JP3499733B2 - ディスクシャッタ用アルミニウム材 - Google Patents

ディスクシャッタ用アルミニウム材

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JP3499733B2
JP3499733B2 JP30538197A JP30538197A JP3499733B2 JP 3499733 B2 JP3499733 B2 JP 3499733B2 JP 30538197 A JP30538197 A JP 30538197A JP 30538197 A JP30538197 A JP 30538197A JP 3499733 B2 JP3499733 B2 JP 3499733B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ディスクや光ディ
スクのケースに設けられるディスクシャッタ用の材料と
して好適な、耐疵付き性、加工性、耐溶剤性及び印刷性
などが優れたディスクシャッタ用アルミニウム材に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】フレキシブル(フロッピー)ディスク等
の磁気ディスク、MOディスク及びミニディスク等の光デ
ィスク等には、図1 にフレキシブルディスクの例を示す
ように、合成樹脂製のケース2 内に情報を記憶する磁気
ディスクまたは光ディスク (記録用ディスク) 等の記録
媒体3 が収納されている。そして、情報の書き込み、ま
たは読み出しの際には、このケース2 内の記録媒体3 に
磁気ヘッドまたは光ヘッドを近接させて、前記磁気ディ
スクまたは光ディスク媒体3 に対する読み書きを行う。
したがって、これらのケース2 には、磁気ヘッドまたは
光ヘッドを記録媒体3 に近接配置するための窓口として
開口部 (窓部) が設けられており、この開口部を開閉す
るためのシャッタ1 が設けられている。
【0003】このシャッタ1 は、図2 の斜視図及び図3
の横断面図に示すように、断面形状がコの字状をなす板
材であり、その一対の面でケース2 を挟持した状態で、
ケース2 に設けられたガイド溝により案内されてスライ
ドすることにより、ケース2の窓部と、シャッタ1 の窓
部4 とが整合した位置で窓を開け、常時は、ケース2の
窓部を閉にしている。
【0004】しかして、このディスクシャッタ (以下、
単にシャッタと言う) に要求される機能は、必要な時に
開閉し、磁性面を保護することである。また、シャッタ
はケース上で案内されてスライド移動するため、軽量で
あるとともに、剛性が高いことを必要とする。シャッタ
用材料としては、従来ステンレス鋼製や、ポリスチレン
やABS などの合成樹脂製のものが使用されていた。しか
し、ステンレス鋼製シャッタは、比較的重量が重く、ま
た表面を手で触れた場合に指紋が付きやすく外観を害す
る。また、ポリスチレンやABS 製シャッタは、剛性が低
く、帯電しやすく、ほこりやちりが付着しやすいので、
磁性面にとって有害である。更に、シャッタの印刷に用
いられるUVインキが密着しにくく、この密着性を改善さ
せるためのコロナ放電等の改質処理が必要であり、製造
コストが高くなる。
【0005】したがって、近年では、これらステンレス
鋼製や合成樹脂製に代えて、軽量でかつ剛性のある、ア
ルミニウム材 (本発明ではアルミニウム又はアルミニウ
ム合金材をアルミニウム材と称し、以下の記載では、単
にAl材と言う) が用いられるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】但し、Al材をシャッタ
に用いた場合、シャッタが摺動部材であるため、開閉動
作時により合成樹脂製のケースを傷つけた場合には、デ
ィスクに有害な削り粉が発生してしまう。このため、シ
