JP3471958B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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JP3471958B2
JP3471958B2 JP4729095A JP4729095A JP3471958B2 JP 3471958 B2 JP3471958 B2 JP 3471958B2 JP 4729095 A JP4729095 A JP 4729095A JP 4729095 A JP4729095 A JP 4729095A JP 3471958 B2 JP3471958 B2 JP 3471958B2
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体インクを液滴化し
て被記録体上に飛翔させることで画像を記録するインク
ジェット記録装置に係り、特に圧電素子により放射され
る超音波ビームの圧力によりインク滴を吐出させて被記
録体上に飛翔させるインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液体インクを液滴と呼ばれる小さな粒状
にして記録媒体上に飛翔させることにより画点を形成し
て画像を記録する装置は、インクジェットプリンタとし
て実用化されている。このインクジェットプリンタは、
他の記録方法と比べて騒音が少なく、現像や定着などの
処理が不要であるという利点を有し、普通紙記録技術と
して注目されている。インクジェットプリンタの方式は
現在までに数多く考案されているが、特に(a)発熱体
の熱により発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる
方式(例えば特公昭56-9429 、特公昭61-59911など)、
(b)圧電素子によって発生される機械的な圧力パルス
によりインク滴を飛翔させる方式(例えば特公昭53-121
38など)が代表的なものである。
【0003】インクジェットプリンタに使用される記録
ヘッドとしては、キャリッジに搭載されて記録紙の搬送
方向(副走査方向)に対し直交する方向(主走査方向)
に移動しながら記録を行うシリアル走査型ヘッドが実用
されている。このシリアル走査型ヘッドでは、機械的に
移動しながら記録を行うため、記録スピードを速くする
ことが難しい。そこで、記録ヘッドを記録紙の幅と同じ
サイズの長尺ヘッドとして機械的な可動部分を減らし、
記録スピードを上げることができるいわゆるライン走査
型ヘッドも考えられているが、このようなライン走査型
ヘッドを実現することは、次の理由から簡単ではない。
【0004】インクジェット記録方式は本質的に、溶媒
の蒸発や揮発によって局部的なインクの濃縮が生じやす
く、これが解像度に対応した個別の細いノズルでの目詰
まりの原因となる。このため、インクジェットの形成に
蒸気の圧力を使う方式では、インクとの熱的あるいは化
学的な反応などによる不溶物の付着が、また圧電素子に
よる圧力を使う方式では、インク流路などでの複雑な構
造がさらに目詰まりを誘起し易くする。数十〜百数十程
度のノズルを使用するシリアル走査型ヘッドでは、目詰
まりの頻度を低く抑えることができるようになっている
が、数千もの多数のノズルを必要とするライン走査型ヘ
ッドでは、確率的にかなり高い頻度で目詰まりが発生
し、信頼性の点で大きな問題となる。
【0005】さらに、従来のインクジェット記録装置
は、解像度の向上には適していないという問題点もあ
る。つまり蒸気の圧力を使う方法では、直径20μm
(これは記録紙上に直径50数μm程度の記録ドットに
相当する)以下の粒径のインク滴を生成するのが難し
く、また圧電素子が発生する圧力を使う方式では、記録
ヘッドが複雑な構造となるために加工技術上の問題で解
像度の高いヘッドが作りにくいからである。
【0006】これらの欠点を克服するため、薄膜圧電体
層により構成された圧電素子によって発生する超音波ビ
ームの圧力を用いてインク液面からインクを飛翔させる
方式がIBM TDB,vol.16,No.4,p
p.1168(1973−10),USP−43085
47(1981),USP−4697195(198
7),USP−4751529(1988),USP−
4751530(1988),USP−5041849
(1991),特開昭62−66943,特開昭63−
162253,特開昭63−166545,特開昭63
−166546,特開昭63−166548,特開昭6
3−312157,特開平3−200199,特開平4
−296562,特開平4−296563,特開平4−
356328,特開平5−278218などにより提案
されている。
【0007】この方式は個別のドット毎のノズルやイン
ク流路の隔壁を必要としない、いわゆるノズルレスの方
式であるため、ラインヘッド化する上での大きな障害で
あった目詰まりの防止と復旧に対して有効である。ま
た、非常に小さい径のインク滴を安定に生成し飛翔させ
ることができるため、高解像度化にも適している。しか
し、この方式の欠点は記録画点あるいは解像度よりも大
きな、例えば記録画点の30倍にもなる直径の音響レン
ズを用いて超音波ビームをインク内に集束させるため、
記録ヘッドとしては1本の圧電素子アレイだけで必要な
解像度を得ることができず、複数本の圧電素子アレイを
千鳥状に配列して構成される記録ヘッドを使って合間を
埋める必要があることである。このような千鳥配列の構
造をとる記録ヘッドは、周期的な濃度むらや隣接ドット
とのわずかな位置ずれなど、画質の面から見て問題が多
い。
【0008】記録ヘッドを千鳥状に配列することなく超
音波ビームを集束させるために、複数の圧電素子を一列
に配列した一次元の圧電素子アレイを用い、隣接する複
数の圧電素子を所定の位相差で同時に駆動することによ
り、これらの圧電素子からの超音波を互いにインク室内
で干渉させて集束させる、いわゆるフェーズドアレイ走
査を採用する方法(特開平2−184443)も提案さ
れている。
【0009】(1)しかし、この方法では圧電素子アレ
イを構成する際、圧電体層を各圧電素子単位で分割して
いるため、解像度を上げるべく圧電素子アレイの配列ピ
ッチを小さくしようとすると圧電体層が割れやすくな
り、製造歩留まりが低下するという問題がある。
【0010】(2)また、高解像度の記録を行うために
圧電素子アレイの配列ピッチを小さくし、ドットの高密
度化、すなわち配線のファイン化を達成したとしても、
隣接する圧電素子間のクロストークによるノイズが発生
する。このクロストークノイズは、超音波ビームを集束
する上で大きな障害となる。超音波を励起させる効果の
高い、つまり音響インピーダンスの大きい圧電体層は、
一般的に比誘電率も大きい材料であるため、圧電素子の
容量負荷が大きくなり、クロストークノイズが一層増大
する。
【0011】クロストークノイズを最小限にとどめて制
御するという観点からすれば、圧電素子アレイは理想的
には1配線・1圧電素子のペアが独立して配列された構
造が望ましい。しかし、1配線・1圧電素子ペアのサイ
ズは数十μmであり、またライン型の長尺ヘッドでは、
このペアが1000個以上も並ぶ構造になる。このよう
な素子数の圧電素子アレイを実現するために、長尺の焼
結圧電体を数十μm単位で1000個以上に切断して分
離する方法は、切断工程に長時間を必要とし、量産性の
点で問題がある。パターニングされた配線の上に数十μ
m幅の圧電体層を高い位置精度で1000個以上貼り合
わせる方法も実施が困難である。一方、圧電体層を薄膜
形成技術で形成する方法は、圧電体層の必要な膜厚が1
0μm以上と厚いため、膜形成に長時間を必要として量
産性の点で問題があり、またエッチングでパターニング
しようとしても、アスペクト比の大きなエッチング溝を
形成することは難しい。
【0012】(3)また、上述したフェーズドアレイ走
査によりインク液面に超音波を集束させる方法では、イ
ンク液面への超音波ビームの入射角が90°からずれて
しまい、インク滴が真上に飛び出さない場合がある。さ
らに、圧電素子アレイから放射された超音波ビームがイ
ンク液面に到達するまでに、伝搬するガラスなどで生じ
る多重反射や減衰などを受けることによりインクの飛翔
効率が低下するという問題がある。これを解決するため
に圧電素子の形状を凹面にする方法もあるが、製造歩留
まりが低下するという問題がある。
【0013】(4)また、平板状の圧電素子と音響レン
ズを組み合わせた構成によりインク液面に超音波ビーム
を集束させる方式のインクジェットプリンタは、先に挙
げた特開昭63−162253などで知られている。音
響レンズとしては、ガラスの表面に所定の曲率の凹面を
形成したバルクレンズ、フレネル回折に基づく間隔で超
音波の位相をずらせるようにしたフレネルレンズがあ
る。このような音響レンズを用いると、圧電素子を平板
状に形成でき、厚さの制御などの点で作製が容易であ
る。しかし、圧電素子から放射された超音波ビームはレ
ンズ中を伝搬する間に減衰し、かつレンズとインクの界
面で反射されるため、インク中に放射される超音波エネ
ルギーはレンズにより損失を受ける。従って、圧電素子
に供給する駆動エネルギーは、このレンズによる損失を
考慮して大きくする必要がある。
【0014】さらに、圧電素子自体に凹面を形成してレ
ンズ効果を持たせる方法も特開平2−184443によ
り知られている。この方法によると、レンズを用いたも
のと比べるとインク滴を飛翔させるために必要な駆動エ
ネルギーを小さくできるが、反面、圧電素子の加工精度
を満足させることが難しく、製造コストが高くなるとい
う問題がある。
【0015】また、先に述べたフェーズドアレイ走査を
用いる方式においても、圧電素子アレイのアレイ方向
(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)における
超音波ビームの集束には、音響レンズか、あるいは凹面
を有するレンズ効果を持たせた圧電素子が用いられるの
で、同様の問題が発生する。
【0016】(5)音響レンズを支持体としてその底面
に圧電素子を形成した構造のインクジェットヘッドで
は、圧電素子は振動を抑制されず効率よく超音波を励起
することができる利点があるが、駆動電圧が印加されて
いない状態になっても、しばらくの間振動が続いてしま
う問題がある。従って、励起される超音波の波形は駆動
電圧の波形よりも長く振動するため、一つのインク滴を
飛翔するのに必要なエネルギー以上のものとなってしま
い、その結果、インク液面の乱れを引き起こしたり、目
的外のインク滴を飛翔させてしまうなどの問題があり、
インク滴の飛翔制御が困難であった。
【0017】(6)また、特開平2−184443に記
載された圧電素子自体に凹面を形成してレンズ効果を持
たせたものでは、圧電素子アレイを構成する各圧電素子
は分離して並べられている。この場合、圧電素子を一素
子づつ作製して並べるか、樋状の凹面を有する圧電体層
板をダイヤモンドカッタで切断する等の方法により圧電
素子アレイを作製することが想像される。
【0018】一方、インク液滴の大きさは焦点強度や圧
電素子アレイの駆動周波数に依存し、駆動周波数が高い
ほど小さくなる。数百dpi以上の解像度を得ようとす
ると、駆動周波数は100MHz〜200MHz程度に
する必要がある。例えば解像度を600dpiとする
と、圧電素子アレイの配列ピッチは40μm程度とな
り、各々の圧電素子を機械的に分離することはプロセス
的にもコスト的にも難しくなる。また、100MHz以
上の高周波領域では、圧電素子の製造法も10MHz程
度の素子とは異なり、スパッタ等の薄膜形成技術が望ま
れる。
【0019】そこで、圧電素子の曲率に相当する凹面部
を有する基板を作製し、凹面部に電極材をスパッタし、
この電極をホトリソグラフィ技術により分割して、各圧
電素子に対応した個別電極を形成し、これらの個別電極
上に圧電膜を形成することが考えられる。しかしながら
ホトリソグラフィの際、凹面部ではマスクが十分に密着
できないため、個別電極を高精度にパターニングするこ
とは難しい。同じ理由から、予め加工された曲率を高精
度にパターニングすることも困難である。
【0020】さらに、平板状の圧電素子と音響レンズを
組み合わせる構成では、前述したように圧電素子から放
射された超音波ビームはレンズ中を伝搬する間に減衰
し、かつレンズとインクの界面で反射されるため、イン
ク中に放射される超音波エネルギーがレンズにより損失
を受け、圧電素子に供給する駆動エネルギーをこの損失
を考慮して大きくする必要があるという問題があるた
め、アレイ方向に直交する方向に曲率を有する圧電素子
の一方の電極のみが複数の個別電極として形成された圧
電素子アレイを作製することが望まれる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
のフェーズドアレイ走査を用いて集束させた超音波ビー
