JP3497592B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形体

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JP3497592B2
JP3497592B2 JP04008595A JP4008595A JP3497592B2 JP 3497592 B2 JP3497592 B2 JP 3497592B2 JP 04008595 A JP04008595 A JP 04008595A JP 4008595 A JP4008595 A JP 4008595A JP 3497592 B2 JP3497592 B2 JP 3497592B2
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栄信 小西
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、成形加工性、耐衝撃性
に優れており、かつシルバーの様な成形品の表面外観不
良現象を発生しない、大型成形体の射出成形に適した熱
可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】ゴム成分で補強された樹脂の一種である
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(A
BS樹脂)は、耐衝撃性と成形加工性のバランスに優れ
ているため、自動車、家庭電化製品などの各分野で用い
られている。この中で特に家庭電化製品の表面に使用さ
れる用途では外観が非常に優れていることを要求される
ことが多い。特に表面にシルバー(銀状痕)があるとた
とえそれが僅かな量であっても商品価値を失う場合が多
々ある。
【0003】このようなシルバーの発生は一般的にAB
S樹脂の場合は含有水分量の影響が多いとされており、
成形前の乾燥を十分に行い樹脂の含有水分量を減少させ
ることでほとんどの場合は抑制できる。また、流動性の
高い樹脂を用い成形圧力を抑えることでシルバーの発生
を抑制できる場合もある。しかしながら、成形品が大き
くなりかつ形状が箱型状などで端部にウエルド部があっ
た場合、樹脂の乾燥を十分にして含有水分がほとんど存
在しない状態(200ppm以下)で非常に流動性の良
い樹脂(メルトフローレートが80g/10分以上)を
用いて成形しても、ウエルド部近傍にシルバーを僅かに
発生することがあり、商品価値を失う場合がある。
【0004】このように、ABS樹脂で外観が重要であ
りかつ大型の成形品を成形した場合、シルバーの発生を
完全に抑制し問題のない表面外観を得ることは非常に困
難であり問題になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、成形加工
性、耐衝撃性に優れており、かつシルバーの様な成形品
の表面外観不良現象を発生しない、大型成型体の成形に
適した熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
について鋭意検討した結果、樹脂の組成と分子量分布を
ある特定の範囲に限定することでシルバーの発生を抑制
できることを見いだし、本発明に至った。すなわち、本
発明は、(A)ゴム質重合体5〜70重量%の存在下
に、芳香族ビニル単量体55〜80重量%及びシアン化
ビニル単量体20〜45重量%を含む単量体成分30〜
95重量%、又は芳香族ビニル単量体35〜80重量
%、シアン化ビニル単量体20〜45重量%、及びこれ
らと共重合可能な単量体0.1〜20重量%を含む単量
体成分30〜95重量%、をグラフト重合してなるグラ
フト共重合体7〜99.9重量部と、(B)芳香族ビニ
ル化合物55〜80重量%及びシアン化ビニル化合物2
0〜45重量%を含む単量体成分、又は芳香族ビニル化
合物35〜80重量%、シアン化ビニル化合物20〜4
5重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0.1〜2
0重量%を含む単量体成分、を共重合してなる共重合体
0.1〜93重量部からなる樹脂組成物であって、該組
成物中にゴム質重合体成分を5〜30重量%を含み、さ
らに、該組成物のアセトン可溶成分の数平均分子量(M
n)が20,000〜60,000、重量平均分子量
(Mw)に対するz−平均分子量(Mz)の比(Mz/
Mw)が1.75〜2.20であることを特徴とする熱
可塑性樹脂組成物である。以下、本発明について詳細に
説明する。
【0007】本発明の(A)で用いられるゴム質重合体
としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポ
リイソブチレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合
体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ブタジエ
ン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−メタクリ
ロニトリル共重合体、ブタジエン−α、β−不飽和カル
ボン酸アルキルエステル共重合体(例えばブタジエン−
アクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エ
チル共重合体、ブタジエン−アクリル酸ブチル共重合
体、ブタジエン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合
体、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジ
エン−メタクリル酸エチル共重合体)などのジエン系ゴ
ム質重合体、該ジエン系ゴム質重合体の水素添加物、ア
クリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、フ
ッ素ゴム、シリコンゴムなどの飽和系ゴム質重合体など
が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を混合し
て使用いてもかまわない。これらの中では表面外観の問
題から好ましくはジエン系ゴム質重合体、更に好ましく
はポリブタジエン含有ゴム質重合体が用いられる。
【0008】これらのゴム質重合体は、乳化重合、懸濁
重合、または重合体を乳化剤などにより乳化する方法な
どにより得られる。該ゴム質重合体の平均粒子径は組成
物の流動特性、表面光沢、耐衝撃性及び耐薬品性を向上
させるために0.03〜1.0μmの範囲であることが
好ましい。更に好ましくは0.08〜0.5μm、特に
好ましくは0.1〜0.35μmである。平均粒子径が
0.03μm未満であると耐衝撃性、耐薬品性に劣る。
1.0μmを越えると表面光沢や耐衝撃性に劣る。
【0009】また、(A)で用いられる単量体成分はシ
アン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、又はこれら
及びこれらと共重合可能な他の単量体を含むものからな
る。この中でシアン化ビニル単量体としては、アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル等が用いられる。これら
の中ではアクリロニトリルが好ましい。また、芳香族ビ
ニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、
ハロゲン化スチレン、アルキル化スチレン、ビニルナフ
タレン等が用いられ、これらは混合しても良い。これら
の中ではスチレンが好ましい。
【0010】また、これらと共重合可能な単量体として
は、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、α,
β−不飽和カルボン酸、N−置換マレイミド類、無水マ
レイン酸等が挙げられる。これらの中ではα,β−不飽
和カルボン酸アルキルエステルが好ましい。これらは混
合して用いても良い。α,β−不飽和カルボン酸アルキ
ルエステルとしては例えば、メチルアクリレート、エチ
ルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリ
レート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシ
エチルアクリレート、グリシジルアクリレート、シクロ
ヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジ
ルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘ
キシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレー
ト、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルメタク
リレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリ
レート等が挙げられる。これらの中では、エチルアクリ
