JP3490138B2 - 光磁気記録媒体 - Google Patents

光磁気記録媒体

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JP3490138B2 JP10994394A JP10994394A JP3490138B2 JP 3490138 B2 JP3490138 B2 JP 3490138B2 JP 10994394 A JP10994394 A JP 10994394A JP 10994394 A JP10994394 A JP 10994394A JP 3490138 B2 JP3490138 B2 JP 3490138B2
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、例えば光磁気ディス
ク、光磁気テープ、光磁気カード等の光磁気記録媒体に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】磁性体からなる垂直磁化膜が情報の記録
層として基板上に設けられた光磁気ディスクでは、以下
の方法で情報の記録・再生が行われる。 【0003】記録の際には、まず、強力な外部磁場によ
って記録層の磁化の方向を一方向(上向き、または下向
き)に揃えて初期化した後、記録したいエリアにレーザ
光を照射し、照射部分の温度を記録層のキュリー点近傍
以上、もしくは補償点近傍以上の温度まで昇温させる。
これにより、その部分の保磁力をゼロ、または、ほとん
どゼロとした上で、初期化時とは逆向きの外部磁場(バ
イアス磁場)を印加して磁化の向きを反転させる。レー
ザ光の照射を止めると記録層の温度は常温に戻るので、
反転した磁化が固定される。このようにして、情報が熱
磁気的に記録される。 【0004】再生の際には、直線偏光したレーザ光をデ
ィスクに照射し、その反射光や透過光の偏光面が記録層
の磁化の向きに応じて回転する現象(磁気カー効果、磁
気ファラデー効果)を利用して、光学的な情報の読み出
しが行われる。 【0005】一方、上記のような光磁気記録方式で情報
の記録が行われる光磁気ディスクは、書き換え可能な大
容量記憶素子としても注目されているが、この場合に、
比較的強度の小さな初期化磁界により初期化を行った
後、記録磁界を印加しながら光強度を変調して情報の書
き換えを行い得る光磁気ディスク、いわゆる光変調オー
バーライト可能な光磁気ディスクとして、記録層を交換
結合二層膜で構成したものが従来提案されている。 【0006】さらに、特公平5−22303号公報に
は、初期化磁界をより小さくし、かつ、記録ビットの安
定性を向上するために、図7に示すように、第1〜第3
磁性層11・12・13の三層の磁性層を設けて構成し
た光磁気ディスクが開示されている。記録層としての第
1磁性層11、および、記録補助層としての第3磁性層
13は、それぞれ室温から各キュリー点まで垂直磁化を
示す一方、両層11・13間に設けられた中間層として
の第2磁性層12は、室温で面内磁化を示すと共に温度
の上昇に伴って垂直磁化を示す特性を備えている。ま
た、図8に示すように、第3磁性層13は、その室温で
の保磁力HLが第1磁性層11の保磁力HHよりも小さ
く、キュリー点THは、第1磁性層11のキュリー点TL
よりも高いものが選定されている。なお、図示してはい
ないが、第2磁性層12は、そのキュリー点TMが、第
1・第3磁性層11・13の各キュリー点TH・TLの間
のものが選定されている。 【0007】上記構成の光磁気ディスクにおけるオーバ
ーライトの手順につき簡単に説明すると、図7に示すよ
うに、まず、室温状態で、第1・第3磁性層11・13
の各室温での保磁力HH・HLの間の大きさの初期化磁界
initが印加される。これにより、第1磁性層11はそ
れまでの磁化方向のまま保持され、第3磁性層13の磁
化のみが初期化磁界Hinitに沿って一方向に揃えられ
る。なお、同図において、各磁性層11〜13中の矢印
は、各磁性層11〜13における遷移金属副格子磁化の
方向を示している。 【0008】このとき、第2磁性層12は室温で面内磁
化を示すため、第1磁性層11と第3磁性層13との磁
気的結合力(交換力)を妨げ、これにより、初期化磁界
initの大きさをより小さくして、上記のように第3磁
性層13の磁化方向のみを一方向に揃えることが可能と
なっている。 【0009】次いで、初期化磁界Hinitよりも小さく、
かつ、方向が反対の記録磁界HW を印加しながら、記録
しようとする情報に応じて高レベルIと低レベルIIに強
度変調されたレーザ光が照射される。 【0010】高レベルIのレーザ光が照射されると、照
射部分は、第1・第2磁性層11・12のキュリー点T
L・TMを超え、第3磁性層13のキュリー点TH付近と
なる温度まで上昇する。これにより、第3磁性層13の
磁化は、記録磁界HWに沿って反転し、そして、室温へ
と降温する過程で、垂直磁化を示す第2磁性層12に、
第3磁性層13の磁化方向が界面に作用する交換力によ
り転写され、さらに第1磁性層11に転写される。 【0011】一方、低レベルIIのレーザ光が照射される
と、照射部分は第1磁性層11のキュリー点TL付近の
温度までしか昇温せず、このとき、第3磁性層13は、
その保磁力が記録磁界HW より大きいために、その磁化
方向の反転は生じず、初期化時の磁化方向で保持され
る。そして、室温へと降温する過程で、上記と同様に、
界面に作用する交換力により、第3磁性層13の磁化の
方向が、第2磁性層12を介して第1磁性層11に転写
される。 【0012】このような手順にて、強度変調されたレー
ザ光に応じた新たな記録情報が、第1磁性層11に書き
込まれる。なお、記録情報の再生は、上記した低レベル
IIよりもさらに小さいレベルに強度設定されたレーザ光
を照射することによって行われる。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
光磁気ディスクは、温度の上昇に伴って面内磁化から垂
直磁化を示す第2磁性層12のキュリー点TMと、第1
・第3磁性層11・13の各キュリー点TH・TLとが、
L<TM<THとなる関係を有するように構成されてい