ャッタ用Al材の傷つきを防止する技術が従来から種々提
案されている。例えば、特開平3-73479 号や特開平6-34
6178号公報では、Al材表面にアクリル系、アクリルエチ
レン系、エポキシ系、ならびにウレタン系から選択され
た合成樹脂をコーティングすることが提案されている。
また、これら合成樹脂のコーティングでは不足する耐磨
耗性の向上や塑性変形の防止のため、Al材表面に表面硬
化コーティングを設けることも特開平6-68638 号公報で
提案されている。更にまた、シャッタを着色するため
に、Al材表面に陽極酸化皮膜を設けたものも、特開平6-
111516号や特開平6-162710号公報で提案されている。
【0007】しかしながら、前記ケースの疵つけを防止
する従来技術には各々問題がある。即ち、特開平3-7347
9 号や特開平6-346178号公報のようなAl合金表面に合成
樹脂をコーティングする方法では、潤滑性が低く、表面
硬度が低いために、裸のAl材表面に比して耐磨耗性が不
足する。この耐磨耗性が不足すると、シャッタへの加
工、加工品の輸送、ケースへの組み立て、磁気ディスク
および光ディスク製品の最終検査など、各製造工程にお
いて、Al材表面 (合成樹脂表面) に疵がつきやすく、磁
性面にとって有害なほこりやちりが出やすくなる。ま
た、疵の発生により、シャッタ外観を著しく損なう。そ
して、この問題は、製造工程だけではなく、持ち運びに
おけるシャッタ同士の接触、更には使用中のパソコン、
ワープロ等の記録読み書き装置への挿入着脱時の機械部
品との接触によっても生じる。
【0008】更に、Al材表面に表面硬化コーティングを
設ける特開平6-68638 号公報の方法も、Al材を90°曲げ
加工して、前記図3 に示した断面形状がコの字状をなす
シャッタに加工する際に、90°曲げ内部5 で樹脂皮膜に
クラックが入り、かつ皮膜が剥離することにより、磁性
面にとって有害なほこりやちりが出やすくなる。また、
シャッタを着色するために、Al合金表面に陽極酸化皮膜
を設ける特開平6-111516号や特開平6-162710号公報の方
法も、前記90°曲げ加工の際に90°曲げ部分で干渉色が
出やすく、外観上の問題もある。更に、安定した電力と
処理時間が必要な陽極酸化皮膜処理を施すため、製造コ
ストが高くなるという問題もある。
【0009】これに対し、出願人らは、特願平8 −2202
28号で、Al材表面にアクリル系、アクリルエポキシ系、
ウレタン系など、他の樹脂に比して硬度が高く、耐磨耗
性に優れたポリエステル樹脂をコーティングするととも
に、下層にクロメート皮膜を設けてポリエステル樹脂の
密着性を向上させたシャッタ用Al板材を提案している。
また、Al材表面の樹脂皮膜の潤滑性を向上させるため
に、鉛筆硬度5H以上の樹脂皮膜中に高分子PEワックス、
PTEFワックス及びフッ素系ワックス等の潤滑剤を含ませ
たシャッタ用Al板材を、特願平9 −36569 号で提案して
いる。
【0010】更にまた、シャッタ用Al材は、樹脂皮膜を
予めコーティングされたAl板乃至コイルをシャッタ形状
乃至大きさにプレス加工した後、最終形状に曲げ加工さ
れて製造される。しかし、このプレス加工時に使用する
プレス油やプレス加工時に発生する金属磨耗粉を除去す
るために、1.1.1.−トリクロロエチレン等の有機溶剤を
使用し、かつ超音波を使用しながら溶剤洗浄される。し
たがって、この溶剤洗浄の際、Al材表面の樹脂コーティ
ングが溶出しないことが必要である。このため、Al材表
面の樹脂皮膜の耐溶剤溶解性や硬度を向上させるため
に、特定の高分子ビニル化合物に金属キレート化合物を
含有させたシャッタ用Al板材を、特願平9−232335号で
提案している。
【0011】しかし、これら出願人が提案した先願発明