ムの圧力でインク滴を飛翔させて記録を行うインクジェ
ット記録装置では、圧電素子アレイを構成する圧電体層
を各圧電素子単位で分割しているため、解像度を上げる
べく圧電素子アレイの配列ピッチを小さくすることが難
しく、製造歩留まりが低下するという問題がある。
【0022】また、従来の超音波ビームの圧力でインク
滴を飛翔させて記録を行うインクジェット記録装置で
は、高解像度の記録を行うために圧電素子アレイの配列
ピッチを小さくすると、隣接する圧電素子間のクロスト
ークによるノイズが発生し、超音波ビームを集束する上
で大きな障害となるという問題がある。
【0023】また、従来のフェーズドアレイ走査により
インク液面に超音波ビームを集束させるインクジェット
記録装置においては、超音波ビームがインク液面に到達
するまでに受ける多重反射や減衰などにより、インクの
飛翔効率が低下するという問題がある。
【0024】また、平板状の圧電素子と音響レンズを組
み合わせた構成によりインク液面に超音波ビームを集束
させる方式のインクジェット記録装置では、圧電素子か
ら放射された超音波ビームがレンズで損失を受けるた
め、このレンズによる損失を考慮して圧電素子に供給す
る駆動エネルギーを大きくしなければならず、さらに圧
電素子自体に凹面を形成してレンズ効果を持たせる方法
では、圧電素子の加工精度を満足させることが難しく、
製造コストが高くなるという問題がある。
【0025】また、音響レンズを支持体としてその底面
に圧電素子を形成した構造のインクジェット記録装置で
は、圧電素子は駆動電圧が印加されていない状態になっ
てもしばらくの間振動が続くことにより、励起される超
音波の波形は駆動電圧の波形よりも長く振動するため、
一つのインク滴を飛翔するのに必要なエネルギー以上の
ものとなってしまい、インク液面の乱れを引き起こした
り、目的外のインク滴を飛翔させてしまうなどによりイ
ンク滴の飛翔制御が困難であった。
【0026】また、圧電素子自体に凹面を形成してレン
ズ効果を持たせた圧電素子アレイを作製する場合、アレ
イ方向に直交する方向に曲率を有する圧電素子の一方の
電極のみを複数の個別電極とすることが望まれるが、従
来では曲面上にミクロン精度で個別電極を配列する技術
がないため、その実現が困難であった。
【0027】本発明の目的は、圧電素子アレイからの超
音波ビームの圧力でインク滴を飛翔させて記録を行うイ
ンクジェット記録装置であって、容易に高解像度の記録
ができるインクジェット記録装置を提供することにあ
る。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するため、液体インクを保持するインク保持手段と、複
数の圧電素子を所定間隔で配列して構成され、所定の駆
動信号が与えられることにより前記液体インクの液面上
に集束しかつ該液面に沿って移動する超音波ビームを放
射する圧電素子アレイとを備え、前記超音波ビームの圧
力により前記液体インクの液面からインク滴を吐出させ
て被記録体上に飛翔させることにより画像を記録するイ
ンクジェット記録装置において、前記圧電素子アレイ
は、フレネル回折の条件で複数の領域に区分されると共
に、該複数の領域が奇数番目の領域からなる第1のグル
ープと偶数番目の領域からなる第2のグループとにグル
ープ化され、第1のグループから放射される超音波の位
相と第2のグループから放射される超音波の位相が互い
に180°異なるように構成されることを特徴とする。
【0034】また、前記圧電素子アレイは、一様な厚さ
の帯状の圧電体層と、該圧電体層の一方の面上に一様に
形成された共通電極と、前記圧電体層の他方の面上に前
記複数の圧電素子にそれぞれ対応して形成された複数の
個別電極とを有することを特徴とし、さらには圧電体層
は長手方向の少なくとも一箇所にギャップを有すること
を特徴とする。
【0035】ここで、ギャップは圧電体層を完全に分割
するように形成されていてもよいし、圧電体層の厚み方
向および幅方向の少なくとも一方の方向に部分的な切れ
込みの形で形成されていてもよい。また、このギャップ
の個数は好ましくはN/2≧K≧N/nの範囲に設定さ
れる。ここに、Kはギャップ数、Nは圧電素子の総数、
nは同時に駆動する圧電素子の数である。
【0036】また、前記圧電素子アレイ上に設けられ、
前記超音波ビームを前記圧電素子の配列方向と直交する
方向に関して集束すると共に前記圧電素子アレイと前記
液体インクとの音響的整合を行う集束/整合手段をさら
備えたことを特徴とする。
【0037】具体的には、集束/整合手段は例えば音響
的整合材上に、圧電素子の配列方向と直交する方向(副
走査方向)における超音波ビームの集束のためのフレネ
ル輪帯に基づく所定ピッチの溝を形成することにより実
現される。音響的整合材の厚さtは、 t=λm×(2n+1)/4 …(1) で与えられる。ここで、nは零以上の整数、λmは音響
的整合材内での超音波波長である。また、好ましくは音
響的整合材内の音速はインク内の音速の整数倍とする。
【0038】 なお、音響マッチング層兼音響レンズの厚さtが …(2) t=λm/×n/2 で与えられるとする。ここで、nは零以上の整数、λm
は音響的整合材内での超音波波長である。レンズの厚さ
tが式(2)で与えられる値ならば、レンズ界面におい
て超音波が全反射されてインク中に超音波がほとんど放
射されなくなる。
【0039】一方、音響的整合材上に形成される溝の深
さdは、 d=1/{2(1/λi−1/λm)} …(3) で与えられる。ここで、λiはインク内での超音波波長
である。λmがλiのほぼ整数倍になる音響的整合材を
用いることにより、溝のある部分と無い部分の両方とも
(1)式を満足し、音響的整合がとれる条件が成立す
る。従って、溝のある部分と無い部分の両方からインク
内に効率良く超音波が放射されて、インク滴が飛翔す
る。
【0040】圧電素子の配列方向(主走査方向)におけ
る超音波ビームの集束には、主として以下の2種類を用
いる。第1は、圧電素子アレイの隣接する複数個の圧電
素子を所定の遅延時間差で同時に駆動して超音波ビーム
が所定の焦点を結ぶようにする電子フォーカス法であ
り、具体的には遅延時間を同時駆動圧電素子の中心部で
最も長く、外側にゆくにつれて徐々に短くする。第2
は、副走査方向における超音波ビームの集束と同時に、
フレネル輪帯理論に基づいて同時駆動圧電素子数を2種
類にグルーピングし、一方のグループを駆動するタイミ
ングを他方のグループに対し位相πだけシフトとすると
いうものであり、この動作を同時駆動圧電素子の位置を
順次ずらせてゆくことによって主走査を行う。この場
合、副走査方向における超音波ビームの集束のための溝
は主走査方向に平行に形成され、この溝部で位相をπだ
けシフトする。
【0041】
【0042】具体的には、圧電素子は例えば円板状であ
り、フレネル回折の条件で同心円状に分割されてアニュ
ラアレイを形成し、かつ上述のように第1のグループと
第2のグループとにグループ化される。この場合、第1
および第2の各グループから放射される超音波の位相を
180°異ならせるには、圧電素子の同心円状に区分さ
れた各領域の厚み方向の分極軸の極性を領域毎に反転さ
せ、全領域に一体の電極を形成して、この電極を通して
1つの駆動電源で圧電素子を駆動するようにすればよ
い。
【0043】一方、圧電素子が複数の矩形板状の単位圧
電素子を直線上に配列したリニアアレイの場合は、矩形
板状の単位圧電素子は長手方向に平行に所定の間隔で複
数の領域に区分され、かつ上述のように第1のグループ
と第2のグループとにグループ化される。この場合、第
1および第2の各グループから放射される超音波の位相
を180°異ならせるには、区分された各領域の厚み方
向の分極軸の極性を領域毎に反転させればよい。
【0044】また、前記圧電素子アレイの前記インク保
持手段と反対側の面上に背面制動材を配置したことを特
徴とする。
【0045】ここで、背面制動材としては音響インピー
ダンスが3×106 kg/m2 ・s以上の材質が好まし
い。また、この背面制動材の減衰係数aは、背面制動材
の厚さをtとし、超音波周波数をfとしたとき、a×2
t×f<−20dBの条件を満たすことが望ましい。さ
らに、この背面制動材がヘッド部および駆動回路部を実
装するための配線基板を兼ねる構成とすることも可能で
ある。
【0046】また、前記圧電素子アレイは、所定の曲率
を持つ樋状の凹部を有する基板の該凹部内に、個別電極
と圧電体層および共通電極を順次積層してなることを特
徴とする。
【0047】より具体的には、圧電素子アレイは圧電素
子の曲率に対応する所定の曲率を持った樋状の凹部を基
板上に形成した後、少なくともこの凹部に所定ピッチの
帯状の個別電極を形成し、その上に薄膜の圧電体層を所
定厚さに形成し、さらにその上に一体の共通電極を形成
することにより作成される。基板の凹部に個別電極を形
成する方法としては、第1に予めパターニングされた金
属箔を陽極接合法により接合する方法がある。金属箔は
ホトリソグラフィにより精度良くパターニングすること
が可能である。また、基板となるガラスと金属は熱と電
界により接合する陽極接合が可能であり、静電力により
金属箔はガラスの凹部に密着しパターン精度を崩さずに
接合できる。基板の凹部に個別電極を形成する第2の方
法としては、予めパターニングされた樹脂性マスクを熱
プレス等の方法で基板凹部に一致するように成形加工
し、基板表面に形成した金属膜をホトリソグラフィ技術
でパターニングすればよい。そして、このようにして基
板凹部の個別電極上にスパッタ等の方法により圧電体層
および共通電極を順次形成する。
【0048】また、前記圧電素子アレイは、前記導電体
と絶縁体を交互に積層しその積層方向に沿った所定の曲
率の樋状の凹部を有する積層体の該凹部内に、前記導電
体を個別電極としその上に圧電体層および共通電極を順
次積層してなることを特徴とする。
【0049】
【作用】発明では、圧電素子アレイにおいて圧電体層
はアレイ分割せずに、個別電極のみをアレイ分割するこ
とにより、圧電体層もアレイ分割したときに生じやすい
圧電体層の割れが防止される。圧電体層も分割するとき
はダイサなどによるダイシングを行うのに対して、個別
電極のみのアレイ分割はドライまたはウェットのエッチ
ングによりできるからである。
【0050】また、圧電体層のダイシングによる割れを
考慮せずに済むことから、圧電体層の幅を厚さに比して
十分大きくできるので、幅方向の不要共振の影響がな
く、厚み方向の共振のみの理想的な振動を発生させるこ
とができる。従って、製造歩留りが高く、アレイ全体に
わたって均一なインク滴を飛翔させることができる。こ
の点は、特に圧電体層の厚さを薄くし、圧電素子アレイ
を高周波で駆動することによって微小のインク滴を飛翔
させる場合に有利であり、高解像度の記録が可能とな
る。
【0051】さらに、アレイ方向に超音波ビームを集束
させる場合、個別電極のみの分割の方が圧電素子アレイ
の配列ピッチを細かくできるので、メインローブに対す
るグレーティングローブの振幅が低減され、インク面の
不要な点からのインク滴の飛翔を防止して、良好な記録
を行うことができる。
【0052】電素子アレイにおいて圧電体層の長手方
向の少なくとも一部にギャップ、つまり切れ込みを形成
することにより、このギャップで隣接する圧電素子間の
クロストークが遮断されるため、効果的にクロストーク
ノイズが低減される。
【0053】電素子アレイ上に直接インクとの音響マ
ッチング層を形成し、かつその音響マッチング層に例え
ばフレネル輪帯理論に基づく溝を主走査方向に平行に形
成して、副走査方向における超音波ビームの集束を行う
ことで、圧電素子アレイから放射された超音波ビームは
従来のように溝の上部、下部ともに反射されることなく
インク中に放射され、インク液面に集束するので、効率
良くインクを飛翔させることが可能になる。
【0054】圧電素子アレイをフレネル回折の条件で分
割された複数の領域を奇数番目の領域からなる第1のグ
ループと偶数番目の領域からなる第2のグループとにグ
ループ化し、第1のグループから放射される超音波の位
相と第2のグループから放射される超音波の位相を互い
に180°異ならせることにより、超音波ビームを集束
させることができる。すなわち、音響レンズやレンズ効
果を持たせた圧電素子を用いることなく、平板状の圧電
素子を用いて超音波ビームをインク液面に効率よく集束
させることが可能である。
【0055】圧電素子アレイのインク保持手段と反対側
の面上に背面制動材を設けたことにより、圧電素子の不
要な残留振動を抑え、正確なインク滴の飛翔制御が可能
となる。この場合、背面制動材が配線基板を兼ねるよう
にすれば、背面制動材を特別に設ける必要がなくなり、
全体の構成を簡略化することができる。
【0056】板に樋状の凹部を形成し、この凹部内に
個別電極と圧電体層および共通電極を順次積層して構成
する複数の圧電素子を配設して凹面状の圧電素子アレイ
