JP3501362B2 - 作物の空中採苗用育苗装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は，いちご等の各種野
菜や花卉類の子苗を空中で採苗できるようにした育苗装
置に関するもので，詳しくは，栽培面積あたりの子苗の
数を増し，炭疽病などの水因性伝染病がうつらないよう
にする作物の空中採苗用育苗装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】いちごのように病害に弱い一年生の作物
は，葉と幹によって実を結ぶことになるので，種まきな
どの播種をせずに，種苗を育成して，ある程度成長して
からこれを露地に植えかえて栽培する方法が採用されて
いる。

【０００３】このような方法は，播種する方法よりも短
期間で種苗を成長させることができるものであって，あ
る程度成長した種苗を露地に植えるので種苗の根下しが
容易でしかも病害により強いので收穫量を増やすという
長所がある。

【０００４】前記した種苗育成および栽培方式は，種苗
の仮植過程と定植過程とを繰り返し経らなければならな
いので，労働生産性の低下だけでなく，その栽培作物が
水因性伝染病に弱く生産性が低下するという問題点があ
る。

【０００５】最近は，露地による炭疽病および水因性伝
染病に感染しないように，空中育苗および採苗方法が試
されている。このような空中育苗および採苗方法は，床
土受納部を支え台によって空中に据置するようにし，別
の養液を供給して，その作物が空中の床土で育つように
するとともに，幹を仮植するための育苗板を水平に配列
して，ここに子苗を仮植し露地で水因性伝染病に感染し
ないようにしている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら，前記の
ような空中栽培装置も，別の子苗を育成する育苗装置が
備えられていないので，露地で育苗する方法に比べ，子
苗の数を増やせないだけでなく，一つの床土受納部に多
数の母株が育っているので，一つの母株が水因性伝染病
に感染した場合には，その床土受納部で育つ全部の母株
が感染してしまい，その被害が大きく，母株が感染した
場合には，床土を全部取替えて新しい母株を植栽しなけ
ればならず，前記の装置ではその作業が煩しくて複雜な
過程を経ることになるので，とても不便であるという問
題点があった。

【０００７】本発明は，前記したような問題点を解決す
るために創案されたもので，本発明の出願人により既登
録された韓国実用新案登録第２７２６７号の積層式栽培
容器に別の懸架形育苗板と隔離された給排水装置を備え
て，栽培面積あたりの子苗の数を大きく増して，各々の
母株栽培機が隔離された状態でその養液が別に供給され
るようにすることによって，病害の感染を減らし，たと
え，母株に病害が発生しても，その母株から他の母株へ
病害がうつらないようにすることによって，作物の生産
性を向上させ，子苗の数を増やすことができる作物の空
中採苗用育苗装置を提供することを課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に，本発明のある観点によれば，上下に積載される複数
の空中栽培機と，各上下の空中栽培機の間に挿入される
間隔維持具と，前記各々の空中栽培機と上位の間隔維持
具との間に挿入される集水筒とから成る積載式栽培機を
備える作物の空中採苗用育苗装置であって，折曲板状の
退水路と，前記退水路の上部空中に設けられる支持パイ
プと，前記退水路に所定間隔で立設されてその上端部が
クリップで前記支持パイプに固定される複数のパイプ体
とを栽培地に固定設置し，前記間隔維持具の内部には上
下を遮断する隔壁を設け，前記パイプ体を，順に積載さ
れる回転受け皿，両端に受け板を備える排水パイプ，及
び前記積載式栽培機に挿入して，これらを支持結合し，
前記支持パイプには灌水ホースを固定し，前記灌水ホー
スには複数の点滴灌水機を連結し，前記各々の空中栽培
機には複数の育苗板をフックで着脱自在に吊り下げたこ
と，を特徴とする作物の空中採苗用育苗装置が提供され
る。このような本発明にかかる作物の空中採苗用育苗装
置によれば，前記点滴灌水機から前記各々の空中栽培機
に養液が供給され，前記空中栽培機から排水された養液
は一旦直下に設けられる間隔維持具の隔壁上部に貯留さ
れてから溢れ，前記溢れた養液は下位の空中栽培機の集
水筒を通過して前記退水路まで排水されるので，他の空
中栽培機の土を汚染せずに排水される。また，前記空中
栽培機に育苗された母株からはみ出した子株は，前記空
中栽培機に吊り下げられた育苗板に挿して育苗される。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下に添付図面を参照しながら，
本発明にかかる作物の空中採苗用育苗装置の好適な実施
の形態について詳細に説明する。図１は本発明の実施の
形態にかかる空中採苗用育苗装置の分離斜視図であり，
図２は側断面図である。先ず，複数の空中栽培機１，
１’から排水される養液を集水する折曲板状の退水路１
９と，退水路１９の上部空中に固定して設けられる支持
パイプ１０と，退水路１９に所定間隔で立設されてその
上端部が支持パイプ１０にクリップ１１で固定される複
数のパイプ体４とを，栽培地に設置する。そして，パイ
プ体４を，順に積載される回転受け皿３と，両端に受け
板６，６’を備える排水パイプ５と，複数の空中栽培機
１，１’のそれぞれの間に隔維持具２が挿入されて各々
の空中栽培機１，１’と上位の間隔維持具２との間には
集水筒８が挿入される積載式栽培機とに挿入して，これ
らを支持結合させる。受け板６，６’は，一方の面に排
水パイプ５の端部が間に挿入係合される内側と外側に２
重に形成される２つの環状突起である２重顎７，７’を
備え，他方の面に空中栽培機１の下端部と係合する凹函
部１８を備えることにより，回転受け皿３と排水パイプ
５と最下位の空中栽培機１とを固定結合させ，また，上
に積載される複数の空中栽培機１，１’を安定的に支持
する。

