光路から分岐させるビームスプリッタと、前記ビー
ムスプリッタで分岐された光路上に配置され蛍光を分光
するスペクトル分解手段と、前記スペクトル分解手段で
分光された蛍光を複数の波長域に分割する波長域分割手
段と、前記複数の波長域に分割された各光路にそれぞれ
設けられ、前記標本からの蛍光を検出する複数のサイド
オン型フォトマルチプライヤと、を具備し、前記サイド
オン型フォトマルチプライヤの軸心方向、前記スペク
トル分解手段によりスペクトル分解される面にほぼ平行
であるようにした。
【0018】(2)本発明の走査型光学顕微鏡は上記
(1)に記載の顕微鏡であり、かつ前記複数の波長域に
分割された各光路における前記サイドオン型フォトマル
チプライヤの手前に、前記標本からの蛍光を結像する結
像光学系と、前記結像光学系の焦点位置に配置された共
焦点絞りとをそれぞれ設けている。
【0019】(3)本発明の走査型光学顕微鏡は上記
(2)に記載の顕微鏡であり、かつ前記スペクトル分解
手段はスペクトル分解された光束を平行に出射する光学
手段を有する。 (4)本発明の走査型光学顕微鏡は上記(1)に記載の
顕微鏡であり、かつ前記標本からの蛍光を分離するため
のビームスプリッタと前記スペクトル分解手段との間
に、光束を縮小する縮小光学系を設けている。
【0020】上記手段を講じた結果、それぞれ以下のよ
うな作用を奏する。(1)本発明の走査型光学顕微鏡に
よれば、多重染色された標本からの各蛍光は、スペクト
ル分解されて各蛍光が有する波長域に光路を分割され
る。これらの光を光検出器としてのサイドオン型フォト
マルチプライヤに導くにあたり、その軸心方向が、前記
スペクトル分解手段によりスペクトル分解される、す
なわちスペクトル分解された光の分散方向にほぼ平行で
あるようにした。これにより、サイドオン型フォトマル
チプライヤの感度分布が広がる軸方向に検出光の広がり
方向が一致するので、蛍光を損失することなく光検出器
に導くことができる。
【0021】(2)本発明の走査型光学顕微鏡によれ
ば、各蛍光が有する波長域に分割された光路のそれぞれ
に、標本からの蛍光を結像する結像光学系と、結像光学
系の焦点位置に配置された共焦点絞りとが設けられてい
るので、各共焦点絞りを各波長域に最適な絞り径に設定
することができる。これにより、蛍光を損失することな
く完全な共焦点効果を得ることができる。
【0022】(3)本発明の走査型光学顕微鏡によれ
ば、スペクトル分解され、各検出光路に波長分解された
光束が平行に出射するので、これらの光束は全て共焦点
位置に集光する。したがって、この位置に共焦点絞りを
配置するだけで上記(2)の走査型光学顕微鏡を構成で
きる。また各検出光路において、光束を分離した後の光
路に共焦点絞り及び光検出器を配置するだけで、独立し
た共焦点光学系を設けることができるので、装置を簡易
かつ安価に構成できる。 (4)本発明の走査型光学顕微鏡によれば、前記スペク
トル分解手段はプリズムであり、標本からの各蛍光の光
束がスペクトル分解手段に入射する前に縮小されるの
で、蛍光を精度良く各検出光路に分割することができ
る。
【発明の効果】
【0023】本発明によれば、多重染色時の各蛍光波長
に対して、共焦点効果を落とすことなく、かつ蛍光を損
失することなく光検出器に導くことができる走査型光学
顕微鏡を提供できる。また本発明によれば、多重染色時
の各蛍光波長に対して、精度良く各検出光路に分割する
ことができる走査型光学顕微鏡を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】(第1の実施の形態)図1及び図2は、本
発明の第1の実施の形態に係る走査型光学顕微鏡の構成
を示す図である。図1に示すように、レーザー光源1
は、アルゴン、クリプトン混合ガスレーザーの光源であ
る。このレーザー光源1から出射されたレーザー光は、
ビームエクスパンダ2、波長選択フィルタ3、ビームス
プリッタ4、X−Y走査光学系5、瞳投影レンズ6、結
像レンズ7、対物レンズ8を順次介して、標本9に導か
れる。
【0025】レーザー光源1により、主に351nm,
488nmのアルゴン線、及び568nm,647nm
のクリプトン線が放射される。ビームエクスパンダ2は
レーザー光の光径が対物レンズ8の瞳径をほぼ満たすよ
うに設定されている。またビームスプリッタ4は、到達