を構成することにより、各圧電素子の個別電極をミクロ
ン精度で形成することができるため、容易に圧電素子ア
レイにレンズ効果を持たせ、インク液面に効率よく超音
波ビームを集束させることが可能となる。
【0057】定の曲率の樋状の凹部を有する導電体と
絶縁体の積層体の該凹部内に、導電体を個別電極として
圧電体層および共通電極を積層した複数の圧電素子を配
設して凹面状の圧電素子アレイを構成することにより、
各圧電素子の個別電極をミクロン精度で形成することが
できるため、容易に圧電素子アレイにレンズ効果を持た
せ、インク液面に効率よく超音波ビームを集束させるこ
とが可能となる。
【0058】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。 (実施例1−1)図1は、第1の発明の第1の実施例に
係るインクジェット記録装置のインクジェットヘッド部
の構成を示す斜視図である。図1において、圧電素子ア
レイ10は、長尺の一様な厚さからなる板状の圧電体層
11と、その両面にそれぞれ形成された共通電極12お
よび個別電極13により構成される。すなわち、圧電体
層11と共通電極12および個別電極13により、一次
元に配列された複数の圧電素子が構成されている。
【0059】共通電極12の圧電体層11と反対側の面
上に、音響レンズ14が形成されている。音響レンズ1
4は例えばガラス板により形成されたもので、圧電素子
アレイ10と反対側の面が凹面となっており、音響的な
凹レンズとして機能する。音響レンズ14の上には、イ
ンク容器15が配置されている。インク容器15は、音
響レンズ14の凹面上に圧電素子アレイ10からの超音
波ビームの通路を包み込むように徐々に狭まった形状の
インク室を形成し、このインク室には液体インク16が
満たされている。
【0060】音響レンズ14の構成部材であるガラス板
の下面には、IC化された駆動回路(以下、駆動ICと
いう)17が実装されており、この駆動IC17はガラ
ス板上の配線パターン(図示せず)を介して共通電極1
2と個別電極13に接続されている。
【0061】駆動IC17は、記録すべき画像データに
応じて圧電素子アレイ10をそのアレイ方向(圧電素子
の配列方向、主走査方向)に隣接するn個の圧電素子を
1ブロックとしてブロック単位で順次駆動することによ
り、リニア電子走査を行う。具体的には、選択したブロ
ックのn個の圧電素子に対して所定の位相差を持たせた
高周波の駆動信号を供給し、それらの圧電素子を同時に
駆動することによって、圧電素子アレイ10から放射さ
れる超音波ビームを主走査方向に集束する。すなわち、
図2に示したように圧電素子アレイ10の全素子数を
N、同時駆動圧電素子数をnとしたとき、まず1番目か
らn番目までの圧電素子を所定の位相差で同時駆動す
る。そして、次に2番目〜n+1番目の圧電素子を同様
に所定の位相差で同時駆動し、以下同様に同時駆動する
圧電素子の位置を1素子分ずつずらせて繰り返し行うこ
とにより、集束される超音波ビームの放射方向を主走査
方向にリニアに移動させる。駆動信号の波形は、例えば
図3に示したような矩形波のバーストや、正弦波のバー
ストなどが用いられる。ここでn個の圧電素子に対する
駆動の位相差を変えるということは、図3における駆動
信号の印加開始タイミングを変えるということである。
【0062】こうして圧電素子アレイ10から放射され
る主走査方向に集束された超音波ビームは、さらに音響
レンズ14により主走査方向と直交する方向(副走査方
向)にも集束され、最終的にインク16の液面に点状に
集束する。こうしてインク液面に集束された超音波ビー
ムにより発生した圧力(放射圧)によって、インク液面
に円錐状のインクメニスカスが成長し、やがてインクメ
ニスカスの先端からインク滴が吐出する。吐出したイン
ク滴は、図示しない被記録体上に飛翔して付着し、乾燥
して定着されることにより、画像記録が行われる。
【0063】ここで、飛翔するインク滴の大きさを決定
するパラメータの一つとして超音波周波数がある。圧電
素子アレイ10は圧電体層11の厚さ方向の共振を利用
して超音波を放射するため、圧電体層11の厚さで周波
数が決まる。厚さは周波数に反比例するので、高周波ほ
ど薄くなる。従って、解像度の高いプリンタほど超音波
を高周波にする必要があるが、圧電体層11の種類と形
成法もそれに応じて選択することになる。
【0064】選択する圧電体層の種類は、この解像度で
決まる厚さの他に、電気入力と超音波出力との変換効率
を表わす電気機械結合係数と、駆動ICとの電気的整合
に影響する誘電率が主に選択時の条件になり、ジルコン
・チタン酸鉛(PZT)などのセラミックや、フッ化ビ
ニリデンと三フッ化エチレンとの共重合体などの高分子
材料、ニオブ酸リチウムなどの単結晶、酸化亜鉛などの
圧電性半導体などが用いられる。具体的には、解像度が
600dpi(dots per inch) 以下のプリンタにはPZ
T、それ以上の解像度(周波数)のものにはZnOが圧
電体層11の形成と性能面から優れているといえる。P
ZTなどバルク状のものを研磨などして圧電体層に用い
るときは、共通電極12と音響レンズ14の間に接着層
が介在するが、図1では省略している。また、電極1
2,13はTi、Ni、Al、Cu、Auなどの蒸着や
スパッタによる薄膜法、ガラスフリットを銀ペーストに
混合したスクリーン印刷による焼き付け法などが用いら
れる。また、音響レンズ14にはガラスや樹脂などが用
いられる。PZTなどを接着により音響レンズ14に接
合する場合には、レンズ材の加工性と圧電体層11のイ
ンク16との音響的マッチングを考慮すればよいが、Z
nOなどをスパッタなどで堆積する場合には、それに加
えてスパッタ時の温度や圧電体層の配向のし易さなどを
考慮して選択することになる。
【0065】(実施例1−2)図4は、第1の発明の第
2の実施例に係るインクジェット記録装置のインクジェ
ットヘッド部の要部の断面図であり、音響レンズ14と
して図1中に示した凹面レンズに代えて、所定の位置に
直線状の切れ込みを入れたフレネルレンズを用いた例で
ある。なお、切れ込みの間隔riと深さdは次式で与え
られる。
【0066】
【数1】
【0067】ここで、riはフレネルレンズの開口中心
からの距離、λwはインク中の超音波波長、Fは焦点距
離、λlはレンズ中での超音波波長である。 (実施例1−3)図5は、第1の発明の第3の実施例に
係るインクジェット記録装置のインクジェットヘッド部
の要部の断面図であり、音響レンズを用いる代わりに、
圧電素子アレイ10の形状を円筒の一部を用いた凹面状
とすることにより、副走査方向における超音波ビームの
集束を行うようにしたものである。この場合、圧電素子
アレイ10は圧電素子支持部18上に支持される。
【0068】(実施例1−4)図6は、第1の発明の第
4の実施例に係るインクジェット記録装置のインクジェ
ットヘッド部の要部の断面図であり、音響レンズ19の
圧電素子アレイ10と反対側に音響マッチング層19′
を構成したものである。
【0069】(実施例1−5)図7は、第1の発明の第
5の実施例に係るインクジェット記録装置のインクジェ
ットヘッド部の要部の断面図であり、実施例1−2では
フレネルレンズからなる音響レンズ14が圧電素子アレ
イ10の支持部を兼ねていたのに対し、本実施例は圧電
体層支持部18と音響レンズ19を分けて構成したもの
である。
【0070】次に、第1の発明に係るより具体的な実施
例について図1の基本構成を例にとって説明する。圧電
体層11として比誘電率2000で長さが4.5cmの
5枚のPZT系圧電セラミック板を用い、その共振周波
数は50MHz(厚さ40μm)とした。実装時は、こ
れらの5枚のセラミック板を音響レンズの上に並べ、そ
の両面にTi/Ni/Au電極をスパッタによりそれぞ
れの厚さが0.05μm、0.05μm、0.2μmと
なるように形成し、2kV/mmの電界を印加して分極
処理を行った。その後、圧電体層11の一方の面上の電
極をエッチングすることにより、3000個の個別電極
13を幅60μm、電極間隔15μm(圧電素子の配列
ピッチ75μm)で形成し、圧電体層10と他方の面上
の共通電極12および個別電極13からなる圧電素子ア
レイ10を作成した。
【0071】音響レンズ14としては厚さ1mmのパイ
レックスガラスを用い、レンズ曲率2.3mm、口径
1.5mmとなるように凹面加工した。この音響レンズ
14と圧電素子アレイ10をエポキシ樹脂系接着剤を用
いて、音響レンズ14の開口部(凹面)と圧電素子アレ
イ10の電極の位置が一致するように接着した。次に、
図1に示したようにインク容器15を配置し、さらに駆
動IC17を接続してインクジェットヘッドを構成し
た。なお、インク16の深さは3mmとし、共通電極1
2からインク液面までの距離は4mmとした。
【0072】次に、比較例1として上記と同じ仕様でダ
イシングソーを用いて切断することにより圧電素子アレ
イを作製した。方法は、まず厚さ40μmのPZT系圧
電体層の両面に上記実施例と同様に電極を形成して、音
響レンズ材にエポキシ樹脂で接着した。その後、ダイシ
ングソーにより15μm厚のブレードを用いて圧電体層
が完全に切断できるように、音響レンズ材の一部まで切
れ込みを入れてアレイ切断を行った。
【0073】これら実施例および比較例1の両者を用い
てインピーダンス特性を測定することにより、不良チャ
ンネルの有無を調べた。その結果、実施例では不良の圧
電素子が0/3000であったのに対し、比較例1では
467/3000の圧電素子のインピーダンスが大きく
なっていた。その箇所を顕微鏡で観察したところ、圧電
体層のアレイ方向に亀裂が入っているのが確認された。
その後、比較例1のインクジェットヘッドをエポキシ剥
離剤に浸し、音響レンズと分離して圧電体層を観察した
ところ、明らかに破損しているのが確認された。
【0074】一方、比較例2として圧電体層の破損が生
じないように切断ピッチを大きくしたインクジェットヘ
ッドを作製した。周波数は同じく50MHzとし、40
μm厚のPZT系圧電体層を用いた。この圧電体層の両
面に比較例1と同様に電極を形成し、音響レンズ材にエ
ポキシ樹脂で接着した。その後、ダイシングソーにより
15μm厚のブレードを用いて150μmピッチで音響
レンズ材の一部まで切れ込みを入れてアレイ切断をし
た。圧電素子数は1500となる。このインクジェット
ヘッドのインピーダンス特性を調べたところ、不良チャ
ンネルはなかった。
【0075】次に、実施例と比較例2のインクジェット
ヘッドを用いて、水中での音場測定を行い、−10dB
の中心軸での超音波ビームのビーム幅とグレーティング
ローブレベルを比較したところ、ビーム幅は実施例では
0.16mm、比較例2では0.20mmであり、グレ
ーティングローブレベルは実施例では−17dB、比較
例2では−6dBであった。すなわち、中心軸でのビー
ム幅は実施例の方が狭くなり超音波の集束が良好になっ
たが、顕著な差はでなかった。それに対して、グレーテ
ィングローブレベルは実施例の方が11dBも小さくな
った。このことは比較例の場合、不要な点からもインク
の飛翔が起こる可能性があるが、実施例はこのような問
題がないことを示す。
【0076】次に、実際にインク滴の飛翔実験を行っ
た。圧電素子アレイに印加する駆動信号電圧波形は図3
に示したように20MHzの矩形波バーストで、波数は
500(25μs)、電圧は100V0pとした。実施例
の場合は圧電素子アレイの2000素子のうち20素子
を1ブロックとして同時駆動したところ、中心軸からの
みインク滴が飛翔した。これに対して比較例2の場合
は、中心軸からに加えて1500素子の一端近くのグレ
ーティングローブが生じている箇所からもインク滴の飛
翔が起こった。この現象を調べてみると、中心軸以外か
らのインク滴の飛翔はヘッドの微妙な傾きで生じてお
り、その調整が非常に難しいことがわかった。従って、
個別電極のみならず圧電体層も切断する場合において、
その破損を防ぐように切断ピッチを広くすることは実用
的ではないといえる。
【0077】なお、以上の結果は音響レンズ14が凹面
レンズの場合のみでなく、フレネルレンズの場合も同様
であり、また圧電素子が図5に示したような凹面形状の
場合も同様である。特に、凹面形状の圧電素子の場合、
凹面状にした後に、圧電素子をアレイ状に切断すること
は困難である。また、インク滴を小さくするために高周
波化したときに、グレーティングローブの影響がないよ
うにするには、圧電素子アレイの配列ピッチを狭くする
必要がある。このことから、本発明のように圧電素子ア
レイにおいては個別電極のみを分割してアレイ化するこ
とが一層有効になる。
【0078】以上述べたように、第1の発明によれば圧
電体層は切断せずに個別電極のみをアレイ分割して圧電
素子アレイを構成することにより、圧電体層を含めてア
レイ分割する場合に比べ、製造歩留まりを低下させるこ
となく圧電素子アレイの配列ピッチを小さくすることが