においても、シャッタ用Al材として求められる、軽量性
や剛性は勿論のこと、耐疵つき性、プレス加工や曲げ加
工などの加工性、耐溶剤溶解性、UVインキ印刷性などの
複数の特性を全て兼備し、かつ各々の特性がより優れる
という点では、未だ改良の余地がある。
【0012】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、これら複数の特性を兼備
し、しかも各々の特性が優れたシャッタ用Al材を提供し
ようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明の要旨は、シャッタ用Al材において、Al材の
表面にクロメート皮膜を設け、更にその上層に熱硬化性
樹脂皮膜を乾燥皮膜重量として500 〜3000mg/m2 設ける
ことを含み、該熱硬化性樹脂皮膜が、200 250 ℃の温
度で乾燥されたものであり、平均粒子径が1 〜10μm の
無機物粒子を熱硬化性樹脂に対する固形分重量比として
5 〜20wt% 含むとともに、潤滑剤を熱硬化性樹脂に対す
る固形分重量比として0.5 〜5wt%含んでいることであ
る。
【0014】本発明においては、Al材表面のコーティン
グを無機物粒子と潤滑剤とを含む熱硬化性樹脂皮膜とし
ていることを最大の特徴とする。無機物粒子は、熱硬化
性樹脂よりも硬度が高く、かつ熱硬化性樹脂皮膜中に分
散しているため、Al材表面のコーティング層は、好まし
くは鉛筆硬度が6 H 以上の表面硬度を有し、Al材表面
が、Al材同士または他の機器部品と接触しても、この硬
度が高い無機物粒子と接触し、Al材表面に疵がつくこと
を防止して、前記シャッタ製造工程や搬送工程、あるい
は使用時における耐疵つき性を向上させる。また、熱硬
化性樹脂皮膜中に含まれる潤滑剤は、Al材皮膜表面の潤
滑性を向上させ、前記Al材表面が、Al材同士または他の
機器部品と接触しても、この接触による摩擦応力を緩和
し、Al材表面に疵がつくことを防止して、前記無機物粒
子との相乗効果で、耐疵つき性を向上させる。更に、こ
の潤滑剤によるAl材皮膜表面の潤滑性が向上し、Al材を
シャッタへ加工する際の、プレス加工や曲げ加工などの
加工性にも優れる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明ディスクシャッタ
用Al材における、各要件の意義について、より具体的に
説明する。まず、Al材表面の下層にクロメート皮膜を設
けるのは、前記シャッタ材への曲げ加工などの厳しい加
工を受けた場合にも、上層の熱硬化性樹脂皮膜が剥離し
ないように、熱硬化性樹脂皮膜とAl材表面との密着性を
向上させるためである。また、そのAl材表面への塗布量
は、Cr量換算で5 〜30mg/m2 塗布されていることが好ま
しい。塗布量がCr量換算で5 mg/m2 未満では、Al材表面
のクロメート皮膜が不均一となり、熱硬化性樹脂皮膜と
Al材表面との密着性の向上効果が無くなる。一方、塗布
量がCr量換算で30mg/m2 を越えると、シャッタ材への曲
げ加工時などに、クロメート皮膜に割れが入りやすくな
り、却って磁性面に有害なゴミの発生を生じやすくな
る。
【0016】このクロメート皮膜の種類としては、一般
的なアルカリ- クロム酸塩系、クロム酸塩系、リン酸ク
ロム塩系、リン酸亜鉛系、塗布型クロム酸塩系などが適
宜使用可能である。しかし本発明におけるAl板に要求さ
れる諸特性、特に密着性や生産性を考慮すると、塗布型
クロメート処理によるクロム酸塩系のCr(OH)2 ・HCrO 3
などのアクリル系樹脂、あるいはリン酸クロメート処理
によるリン酸クロムが好ましい。また、これらのクロメ
ート皮膜は、各々公知の方法により施すことができる
が、塗布型クロメート皮膜はロールコーティング法によ
り、リン酸クロメート皮膜は浸漬法或いはスプレー法に
