JP3488639B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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JP3488639B2
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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14008Structure of acoustic ink jet print heads

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインク液を液滴化し
て被記録体上に飛翔させることにより画像を記録するイ
ンクジェット記録装置に係り、特に、圧電素子により放
射される超音波ビームの圧力によりインク滴を吐出させ
て被記録体上に飛翔させるインクジェット記録装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】インク液を液滴化して被記録媒体上に飛
翔させることにより画点を形成し画像を記録する装置
は、インクジェットプリンタとして実用化されている。
このインクジェットプリンタは他の記録方式と比べて騒
音が少なく、現像や定着などの処理が不要であるという
利点を有し、普通紙記録技術として注目されている。現
在までに数多くのインクジェットプリンタの方式が提案
されているが、特に、特公昭56−9429号公報や特
公昭61−59911号公報等に開示されている発熱体
の熱により発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる
方式、および特公昭53−12138号公報等に開示さ
れている圧電体の変位による圧力パルスによりインク滴
を飛翔させる方式が代表的なものである。
【0003】しかし、これらの方式では溶媒の蒸発や揮
発によって局部的にインクの濃縮が生じやすく、また、
それぞれの解像度に対応する個別のノズルが細いため、
ノズルに目詰まりを生じやすいという問題がある。特
に、蒸気の圧力を利用する方式では、インクとの熱的あ
るいは化学的な反応等により生じる不溶物の付着が、ま
た圧電体の変位による圧力を利用する方式では、インク
流路等における複雑な構造がさらに目詰まりを誘起しや
すくしている。数十から百数十のノズルを使用している
シリアル走査型のへッドではその目詰まりの頻度を低く
抑えることができるが、数千のノズルを必要とするライ
ン走査型ヘッドでは確率的にかなり高い頻度で目詰まり
が発生し、信頼性の点で大きな問題となっている。さら
に、これらの方式は解像度の向上には適していないとい
う欠点もある。
【0004】これらの欠点を克服するために、薄膜の圧
電体から発生する超音波ビームの圧力を用いてインク液
面からインク滴を飛翔させるという、超音波を用いる方
式が提案されている(IBM TDB,vol.16,
No.4,1168頁(1973−10)、特開昭63
一162253号公報、特開昭63−166548号、
特開昭63−312157号公報、特開平2−1844
43号公報等参照)。この方式は個別のドット毎のノズ
ルやインク流路間の隔壁を必要としないいわゆるノズル
レス方式であるために、ラインヘッド化する上での大き
な障害であった目詰まりやそれからの復旧という問題が
ない。また、この方式では、非常に小さい径のインク滴
を安定に飛翔させることができるため、高解像度化にも
適している。
【0005】ところで、本出願人は、超音波ビームの放
射圧によりインク液面からインク滴を吐出させて被記録
体上に飛翔させて画像を記録する上記タイプのインクジ
ェット記録装置において、従来の方式では困難であった
高解像度化を図るために、複数の圧電素子を所定の間隔
で配置し構成して、その一部の圧電素子群に所定の左右
対称の割り当てとなる位相差を与えることによって駆動
してインク液面近傍に超音波ビームを集束させ、それに
よりインク滴を飛翔させ、前記一部の圧電素子群の組み
合わせ位置を移動させる駆動手段であるリニア電子走査
を具備したインクジェット記録装置を提案してきてい
る。このような複数の圧電素子を各々位相制御してイン
ク液面上の1点に音波を集束させる方式(フェーズドア
レイ方式)を用い、その同時駆動する圧電素子群を圧電
素子の配列間隔に従って移動させることにより、インク
滴の飛翔間隔を非常に細かくすることが可能となる。し
かし、より高解像度化を図ろうとすると、基本的には圧
電素子の配列間隔を狭くする必要があるが、圧電素子の
機械加工精度や、各圧電素子からの電極の取り出し密度
等の問題から、圧電素子の配列間隔を狭くすることには
限界がある。そこで、圧電素子としては、個別の圧電体
を用いるのではなく、板状の圧電体に対し、駆動信号を
印加する個別電極のみをアレイ状に分割パターニングし
て設け、板状の圧電体をこれら個別電極によって圧電素
子として機能的に分離させる構造も提案している。圧電
素子の個別電極の引き出しは、支持部材上に同じ配列ピ
ッチで形成された引き出し電極を個別電極と対向させて
引き出すことによって行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のインクジェット記録装置は、より一層の高解像度・
高速記録を達成するためにはなお解決しなければならな
い問題があることがわかった。
【0007】すなわち、従来の超音波方式のインクジェ
ット記録装置のヘッドは、超音波の集束点近傍に発生す
る大きな圧力でインク液を吐出させるため、インク液面
が大きく変動すると、インク滴の吐出に大きなエネルギ
ーを必要としたり、インク滴が吐出しない現象が発生す
る。このインク液面の変動は、インク液保持室に設けら
れたインク滴吐出用のスリットとインクの表面張力によ
り、インク液面が保持される。しかし、長尺のヘッドに
おいては、ヘッドが傾いた際にインク液面の変動が許容
値を超える場合がある。このような場合には、インク滴
の吐出が不安定になったり、全く吐出しないこともあ
り、解像度の低下にも至る。
【0008】従って、このようなインク液面の変動に対
応するために、安定にインク滴を吐出させるような構造
のスリットを提供すれば、解像度をより一層高度のもの
とすることができることが明らかである。
【0009】すなわち、本発明は、安定にインク滴を吐
出させ得る構造のスリットを有し、もってより一層の高
解像度を達成し得るインクジェット記録装置を提供する
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、インク液を保持し、インク滴を吐出させ
るスリットを設けたスリット板を備えるインク液保持室
と、前記インク液と音響的に接続された圧電素子から構
成される超音波発生手段と、前記超音波発生手段を駆動
する駆動手段と、前記超音波発生手段上に形成され、前
記超音波発生手段から放射される超音波を前記インク液
中で集束させる音響レンズを含む超音波集束手段とを備
え、前記スリットの一部あるいは複数の部分でスリット
幅よりも狭い狭窄部分が存在することを特徴とするイン
クジェット記録装置を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。全図に渡り、同一部分は、同一符
