JP3526047B2 - Li2 O−Al2 O3 −SiO2 系透明結晶化ガラス - Google Patents

Li2 O−Al2 O3 −SiO2 系透明結晶化ガラス

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は石油、石炭、ガス、
木材等の燃焼装置、すなわち暖房器具や加熱炉、徐冷炉
等の前面窓或いは覗き窓に用いる透明結晶化ガラスに関
するものである。
【0002】
【従来の技術】暖房器具等における前面窓の機能は、内
部の炎から発する熱線を外部へ透過させて暖房効果をあ
げると共に炎が目に見えるようにすることによって視覚
的な暖かさを増すことである。また、覗き窓の機能は外
部から炎の燃焼状態を観察するのを可能にすることであ
り、これらの窓は炎の発する高温や着火時の熱衝撃に耐
えねばならない。従って、燃焼装置の窓に使用する材料
は透明であると同時に低熱膨張、高強度で耐熱性、耐熱
衝撃性に優れていることが必要である。
【0003】現在、暖房器具等の窓に使われている材料
としてはホウケイ酸ガラス、石英ガラスおよびLi2
−Al23 −SiO2 系透明結晶化ガラスがあるが、
ホウケイ酸ガラスは耐熱性、耐熱衝撃性が十分とは言え
ず、石英ガラスは熱的性質は優れているが高価である。
これに対してLi2 O−Al23 −SiO2 系透明結
晶化ガラスは熱膨張係数が小さく強度が高いため、耐熱
性および耐熱衝撃性に優れており、また比較的安価に製
造することが可能であるため広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Li2
O−Al23 −SiO2 系透明結晶化ガラスは、燃焼
雰囲気に置かれると窓の内表面、すなわち燃焼側の表面
に化学的腐食を受けて微細なクラックが発生し、透明性
や強度が著しく低下するという問題がある。
【0005】上記の問題が生じる原因は以下の通りであ
る。石油、石炭、ガス、木材等の燃焼装置の燃焼雰囲気
には、燃料中の硫黄分から生じたSOxが存在し、燃焼
によって生じたH2 Oと反応してH2 SO4 を生成す
る。このH2 SO4 から生じるH+ がLi2 O−Al2
3 −SiO2 系透明結晶化ガラスの結晶中のLi+
イオン交換反応を起こし、結晶の体積を収縮させ、クラ
ックを発生させる。
【0006】上記の問題を防止するために、Li2 O−
Al23 −SiO2 系透明結晶化ガラスの表面にSi
2 等の被膜を設ける方法が実施されているが、製造コ
ストが高くなるため好ましくない。また、Li2 O−A
23 −SiO2 系透明結晶化ガラス中のLi+ の含
有量を低くして、H+ とのイオン交換反応を起こりにく
くすることも可能であるが、透明性が悪化したり熱膨張
係数が大きくなるという問題が生じる。
【0007】本発明の目的は、石油、石炭、ガス、木材
等の燃料によって発生するH2 SO4 を含む雰囲気に長
時間曝されても、微細なクラックを生じないLi2 O−
Al23 −SiO2 系透明結晶化ガラスを提供するこ
とである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、種々の実
験を行った結果、結晶化ガラス表面のLi+ 濃度を内部
より低くすることで、H+ とのイオン交換反応による微
細クラックの発生を効果的に抑制できることを見いだ
し、本発明として提案するものである。
【0009】即ち、本発明のLi2O−Al23−Si
2系透明結晶化ガラスは、Na 2 Oを含有し、主結晶と
してβ−石英固溶体を析出してなるLi2O−Al23
−SiO2系透明結晶化ガラスにおいて、表面からの距
離が2000nmの位置におけるLi+濃度を1とした
ときに、表面からの距離が50nmの位置におけるLi
+濃度比が0.80以下となり、表面からの距離が20
00nmの位置におけるNa + 濃度を1としたときに、
表面からの距離が50nmの位置におけるNa + 濃度比
が2.0以上となることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のLi2 O−Al23
SiO2 系透明結晶化ガラスは、図1に示すように、表
面からの距離が2000nmの位置におけるLi+ 濃度
を1としたときに、表面からの距離が50nmの位置で
のLi+ 濃度比(R)が0.80以下、好ましくは0.