でき、また超音波の高周波化に有利であるため、容易に
高解像度の記録を可能とすることができる。
【0079】(実施例2−1)図8は、第2の発明の一
実施例に係るインクジェット記録装置におけるインクジ
ェットヘッド部の構成を示す斜視図である。図8におい
て、圧電素子アレイ20は、長尺の一様な厚さからなる
板状の圧電体層21と、その両面にそれぞれ形成された
共通電極22および個別電極23により構成される。す
なわち、圧電体層21と共通電極22および個別電極2
3により一次元に配列された複数の圧電素子が構成され
ている。圧電体層21は次のような材料が好適である。
電気機械結合係数が大きい圧電体層の代表的なものとし
てはPZT(Pb(Zr,Ti)O3 )が挙げられる
が、比誘電率が500〜2000と大きいため、高周波
駆動ではインピーダンスが下がり過ぎるので、使用する
ことができず、低周波駆動向きである。電気機械結合係
数がある程度大きく、しかも比誘電率が10程度と小さ
い高周波駆動に向いている圧電体層は半導体材料ではZ
nOなどが望ましく、また有機材料ではPVDF(Poly
vinyl-Diphenylfluoride)などが望ましい。
【0080】共通電極22の圧電体層21と反対側の面
上に、音響レンズ24が形成されている。音響レンズ2
4は、この例では所定の位置に直線状の切れ込みを入れ
たフレネルレンズであるが、ガラス板などの表面に凹面
を形成したレンズであってもよい。音響レンズ24の上
には、インク容器25が配置されている。インク容器2
5は、音響レンズ24の凹面上に圧電素子アレイ20か
らの超音波ビームの通路を包み込むように徐々に狭まっ
た形状のインク室を形成し、このインク室には液体イン
ク26が満たされている。
【0081】上述した構成のヘッド部分は駆動IC27
とともに配線基板28上に実装されており、駆動IC2
7は配線基板28上の配線パターン(図示せず)を介し
て共通電極22と接続されると共に、ボンディングワイ
ヤを介して個別電極23に接続されている。
【0082】本実施例における基本的な画像記録動作
は、先の実施例1−1と同様である。すなわち、駆動I
C27は記録すべき画像データに応じて圧電素子アレイ
20をそのアレイ方向(主走査方向)に隣接するn個の
圧電素子を1ブロックとしてブロック単位で順次駆動す
ることにより、リニア電子走査を行う。つまり、選択し
たブロックのn個の圧電素子に対して所定の位相差を持
たせた高周波の駆動信号を供給し、それらの圧電素子を
同時に駆動することによって、圧電素子アレイ20から
放射される超音波ビームを主走査方向に集束させ、以下
同様に同時駆動する圧電素子の位置を1素子分ずつずら
せて繰り返し行うことにより、集束される超音波ビーム
の放射方向を主走査方向にリニアに移動させる。そし
て、圧電素子アレイ20から放射される主走査方向に集
束された超音波ビームは、音響レンズ24によって主走
査方向と直交する方向(副走査方向)にも集束され、最
終的にインク26の液面に点状に集束する。こうしてイ
ンク液面に集束された超音波ビームにより発生した圧力
(放射圧)によって、インク液面に円錐状のインクメニ
スカスが成長し、やがてインクメニスカスの先端からイ
ンク滴が吐出する。吐出したインク滴は、図示しない被
記録体上に飛翔して付着し、乾燥して定着されることに
より、画像記録が行われる。
【0083】図9は、図8に示したインクジェットヘッ
ド中の圧電素子アレイ20をアレイ方向と直交する方向
から見た斜視図であり、圧電体層21には同図に示され
るように、長手方向(アレイ方向)の少なくとも一部に
厚み方向に貫通するギャップ29が形成されている。圧
電体層21に形成されるギャップ29の数Kは、前述し
た通りN/2≧K≧N/nの範囲で等間隔にあることが
望ましい。ここで、Nは圧電素子アレイ20を構成する
圧電素子の総数、nは同時駆動圧電素子の数である。
【0084】圧電素子アレイ20を構成するN個の圧電
素子に対応して、圧電体層21がN個に分割されている
ときクロストークノイズが最小になるが、このように圧
電体層21を素子毎に分割すると量産性が著しく低下す
る。N/2≧Kとすれば、ギャップ29の間隔は100
μm以上となり、ダイサなどで切り込むことで容易にギ
ャップ29を形成することが可能になる。一方、最少で
もK≧N/nの範囲であれば、一つ一つのインク滴を飛
翔させるための駆動に必ずクロストーク減少効果が現れ
る。ギャップ29の幅は極めてわずかでよいので、n個
の信号線に対応する大きさ、あるいはその整数倍の大き
さの圧電体層を並べる方法で、個々の圧電体層間にわず
かにギャップが発生する程度でも効果は変わらない。ま
た、圧電体層の厚み方向または幅方向の一部に切れ込み
が入った形のギャップでも効果がある。
【0085】より具体的な実施例について述べると、図
9に示した最少ギャップ数であるK≧N/n、すなわち
n個(図9ではn=14)の圧電素子当たり1個のギャ
ップを入れた圧電体層を用いて、発生するクロストーク
を測定した。この圧電体層は、幅1.05mmのZnO
の焼結体に平行を保って動作するように並べられた10
本の刃を持つダイサで切れ込みを入れ、さらにダイサを
平行に移動する切削動作を自動的に行って作製した。
【0086】図10は、クロストーク減少効果確認のた
めに圧電素子アレイ20に信号を入力する様子を圧電体
層21および個別電極23と共に模式的に示したもので
ある。インク滴を1個飛翔させるのに対応する1ブロッ
ク(n個)の圧電素子のうち、特に中央部と両端部のみ
に図11に示す100MHzのバースト波形の駆動信号
電圧を入力し、ギャップ29近傍の駆動信号電圧を印加
していないラインに発生するノイズ、つまりクロストー
クノイズを測定した。本来はこのラインには出力波形は
観察されないはずであるが、100MHzという高周波
数での駆動であり、しかも圧電体層21(ZnO)の容
量負荷のために、図12に破線で示す出力波形がノイズ
として計測された。しかしながら、その振幅は4%以下
であり(図12は図11より縦軸を拡大している)、位
相のずれもなかった。そして、このようなギャップを有
する圧電体層21を用いて図8に示したインクジェット
ヘッドを構成し、プリンタとして動作させたところ、6
00dpiの高解像度のA4サイズモノクロ印刷が30
秒でできた。
【0087】一方、比較例として図13に示す圧電体層
21を用いてインクジェットヘッドを構成した。図13
の圧電体層21は、ギャップ29が形成されていないこ
と以外は実施例と同様である。図14は、図10と同様
に圧電素子アレイ20に信号を入力する様子を圧電体層
21および個別電極23と共に模式的に示したものであ
る。実施例と同様に、中央部と両端部の圧電素子のみに
図11に示す100MHzのバースト波形の駆動信号電
圧を入力し、近傍の駆動信号電圧が印加されていないラ
インに発生するクロストークノイズを測定したところ、
図12に実線で示す出力波形がクロストークノイズとし
て計測された。このクロストークノイズの振幅は8%以
上と、実施例で観測された振幅の2倍以上であった。
【0088】以上述べたように、第2の発明によればク
ロストークノイズを低く抑えることができるため、高周
波駆動を必要とする高解像度のインクジェット記録を実
現することができる。しかも、インクジェットヘッドと
しては圧電体層に比較的少ない数のキャップを形成する
だけでよく、量産性を損ねることはない。
【0089】(実施例3−1)図15は、第3の発明の
一実施例に係るインクジェット記録装置におけるインク
ジェットヘッド部の構成を示す斜視図である。図15に
おいて、圧電素子アレイ30は、長尺の一様な厚さから
なる板状の圧電体層31と、その両面にそれぞれ形成さ
れた共通電極32および個別電極33により構成され
る。すなわち、圧電体層31と共通電極32および個別
電極33により一次元に配列された複数の圧電素子が構
成されている。圧電体層31は超音波の周波数や素子の
大きさなどによってジルコン・チタン酸鉛(PZT)な
どのセラミックやフッ化ビニリデンと三フッ化エチレン
との共重合体などの高分子、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶、酸化亜鉛などの圧電性半導体などが選択されて用
いられる。一方、圧電体層31に形成する電極32およ
び33には、Ti,Ni,Al,Cu,Auなどの金属
の蒸着やスパッタによる薄膜法、ガラスフリットを銀ペ
ーストに混合したスクリーン印刷による焼き付け法など
が用いられる。
【0090】圧電素子アレイ30は、バッキング材38
上に形成されている。圧電素子アレイ30は、スパッタ
法やCVD法などにより直接バッキング材38に形成さ
れていてもよいが、図16(a)に示したように接着層
39を介して形成されるようにしてもよい。
【0091】共通電極32の圧電体層31と反対側の面
には、音響マッチング層兼音響レンズ34が形成されて
いる。この音響マッチング層兼音響レンズ34は圧電素
子アレイ30とインクとの音響的整合をとるためのもの
であり、その音響インピーダンスは圧電体層31の音響
インピーダンスとインクのそれとの積の平方根に近い値
のものを用いる。具体的にはエポキシ樹脂や、それに繊
維などを混入したもの、もしくはアルミナやタングステ
ンなどの粉末との混合物などが用いられる。この音響マ
ッチング層兼音響レンズ34はさらにフレネル輪帯理論
に基づく溝が形成されることにより、圧電素子アレイ3
0からの超音波ビームを圧電素子アレイ30のアレイ方
向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)に集束
する集束手段としての音響レンズを兼ねている。この音
響マッチング層兼音響レンズ34の厚さtは、式(1)
に示したようにt=λm×(2n+1)/4で与えられ
る。ここで、nは零以上の整数、λmは音響的整合材内
での超音波波長である。
【0092】なお、フレネルレンズの場合、図15にお
ける音響マッチング層兼音響レンズ34の厚さtは、切
れ込みのない部分の厚さt1と切れ込みのある部分の厚
さt2の二通りある。式(3)に示したようにフレネル
レンズの切れ込みの深さdはd=1/{2(1/λi−
1/λm)}で与えられる。従って、切れ込みのない部
分の厚さt1,切れ込みのある部分の厚さt2=t1−
dのそれぞれが、好ましくは式(1)の関係を満足して
いればよく、逆に式(2)の関係にはないことが望まし
い。つまり、式(2)と式(3)から、音響的整合材内
での超音波波長λmとインク中の超音波波長λiの比、
換言すれば音響的整合材内の音速Vmとインク中の音速
Viの比Vm/Viは、次式の範囲にある。
【0093】 {(2n+3)/(2n+1)}<(Vm/Vi) <{(2n+1)/(2n−1)} …(4) この場合において、音響的整合がとれ、かつレンズ界面
での超音波の全反射が起こらない超音波の送信効率の良
いフレネルレンズが実現する。
【0094】また、音速Vmが式(4)の範囲にある音
響マッチング層兼音響レンズの材料がインク中に含有す
る溶剤などに耐性がない場合、レンズ表面にそれらに耐
性のある材料で保護膜を形成することも可能である。こ
の保護膜は、超音波をインク中に伝搬し集束させること
を妨げない程度の厚さを持ち、かつその表面状態は例え
ばインクに内包する気泡などの付着を妨げる性質を保つ
ことのできるものが望ましい。例えば、ポリイミドなど
の材料が挙げられる。
【0095】インク容器35は、この音響マッチング層
兼音響レンズ34上に圧電素子アレイ30からの超音波
ビームの通路を包み込むように徐々に狭まった形状のイ
ンク室を形成し、このインク室に液体インク36が満た
されている。また、駆動IC37はバッキング材38の
上に形成され、配線パターン(図示せず)を介して共通
電極32および個別電極33に接続されている。
【0096】本実施例における駆動IC37による圧電
素子アレイ30の駆動は、図2に示したように圧電素子
アレイ30を構成する圧電素子の総数をN、同時駆動圧
電素子数をnとしたとき、まず1番目〜n番目の圧電素
子をインク液面に焦点を結ぶように所定の位相差をもっ
て、あるいはフレネルの回折理論に基づいたグルーピン
グを行い、一方を半波長シフトして駆動する。次に、同
時駆動圧電素子の位置を一素子分移動して、2番目〜n
+1番目の圧電素子を駆動する。そして、同様の動作を
N−n+1番目〜N番目の圧電素子まで行う。走査の方
法は圧電素子1素子分のシフトでなく、複数素子分シフ
トしてもよい。また、同時駆動圧電素子は全素子の中の
1グループ分でなくともよく、2グループ以上であって
もよい。
【0097】次に、第3の発明に係るより具体的な実施
例について述べると、圧電体層31としては比誘電率2
000のPZT系圧電セラミック板を用い、その共振周
波数は20MHz(厚さ100μm)とした。この圧電
セラミック板の両面に、Ti/Ni/Au電極をスパッ
