JP3522107B2 - 半導体レーザ - Google Patents
半導体レーザInfo
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Description
光通信装置に利用される高出力な半導体レーザ、に関す
るものである。
達したとき、光出射端面で端面破壊(COD:Catastro
phic Optical Damage)が起きる。このため、半導体レ
ーザの光出力は一定の値(COD光出力)以下に制限さ
れる。CODが発生するのは、半導体内部の光密度が半
導体固有の値(COD光密度)に達したときである。
誘電体等の膜による光出射端面のコーティングである。
光出射端面にコーティングを施して端面反射率を下げる
と、半導体導波路内部の光密度が低下してCOD光出力
が向上する。HakkiとNashがジャーナル・オブ・アプラ
イド・フィジックス誌、第45巻、第9号、3907〜
3912頁、1974年で報告した端面反射率R1とC
OD光出力の関係式は、
ザのCOD光出力、 Puncoated:端面コーティングを施していないレーザの
COD光出力、 R1:出射端面反射率、 neff:半導体導波路の等価屈折率、 である。HakkiとNashの報告以来これまで、この関係式
が高出力半導体レーザの設計に用いられてきた。なお、
式1の 左辺、
増加させるには、反射率を減らす以外に方法がない。ま
た、反射率が無限小の極限ではCOD指標は最大値n
effに収束する。従って、COD指標をneff以上に増大
させることはできない。しかし、反射率R1を小さくす
ると発振しきい値キャリア密度が増加し、半導体レーザ
の発振特性が劣化する。たとえば、発振しきい値電流の
増大や温度特性の劣化等が起きる。
は、半導体レーザのコーティング膜の屈折率と半導体内
部の光密度の関係が示されている。この公開公報の図6
には、コーティング膜の屈折率がある値より大きな場合
に、反射率が増加し、かつ、半導体内部の光密度が低下
することが示されている。ここで、コーティング膜の膜
厚(d1 A)と屈折率(n1 A)とレーザ光波長(λ)は、
関係式、
射率は0.10、半導体内部光密度(|EA|2)は0.6
である。一方、屈折率が2.5のときも反射率は0.10
だが、半導体内部光密度(|EA|2)が0.2と小さ
い。このように、上記公報に開示される結果は明らかに
Hakkiらの結果と異なるものである。
電体膜で構成されたコーティング膜」の作用と実施例に
ついて記載されており、「発明が解決しようとする課
題」の末尾には、「端面膜を1層の誘電体膜で構成した
ファブリ・ペロ型のLDでは、LDの設計から要請され
るLD出射端面の反射率を得る為の条件と、COD破壊
を回避するために要請される半導体材料部分と端面膜と
の界面での光電場強度を極小にするための条件とを同時
に満足することは一般には実現できないという問題があ
った。」と記載されている。しかし、実施例の2層誘電
体膜で構成されたコーティング膜による光電場強度最小
値が1層誘電体膜による光電場強度最小値より小さいか
どうかは明らかにされていない。
4号公報では、1層(単層)からなるコーティング膜が
Hakkiらの関係式を上回るCOD指標を示す場合が有る
ことが示唆されている。しかし、コーティング膜厚と屈
折率の最適条件が明らかにされておらず、また、Hakki
らの報告との比較も明らかにされていない。
光出力に関する誘電体膜のコーティング条件についての
最適条件はいまだ明らかではなく、これにより、設計さ
れる半導体レーザを最適化することが困難であるという
問題点がある。
出力に関する誘電体膜のコーティング条件を明らかにす
ること、そのようなコーティング膜が半導体内部光密度
へ与える作用を明らかにすることにより出力特性が改善
された半導体レーザを実現することを目的とする。
ザは、半導体レーザ導波路の光出射端面に1層あるいは
複数の層からなるコーティング膜を備える半導体レーザ
において、前記コーティング膜を構成する層の少なくと
も1層の屈折率n 1 を前記半導体レーザ導波路の等価屈
折率n eff と前記光出射端面の反射率R 1 について、
n eff とすることを特徴とする。
ザは、半導体レーザ導波路の光出射端面に複数の層から