号で示されている。まず、図1〜図3を参照して、本発
明のインクジェット記録装置のヘッド部の基本的な構成
を説明する。この基本的な構成は、個々の要素について
特段の指摘がない限り、本発明全体に適用し得るもので
ある。
【0012】図1は、本発明の第1の態様に係るインク
ジェット記録装置の記録ヘッド部の斜視図である。図1
に示すインクジェット記録装置の記録ヘッド部は、超音
波発生手段を構成する平板状圧電体12を支持部材11
上に有する。
【0013】圧電体12は、超音波の周波数や素子の大
きさ等によってチタン酸鉛(PT)、ジルコン・チタン
酸鉛(PZT)等のセラミック材料、フッ化ビニリデン
と三フッ化エチレンとの共重合体等の高分子材料、ニオ
ブ酸リチウム等の単結晶材料、酸化亜鉛等の圧電性半導
体材料で形成することができる。また、支持部材11
は、ガラス等の材料で形成することができる。
【0014】圧電体12の下面には、互いに分離した複
数の個別電極13が、それぞれ、形成されている。圧電
体12は、これら個別電極13により、機能的に複数の
圧電素子に区分され、圧電素子アレイを構成する。他
方、圧電体12の上面には、一体の共通電極14が形成
されている。より詳細には、個別電極13と共通電極1
4との重複部分における圧電体12の領域が圧電素子と
して機能する。電極13および14は、チタン、ニッケ
ル、アルミニウム、銅、金等の金属材料を蒸着やスパッ
タにより薄膜として形成することができる。あるいは、
これら電極13および14は、ガラスフリットを銀ペー
ストに混合したものをスクリーン印刷法により印刷し、
これを焼き付けることによっても形成することができ
る。個別電極13と共通電極14の対応部分とが各対向
電極を構成する。
【0015】支持部材11の一端部側には、圧電体12
の下面に形成された個別電極13と同じ間隔・ピッチ
で、複数の個別引き出し電極15が形成されており、こ
の支持部材11上の各個別引き出し電極15と圧電体1
2下面上の各個別電極13とは、導電性接着剤(図1に
おいて図示せず)を介して整合して圧着され、電気的に
接続されている。支持部材11上の引き出し電極15
は、支持部材11の端部上に配置された駆動回路16に
ボンディングワイヤ17によって接続され、圧電体12
の上面に形成された共通電極14も、図示しない配線に
より、駆動回路16に接続されている。
【0016】共通電極14を介して圧電体12上には、
超音波集束手段を構成するフレネルレンズ18が設けら
れている。このフレネルレンズ18は、共通電極を介し
て圧電体12の全面を覆うように形成されたレンズ基材
181を含む。このフレネルレンズ基材181には、そ
の中央から対称的な位置に一対毎にフレネルの輪帯理論
に基づいて所定のピッチで複数の溝(図1においては、
8つの溝182a〜182hであり、182aと182
b、182cと182d、182eと182f、182
gと182hが対称的に形成されている:以下、図面に
おいても、これら溝を単に符号182で表示することが
ある。)が、各個別電極13により区分された圧電素子
の配列方向(主走査方向に相当)に平行に形成され、フ
レネルレンズ18となっている。各溝182の深さは、
通常は、溝182の上面と底面から照射される超音波の
位相を半波長シフトさせるように、それぞれレンズ基材
181中の超音波の波長の(2m+1)/4倍(mは0
以上の整数)に近い値に設定されている。
【0017】本発明において、このフレネルレンズ基材
181は、圧電素子とインク液との音響的マッチングを
取るための音響マッチング層としても機能することが好
ましい。そのためには、フレネルレンズ基材181を音
響インピーダンスZm が圧電体の音響インピーダンスZ
p とインク液の音響インピーダンスZi との積の平方根
(Zm =(Zp ×Zi 1/2 )に近い値を有する材料で
形成することが望ましい。そのような材料としては、エ
ポキシ樹脂、ポリイミド等の高分子材料、あるいはそれ
ら高分子材料に音響インピーダンスを調整するために繊
維またはアルミナもしくはタングステン等の粉末を混合
したものを例示することができる。
【0018】また、支持部材11上には、フレネルレン
ズ18を底面とする、インク液22を収容するインク液
保持室19が設けられている。このインク液保持室19
は、インク液22を囲む側壁が、フレネルレンズ基材1
81の両端から上方に向かって合一するように傾斜して
おり、その上部には、主操作方向に延びるスリット21
を有するスリット板20が設けられている。インク滴
は、スリット21から吐出される。
【0019】図2は、本発明の第2の態様に係るインク
ジェット記録装置のヘッドの斜視図である。図2に示す
ヘッドは、個別引き出し電極がインク保持室19の一方
側のみではなく、両側において互い違いに圧電素子の個
別電極13を反対方向に支持体11上に引き出している
こと以外は、図1に示すヘッドと同様の構成を有する。
すなわち、個別引き出し電極151は、各圧電素子の個
別電極13を一つ置きに一方側に引き出し、個別引き出
し電極152は、個別引き出し電極151と接続されて
いない各圧電素子の個別電極を反対側に(一つ置きに)
引き出している。これに合わせて、個別引き出し電極1
52は、支持部材11の他端部上に配置された駆動回路
23にボンディングワイヤ24によって接続されてい
る。
【0020】図3には、本発明のインクジェット記録装
置のヘッド部における圧電素子および超音波集束レンズ
基材を含む領域部分を拡大して示す断面図である。図3
に示すヘッドは、共通電極14が、副走査方向において
圧電体の両端から離間して形成され、圧電体12の共通
電極14と個別電極13が重なり合わない領域上に超音
波を遮蔽する遮音部材31aおよび31bがそれぞれ設
けられている。このような遮音部材31aおよび31b
は、レンズ基材181とは異なる材料であって、圧電体
12から放射される超音波を遮蔽し得る材料、例えば、
シリコーン樹脂で形成することができる。このように遮
音部材31a、31bを設けることにより、共通電極1
4の周辺に相当する圧電体部分からも発振され得る超音
波遮蔽することができ、従ってサイドローブの発生を抑
制して効率的なインク液滴の飛翔を行わせることができ
る。遮音部材31aおよび31bは、図1および図2の
いずれのヘッド構造にも適用し得る。
【0021】なお、図1〜図3に示す構成のヘッドにお
いて、圧電素子アレイは、それぞれ、例えばストライプ
状の複数の個別圧電体を間に非整合層を介して並置し、
各個別圧電体の一方の表面同士を共通に接続して共通電
極を設け、各個別圧電体の他方の表面に個別に個別電極
を設けることによっても構成することができる。
【0022】次に、上記各インクジェット記録装置にお
ける超音波の集束方法および圧電素子の駆動方法の一例
を説明する。圧電素子12の配列方向(主走査方向)に
おける超音波の集束は、個別電極13により個別アレイ
状に動作される圧電体12からなる圧電素子の一部の圧
電素子群(同時駆動素子群)に対して所定の遅延時間を
設定してそれらを同時に駆動し、そのとき各圧電素子か
ら放射される超音波の位相を制御して、インク液面近傍
で超音波の強度が局所的に強くなるように、すなわち焦
点を結ぶように動作させることによって行う。具体的に
は、同時駆動素子群の中心部の遅延時間が最も長く、外