【００１０】支持パイプ１０に固定された灌水ホース１
２に連結される複数の点滴灌水機１３，１３’からは，
各々の空中栽培機１，１’に養液が供給される。間隔維
持具２には上下を遮断する隔壁７，７’が設けられて，
上位の空中栽培機１から排水された養液が貯留される。
前記間隔維持具２に貯留された養液が溢れると，養液は
下位に設けられる複数の空中栽培機１，１’の土を汚染
しないよう，それぞれに挿入された集水筒８を通過して
退水路１９まで排水される。集水筒８は，上広下狭のじ
ょうご形状を有し，その下部に形成される複数の挿入凹
溝１６，１６’により空中栽培機１に固定される。そし
て，各々の空中栽培機１，１’には，複数の育苗板１４
をフック１５で吊り下げて，空中栽培機１，１’の母株
からはみ出した子株を育苗することができる。

【００１１】図中説明していない符号３０は作物の母株
である。

【００１２】以上のような構成による本発明の作用を添
付図面に依拠して詳しく説明する。まず本発明の育苗装
置を設置するための過程を説明すると，設置しようとす
る栽培地に退水路１９を設置し，ここに所定間隔のパイ
プ体４を立設するが，その下端部が露地に所定の深さに
埋設されるようにする。

【００１３】パイプ下体４"に回転受け皿３および図５
（ａ）（ｂ）のような受け板６，排水パイプ５のほか，
受け板６'，空中栽培機１，また図６に図示のような集
水筒８，間隔維持具２，そして空中栽培機１'，集水筒
８を順番に挿入して固定する。

【００１４】ここで，排水パイプ５とパイプ下体４"の
長さによって，空中栽培機１，１'の高低を調節するこ
とが可能であり，間隔維持具２と集水筒８および空中栽
培機１を一組に形成して，多数に積層形成できるので，
積層される空中栽培機１，１'の数は使用者の任意ある
いは作物の特性によって適宜に調節することができる。

【００１５】また，前記した回転受け皿３がなくても，
その受け板６だけでも育苗装置の支持が可能なので回転
受け皿３のない状態で，受け板６がその退水路１９の上
部に直接支持されるようにすることもできる。

【００１６】また，退水路１９は流れ下る養液を集水す
るためのものであって，退水路１９の両端にはノズル
(図示せず)が形成されていて，退水路１９によって集ま
った養液が排出されるようになる。

【００１７】このように固定された状態のパイプ下体
４"にパイプ上体４'を載置し，その内部に回転支持棒９
を挿入してパイプ下体４"およびパイプ上体４'がその回
転支持棒９によって支えられるようになり，またパイプ
上体４'の上端部は栽培施設に固定された支持パイプ１
０とクリップ１１により固定してよい。

【００１８】支持パイプ１０には灌水ホ−ス１２を一緒
に結合して，本実施の形態にかかる育苗装置の該当する
部分に多数の点滴灌水機１３，１３'を連結してよい。
また，多数の空中栽培機１，１'の縁には，フック１５
により多数の育苗室を有した育苗板１４を懸架状態に掛
けておくと完成される。