るために、TMをTHに近づけて構成した場合、円滑な光
変調オーバーライトができなくなるという問題を有して
いる。 【0014】つまり、再生時に直線偏光したレーザ光を
照射した場合のカー回転角等がより大きくなるようにし
て再生信号特性を向上するためには、第1磁性層11と
してそのキュリー点TLの高いものを選定することが有
効である。このとき、上記の関係を満足するような第2
磁性層12を選定すると、そのキュリー点TMが第3磁
性層13のキュリー点THに近づいたものとなる。実
際、上記公報記載の光磁気ディスクでは、例えば第3磁
性層13のキュリー点TH=180℃に対し、第2磁性
層12のキュリー点TM=170℃とした構成が例示さ
れている(特公平5−22303号公報第9欄第42行
〜第10欄第12行参照)。 【0015】このようにTHとTMとが互いに接近してい
る構成では、TH付近となる温度まで上昇させようとし
て前記高レベルIのレーザ光を照射したときに、例えば
雰囲気温度の変化等に応じた昇温温度のばらつきによ
り、第2磁性層12のキュリー点TM以下の温度状態
で、第3磁性層13の磁化を記録磁界HW に沿って反転
させることが必要な状態となる。このとき、第2磁性層
12は垂直磁化を示すので、この第2磁性層12からの
交換力が第3磁性層13に作用し、このため、第3磁性
層13における保磁力のみを見込んで設定した記録磁界
Wでは、第3磁性層13の磁化方向の反転が確実には
生じないおそれがある。この結果、上記したように、光
変調オーバーライトが円滑には行われないものとなって
しまう。 【0016】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みな
されたものであり、その目的は、光変調オーバーライト
をより円滑に行うことが可能であり、また、再生信号特
性を向上することが可能な光磁気記録媒体を提供するこ
とにある。 【0017】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の光磁気記録媒体は、室温からキュリー点
まで垂直磁化を示す記録層と、室温からキュリー点まで
垂直磁化を示すと共に室温での保磁力が記録層よりも小
さく、また、キュリー点が記録層よりも高い記録補助層
との間に、室温側で面内磁化を示すと共に、記録補助層
よりも記録層の方が保磁力の小さい温度領域で垂直磁化
を示す特性を備え、かつ、記録層よりも低いキュリー点
を有する中間層が設けられており、上記記録層における
上記中間層と接する面とは反対の面側に、室温での保持
力がほぼ0であり、室温で面内磁化を示し、約100℃
で垂直磁化を示すとともに、キュリー温度が上記記録層
よりも高い磁性層を備えていることを特徴としている。 【0018】 【作用】上記構成の光磁気記録媒体においては、従来同
様の手順にて、光変調オーバーライトを行うことができ
る。すなわち、まず室温状態で、記録層と記録補助層と
の各保磁力の間の大きさの初期化磁界を印加し、記録補
助層の磁化方向のみを初期化磁界の方向に揃える。この
とき、室温側で面内磁化を示す中間層が間に設けられて
いるので、記録層と記録補助層との交換力による結合が
妨げられ、より小さな初期化磁界で上記の初期化を行わ
せることができる。 【0019】次いで、記録磁界を印加しながら、強度変
調されたレーザ光を照射する。高レベルのレーザ光が照
射され、照射部が記録層のキュリー点を超えて記録補助
層近傍の温度まで昇温すると、この記録補助層の磁化方
向は記録磁界の方向に沿って反転する。その後、室温へ
と降温する過程における記録補助層よりも記録層の方が
保磁力の小さい温度領域で中間層が垂直磁化を示すの
で、この温度領域で、この中間層を介して、記録補助層
の磁化方向が界面に作用する交換力により記録層に転写
される。 【0020】一方、低レベルのレーザ光が照射され、照
射部が記録層のキュリー点近傍の温度に昇温する場合に
は、記録補助層の磁化方向は初期化時の方向で維持され
ると共に、記録層の保磁力が低下するので、このとき
も、降温の過程で、上記同様に、記録補助層の磁化方向
が中間層を介して記録層に転写されることになる。この
ように、強度変調されたレーザ光に応じて記録層に新た
な情報の書き込みが行われる。 【0021】そして、上記では、キュリー点が記録層よ
りも低いので、高レベルのレーザ光照射時の昇温温度に
ばらつきが生じる場合でも、中間層と記録補助層との交
換力による結合が生じることはなく、これにより、光変
調オーバーライトを安定して行わせることが可能にな
る。 【0022】しかも、この場合には、中間層のキュリー
点を従来のように記録層と記録補助層との間に設定する
構成ではないので、記録層を、そのキュリー点が従来よ
りも高いもので構成することが可能となり、これによっ
て、再生時におけるレーザ光照射時のカー回転角等がよ
り大きくなるようにすることができるので、再生信号特
性の向上を図ることができる。 【0023】また、上記記録層における上記中間層と接
する面とは反対の面側に、室温での保持力がほぼ0であ
り、室温で面内磁化を示し、約100℃で垂直磁化を示
すとともに、キュリー温度が上記記録層よりも高い磁性
層を備えているため、レーザ光のスポット径よりも小さ
な領域のみを再生に関与させる読み出しを行うことで、
従来より小さな記録ビットの再生を行え、記録密度を向
上させることができる。 【0024】 【実施例】〔前提構成〕 本発明の前提構成について図1ないし図5に基づいて説
明すれば、以下の通りである。 【0025】前提構成の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、図2に示すように、透光性の基板1上に、
誘電体層2と、記録層としての第1磁性層3と、中間層
としての第2磁性層4と、記録補助層としての第3磁性
層5と、保護層6と、オーバーコート層7とを順次積層
して構成されている。 【0026】基板1は、例えば外径86mm、内径15
mm、厚さ1.2mmの円盤状のガラス板からなってお
り、この基板1の片側の面(図において下側の面)に
は、図示してはいないが、光ビーム案内用の凹凸状のガ
イドトラックが反応性イオンエッチング法により形成さ