側に向かうにつれて徐々に遅延時間を短くするものであ
る。一方、アレイ状の圧電素子の配列方向に対して直行
する方向(本発明において、副走査方向という)におけ
る超音波の集束は、音響レンズ、ここではフレネルレン
ズ18によって行う。このように二方向からの超音波の
集束により、インク液面上の任意の位置から超音波の圧
力でインク滴を吐出、飛翔させる。インク滴の飛翔位置
は、同時に駆動する圧電素子群を電子的に走査すること
により、変えることが可能である。さらに、アレイ状に
配列された圧電素子の中で、前記同時駆動素子群を複数
個設けることにより同時に複数のインク滴を飛翔させる
ことができる。
【0023】もう一つは、フレネル輪帯論に基づいて、
同時駆動素子数を2種類にグループ分けし、一方を駆動
するタイミングを他方に対し位相をπだけシフトとする
というものである。これをフレネル駆動と呼ぶことにす
る。
【0024】なお、副走査方向の超音波集束度合が強け
れば、主走査方向は複数素子を同時に駆動するのみで、
遅延時間を与えて集束させなくてもインク滴は飛翔する
ので、遅延時間を与えなくてもよい。
【0025】次に、図4〜図6を参照して、音響フレネ
ルレンズの表面に気泡が残留し難いヘッド構造について
説明する。このヘッド構造は、高効率でインク滴を飛翔
させることができ、記録速度の高速化あるいは省電力化
を達成し得るインクジェット記録装置を提供することが
できる。そのために、フレネルレンズの溝を少なくとも
部分的にレンズ表面部材で充填して、レンズ基材の表面
を実質的に平坦化させる。
【0026】図4は、図1〜図3に示す各ヘッドに適用
し得るフレネルレンズの構造を示している。レンズ基材
181の表面領域内に形成された溝182は、それぞれ
レンズ表面材41により充填され、凹凸がなくなり、レ
ンズ基材181の表面は、平坦化されている。各溝18
2は、先にも延べたように、フレネル輪帯理論に基づい
て形成されており、中心から下記の式1あるいは式2で
定義される距離xnにある地点を凹凸の境界点として設
計、加工されている。
【0027】<式1> xn={[(2n−1)λi/2]×[F+(2n−
1)λi/8]}1/2 <式2> xn=(nλiF)1/2 上記式1および式2において、λiはインク液22中で
の超音波の波長、Fは焦点距離(インク液22の深
さ)、nは1以上の整数である。
【0028】また、各溝182の深さ(d)は下記式3
で定義される値に加工される。
【0029】<式3> d=(2n−1)/2(1/λs−1/λl) 式3において、λsは溝内に充填したレンズ表面材41
中での超音波の波長、λlはレンズ基材181中での超
音波の波長、nは1以上の整数である。
【0030】さらに、圧電素子、レンズ基材181、レ
ンズ表面材41およびインク液22の音響インピーダン
スZは、この順に(積層順に)、Z(圧電素子)≧Z
(レンズ基材)≧Z(レンズ表面材)≧Z(インク液)
の関係を満たしている。このように音響インピーダンス
が一定であるか、一方向になだらかに変化することによ
り、圧電素子から放射された音波を効率よくインク液ま
で伝播させることが可能になる。
【0031】さらに、レンズ基材181の表面に設けら
れた凹凸部のそれぞれの厚みtlは、下記式4ので規定
される値に近いことが望ましく、それにより、レンズ基
材181のそれぞれの界面での音波の反射を防止するこ
とが可能となることがわかった。
【0032】<式4> tl={(2n−1)/4}×λl 式4において、λlはレンズ基材181中での超音波の
波長、nは1以上の整数である。
【0033】さらに望ましくは、同様にレンズ表面材4
1の厚みtsが、下記式5によって規定される値に近い
ことが望ましく、それにより、レンズ表面材41の界面
での音波の反射を防止することが可能となることがわか
った。
【0034】<式5> ts={(2n−1)/4}×λs 式5において、λsはレンズ表面材41中での超音波の
波長、nは1以上の整数である。図4に示す態様では、
レンズ表面材181の厚みtsは、レンズ基材181の
表面領域内に形成された各溝182の深さdに等しい。
【0035】しかしながら、実際的に式3、式4、式5
の条件をすべて満たす材料を見出すことは困難である。
フレネルレンズの場合、凹面レンズほどの高い集束度を
得ることは本来難しく、反面、波の位相の精度が悪くて
も大きな集束度低下として表れない傾向がある。従っ
て、式4に示したように、レンズ基材181の凹部およ
び凸部の厚みのそれぞれが、レンズ基材181の中での
超音波の波長の(2n−1)/4倍になるようレンズ基
材181の形状を決定して、良好な音響マッチング効果
が得られることを優先し、必ずしも式3を満足して凹部
と凸部から放射されたそれぞれの超音波の位相差が、イ
ンクと接する最表面において半波長の整数倍でなくても
よい。
【0036】図4に示したフレネルレンズ構造は、レン
ズ基材181内に形成された溝182の中にレンズ表面
材41が充填され、表面全体が平坦化されているので、
インク液22中に混入した気泡が音響レンズの表面に残
留することを防止することが可能である。
【0037】図5は、レンズ表面材41が、溝182の
内部のみならず、レンズ基材181の凸部の表面を含め
て表面全体に形成され、レンズ基材181の表面が平坦
化されているフレネルレンズ構造を示す。このように、
表面全体が平坦で、レンズ基材181の全面がレンズ表
面材41のみに覆われることにより、インク液22は複
数の異種材料と界面を構成せず、1種類のレンズ表面材
41とのみ界面を構成するので、インク液22中に混入
した気泡が音響レンズの表面に残留することを防止する
効果がより高くなる。
【0038】図5に示す構造では、レンズ基材181内
の溝182の深さdとレンズ表面材41の溝底からの厚
みtbを別々に設定することができ、式3、式4、式5
の条件を満たす材料の選定および寸法設計が容易になる
ため、より効率的に音波を放射し、集束することが可能
となる。また、より好ましくは、レンズ基材181の凸
部上のレンズ表面材41の厚みは、レンズ表面材41中
での波長λsの1/4倍以下であることが、音波放射効
率の点で有効である。
【0039】図6は、レンズ表面材41が溝182の内
部途中まで、すなわち部分的にしか充填されていないフ
レネルレンズ構造を示す。この構造ではフレネルレンズ
18の表面は完全には平坦にならないものの、表面にな
お残る凹部のアスペクト比(残存凹部の深さ/溝182
の幅)が0.5以下であれば、インク液22中に混入し
た気泡の残留防止に有効であり、レンズ基材181の表
面は、実質的に平坦であるということができる。この場
合、レンズ基材181の凹凸部の厚みおよびレンズ表面
材41の厚さは、それぞれ、式4、式5の条件を満たす
ように設計されることが音波放射効率の点で望ましい。
さらに、レンズ表面材41としてインク液とほぼ音速が
等しい材料を用いることが、音波集束効率の向止のため
に、より好ましい。
【0040】以下、音響フレネルレンズの表面に気泡が
残留し難いヘッド構造についての例を説明する。これら
の例では、フレネルレンズ以外は、図1に示す構造のイ
ンクジェット記録装置のヘッドを作製した。 例1−1 圧電体12として、誘電率200のチタン酸鉛系圧電セ
ラミックを用いた。その両面にTi/Au積層電極をス
パッタ法により、それぞれの厚さが0.05μm、0.