より、各々被覆することが可能である。
【0017】このクロメート皮膜上に塗布され、熱硬化
性樹脂皮膜を形成する熱硬化性樹脂は、アクリル系、ア
クリルエポキシ系、ウレタン系から選択されるもので、
これらを単独或いは混合して用いたものであることが好
ましい。これらの樹脂は、他の樹脂に比して、樹脂皮膜
中に多くの官能基を有するため、前記Al材の1.1.1.−ト
リクロロエチレン等の有機溶剤を用いた溶剤洗浄の場合
の溶出性に優れている。また、シャッタへのメーカー名
や品種等の表示の印刷に用いられるUVインキの密着性に
も優れている。
【0018】この熱硬化性樹脂皮膜は、乾燥皮膜重量と
して500 〜3000mg/m2 塗布されることが必要である。熱
硬化性樹脂皮膜の塗布量が500 mg/m2 未満では、表面皮
膜を薄すぎ、基材Al材表面が、Al材同士または他の機器
部品と接触しやすくなり、Al材表面に疵がつきやすくな
る。また、後述する通り、熱硬化性樹脂皮膜より無機物
粒子が欠落しやすくなり、欠落した無機物粒子が磁性面
にとって有害なゴミとなる。更に、Al材皮膜表面の潤滑
性の向上による、シャッタ材への曲げ加工などの加工性
の向上効果が無くなる。一方、熱硬化性樹脂皮膜の塗布
量が3000mg/m2を越えると、原料コストが高騰するとと
もに、打ち抜きプレス加工時に発生するAl材の磨耗粉
と、表面樹脂皮膜成分と、加工プレス油が混合されてヘ
ドロ状になり、金型のクリアランスを目詰まりさせるな
どの問題が生じる。
【0019】熱硬化性樹脂皮膜中に分散させる無機物粒
子は、皮膜の硬度を好ましくは6 H以上に高め、耐疵つ
き性を向上させるために、熱硬化性樹脂より硬度が充分
高いものであれば良い。このための無機物粒子は、特に
Al、Si、Mgなどの内から選択される酸化物乃至複合酸化
物が好ましく、鉱物系のタルク、カオリン、マイカなど
が好ましい。この中でも、H2Mg4(SiO3) 5 ・H2O の化学
式で示されるタルク (滑石) が、その硬質性や熱硬化性
樹脂皮膜中への均一分散性などの点で好ましい。タルク
など均一分散性を有する無機物粒子は、ロールコーティ
ングによるAl材への樹脂皮膜の塗装工程上も有利であ
る。
【0020】この無機物粒子の平均粒子径は1 〜10μm
で、含有量は熱硬化性樹脂に対する固形分重量比として
5 〜20wt% の範囲とする必要がある。無機物粒子の平均
粒子径が1 μm 未満では、無機物粒子は熱硬化性樹脂皮
膜中に埋没してしまい、皮膜表面に、無機物粒子が存在
しがたくなるので、皮膜の硬度を高め、耐疵つき性を向
上させる効果が無くなる。また、無機物粒子の平均粒子
径が10μm を越えた場合、熱硬化性樹脂皮膜より無機物
粒子が欠落しやすくなり、欠落した無機物粒子が磁性面
にとって有害なゴミとなる。更に平均粒子径が10μm を
越えると、ロールコーティングによるAl材への樹脂皮膜
の塗装工程の作業効率を低下させる問題もある。
【0021】また、無機物粒子の含有量が5wt%未満で
は、含有量が少なすぎて、無機物粒子の存在しない皮膜
部分が多くなり、皮膜の硬度を好ましくは6 H 以上に高
め、耐疵つき性を向上させることができない。一方、無
機物粒子の含有量が20wt% を越えた場合、熱硬化性樹脂
皮膜の形成性なり結合性が悪化する。また、Al材表面
に、ロールコーティング等により皮膜を形成する場合
に、無機物粒子が沈殿して、無機物粒子を均一に分散さ
せた熱硬化性樹脂皮膜が形成できなくなったり、作業性
を低下させる。更に、熱硬化性樹脂皮膜の色調が白っぽ
くなって、外観を損なうという問題もある。
【0022】熱硬化性樹脂皮膜中に含む潤滑剤は、ワッ
クスが主体となるが、潤滑の高性能化の点で、高分子PE
ワックス、PTEFワックス及びフッ素系ワックスの内から
選択されたワックスであることが好ましい。高分子PEワ