れている。トラックピッチは1.6μm、グルーブ(凹
部)の幅は0.8μm、ランド(凸部)の幅は0.8μm
である。この基板1のガイドトラック形成面上に、膜厚
80nmのAlNからなる透光性を有する誘電体層2が、
反応性スパッタリングにより形成されている。 【0027】誘電体層2上の第1磁性層3は、希土類金
属−遷移金属合金であるDyFeCoからなっており、Dy、F
e、Coターゲットの同時スパッタリングによって膜厚5
0nmで形成されている。その組成はDy0.21(Fe0.81Co
0.19)0.79で、遷移金属リッチであり、図1に示すよう
に、後述する第3磁性層5よりも低いキュリー点T
C1(=180℃)と、室温で高い保磁力HC1(=120
0kA/m)とを有しており、室温からTC1まで垂直磁
化を示す特性を備えている。 【0028】上記の第1磁性層3上に設けられている前
記第2磁性層4も、希土類金属−遷移金属合金であるDy
FeCoからなっており、Dy、Fe、Coターゲットの同時スパ
ッタリングにより膜厚50nmで形成されている。その
組成はDy0.29(Fe0.80Co0.20)0.71で、希土類金属リッチ
であり、キュリー点TC2は第1磁性層3のキュリー点T
C1よりも低く、140℃である。また、室温での保磁力
C2はほぼゼロである(ここで言う保磁力とは、基板1
に垂直方向の保磁力のことである)。室温では面内磁化
となる特性を示し、温度の上昇に伴って、約100℃で
垂直磁化となる特性を備えている。なお、図1では、こ
の面内磁化となる範囲を破線で示している。垂直磁化と
なる範囲は、実線で示すように、第3磁性層5よりも第
1磁性層1の方が保磁力の小さい温度領域となってい
る。 【0029】第2磁性層4上の前記第3磁性層5は、希
土類金属−遷移金属合金であるGdDyFeCoからなり、Gd、
Dy、Fe、Coターゲットの同時スパッタリングにより膜厚
50nmで形成されている。その組成は(Gd0.40Dy0.60)
0.27(Fe0.70Co0.30)0.73で、希土類金属リッチである。
キュリー点TC3は、第1磁性層3のキュリー点TC1より
も高く、250℃である。また、補償温度TCOMP3は2
00℃であり、室温での保磁力HC3は、第1磁性層3の
保磁力HC1よりも小さく、64kA/mである。この第
3磁性層は、室温からTC3まで垂直磁化を示す特性を備
えている。 【0030】上記第3磁性層5上に、AlNからなる前記
保護層6が膜厚80nmで形成されている。さらにこの
保護層6上に、アクリレート系紫外線硬化樹脂をコーテ
ィングし、紫外線照射により硬化させることによって前
記オーバーコート層7が形成されて、図2に示す断面構
造の光磁気ディスクが構成されている。 【0031】なお、第1〜第3磁性層3〜5の各成膜時
のスパッタリング条件は、到達真空度2.0×10-4
a以下、Arガス圧6.5×10-1Pa、放電電力300
Wである。また、誘電体層2および保護層6の各成膜時
のスパッタリング条件は、到達真空度2.0×10-4
a以下、N2ガス圧3.0×10-1Pa、放電電力800
Wである。 【0032】上記構成の光磁気ディスクを用いて情報の
記録を行う場合、図3に示すように、まず、例えば図の
ように上向きの初期化磁界Hinitが印加され、初期化が
行われる。その後、初期化磁界Hinitと同一方向で、か
つ、Hinitより充分に小さな記録磁界HWを印加しなが
ら、図4に示すように、高レベルIと低レベルIIに強度
変調されたレーザ光を照射することによって、情報の記
録が行われる。 【0033】このような情報記録時の各磁性層3〜5の
磁化状態の変化について、図5を参照して説明する。同
図において横軸は温度を示し、この温度が室温状態で初
期化磁界Hinitが印加されたときと、記録磁界HW を印
加しながら高レベルIおよび低レベルIIのレーザ光が各
々照射されて温度上昇を生じたときの各磁性層3〜5の
各磁化状態の変化を示している。なお、各磁性層3〜5
はそれぞれ希土類遷移金属合金からなっており、この場
合、トータル磁化と、希土類金属副格子磁化および遷移
金属副格子磁化とのいずれかで、各磁性層3〜5の磁化
方向を示すことが可能であるが、図中、各磁性層3〜5
の矢印は、それぞれ遷移金属副格子磁化の向きを示して
いる。 【0034】まず、室温状態で前記の初期化磁界Hinit
が印加されると、各磁性層3〜5の磁化方向は、図中S
1とS2との二つの安定な状態のいずれかとなる。ここ
で、初期化磁界Hinitは、第1磁性層3と第3磁性層5
との各室温での保磁力HC1(=1200kA/m)・H
C3(=64kA/m)の間の値、例えば80kA/mに
設定されている。このため、この初期化によって、第3
磁性層5の磁化だけが、初期化磁界Hinitに沿って一方
向に揃えられる。すなわち、初期化磁界Hinitが例えば
図のように上向きに印加され、第3磁性層5におけるト
ータル磁化が初期化磁界Hinitの方向に向くと、この第
3磁性層5は希土類金属リッチであるので、その遷移金
属副格子磁化の方向が、初期化磁界Hinitの方向とは逆
に下向きに揃えられる。 【0035】このとき、第1磁性層3の保磁力HC1はH
initよりも充分に大きく、また、第2磁性層4は室温で
面内磁化を示すため、第3磁性層5の磁化の向きが第2
磁性層4を通して第1磁性層3に転写されることはな
く、第1磁性層3の磁化の反転は生じない。したがっ
て、この第1磁性層3の磁化方向は、それまでの記録状
態に応じた向きで維持され、この向きに応じて、上記し
たS1とS2とのいずれかの状態となる。 【0036】なお、このような初期化は、記録再生装置
に永久磁石を組み込んでこの磁石により初期化磁界H
initを印加する構成では、光磁気ディスクの回転駆動中
に常時行われることになる。また、例えば電磁石で初期
化磁界Hinitを印加するようにした装置では、記録時に
のみ行われるように構成される。 【0037】上記のように初期化を行った後、前記した
ように、記録磁界HW(例えば16kA/m)を印加し
ながら、新たに記録しようとする情報に応じて、高レベ
ルIと低レベルIIに強度変調されたレーザ光が照射され
る。 【0038】高レベルIのレーザ光は、これが照射され