した光の20%程度を反射し、80%程度を透過する。
【0026】波長選択フィルタ3は、351nm,48
8nm,568nm,647nmの波長を選択的に透過
する。標本9は、色素DAPI,FITC,Texas
Red,CY5で四重染色されており、DAPIはア
ルゴン線351nmで、FITCはアルゴン線488n
mで、Texas Redはクリプトン線568nm
で、CY5はクリプトン線647nmで、それぞれ励起
される。
【0027】上記励起によって、DAPIはほぼ450
nmにピークをもつ蛍光を放出する。同様にFITCは
530nmに、Texas Redは610nmに、C
Y5は670nmにピークをもつ蛍光を放出する。これ
らの蛍光は対物レンズ8、結像レンズ7、瞳投影レンズ
6、X−Y走査光学系5を経て、ビームスプリッタ4を
通過する。
【0028】ビームスプリッタ4を通過した光束20
は、光束を縮小する縮小光学系10を通過して縮小さ
れ、光束21が形成される。光束21はプリズム11a
を通過してそのスペクトルが分解され、プリズム11a
と光学的に同一のプリズム11bによりスペクトルが分
解された光束が平行光束22として形成され、三角ミラ
ー12aに入射する。三角ミラー12aは入射軸に対し
て垂直な方向に移動可能に構成されており、ここでは約
570nmを境に左右の光路に蛍光光束が分離されるよ
うに設定されている。この結果、DAPIとFITCの
蛍光は光束23aとして、またTexas RedとC
Y5の蛍光は光束23bとして分離される。
【0029】光束23aは、さらに三角ミラー12bに
入射する。三角ミラー12bも入射軸に対して垂直な方
向に移動可能に構成されており、ここでは約490nm
を境に左右の光路に蛍光光束が分離されるように設定さ
れている。この結果、DAPIの蛍光は光束24bとし
て、またFITCの蛍光は光束24aとして分離され
る。
【0030】もう一方の光束23bは、同様に三角ミラ
ー12cに入射する。三角ミラー12cも入射軸に対し
て垂直な方向に移動可能に構成されており、ここでは約
650nmを境に左右の光路に光束が分離されるように
設定されている。この結果、Texas Redの蛍光
は光束24cとして、またCY5の蛍光は光束24dと
して分離される。
【0031】各光束24a,24b,24c,24d
は、それぞれ幅が可変であり光軸に垂直な方向に移動可
能なスリット13a,13b,13c,13dにより、
標本からの励起光の戻り光と、蛍光波長の部分的な重な
り部分(蛍光のクロスオーバー部分)が制限される。ス
リット13a,13b,13c,13dを通過した各蛍
光光束はそれぞれ共焦点レンズ14a,14b,14
c,14dに入射する。各光束24a,24b,24
c,24dは平行光束で出射しているので、その焦点位
置に配置された共焦点絞り15a,15b,15c,1
5dの位置に集光し、これら共焦点絞りを通過して、フ
ォトマルチプライヤー16a,16b,16c,16d
で検出される。
【0032】ここで、共焦点絞りはそれぞれ下式で計算
された絞り径に設定されている。φ=1.22×λ/N
Aここで、NAは共焦点レンズ14a,14b,14
c,14dを出射する出射NAであり、λは蛍光波長で
ある。
【0033】したがって、DAPI,FITC,Tex
as Red,CY5の各蛍光に対して、蛍光を損失す
ることなく、最高の共焦点効果を得ることができる。ま
た、フォトマルチプライヤー16a,16b,16c,
16dは、サイドオン型であって、その軸心方向はプリ
ズム11aによりスペクトル分解される面とほぼ平行に
なるように構成されている。サイドオン型のフォトマル
チプライヤーは、一般的に高感度でありながらヘッドオ
ン型のフォトマルチプライヤーより安価であり、走査型
の共焦点レーザー顕微鏡によく用いられる。しかしなが
ら、サイドオン型のフォトマルチプライヤーは軸方向の
感度分布に大きな差は見られないが、軸方向と垂直な方
向には感度に大きな差があり、この点がヘッドオン型の
フォトマルチプライヤーより劣る点である。なお参考と
して、図3にサイドオン型のフォトマルチプライヤーの
感度分布のデータを示す。
【0034】本実施の形態では、サイドオン型フォトマ
ルチプライヤーの軸心方向が、プリズム11aによりス
ペクトル分解される面とほぼ平行になるように構成して