【００１９】このような育苗装置を図８のごとく栽培面
積に合わせて多数に配列すると設置が完了される。

【００２０】図３は，本発明育苗装置の養液の流れを示
す一部拡大側断面図で，図示しない点滴灌水機１３，１
３'から養液が供給されれば，その養液が下部に染み込
んで母株３０の根に養分および水分を供給するようにな
り，吸収して残った余分な養液は空中栽培機１の下部に
流れ下り，間隔維持具２の隔壁７，７'まで至って，そ
の顎により所定量がたまり，所定量以上が供給される場
合には，養液が溢れて，パイプ下体４"と間隔維持具２
の間に養液が流れ，下部へ流れる養液はほかの空中栽培
機１'に吸収されず，そのまま集水筒８に流れ込んで下
部に流れ下り，退水路１９まで至るのである。

【００２１】また，間隔維持具２に形成された上下分離
用隔壁７，７'によりその上部に所定の深さの凹函部が
形成されるので，ここにたまっていた養液がハウス内の
乾燥によって自然蒸発して，上部に位置した空中栽培機
１，１'の母株３０の根に持続的に水分を供給するの
で，乾燥により作物の根部が枯死するなどの問題点を防
ぐ。

【００２２】したがって，従来では，最上部から養液を
供給することにより，その養液が下部へ流れ下部の他の
栽培機まで供給できるようにしたが，本実施の形態によ
れば，多数の点滴灌水機１３，１３'を使用して，各々
の空中栽培機１，１'に別に養液を供給するので，一回
供給された養液は，他の栽培機に及ばずにそのまま退水
され，一つの空中栽培機１で育つ母株３０が病害に感染
したとしても，その病害が養液により，他の空中栽培機
１'へ流れ込まないよう遮断することによって，病害の
感染を防止して水因性伝染病が予防される。

【００２３】このような設置方法および養液の流れ構造
によって各々の点滴灌水機１３，１３'から養液を供給
してもらう母株３０はその幹がある程度成長して伸びた
状態になると，その幹から子苗を生産するようになる。

【００２４】図７のごとく，床土が入った育苗板１４に
母株３０からはみ出した幹状の子苗をその育苗室の床土
に差し，点滴灌水機１３，１３'により養液を供給する
ようになると，その育苗板１４が垂直にぶらさがってい
るので，養液が育苗板１４の下部へ流れ込み，均一に養
液を供給するようになる。

【００２５】このように持続的な養液の供給により，所
定期間の経過後，床土に差してある子苗から，根および
若芽が育つようになり，露地に定植することが可能なほ
ど育つ。

【００２６】このようにある程度成長した子苗を露地に
定植する場合には，病害に強い状態であり，根下ろしが
容易で作物の成長速度が速く，病害により枯死する子苗
の発生頻度も顕著に減少する。

【００２７】また，本発明の出願人によって創案された
空中栽培機１，１'は，多数の分割された栽培室を有し
ているので，各々の栽培室に育苗板１４を掛け，懸架形
に使用することが可能であり，栽培面積あたりの子苗の
数を大きく増すことができるだけでなく，空中栽培機
１，１'も作業可能な範囲内でいくらでも積層して使用
することができ，従来のその方法に比べ顕著に子苗の数
が増る。

【００２８】また，本発明の出願人によって比較した下
記の表のように，

【００２９】

【表１】

【００３０】従来の露地栽培の方法よりも小さい育苗栽
培面積を必要とするだけではなく，小さい面積でも約１
７.３倍の子苗の数を生産することができる。

【００３１】なお，図４のごとく空中栽培機１および育
苗板１４によってある程度子苗が成長してからは，空中
栽培機１を育苗装置から分離し，さらに新しい床土を充
填して育苗するようになるが，育苗装置全体を解体して
その作業を行なうのではなく，パイプ上体４'からパイ
プ下体４”に挿入されている回転支持棒９を上部に持ち
上げた状態で，回転支持棒９とパイプ上体４'とを矢印
状に回転させると支持パイプ１０のクリップ１１によっ
て固定されたパイプ上体４'が回転するのでパイプ上体
４'とパイプ下体の間に空間が発生し，ここで空中栽培
機１の離脱が自由になるのである。

【００３２】したがって，回転支持棒９の回転により空
中栽培機１が拔けた状態で育苗装置から空中栽培機１を
分離して新しい床土作業をしたり，伝染した母株３０の
取り替えができる。そこで，育苗装置全体を解体しなく
ても空中栽培機１，１'の床土取替作業が可能なので，
その作業時間が短縮されることは勿論のこと，再組み立
て時にもパイプ下体４”に空中栽培機１を挿入してか
ら，さらに回転支持棒９とパイプ上体４'を回してパイ
プ上下体４'，４”を一対にして，回転支持棒９をパイ
プ下体４”の内部まで挿入して，パイプ上体４'とパイ
プ下体４”とを互いに結束することによって，パイプ上
体４'が回動しないようにすればよい。