70以下であることを特徴とする。表面のLi+ 濃度が
低いと主結晶であるβ−石英固溶体の結晶量が少なくな
り、その結果、結晶中に含まれるLi+ が少なくなる。
このため燃焼雰囲気中にH2 SO4 が含まれていても、
イオン交換が起こりにくくなり、微細クラックの発生を
抑制することができる。ところが、深さ50nmでのL
+ 濃度比が0.80を越えると上記効果が極めて小さ
くなって微細クラックの発生を防止できない。
【0011】また上記した通り、表面近傍のLi+ 濃度
が低いほど微細クラックの抑制効果が大きくなるが、さ
らにこのLi+ 濃度の低い部分が厚いほどより効果的で
ある。具体的には表面からの距離が2000nmの位置
におけるLi+ 濃度を1としたときに、Li+ 濃度比が
0.95となる位置と表面との距離(D)が70nm以
上、好ましくは100nm以上であることが好ましい。
この距離が大きいほど、表面のLi+ 量が少なくなって
β−石英固溶体の結晶量が少なくなり、微細クラックが
発生し難くなる。なおこの距離が70nmよりも短けれ
ば、微細クラックの抑制効果が不十分になりやすい。
【0012】本発明の結晶化ガラスは、Li2 O、Si
2 およびAl23 以外にも、種々の成分を含有しう
る。例えば溶融を助けるとともに、熱膨張係数をコント
ロールする成分としてNa2 O、K2 O、MgO、Zn
O、BaO等を、核形成剤としてTiO2 、ZrO2
を、核形成を促進する成分としてP25 等を、清澄剤
としてAs23 、Sb23 、SnO2 、Cl、SO
3 等を含みうる。具体的には重量百分率でSiO2
5〜75%、Al23 15〜30%、Li2 O 2
〜4.8%、Na2 O 0〜1%、K2 O 0〜1%、
MgO 0〜5%、ZnO 0〜2%、BaO 0〜
3.5%、TiO2 0.1〜5%、ZrO2 0〜4
%、P25 0〜5%、As23 0〜2.5%、
Sb230〜2.5%、SnO2 0〜2.5%を有
するものが好適である。なおNa2 OやK2 Oを含有し
ている場合、表面からの距離が2000nmの位置にお
けるNa+ 濃度及びK+ 濃度をそれぞれ1とすると、表
面からの距離が50nmの位置におけるNa+ 濃度比が
2.0以上、好ましくは2.2以上、及び表面からの距
離が50nmの位置におけるK+ 濃度比が1.5以上、
好ましくは2.0以上とすることが好ましい。つまり、
Na+ 濃度やK+ 濃度を上記割合より高くなるようにす
ると表面のLi+ 濃度が低くなり、表面の結晶量が少な
くなるため、微細クラックの発生を抑制し易くなる。
【0013】本発明において、Li+ 濃度、Na+
度、及びK+ 濃度を所望の濃度分布にするには、結晶化
条件を調整する方法、結晶化前の原ガラスにイオン交換
を行う方法等、種々の方法で行うことができる。なお何
れの方法においても、ガラス組成によって最適条件が異
なるため、組成毎に適当な処理条件を設定することが重
要である。
【0014】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0015】表1は、本発明の実施例(試料No.1〜
3)及び比較例(試料No.4)を示している。
【0016】
【表1】
【0017】各試料は次のようにして調製した。先ず、
重量%でSiO2 65.5%、Al23 22.1
%、Li2 O 4.2%、Na2 O 0.5%、K2
0.3%、MgO 0.5%、TiO2 1.9%、
ZrO2 2.3%、P25 1.4%、As23
1.3%の組成となるようにLi2 O−Al23
SiO2 系ガラスを溶融、成型した。次いで、表に示す
条件で電気炉にて焼成して結晶化させ、試料を得た。な
お焼成は、図2に示すスケジュールで行い、一次温度で
2時間、二次温度で1時間保持した。またLi+ 、Na
+ 、K+ の濃度比(50nmにおける濃度/2000n
mにおける濃度)、及び表面部の厚み(Li+ 濃度比が
0.95となる位置の表面からの距離)は、SIMS
(二次イオン質量分析)によって測定した各成分の濃度
分布から求めた。析出結晶の同定はX線回折によって行
った。なお表中の「β−Q.」は、β−石英固溶体を示
している。
【0018】表に示すように、何れの試料も主結晶はβ
−石英固溶体であった。またNo.1〜3の試料は、L
+ 濃度比が0.28〜0.65、Na+ 濃度比が3.