た領域を、第1・第2磁性層3・4の各キュリー点TC1
・TC2を超え、さらに、第3磁性層5のキュリー点TC3
(=250℃)付近、またはそれ以上の高温まで昇温さ
せるようなレーザパワーに設定されている。一方、低レ
ベルIIのレーザ光は、その照射領域を、第2磁性層4の
キュリー点TC2を超え、第1磁性層3のキュリー点TC1
(=180℃)近傍まで昇温させるようなレーザパワー
に設定されている。 【0039】したがって、まず、高レベルIのレーザ光
が照射され、その照射領域が上記のように昇温する過程
で、前記の状態S1・S2は、図中S3およびS4を経
て、S5の状態となる。すなわち、S3は、昇温の過程
で第2磁性層4が一旦垂直磁化を示すことにより、この
第2磁性層4を介して第1磁性層4に第3磁性層5から
の磁気的結合力(交換力)が作用し、これにより、第1
磁性層3の磁化方向が第3磁性層5の方向に一致した状
態を示している。このS3の状態を一旦経由して、第1
・第2磁性層3・4は、各キュリー点TC1・TC2を超え
るまで温度が上昇することにより、S4およびS5に示
すように、それぞれ磁化がゼロになる。 【0040】一方、第3磁性層5の磁化は、昇温の過程
でのS3の状態では、前記初期化により強制的に揃えら
れた磁化方向を維持したまま、キュリー点TC3付近まで
温度上昇を生じた段階で、その保磁力が低下し、これに
よって、S4からS5への変化状態で示すように、この
ときに印加されている記録磁界HWにより、この記録磁
界HWに沿う方向に反転する。 【0041】なお、上記のような温度上昇に伴い、第3
磁性層5は、S3からS4に移行する過程で、その補償
温度TCOMP3(=200℃)を超える。この時点で、第
3磁性層5における希土類金属と遷移金属との各副格子
磁化の大小関係が逆転する。このため、S4およびS5
の状態では、第3磁性層5の遷移金属副格子磁化の方向
は、室温状態のときとは逆に、トータル磁化の方向と一
致するものとなっている。したがって、図のように、前
記初期化磁界Hinitと同方向の記録磁界HWによって、
第3磁性層5の遷移金属副格子磁化の方向が、S4から
S5に示すように反転する。 【0042】また、このような反転が生じる際、第1・
第2磁性層3・4はそれぞれキュリー点を超えているた
め、これら磁性層3・4からの交換力が第3磁性層5に
は作用せず、これによって、第3磁性層5に反転を生じ
させるための記録磁界HWをより小さくして行うことが
可能となる。 【0043】上記のように、第3磁性層5の磁化方向が
記録磁界HWに沿って反転した後、光磁気ディスクの回
転によってレーザ光の照射部が移行すると、上記のレー
ザ光照射部の温度は室温へと降温する。この冷却の過程
で、第2磁性層4は垂直磁化になり、このとき、その磁
化方向は、第3磁性層5との界面に作用する交換力によ
って、S6に示すように、第3磁性層5の磁化の向きに
揃う。さらに、第1磁性層3と第2磁性層4との界面に
作用する交換力によって、第1磁性層3の磁化方向も、
第2磁性層4の磁化方向に沿うものとなる。 【0044】その後、室温まで冷却されると、S7に示
すように、第2磁性層4は面内磁化に移行し、第1磁性
層3と第3磁性層5の間には交換力は作用しなくなる。
この状態では、光磁気ディスクが回転して室温で初期化
磁界Hinitが印加されても、保磁力が大きい第1磁性層
3の磁化方向は変化せず、保磁力が小さい第3磁性層5
の磁化方向のみが、前記同様に反転し、状態S7は状態
S2に移行する。こうして、第1磁性層3の磁化方向は
初期化磁界の方向とは逆の方向となり、これによって、
高レベルIに変調されたレーザ光に応じた新たな記録情
報が第1磁性層3に書き込まれたことになる。 【0045】次に、前記した初期化後、記録磁界HW
印加しながら低レベルIIのレーザ光が照射されたときの
各磁性層3〜5の各磁化状態の変化について説明する。 【0046】このとき、上記のレーザ光照射部は、第2
磁性層4のキュリー点TC2を超え、第1磁性層3のキュ
リー点TC1付近の温度まで昇温する。この温度は、第3
磁性層5の補償温度TCOMP3よりも低く、また、この温
度状態での第3磁性層5の保磁力は記録磁界HW よりも
大きいため、第3磁性層5の磁化の向きは、記録磁界H
Wによって反転することはない。その後、室温へと降温
する過程で、第2磁性層4が垂直磁化を示すようにな
り、このとき、S3に示すように、第1磁性層3の磁化
方向は、前記と同様に、第2磁性層4を介して第3磁性
層5の磁化方向に沿うものとなる。つまり、初期化後の
状態S1、S2は、いずれも状態S3となる。 【0047】その後、さらに室温まで降温すると、第2
磁性層4は面内磁化に移行し、第1磁性層3と第3磁性
層5との間に交換力は作用しなくなり、状態S3は状態
S1に移行する。こうして、第1磁性層3の磁化方向は
初期化磁界に沿う方向となり、これによって、低レベル
IIに変調されたレーザ光に応じた新たな記録情報が第1
磁性層3に書き込まれたことになる。 【0048】なお、上記のように第1磁性層3に記録さ
れた情報は、図4に示すように、記録時よりもさらに低
いレベルIII のレーザ光を照射し、その反射光における
偏光面の回転を検出することにより再生される。 【0049】このような再生動作特性についての測定結
果について、さらに、具体的な数値例を挙げて以下に説
明する。まず、初期化磁界Hinit=80kA/m、記録
磁界HW=16kA/m、高レベルIのレーザパワー
(PH )=8mW、低レベルIIのレーザパワー(PL
=4mW、記録ビット長=0.78μmに設定して記録
を行った。この結果、消し残りのない光変調オーバーラ
イトを行うことができた。そして、レベルIII の再生レ
ーザパワー(PR )=1mWに設定して再生を行ったと
ころ、信号対雑音比(C/N)=47dBが得られた。 【0050】なお、本前提構成の光磁気ディスクのよう
な中間層4が設けられていない従来の交換結合二層膜を
有する光磁気ディスクでは、初期化磁界Hinitを240
kA/mにすることが必要であった。したがって、この
場合には、より大きな初期化磁界の発生装置が必要であ
り、装置全体の小型化や省電力化を充分には図れないも