タによりそれぞれの厚さが0.05μm、0.05μ
m、0.2μmとなるように形成し、2kV/mmの電
界を印加して分極処理を行った。その後、圧電体層31
の一方の面上の電極をエッチングすることにより、個別
電極33を形成し、圧電素子一素子の幅120μm、電
極間隔30μm(個別電極の配列ピッチ150μm)に
なるようにした。また、副走査方向の電極の長さは5m
mとした。次に、音響マッチング材料としてエポキシ樹
脂にアルミナ粉末を混ぜることにより、音響インピーダ
ンスを6MRaylとしたものを用いて音響マッチング
層兼音響レンズ34を作成した。なお、音響マッチング
材料中の音速は3100m/sで、インク中の音速の約
2倍である。これらを樹脂系のバッキング材38上にエ
ポキシ樹脂で接着した後、図15に示したようにインク
容器35を配置し、さらに駆動IC37を接続してイン
クジェットヘッドを完成させた。
【0098】一方、比較例として音響マッチング層兼音
響レンズを用いずに、ガラスを凹面加工することにより
副走査方向に超音波ビームを集束させるインクジェット
ヘッドを作製した。
【0099】これら実施例および比較例の両者を用い
て、インクの飛翔を確認したところ、実施例によると約
200dpiの解像度を得ることができ、かつ効率良く
インクを飛翔させることができたのに比べ、比較例では
解像度は高々約150dpiであり、また約1.5倍の
駆動信号電圧を印加してもインク滴が飛翔しない場合が
あった。
【0100】第3の発明のさらに別の実施例として、図
16(b)に示すように音響マッチング層兼音響レンズ
34の凹部において共通電極32が剥き出しとなるよう
にしてもよい。この場合、図15よりインク滴の飛翔効
率は落ちるが、音響マッチング層兼音響レンズ34がレ
ンズとして働くために集束超音波が得られ、また音響マ
ッチング層兼音響レンズ34の凸部は音響マッチング層
としても働くので、凸部の超音波送信効率は図15の構
成と同様である。
【0101】以上述べたように、第3の発明によれば同
一材料からなる音響マッチング層兼音響レンズを圧電素
子アレイ上に形成することにより、インク中に途中で反
射などされることなく超音波ビームを放射させることが
できるので、インク液面に超音波ビームを効果的に集束
させて、効率良くインク滴を飛翔させることが可能とな
る。また、電子フォーカス法もしくはフレネル型グルー
ピングによる駆動法により、垂直にインク滴を飛翔させ
ることができ、高解像度の記録を行うことができる。
【0102】(実施例3−2)次に、実施例3−1で用
いる音響マッチング層兼音響レンズ34の製造方法につ
いて説明する。
【0103】圧電素子アレイ上に設けられるフレネルレ
ンズは、断面形状が凹凸を有し、超音波波長をλとし
て、例えば凸部高さと凹部高さの差がλ/2で、凸部高
さが5λ/4、凹部高さが3λ/4において超音波ビー
ムの集束が可能である。駆動周波数が低い領域、例えば
圧電体層として比誘電率2000のPZTを用いて超音
波周波数7.5MHz、フレネルレンズの凸部高さを3
λ/4とした設計の時、凸部高さは300μm、凹部高
さは100μmとなる。この場合、超音波ビームが十分
に集束するに必要な凸部高さおよび凹部高さの精度は±
10%以内であり、凸部においては±30μm、凹部に
おいては±10μmの加工精度が必要となる。この範囲
内では、例えばエポキシ樹脂の成型品を切削加工して製
造し、接着層を介して圧電素子アレイ上に積層すること
で、必要な加工精度を容易に満たすことができる。
【0104】しかしながら、駆動周波数が高くなると、
例えば超音波周波数が200MHzではλ=16μm
で、凸部高さ5λ/4とした場合でも、凸部高さは20
μm、凹部高さは12μmとなり、要求される加工精度
は凸部において±2μm、凹部において±1μmとな
り、成型品の切削加工では十分な精度がとれない。ま
た、凹凸部の厚み差を1μmの加工精度で樹脂の成型品
を製造する手段として、コンパクトディスクなどで用い
られているニッケルの電鋳スタンパを型として熱可塑性
樹脂の成型を行う方法があるが、コンパクトディスクで
は凹凸差に高い精度が要求され、ディスクの厚みそのも
のは、1ミリ±10%程度で十分である。これに対し、
フレネルレンズの場合は凹凸部の高さそのものも高い精
度が要求され、かつ長手方向に300ミリ程度の形状を
持つ場合もあり、コンパクトディスクで用いられる成型
方法では、凹凸部の高さの制御が困難で、かつ長手方向
の厚み差に対しても高い精度で成形することができな
い。
【0105】本実施例は上記の問題を解決し、レンズ形
状を反転した凸状平行線路が複数本形成された転写用パ
ターンを有したスタンパを内型に装着した金型を用い
て、パターンを転写した樹脂の成型品を製造する方法に
おいて、凸状線路に平行な樹脂の逃げ溝を形成し、凸状
線路に直角な方向に樹脂を流動させてパターンを転写す
ることにより、高精度に凹凸厚みと長手方向の厚みを制
御した転写樹脂シートの製造方法を提供し、さらにこの
製造方法により高精度のレンズパターンを有した樹脂シ
ートを提供し、かつ金型の外型側に圧電素子アレイを設
置して圧電素子アレイ上に音響マッチング層兼音響レン
ズを樹脂で一体成形するものである。
【0106】図17は、本実施例に係る音響マッチング
層兼音響レンズ34を圧電素子アレイ30上に樹脂で一
体成形したインクジェットヘッド部を示す斜視図であ
り、併せてレンズ34上のレンズの凹凸形状の拡大図も
示している。このインクジェットヘッドは、λ=16μ
mの場合で、厚み30μmの焼結体PZTを用いた圧電
体層31の両面に1μm厚のタングステン膜からなる共
通電極32および幅40μm/スペース20μmのパタ
ーンの1μm厚のアルミ膜からなる個別電極33が形成
された圧電素子アレイ30と、凸部高さ20μm±1μ
m、凹部高さ12μm±1μm、長手方向に300ミリ
±10μmの形状を有したエポキシ樹脂製の音響マッチ
ング層兼音響レンズ34と、厚み10ミリのゴム製のバ
ッキング材38からなる。
【0107】次に、このインクジェットヘッドにおける
圧電素子アレイ30と音響マッチング層兼音響レンズ3
4を一体成形する製造方法について説明する。図18
は、圧電素子アレイ30上に未硬化のエポキシ樹脂の注
入により高精度の転写パターン(凹凸パターン)を有す
る音響マッチング層兼音響レンズ34となる樹脂シート
を形成するための金型に、減圧状態で樹脂を注入した後
該樹脂シートを成形する製造装置を模式的に示した図で
あり、図19は上記金型の断面を示した模式図である。
【0108】まず、図19に示す金型について説明する
と、高さ8μm、長さ350ミリの複数の凸状線路形状
を表面に形成したニッケル製の電鋳スタンパ41(詳細
は図示せず)がスタンパ抑え42により金型の内型であ
る可動支持体43に装着されている。可動支持体43に
は凸状線路の長手方向に対応する方向に逃げ溝44が形
成され、逃げ溝44の数箇所にそれぞれ減圧加圧口45
と樹脂注入口46が設けられている。一方、金型の外型
である固定支持体47には、凸状台座48上に圧電素子
アレイ30が固定されると共に、ストッパ49が形成さ
れている。
【0109】可動支持体43をストッパ49に当たる位
置まで移動させ、図19に示す構成で金型内を減圧ポン
プ51により減圧タンク52を介して減圧した後、減圧
・加圧バルブ53を中程度に絞り、樹脂バルブ54を開
け、樹脂タンク55から一定量の樹脂を注入する。この
時、樹脂は図18の逃げ溝44に向かって凸パターンに
直角な方向に流動することから、長手方向にも厚みむら
の無い状態で、かつ微細な凹パターンの内部にまでまん
べんなく樹脂を注入することができる。
【0110】次に、樹脂バルブ54を閉め、樹脂バルブ
54および減圧・加圧バルブ53をリークさせる。この
状態で金型の温度を250℃まで上げ、エポキシ樹脂を
硬化させた後、減圧・加圧バルブ53に切り替えてコン
プレッサ56により2〜10kg/cm2 程度加圧し、
内型である可動支持体43から樹脂を剥離しながら金型
を開ける。そして、圧電素子アレイ30とその上に形成
された樹脂シートを取り出し、所望の形状に切断するこ
とにより、図17中に示した音響マッチング層兼音響レ
ンズ付き圧電素子アレイを得る。
【0111】(実施例3−3)図20は、λ=16μm
で樹脂フィルムを用いて音響マッチング層兼音響レンズ
付き圧電素子アレイを作成する他の実施例を示す図であ
り、(a)は図19中の電鋳スタンパ41と、圧電素子
アレイ30上に樹脂フィルム61を被覆した部分の領域
を拡大して模式的に示した図、(b)は図19中の可動
支持体43を移動させ、電鋳スタンパ41のパターンを
樹脂フィルム61に転写させて樹脂シート62を形成し
た領域を拡大して模式的に示した図である。
【0112】電鋳スタンパ41として、表面に断面形状
が矩形で主平面からの矩形高さがλ/2=8μmである
凸状平行線路が複数本形成された転写用パターンを有す
るものを用意し、これを可動支持体43に装着する。固
定支持体47の凸状台座48には予め圧電素子アレイ3
0が仮固定されており、その上に厚み20μm程度のポ
リカーボネート樹脂フィルム61を被覆した。
【0113】そして、電鋳スタンパ41の凸部と圧電素
子アレイ30との距離w=3λ/4が12μmとなるよ
うに固定支持体47に装着し調整したストッパ49の位
置まで可動支持体43を移動させると同時に、減圧ポン
プ51により金型内を減圧しながら金型の温度を180
℃まで上げて樹脂フィルム61を溶融する。溶融した樹
脂は逃げ溝44に向かって凸パターンに直角な方向に流
動することから、長手方向にも厚みむらの無い状態で、
かつ微細な凹パターンの内部にまでまんべんなく注入す
ることができる。余剰の樹脂を凸パターンに直角な方向
に流動させ、長手方向にも厚みむらの無い状態で微細な
凹パターンの内部にまでまんべんなく樹脂を満たした。
この状態で金型の温度を熱変形温度以下まで冷却し、樹
脂を固化させることにより、樹脂シート62を形成し
た。その後、コンプレッサ56により加圧を行い、内型
から樹脂シート62を剥離しながら金型を開けて音響マ
ッチング層兼音響レンズ付き圧電素子アレイを取り出
し、これを所望の形状に切断することにより、図17中
に示した音響マッチング層兼音響レンズ付き圧電素子ア
レイを得た。
【0114】(実施例3−4)次に、樹脂の塗布を用い
て音響マッチング層兼音響レンズ付き圧電素子アレイを
形成する実施例を説明する。
【0115】断面形状が矩形で主平面からの矩形高さが
λ/2=8μmである様な凸状平行線路が複数本形成さ
れ転写用パターンを有した電鋳スタンパ41を用意し、
これを可動支持体43に装着する。固定支持体47の凸
状台座48には予め圧電素子アレイ30が仮固定されて
おり、その上に樹脂の塗布層厚みが10μm程度となる
ように未硬化のエポキシ樹脂を塗布し、樹脂塗布層を形
成した。
【0116】そして、電鋳スタンパ41の凸部と圧電素
子アレイ30との距離w=λ/4が4μmとなるように
固定支持体47に装着し調整したストッパ49の位置ま
で可動支持体43を移動させると同時に、減圧ポンプ5
1により金型内を減圧する。これにより、樹脂は逃げ溝
44に向かって凸パターンに直角な方向に流動すること
から、長手方向にも厚みむらの無い状態で、かつ微細な
凹パターンの内部にまでまんべんなく注入される。余剰
の樹脂を凸パターンに直角な方向に流動させ、長手方向
にも厚みむらの無い状態で微細な凹パターンの内部にま
でまんべんなく樹脂を満たした。この状態で金型の温度
を250℃まで上げて、エポキシ樹脂を硬化させた後、
コンプレッサ56により加圧を行い、内型から樹脂を剥
離しながら金型を開けて音響マッチング層兼音響レンズ
付き圧電素子アレイを取り出し、これを所望の形状に切
断することにより、図17中に示した音響マッチング層
兼音響レンズ付き圧電素子アレイを得た。
【0117】なお、実施例3−2〜3−4では固定支持
体47に凸状台座48を設け、その上に圧電素子アレイ
30を仮固定したが、樹脂シートの寸法形状に応じて凸
状台座48を介さず直接圧電素子アレイを固定支持体4
7上に仮固定しても良い。また、同実施例では金属酸化
物や金属窒化物等のフィラーを樹脂に混入することで樹
脂と金型の熱膨脹係数が近くなるように調節した樹脂を
用いたが、フィラーの混入率に応じて樹脂と金型の熱膨
張係数の差を考慮し、電鋳スタンパ41の凹部に注入さ
れる未硬化、若しくは溶融時の樹脂の体積が、成形後の
寸法形状の101%から106%程度となるように予め
電鋳スタンパ41の凹部を大きめに設計しておいても良
い。
【0118】なお、上述した実施例3−2〜3−4で説
明した方法は、音響マッチング層兼音響レンズ付き圧電
素子アレイの製造にのみでなく、音響マッチング層とは
別にフレネルレンズからなる音響レンズを設ける場合に
も音響レンズ付き圧電素子アレイの製造にも適用するこ
とができる。
【0119】このように実施例3−2〜3−4による