いるので、サイドオン型のフォトマルチプライヤーの感
度分布がほとんど問題にならない。
【0035】以上、標本9が四重染色標本である場合に
各蛍光を各検出光路に導く方法について示したが、標本
9が単染色であっても何ら問題なく対応できる。また、
標本9がFITCで単染色されている場合、他の蛍光と
のクロスオーバーは考慮しなくてもよいので、得られる
蛍光を全て一つの光検出器で導けばよい。
【0036】この場合、図2に示すように三角ミラー1
2a,12bの位置を調整してFITCを完全に取り込
めるように設定する。なお、図2において図1と同一な
部分には同一符号を付してある。また、図2において、
縮小光学系10以下の構成は図1と同様であるので図示
を省略する。
【0037】例えば、600nm以下の光を完全に取り
込めるようにすれば、完全にFITCの蛍光を取り込め
るので、三角ミラー12a,12bの位置を600nm
以下の光を取り込めるように設定する。また、スリット
13bは488nmの励起光をカットし、600nm以
下の光を取り込めるように設定すればよい。また、二重
染色、三重染色の場合も同様に簡単に対応できる。
【0038】なお第1の実施の形態では、スペクトル分
解手段として光学的に同一な一対のプリズム11a,1
1bを使用しているが、光学的に同一な一対の回折格
子、あるいはホログラムを使用してもよい。また、スペ
クトル分解された光束が平行光束として出射すればよい
ので、プリズムと回折光子のように異なる光学素子を組
合せてもよい。
【0039】上述した第1の実施の形態によれば、三角
ミラーにより蛍光を複数の波長域に分割できるので、蛍
光検出光路数を自由に設定できる。この例では4チャン
ネル構成として示したが、目的に応じて、2チャンネル
構成、3チャンネル構成、あるいは5チャンネル以上の
構成に簡単に実施できる。また、サイドオン型フォトマ
ルチプライヤーの軸心方向が、プリズム11aによりス
ペクトル分解される面とほぼ平行になるように構成して
いるので、感度分布がほとんど問題にならない。このよ
うに安価なサイドオン型フォトマルチプライヤーを使用
できるので、装置を安価に構成することができる。
【0040】(第2の実施の形態)図4及び図5は、本
発明の第2の実施の形態に係る走査型光学顕微鏡の構成
を示す図である。図4,図5において同一な部分には同
一符号を付してある。また、図4,図5において、縮小
光学系10以下の構成は図1と同様であるので図示を省
略する。
【0041】図1に示したレーザー光源1は、アルゴ
ン、クリプトン混合ガスレーザーの光源である。このレ
ーザー光源1から出射されたレーザー光は、第1の実施
の形態と同様に、ビームエクスパンダ2、波長選択フィ
ルタ3、ビームスプリッタ4、X−Y走査光学系5、瞳
投影レンズ6、結像レンズ7、対物レンズ8を順次介し
て、標本9に導かれる。
【0042】レーザー光源1により、主に488nmの
アルゴン線、及び568nm、647nmのクリプトン
線が放射される。ビームエクスパンダ2はレーザー光の
光径が対物レンズ8の瞳径をほぼ満たすように設定され
ている。またビームスプリッタ4は、到達した光の20
%程度を反射し、80%程度を透過する。
【0043】波長選択フィルタ3は、488nm,56
8nm,647nmの波長を選択的に透過する。標本9
は、色素FITC,Texas Red,CY5で三重
染色されており、FITCはアルゴン線488nmで、
Texas Redはクリプトン線568nmで、CY
5はクリプトン線647nmで、それぞれ励起される。
【0044】上記励起によって、FITCはほぼ530
nmにピークをもつ蛍光を放出する。同様にTexas
Redは610nmに、CY5は670nmにピーク
をもつ蛍光を放出する。これらの蛍光は対物レンズ8、
結像レンズ7、瞳投影レンズ6、X−Y走査光学系5を
経て、ビームスプリッタ4を透過する。
【0045】ビームスプリッタ4を透過した光束20
は、光束を縮小する縮小光学系10を透過して縮小さ
れ、光束21が形成される。光束21はプリズム11を
透過してそのスペクトルが分解され、レンズ30に入射
する。レンズ30はその焦点位置がプリズム11への光
束の入射点11xに一致するように配置されている。し
たがって、レンズ30から射出するスペクトル分解され
た光束はスペクトル分解された面内においては平行光束