のとなっている。 【0051】また、この従来の光磁気ディスクでは、記
録時の高レベルIのレーザパワーPH として10mW以
上に設定した上で、記録磁界HW を16〜40kA/m
とすることが必要であったのに対し、本前提構成の光磁
気ディスクでは、上記のように、PH=8mWの設定
で、記録磁界HW16〜40kA/mの条件下で光変調
オーバーライトが可能であった。すなわち、本前提構成
の光磁気ディスクでは、高レベルIのレーザ光の照射に
より高温状態となったとき、第1・第2磁性層3・4は
それぞれキュリー点を超えているため、記録磁界HW
よる第3磁性層5の磁化の反転は、第1・第2磁性層3
・4からの交換力が作用しない状態で生じるものとな
る。 【0052】このため、記録磁界HW としては、第1・
第2磁性層3・4からの交換力を考慮することなく、第
3磁性層5における高レベルIのレーザ光照射時の高温
状態での保磁力よりも大きければ、高レベルIのレーザ
パワーをより小さく設定しても、或いは、記録磁界HW
の大きさをより小さくしても、第3磁性層5における上
記のような磁化の反転を確実に生じさせることができる
ものとなっている。 【0053】なお、上記した光磁気ディスク(以下、サ
ンプル#1と称する)における第1〜第3磁性層3〜5
の組成や膜厚はこれらに限定されるものではなく、種々
異ならせて構成することが可能である。以下には、この
ように組成等を異ならせて作製した27種の光磁気ディ
スク(以下、サンプル#2〜#28と称する)につい
て、表1〜表4にサンプル#1とは相違する磁性層の組
成と磁気特性を、また、表4に、サンプル#2〜#28
における再生動作特性の測定結果をそれぞれ示す。な
お、これらの表1〜4には、サンプル#1についての前
述の説明の中から、それぞれ該当事項を選んで再掲して
いる。 【0054】サンプル#2〜#8は、サンプル#1に対
し、第2磁性層4の組成が異なるのみで、他の構成はサ
ンプル#1と同一である。それらの第2磁性層4の組成
および磁気特性は表1に示す通りである。これらサンプ
ル#2〜#8における第2磁性層4は、サンプル#1と
同様に、いずれも希土類金属リッチであり、また、室温
での保磁力HC2はほぼゼロである。 【0055】 【表1】 【0056】サンプル#9〜#13は、サンプル#1に
対し、第1磁性層3の組成が異なるのみであり、それら
の第1磁性層3の組成および磁気特性は表2に示す通り
である。これらサンプル#9〜#13の第1磁性層3
は、サンプル#1と同様に、いずれも室温からキュリー
点TC1まで垂直磁化を示し、また、サンプル#9および
#12・#13は、サンプル#1と同様に遷移金属リッ
チ、サンプル#10および#11は補償組成である。 【0057】 【表2】【0058】サンプル#14〜#27は、サンプル#1
に対し、第3磁性層5の組成が異なるのみであり、それ
らの第3磁性層5の組成および磁気特性は表3に示す通
りである。これらサンプル#14〜#27の第3磁性層
5は、サンプル#1と同様に、いずれも希土類金属リッ
チであり、室温からキュリー点TC3まで垂直磁化を示
す。 【0059】 【表3】 【0060】サンプル#28は、サンプル#1での第2
磁性層4の膜厚が50nmであるのに対し、これが30
nmである点のみが異なっている。 【0061】 【表4】 【0062】表4に示すように、サンプル#2〜#28
のいずれに対しても、同表中に示す記録条件の下で、消
し残りのない光変調オーバーライトができ、信号対雑音
比(C/N)=47dBが得られた。 【0063】なお、サンプル#13では、C/N=48
dBが得られた。これは、前記表2に示すように、第1
磁性層3のキュリー点を高くしたことによって、例えば
サンプル#1等よりも記録再生特性が向上したものであ
る。 【0064】一方、第2磁性層4の膜厚をサンプル#1
よりも薄くしたサンプル#28では、同表中に示す記録
条件の下で消し残りのない光変調オーバーライトを行え
ると共に、さらに、記録パルスのデューティーを40%
にしても充分に記録を行うことが可能であった。サンプ
ル#1の記録パルスのデューティーが60%であったこ
とを考慮すると、サンプル#1よりも記録感度の向上し
た光磁気ディスクを得ることができた。 【0065】〔実施例1〕 本発明の実施例について図6に基づいて説明すれば、以
下の通りである。なお、説明の便宜上、前記の前提構成
の図面に示したものと同一の機能を有する部分には同一
の符号を付記し、その説明を省略する。 【0066】本実施例に係る光磁気記録媒体としての光
磁気ディスクは、図6に示すように、誘電体層2と第1
磁性層3との間に、さらに第4磁性層8を設けた点で前
記前提構成のものと異なっている。 【0067】上記の第4磁性層8は、希土類金属−遷移
金属合金であるGdFeCoからなっており、Gd、Fe、Coター
ゲットの同時スパッタリングにより膜厚30nmで形成
されている。その組成はGd0.25(Fe0.80Co0.20)0.75で、
希土類金属リッチであり、補償点なしで、キュリー点
(TC4)は第1磁性層3のキュリー点TC1よりも高く、
300℃である。また、室温での保磁力(HC4)はほぼ
ゼロであり、室温で面内磁化を示し、約100℃で垂直
磁化を示す特性を有している。 【0068】上記の第4磁性層8を備えた光磁気ディス
ク(以下、サンプル#29と称する)に対し、表5に示
す記録条件の下で、消し残りのない光変調オーバーライ
トができた。なお、同表には、比較のため、前記サンプ
ル#1での記録条件も再掲している。 【0069】 【表5】 【0070】サンプル#1でのC/N(信号対雑音比)
が47dBであるのに対し、本実施例でのC/Nは49
dBであり、信号品質が向上した。これは、TC4>TC1
に設定したので、カー回転角が大きくなったためと考え
られる。 【0071】また、記録ビット長が短くなると、サンプ
ル#1ではC/Nが急激に低下したが、サンプル#29
ではC/Nがあまり低下しなかった。これは、第4磁性
層8が室温で面内磁化を示し、レベルIII の再生レーザ
パワーのレーザ光を照射すると垂直磁化を示すようにな
るので、短い記録ビットであっても、隣接記録ビットか