ックスはその直鎖状の分子配合により他のワックスより
も高い潤滑性を発揮し、PTEFワックス及びフッ素系ワッ
クスはワックスに含まれるフッ素の極性が高いために、
他のワックスよりも高い潤滑性を発揮する。他のラノリ
ン等の動物性油脂系ワックスや通常のパラフィン系ワッ
クスでは、分子配合、極性の点で前記ワックスよりも潤
滑性が劣り、疵つき防止や加工性向上のための潤滑効果
が不足する場合が生じる。
【0023】これらの潤滑剤は、熱硬化性樹脂に対する
固形分重量比として0.5 〜5wt%含むことが必要である。
潤滑剤の含有量が0.5 wt% 未満では疵つき防止効果や潤
滑効果が不足し、一方、これら潤滑剤はUV硬化法により
印刷されるUVインキの密着性を低下させる機能があり、
特に潤滑剤の含有量が5wt%を越えた場合、UVインキの密
着性が低下して、UVインキの剥離が生じやすくなるとい
う問題が起こる。
【0024】以上のような構成からなる、本発明熱硬化
性樹脂皮膜の、Al板への塗布乃至被覆は、公知のAlの塗
装工程により可能である。即ち、素材Al板乃至コイルに
対し、アルカリ脱脂やエッチング、あるいは水洗などの
前処理を必要に応じて施した後、前記したクロメート処
理を行う。そして、前記所定の無機物粒子および潤滑剤
を混合した熱硬化性樹脂液を、エアスプレー、静電塗
装、浸漬塗装、ロールコート、TFS 塗装、電着塗装など
の公知の塗装方法により、クロメート皮膜を設けた素材
Al板乃至コイル表面に被覆する。熱硬化性樹脂液を被覆
されたAl板乃至コイルは、次に常法により乾燥される。
【0025】 この熱硬化性樹脂を塗布した後の、皮膜
形成のための乾燥温度は、前記熱硬化性樹脂皮膜の種々
の特性を発揮させるためには、200 〜250 ℃の温度範囲
とする。乾燥温度が、200 ℃未満では樹脂の重合反応量
や架橋反応量が不足し、熱硬化性樹脂の硬化が不足し、
皮膜の硬度を高め、耐疵つき性を向上させる効果が無く
なるとともに、熱硬化性樹脂皮膜より無機物粒子が欠落
しやすくなる。また、耐溶剤性などが不足しやすくな
る。一方、乾燥温度が、250 ℃を越えると、熱硬化性樹
脂の熱分解が生じ、皮膜が脆くなることにより、無機物
粒子が欠落しやすくなる。また、皮膜に含む潤滑剤も分
解揮発しやすくなり、皮膜の潤滑性が不足し、疵がつき
やすくなるとともに加工性も低下するという問題も起こ
る。
【0026】以上の工程により製造された本発明シャッ
タ用Al材は、熱硬化性樹脂皮膜を予めコーティングされ
たAl板乃至コイル形状から、プレス加工および曲げ加工
などの成形加工を施されて、最終的にシャッタに製造さ
れる。そしてこのシャッタはケースへの組み立てなどを
経て、前記図1 に示すフレキシブルディスクに構成され
る。
【0027】本発明に使用する素材Al材の形状は、最終
的にシャッタに加工できる形状であれば、圧延等により
製造される板であっても、押出等により製造される型材
であっても構わないが、シャッタの板厚が0.185mm 程度
の薄板であることおよび前記クロメート処理や熱硬化性
樹脂皮膜コーティングなどの被覆作業を考慮すると、形
状精度、あるいは生産性や製造コストの点で、熱間圧延
および冷間圧延により製造される板材であることが好ま
しい。
【0028】また、本発明に使用する素材Al材の特性
は、シャッタに要求される強度乃至剛性から、350N/mm2
以上の強度と280N/mm2以上の耐力を有すること、また、
シャッタに加工するために、プレス加工性や90°曲げ加
工性が優れていること、更に耐食性なども優れているこ
とが好ましい。したがって、Al材の種類は、これら高強
度で加工性や耐食性の優れたAl合金として、JIS 5000系
Al合金、その中でも特にJIS 5182 Al 合金のH38 材が好
