JP3525225B2 - エペリゾンまたはトルペリゾン経皮吸収テープ剤またはパッチ剤、およびその製造方法 - Google Patents

エペリゾンまたはトルペリゾン経皮吸収テープ剤またはパッチ剤、およびその製造方法

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JP3525225B2 JP23818193A JP23818193A JP3525225B2 JP 3525225 B2 JP3525225 B2 JP 3525225B2 JP 23818193 A JP23818193 A JP 23818193A JP 23818193 A JP23818193 A JP 23818193A JP 3525225 B2 JP3525225 B2 JP 3525225B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エペリゾン、トルペリ
ゾン、またはこれらの塩を経皮投与するためのテープ剤
またはパッチ剤に関し、より詳細には、薬物の保存安定
性に優れた経皮吸収テープ剤またはパッチ剤、およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】エペリゾン、トルペリゾン、またはこれ
らの塩は、痙性麻痺に基づく諸症状の改善剤、または、
頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、腰痛症などの疾患による
筋緊張状態の改善剤として施用されている。
【0003】通常、エペリゾン、トルペリゾン、または
これらの塩は経口的に投与されている。しかし、一般に
薬物を経口投与すると、腸で吸収された薬物が肝臓で代
謝されるため、かなりの量の薬物が、患部で薬効を発現
する前に肝臓で分解される。さらに、薬物が短時間に吸
収されるために副作用を生じやすい。
【0004】これに対して、経皮吸収製剤を用いて、薬
物を皮膚を介して循環系に吸収させることが行われてい
る。一般に、経皮投与法にはつぎのような利点がある。
すなわち、経皮投与では、吸収された薬物が肝臓での代
謝によって分解されることなく、患部に到達する。ま
た、経皮投与では、経口投与に見られるような胃腸障害
が生じにくい。さらに、経皮投与により薬物の放出量を
調整すれば、たとえば、薬物が短時間に大量に吸収され
ることに起因する副作用を軽減することが可能である。
また、経皮投与では長時間にわたり一定の薬物放出速度
を維持することができ、薬物の投与回数を減らすことが
できる。
【0005】エペリゾン、トルペリゾン、またはこれら
の塩が経皮吸収される薬物であること自体は公知であ
る。この薬物を含む経皮吸収製剤としては、特開昭64
−52716号公報に、基剤中に経皮吸収促進剤とし
て、炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドおよび/
または炭素数12〜18の脂肪酸アルコールの乳酸エス
テルを含ませることにより、当該薬物の経皮吸収性を顕
著に向上させた経皮吸収製剤が記載されている。また、
特開平3−199363号公報に、基剤中に水膨潤性の
架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)を含ませ
ることにより、当該薬物を効果的に経皮吸収せしめ得る
経皮吸収製剤が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】エペリゾン、トルペリ
ゾン、またはこれらの塩は経皮吸収製剤中の水分によっ
て加水分解されやすい物質である。そのため、特開昭6
4−52716号の経皮吸収製剤では、苛酷な保存条件
下では薬物が分解を来たし、製剤の品質を損ねる恐れが
ある。
【0007】また、特開平3−199363号の経皮吸
収製剤は、クロスポビドンを含有するため良好な薬物経
皮吸収性を示すが、他方で水分を保持しやすくなり、通
常の製法で得られたものは高い水分含有率を有する。そ
の結果、製剤保存中に薬物が水分により加水分解し、製
剤の品質を損ねる恐れがある。
【0008】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、エペリゾン、トルペリ
ゾン、またはこれらの塩が水分によって加水分解しない
ように対処した、保存安定性に優れた経皮吸収製剤およ
びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による経皮吸収製
剤は、上記目的を達成すべく工夫されたものであり、エ
ペリゾン、トルペリゾン、またはこれらの塩とクロスポ
ビドンとを含有する基剤中の水分含有率が0.2重量%
以下になされていることを特徴とするエペリゾンまたは