らの影響を受けずに再生できたためである。 【0072】すなわち、第4磁性層8に再生用のレーザ
光が照射されると、照射された部位の温度分布はほぼガ
ウス分布になる。このとき、スポット径よりも小さい中
心近傍領域の昇温温度が、第4磁性層8における垂直磁
化を示す温度を超えるようにレーザ光の強度を設定し
た。このとき、第4磁性層8における上記中心近傍領域
のみの磁化が、面内磁化から垂直磁化に移行する。この
垂直磁化に移行した部分の第4磁性層8および第1磁性
層3の二層間の交換力により、第4磁性層8の磁化の向
きが第1磁性層3の磁化の向きに従う。 【0073】これにより、レーザ光照射部位の中心近傍
のみが極カー効果を示すようになり、該部位からの反射
光に基づいて情報が再生される。 【0074】レーザ光照射部が移動して次の記録ビット
を再生するときは、先の再生部位の温度は低下し、垂直
磁化から面内磁化に移行するため、極カー効果を示さな
くなる。このことは、第1磁性層3に記録された磁化が
第4磁性層8の面内磁化によりマスクされて読み出され
ないということを意味している。これにより、雑音の原
因となり、再生の分解能を低下させる隣接ビットからの
信号混入がなくなる。こうして、レーザ光のスポット径
よりも小さな領域のみを再生に関与させる読み出しを行
えるので、従来より小さな記録ビットの再生が行え、記
録密度を向上し得るものとなっている。 【0075】以上の説明のように、上記実施例の光磁気
ディスクにおいては、初期化後に記録磁界HWを印加し
ながら、高レベルIと低レベルIIとに強度変調されたレ
ーザ光を照射することにより、重ね書きによる情報の書
き換え、すなわち、光変調オーバーライトを行うことが
可能である。 【0076】しかも、上記では、第1磁性層3と第3磁
性層5との間に設けられている第2磁性層4が、室温で
ほぼ面内磁化を示すと共に、第1・第3磁性層3・5よ
りもキュリー点の低いもので構成されているので、初期
化磁界Hinitを低減することが可能であると共に、さら
に、記録時のレーザ光のパワーの低減、或いは、記録磁
界HWの低減が可能である。また、第3磁性層5と第1
・第2磁性層3・4の磁気的結合が確実に抑制されるの
で、高レベルIのレーザ光照射時の昇温温度がばらつい
たとしても、安定した光変調オーバーライトを行うこと
が可能となっている。 【0077】さらに、上記実施例では、第3磁性層5が
室温とキュリー点TC3の間に補償温度TCOMP3 を有する
ので、初期化磁界Hinitと記録磁界HW とを互いに同一
方向に設定することができる。このため、例えば両磁界
の発生部を互いに近接させて装置内に設けたり、或いは
両発生部による磁界の組合わせで初期化磁界Hinitと記
録磁界HW とを設定すること等が可能になるので、装置
の小型化や省電力化を図ることができる。 【0078】なお、上記実施例は本発明を限定するもの
ではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば第1〜第4磁性層3〜5・8の材料や組成は、上
記の実施例に挙げたもの以外のものとすることが可能で
ある。例えば、第1〜第3磁性層3〜5の材料として、
Gd、Tb、Dy、Ho、Ndから選ばれた少なくとも1種の希土
類金属と、Fe、Coから選ばれた少なくとも1種の遷移金
属からなる合金を使用しても、同様の効果が得られる。 【0079】また、上記の材料に、さらに、Cr、V、N
b、Mn、Be、Ni、Ti、Pt、Rh、Cuのうち、少なくとも1
種類の元素を添加すると、第1〜第3磁性層3〜5自体
の耐環境性が向上する。すなわち、水分や酸素侵入によ
る第1・第3磁性層3・5の酸化による特性の劣化が少
なくなり、長期信頼性に優れた光磁気ディスクとして提
供することができる。 【0080】なお、第1磁性層3のキュリー点TC1が1
00℃未満の場合、C/Nがディジタル記録再生で最低
限必要とされている45dBを下まわる。また、キュリ
ー点TC1が250℃を超える場合、記録感度が悪くな
る。このため、第1磁性層3のキュリー点TC1は100
〜250℃が適当である。さらに、第1磁性層3の室温
での保磁力HC1が400kA/m未満の場合、初期化磁
界Hinitにより一部が初期化される恐れがある。このた
め、第1磁性層3の室温での保磁力HC1は400kA/
m以上が適当である。 【0081】一方、第2磁性層4の垂直磁化を示す温度
が80℃未満の場合、室温と、レベルIII の再生レーザ
パワーPR のレーザ光が照射されたときの温度との間の
温度で、第3磁性層5から第2磁性層4への磁化の転
写、第2磁性層4から第1磁性層3への磁化の転写を生
じるおそれがある。この場合、初期化磁界Hinitにより
第3磁性層5だけでなく第1磁性層3も初期化される結
果となるので、第1磁性層3に記録された情報が保持さ
れなくなる。このため、第2磁性層4の垂直磁化を示す
温度は80℃以上が適当である。 【0082】また、第3磁性層5のキュリー点TC3が1
50℃未満の場合、低レベルIIのレーザパワーPLと再
生レーザパワーPR との差が小さくなるので、うまく光
変調オーバーライトが行われない。一方、キュリー点T
C3が400℃を超える場合には記録感度が悪くなる。こ
のため、第3磁性層5のキュリー点TC3は150〜40
0℃が適当である。 【0083】また、第3磁性層5の室温での保磁力HC3
が240kA/mを超える場合、初期化磁界Hinitの発
生装置が大型になり、好ましくない。このため、第3磁
性層5の室温での保磁力HC3は240kA/m以下が適
当である。 【0084】一方、第1〜第3磁性層3〜5の膜厚は、
第1〜第3磁性層3〜5の材料や組成との兼ね合いで決
まるものである。第1磁性層3の膜厚は、20nm以
上、より好ましくは30nm以上であり、あまり厚すぎ
ると第3磁性層5の情報が転写されなくなるので、10
0nm以下が好適である。第2磁性層4の膜厚は、5n
m以上、より好ましくは10〜50nmであり、あまり
厚すぎると第3磁性層5の情報が転写されなくなるの
で、100nm以下が好適である。第3磁性層5の膜厚
は、20nm以上、より好ましくは30〜100nmで
あり、あまり厚すぎると記録感度が悪くなるので、20