と、音響レンズとなるフレネルレンズの凹凸形状を反転
した凸状平行線路が複数本形成された転写用パターンを
有したスタンパを内型に装着した金型を用いて、パター
ンを転写した樹脂の成形品を製造する際、凸状線路に平
行に樹脂の逃げ溝を形成し、凸状線路に直角な方向に樹
脂を流動させてパターンを転写することにより、凹凸厚
みと長手方向の厚みが高精度に制御された転写樹脂シー
トを容易に得ることが出来る。従って、音響レンズの形
状寸法が微細化し、厳しい寸法精度が要求される場合で
も対応が可能となり、圧電素子アレイを高周波駆動する
場合にも適用が可能となる。
【0120】また、金型の外型側に圧電素子アレイを設
置することにより、圧電素子アレイ上にフレネルレンズ
からなる音響レンズを樹脂で一体成形した音響レンズ付
き圧電素子アレイあるいは音響マッチング層兼音響レン
ズ付き圧電素子アレイを容易に製造することができる。
この場合、圧電素子アレイと音響レンズ間の接着層が不
要となるため、圧電素子アレイ上に積層された樹脂領域
の寸法形状をより精度よく製造することが可能となる。
【0121】(実施例4−1)図21は、第4の発明の
一実施例に係るインクジェット記録装置におけるインク
ジェットヘッド部の圧電素子の概略構成を示す図であ
り、平板形状でありながら集束した超音波ビームを放射
できるようにしたものである。同図に示されるように、
本実施例の圧電素子70は円板形状であり、フレネル回
折の条件で同心円状に複数の領域に区分されると共に、
これら複数の領域が奇数番目の領域からなる第1のグル
ープと偶数番目の領域からなる第2のグループとにグル
ープ化されている。そして、第1のグループから放射さ
れる超音波の位相と第2のグループから放射される超音
波の位相が互いに180°異なるように、端子76およ
び端子77を介して印加される2相駆動電圧によって駆
動される。すなわち、端子76には0相の駆動信号電圧
が印加され、端子77にはπ相の駆動信号電圧が印加さ
れる。
【0122】図22は、図21の圧電素子70の詳細を
示す断面図である。同図に示すように、圧電素子70は
円板状の圧電体層71と、その両面にそれぞれ形成され
た円板状の共通電極72およびフレネル回折の条件で同
心円状に分割された個別電極73からなる。
【0123】図23は、個別電極73の平面図である。
同図に示すように、個別電極73は奇数番目の電極73
a,73c,73eからなる第1のグループと、偶数番
目の電極73b,73d,73fからなる第2のグルー
プとにグループ化され、かつグループ毎に連絡導体7
4,75により共通に接続されている。そして、第1の
グループの個別電極は連絡導体74を介して端子76に
接続され、第2のグループの個別電極は連絡導体75を
介して端子77に接続される。
【0124】端子76と端子77には、図21に示した
ように互いに180°位相の異なる駆動信号電圧が図示
しない駆動回路から印加される。これにより、圧電素子
70から集束した超音波ビームが放射される。
【0125】本実施例の圧電素子70の製造工程を以下
に説明する。まず、図示しない基板上に図23に示す個
別電極73のパターンを形成する。この際、連絡導体7
4と偶数番目の電極73b,73d,73fとの間およ
び連絡導体75と奇数番目の電極73a,73c,73
eとの間は、図示しない絶縁層により絶縁分離する。次
に、端子76と端子77の部分を除いて、個別電極73
の上に円板状の薄膜の圧電体層71を一様の厚さで形成
する。圧電体層71としては、ZnO(酸化亜鉛)、P
ZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PT(チタン酸鉛)な
どの圧電材料をスパッタ等の薄膜形成技術で所定厚さに
形成する。次に、圧電体層71上に一様に共通電極72
を形成し、さらに圧電体層71を一様に分極することに
より、インクジェットヘッドが完成する。
【0126】なお、本実施例では個別電極73のみをフ
レネル分割したが、圧電体層71についても同様に分割
してもよい。要するに、円板状の圧電素子をフレネル回
折の条件で同心円状に複数の領域に区分し、これらの領
域を奇数番目の領域からなる第1のグループと、偶数番
目の領域からなる第2のグループとにグループ化すれば
よい。
【0127】また、本実施例はインクジェットヘッドを
複数個配列した多ヘッドやラインヘッドなどにも適用で
き、その場合は図23に示した個別電極23のパターン
を基板上に複数個配列し、各々のパターンから基板端部
に引き出した端子部のみ露出するように圧電体層を一様
に形成すればよい。
【0128】(実施例4−2)図24は、第4の発明の
他の実施例に係るインクジェット記録装置におけるイン
クジェットヘッド部の圧電素子の概略構成を示す図であ
り、やはり平板形状で集束した超音波ビームを放射でき
るようにしたものである。同図に示すように、この圧電
素子80は円板形状であり、フレネル回折の条件で同心
円状に複数の領域に区分されると共に、これら複数の領
域が奇数番目の領域からなる第1のグループと偶数番目
の領域からなる第2のグループとにグループ化されてい
る。そして、第1のグループから放射される超音波の位
相と第2のグループから放射される超音波の位相が互い
に180°異なるように、第1のグループの領域と第2
のグループの領域とは、矢印で示すように厚み方向にお
いて互いに逆方向に圧電体層が分極されている。
【0129】図25は、図24の圧電素子80の詳細を
示す断面図である。同図に示すように、圧電素子80は
円板状の圧電体層81とその両面にそれぞれ形成された
円板状の共通電極82およびフレネル回折の条件で同心
円状に分割された個別電極83からなる。個別電極83
は、図23と同様に奇数番目の電極83a,83c,8
3eからなる第1のグループと、偶数番目の電極83
b,83d,83fからなる第2のグループとにグルー
プ化されている。圧電体層81は、矢印で示すように第
1グループの領域、つまり奇数番目の個別電極83a,
83c,83eに対応した領域が図の下方向に分極さ
れ、第2のグループの領域、つまり偶数番目の個別電極
83b,83d,83fに対応した領域が図の上方向に
分極されている。そして、個別電極83は全て連絡導体
84により共通に接続され、端子85に接続されてい
る。
【0130】端子85には図示しない駆動回路が接続さ
れ、この駆動回路から同一の駆動信号電圧が圧電素子8
0の各領域に印加される。ここで、圧電素子80は圧電
体層81の分極方向が隣接する領域間で逆、つまり18
0°異なっているため、各領域から放射される超音波の
位相も180°異なる。従って、圧電素子80の各領域
に同じ駆動信号電圧を印加しても、隣接する領域に印加
する駆動信号電圧の位相を180°異ならせた実施例4
−1の場合と同様の効果が得られ、集束した超音波ビー
ムを放射することができる。本実施例は、駆動回路が単
相の駆動信号電圧を発生すればよいため、構成が簡単と
なる。
【0131】なお、本実施例では個別電極83のみをフ
レネル分割したが、圧電体層81についても同様に分割
してもよい。要するに、円板状の圧電素子をフレネル回
折の条件で同心円状に複数の領域に区分し、これらの領
域を奇数番目の領域からなる第1のグループと、偶数番
目の領域からなる第2のグループとにグループ化すると
共に、圧電体層の分極方向を第1のグループに対応した
領域と第2のグループに対応した領域とで逆にすればよ
い。
【0132】また、本実施例はインクジェットヘッドを
複数個配列した多ヘッドやラインヘッドなどにも適用で
きる。次に、図25に示した圧電体層81の分極方向を
隣接する領域で逆にした圧電素子80の作製方法の一例
を述べる。分極は圧電体層に高電圧を印加することで行
うことができ、印加する高電圧の極性を逆に印加すると
分極方向が反転する。図22に示した圧電素子70で
は、圧電体層71上に共通電極72を形成した後、端子
76と端子77を接続して、共通電極72との間に直流
の高電圧を印加することで、圧電体層71を一様に分極
することになる。
【0133】これに対して、図25の場合は、図22お
よび図23と同様に個別電極83を奇数番目の電極83
a,83c,83eからなる第1のグループと、偶数番
目の電極83b,83d,83fからなる第2のグルー
プ毎に図示しない二つの連絡導体により共通に接続して
第1の端子および第2の端子に接続し、さらに圧電体層
81上に共通電極82を形成した後、まず第1の端子と
共通電極間82間にある極性の直流高電圧を印加して、
圧電体層81の第1のグループに対応した領域を分極
し、次に第2の端子と共通電極82間に極性を変えた直
流高電圧を印加して圧電体層81の第2のグループに対
応した領域を分極すればよい。こうして分極が行われた
圧電素子80を駆動するときは、第1の端子と第2の端
子を接続して端子85に引き出し、この端子85に駆動
信号電圧を印加するようにすればよい。
【0134】また、圧電体層の下面に一体の電極を形成
し、上面に同心円状に分割された電極を形成して、所定
の方向に分極処理を施した後に、上面の分割された電極
の上に共通電極をスパッタ等により形成しても良い。
【0135】(実施例4−3)図26は、第4の発明を
アレイ型インクジェットヘッドに適用した実施例を示す
斜視図である。同図に示されるように、圧電体層91の
上面には共通電極92が一様に形成され、下面にはアレ
イ方向つまり複数の圧電素子の配列方向(主走査方向)
に沿って等間隔で個別電極93が形成されている。ま
た、圧電体層91はアレイ方向と直交する方向(副走査
方向)に実施例4−2と同様にフレネル回折の条件で複
数の領域に区分され、さらに奇数番目の領域からなる第
1のグループと偶数番目の領域からなる第2のグループ
とにグループ化されると共に、第1のグループに対応し
た領域と第2のグループに対応した領域とで逆方向に分
極されている。このようにして、副走査方向に集束する
超音波ビームを放射する圧電素子を複数個配列した圧電
素子アレイが構成される。
【0136】共通電極92は接地され、個別電極93は
リード94を介して図示しない駆動回路に接続される。
この駆動回路は、例えば記録すべき画像データに応じて
圧電素子アレイをそのアレイ方向に隣接するn個の圧電
素子を1ブロックとしてブロック単位で順次駆動するこ
とにより、リニア電子走査を行う。具体的には、選択し
たブロックのn個の圧電素子に対して所定の位相差を持
たせた高周波の駆動信号を供給し、それらの圧電素子を
同時に駆動することによって、圧電素子アレイから放射
される副走査方向に集束した超音波ビームをさらに主走
査方向に集束する。すなわち、圧電素子アレイの全素子
数をN、同時駆動圧電素子数をnとしたとき、まず1番
目からn番目までの圧電素子を所定の位相差で同時駆動
し、次に2番目〜n+1番目の圧電素子を同様に所定の
位相差で同時駆動し、以下同様に同時駆動する圧電素子
の位置を1素子分ずつずらせて繰り返し行うことによ
り、集束される超音波ビームの放射方向を主走査方向に
リニアに移動させる。
【0137】このように本実施例によれば、互いに直交
する主走査方向および副走査方向に集束して超音波ビー
ムを平板状の圧電素子アレイから放射することができ
る。この二方向の集束効果により超音波ビームは図示し
ないインク室内のインク液面の1点に集束してインク滴
を飛翔させることができる、また、リニア電子走査によ
り超音波ビームの焦点位置を主走査方向にリニアに移動
させることができるため、ラインプリンタを実現でき
る。この場合、インク滴の間隔を圧電素子の配列ピッチ
以下にすることもできる。
【0138】次に、図27を参照して同実施例のアレイ
型インクジェットヘッドのより具体的な構造と製造工程
について説明する。基板95上に個別電極93を形成
し、その上に薄膜の圧電体層91を形成する。次に、圧
電体層91上に点線で示すようにフレネル条件で区分さ
れたライン状の分割電極を形成した後、個別電極93を
共通に接続し、圧電体層91上面の分割電極との間で矢
印のように分極する。その後、上面の分割電極を共通に
接続するか、またはその上に一様に電極を形成した共通
電極92とする。
【0139】他の製造方法として、基板側にフレネル分
割されたライン状の分割電極を形成し、圧電体層を形成
した後、圧電体層上一面に電極を形成して同様に分極を
行い、ついで下面の電極を共通に接続して共通電極と
し、さらに上面の電極を所定間隔でエッチングして個別
電極を形成してもよい。
【0140】以上述べたように、第4の発明によれば平
板形状の圧電素子で集束した超音波を放射できるため、
エネルギー効率に優れ、低コストで高解像度の記録が可
能となる。
【0141】(実施例5−1)図28は、第5の発明の
第1の実施例に係るインクジェット記録装置におけるイ
ンクジェットヘッド部の断面図である。圧電素子100
は圧電体層101とその両面に形成された共通電極10
2および個別電極103からなり、共通電極102の前
