JP3522002B2 - 低重合度セルロースエーテルの製造方法 - Google Patents

低重合度セルロースエーテルの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬品などの分野で使
用される低重合度セルロースエーテルの製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】セルロースを水溶性にするために、セル
ロースの水酸基をエーテル化したものとしてセルロース
エーテルがある。セルロースエーテルを解重合した低重
合度セルロースエーテルは、医薬錠剤のフィルムコーテ
ィング剤、医薬品などのバインダー、増粘剤として使用
されている。
【0003】低重合度セルロースエーテルは使用目的に
よって色々な粘度で使用される。低重合度セルロースエ
ーテルの粘度はその重合度よって決定されるため、必要
とする粘度すなわち重合度の低重合度セルロースエーテ
ルを、精度良く製造する方法が望まれていた。
【0004】低重合度セルロースエーテルの製造方法と
しては、原料パルプに苛性ソーダを加えて得られるアル
カリセルロースを空気酸化して低重合度のセルロースを
生成し、これをエーテル化する方法があるが、洗浄を行
うことにより収率が低下してしまう。
【0005】また特公昭48−41037号公報には、
高重合度の原料セルロースエーテルに塩化水素ガスを加
えて30℃以上で、好ましくは50〜100℃で反応さ
せ、原料、塩化水素量、水量、反応温度履歴および反応
時間を調節することにより低重合度セルロースエーテル
を製造する方法が記載されており、特公平4−7636
1号公報には前記塩化水素ガスの代わりに塩化水素水溶
液を加える方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方
法では原料セルロースエーテルの粘度や粒径、および反
応温度などのばらつきにより、同一条件で製造しても得
られる低重合度セルロースエーテルの重合度にばらつき
が生ずる。原料、塩化水素量および水量の配合を同一に
しても、反応温度履歴を再現するのは困難で、製造後の
重合度のばらつきは防止できず、所望の粘度の低重合度
セルロースエーテルを得るために、製造後に別途製造し
た低重合度セルロースエーテルをブレンドして調整しな
ければならなかった。
【0007】本発明は前記の課題を解決するためなされ
たもので、セルロースエーテルを解重合処理して低重合
度セルロースエーテルを製造する際、所望の粘度、重合
度に精度良く製造することができ、製造後に別の低重合
度セルロースエーテルをブレンドするなどの粘度調整を
する必要がない低重合度セルロースエーテルの製造方法
を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めになされた本発明の低重合度セルロースエーテルの製
造方法は、回分方式または半回分方式の反応器内で原料
セルロースエーテルに塩化水素水溶液または塩化水素ガ
スを加え、解重合処理して低重合度セルロースエーテル
を製造する方法において、反応器内の塩化水素量、水
量、温度および処理時間を測定して、次式〔1〕および
〔2〕、 原料セルロースエーテルの処理後重合度=処理前重合度/(S+1) 〔1〕 S=(−0.000775α+1.07044)・β・(0.3179+8.611023H)×1013・ (−0.10714W+1.1624)・exp(−E/RT)・θ 〔2〕 {〔2〕式中のαは原料平均粒径(μm)、βは原料セ
ルロースエーテルの種類に固有の定数0.7〜1.0
(μm-1・hr-1)、Hは反応器内の原料に対する塩化水素
量(重量%)、Wは反応器内の原料および水の合計量に
対する水量(重量%)、Eは活性化エネルギー20370cal
/mol、Rは気体定数1.986cal/(mol・K)、Tは反応器内
の温度(K)、θは処理時間(hr)}より原料セルロースエ
ーテルの処理後重合度を算出し、所定の処理後重合度に
なったときに反応を停止させる。
【0009】前記原料セルロースエーテルおよびその種
類に固有の定数βは、メチルセルロース(β=0.7
(μm-1・hr-1))またはヒドロキシプロピルメチルセル
ロース(β=1.0(μm-1・hr-1))であることが好ま
しい。
【0010】
【発明の効果】本発明の方法により低重合度セルロース
エーテルを製造すると、セルロースエーテルを解重合処
理して低重合度セルロースエーテルを製造する際、所望
の粘度、重合度に精度良く製造することができ、製造後
に別の低重合度セルロースエーテルをブレンドするなど
の粘度調整をする必要がない。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0012】実施例1 20℃における2重量%水溶液の粘度500cps(重
合度265)、水分2.0重量%、平均粒径αが70μ
mの原料ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキ
シ置換度:1.92、ヒドロキシプロピル置換度:0.25)を
コニカルブレンダー型反応器を使用して解重合処理し、
粘度6.0cpsの低重合度ヒドロキシプロピルメチル
セルロースの製造を行った。
【0013】原料ヒドロキシプロピルメチルセルロース
1500kgを反応器に仕込み、反応器ジャケット内の
温水温度を85℃にセットして、反応器内を撹拌しなが
ら昇温し内部温度が45℃に到達したときから、反応器
内に塩化水素が3.6kg添加されるように濃度13重
量%の塩化水素水溶液を10分間で噴霧した。噴霧開始
後、解重合処理時間θ(hr)の計測および反応器内の温度
T(K)の測定を開始した。反応器内の温度は徐々に上昇
して40分後には73℃に達して一定となった。
【0014】反応器内の原料に対する塩化水素量H=0
〜0.24重量%、反応器内の原料および水の合計量に