3μmになるように形成し、3kV/mmの電界を印加
して分極処理を行った。その後エッチングにより個別電
極13を形成し、1素子の幅60μm、電極間隔26μ
m(個別電極13の配列間隔86μm=25.4mm/
300)になるようにした。また、圧電体の副走査方向
の長さは5mmとした。
【0041】一方、ガラス製の支持部材11にもTi/
Auのアレイ状個別引き出し電極15を86μm間隔で
形成した。圧電素子上の個別電極13とガラス上支持部
材11の個別引き出し電極15を位置合わせした状態で
エポキシ樹脂で接着し、両電極が導通するように加圧し
た。次に圧電素子を共振周波数が約50MHzになるよ
うに厚さ45μmまで研磨した後、Ti/Auの共通電
極14をスパッタ法によりそれぞれ0.05μm、1μ
mの厚さに形成した。このとき副走査方向の共通電極1
4の長さ、すなわち副走査方向の口径は2.0mmとし
た。
【0042】ついで、レンズ基材181を形成するため
の以下詳述する樹脂材料を共通電極14面に塗布して硬
化させ、所定の厚さになるように研磨した。その後、焦
点距離が2.5mmになるように溝182をレンズ基材
181に主走査方向に平行に形成し、一次元フレネルレ
ンズ18を形成した。さらに、レンズ基材181の上に
以下詳述するレンズ表面材41を塗布し、硬化させて、
所定の厚さになるように研磨し、レンズ基材181の凸
部表面と溝182内に充填されたレンズ表面材41の表
面とを面一とした。
【0043】最後に、インク液面の位置がレンズ基材1
81の焦点とほぼ一致するようにインク液保持室19を
取り付け、駆動回路16の配線を行って、インクジェッ
ト記録装置を完成した。上述したフレネル駆動方式によ
りこのインクジェット記録装置を駆動した。
【0044】本例で用いたレンズ基材181およびレン
ズ表面材41について、より詳細に説明する。
【0045】この例では、レンズ基材181としてフィ
ラーを含むエポキシ樹脂、レンズ表面材41としてシリ
コーンゴムを用いた。レンズ基材181の音速および音
響インピーダンスは、それぞれ3000m/s、5×1
6 kg/m2 ・sであり、レンズ表面材41の音速お
よび音響インピーダンスは、それぞれ1500m/s、
2.0×106 kg/m2 ・sであった。従って、圧電
素子、インク液(水性染料インク)を含めた音響インピ
ーダンスZの大小関係は、Z(圧電素子)(=35×1
6 kg/m2 ・s)>Z(レンズ基材)>Z(レンズ
表面材)>Z(インク液)(=1.5×106 kg/m
2 ・s)となり、音波の効率的な伝播が実現された。
【0046】さらに、レンズ基材181の凹凸部分の厚
みはそれぞれ15μmと45μmにし、溝182の深
さ、すなわちレンズ表面材の厚みは30μmとした。レ
ンズ基材181の凹凸部分の厚みは式4の条件を満たす
ことから音響マッチング効果が得られ、溝深さは式3の
条件を満たすことから音波集束効果が得られるため、効
率的な音波放射と音波集束を実現した。
【0047】例1−2 レンズ表面材41として、充填剤を含むシリコーンゴム
(音速:2000m/s、音響インピーダンス:3×1
6 kg/m2 ・s)を用いて、例1−1と同様の形状
加工を行った。この場合、レンズ表面材の厚み30μm
は式5の条件を満たし、さらに効率的な音波放射を実現
した。一方で、式3の条件を完全には満足しない問題が
生じたが、式1あるいは式2で定義される位置に凹凸を
形成すれば、溝深さが式3の条件を正確に満足しなくて
も、音波の集束は大きな差は生じなかった。
【0048】例1−3 レンズ表面材41を図5のようにレンズ基材5の凹凸部
全面に形成したヘッドを作製した。レンズ基材181と
して、フィラーを含むエポキシ樹脂(音速:3000m
/s、音響インピーダンス:5×106 kg/m2
s)を、レンズ表面材41として、シリコーンゴム(音
速:1500m/s、音響インピーダンス:2×106
kg/m2 ・s)を用い、レンズ基材181の凹凸部分
の厚みはそれぞれ15μmと45μmであって、レンズ
表面材41のレンズ基材181の凹部上での厚みは38
μm、レンズ基材181の凸部上での厚みは8μmとし
た。この構造では、レンズ基材181の凹凸部分の厚み
は式4の条件を満たすことから音響マッチング効果が得
られ、溝182の深さは式3の条件を満たすことがら音
波集束効果が得られ、更に、レンズ基材181の凹凸上
に位置するレンズ表面材41の厚みも式5の粂件を満た
すことから音響マッチング効果が得られ、非常に効果的
な音波放射と音波集束を実現した。
【0049】例1−4 レンズ表面材41を図6に示すように、レンズ基材18
1の溝182の中間位置までしか充填しなかった以外
は、例1−1と同様にヘッドを作製した。レンズ基材1
81およびレンズ表面材41に用いた材料は、前記例と
同様である。この時のレンズ表面材41のレンズ基材凹
凸上での厚みは23μmとした。この構造では、レンズ
基材181の凹凸部分の厚さは式4の条件を満たし、レ
ンズ表面材6の厚みも式5の条件を満たすことから音響
マッチング効果が得られ、効率的な音波放射を実現し
た。また、レンズ表面材41の音速が、インク液22の
音速とほぼ同じく1500m/sであったため、式3の
条件を満足して、良好な音波集束が得られた。
【0050】なお、この例ではレンズ基材181とレン
ズ表面材41で構成される音響レンズの表面が平坦にな
らず、気泡が残留する危険性が高かったが、焦点距離
2.5mmで口径2mmの場合のフレネル輪帯の最小幅
は40μmもあり、表面の凹部の深さはわずか7μmで
あり、そのアスペクト比が0.2以下と非常に小さいた
め、気泡が残留する問題は生じなかった。このように表
面にわずかな凹凸がある構造では、凹部のアスペクト比
が0.5以下であることが望ましく、この条件下では気
泡残留はほとんど生じなかった。
【0051】以上述べた例1−1〜1−4からもわかる
ように、音響フレネルレンズの表面に気泡が残留し難い
ヘッド構造によれば、超音波発生手段から発生した超音
波を音波集束手段を通してインク液中に効率的に放射す
ることができ、かつ、音波集束手段を構成する音響レン
ズの表面での気泡の残留を防止することができ、その結
果、局所的なインク滴の吐出不良を防ぐことが可能であ
る。従って、気泡除去等の複雑な機構を必要とせずに高
解像度・高品位な画像記録が達成し得るインクジェット
