JP3516500B2 - 生分解性三層複合モノフィラメント - Google Patents

生分解性三層複合モノフィラメント

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まどか 平野
孝司 稲垣
繁満 村瀬
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、実用に供することがで
きる一定の物理的性質を有し、自然環境下において微生
物によって完全に分解される生分解性三層複合モノフィ
ラメントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、産業資材用繊維としては、強度等
の糸質性能及び耐候性の優れたものが要求されており、
主としてポリアミド、芳香族ポリエステル、ビニロン、
ポリオレフィン等からなるものが使用されている。しか
し、これらの繊維は分解性がなく、自然環境中に放置さ
れると種々の公害を引き起こすという問題がある。この
問題は、使用後、焼却、埋め立て、回収再生によって処
理することにより解決されるが、これらの処理には多大
の費用や手間を要するために困難であるのが現状であ
る。
【0003】このような問題を解決する一つの方法とし
て、微生物によって分解される生分解性重合体を用いる
ことが考えられる。しかし、生分解性重合体は、汎用重
合体に比べて融点が低く、高価であり、また、繊維の強
度が劣るというような問題があった。
【0004】そこで、本発明者らは、先に特願平6− 8
7305号において、安価で、かつ、実用に供することがで
きる一定の耐熱性を有し、物理的性質、特に結節強度及
び耐摩耗性に優れ、自然環境下で微生物により完全に分
解されるPBSとPESとの共重合体からなり、鞘部が
芯部よりも低融点の重合体からなる生分解性複合モノフ
ィラメントを提案した。この生分解性複合モノフィラメ
ントは良好な物理的性質等を示したが、鞘部に用いる低
融点重合体は、生分解性や耐摩耗性には優れるが、耐熱
性及び強度等が不十分であり、その向上が望まれてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、実用に供す
ることができる一定の耐熱性を有し、結節強度等の物理
的性質に優れ、さらに、使用後は、自然環境下で微生物
により完全に分解される三層複合モノフィラメントを提
供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するもので、その要旨は、次のとおりである。 (a) 繊維横断面において同心円状三層構造を有し、いず
れの層もポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエ
チレンサクシネート(PES)、ポリブチレンアジペー
ト(PBA)及びポリブチレンセバケート(PBSe)
から選択される一種以上の成分を含む重合体からなり、
各層の重合体が式(1)〜(4)を満足することを特徴とする
生分解性三層複合モノフィラメント。 (1) 85≦Bn≦100 (Bn:内層のPBS成分のモ
ル%) (2) 65≦Bt≦95 (Bt:中層のPBS成分のモ
ル%) (3) 85≦Bg≦100 (Bg:外層のPBS成分のモ
ル%) (4) Bn≧Bg>Bt (b) 繊維横断面において同心円状三層構造を有し、内層
及び外層がPBS、PES、PBA及びPBSeから選
択される一種以上の成分を含む重合体からなり、内層及
び外層の重合体が式(5)〜(7)を満足し、中層がポリ(ω
−ヒドロキシアルカノエート)又はその共重合体からな
ることを特徴とする生分解性三層複合モノフィラメン
ト。 (5) 85≦Bn≦100 (6) 85≦Bg≦100 (7) Bn≧Bg
【0007】以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】本発明において用いられる重合体は、数平
均分子量が 30000以上のものであることが製糸性及び得
られる糸条の特性の点で好ましい。
【0009】本発明におけるモノフィラメントは、繊維
横断面において同心円状の三層構造を有することが必要
である。一般に、生分解性重合体においては、生分解性
及び耐摩耗性に優れた性質を有するものは耐熱性及び強
度に劣るという性質を有する。例えば、芯部で強度、鞘
部で生分解性及び耐摩耗性を有するような芯鞘構造で
は、鞘部の影響が大きく、優れた強度及び耐熱性等の物
理的性質を保持することは困難である。そこで、その鞘
部の外側に耐熱性及び強度等に優れた物理的性質を有す
る層を作ることにより、すなわち、三層にすることによ
り、優れた物理的性質と生分解性の両特性を付与するこ
とが可能となり、製糸性も良好となる。この両特性は、
用いる重合体の種類及び共重合比、層の厚さ等により制
御が可能である。
【0010】内層及び外層には、PBS、PES、PB
A及びPBSeから選択される一種以上の成分を含む重
合体で、PBS成分が85〜100 モル%、好ましくは90〜