トルペリゾン経皮吸収テープ剤またはパッチ剤である。
【0010】本発明による経皮吸収製剤の製造方法は、
エペリゾン、トルペリゾン、またはこれらの塩とクロス
ポビドンとが含有された基剤成分を支持体または剥離紙
上に塗工する塗工工程と、上記塗工された基剤成分中の
非水系溶媒を除去するための乾燥工程と、上記乾燥され
た基剤中の水分含有率を0.2重量%以下とするための
減湿工程とを含むことを特徴とするエペリゾンまたはト
ルペリゾン経皮吸収テープ剤またはパッチ剤の製造方法
である。本発明による経皮吸収テープ剤またはパッチ
は、必要に応じて経皮吸収促進剤を含んでいてもよい。
【0011】本発明による経皮吸収テープ剤またはパッ
チ剤の基剤は、テープ剤では粘着性基剤、パッチ剤では
非粘着性基剤である
【0012】本明細書全体を通して、基剤中に含まれる
エペリゾン、トルペリゾン、またはこれらの塩、クロス
ポビドン、経皮吸収促進剤の各含有量は、テープ剤では
製剤から支持体や剥離紙を除いた部分すなわち薬物含有
粘着剤層(膏体層)の部分に対する含有量に相当し、パ
ッチ剤ではリザーバー層に含ませる基剤に対する含有量
に相当する。以下、本発明による経皮吸収テープ剤また
はパッチ剤の各構成成分および製造法について詳しく説
明する。
【0013】a) 本発明の経皮吸収テープ剤またはパ
ッチ剤に用いられる薬物は、エペリゾン、トルペリゾ
ン、またはこれらの塩である。これらは、痙性麻痺に基
づく諸症状の改善剤、または、頸肩腕症候群、肩関節周
囲炎、腰痛症などの疾患による筋緊張状態の改善剤とし
て施用されている。
【0014】エペリゾン、トルペリゾンの塩としては、
塩酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩などが例示され
る。
【0015】エペリゾン、トルペリゾン、またはこれら
の塩は、後述の基剤中に溶解させるか、あるいは基剤中
に飽和溶解度以上の割合で配合されて微結晶状態で基剤
中に分散させる。
【0016】エペリゾン、トルペリゾン、またはこれら
の塩の含有量は、好ましくは0.05〜30重量%の割
合であり、より好ましくは0.1〜20重量%の割合で
ある。エペリゾン、トルペリゾン、またはこれらの塩の
含有量が、0.05重量%未満であると、薬物の投与単
位面積当たりの経皮吸収効果が充分でなく、経皮吸収製
剤の実用的な投与面積(150cm以下)で薬効を発
現し得るに充分な血中濃度を得ることができないことが
ある。また、この含有量が30重量%を超えると、製剤
の基剤割れなどが生じやすく、製剤の貼付性が低下する
ことがある。
【0017】b) 本発明の経皮吸収テープ剤またはパ
ッチ剤は、薬物の経皮透過性を向上させる目的で、必要
に応じて、適当な吸収促進剤を含有してもよい。吸収促
進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸
ジエチル、ソルビタンモノラウレート、グリセリンモノ
オレート、オレイルリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナ
トリウム、オクチルフェニルエーテル、ポリエチレング
リコール付加オクチルフェニルエーテル、ラウリルエー
テル、ポリエチレングリコール付加ラウリルエーテル、
ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコール付加
ソルビタンモノオレート、ラウロイルジエタノールアミ
ド、ラウロイルサルコシン、オレオイルサルコシンシュ
ガーエステル、レシチン、グリチルレチン、尿素、サリ
チル酸、チオグリコール酸カルシウム、乳酸、乳酸エス
テル、オリーブ油、スクワレン、ラノリン、流動パラフ
ィン、グリセリンなどが用いられる。
【0018】特に好ましい吸収促進剤は、炭素数12〜
18の脂肪族アルコールと乳酸とのエステルである。こ
のような乳酸エステルとしては、乳酸ミリスチル、乳酸
ラウリル、乳酸セチルなどがある。
【0019】吸収促進剤の含有量は10重量%以下であ
り、好ましくは0.1〜10重量%である。吸収促進剤
の含有量が10重量%を越えると、得られる製剤の皮膚
刺激性が大きくなり、これを皮膚に投与した場合に、発
赤やかゆみが生じる。
【0020】c) 基剤中に含ませられるクロスポビド
ンは、米国Pharmacopeia NF XVII (公定書)にも記載
されているように、N−ビニル−2−ピロリドンの架橋
ホモポリマーであり、11.0〜12.8重量%(無水
状態で)の範囲で窒素原子を含む物質である。
【0021】市販されているクロスポビドンの好適な例
としては、BASF社製のコリドンCL(登録商標)、
コリドンCL−M(登録商標)、GAF社製のポリプラ