レート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、
2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルア
クリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸としては例えばアクリル酸、
メタクリル酸等が挙げられる。N−置換マレイミド類と
しては例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−
シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等
が挙げられる。
【0011】これら単量体成分の割合は芳香族ビニル単
量体が55〜80重量%及びシアン化ビニル単量体が2
0〜45重量%、又は芳香族ビニル単量体が35〜80
重量%、シアン化ビニル単量体が20〜45重量%、及
びその他の共重合可能な単量体が0.1〜20重量%で
あり、合計で100重量%とする。シアン化ビニル単量
体の割合が20重量%より少ないと耐薬品性や耐衝撃性
に劣る。45重量%より多いと成形加工性や光沢などの
外観面に劣る。また、その他の共重合可能な単量体は必
要により添加しても良い。
【0012】この単量体成分30〜95重量%をゴム質
重合体5〜70重量%の存在下にグラフト重合すること
によりグラフト共重合体(A)を得る。この製造方法は
乳化重合、懸濁重合、または重合体を乳化剤などにより
乳化する方法等、公知の方法による。また、本発明の
(B)に用いられる単量体成分はグラフト共重合体
(A)の場合に用いられた単量体成分と同じものを用い
ることができる。この単量体成分の割合は芳香族ビニル
単量体が55〜80重量%及びシアン化ビニル単量体が
20〜45重量%、又は芳香族ビニル単量体が55〜8
0重量%、シアン化ビニル単量体が20〜45重量%、
及びその他の共重合可能な単量体が0.1〜20重量%
であり、合計で100重量%とする。シアン化ビニル単
量体の割合が20重量%より少ないと耐薬品性や耐衝撃
性に劣る。45重量%より多いと成形加工性や光沢など
の外観面に劣る。また、その他の共重合可能な単量体は
必要により添加しても良い。
【0013】この単量体成分を共重合することにより共
重合体(B)を得るが、この製造方法は乳化重合、懸濁
重合、塊状重合及び溶液重合等の公知の重合方法によっ
て製造される。以上のようにして得られたグラフト共重
合体(A)7〜99.9重量部、好ましくは7〜97重
量部と共重合体(B)0.1〜93重量部、好ましくは
3〜93重量部を混合することにより本樹脂組成物を得
る。
【0014】本発明の樹脂組成物におけるゴム質重合体
成分の含有量は組成物100重量%中に5〜30重量%
である。5重量部より少ないと耐衝撃性が劣り、30重
量部を越えると成形加工性が悪くなる。本発明の樹脂組
成物におけるアセトン可溶成分の数平均分子量(Mn)
は20,000〜60,000、好ましくは40,00
0〜60,000であり、かつ重量平均分子量(Mw)
に対するz−平均分子量(Mz)の比(Mz/Mw)が
1.75〜2.20、好ましくは1.80〜2.10で
ある。ここで言及する平均分子量とは、試料中に含まれ
る重合度Pの分子種の分子量をMp、分子数をNpとし
た場合、数平均分子量(Mn)はMn=(ΣMpNp)
/(ΣNp)、重量平均分子量(Mw)はMw=(ΣM
2Np)/(ΣMpNp)、z−平均分子量(Mz)
はMz=(ΣMp3Np)/(ΣMp2Np)で表される
ものである。このような分子量を測定する方法としては
粘度法、光散乱法、沈降平衡法など多数知られている
が、本発明の場合、ゲル・パーミエーション・クロマト
グラフィによる測定(GPC法)により得られた値を用
いる。
【0015】アセトン可溶成分の数平均分子量(Mn)
がポリスチレン換算で20,000未満であると耐衝撃
性に劣り、60,000より高いと成形加工時の樹脂の
流動性に劣るため、流動性を上げるために成形温度を高
める必要があり、焼けを発生しやすくなる。また、z−
平均分子量とは高分子量成分の影響を多く加味した平均
分子量であり、重量平均分子量に対するz−平均分子量
(Mz)の比(Mz/Mw)が大きければ組成物中に高
分子量の成分がより多く入っていることを表すことがで
きるが、この値が1.75〜2.20であるような樹脂
組成物を選択することによりシルバーの発生を抑制する
ことができる。市販されている通常のAS樹脂にはMn
が小さくかつこのような分子量分布を有するものはほと