ましい。なお、この他にも、同様の特性を有するAl合金
として、JIS 5052等のAl合金が使用可能である。
【0029】
【実施例】板厚0.185mm のJIS 5182 Al 合金のH38 板材
を、アルカリ脱脂し、水洗、乾燥した後、表1 、2 に示
す条件で、第一層 (下地層) としてクロメート皮膜、更
に第2 層 (上層) として熱硬化性樹脂皮膜を設けた。表
1 、2 に具体的条件を示すように、各例ともクロメート
や熱硬化性樹脂の種類や塗布量、あるいは無機物粒子の
種類や平均粒子径および含有量、また潤滑剤の種類や含
有量、更に熱硬化性樹脂の温度等を種々変えて実施して
いる。なお、表1 、2 において、各例とも熱硬化性樹脂
はポリウレタン系樹脂、クロメートは塗布型クロメート
としているが、発明例No.16 はアクリル系樹脂、No.17
はアクリルエポキシ系樹脂、No.18 はポリエステル系樹
脂、No.19 はポリエポキシ系樹脂と、発明例No.16 〜19
のみは樹脂の種類を変え、また、発明例No.2のみはリン
酸クロメートとクロメートの種類を変えて用いている。
そして、これらクロメート皮膜および熱硬化性樹脂皮膜
を設けたAl合金板を、プレス加工および90°曲げ加工に
よりシャッタ材に加工し、これらシャッタ材の諸特性、
耐疵つき性、曲げ加工性、耐溶剤溶解性、UVイ
ンキ印刷性を各々試験して評価した結果も表1 、2 に示
す。
【0030】なお、具体的な試験条件について、耐疵
つき性については、鉛筆硬度はJISK5400 の鉛筆硬度試
験、動摩擦係数はバウデン式付着滑り試験機により、3/
16インチ鋼球を使用し、荷重1000gf、摺動速度4mm/秒の
条件で摺動させることにより求めた。また、疵発生個数
は、シャッタ材のサンプル30個を縦150mm ×横250mm×
高さ50mmの箱に詰め、30秒振揺することにより、サンプ
ル30個中の疵の発生した個数を測定した。
【0031】また、曲げ加工性については、前記90°
曲げ加工を内径0mm の条件で実施した際の、90°曲げ内
面の外観を観察し、樹脂皮膜に割れやシワが一切発生し
なかったものを○、樹脂皮膜に微小な割れやシワが発生
しているものの、皮膜の剥離は認められないものを△、
樹脂皮膜に割れやシワが発生し、磁性面に有害な皮膜の
剥離が認められたものを×として評価した。
【0032】更に、耐溶剤溶解性については、シャッ
タ材のサンプルを1.1.1.−トリクロロエチレンに、超音
波を使用しながら6 分間浸漬した後の、樹脂皮膜溶出量
を求めた。
【0033】UVインキ印刷性 (密着性) については、
シャッタ材の表面にUVインキ (RIGBLAK No.10、セイコ
ーアドバンス製) をメッシュNo.270のシルクスクリーン
を用いて、スクリーン印刷した後、UV照射装置 (アイグ
ラフィック製) で120W/cm2×4 秒の条件でUV硬化させ、
印刷部に碁盤目 (1mm)クロスカットを碁盤目数が100個
となるように入れ、その部分をセロハンテープでピール
剥離試験した後、印刷部のインクの剥離状態を観察し、
碁盤目数が100 個の中のインク残存部 (非剥離部) の数
をカウントした。
【0034】表1 から明らかな通り、発明例No.1〜23
は、硬度が6H以上と高く、動摩擦係数は0.08以下と低
く、疵の発生した個数も5 個以下と少なく、90°曲げ加
工においても樹脂皮膜の剥離は無く、樹脂皮膜溶出も殆
どの例で無く、碁盤目剥離も殆ど無い。したがって、
耐疵つき性、曲げ加工性、耐溶剤溶解性、UVイン
キ印刷性のいずれにも優れていることが分かる。なお、
発明例のうち、No.8は、潤滑剤の含有量が5wt%と多いた
め、UVインキ印刷性 (密着性) が若干低くなっている。
また、クロメート皮膜量が比較的低いNo.12 とクロメー
ト皮膜量が比較的高いNo.15 は、いずれも90°曲げ加工