記録装置が提供される。
【0052】次に、高解像度記録に対応したラインヘッ
ドを構成する揚合に、隣接圧電素子間の電気的な干渉が
少なく、圧電素子間の短絡等の不良のない長尺のライン
ヘッドについて説明する。これによれば、高解像度化、
記録高速化、省電力化が達成される。そのために、支持
部材上に形成された引き出し電極と、それに対向した圧
電素子の一方の電極との間に、絶縁性樹脂と変形性の導
電粒子の混合材からなる導電性接着層を設ける。すなわ
ち、引き出し電極とこれと対応する圧電素子の一方の電
極との間の導通を絶縁性樹脂と変形性の導電粒子の混合
材からなる導電性接着を用いて行う。
【0053】変形性導電粒子としては、樹脂製中空ボー
ルの表面に金属膜を被覆した粒子などを用いることがで
きる。この中空ボールが加圧によって偏平化することに
より、加圧方向にのみ大きな電気的導通を達成する。絶
縁性樹脂は、隣接素子間の絶縁を維持するとともに、加
圧によって生じた導電粒子の形状を保持、固定する。こ
のような加圧によって加圧方向において大きな電気的導
通を達成し、それを保持することが可能な導電性接着層
は、微細な個別電極アレイからの個々の電極引き出しを
可能にし、高解像度に対応したインクジェットヘッドの
作製を可能にするものである。
【0054】導電性接着層においてこのような異方導電
性を得るためには、絶縁性樹脂中における導電粒子の混
合体積比は、20%以下であることが望ましく、その場
合、導通を取る電極対の対面方向の抵抗値が、圧電素子
がアレイ状に配列する方向(主走査方向)の抵抗値の1
/105 以下となる。
【0055】また、樹脂中に粒子を含んだ構成の導電性
接着層が、圧電素子と支持部材との間に存在することに
より、圧電素子から支持部材の方向へ放射されてしまう
音波を減衰させる効果があり、支持部材の裏面から反射
して再度圧電素子に戻ってくる有害音波を遮断すること
ができる。これにより、圧電素子の音波放射効率の向上
が図られる。
【0056】一方、支持部材上の引き出し電極の幅は、
それと対向する圧電素子の電極幅よりも狭く形成されて
いることが望ましく、隣接電極間での短絡を防止するこ
とに有効である。即ち、両者の電極幅は、同じ場合に
は、電極幅をW、電極配列ピッチをPとすると、隣接素
子間での短絡を起こさないための電極パターン合わせの
許容範囲は、±(P−W)となるが、図7に示したよう
に、引き出し電極15の幅(WL)を圧電素子の個別電
極13の幅(W)よりも狭くすることにより(W>W
L)、電極パターン合わせの許容範囲は(W−WL)/
2分だけ広がり、より短絡が発生しにくくなる。図8
は、図7の線VIII−VIIIに沿った断面図であり、導電性
接着剤層81が個別電極13と引き出し電極15との間
に存在して示されている。なお、図7には、導電性接着
剤層81は、示されていない。
【0057】さらに、図9に示すように、圧電素子の個
別電極13は、圧電素子の反対面にある共通電極と対向
する領域ARでのみ圧電素子の配列問隔と等しい間隔で
形成され、かつ、互い違いに別方向に支持部材11上の
引き出し電極151、152によって引き出され、支持
部材11上の引き出し電極151、152は、圧電素子
の反対面にある共通電極と対向しないことがより好まし
い。すなわち、図7のように圧電素子の個別電極13が
一方の方向にのみ引き出される場合は、配線パターン合
わせの誤差により起こる隣接電極間の短絡は、引き出し
電極15が2つの個別電極13をを跨いで接触すること
によって起こりうる。他方、図9に示すように、圧電素
子の個別電極13が引き出し電極151、152により
互い違いに別方向に引き出され、かつ、個別電極13は
引き出し方向にのみ延出して形成され、引き出し電極1
51、152はその個別電極13の延出部分とのみ重な
るよう形成されれば、配線パターン合わせの誤差により
起こる問題として、隣接電極間の短絡はほとんど起こら
なくなり、個別電極13と引き出し電極151、152
が対向せずに非接触になる方が問題になる。この非接触
にならないための電極パターン合わせの許容範囲は、約
±Wとなり、非常に広くなる。図10は、図9の線X−
Xに沿った断面図であり、導電性接着剤層81が引き出
し電極151と個別電極13との間に存在するものとし
て示されている。なお、図9には、導電性接着剤層81
は示されていない。
【0058】以下、上記長尺のラインヘッドの例を記載
する。 例2 圧電素子12には誘電率200のチタン酸鉛系圧電セラ
ミックを用いた。両面にTi/Au積層電極をスパッタ
で、それぞれの厚さが0.05μm〜0.3μmになる
ように形成し、3kV/mmの電界を印加して分極処理
を行った。その後エッチングにより個別電極を形成し、
幅60μm、電極間隔26μm(個別電極の配列間隔8
0μm=ほぼ25.4mm/300)になるようにし
た。また、圧電体の副走査方向の幅は5mmとした。一
方、ガラス製の支持部材11にもTi/Auの引き出し
電極15を幅50μm、配列間隔86μmで形成した。
圧電素子上のアレイ状個別電極13の存在する面に導電
性接着剤を塗布し、圧電素子上の個別電極13とガラス
支持部材11上の引き出し電極15のパターンが重なる
よう位置合わせした状態で、両電極が導通するように加
圧し、そのまま導電性接着剤を加熱硬化させた。次に圧
電素子12を約50MHzで共振を得られるように厚さ
45μmになるように研磨した後、Ti/Auの共通電
極14をスパッタ法でそれぞれ0.05μm、1μmの
厚さ形成した。このとき副走査方向の電極の長さ、すな
わち副走査方向の口径は2.00mmとした。
【0059】音響レンズ兼音響マッチング層18にはエ
ポキシ樹脂とアルミナ粉末の混合物を用いた。まず音速
が3×103 m/s近傍になるように混合比を調整し、
密度2.20×103 kg/m3 、音速2.95×10
8 m/sを得た。これを共通電極14の面に塗布して硬
化させ、厚さが約45μmになるように研磨した。その
後、焦点距離が2.5mmになるように深さ1/2波長
(約30μm)の溝を主走査方向に平行に入れて一次元
フレネルレンズを形成した。そして音響レンズ18の音
波放射面とインク波面との距離が音響レンズ18の焦点
距離とほぼ一致するようにインク液保持室19を取り付
け、駆動回路16の配線を行って、インクジェット記録
装置を完成した。