0nm以下が好適である。 【0085】また、上記の実施例においては、基板1と
して通常の板ガラスを用いたが、これ以外にも、化学強
化されたガラス、これらのガラス基板上に紫外線硬化型
樹脂層を形成した、いわゆる2P層付きガラス基板、ポ
リカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート
(PMMA)、アモルファスポリオレフィン(AP
O)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビフェニール
(PVC)、エポキシ等の基板1を使用することが可能
である。 【0086】一方、透明誘電体層2としてのAlNの膜厚
は、上記実施例における80nmに限定されるものでは
ない。この透明誘電体層2の膜厚は、光磁気ディスクを
再生する際、第1磁性層3あるいは第4磁性層8からの
極カー回転角を光の干渉効果を利用して増大させる、い
わゆるカー効果エンハンスメントを考慮して決定され
る。再生時のC/Nをできるだけ大きくさせるには、極
カー回転角を大きくさせることが必要であり、このた
め、透明誘電体層2の膜厚は、極カー回転角が最も大き
くなるように設定される。 【0087】この極カー回転角は、再生光の波長、透明
誘電体層2の屈折率により変化する。上記実施例の場合
のAlNの屈折率は2.0であるので、再生光の波長が7
80nmの場合、透明誘電体層2のAlNの膜厚を30〜
120nm程度にすると、カー効果エンハンスメントの
効果が大きくなる。尚、好ましくは、透明誘電体層2の
AlNの膜厚は、70〜100nmであり、この範囲であ
れば極カー回転角がほぼ最大になる。 【0088】また、再生光の波長が400nmの場合、
上記透明誘電体層2の膜厚を半分(=400/780)
にすれば良い。さらに、材料の違い、あるいは、製法に
より透明誘電体層2の屈折率が上記とは異なる場合、屈
折率と膜厚を乗じた値(光路長)が同じになるように、
透明誘電体層2の膜厚を設定すれば良い。 【0089】なお、透明誘電体層2の屈折率は大きいほ
ど、その膜厚は少なくて済む。また、屈折率が大きいほ
ど、極カー回転角のエンハンス効果も大きくなる。AlN
は、スパッタ時のスパッタガスであるArとN2の比率、ガ
ス圧力等を変えることにより、その屈折率が変わるが、
おおむね、1.8〜2.1程度と屈折率が比較的大きな材
料であり、透明誘電体層2の材料として好適である。 【0090】また、透明誘電体層2は、上記のカー効果
エンハンスメントだけでなく、保護層6と共に、第1〜
第3磁性層3〜5、あるいは、第1〜第4磁性層3〜5
・8の希土類金属−遷移金属合金磁性層の酸化を防止す
る役割がある。 【0091】希土類金属−遷移金属合金からなる磁性膜
は非常に酸化されやすく、特に、希土類金属が酸化され
やすい。このため外部からの酸素、水分侵入を極力防止
しなければ、酸化によりその特性が著しく劣化してしま
う。 【0092】そのため、前記実施例では、第1〜第3磁
性層3〜5、あるいは、第1〜第4磁性層3〜5・8の
両側をAlNで挟み込む形の構成を採っている。AlNは、
その成分に酸素を含まない窒化膜であり、非常に耐湿性
に優れた材料である。さらに、AlNは、Alターゲットを
用いて、N2ガス、もしくはArとN2との混合ガスを導入し
て反応性DC(直流電流)スパッタリングを行うことが
可能であり、RF(高周波)スパッタに比べて成膜速度
が大きい点でも有利である。 【0093】AlN以外の透明誘電体層2の材料として、
SiN、AlSiN、AlTaN、SiAlON、TiN、TiON、B
N、ZnS、TiO2、BaTiO3、SrTiO3等が好適である。この
うち、特に、SiN、AlSiN、AlTaN、TiN、BN、ZnS
は、その成分に酸素を含まず、耐湿性に優れた光磁気デ
ィスクを提供することができる。 【0094】一方、保護層6のAlNの膜厚は、上記実施
例では80nmとしたが、これに限定されるものではな
い。保護層6の膜厚の範囲としては、1〜200nmが
好適である。 【0095】上記実施例においては、第1〜第3磁性層
3〜5、あるいは、第1〜第4磁性層3〜5・8を合わ
せた膜厚は100nm以上であり、この膜厚になると光
ピックアップから入射した光はほとんど磁性層を透過し
ない。したがって、保護層6の膜厚に特に制限はなく、
磁性層の酸化を長期にわたって防止するに必要な膜厚で
あれば良い。酸化防止能力が低い材料であれば膜厚を厚
く、高ければ薄くすれば良い。 【0096】保護層6は、透明誘導体層2とともに、そ
の熱伝導率が光磁気ディスクの記録感度特性に影響を及
ぼす。記録感度特性とは、記録、あるいは消去に必要な
レーザパワーがどの程度必要かを意味する。光磁気ディ
スクに入射された光は、そのほとんどが、透明誘導体層
2を通過し、吸収膜である第1〜第3磁性層3〜5、あ
るいは、第1〜第4磁性層3〜5・8に吸収されて熱に
変わる。このとき、第1〜第3磁性層3〜5、あるい
は、第1〜第4磁性層3〜5・8の熱が透明誘導体層
2、保護層6に熱伝導により移動する。したがって、透
明誘導体層2、保護層6の熱伝導率および熱容量(比
熱) が記録感度に影響を及ぼす。 【0097】このことは、光磁気ディスクの記録感度を
保護層6の膜厚で、ある程度制御できるということを意
味し、例えば、記録感度を上げる( 低いレーザパワーで
記録消去を行える) 目的であれば保護層6の膜厚を薄く
すれば良い。通常は、レーザ寿命を延ばすため、記録感
度はある程度高い方が有利であり、保護層6の膜厚は薄
い方が良い。 【0098】AlNはこの意味でも好適で、耐湿性に優れ
るので、保護層6として用いた場合、膜厚を薄くするこ
とができ、記録感度の高い光磁気ディスクを提供するこ
とができる。 【0099】上記実施例では、保護層6を透明誘導体層
2と同じAlNとすることで、耐湿性に優れた光磁気ディ
スクを提供でき、かつ保護層6と透明誘導体層2とを同
じ材料で形成することで、生産性も向上する。 【0100】また、保護層6の材料としては、AlN以外
に、前述の目的、効果を考慮すれば、上述の透明誘導体
層2の材料として用いられるSiN、AlSiN、AlTaN、Si