スドンXL(登録商標)、ポリプラスドンINF−10
(登録商標)などがある。これらの化合物の製造方法
は、米国特許第3759880号、第3933766
号、第3689439号、第4139688号および4
180633号に記載されている。
【0022】クロスポビドンは、水に対して適度の膨潤
性を示す。そのため、クロスポビドンを含有する製剤を
皮膚に投与した場合、これが汗などの水分を吸収して、
膨潤し、薬物の放出性を向上させる。クロスポビドンの
含有量は、好ましくは0.5〜20重量%の範囲であ
る。クロスポビドンの含有量が0.5重量%未満である
と、薬物放出に対する十分な促進効果が得られない。ク
ロスポビドンの含有量が20重量%を越えると、製剤の
粘着性が低下する。
【0023】d) 本発明の経皮吸収テープ剤またはパ
ッチ剤では、薬物安定性を高めるために、基剤中の水分
含有率は0.2重量%以下に抑えられる。たとえば、本
発明の製剤のうちテープ剤においては、基剤中の水分含
有率は通常0.3〜0.7%であり、この製剤を60℃
で13日間保存したときの薬物の分解物量は、多いもの
では約0.9%に達する。これに対して、基剤中の水分
含有率0.2%以下の製剤では、上記と同じ条件で薬物
の分解物量は多いものでも約0.4%であり、通常の製
剤の約半分以下である。
【0024】本発明の経皮吸収テープ剤またはパッチ
中の水分含有率を0.2重量%以下に調整するには、下
記の方法が採用可能である。
【0025】 エペリゾン、トルペリゾン、またはこ
れらの塩とクロスポビドンとを含有する基剤を通常の方
法で調製し、この薬物含有基剤を支持体または剥離紙上
に塗工し乾燥して非水系溶媒を除去したものをシリカゲ
ル、アルミナ、燐化合物など公知の乾燥剤と共にアルミ
ニウム袋などの防湿袋ないし箱などに納めて保存する方
法。
【0026】 エペリゾン、トルペリゾン、またはこ
れらの塩とクロスポビドンとを含有する基剤を通常の方
法で調製し、この薬物含有基剤を支持体または剥離紙上
に塗工し乾燥して非水系溶媒を除去したものをシリカゲ
ル、アルミナ、燐化合物など公知の乾燥剤で密封容器内
で減湿し、得られた減湿製剤をアルミニウム袋などの防
湿袋ないし箱などに納めて保存する方法。
【0027】 ペリゾン、トルペリゾン、またはこ
れらの塩とクロスポビドンとを含有する基剤を通常の方
法で調製し、この薬物含有基剤を支持体または剥離紙上
に塗工し乾燥して非水系溶媒を除去したものを減湿環境
下、常圧で40〜60℃という緩和な加温下、または常
温で減圧下において水分含有率を0.2重量%以下とし
た後、得られた減湿製剤をアルミニウム袋などの防湿包
材中に包装する方法。
【0028】 ペリゾン、トルペリゾン、またはこ
れらの塩とクロスポビドンとを含有する粘着剤層を支持
体の片面に形成する工程において、該製剤中の水分含有
率が0.2重量%以下となるように充分な温度と時間を
かけて該粘着剤層を乾燥し、吸湿を避けるためにこれを
すばやく製剤化してアルミニウム袋などの防湿包材中に
包装するか、除湿された環境下においてアルミニウム袋
などの防湿包材中に包装する方法。
【0029】なお、およびの方法では、製剤製造時
にせっかく水分含有率を0.2重量%以下に調湿して
も、その後の加工ないしは包装工程で吸湿が起こりやす
く、品質にばらつきが生じる恐れがあるので、こうした
点に対処する方策を講じることが望ましい。
【0030】e) 本発明による経皮吸収製剤の剤型
は、テープ剤とパッチ剤である。
【0031】テープ剤は、薬物とクロスポビドンとを含
有する粘着性基剤層が、それぞれ支持体の片面に設けら
れたものである。
【0032】パッチ剤は、支持体の片面に非粘着性のリ
ザーバー層および粘着剤層が順次積層されて構成された
ものであり、リザーバー層は、薬物とクロスポビドンと
が、非粘着性基剤に保持させられたものである。このリ
ザーバー層が粘着剤層を介して皮膚に貼付され、リザー
バー層中の薬物が粘着剤層を通って経皮吸収される。た
だし、前記リザーバー層中の薬物やクロスポビドンなど
は、粘着剤層にも含ませてもよい。
【0033】f) 本発明による経皮吸収テープ剤およ
びパッチ剤について、さらに構成を詳述する。
【0034】f-1) テープ剤の粘着性基剤およびパッチ
剤の粘着剤層の粘着剤は、上記薬物との相溶性に優れ、
かつ該製剤を常温で皮膚表面に長時間固定しうる粘着力
を有するものであれば特に限定されない。好ましい粘着
剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコ
ーン系粘着剤などが例示される。
【0035】アクリル系粘着剤としては、特に、アルキ
ル基の炭素数4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエ
ステルの単独重合体または共重合体、あるいは上記(メ
タ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノ
マーとの共重合体が好適に用いられる。
【0036】上記(メタ)アクリル酸エステルとして
は、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリ
ル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−
エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸
デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、
アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブ
チル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル
酸イソオクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イ
ソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステア
リルなどが例示される。
【0037】上記官能性モノマーの例としては、水酸基
を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、
アミド基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマ
ー、ピロリドン環を有するモノマーなどが挙げられる。
水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチ
ル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)
アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリ
レートなどが例示される。カルボキシル基を有するモノ
マーとしては、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β
−不飽和カルボン酸:マレイン酸ブチルなどのマレイン
酸モノアルキルエステル:マレイン酸:フマル酸:クロ
トン酸などが例示される。無水マレイン酸もマレイン酸
と同様の(共)重合成分を与える。アミド基を有するモ
ノマーとしては、アクリルアミド、ジメチルアクリルア
ミド、ジエチルアクリルアミドなどのアルキル(メタ)
アクリルアミド:N−ブトキシメチルアクリルアミド、
N−エトキシメチルアクリルアミドなどのN−アルコキ
シメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリル
アミドなどが例示される。アミノ基を有するモノマーと
しては、ジメチルアミノエチルアクリレートなどが例示
される。ピロリドン環を有するモノマーとしてはN−ビ
ニル−2−ピロリドンなどが例示される。
【0038】上記以外の共重合性モノマーとしては、酢
酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、α−メチルス
チレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プ
ロピレン、ブタジエンなども使用できる。
【0039】(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共
重合体を製造するには、全共重合モノマー成分中に(メ
タ)アクリル酸アルキルエステルが50重量%以上含有
されることが好ましい。
【0040】アクリル系粘着剤の製造用モノマー成分に
は、さらに必要に応じて多官能性モノマーが加えられ、
上記モノマー成分と共重合される。この多官能性モノマ
ーの添加により、生成する重合体間にごくわずかに架橋
が生じ、それにより粘着剤の内部凝集力が増大する。そ
のため貼付された皮膚の性状や発汗量にほとんど無関係
に貼付剤剥離時のいわゆる糊残り現象がほぼ解消せられ
る。しかも、この多官能性モノマーの添加は薬物の放出
性や低皮膚刺激性には何ら悪影響を与えない。このよう
な多官能性モノマーとしては、たとえば、ジ(メタ)ア
クリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メ
タ)アクリレートなどが例示されるが、これに限定され
ない。より具体的には、ヘキサメチレングリコールやオ
クタメチレングリコールなどのポリメチレングリコール
類と(メタ)アクリル酸とを結合させて得られるジ(メ