【００３３】このような作用による本発明の懸架形の空
中育苗装置は，同じ栽培面積あたりの子苗の数を大きく
増しながらも，病害の感染転移が発生せず，床土の取り
替え作業や設置および解体作業がとても容易である。

【００３４】

【発明の効果】以上のような本発明作物の空中採苗用育
苗装置は，懸架形の育苗板とる隔離された給排水装置を
備えて，栽培面積あたりの子苗の数を増し，かつ各々の
母株栽培機が隔離された状態でその養液が別に供給され
るようにすることによって，病害の感染を減少させ，さ
らに，感染した母株からその病害が他の栽培機に移らな
いようにして，作物の生産性を向上させ，子苗の数を大
幅に増すことができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の実施の一形態にかかる分離斜視図で
ある。

【図２】 本発明の実施の一形態にかかる育苗装置の側
断面図である。

【図３】 本発明の実施の一形態にかかる育苗装置の一
部拡大断面説明図である。

【図４】 本発明の実施の一形態にかかる育苗装置の空
中栽培機の着脱方法を説明する図である。

【図５】 （ａ）は，本発明の実施の一形態にかかる受
け板の上側斜視図であり，（ｂ）は，本発明の実施の一
形態にかかる受け板の下側斜視図である。

【図６】 本発明の実施の一形態にかかる集水筒の一部
切開斜視図である。

【図７】 本発明の実施の一形態にかかる育苗装置の使
用状態図である。

【図８】 本発明の実施の一形態による設置状態図であ
る。

【符号の説明】 １,１' 空中栽培機 ２ 間隔維持具 ３ 回転受け皿 ４ パイプ体 ４'，４" パイプ上下体 ５ 排水パイプ ６，６' 受け板 ７，７' 隔壁 ８ 集水筒 ９ 回転支持棒 １０ 支持パイプ １１ クリップ １２ 灌水ホ−ス １３，１３' 点滴灌水機 １４ 育苗板 １５ フッフ １６，１６' 挿入凹溝 １７，１７' 内外二重顎 １８ 凹函部 １９ 退水路

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上下に積載される複数の空中栽培機と，
   各上下の空中栽培機の間に挿入される間隔維持具と，前
   記各々の空中栽培機と上位の間隔維持具との間に挿入さ
   れる集水筒とから成る積載式栽培機を備える作物の空中
   採苗用育苗装置であって，折曲板状の 退水路と，前記退水路の上部空中に設けられ
   る支持パイプと，前記退水路に所定間隔で立設されてそ
   の上端部がクリップで前記支持パイプに固定される複数
   のパイプ体とを栽培地に固定設置し， 前記間隔維持具の内部には上下を遮断する隔壁を設け， 前記パイプ体を，順に積載される回転受け皿，両端に受
   け板を備える排水パイプ，及び前記積載式栽培機に挿入
   して，これらを支持結合し， 前記支持パイプには灌水ホースを固定し， 前記灌水ホースには複数の点滴灌水機を連結し， 前記各々の空中栽培機には複数の育苗板をフックで着脱
   自在に吊り下げたこと， を特徴とする作物の空中採苗用育苗装置。
2. 【請求項２】 前記受け板は，一方の面に前記排水パイ
   プの端部が間に挿入係合される内側と外側に２重に形成
   される２つの環状突起を備え，他方の面に前記空中栽培
   機の下端部と係合する凹函部を備えることを特徴とする
   請求項１に記載の作物の空中採苗用育苗装置。
3. 【請求項３】 前記集水筒は，上広下狭のじょうご状に
   形成され，その下端部には複数の挿入凹溝が形成される
   ことを特徴とする，請求項１又は２に記載の作物の空中
   採苗用育苗装置。
4. 【請求項４】 前記パイプ体は最上位の空中栽培機の上
   面と前記支持パイプとの間の位置でパイプ上体とパイプ
   下体に分割され，前記パイプ上体とパイプ下体とは， パイプ上体の上端か
   ら挿入されるパイプ上体よりも長い回転支持棒により結
   合され， 前記回転支持棒を持ち上げて前記パイプ上体とパイプ下
   体との結合を解除すれ ば，前記パイプ上体は前記クリッ
   プを中心として前記支持パイプの周りを回転可能となる
   ことを特徴とする請求項１，２，又は３のいずれかに記
   載の作物の空中採苗用育苗装置。