なるコーティング膜を備える半導体レーザにおいて、前
記コーティング膜を構成する層の少なくとも1層の屈折
率n 1 を前記半導体レーザ導波路の等価屈折率n eff と前
記光出射端面の反射率R 1 について、
n eff とし、前記屈折率n 1 の層以外の層の厚さを、その
屈折率n j とし、レーザ発振波長λとしたときに、
ィングを半導体レーザに施すことにより、式1が示す以
上にCOD光出力が増大することについて説明する。本
発明によるコーティング膜では、式1は成り立たない。
ザの端面コーティング膜部分の入射光電界と反射光電界
の関係式を導くことについて説明する。図1ではコーテ
ィング膜は誘電体複合膜として表わされ、屈折率がn1
で厚さdx1の誘電体1と屈折率がn2で厚さdx2の誘
電体2からなる2層コーティング膜とされているが、さ
らに多層であってもよい。
18巻、第3号、38頁〜46頁、1990年に報告さ
れているとして考慮に入れると、レーザ内部から多層コ
ーティング膜に入射する光電界(E1 R)、コーティング
膜界面で反射する光電界(E 1 L)、コーティング膜から
外部へ透過する光電界、つまり出力光電界、E3 R、の間
の関係は次のように表される。
(l=1,2,…,m)はそれぞれ半導体界面から数え
てl番目のコーティング膜の層厚と屈折率である。半導
体導波路の等価屈折率、半導体レーザ外部の気体(空気
あるいは封入ガス)の屈折率をそれぞれn0、nm+1、と
した。λはレーザ発振光の波長である。一方、半導体導
波路との界面の内側の光強度(Pt0)とコーティング膜
を透過する出力光の光強度(Pt1)はそれぞれ、
neffに置き換え、外部気体の屈折率nm+1を1とした。式
2を使って、式11と式12の比を求めると、
施さないレーザ(アンコートレーザ)も、内部光強度
(Pt0)が一定の(COD光密度)に達したときにCO
Dを起こす。従って、COD指標は、
す作用の違いを説明する。簡明に説明するため、端面コ
ーティング膜は単一の層からなるものとする。さらに簡
単にするため、端面コーティング膜の厚さが
らCOD指標と反射率を求めると、
合の結果は、n1 2<nef fの場合と異なることがわか
る。n1 2<neffの場合、
(E1 L)の位相関係に起因するものである。式2を解い
て反射光電界(E1 L)を入射光電界(E1 R)で表すと、
eff)である場合、式21の右辺の符号は正である。つ
まり、反射光の位相は入射光に等しい。従って、入射光
と反射光が半導体界面内部で干渉する時、入射光と反射
光が重なり合う(constructive interference)。この場
合のCOD指標の関係式(式19)は、Hakkiの式1と
完全に一致する。実際、Hakkiらが式1を使って考察し
たレーザのコーティング膜の材質はSiOであり、屈折
率は1.9であったので(Ettenbergら、アプライドフ
ィジクスレターズ誌、第18巻、第12号、571〜573
頁、1971年)、n1 2<neffの関係を充たしていた。Hak
kiらは論文に明示していないものの、n1 2<neffの場
合だけを考慮したことになる。
きな(n1 2>neff)である場合、式21の右辺の符号
は負である。つまり、反射光の位相は入射光と逆転す
る。従って、入射光と反射光が半導体界面内部で干渉す
る時、これらの光電界は打ち消し合う(destructive in
terference)。
9の右辺より常に大きなことである。これは半導体内部
で光電界が打ち消し合い、内部光密度が下がるためであ
る。従って、条件n1 2>neffを充たす端面コーティン
グを施した本発明の半導体レーザのCOD指標は、端面
反射率R1が同じで条件n1 2<neffを充たす従来設計の
半導体レーザよりも大きい。以上が本発明の基本的な作
用である。
面を参照して説明する。
ティングを施した半導体レーザの一実施例のCOD指標
Pcoated/Puncoatedと端面反射率R1の関係を示す図
である。
した式15と式16を使って計算した。計算においてコ
ーティング膜は1層とし、屈折率が2.80、2.5
0、2.25、2.00、1.68、1.46の6種類
の異なるコーティング膜についてそれぞれ計算を行っ
た。膜厚は、それぞれ、
(neff)は3.30とした。従って、屈折率n1=2.