んどないが、このような分子量分布を得る方法としては
実施例に示すように、例えばアセトン可溶成分の数平均
分子量が20,000〜56,000の低分子量の共重
合体に数平均分子量が80,000〜200,000の
高分子量の共重合体を3〜25重量%、好ましくは3〜
20重量%、更に好ましくは3〜15重量%配合するこ
とにより得ることができる。
【0016】本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定
されるものではなく、公知の技術、例えば、ヘンシェル
ミキサー、タンブラー、ブレンダー等で液状、粉体及び
粒状物を混合し、これを押出機、ニーダー、ミキサー等
で溶融混合する方法、予め溶融させた樹脂に他の樹脂や
液体を直接逐次混合する方法等の各種の方法で製造する
ことができる。
【0017】また、本発明の樹脂組成物に対して、公知
の熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可
塑剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、有
機充填剤、無機充填剤等の各種添加剤、また金属状外観
を付与するためにアルミニウム、銅のような金属を加え
ることは任意である。本発明の樹脂組成物を使用して成
形体を構成する成形法は、一般に用いられる成形方法、
例えば射出成形、射出−押出成形、真空成形、圧空成形
などを用いることができる。この中では好ましくは射出
成形、射出−押出成形、真空成形、特に好ましくは射出
成形法を用いて成形体を得るのが良い。
【0018】本発明の樹脂組成物を使用して得られる成
形体の形状については特に制限されるものではないが、
ウエルド部を1カ所以上有する成形体の成形に使用する
場合に特に効果がある。このような成形体の形状は板
状、箱型状、直方体状、円筒状、あるいはこれらを変形
したものなどがあげられるが、これらの中では特に箱型
状、直方体状の場合に本樹脂組成物を用いる効果が大き
い。また、成形体の大きさも制限されるものではない
が、特に成形体が大型になった場合、例えば成形体の肉
厚(t)が0.5〜10mm、好ましくは1〜5mm、
更に好ましくは2〜4mm、表面積(S)が5×104
〜1×107mm2、好ましくは1×105〜1×106
範囲にあり、かつ肉厚に対する表面積の比(S/t)が
2×104〜2×106のような形状を有する場合に著し
い効果を発揮する。(S)が5×104mm2以下であっ
たり(S/t)が2×104以下である場合は成形が容
易であるので必ずしも本発明で得られた樹脂でなくても
良い。一方(S)が1×107mm2以上であったり(S
/t)が2×106である場合は本樹脂組成物をもって
しても外観や耐衝撃性に満足のいく成形品を得ることは
困難である。さらに、箱型状、直方体状の大きさは特に
短辺の長さ(L1)、長辺の長さ(L2)、高さ(H)
の関係が、短辺の長さ(L1)が250〜1000m
m、好ましくは300〜500mm、短辺の長さに対す
る長辺の長さの比(L2/L1)が1〜10、好ましく
は1〜4短辺の長さに対する高さの比(H/L1)が
0.05〜1、好ましくは0.05〜0.3の範囲にあ
る場合に効果が大きい。
【0019】以上のようにして得られた本発明の樹脂組
成物を用いて得られた成形品は耐衝撃性と優れた表面外
観を要求される用途、例えば家庭電化製品やOA用品、
家具等の扉やふた、パネル、天板などに用いることがで
きる。具体的には、電気冷蔵庫の扉や本体の外枠、洗濯
機のふたや外枠、エアコンの外枠や室外機の枠、テレビ
やオ−ディオ製品のハウジング、ロッカ−、保管庫やキ
ャビネットの扉、机や脇机、ワゴンの引き出し、扉や天
板などが挙げられる。
【0020】
【実施例】次に、実施例及び参考例に基づき本発明をさ
らに詳細に説明する。本発明で用いた分析法を以下に示
す。 (1)アセトン可溶成分の数平均分子量、重量平均分子
量、及びz−平均分子量の測定 樹脂1gにアセトン20mlを加え、振とう機にて可溶
成分が完全に溶解するまで(2時間)振とうした。この
溶液を20000rpmで40分間遠心分離後、可溶分
のみを濾別した後、80℃で4時間乾燥しアセトンを除
き、さらに100℃で1時間減圧乾燥することにより、
アセトン可溶成分を得た。
【0021】次いで、東ソー株式会社製のGPCシステ
ムを用い、展開溶媒にはテトラヒドロフラン(THF)
を、カラムには東ソー製G3000HXL,G4000
HXL,G5000HXL,G6000HXLを用い
て、カラム温度38℃、ポンプ液量1ml/minの条