AlON、TiN、TiON、BN、ZnS、TiO2、BaTiO3、Sr
TiO3が好適である。このうち特に、SiN、AlSiN、AlTa
N、TiN、BN、ZnSは、その成分に酸素を含まず、耐
湿性に優れた光磁気ディスクを提供することができる。 【0101】なお、前記実施例で例示した光磁気ディス
クは、一般には片面タイプと呼ばれる。透明誘電体層
2、第1〜第3磁性層3〜5(あるいは、第1〜第4磁
性層3〜5・8)、保護層6の薄膜部分を総じて記録媒
体層と称することにすると、片面タイプの光磁気ディス
クは、基板1、記録媒体層、オーバーコート層7の構造
となる。これに対して、基板1の上に記録媒体層を形成
したものを二枚、記録媒体層が対向するように接着層で
接着した光磁気ディスクは、両面タイプと呼ばれてい
る。 【0102】この場合の接着層の材料は、ポリウレタン
アクリレート系接着剤が特に良い。この接着剤は、紫外
線、熱及び嫌気性の3タイプの硬化機能が組み合わされ
たものであり、紫外線が透過しない記録媒体層の影にな
る部分の硬化が、熱および嫌気性硬化機能により硬化さ
れるという利点を持っており、極めて高い耐湿性を有
し、長期安定性に極めて優れた両面タイプの光磁気ディ
スクを提供することができる。 【0103】なお、片面タイプは、両面タイプと比べて
素子の厚みが半分で済むため、例えば小型化が要求され
る記録再生装置に有利である。両面タイプは、両面再生
が可能なため、例えば大容量を要求される記録再生装置
に有利である。 【0104】 【発明の効果】以上のように、本発明の光磁気記録媒体
は、室温からキュリー点まで垂直磁化を示す記録層と、
室温からキュリー点まで垂直磁化を示すと共に室温での
保磁力が記録層よりも小さく、また、キュリー点が記録
層よりも高い記録補助層との間に、室温側で面内磁化を
示すと共に、記録補助層よりも記録層の方が保磁力の小
さい温度領域で垂直磁化を示す特性を備え、かつ、記録
層よりも低いキュリー点を有する中間層が設けられてお
り、上記記録層における上記中間層と接する面とは反対
の面側に、室温での保持力がほぼ0であり、室温で面内
磁化を示し、約100℃で垂直磁化を示すとともに、キ
ュリー温度が上記記録層よりも高い磁性層を備えている
構成である。 【0105】これにより、従来同様に、初期化を行った
後、記録磁界を印加しながら、高レベルと低レベルとに
強度変調されたレーザ光を照射することにより、記録層
に新たな情報の書き込みを行うことができる。このと
き、中間層のキュリー点が記録層や記録補助層のキュリ
ー点よりも低いので、高レベルのレーザ光照射時の昇温
温度にばらつきが生じる場合でも、中間層と記録補助層
との交換力による結合が確実に抑制され、これにより、
光変調オーバーライトを安定して行わせることが可能に
なる。 【0106】また、中間層のキュリー点を記録層と記録
補助層との間に設定する必要がないため、記録層を、そ
のキュリー点が従来よりも高いもので構成することが可
能ともなり、これにより、再生時におけるレーザ光照射
時のカー回転角等がより大きくなるようにすることがで
きるので、再生信号特性を向上することができる。 【0107】さらに、磁性層のキュリー温度が記録層の
キュリー温度よりも高いため、カー回転角が大きくな
り、信号品質を向上させることができるとともに、従来
より小さな記録ビットの再生を行うことができ、記録密
度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例での光磁気記録媒体における
第1〜第3磁性層の保磁力の温度依存性を示すグラフで
ある。 【図2】本発明の前提構成である光磁気記録媒体の概略
の構成を示す断面模式図である。 【図3】図2の光磁気記録媒体における記録プロセスを
示す説明図である。 【図4】図2の光磁気記録媒体に照射されるレーザ光の
強度を示す説明図である。 【図5】図2の光磁気記録媒体での記録動作時の磁化状
態の変化を示す説明図である。 【図6】本発明の一実施例における光磁気記録媒体の概
略の構成を示す断面模式図である。 【図7】従来の光磁気記録媒体の構成および記録プロセ
スを示す説明図である。 【図8】図7の光磁気記録媒体における各磁性層の保磁
力の温度依存性を示すグラフである。 【符号の説明】 1 基板 2 誘電体層 3 第1磁性層(記録層) 4 第2磁性層(中間層) 5 第3磁性層(記録補助層) 6 保護層 7 オーバーコート層 8 第4磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 広兼 順司 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (72)発明者 高橋 明 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (72)発明者 太田 賢司 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−188449(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 11/105

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】室温からキュリー点まで垂直磁化を示す記
    録層と、室温からキュリー点まで垂直磁化を示すと共に
    室温での保磁力が記録層よりも小さく、また、キュリー
    点が記録層よりも高い記録補助層との間に、室温側で面
    内磁化を示すと共に、記録補助層よりも記録層の方が保
    磁力の小さい温度領域で垂直磁化を示す特性を備え、か
    つ、記録層よりも低いキュリー点を有する中間層が設け
    られており、 上記記録層における上記中間層と接する面とは反対の面
    側に、室温での保持力がほぼ0であり、室温で面内磁化
    を示し、約100℃で垂直磁化を示すとともに、キュリ
    ー温度が上記記録層よりも高い磁性層を備えていること
    を特徴とする光磁気記録媒体。
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