タ)アクリレート;ポリエチレングリコールやポリプロ
ピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類と
(メタ)アクリル酸とを結合させて得られるジ(メタ)
アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)ア
クリレートやグリセリントリ(メタ)アクリレートなど
のトリ(メタ)アクリレート;およびペンタエリスリト
ールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)
アクリレートが例示される。これら多官能性モノマーは
2種以上を組み合わせて用いてもよい。多官能性モノマ
ーは、粘着剤の製造に供される、多官能性モノマー以外
の全モノマー100重量部に対し、0.005〜0.5
重量部の割合で使用される。多官能性モノマーの使用量
が0.005重量部未満であると、架橋による内部凝集
力向上の効果が小さく、また0.5重量部を超えると重
合により得られる粘着剤がゲル化を起こし易く、薬物の
拡散・放出にも影響が現われる。
【0041】また、アクリル系粘着剤には、必要に応じ
てロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデ
ン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂などの
粘着性付与剤を添加してもよい。
【0042】アクリル系粘着剤を調製するには、通常、
重合開始剤の存在下に所要のモノマーの溶液重合を行
う。ただし、重合形態はこれに限定されない。また重合
反応条件は主としてモノマーの種類により適宜選定され
る。
【0043】ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、合成イ
ソプレンゴム、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテ
ル、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、
スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン
共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共
重合体などのゴム弾性体100重量部に、たとえばロジ
ン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹
脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂などの粘着
性付与剤を20〜200重量部、および必要に応じて、
液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレ
ン、液状ポリアクリレートなどの軟化剤:酸化チタンな
どの充填剤:ブチルヒドロキシトルエンなどの老化防止
剤などを適量添加してなるものが使用される。
【0044】シリコーン系粘着剤としては、ポリオルガ
ノシロキサンなどを主成分とするものが使用される。
【0045】上記各粘着剤中には、可塑剤;充填剤;老
化防止剤などの配合剤が必要に応じて添加される。
【0046】f-2) 剤の支持体としては、柔軟である
テープ剤またはパッチ剤に自己支持性を付与し、かつ
粘着性基剤層中やリザーバー層中の薬物の揮散や移行を
防止する役目を果たすものが使用される。支持体の素材
としては、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエ
チレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル
共重合体、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、
可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、
ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、エチレンビニル
アルコール、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、
エチレン・アクリル酸エチル共重合体、アルミニウムな
どが例示される。これら素材はたとえば単層のシートな
いしフィルムや2枚以上の積層体として用いられる。ア
ルミニウム以外の素材は織布や不織布として使用しても
よい。支持体としては、皮膚面に対して適度の追従性を
有する素材よりなるものが好適に用いられ、特にポリエ
チレンテレフタレートとエチレン−酢酸ビニル共重合体