100 モル%の範囲のものが用いられる。これは、重合体
中のPBS成分のモル%が多いものほど、融点が高く剛
直な性質を持つため高い強力が得られるためである。ま
た、PBS成分のモル%が同じ場合では、PBSとPE
Sとの共重合体(PBS/PES)は、PBSとPBA
との共重合体(PBS/PBA)やPBSとPBSeと
の共重合体(PBS/PBSe)に比べて、わずかに物
理的性質に優れ、生分解性に劣るという性質を有する。
【0011】内層にはPBS成分のモル%が外層の重合
のPBS成分のモル%以上の重合体が用いられる。内
層及び外層は強度等の物理的性質が重要であるが、外層
は生分解性も考慮しなければならないため、PBS成分
が85〜95モル%の共重合体が好ましい。
【0012】中層には、PBS、PES、PBA及びP
BSeから選択される一種以上の成分を含む重合体で、
PBS成分が65〜95、好ましくは70〜85モル%の範囲の
共重合体が用いられる。これは、共重合体中のPBS成
分のモル%が少なくなるほど柔軟な性質及び高い生分解
性を持つためである。また、この柔軟な性質は、結節時
の応力集中を緩和し、結節強度の向上に寄与する。しか
し、PBS成分のモル%が上記の範囲より少なくなると
耐熱性や強力の低下や低結晶性化という問題が生じてく
る。
【0013】中層には、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノ
エート)、例えば、ポリ−ε−カプロラクトン(PC
L)及びその共重合体を用いることもできる。この重合
体は、融点が低いという問題はあるが、生分解性及び柔
軟性に優れている。
【0014】上記のように、物理的特性は内層及び外層
に用いる重合体、生分解性は中層に用いる重合体によっ
て、基本的に制御される。しかし、層の厚さによっても
ある程度の制御が可能となる。例えば、使用期間が長
く、強度が必要という場合は、外層にPBS成分のモル
%が高いもの用いて強度を保持する。また、使用後すぐ
分解するものという場合は、外層は薄くし、重合体はP
BS成分のモル%が高いものを用いる。さらに、中層は
厚く、重合体はPBS成分のモル%が低いものを用い、
外層が分解し始めると中層の分解が急速に起こるよう制
御される。
【0015】本発明のモノフィラメントを製造するに
は、上記のような2種又は3種の重合体を用いて、同心
円状の三層からなる複合ノズルより溶融紡出する。紡糸
温度は、用いる重合体の種類により異なるが、 150〜29
0 ℃とすることが望ましい。紡糸温度が低すぎると溶融
押し出しが困難であり、高すぎると重合体の熱分解が顕
著となり、高強度のモノフィラメントを得ることが困難
となる。
【0016】溶融紡出された複合モノフィラメントは、
外層に用いる重合体の結晶化温度より10〜40℃低い温度
範囲内の水又はエチレングリコール等の冷却浴中で冷却
される。冷却温度が上記の範囲より高い場合は、冷却不
足により冷却浴内の糸道変更ローラやガイド上で変形が
起こることがある。また、この種の重合体は結晶化速度
が遅いために、上記の温度範囲より低い場合には、逆に
結晶化が進まず、同一紡糸口金から複数のフィラメント
を紡出する場合、フィラメント同士の密着が起こること
がある。
【0017】冷却された未延伸糸条は、一旦巻き取った
後又は巻き取ることなく連続して延伸される。高強度の
複合モノフィラメントを得るためには一段延伸では十分
でなく、多段階で延伸することが必要である。第一段目
の延伸は、室温、熱風又は加熱された水、グリセリン、
エチレングリコール、シリコーンオイル等の熱媒中で、
外層に用いた重合体の融点以下の温度で、5〜7倍の延
伸倍率で行われる。第一段目の延伸倍率が5倍未満であ
ると延伸斑が発生し、一方、7倍を超えると切断が多発
していずれも好ましくない。第二段目以降の延伸は、第
一段目と同様に行ってもよいが、通常、加熱時間にもよ
るが、外層に用いた重合体の融点近辺、好ましくは融点
より15℃低い温度から30℃高い温度の範囲内の熱雰囲気
下で行われる。全延伸倍率は、良好な延伸性のもとに延
伸できる限り、特に限定されないが、通常、7〜8倍程
度である。
【0018】このようにして得られる本発明の三層複合
モノフィラメントは、前述のように安価で、かつ、実用
に耐えうる一定の耐熱性と優れた物理的性質(引張強度
7g/d以上、結節強度6g/d以上)と生分解性を有
するものである。
【0019】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、特性値の測定法等は次のとおりである。 融点及び結晶化温度 DSC 測定によって求めた。 強度特性 JIS L 1013に準じて測定した。 生分解性 長さ10mのモノフィラメントをかせ状にし、6月から11
月にかけての6カ月間土壌中に埋設した後、取り出して
強度を測定し、その強度保持率によって評価した。
【0020】実施例1 数平均分子量が約 50000のPBSを内層、数平均分子量