において皮膜の微小なシワ乃至割れが入っており( 評価
△) 他の発明例よりも劣っている。更に、ポリエステル
系樹脂を用いた発明例No.18 ポリエポキシ系樹脂を用い
た発明例No.19 は、耐溶剤溶解性乃至UVインキ印刷性
が、他の発明例よりも劣っている。
【0035】これに対し、表2 から明らかな通り、本発
明範囲から外れた比較例No.24 〜35は、耐疵つき性、
曲げ加工性、耐溶剤溶解性、UVインキ印刷性のい
ずれかが発明例よりも劣っている。より具体的には、比
較例No.24 は無機物粒子の平均粒子径が本発明で規定す
る範囲の上限よりはずれて小さすぎるため、無機物粒子
は熱硬化性樹脂皮膜中に埋没してしまい、皮膜表面に無
機物粒子が存在しがたくなるので、耐疵つき性が劣って
いる。比較例No.25 は無機物粒子の平均粒子径が本発明
で規定する範囲の下限よりはずれて大きすぎるため、熱
硬化性樹脂皮膜より無機物粒子が欠落しやすくなり、欠
落した無機物粒子が磁性面にとって有害なゴミとなる。
比較例No.26 は無機物粒子を含有しないため、耐疵つき
性が劣っている。比較例No.27 は無機物粒子の含有量が
本発明で規定する範囲の下限よりはずれて少なすぎ、耐
疵つき性に劣っている。また、平均粒子径が本発明で規
定する範囲の上限よりはずれて小さすぎるため、無機物
粒子は熱硬化性樹脂皮膜中に埋没してしまい、皮膜表面
に無機物粒子が存在しがたくなるので、耐疵つき性が劣
っている。
【0036】比較例No.28 は潤滑剤を含有しないため、
耐疵つき性が劣っている。比較例No.29 は潤滑剤の含有
量が少なすぎるため耐疵つき性が低い。比較例No.30 は
潤滑剤の含有量が多すぎるためUVインキ印刷性 (密着
性) が低い。比較例No.31 は、熱硬化性樹脂皮膜の乾燥
皮膜重量 (塗布量) 少なすぎ、表面皮膜が薄すぎるた
め、耐疵つき性が低い。また、90°曲げ加工においても
樹脂皮膜の剥離が生じている。比較例No.32 は、熱硬化
性樹脂皮膜形成のための乾燥温度が低すぎ、熱硬化性樹
脂の硬化が不足し、皮膜の硬度が低く、耐疵つき性が低
くなるとともに、熱硬化性樹脂皮膜より無機物粒子が欠
落しやすくなる。また、耐溶剤性なども低い。比較例N
o.33 は、熱硬化性樹脂皮膜形成のための乾燥温度が高
すぎ、熱硬化性樹脂の熱分解が生じ、皮膜が脆くなるこ
とにより、無機物粒子が欠落しやすくなる。また、皮膜
に含む潤滑剤も分解揮発しやすくなり、皮膜の潤滑性が
不足し、耐疵つき性が低い。比較例No.34 は、熱硬化性
樹脂皮膜を有さず、陽極酸化処理された皮膜であるた
め、90°曲げ内面部にて、皮膜が割れて剥離しており、
磁性面にとって有害な微粒子を生じる。比較例No.35
は、熱硬化性樹脂皮膜を有さない例であり、耐疵つき性
が低い。
【0037】以上の実施例から、本発明ディスクシャッ
タ用Al材が、耐疵つき性、曲げ加工性、耐溶剤溶
解性、UVインキ印刷性のいずれにも優れており、フレ
キシブル(フロッピー)ディスク等の磁気ディスク、MO
(光磁気ディスク及びミニディスク等の光ディスクのケ
ースに設けられるディスクシャッタの部材に好適に用い
ることができることが分かる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、耐疵つき性、加工性、
耐溶剤溶解性、UVインキ印刷性のいずれにも優れたディ
スクシャッタ用アルミニウム材を提供することができ
る。従って、これらディスクシャッタの軽量化や薄肉化
を促進する、あるいはディスクシャッタの信頼性を高
め、用途を拡大する等の工業的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シャッタが使用される部分を示すフレキシブル
(フロッピー)ディスクの模式図を示す説明図である。