対する水量W=30/1500×100〜54.1/1524.1×100=
2〜3.55重量%、原料平均粒径α=70μm、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロースのβ=1.0(μm-1
hr-1)、処理時間θ(hr)および反応器内の温度T(K)を3
分ごとに次式〔3〕および〔4〕、 原料ヒト゛ロキシフ゜ロヒ゜ルメチルセルロースの処理後重合度=処理前重合度/(S+1) 〔3〕 S=(−0.000775α+1.07044)・β・(0.3179+8.611023H)×1013・ (−0.10714W+1.1624)・exp(−20370/1.986T)・θ 〔4〕 に代入して処理後重合度を算出し、噴霧開始後135分
のときに反応器内の撹拌および昇温を停止した。
【0015】得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロースの20℃における2重量%水溶液の粘度を
測定したところ、6.01cps(重合度44.6)で
あった。
【0016】比較例1 実施例1で使用したのと同じ原料ヒドロキシプロピルメ
チルセルロースを使用して、〔3〕および〔4〕式で処
理後重合度を算出しないことを除き実施例1と同様にし
て低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造
した。反応器内の温度は徐々に上昇して36分後には7
3℃に達して一定となった。
【0017】粘度6.0cpsの低重合度ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースを得るための平均処理時間は経
験的に140分であったため、塩化水素水溶液の噴霧開
始後140分のときに反応器内の撹拌および昇温を停止
した。
【0018】得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロースの20℃における2重量%水溶液の粘度を
測定したところ、5.5cps(重合度41)であっ
た。このため粘度6.0cpsにするために、粘度6.
3〜7.0cpsの低重合度ヒドロキシプロピルメチル
セルロースを別途製造してブレンドしなければならなか
った。
【0019】比較例2 20℃における2重量%水溶液の粘度500cps(重
合度265)、水分2.0重量%、平均粒径が70μm
の原料ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシ
置換度:1.92、ヒドロキシプロピル置換度:0.25)を使
用して、〔3〕および〔4〕式で処理後重合度を算出し
ないことを除き実施例1と同様にして低重合度ヒドロキ
シプロピルメチルセルロースを製造した。反応器内の温
度は徐々に上昇して40分後には73℃に達して一定と
なった。
【0020】粘度6.0cpsの低重合度ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースを得るための平均処理時間は経
験的に140分であったため、塩化水素水溶液の噴霧開
始後140分のときに反応器内の撹拌および昇温を停止
した。
【0021】得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロースの20℃における2重量%水溶液の粘度を
測定したところ、6.5cps(重合度48)であっ
た。このため粘度6.0cpsにするために、粘度5.
5〜5.8cpsの低重合度ヒドロキシプロピルメチル
セルロースを別途製造してブレンドしなければならなか
った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−25101(JP,A) 特公 昭48−41037(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 11/00 - 11/22 CAPLUS(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回分方式または半回分方式の反応器内で
    原料セルロースエーテルに塩化水素水溶液または塩化水
    素ガスを加え、解重合処理して低重合度セルロースエー
    テルを製造する方法において、反応器内の塩化水素量、
    水量、温度および処理時間を測定して、次式〔1〕およ
    び〔2〕、 原料セルロースエーテルの処理後重合度=処理前重合度/(S+1) 〔1〕 S=(−0.000775α+1.07044)・β・(0.3179+8.61023H)×1013・(− 0.10714W+1.1624)・exp(−E/RT)・θ 〔2〕 {〔2〕式中のαは原料平均粒径(μm)、βは原料セ
    ルロースエーテルの種類に固有の定数0.7〜1.0
    (μm-1・hr-1)、Hは反応器内の原料に対する塩化水素
    量(重量%)、Wは反応器内の原料および水の合計量に
    対する水量(重量%)、Eは活性化エネルギー20370cal
    /mol、Rは気体定数1.986cal/(mol・K)、Tは反応器内
    の温度(K)、θは処理時間(hr)}より原料セルロースエ
    ーテルの処理後重合度を算出し、所定の処理後重合度に
    なったときに反応を停止させることを特徴とする低重合
    度セルロースエーテルの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記原料セルロースエーテルおよびその
    種類に固有の定数βが、メチルセルロース(β=0.7
    (μm-1・hr-1))またはヒドロキシプロピルメチルセル
    ロース(β=1.0(μm-1・hr-1))であることを特徴
    とする請求項1に記載の低重合度セルロースエーテルの
    製造方法。
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