とのラミネートフィルムなどが好ましい。支持体の厚み
は500μm以下、好ましくは5〜150μmである。
【0047】上記支持体の表面に粘着性基剤層が形成さ
れてテープ剤が構成せられる。また上記支持体の片面に
リザーバー層および粘着剤層が順次積層されてパッチ剤
が構成せられる。パッチ剤ではリザーバー層と粘着剤層
との間に適当な薬物放出制御膜が存在してもよい。
【0048】f-3) テープ剤の調製において、粘着性基
剤層を形成するには通常の粘着テープの製造方法が適用
できる。その代表例は溶剤塗工法であり、これ以外にも
ホットメルト塗工法、電子線硬化エマルジョン塗工法な
どが用いられる。粘着性基剤層を溶剤塗工法で形成する
には、たとえば、薬物とクロスポビドンと必要に応じて
加えられる吸収促進剤などの配合剤とを、適当な溶媒に
溶解ないし分散させ、得られた溶液ないし分散液を支持
体の表面に直接塗布・乾燥し、所要厚みの粘着性基剤層
を形成する。この基剤層を保護用の剥離紙に密着させ、
目的とするテープ剤を得る。また、この溶液ないし分散
液を保護用の剥離紙上に塗布し、乾燥後に得られた粘着
性基剤層を支持体に密着させてもよい。粘着性基剤層の
厚みは使用目的により異なるが、通常、30〜200μ
mの範囲である。この厚みが30μmを下回ると、テー
プ剤の所定の面積の基剤に所望量の薬物を含有させるこ
とができない上に、充分な粘着性が得られない。厚みが
200μmを越えると、支持体付近の薬物含有基剤層に
含有される薬物が、拡散して皮膚表面に到達することが
困難となり、基剤中の薬物が有効に利用されない。
【0049】このようにして得られた貼付剤が適度なO
DT(密封)効果を持ち、ムレによるカブレや剥がれを
生じないためには、製剤の水蒸気透過性は好ましくは5
〜500g/m/24時間(温度37°、相対湿度
90%)、より好ましくは30〜100g/m/2
4時間(温度37°、相対湿度90%)である。
【0050】f-4) テープ剤は、使用時までその粘着性
基剤層表面を保護するために通常はその貼付面に剥離紙
を備えている。パッチ剤は、やはり粘着剤層の保護のた
めに剥離紙を備えている。剥離紙としてはポリエチレン
テレフタレートのフィルムをシリコン処理してなるもの
がよく用いられるが、剥離紙はこれに限定されない。剥
離紙の厚みは100μm以下、好ましくは5〜50μm
である。
【0051】f-5) パッチ剤のリザーバー層をなす非粘
着性基剤としては従来公知の外用基剤が使用でき、たと
えば白色ワセリン、シリコンオイル、カルボキシビニル
ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコ
ール、流動パラフィンなどが例示される ) かくして得られた経皮吸収テープ剤およびパッチ
剤は、通常は薬物を経皮的に体内循環系へ投与する目的
で、皮膚表面に直接貼付または塗布される。
【0052】
【実施例】つぎに、本発明を具体的に説明するために、
本発明の一例を示す実施例およびこれとの比較を示す比
較例をいくつか挙げ、さらに得られた製剤の評価試験結
果を示す。
【0053】実施例1 1)粘着性基剤の調製 2−エチルヘキシルアクリレート75.5重量%と、N
−ビニル−2−ピロリドン24.5重量%と、前二者の
和100重量部に対しヘキサメチレングリコールジメタ
クリレート0.04重量部とをセパラブルフラスコに仕
込み、重合初期のモノマー濃度が85重量%となるよう
に酢酸エチルを加えた。この溶液を窒素雰囲気下で60
℃に加熱し、重合開始剤である過酸化ラウロイルおよび
酢酸エチルを逐次少量ずつ添加し、32時間重合反応を
行った。得られた重合物に酢酸エチルを加えて反応液を
希釈し、固形分濃度34重量%の基剤溶液を得た。
【0054】2)貼付用配合物含有塗工液の調製 得られた基剤溶液100重量部に、塩酸エペリゾン(エ
ーザイ化学社製)4重量部と、ポリプラスドンINF−
10( クロスポビドン、GAF社製)2重量部とを添加
し、これらをディゾルバー中で充分に攪拌し、塩酸エペ
リゾンの微結晶とポリプラスドンINF−10の微粒子
とが溶液中に均一に分散した塗工液を調製した。
【0055】3)テープ剤の調製 工程2)の塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレ
フタレートフィルムから成る剥離紙上に塗布し、60℃
のギアオーブン中で30分間乾燥させて、薬物含有粘着
性基剤層を形成した。
【0056】ついで、ポリエチレンテレフタレートとエ
チレン−酢酸ビニル共重合体積層フィルムから成る厚さ
30μmの支持体のポリエチレンテレフタレートを上記
基剤層に密着させた。
【0057】こうして、10重量%の塩酸エペリゾンと
5重量%のポリプラスドンINF−10とを含有する、