05〜4.80、K+ 濃度比が3.80〜5.50、L
+ 濃度比が0.95となる位置の表面からの距離が2
50〜350nmであった。一方、試料No.4は、L
+ 濃度比が0.85、Na+ 濃度比が1.02、K+
濃度比が1.00、Li+ 濃度比が0.95となる位置
の表面からの距離が60nmであった。
【0019】次に各試料について、耐微細クラック性を
評価した。耐微細クラック性は加速試験と燃焼装置への
実装試験の二種類の方法によって行った。
【0020】加速試験は次のようにして行った。まず容
積1リットルのビーカーに濃度6vol%の硫酸水溶液
20ミリリットルを入れた。続いてビーカー内に網を設
置し、その上に試料を載せて硫酸の蒸気に曝されるよう
にした後、ガラス板で軽く蓋をした。続いて320℃で
30分間加熱した後、試料を取り出し、顕微鏡で表面を
観察した。表中、クラックが認められなかったものには
「無し」、認められたものには「有り」の表示を行っ
た。
【0021】実装試験は、硫黄を含んだ軽油を燃料とす
るストーブの前面に試料結晶化ガラスを取り付け、通常
の条件で燃焼を続けながら、目視で微小クラックが観測
されるようになるまでの経過日数によって評価を行っ
た。
【0022】その結果、本発明の実施例であるNo.1
〜3の各試料は、加速試験でクラックが発生したものは
なく、また実装試験でも50日以上に亘って微小クラッ
クの発生が認められず、耐微細クラック性が良好であっ
た。
【0023】一方、比較例であるNo.4の試料は、加
速試験、実装試験の双方において、実施例の各試料より
もはるかに劣っており、耐微細クラック性が悪いことが
わかった。
【0024】これらの事実は、本発明による結晶化ガラ
スが優れた耐微細クラック性を有することを示してい
る。
【0025】
【発明の効果】上述のように、本発明のLi2 O−Al
23 −SiO2 系透明結晶化ガラスは、石油、石炭、
ガス、木材等の燃料によって発生するH2 SO4 を含む
雰囲気に長時間曝されても微細なクラックを生じない。
それゆえ、暖房器具や加熱炉、徐冷炉等の燃焼装置の前
面窓や覗き窓の材料として極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のLi2 O−Al23 −SiO2 系透
明結晶化ガラスのLi+ の濃度分布を模式的に示すグラ
フである。
【図2】焼成スケジュールを示すグラフである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Na 2 Oを含有し、主結晶としてβ−石
    英固溶体を析出してなるLi2O−Al23−SiO2
    透明結晶化ガラスにおいて、表面からの距離が2000
    nmの位置におけるLi+濃度を1としたときに、表面
    からの距離が50nmの位置におけるLi+濃度比が
    0.80以下となり、表面からの距離が2000nmの
    位置におけるNa + 濃度を1としたときに、表面からの
    距離が50nmの位置におけるNa + 濃度比が2.0以
    となることを特徴とするLi2O−Al23−SiO2
    系透明結晶化ガラス。
  2. 【請求項2】 Li+濃度比が0.95となる位置と表
    面との距離が70nm以上であることを特徴とする請求
    項1のLi2O−Al23−SiO2系透明結晶化ガラ
    ス。
  3. 【請求項3】 2Oを含有してなる請求項1のLi2
    −Al23−SiO2系透明結晶化ガラスにおいて、表
    面からの距離が2000nmの位置における +濃度を
    1としたときに、表面からの距離が50nmの位置にお
    ける +濃度比が1.5以上であることを特徴とするL
    2O−Al23−SiO2系透明結晶化ガラス。
  4. 【請求項4】 燃焼装置の窓用として使用されることを
    特徴とする請求項1〜3のLi 2 O−Al 2 3 −SiO 2
    系透明結晶化ガラス。
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