となって射出される。このスペクトル分解された光束は
ミラー31a,31b,31cにより各検出光路に分離
される。なおミラー31bと31cは入射光軸に対し4
5°方向に移動可能である。
【0046】ミラー31cの端面31cxは、ほぼ64
7nmの励起光が当たる位置に設定され、ミラー31b
の端面31bxは、ほぼ568nmの励起光が当たる位
置に設定される。このような構成により、FITCの蛍
光は光束33aとして、Texas Redの蛍光は光
束33bとして、CY5の蛍光は光束33cとして分離
される。なおミラー31a,31b,31cの位置はレ
ンズ30の焦点位置から少しずれているが、縮小光学系
10により光束系が縮小されているので、各検出光路へ
の分離を十分に精度良く行なうことができる。
【0047】各光束33a,33b,33cは、それぞ
れ幅が可変であり光軸に垂直な方向に移動可能なスリッ
ト13a,13b,13cにより、標本からの励起光の
戻り光と、蛍光波長の部分的な重なり部分(蛍光のクロ
スオーバー部分)が制限される。スリット13a,13
b,13cは、レンズ30の焦点位置に置かれている。
したがって、スペクトル分解された各光束はスリット位
置でスポットを結ぶので、スリットにより極めて高精度
に波長域を制限することができる。なおスリット13
a,13b,13cとミラー31a,31b,31cの
位置は、それらの中間的な位置にレンズ30の焦点位置
がくるように設定してもよい。
【0048】スリットを通過した各蛍光光束はそれぞれ
レンズ34a,34b,34c及びプリズム35a,3
5b,35cを透過する。レンズ34a,34b,34
c及びプリズム35a,35b,35cは、それぞれレ
ンズ30、プリズム11と同一のものである。これによ
り、スペクトル分解された光束は各光路で合成され、そ
れぞれ光束40a,40b,40cとなって共焦点レン
ズ14a,14b,14cに入射し、その焦点位置に配
置された共焦点絞り15a,15b,15cを通過し、
紙面に対して垂直に軸がなすように配置されたフォトマ
ルチプライヤー16a,16b,16cで検出される。
【0049】光束40a,40b,40cはスペクトル
が完全に合成されているので、第1の実施の形態とは異
なり、共焦点絞り15a,15b,15cを通過した後
にスペクトル分解された方向へ広がることはない。した
がって、フォトマルチプライヤー16a,16b,16
cを紙面に対して垂直に軸がなすように配置しても何ら
問題はない。
【0050】ここで、共焦点絞りはそれぞれ下式で計算
された絞り径に設定されている。φ=1.22λ/NA
ここで、NAは共焦点レンズ14a,14b,14cを
出射する出射NAであり、λは蛍光波長である。
【0051】したがって、FITC,Texas Re
d,CY5の各蛍光に対して、蛍光を損失することな
く、最高の共焦点効果を得ることができる。なお、この
例では3チャンネル構成で示したが、3チャンネルに限
らず目的に応じてチャンネル数を設定できる。
【0052】以上、標本9が三重染色標本である場合に
各蛍光を各検出光路に導く方法について示したが、標本
9が単染色であっても何ら問題なく対応できる。標本9
がFITCで単染色されている場合、他の蛍光とのクロ
スオーバーは考慮しなくてもよいので、得られる蛍光を
全て一つの光検出器に導けばよい。
【0053】この場合、図5に示すようにミラー31c
の位置を調整してFITCを完全に取り込めるように設
定する。例えば600nm以下の光を完全に取り込める
ようにすれば、完全にFITCの蛍光を取り込めるの
で、ミラー31cの位置を600nm以下の光を取り込
めるように設定する。また、スリット13cは488n
mの励起光をカットし、600nm以下の光を取り込め
るように設定すればよい。また、二重染色、三重染色の
場合も同様に簡単に対応できる。
【0054】なお第2の実施の形態では、スペクトル分
解手段としてプリズムを使用しているが、回折格子、あ
るいはホログラムを使用してもよい。上述した第2の実
施の形態によれば、スペクトル分解された光束を結像レ
ンズ30によりスポットとして形成しているので、この
位置に置かれたスリットにより、極めて精度良く蛍光の
波長域を制限することができる。また、光束21のプリ
ズム11への入射位置11xにレンズ30の焦点が一致
するように構成しているので、レンズ30を出射するス