厚さ50μmの薬物含有基剤層を支持体の片面に有する
テープ剤を調製した。この薬物含有基剤層中では、塩酸
エペリゾンの微結晶とポリプラスドンINF−10の微
粒子とがよく分散していた。
【0058】4)テープ剤の減湿 このテープ剤を50cmの大きさ(7.1cm×7.1
cm、角部に半径5mmの丸みを有する正方形)に打ち抜い
た後、得られた試験片を乾燥剤(粒状シリカゲル約2
g)と共にアルミニウム包材で包装し、この包装品を室
温で24時間保存した。こうして、減湿テープ剤を得
た。
【0059】実施例2 1)粘着性基剤の調製 メタクリル酸2−エチルヘキシル78.3重量%と、ア
クリル酸2−エチルヘキシル9.1重量%と、メタクリ
ル酸ドデシル12.6重量%と、前三者の和100重量
部に対しヘキサメチレングリコールジメタクリレート
0.04重量部とをセパラブルフラスコに仕込み、重合
初期のモノマー濃度が85重量%となるように酢酸エチ
ルを加えた。この溶液を窒素雰囲気下で60℃に加熱
し、重合開始剤である過酸化ラウロイルおよび酢酸エチ
ルを逐次少量ずつ添加し、24時間重合反応を行った。
得られた重合物に酢酸エチルを加えて反応液を希釈し、
固形分濃度59.5重量%の基剤溶液を得た。
【0060】2)貼付用配合物含有塗工液の調製 得られた基剤溶液100重量部に、塩酸エペリゾン(エ
ーザイ化学社製)7重量部と、ポリプラスドンINF−
10の3.5重量部とを添加し、これらをディゾルバー
中で充分に攪拌し、塩酸エペリゾンの微結晶とポリプラ
スドンINF−10の微粒子とが溶液中に均一に分散し
た塗工液を調製した。
【0061】3)テープ剤の調製 工程2)の塗工液を用いて、実施例1の工程3)と同様
の操作によって、10重量%の塩酸エペリゾンと5重量
%のポリプラスドンINF−10とを含有する、厚さ5
0μmの薬物含有基剤層を支持体の片面に有するテープ
剤を調製した。この薬物含有基剤層中では、塩酸エペリ
ゾンの微結晶とポリプラスドンINF−10の微粒子と
がよく分散していた。
【0062】4)テープ剤の減湿 このテープ剤を実施例1の工程4)と同様の操作によっ
て減湿し、減湿テープ剤を得た。
【0063】実施例3 1)粘着基剤の調製 スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(日
本ゼオン社製、QTC3420)100重量部、ポリブ
テン(日本石油化学社製、HV−300F)33重量
部、脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学社製、アルコン
P−90)283重量部、流動パラフィン250重量部
およびブチルヒドロキシトルエン4重量部をシクロヘキ
サンに添加・混合して、固形分濃度59重量%の基剤溶
液を得た。
【0064】2)貼付用配合物含有液の調製 得られた基剤溶液100重量部に塩酸エペリゾン7重量
部およびポリプラスドンINF−10の3.5重量部を
添加し、これらをディゾルバー中で充分に攪拌し、塩酸
エペリゾンの微結晶とポリプラスドンINF−10の微
粒子とが溶液中に均一に分散した塗工液を調製した。
【0065】3)テープ剤の調製 工程2)の塗工液を用いて、実施例1の工程3)と同様
の操作によって、10重量%の塩酸エペリゾンと5重量
%のポリプラスドンINF−10とを含有する、厚さ5
0μmの薬物含有基剤層を支持体の片面に有するテープ
剤を調製した。この薬物含有基剤層中では、塩酸エペリ
ゾンの微結晶とポリプラスドンINF−10の微粒子と
がよく分散していた。
【0066】4)テープ剤の減湿 このテープ剤を実施例1の工程4)と同様の操作によっ
て減湿し、減湿テープ剤を得た。
【0067】実施例4 実施例1の工程1)〜3)と同じ操作で得られたテープ
剤を、50cmの大きさ(7.1cm×7.1cm、角部
に半径5mmの丸みを有する正方形)に打ち抜いた後、得
られた試験片を乾燥剤(粒状シリカゲル)の入っている
デシケーター中で21時間乾燥させた。ついでこのテー
プ剤を、乾燥剤の入っていないアルミニウム包材で包装
し、減湿テープ剤を得た。
【0068】実施例5 実施例1の工程2)において塩酸エペリゾンの代わりに
塩酸トルペリゾン(シグマ社製)を4重量部添加する点
を除いて、実施例1と同様の操作で減湿テープ剤を得
た。
【0069】比較例1 実施例1の工程4)において、製剤の試験片を乾燥剤の
入っていないアルミニウム包材で包装した点を除いて、
実施例1と同様の操作でテープ剤を得た。
【0070】比較例2 実施例2の工程4)において、製剤の試験片を乾燥剤の
入っていないアルミニウム包材で包装した点を除いて、
実施例2と同様の操作でテープ剤を得た。
【0071】比較例3 実施例3の工程4)において、製剤の試験片を乾燥剤の