【0060】次に、圧電素子アレイの駆動方法では、同
時駆動する駆動素子群に位相差を割り当てる方法とし
て、凹面レンズ的な集束を模して二次関数的に連続変化
する複雑な位相差を割り当てる方法と、フレネルレンズ
的な集束を模して互いに半波長ずれた2相(以下、0相
とπ相と呼ぶ)を割り当てる方法とが考えられる。後者
は、駆動回路を非常に簡略化できる優れた方法であり、
本例ではこの0相とπ相の2層のみを用いる駆動方法を
使用した。
【0061】以下に、本例における圧電素子上の個別電
極13とガラス支持部材上の引き出し電極15、および
その間に設けられた導電性接着剤についてより詳しく述
べる。
【0062】例2−1 まず、図7で示された電極パターンを、図1と同様のヘ
ッド構造に適用したヘッドを作製した。個別電極13、
引き出し電極15の幅はそれぞれ60μm、40μm
で、ピッチは共に86μmであった。この条件でのパタ
ーン合わせ許容範囲は±36μmである。一方、個別電
極13、引き出し電極15の幅は同じ60μmの場合に
はパターン合わせ許容範囲は±26μmであり、本例で
は±10μmほど許容範囲を広く取ることができてい
る。しかし、引き出し電極15の幅をあまり小さくして
しまうと、電極同士の接触面積が狭くなり、接触抵抗が
増加したり、オープンを起こす確率が増加する危険性が
ある。一方、導電性接着剤81(図8参照)には、直径
3μmのエポキシ樹脂製中空ボールの表面に金をコート
した導電粒子を、体積混合比10%で含む熱硬化性エポ
キシ樹脂を用いた。この導電性接着剤81(図8参照)
を圧電素子12の個別電極のある面に全面塗布し、支持
部材であるガラス基板をその上に乗せて、個別電極13
と引き出し電極15のパターンが重なるよう位置合わせ
し、その状態でガラス基板側から10kg/cm2 の加
圧をした。加圧状態を保持したまま、導電性接着剤を1
20℃、2時間で硬化させた。その結果、約4インチ幅
ヘッドの1256素子において、隣接短絡、あるいは、
オープンといった接続不良は起こらなかった。この時の
個別電極と引き出し電極の間の抵抗値は1Ω以下であ
り、隣接電極間の抵抗値は1010Ω以上であり、高い絶
縁性が確保された。
【0063】次に、前記例に比べて、導電性接着剤の導
電粒子混合比が異なるヘッドを作製し、抵抗値を測定し
たところ、隣接電極間の抵抗値が個別電極と引き出し電
極の間の抵抗値の105 倍以上であるためには、導電性
接着剤中における導電粒子の混合体積比は20%以上で
ある必要があった。
【0064】例2−2 次に、図9よび図10に示す電極パターンを図2と同様
のヘッド構造に適用した。すなわち、圧電素子の個別電
極13は、支持部材11上の引き出し電極15によって
互い違いに別方向に引き出されている。個別電極13は
圧電素子の上面にある共通電極14と対向する領域での
み圧電素子の配列間隔と等しい間隔(86μm)で形成
され、互い違いに倍の配列間隔で延出するようパターニ
ングされた。また、支持部材11上の引き出し電極15
は、圧電素子の反対面にある共通電極と対向せず、個別
電極の延出部のみと重なるよう172μm間隔で形成さ
れた。個別電極、引き出し電極の幅はそれぞれ60μm
である。さらに、圧電素子の個別電極と共通電極が対向
しない位置の上面には、不要な音波がインク液中に漏れ
ることを防ぐために、遮音部材31を配置した。
【0065】導電性接着剤81(図10参照)を用いた
電極の圧着工程は前記例2−1と同様であり、結果とし
て、約4インチ幅ヘッドの1256素子において、隣接
短絡、あるいは、オープンといった接続不良は起こら
ず、個別電極と引き出し電極の間の抵抗値は1Ω以下で
あり、隣接電極間の抵抗値は1010Ω以上という同様に
良好な結果が得られた。この例で採用した電極の形成方
法によれば、パターン合わせ許容範囲は傾きを生じなか
った場合に最大±60μmになり、これは個別電極と引
き出し電極が幅60μmで全面形成された場合の2倍以
上の広い許容範囲であり、非常に簡単な合わせ装置で圧
着可能である。
【0066】以上述べたように、前記長尺のラインヘッ
ドによれば、ヘッド作製時に隣接圧電素子間の短絡やオ
ープンなどの配線不良が起こりにくく、駆動時にも隣接
圧電素子間の電気的な干渉が低く抑えられるため、高解
像度記録に有効に対応しすることができる。また、超音
波発生手段を構成する圧電素子の音波放射効率を向上さ
せ、より効率的にインク滴を飛翔させることを可能と
し、高解像度化、記録高速化、省電力化が達成し得るイ
ンクジェット記録装置が提供される。
【0067】ついで、駆動回路から電気信号を効率よく
圧電素子に印加し、また、圧電素子の音波放射効率の向
上を図り、高効率でンク滴を飛翔させることができ、高
速記録や省電力化を達成し得るために、圧電素子を図1
〜図10に関して説明したように一枚の板状圧電体12
から構成するのではなく、ストライプ状の個別圧電体か
ら個別圧電素子を構成し、隣り合うストライプ状個別圧
電素子の間に、誘電率が圧電素子の1/10以下で、か
つ音響インピーダンスが圧電素子の1/4以下である非
整合層を設ける場合について説明する。
【0068】図11は、上記特定の非整合層を有するイ
ンクジェット記録装置のヘッド部において、図1のヘッ
ドにおけるインク液保持室19を取り除いた部分を示す
斜視図である。
【0069】図11に示すように、圧電素子は、ストラ
イプ状の個別圧電体121から構成され、その下面に
は、個別電極13が形成されている。離間して配列され
た複数の個別圧電体121のそれぞれ隣り合う圧電体1
21間には、非整合層91がそれぞれ設けられている。
個別圧電体121と非整合層91のそれぞれの上面によ
り構成される平坦な面上には、各個別圧電体121を共
通に接続する共通電極14が設けられ、その上には、フ
レネルレンズ18が形成されている。
【0070】非整合層91は、誘電率が圧電素子の1/
10以下であり、かつ音響インピーダンスが圧電素子の
1/4以下である。
【0071】ところで、先にも延べたように、フレネル
駆動方式は、駆動回路を非常に簡略化できる優れた駆動
方法であるが、隣接素子間の相互干渉に関しては、隣接
圧電素子間で駆動信号の位相がまったく逆となる掲合が
あり、無効な電流が互いに消費しやすく、消費電力がよ
り大きくなってしまうという問題がある。隣接圧電素子