80、2.50、2.25、2.00のコーティング膜
がn1 2>neffを充たす。コーティング膜の屈折率が
2.50の場合を例にとると、膜厚が増えるとともに反
射率が下がりCOD指標Pcoated/Puncoatedが上が
る。
る。COD指標Pcoated/Puncoatedの最大値は、式1
7からn1 2=6.2である。この時の端面反射率R
1は、式18から0.095である。さらに膜厚を増や
すと端面反射率R1とCOD指標Pcoated/Puncoated
の関係は元の関係曲線上を戻り、
/Puncoated=1.0、つまりコーティングを施してい
ないレーザと同じ値に戻る。
(n1=2.80、2.50、2.25、2.00)の
COD指標が、これを充たさない場合(n1=1.6
8、1.46)に比べてはるかに高いことを示す。図2
(A)中の破線は、式20が表す曲線である。式20
は、本発明によるCOD指標の上限を示す。比較のた
め、Hakkiらによる式1が表す関係を図2(B)に示
す。すでに述べたように、Hakkiらの式1は式19と完
全に一致する。図2(A)の中では、Hakkiらの式1が
COD指標の下限を与える(図2(A)の点線)。
の反射率R1に対して最も大きなCOD指標を与える最
適コーティング膜屈折率n1が存在する。その値は、
3.30とすると、R1=0.06のとき最適な屈折率
n1は2.33、R1=0.1のとき2.52、R1=
0.2のとき2.94である。最適コーティング膜を使
って膜厚を
に端面反射率を低くすることが望ましい。上述したよう
に理想的なコーティング膜屈折率n1は式22で表わさ
れるものとなるが、図2(A)からその前後の範囲であ
っても十分なCOD指標の半導体レーザを得ることがで
きることが分かる。屈折率を理想的なものよりも低く設
定することによりCOD指標Pcoated/Puncoatedは下
がるものの端面反射率を低く抑えて発振効率を高めるこ
とができる。また、屈折率を理想的なものよりも高く設
定することにより端面反射率が上がるもののCOD指標
Pcoated/Pun coatedを高くすることができる。
なコーティング膜屈折率n1としてR1=0.10のとき
の屈折率2.52に近いものとして屈折率2.50のも
のが示されている。これを基準として図2(A)に示さ
れる他の屈折率の特性を参照すると、屈折率2.50に
対して−20%の屈折率2.00のものでも十分な端面
反射率およびCOD指標Pcoated/Puncoatedを得るこ
とができ、約+10%の屈折率2.80のものでも十分
な端面反射率およびCOD指標P coated /P uncoated を
得ることができることが分かる。
ーティング膜屈折率n1はこれに限定されることはな
く、屈折率n 1 から−20%の範囲でもよく、屈折率n 1
から10%の範囲でもよい。
図2(A)のn1=2.50のコーティング膜(例え
ば、TiON)が最適に近い。膜厚を
得る。図3(A)に、この場合のコーティング膜近傍の
光強度分布を示す(λ=633nmとした)。半導体と
コーティング膜の界面の半導体側で入射波と反射波が打
ち消し合い、定在波の節となっているので、CODが発
生しにくい。このCOD指標は、従来よく使われるAl
2O3コーティングを施した場合、
ーティングでは、半導体とコーティング膜の界面で定在
波の腹が形成されている(図3(B)参照)。なお、図
3(B)では、その出力光密度が図3(A)の出力光密
度と同じになるように、描かれている。
としてのAlGaInP半導体レーザの構造を示す断面
図である。半導体ダブルヘテロ構造は、p型(Al0.7G
a0. 3)0.5In0.5Pクラッド層4、AlGaInP多重
量子井戸活性層5、および、n型(Al0.7Ga0.3)0.5
In0.5Pクラッド層6から構成されている。AlGa
InP多重量子井戸活性層5は、(Al0.05Ga0.95)
0.5In0.5P量子井戸(厚さ10nm)と(AlxGa
1-x)0.5In0.5Pバリア層から構成されている。Al組
成(x)は0.3〜0.7程度である。多重量子井戸の
両側には50−250nm程度と薄い光ガイド層を設け
ておく。本実施例の半導体レーザの発振波長は640n
mであり半導体導波路の等価屈折率(neff)は3.3
0である。半導体レーザ前方端面のコーティング膜は屈
折率が2.50のTiONである。膜厚を
た。図4(A)のA−A断面を図4(B)に示す。Ga
Asブロック層10が、基本横モード発振を安定化す
る。GaAsブロック層10の代わりに、Al0.5In
0.5Pブロック層や図4(C)に示す(AlxGa1-x)
0.5In0.5Pブロック層11
性層5の代わりに、AlGaInPバルク活性層12を
用いてもよい。
してのInGaAs/AlGaAs半導体レーザの断面
を示す。本実施例の半導体レーザの発振波長は0.98
μmである。従って、前方端面(出射端面)のコーティ
ング膜をTiON、屈折率を2.50、コーティング膜
厚を90nmとして、反射率R1=0.1、COD指標
=5.6を得た。図6(B)は図6(A)のA−A断面
である。
AlGaAs半導体レーザの断面を示す。本実施例の半
導体レーザの発振波長は発振波長は0.83μmであ
る。従って、前方端面のコーティング膜をTiON、屈
折率を2.50、コーティング膜厚を76nmとして、
反射率R1=0.1、COD指標=5.6を得た。
本発明の実施例の1つのInGaAlAs半導体レーザ
であり、阿南ら、エレクトロニクス・レターズ誌、第33
巻、第12号、1048-1049頁、1997年により報告されてい
る構造の半導体レーザの構成を示す断面図である。本実
施例の半導体レーザの発振波長は1.3μmである。従
って、前方端面のコーティング膜をTiON、屈折率を
2.50、コーティング膜厚を120nmとした。In
GaAsP系材料を用いた従来の1.3〜1.7μm帯
半導体レーザではCODが報告されていないものの、A
lを含む材料を用いた1.3〜1.7μm帯半導体レー
ザではCODが発生する可能性が高い。InGaAs/
InAlAsを用いた1.55μm帯光変調器で観測さ
れた入力端面の損傷(中尾ら、第58回応用物理学会学術
講演会、1997年10月2日、講演予稿集No.3、p.1121、論
文番号4p-ZB-9)はCODによく似た現象であり、Al
を含む材料を用いた1.3〜1.7μm帯半導体レーザ
でCODが発生する可能性を強く示唆している。本発明
によれば、Alを含む1.3〜1.7μm帯の半導体レ
ーザのCODを抑制することができる。
しては、TiONの他に、AlON等、様々なものが可
能である。表1に、本発明で利用できるコーティング膜
材料と、その屈折率を列記する。CaF2、CeO2、
(レーザハンドブック、1975年再版、p191)
等、光学材料としてよく知られている他の材料も利用可
能である。
設計反射率が0.10の場合、式22により最適コーテ
ィング膜屈折率は2.52である。TiOxN1-xの酸素
組成を30−50%とすると、優れたコーティング膜と
なる。TiOxN1 -xの成膜条件を選んで屈折率を制御す
ることも可能である。半導体レーザの設計反射率が0.