面には音響レンズ104が設けられている。そして、圧
電素子100の背面には個別電極103に接して背面制
動材105が設けられている。音響レンズ104の上部
には、液体インク106を収容しかつスリット部を備え
たインク支持体107が配置されている。
【0142】圧電体層101の材料としては、ジルコン
酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛などのセラミック
圧電材料、あるいはZnOやAlNなどの半導体圧電材
料、またポリ弗化ビニリデン(PVDF)やポリ弗化ビ
ニリデンと三弗化エチレンの共重合体(P(VDF−T
rFE))などの高分子圧電材料などを用いる。また、
電極102,103の材料には、Ti,Ni,Al,C
u,Cr,Auなどの単層あるいは積層の金属蒸着膜、
また銀ペーストにガラスフリットを混合して印刷塗布し
た後に焼き付け処理を行った金属焼き付け膜などを用い
る。さらに、音響レンズ104は、この例ではフレネル
回折理論に基づいて溝を形成した平面的なプラスチック
レンズである。音響レンズ104としては、凹面レンズ
を用いてもかまわない。また、ジルコン酸チタン酸鉛
(PZT)やZnOなどように音響インピーダンスがイ
ンク106に比べてかなり大きな材料を圧電体層として
用いる場合には、音響レンズ104は音響整合層として
の機能を兼ね備えている。すなわち、圧電素子100か
ら励起された超音波ビームがインク106に効率よく伝
達されるように、音響レンズ104は音響インピーダン
スが圧電体層101とインク106の中間となる材料か
らなり、さらにその凸部および凹部の厚みが共に音響レ
ンズ104中での超音波波長λの1/4の整数倍となる
ように作製する。
【0143】一方、本実施例の特徴である圧電素子10
0の下に位置する背面制動材105は、圧電素子100
を機械的に支持する機能と、圧電素子100が余分な振
動を生じないように制動する機能、つまり圧電素子10
0に駆動電圧が印加されていない状態になったら、圧電
素子100の振動が残存しないように制動する機能を有
する。このような制動機能を持つためには、背面制動材
105は音響インピーダンスが3×106 kg/m2
s以上である材料であることが望まれる。背面制動材1
05の実際の材料としては、石英やパイレックスなどの
ガラス材料、フェライトゴムやシリコーンなどのゴム材
料、エポキシなどの樹脂材料、アルミナなどのセラミッ
ク材料、銅やアルミニウムなどの金属材料が用いられ
る。多孔性材料のような音響インピーダンスが3×10
6 kg/m2 ・s未満のものでは、十分な制動効果が得
られず、また支持体としての機械的強度が得られない問
題がある。
【0144】背面制動材105のもう一つ重要な特性と
して、底面部からの反射波が圧電素子1に到達して振動
に悪影響を及ぼさないようにするために、内部での超音
波の減衰が十分大きいことが挙げられる。フェライトゴ
ムなどを使用すれば、その減衰係数自体が約3.8dB
/MHz・mmと大きいため、数ミリの厚さがあれば十
分な減衰を生じ得る。一方、石英ガラスなどでは減衰係
数が約6.5×10-4dB/MHz・mmと小さいた
め、数十MHz程度の低い周波数の超音波を圧電素子が
励起する場合には、背面制動材105の厚みを大きくし
たり、あるいは底面部分を図29に示すように平滑でな
い面とするなどの形状対策をとることが望ましい。
【0145】図30は、本実施例における圧電素子10
0の部分を示す斜視図である。平板状の圧電体層101
の上面に共通電極102が形成され、下面に短冊形状の
複数個配列された個別電極103が形成されている。こ
の実施例では圧電素子100のうち個別電極103がア
レイ状に分割されており、圧電体層101は分割されて
いないが、共通電極102と個別電極103との間に駆
動電圧を印加することにより、その間の圧電体層部分を
個別に振動させることが可能である。勿論、圧電体層1
01を含めて短冊状に分割した構造もとり得るが、圧電
体層を等方的に分割する工程や、各圧電素子を電気的・
機械的に分離するためのにシリコーン樹脂などの充填剤
を圧電素子間の溝に挿入する工程が必要となり、作製が
煩雑となる問題がある。一方で、圧電体層も含めて分割
した方が電気エネルギーを機械エネルギーに変換する効
率(電気機械結合係数)が高いという利点もあり、製造
コストと性能の兼ね合いにより構造を決定すればよい。
【0146】圧電素子100の下部には背面制動材10
5が設けられ、上部には音響レンズ104が設けられて
いる。音響レンズ104は、フレネル回折理論に基づい
て決定される間隔と幅を持ったライン状のフレネルレン
ズであり、圧電素子100の配列方向と直交する方向
(副走査方向)に対して超音波ビームを集束させる。一
方、圧電素子100の配列方向(主走査方向)に対して
は、共通電極102および個別電極103−1〜103
−nを介して隣接した所定個数の圧電素子を同時に駆動
し、そのとき各圧電素子から励起された超音波の位相が
インク液面上の一点で一致するように各圧電素子に印加
する駆動信号電圧の位相差を制御して超音波ビームを集
束させる。このように主走査方向および副走査方向に集
束された超音波ビームの圧力により、インク液面の一点
からインク滴108を飛翔させる。また、駆動する圧電
素子の組み合わせを順次ずらしていけば、インク滴の飛
翔位置を変化させることができる。
【0147】(実施例5−2)図31は、第5の発明に
係る第2の実施例であり、インクジェットヘッド部を駆
動ICと同一基板上に実装した例を示す断面図である。
背面制動材105は配線基板109に設けられた凹部に
組み入れられ、その上面が配線基板109の上面と同一
平面となるよう加工されている。この背面制動材105
の配置により、圧電素子100のアレイ状個別電極10
3を段差のない状態で個別に引き出し、駆動IC110
と金属ワイヤ111で接続することが非常に容易とな
る。また、共通電極102は各圧電素子100に対して
共通であるため、圧電素子100上の適当な個所から引
き出せばよい。一方、共通電極102側をアレイ状に分
割した場合は、図32のように圧電素子100を若干幅
広にして、駆動IC110と金属ワイヤ111で接続す
ればよい。
【0148】(実施例5−3)図33は、第5の発明に
係る第3の実施例であり、背面制動材としてアルミナや
エポキシ樹脂などのような、機械的強度や誘電率などの
点で配線基板としても十分な特性を有する材料を用い、
背面制動材が配線基板を兼ねるようにした例である。す
なわち、配線基板兼背面振動材112上に圧電素子10
0と駆動IC110が実装された構成となっている。
【0149】ここで、背面振動材での超音波の減衰係数
をa、背面制動材の厚さをt、超音波周波数をfとした
とき、背面制動材での減衰量がa×2t×f<−20d
Bの条件を満たすようにすることが望ましい。医用の超
音波診断装置の場合は、a×2t×f<−60dBであ
ることが要求されるのに対して、超音波を用いたインク
ジェットヘッドの場合、上述のように減衰量に対する要
求はさほど厳しくないが、超音波周波数fが超音波診断
装置に比較して非常に高いので、減衰係数aと厚さtを
適切に選ぶことが必要である。このような条件を持たす
範囲で、配線基板兼背面振動材112の材質および厚さ
を選定することが望ましい。
【0150】以上述べたように、第5の発明によれば圧
電素子の背面に背面制動材を配置することにより、超音
波ビームをインク液面に効率よく集束させると共に、正
確なインク滴の飛翔制御を可能とすることができる。
【0151】(実施例6−1)図34は、第6の発明の
一実施例に係るインクジェット記録装置におけるインク
ジェットヘッドの構成を示す断面図と平面図である。所
定の曲率を持つ樋状の凹部を有するガラスなどの絶縁基
板204上に、凹部内に位置して圧電素子アレイ200
が形成されている。圧電素子アレイ200は、圧電体層
201とその両面に位置する共通電極202および個別
電極203からなり、個別電極203は基板204の凹
部から平面部まで延在して形成され、その上に凹部に位
置して薄膜状の圧電体層201が形成されている。
【0152】圧電体層201はZnO(酸化亜鉛)、P
ZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PT(チタン酸鉛)な
どの圧電材料をスパッタ等の薄膜形成技術で形成するこ
とにより得られる。この圧電体層201の上には共通電
極202が金属をスパッタすることにより形成される。
さらに、この共通電極202の上に必要に応じて音響整
合層や耐水コートなどが施される。個別電極203の端
部は基板204の平面部に延在しており、この端部は基
板204上に実装される図示しない駆動ICに接続され
ている。
【0153】図35に、基板204の樋状の凹部に個別
電極203を形成するプロセスの一例を示す。まず、図
35(a)に示すように平板状の金属箔211を所定の
電極寸法にパターニングする。この際、金属箔211の
端部はばらけないように分離せずに残しておく。一方、
図35(b)に示すように所定の曲率に加工された樋状
の凹面205を有するガラス基板204を用意する。図
示しないが、基板204の底面には全面に電極が形成さ
れているものとする。
【0154】次に、図35(c)に示すように図35
(a)の金属箔211を基板204の上に重ね合わせ、
300〜500℃の高温中で金属箔211と基板204
の底面の電極との間に直流電源212により電界を印加
し、静電力により金属箔211を基板204の表面に密
着加圧する。このように高温中で電界により加圧してガ
ラスと金属を接合する方法は、陽極接合法として知られ
ている。この接合後、金属箔211の一体となっている
端部を切り離せば、基板204の凹部205内および基
板204の平面部に高精度にパターニングされた個別電
極203が形成される。
【0155】金属箔211を単体で扱うことが困難なほ
ど薄い形状に形成する場合は、ポリイミドなどのフィル
ム上に所定厚さに金属膜をスパッタなどで形成した後、
この金属膜をパターニングする。この場合は、金属膜は
フィルムに固定されているため、端部も分離した必要形
状にパターニングできるが、金属膜は電界が印加できる
ように一端は連結しておく。そして、この金属膜をガラ
ス基板に陽極接合法で接合した後に、フィルムはエッチ
ング等の手段で除去し、残された金属パターンの電界印
加用に連結した部分を切り離す。
【0156】図36に、樋状の凹部を有する基板204
に個別電極203を形成するプロセスの他の例を示す。
まず、図36(a)に示すように個別電極203をホト
リソグラフィ法でパターニングするための遮光マスク2
21が形成された樹脂フィルム222を作製する。次
に、この樹脂フィルム222に対して熱プレス等の方法
で図36(b)に示すように基板204の樋状の凹部2
05に一致する凸部を成形加工する。一方、図36
(c)に示す樋状の凹部205を有する基板204の表
面に図36(d)に示すようにスパッタで金属膜223
を形成し、さらにその上にレジスト224をスピンコー
トする。
【0157】次に、図36(e)に示すように樹脂フィ
ルム222の凸部を基板204の樋状の凹部205に位
置合わせしてマスクパターンをレジスト224に密着さ
せ、さらにレジスト224を露光して金属膜223をエ
ッチングすることによって、図36(f)に示すよう
に、基板204の樋状の凹部205に高精度で個別電極
203を形成する。
【0158】以上述べたように、第6の発明によれば基
板の樋状の凹部に個別電極を形成した後、圧電体層を形
成することで曲面部に個別電極を有する凹面状の圧電素
子アレイを容易に形成することができる。また、パター
ニングされた金属箔を基板の凹部に陽極接合する方法
や、パターニングされた樹脂製マスクを基板の凹部に合
わせて成形したものを用いる方法によって、基板の凹部
に高精度にパターニングされた個別電極を形成すること
が可能となるため、数百dpiといった高分解能の記録
を行うことができる。
【0159】(実施例7)図37は、第7の発明の一実
施例に係るインクジェット記録装置におけるインクジェ
ットヘッドの構成を示す断面図と平面図である。本実施
例においては、平坦な基板304上に圧電素子アレイ3
00が配設されている。この圧電素子アレイ300は、
圧電体層301とその両面に位置する共通電極302お
よび個別電極303からなる。個別電極303の上端面
は凹面状に形成されており、圧電体層301および共通
電極302も凹面状となっている。
【0160】個別電極303は、図38(b)に示すよ
うに板状の導電体401と板状の絶縁体402を交互に
積層し、その積層方向に沿って所定の曲率の樋状の凹部
403を有する積層体400の導電体401部分により
構成される。そして、この積層体400の凹部403内
に圧電体層301および共通電極302が順次積層され
ることによって圧電素子アレイ300が構成される。こ