間に非整合層91を設けることにより、そのような位相
が半波長ずれた2相信号を素子駆動に使用する場合に特
に大きな効果が得られる。
【0072】他方、リニア電子走査型のインクジェット
では、圧電素子の配列ピッチは直接的に記録可能な解像
度に反映するため、一義的に固定されてしまう。ストラ
イプ状個別圧電素子の寸法を決定する上で、先述した隣
接素子間の静電容量的相互干渉を低減するためには、隣
の素子と離れるように配列方向の幅を狭くすることが望
ましいが、より大きな放射音圧を得るためには、圧電素
子の面積を増やすことが有利であり、即ち、配列方向の
幅を逆に大きく取ることが望ましい。また、圧電素子の
厚みは、得られる共振周波数に直結する値であり、解像
度に適した液滴径を飛翔させるために圧電素子の厚みも
一義的に特定の範囲に限定されてしまう。
【0073】このようにストライプ状個別圧電素子の寸
法の決定には、様々なパラメータを考慮する必要があ
る。チタン酸鉛の圧電素子の厚みが50μmとした場合
に得られる共振周波数は50MHzであり、飛翔できる
インク滴の直径は約30μmである。この径のインク滴
は、記録紙の種類によって直径60〜120μmのドッ
トとなって記録され、これらのドットは300〜600
dpiの解像度に適したサイズである。300〜600
dpiに対応する圧電素子の配列ピッチは、42〜85
μmであり、また、音波放射効率を考慮すると、ピッチ
に対して素子の幅は60%以上を確保することが望まし
い。従って、これらの条件を考慮して、ストライプ状個
別圧電素子ではその幅W(主走査方向の長さ)と厚みT
との比W/Tは0.5〜2の範囲であることが望まし
い。
【0074】以下、上記非整合層を有するインクジェッ
ト記録装置の例を記載する。 例3 本例では、図11に示す構造を有するインクジェット記
録装置を作製した。圧電体として、誘電率200、音響
インピーダンス25×106 kg/m2 ・sのチタン酸
鉛系圧電セラミックを用いた。その初期厚さは0.5m
mであり、その両面にTi/Au積層電極をスパッタ法
で、それぞれの厚さが0.05μm、0.3μmになる
ように形成し、3kV/mmの電界を印加して分極処理
を行った。その後、片側の電極面に機械的に素子分離用
の溝を幅26μm、間隔86μm(=ほぼ25.4mm
/300)、深さ150μmになるよう形成した。ま
た、圧電体の副走査方向の幅は5mmとした。一方、ガ
ラス製の支持部材11にもTi/Auのアレイ状引き出
し電極15を86μm間隔で形成した。圧電素子上の個
別電極13とガラス支持部材11上の個別引き出し電極
15を位置合わせした状態でエポキシ樹脂を接着し、両
電極が導通するように加圧した。次に圧電素子が完全に
分離状態となるように厚み100μmまで研磨し、各素
子間のギャップに非整合層となるエポキシ樹脂(以下、
詳述)を充填し硬化させた。再度、圧電素子を約50M
Hzで共振を得られるように厚さ50μmまで研磨した
後、Ti/Auの共通電極14をスパッタ法でそれぞれ
0.05μm、1μmの厚さに形成した。このとき副走
査方向の電極の長さ、すなわち副走査方向の実効口径は
2.0mmとした。
【0075】音響レンズ基材181兼音響マッチング層
としては、エポキシ樹脂とアルミナ粉末の混合物を用い
た。まず音速が3×103 m/s近傍になるように混合
比を調整し、密度2.20×103 kg/m3 、音速
2.95×103 m/sを得た。これを共通電極14面
に塗布して硬化させ、厚さが約45μmになるように研
磨した。その後、焦点距離が目的値になるように深さ1
/2波長(約30μm)の溝182を主走査方向に平行
に形成して一次元フレネルレンズを形成した。そして音
波放射面とインク液面との距離が音響レンズ18の焦点
距離とほぼ一致するようにインク液保持室19(図1参
照)を取り付け、駆動回路16の配線を行って、インク
ジェット記録装置を完成した。
【0076】以下に、本例における非整合層について詳
しく説明する。非整合層に用いる材料として、エポキシ
樹脂(誘導率4、音響インピーダンス4×106 kg/
2 ・s)、アルミナ混合エポキシ樹脂(誘導率7、音
響インピーダンス9×106 kg/m2 ・s)、タング
ステン混合エポキシ樹脂(誘導率5、音響インピーダン
ス15×106 kg/m2 ・s)を用いた種々のヘッド
で、圧電素子のインピーダンス、および、同一駆動条件
での放射音圧を比較した。また、比較として、圧電素子
を素子ごとにまったく分割せず、個別電極でのみ素子を
分離した場合、即ち、非整合層に用いる材料として圧電
体そのもの(誘導率200、音響インピーダンス35×
106 kg/m2 ・s)の場合でも評価を行った。
【0077】その結果、1素子のインピーダンスでは、
誘電率が圧電素子の1/10以下となっている各エポキ
シ樹脂でほぼ一定の約400Ωであったのに対し、構造
的素子分離をしていない場合は100Ω以下であった。
一方、放射音圧の比較では、音響インピーダンスが圧電
素子の1/4以下であるエポキシ樹脂あるいはアルミナ
混合エポキシ樹脂に比べ、タングステン混合エポキシ樹
脂ではそれらの半分以下の音圧強度しか得られなかっ
た。このように、非整合層91として、誘電率が圧電素
子の1/10以下で、かつ、音響インピーダンスが圧電
素子の1/4以下である材料を用いることによリ、駆動
回路から電気信号を効率よく圧電素子に印加し、また、
圧電素子の音波放射効率の向上を図り、高効率にインク
滴を飛翔させることができる。
【0078】以上述べたように、所定の非整合層を設け
ることにより、超音波発生手段を構成する圧電素子の振
動効率を拘上させることができ、さらに駆動回路から効
率よく電気エネルギーを圧電素子に投入することが可能
で、より効率的にインク滴を飛翔させることができる。
従って、記録速度の高速化や消費電力化が違成し得るイ
ンクジェット記録装置が提供される。
【0079】次に、本発明について説明する。本発明
は、インク液面が変動してもインク液が吐出しやすいス
リット構造を提供して安定にインク液滴を飛翔させ、も
って高解像度を達成しようとするものである。そのため
に、本発明では、スリットの一部にスリット間隔を狭め
る狭窄部分を設け、その部分で表面張力によるインク液
面の保持を行うようにしている。
【0080】図12は、図1〜図11のインクジェット
記録装置におけるインク保持室19のスリット板20に