が 40000のPBS/PES=70/30を中層、数平均分子
量が 40000のPBS/PES=90/10を外層に用い、紡
糸温度 170℃で同心円状の三層からなる複合ノズルよ
り、繊維半径の各層の比が6:3:1となるように溶融
紡出した。溶融紡出された複合モノフィラメントは、長
さ2m、温度18℃の水浴中で冷却した後、引き取りロー
ラで引き取り、直ちに65℃の温水浴中で、延伸倍率(DR
1) 5.6倍で第一段目の延伸を行い、次いで長さ3m、温
度 120℃のオーブン中で全延伸倍率(TDR)が 7.5倍にな
るように第二段目の延伸を行い、さらに、長さ 1.5m、
温度 125℃のオーブン中で0.95倍の弛緩熱処理を行った
後、巻き取り、直径0.29mmの三層複合モノフィラメント
を得た。
【0021】実施例2〜3及び比較例1〜 表1に示した重合体を用い、紡出糸条の冷却温度及び延
伸時の延伸倍率を表1に示すように変更した以外は、実
施例1と同様にして三層複合モノフィラメントを得た。
【0022】上記の実施例及び比較例における製糸条件
及び得られたモノフィラメントの引張強度と結節強度を
表1に示す。また、上記の実施例及び比較例で得られた
モノフィラメントを土壌中に埋設した時の埋設期間と強
度保持率との関係を図1及び図2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】本発明の実施例1〜3では、強度が高く、
生分解性の優れたモノフィラメントが得られた。これに
対し、比較例1で得られたモノフィラメントは、強度は
高いものの生分解性に劣り、また、比較例2、3で得ら
れたモノフィラメントは、生分解速度が速すぎ、さら
に、比較例で得られたモノフィラメントは、強度的に
不十分なものであった。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、一般の産業用資材とし
て実用に供することができる一定の物理的性質を有し、
自然環境下において微生物によって完全に分解される、
三層複合モノフィラメントが提供される。そして、本発
明の生分解性モノフィラメントは、漁網や釣り糸等の漁
業資材、防虫防鳥ネットや植生ネットのような農業資
材、コンポスト用バッグのような生活資材、その他一般
産業資材用として好適であり、使用後は自然環境中に放
置しても微生物により一定期間後には完全に分解するた
め、本発明の三層複合モノフィラメントを使用すれば、
特別な廃棄物処理を必要とすることなく、公害を防止す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で得られたモノフィラメントを土壌中に
埋設した時の埋設期間と強度保持率との関係を示す図で
ある。
【図2】比較例で得られたモノフィラメントを土壌中に
埋設した時の埋設期間と強度保持率との関係を示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村瀬 繁満 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ 株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 平7−278965(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 8/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維横断面において同心円状三層構造を
    有し、いずれの層もポリブチレンサクシネート(PB
    S)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチ
    レンアジペート(PBA)及びポリブチレンセバケート
    (PBSe)から選択される一種以上の成分を含む重合
    体からなり、各層の重合体が式(1)〜(4)を満足すること
    を特徴とする生分解性三層複合モノフィラメント。 (1) 85≦Bn≦100 (Bn:内層のPBS成分のモ
    ル%) (2) 65≦Bt≦95 (Bt:中層のPBS成分のモ
    ル%) (3) 85≦Bg≦100 (Bg:外層のPBS成分のモ
    ル%) (4) Bn≧Bg>Bt
  2. 【請求項2】 繊維横断面において同心円状三層構造を
    有し、内層及び外層がPBS、PES、PBA及びPB
    Seから選択される一種以上の成分を含む重合体からな
    り、内層及び外層の重合体が式(5)〜(7)を満足し、中層
    がポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)又はその共重
    合体からなることを特徴とする生分解性三層複合モノフ
    ィラメント。 (5) 85≦Bn≦100 (6) 85≦Bg≦100 (7) Bn≧Bg
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