ペクトル分解された光束はスペクトル分離された面内に
おいては平行になる。したがって、レンズ30、プリズ
ム11と同一のものをレンズ34a,34b,34c、
プリズム35a,35b,35cとして使用できるの
で、装置を簡易にかつ安価に構成できる。本発明は上記
各実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲
で適時変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る走査型光学顕
微鏡の構成を示す図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る走査型光学顕
微鏡の構成を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るサイドオン型
のフォトマルチプライヤーの感度分布のデータを示す
図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る走査型光学顕
微鏡の構成を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る走査型光学顕
微鏡の構成を示す図。
【図6】従来例に係る共焦点走査型レーザー顕微鏡の構
成を示す図。
【図7】従来例に係る共焦点走査型レーザー顕微鏡の構
成を示す図。
【図8】従来例に係る分光器の構成を示す図。
【符号の説明】
【0056】 1 レーザー光源 2 ビームエクスパンダ 3 波長選択フィルタ 4 ビームスプリッタ 5 X−Y走査光学系 6 瞳投影レンズ 7 結像レンズ 8 対物レンズ 9 標本 10 縮小光学系 11,11a,11b プリズム 12a,12b,12c 三角ミラー 13a,13b,13c,13d スリット 14a,14b,14c,14d 共焦点レンズ 15a,15b,15c,15d 共焦点絞り 16a,16b,16c,16d 光検出器 20 レーザー光源 21 光束 30 レンズ 31a,31b,31c ミラー 33a,33b,33c 光束 34a,34b,34c レンズ 35a,35b,35c プリズム 40a,40b,40c 光束
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 19/00 - 21/00 G02B 21/06 - 21/36 G01N 21/64 G01N 21/78 G01N 33/84

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レーザー光源からのレーザー光で標本を走
    査する走査型光学顕微鏡において、 前記標本からの蛍光を前記レーザ光源と前記標本を結ぶ
    光路から分岐させるビームスプリッタと、 前記ビームスプリッタで分岐された光路上に配置され蛍
    光を 分光するスペクトル分解手段と、 前記スペクトル分解手段で分光された蛍光を複数の波長
    域に分割する波長域分割手段と、 前記複数の波長域に分割された各光路にそれぞれ設けら
    れ、前記標本からの蛍光を検出する複数のサイドオン型
    フォトマルチプライヤと、を具備し、 前記サイドオン型フォトマルチプライヤの軸心方向
    前記スペクトル分解手段によりスペクトル分解される面
    にほぼ平行であることを特徴とする走査型光学顕微鏡。
  2. 【請求項2】前記複数の波長域に分割された各光路にお
    ける前記サイドオン型フォトマルチプライヤの手前に、
    前記標本からの蛍光を結像する結像光学系と、前記結像
    光学系の焦点位置に配置された共焦点絞りとをそれぞれ
    設けたことを特徴とする請求項1に記載の走査型光学顕
    微鏡。
  3. 【請求項3】前記スペクトル分解手段は、スペクトル分
    解された光束を平行に出射する光学手段を有することを
    特徴とする請求項2に記載の走査型光学顕微鏡。
  4. 【請求項4】前記標本からの蛍光を分離するためのビー
    ムスプリッタと前記スペクトル分解手段との間に、光束
    を縮小する縮小光学系を設けたことを特徴とする請求項
    1に記載の走査型光学顕微鏡。
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