適用し得るスリット構造を示す。スリット21は、主走
査方向に実質的に同じ幅で延びている。本発明に従い、
このスリット21には、その幅を狭める狭窄部分211
が例えば複数個所にわたって設けられている。この狭窄
部分211の位置は、インク滴吐出の妨げにならないよ
うインク滴が吐出するピッチの中間位置が好ましい。ま
た、狭窄部分の最小幅W2は、スリット21の幅W1に
も依存するが、インク滴吐出時に発生するメニスカスの
形成を妨げない程度の幅と形状であればよい。具体的に
は、狭窄部分211の幅W2は、スリットの幅W1の2
/3以下であることが好ましく、1/2以下であること
がより好ましい。
【0081】なお、狭窄部分211の形状は、図12に
示すものに限らず、図13(図13(a)、(b))に
示すもの等、インク液面が変動しても、当該部分で表面
張力によりインク液を保持し得、もってインク滴を安定
に飛翔させ得る形状であればよい。
【0082】
【実施例】以下、本発明の実施例を記載する。
【0083】実施例1 スリット板20として、厚さ100μmのSUS板を用
い、これに幅W1が150μmのスリットを幅W2が5
0μmの狭窄部分211とともに形成した。狭窄部分2
11は、長さ210mmのスリットに対し、間隔L=4
2.5mm毎に4箇所均等に配置した。このスリット板
を用いて、図1に示す構造のインクジェット記録装置ヘ
ッドを作製した。
【0084】比較のため、上で得たインクジェット記録
装置ヘッドと従来の狭窄部分を設けないスリットが形成
されたスリット板を用いた従来型のインクジェット記録
装置ヘッドを一台のプリンタに搭載し、水平位置で印字
し、均等に全ドットのインク滴が吐出することを確認し
た後に、ヘッド長手方向に、プリンタを傾け印字を行っ
た。プリンタを15゜傾けて印字したところ、従来型の
ヘッドでは、左右各々21%でインク滴が吐出しない現
象が発生した。他方、本発明のインクジェットヘッドで
は、全ドットのインク滴の吐出が確認され、高解像度が
達成された。さらにこのプリンタを傾け、25゜の傾き
で印字を行ったところ、従来型のヘッドでは、ヘッド長
手方向のほぼ中心付近の30%のドットの形成が確認で
きたが、残りはインク滴の吐出は確認できなかった。他
方、本発明のインクジェット記録装置ヘッドでは、全ド
ットのインク滴の吐出が確認でき、高解像度が達成され
た。以上述べたように、本発明によれば、インク液面の
変動によらずインク滴を安定に吐出させることができ、
もって高解像度を達成し得る。
【0085】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、高
解像度および/または高速記録を達成し得るインクジェ
ット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一態様によるインクジェット記録装置
のヘッド部の斜視図。
【図2】本発明の他の態様によるインクジェット記録装
置のヘッド部の斜視図。
【図3】本発明のさらに他の態様によるインクジェット
記録装置のヘッド部を部分的に示す概略断面図。
【図4】本発明に適用し得るインクジェット記録装置の
ヘッド部の一例を部分的に示す概略断面図。
【図5】本発明に適用し得るインクジェット記録装置の
ヘッド部の一例を部分的に示す概略断面図。
【図6】本発明に適用し得るインクジェット記録装置の
ヘッド部の一例を部分的に示す概略断面図。
【図7】圧電素子の個別電極と個別引き出し電極の配置
を示す平面図。
【図8】図7の線VIII−VIIIに沿った概略断面図。
【図9】圧電素子の個別電極と個別引き出し電極の他の
配置を示す平面図。
【図10】図9の線X−Xに沿った概略断面図。
【図11】本発明に適用し得るインクジェット記録装置
のヘッド部の一例を部分的に示す概略断面図。
【図12】本発明の一形態によるインクジェット記録装
置におけるスリット板を部分的に示す平面図。
【図13】本発明の他の形態によるインクジェット記録
装置におけるスリット板を部分的に示す平面図。
【符号の説明】
11…支持部材 12…圧電素子 13…個別電極 14…共通電極 15…個別引き出し電極 16…駆動回路 18…フレネルレンズ 181…レンズ基材 182…フレネルレンズ溝 19…インク液保持室 20…スリット板 21…スリット 211…スリット狭窄部分 22…インク液 31a,31b…遮音部材 41…レンズ表面材 81…導電性接着剤層 91…非整合層
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−248908(JP,A) 特開 平2−45151(JP,A) 特開 昭62−225359(JP,A) 特開 昭62−259862(JP,A) 特開 平9−248907(JP,A) 特開 昭63−166547(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/015 B41J 2/045 B41J 2/055

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インク液を保持し、インク滴を吐出させ
    るスリットを設けたスリット板を備えるインク液保持室
    と、前記インク液と音響的に接続された圧電素子から構
    成される超音波発生手段と、前記超音波発生手段を駆動
    する駆動手段と、前記超音波発生手段上に形成され、前
    記超音波発生手段から放射される超音波を前記インク液
    中で集束させる音響レンズを含む超音波集束手段とを備
    え、 前記スリットの一部あるいは複数の部分でスリット幅よ
    りも狭い狭窄部分が存在することを特徴とするインクジ
    ェット記録装置。
  2. 【請求項2】 前記スリットにおける狭窄部分は、隣接
    するインク滴の飛翔位置の中間位置に存在することを特
    徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 【請求項3】 前記スリットにおける狭窄部分の最小幅
    は前記スリットの幅の2/3以下であることを特徴とす
    る請求項1または2記載のインクジェット記録装置。
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