件下、検出器として示差屈折計(RI)を用い、アセト
ン可溶成分のTHF溶液を測定した。分子量は、あらか
じめ分子量が既知のポリスチレン標準サンプルを測定す
ることにより相対的に分子量を求めた。 (2)シルバーの発生 型締め圧が1300tもしくは1600tの射出成形機
を用いシリンダー温度250℃の条件で図1のような箱
形の形状を有する金型(肉厚 3mm、総表面積 4×1
5mm2、厚みに対する表面積の比 1.3×105)で
射出成形を行いシルバーの発生の有無を目視で判断し
た。「シルバ−の発生なし」を○、「シルバ−の発生
」を×とした。 (3)成形加工性 JIS K7210に基づくメルトフローレートの測定
で評価した(温度;220℃、加重;10Kg)。メル
トフローレートが「30g/10分以上」を○、「30
g/10分未満」を×とした。
【0022】
【参考例1〜4】 〔参考例1〕 グラフト共重合体(A−1)の製造 平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンゴムのラ
テックス45重量部(固形分換算)及び脱イオン水12
0重量部を還流冷却器付き重合槽に入れ、気相部を窒素
置換しながら70℃に昇温した。次いで、これにスチレ
ン40重量部、アクリロニトリル15重量部、t−ドデ
シルメルカプタン0.6重量部、クメンハイドロパーオ
キシド0.2重量部から成る混合液、及び、脱イオン水
50重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレ
ート0.2重量部、硫酸第一鉄0.004重量部、エチ
レンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム塩0.008重量
部から成る水溶液を、5時間要して連続追添加して反応
させた。この間、重合温度を70℃に調節し、追添加終
了後、さらに1時間その状態を維持して重合を完結させ
た。重合率は97%であった。得られた共重合体ラテッ
クスは凝集塩析した後、洗浄乾燥して、白色固体を得
た。
【0023】〔参考例2〕 グラフト共重合体(A−
2)の製造 平均粒子径が0.15μmであるポリブタジエンゴムの
ラテックス40重量部(固形分換算)及び脱イオン水1
00重量部を還流冷却器付き重合槽に入れ、気相部を窒
素置換しながら70℃に昇温した。次いで、これにスチ
レン40重量部、アクリロニトリル20重量部、t−ド
デシルメルカプタン0.4重量部、クメンハイドロパー
オキシド0.15重量部から成る混合液、及び、脱イオ
ン水50重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキ
シレート0.2重量部、硫酸第一鉄0.004重量部、
エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム塩0.008
重量部から成る水溶液を、5時間要して連続追添加して
反応させた。この間、重合温度を70℃に調節し、追添
加終了後、さらに1時間その状態を維持して重合を完結
させた。重合率は95%であった。得られた共重合体ラ
テックスは凝集塩析した後、洗浄乾燥して、白色固体を
得た。
【0024】〔参考例3〕 共重合体(B−1)の製造 完全混合型連続反応器を用い、スチレン、アクリロニト
リル、ブチルアクリレート、エチルベンゼンよりなる単
量体溶液を一定速度で連続追添加しつつ重合系内の反応
率を一定に保ち、反応温度、単量体の組成、エチルベン
ゼンの使用量を調節することにより、アクリロニトリル
含有率30重量%、スチレン含有率63重量%、ブチル
アクリレート含有率7重量%、数平均分子量46,00
0、Mz/Mw1.61であるアクリロニトリル、スチ
レン、ブチルアクリレートの共重合体(B−1)を得
た。
【0025】〔参考例4〕 共重合体(B−2)の製造 完全混合型連続反応器を用い、スチレン、アクリロニト
リル、エチルベンゼンよりなる単量体溶液を一定速度で
連続追添加しつつ重合系内の反応率を一定に保ち、反応
温度、単量体の組成、エチルベンゼンの使用量を調節す
ることにより、アクリロニトリル含有率34重量%、ス
チレン含有率66重量%、数平均分子量120,00
0、Mz/Mw1.53であるアクリロニトリル、スチ
レンの共重合体(B−2)を得た。
【0026】
【実施例1】参考例1で得た(A−1)35重量部、参
考例3で得た(B−1)55重量部、及び参考例4で得
た(B−2)10重量部を押出機を用いて溶融混合し樹
脂組成物を得た。これを射出成形したところ、耐衝撃性
に優れ、かつシルバーの発生のない良好な外観を有する