【図2】シャッタの斜視図である。
【図3】シャッタの断面図である。
【符号の説明】
1:シャッタ、 2:ケース、 3:
記録用ディスク、4:窓、 5:90°曲げ内
側部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−255587(JP,A) 特開 平8−306155(JP,A) 特開 平6−346178(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 23/03 605

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金材の
    表面にクロメート皮膜を設け、更にその上層に熱硬化性
    樹脂皮膜を乾燥皮膜重量として500 〜3000mg/m2 設ける
    ことを含み、該熱硬化性樹脂皮膜が、200 250 ℃の温
    度で乾燥されたものであり、平均粒子径が1 〜10μm の
    無機物粒子を熱硬化性樹脂に対する固形分重量比として
    5 〜20wt% 含むとともに、潤滑剤を熱硬化性樹脂に対す
    る固形分重量比として0.5 〜5wt%含むことを特徴とする
    ディスクシャッタ用アルミニウム材。
  2. 【請求項2】 前記クロメート皮膜が、塗布型クロメー
    ト処理またはリン酸クロメート処理によるものであり、
    Cr量換算で5 〜30mg/m2 設けられている請求項1に記載
    のディスクシャッタ用アルミニウム材。
  3. 【請求項3】 前記熱硬化性樹脂が、アクリル系、アク
    リルエポキシ系、ウレタン系から選択された樹脂である
    請求項1または2に記載のディスクシャッタ用アルミニ
    ウム材。
  4. 【請求項4】 前記無機物粒子が、Al、Si、Mgの内から
    選択された酸化物乃至複合酸化物である請求項1乃至3
    のいずれか1項に記載のディスクシャッタ用アルミニウ
    ム材。
  5. 【請求項5】 前記無機物粒子が、H2Mg4(SiO3) 5 ・H2
    O の化学式で示されるタルクである請求項1乃至4のい
    ずれか1項に記載のディスクシャッタ用アルミニウム
    材。
  6. 【請求項6】 前記潤滑剤が、高分子PEワックス、PTEF
    ワックス及びフッ素系ワックスの内から選択されたもの
    である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のディスク
    シャッタ用アルミニウム材。
  7. 【請求項7】 前記熱硬化性樹脂皮膜の鉛筆硬度が 6H
    上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のディス
    クシャッタ用アルミニウム材。
  8. 【請求項8】 前記ディスクシャッタが、記録用ディス
    クを収容するケースに設けた記録ヘッド用窓部を開閉す
    るシャッタである請求項1乃至7のいずれか1項に記載
    のディスクシャッタ用アルミニウム材。
  9. 【請求項9】 前記アルミニウム材が、 350N/mm 2 以上の
    強度と 280N/mm 2 以上の耐力を有するアルミニウム合金材
    である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のディスク
    シャッタ用アルミニウム材。
  10. 【請求項10】 前記アルミニウム材が、 JIS 5182 アル
    ミニウム合金の H38 材である請求項1乃至9のいずれか
    1項に記載のディスクシャッタ用アルミニウム材。
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