入っていないアルミニウム包材で包装した点を除いて、
実施例3と同様の操作でテープ剤を得た。
【0072】比較例4 実施例5の工程4)において、製剤の試験片を乾燥剤の
入っていないアルミニウム包材で包装した点を除いて、
実施例5と同様の操作でテープ剤を得た。
【0073】性能試験 a) 実施例1〜5および比較例1〜4で得られた各テ
ープ剤中の水分含有率、薬物含有量および分解物の量を
それぞれ測定し、これを初期値とした。水分含有率はカ
ールフィッシャーの水分測定法で測定し、薬物含有量お
よび分解物の量は液体クロマトグラフ法でそれぞれ測定
した。薬物含有量の測定には、オクタデシルシリル化し
たシリカゲル(ODS−シリカゲル)を充填したカラム
とメタノール/水系の溶離液とを用い、分解物の測定に
は、シリカゲルを充填したカラムとノルマルヘキサン/
イソプロパノール系の溶離液とを用いた。これらの測定
結果を図1〜図5に示す。
【0074】また、実施例1〜5および比較例1〜4で
得られた各テープ剤を、アルミニウム包材に包装した状
態で、60℃の恒温槽で13日間保存した。保存後、製
剤中の水分含有量、薬物含有量および分解物の量を測定
した。これらの測定結果も図1〜図5に示す。
【0075】図1〜図5から明らかなように、実施例1
〜5の減湿テープ剤では保存後の分解物の割合が低いこ
とが認められる。すなわち、実施例1〜5の減湿テープ
剤では塩酸エペリゾンおよび塩酸トルペリゾンの分解が
抑制されていることが判る。
【0076】b) 実施例1〜3のテープ製剤につい
て、薬物の経皮吸収性をつぎの方法により評価した。す
なわち、電気バリカンあるいは電気シェーバーを用いて
脱毛処理した日本白色種家兎の背部に、実施例1〜3で
得られた減湿テープ製剤(50cm)を貼付し、家兎
の血漿中の薬物濃度の経時変化を測定した。また、比較
のために、経口投与の場合についても測定を行った。そ
の測定結果を図6に示す。
【0077】図6から明らかなように、実施例1〜4で
得られた減湿テープ製剤は、良好な経皮吸収性を示し、
経皮吸収製剤として有用なものであることが認められ
る。
【0078】
【発明の効果】本発明によれば、エペリゾン、トルペリ
ゾン、またはこれらの塩とクロスポビドンとを含有する
基剤中の水分含有率が0.2重量%以下になされている
ので、エペリゾン、トルペリゾン、またはこれらの塩が
水分によって加水分解することが効果的に抑制される。
その結果、保存安定性に優れたエペリゾンまたはトルペ
リゾン経皮吸収テープ剤およびパッチ剤を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1の減湿テープ剤につい
て、水分含有率および分解物の量を示すグラフである。
【図2】実施例2および比較例2の減湿テープ剤につい
て、水分含有率および分解物の量を示すグラフである。
【図3】実施例3および比較例3の減湿テープ剤につい
て、水分含有率および分解物の量を示すグラフである。
【図4】実施例4および比較例1の減湿テープ剤につい
て、水分含有率および分解物の量を示すグラフである。
【図5】実施例5および比較例4の減湿テープ剤につい
て、水分含有率および分解物の量を示すグラフである。
【図6】血漿中のエペリゾン濃度と時間の関係を示すグ
ラフである。
フロントページの続き (72)発明者 根釜 務 大阪府茨木市真砂1丁目8番1号 (72)発明者 吉田 光宏 埼玉県本庄市900番10号 (72)発明者 荒井 康史 埼玉県本庄市大字西富田493番2号 (72)発明者 野中 潤 埼玉県本庄市緑1丁目15番4号 (56)参考文献 特開 平4−217919(JP,A) 特開 昭63−130529(JP,A) 特開 平3−34923(JP,A) 特開 平2−237926(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エペリゾン、トルペリゾン、またはこれ
    らの塩とクロスポビドンとを含有する基剤中の水分含有
    率が0.2重量%以下になされていることを特徴とする
    エペリゾンまたはトルペリゾン経皮吸収テープ剤または
    パッチ剤。
  2. 【請求項2】 エペリゾン、トルペリゾン、またはこれ
    らの塩とクロスポビドンとが含有された基剤成分を支持
    体または剥離紙上に塗工する塗工工程と、 上記塗工された基剤成分中の非水系溶媒を除去するため
    の乾燥工程と、 上記乾燥された基剤中の水分含有率を0.2重量%以下
    とするための減湿工程とを含むことを特徴とするエペリ
    ゾンまたはトルペリゾン経皮吸収テープ剤またはパッチ
    剤の製造方法
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