成形品が得られた。その評価結果を表1に示す。
【0027】
【実施例2、3】共重合体(B−1)と(B−2)の割
合を表1に示す量に変更して実施した以外は実施例1と
同様にして樹脂組成物を得た。実施例1と同様に問題の
ない成形品が得られた。その評価結果を表1に示す。
【0028】
【実施例4】参考例2で得た(A−2)30重量部、参
考例3で得た(B−1)60重量部、及び参考例4で得
た(B−2)10重量部を押出機を用いて溶融混合し、
樹脂組成物を得た。実施例1と同様に問題のない成形品
が得られた。その評価結果を表1に示す。
【0029】
【比較例1】参考例1で得た(A−1)35重量部及び
参考例3で得た(B−1)65重量部を押出機を用いて
溶融混合し樹脂組成物を得た。これは流動性は非常に良
いもののMz/Mwが1.72であり、成形品のウエル
ド部分にシルバーが僅かに発生した。その評価結果を表
1に示す。
【0030】
【比較例2】参考例1で得た(A−1)30重量部、参
考例3で得た(B−1)40重量部及び参考例4で得た
(B−2)30重量部を押出機を用いて溶融混合し樹脂
組成物を得た。これはMz/Mwが1.92であり、シ
ルバーの発生はなかったが流動性が著しく低いために成
形加工が困難でショートショットとバリが同時に発生し
た。その評価結果を表1に示す。
【0031】
【比較例3】参考例2で得た(A−2)40重量部及び
参考例3で得た(B−1)60重量部を押出機を用いて
溶融混合し樹脂組成物を得た。これはMz/Mwが1.
71であり、成形品のウエルド部分にシルバーが僅かに
発生した。その評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】本発明により、成形加工性、耐衝撃性に
優れており、かつシルバーといった成形品の外観不良現
象を発生しにくい、大型成型体の成形に優れた熱可塑性
樹脂組成物を得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の評価に用いた成形体の形状を表すもの
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 55/02 C08L 25/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ゴム質重合体5〜70重量%の存
    在下に、芳香族ビニル単量体55〜80重量%及びシア
    ン化ビニル単量体20〜45重量%を含む単量体成分3
    0〜95重量%、又は芳香族ビニル単量体35〜80重
    量%、シアン化ビニル単量体20〜45重量%、及びこ
    れらと共重合可能な単量体0.1〜20重量%を含む単
    量体成分30〜95重量%、をグラフト重合してなるグ
    ラフト共重合体7〜99.9重量部と、(B)芳香族ビ
    ニル化合物55〜80重量%及びシアン化ビニル化合物
    20〜45重量%を含む単量体成分、又は芳香族ビニル
    化合物35〜80重量%、シアン化ビニル化合物20〜
    45重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0.1〜
    20重量%を含む単量体成分、を共重合してなる共重合
    体0.1〜93重量部からなる樹脂組成物であって、該
    組成物中にゴム質重合体成分を5〜30重量%を含み、
    さらに、該組成物のアセトン可溶成分の数平均分子量
    (Mn)が20,000〜60,000、重量平均分子
    量(Mw)に対するz−平均分子量(Mz)の比(Mz
    /Mw)が1.75〜2.20であることを特徴とする
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物から
    なる成形体であって、ウエルド部が1カ所以上存在する
    樹脂成形体。
  3. 【請求項3】 肉厚(t)が0.5〜10mm、表面積
    (S)が5×104〜1×107mm2、肉厚に対する表
    面積の比(S/t)が2×104〜2×106であって、
    更に短辺の長さ(L1)が250mm〜1000mm、
    短辺の長さ(L1)に対する長辺の長さ(L2)の比
    (L2/L1)が1〜10、短辺の長さ(L1)に対す
    る高さ(H)の比(H/L1)が0.05〜1である成
    形体であって、箱型状又は直方体状の成形体である請求
    項2記載の樹脂成形体。
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