05の場合、最適コーティング膜屈折率は2.28に低
下する。酸素組成の大きなTiOxN1-xの他、窒素組成
の大きなAlOxN1-x、SiOxN1-x、等が適する。
ィング膜材料は反応性が高く、空気中の水蒸気等とも反
応し、屈折率や透過率が変動する問題が有る。このよう
な場合には、COD制御用コーティング膜の外部に保護
コーティング膜を施して保護することが可能である。保
護コーティング膜の厚さを充分薄くする。保護コーティ
ング膜の厚さを、
導体第1コーティング膜界面の光強度分布が保たれ、本
発明の作用が保たれる。
導体に直接コーティングすると、コーティング膜が半導
体に強い歪を与えて結晶欠陥を発生させる、等の問題が
ある。このような場合、COD制御用コーティング膜と
半導体の間に半導体保護コーティング膜を施すことが可
能である。半導体保護コーティング膜の厚さを充分薄く
する。半導体保護コーティング膜の厚さを、
半導体第1コーティング膜界面の光強度分布が保たれ、
本発明の作用が保たれる。
ていた限界値以上の光出力を得ることができる。また、
従来と比べて比較的高い端面反射率を持つ端面コーティ
ングで高い光出力を得ることができる。従って、しきい
値電流や温度特性、等の発振特性を良好に保ちながら安
定性と信頼性の高い高出力半導体レーザを実現する。
す図であり、(B)は比較例としての従来の端面コーテ
ィングの効果を示す図である。
示す説明するための図であり、(B)は比較例としての
従来の半導体レーザの光強度分布を示す図である。
P多重量子井戸レーザの構成を示す断面図、(B)はA
lGaInP多重量子井戸レーザの第2の断面図、
(C)はAlGaInP多重量子井戸レーザの第2断面
のもう1つの例を示す図である。
活性層レーザを示す図である。
/AlGaAsレーザを示す断面図、(B)はInGa
As/AlGaAsレーザの第2の断面を示す図であ
る。
示す図である。
GaAlAsレーザを示す図である。
層 15 AlGaAsクラッド層 16 AlGaAsブロック層 17 AlGaAs多重量子井戸活性層 18 InP層 19 InGaAsPクラッド層 20 InGaAsP/InGaAlAs多重量子井
戸活性層 21 InGaAsPクラッド層 22 InP基板
Claims (2)
- 【請求項1】 半導体レーザ導波路の光出射端面に1層
あるいは複数の層からなるコーティング膜を備える半導
体レーザにおいて、 前記コーティング膜を構成する層の少なくとも1層の屈
折率n 1 を前記半導体レーザ導波路の等価屈折率n eff と
前記光出射端面の反射率R 1 について、 【数1】 で規定される−20%〜10%の範囲、かつ、n 1 2 >
n eff とすることを特徴とする半導体レーザ。 - 【請求項2】 半導体レーザ導波路の光出射端面に複数
の層からなるコーティング膜を備える半導体レーザにお
いて、 前記コーティング膜を構成する層の少なくとも1層の屈
折率n 1 を前記半導体レーザ導波路の等価屈折率n eff と
前記光出射端面の反射率R 1 について、 【数3】 で規定される−20%〜10%の範囲、かつ、n 1 2 >
n eff とし、 前記屈折率n 1 の層以外の層の厚さを、その屈折率n j と
し、レーザ発振波長λとしたときに、 【数4】 とすることを特徴とする半導体レーザ。
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