の積層体400は基板304上に固定される。圧電体層
301はZnO(酸化亜鉛)、PZT(チタン酸ジルコ
ン酸鉛)、PT(チタン酸鉛)などの圧電材料をスパッ
タ等の薄膜形成技術で形成することにより得られる。共
通電極302は、圧電体層301の上に金属をスパッタ
することにより形成される。さらに、この共通電極30
2の上に必要に応じて音響整合層や耐水コートなどが施
される。
【0161】導電体401、つまり個別電極303の端
部はワイヤ305によるワイヤボンディングにより基板
304上のアレイ電極306と接続される。このアレイ
電極306は、基板304上に実装される図示しない駆
動ICに接続されている。
【0162】次に、図38を用いて樋状の凹部403を
有する積層体400を形成するプロセスの一例を説明す
る。まず、図38(a)に示すように所定厚さ(例えば
35μm)の金属膜からなる導電体401と所定厚さ
(例えば4μm)の絶縁膜からなる絶縁体402を接着
剤により積層とする。次に、この積層体を所定寸法、例
えば幅10mm、厚さ1mmに切断加工し、その一面を
図38(b)に示すように例えば曲率4mmで樋状に凹
面加工する。これにより、積層方向に沿って樋状の凹部
403を有し、個別電極303となる導電体が絶縁体を
挟んで40μmピッチで配列された積層体400が形成
される。
【0163】そして、こうして得られた積層体400を
図37に示したように基板304上に固定し、樋状の凹
部内に薄膜の圧電体層301を形成する。個別電極30
3となる導電体401の表面には必要に応じて金属層を
メッキし、圧電体層301の配向やボンディングの条件
を満たすようにする。圧電体層301の上に共通電極3
02を形成する。
【0164】なお、上述したような積層体400はシリ
コンなどの異方性エッチングによっても形成することが
可能である。具体的には、ガラス基板に直接接合された
導電性のシリコン基板を異方性エッチングして、基板面
に垂直な狭い溝を形成する。そして、溝に絶縁性樹脂を
充填して積層体とした後、樋状の凹部を機械加工により
形成する。
【0165】以上述べたように、第7の発明によれば所
定の曲率の樋状の凹部を有する導電体と絶縁体の積層体
を形成して、導電体を個別電極とし、その上に圧電体層
および共通電極を積層して複数の圧電素子を配設するこ
とにより凹面状の圧電素子アレイを構成するため、各圧
電素子の個別電極をミクロン精度で形成することができ
るため、容易に圧電素子アレイにレンズ効果を持たせ、
数百dpiといった高分解能の記録を行うことができ
る。
【0166】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
フレネル回折の条件で分割された複数の領域を奇数番目
の領域からなる第1のグループと偶数番目の領域からな
る第2のグループとにグループ化し、第1のグループか
ら放射される超音波の位相と第2のグループから放射さ
れる超音波の位相を互いに180°異ならせることによ
り、超音波ビームを集束させることができる。すなわ
ち、音響レンズやレンズ効果を持たせた圧電素子を用い
ることなく、簡単な平板状の圧電素子を用いて超音波ビ
ームをインク液面に効率よく集束させることが可能であ
る。また、圧電素子アレイの圧電体層はアレイ分割せず
個別電極のみをアレイ分割することにより、圧電体層も
アレイ分割したときに生じやすい圧電体層の割れが防止
される。また、圧電体層のダイシングによる割れを考慮
せずに済むことから、圧電体層の幅を厚さに比して十分
大きくできるので、幅方向の不要共振の影響がなく、厚
み方向の共振のみの理想的な振動を発生させることがで
き、従って製造歩留りが高く、アレイ全体に亘って均一
なインク滴を飛翔させることができる。この効果は、特
に圧電体層の厚さを薄くし、圧電素子アレイを高周波で
駆動することによって微小のインク滴を飛翔させる場合
に有利であり、それによって高解像度の記録が可能とな
る。さらに、アレイ方向に超音波ビームを集束させる場
合、個別電極のみの分割の方が圧電素子アレイの配列ピ
ッチを細かくできるので、グレーティングローブのレベ
ルが低減され、インク面の不要な点からのインク滴の飛
翔を防止して、良好な記録を行うことができる。
【0167】また、圧電素子アレイの圧電体層の長手方
向の少なくとも一部にギャップを形成することにより、
このギャップで隣接する圧電素子間のクロストークを遮
断して効果的にクロストークノイズを低減することがで
きる。
【0168】また、圧電素子アレイ上に直接インクとの
音響マッチング層を形成し、かつその音響マッチング層
に例えばフレネル輪帯理論に基づく溝を主走査方向に平
行に形成して音響レンズを形成し、副走査方向における
超音波ビームの集束を行うことで、圧電素子アレイから
放射された超音波ビームは従来のように反射されること
なくインク中に放射され、インク液面に集束するので、
効率良くインクを飛翔させることが可能になる。
【0169】
【0170】また、圧電素子のインク保持手段と反対側
の面上に背面制動材を設けたことにより、インク液中に
超音波を効率よく励起すると共に、必要のない残留振動
を抑え、正確なインク滴の飛翔制御が可能となる。ま
た、背面制動材の材質および厚さなどを適切に選定して
背面制動材が配線基板を兼ねるようにすれば、背面制動
材を特別に設ける必要がなくなり、インクジェットヘッ
ド全体の構成を簡略化することができる。
【0171】また、基板に樋状の凹部を形成し、この凹
部内に個別電極と圧電体層および共通電極を順次積層し
た構成する複数の圧電素子を配設して凹面状の圧電素子
アレイを構成することにより、各圧電素子の個別電極を
ミクロン精度で形成することができるため、容易に圧電
素子アレイにレンズ効果を持たせ、インク液面に効率よ
く超音波ビームを集束させることが可能となる。
【0172】さらに、所定の曲率の樋状の凹部を有する
導電体と絶縁体の積層体の該凹部内に、導電体を個別電
極として圧電体層および共通電極を積層した複数の圧電
素子を配設して凹面状の圧電素子アレイを構成すること
により、各圧電素子の個別電極をミクロン精度で形成す
ることができるため、容易に圧電素子アレイにレンズ効
果を持たせ、インク液面に効率よく超音波ビームを集束
させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の発明の第1の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の構成を示す斜視図
【図2】 図1中の圧電素子アレイのアレイ方向の断面
【図3】 同実施例における駆動信号電圧波形を示す図
【図4】 第1の発明の第2の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の構成を示す断面図
【図5】 第1の発明の第3の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の構成を示す断面図
【図6】 第1の発明の第4の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の構成を示す断面図
【図7】 第1の発明の第5の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の構成を示す断面図
【図8】 第2の発明の一実施例に係るインクジェット
ヘッド部の構成を示す斜視図
【図9】 図8のインクジェットヘッド部の圧電素子ア
レイをアレイ方向と直交する方向から見た斜視図
【図10】 同実施例におけるクロストーク減少効果確
認のために圧電素子アレイに信号を入力する様子を示す
【図11】 クロストーク減少効果測定用の駆動信号電
圧波形を示す図
【図12】 信号を入力していないライン上に発生する
ノイズの電圧波形を示す図
【図13】 比較例のインクジェットヘッドを示す斜視
【図14】 図13のインクジェットヘッドのクロスト
ーク減少効果確認のために圧電素子アレイに信号を入力
する様子を示す図
【図15】 第3の発明の一実施例に係るインクジェッ
トヘッド部の構成を示す斜視図
【図16】 第3の発明の他の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の構成を示す断面図
【図17】 音響マッチング層兼音響レンズを圧電素子
アレイ上に樹脂で一体成形したインクジェットヘッドを
示す斜視図
【図18】 音響マッチング層兼音響レンズ付き圧電素
子アレイを製造する装置の一例を示す図
【図19】 図18中の金型の構成を示す断面図
【図20】 音響マッチング層兼音響レンズ付き圧電素
子アレイの他の製造方法を説明するための工程断面図
【図21】 第4の発明の一実施例に係るインクジェッ
トヘッド部の概略構成を示す図
【図22】 図21中の圧電素子の構成を示す断面図
【図23】 図22中の個別電極の構成を示す平面図
【図24】 第4の発明の他の実施例に係るインクジェ
ットヘッド部の概略構成を示す図
【図25】 図24中の圧電素子の構成を示す断面図
【図26】 第4の発明をアレイ型インクジェットヘッ
ドに適用した実施例を示す斜視図
【図27】 図26のインクジェットヘッドのより具体
的な構成を示す斜視図
【図28】 第5の発明の第1の実施例に係るインクジ
ェットヘッド部の断面図
【図29】 図28の一部を変形したインクジェットヘ
ッド部の断面図
【図30】 同実施例における圧電素子の斜視図
【図31】 第5の発明の第2の実施例に係るインクジ
ェットヘッド部の断面図
【図32】 第5の発明の第3の実施例に係るインクジ
ェットヘッド部の断面図
【図33】 第5の発明の第4の実施例に係るインクジ
ェットヘッド部の断面図
【図34】 第6の発明の一実施例に係るインクジェッ
トヘッド部の断面図および平面図
【図35】 図35のインクジェットヘッドの要部の製
造工程の一例を示す斜視図
【図36】 図35のインクジェットヘッドの要部の製
造工程の他の例を示す斜視図
【図37】 第7の発明の一実施例に係るインクジェッ
トヘッド部の断面図および斜視図
【図38】 図37のインクジェットヘッドの要部の製
造工程の一例を示す斜視図
【符号の説明】
10…圧電素子アレイ 11…圧電体層 12…共通電極 13…個別電極 14…音響レンズ 15…インク容器 16…液体インク 17…駆動IC 18…圧電素子支持部 19…音響レンズ 20…圧電素子アレイ 21…圧電体層 22…共通電極 23…個別電極 24…音響レンズ 25…インク容器 26…液体インク 27…駆動IC 28…配線基板 29…ギャップ 30…圧電素子アレイ 31…圧電体層 32…共通電極 33…個別電極 34…音響マッチング層兼音響レンズ 35…インク容器 36…液体インク 37…駆動IC 38…配線基板 39…接着層 70…圧電素子アレイ 71…圧電体層 72…共通電極 73…個別電極 74…連絡導体 75…連絡導体 76…端子 77…端子 80…圧電素子アレイ 81…圧電体層 82…共通電極 83…個別電極 84…連絡導体 85…端子 91…圧電体層 92…共通電極 93…個別電極 94…リード 95…配線基板 100…圧電素子アレイ 101…圧電体層 102…共通電極 103…個別電極 104…音響レンズ 105…背面制動材 106…液体インク 107…インク容器 108…インク滴 109…配線基板 110…駆動IC 111…金属ワイヤ 112…配線基板兼背面振動材 200…圧電素子アレイ 201…圧電体層 202…共通電極 203…個別電極 204…基板 205…凹部 300…圧電素子アレイ 301…圧電体層 302…共通電極 303…個別電極 304…基板 305…ワイヤ 306…アレイ電極 400…積層体 401…導電体 402…絶縁体 403…凹部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 雨宮 功 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 泉 守 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 中村 敦子 神奈川県横浜市磯子区新磯子町33番地 株式会社東芝生産技術研究所内 (72)発明者 清水 征三郎 神奈川県横浜市磯子区新磯子町33番地 株式会社東芝生産技術研究所内 (72)発明者 田沼 千秋 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平2−184443(JP,A) 特開 平5−254116(JP,A) 特開 平2−175157(JP,A) 特開 昭63−162253(JP,A) 特開 平7−137250(JP,A) 特開 平8−104004(JP,A) 特開 平3−155948(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/015 B41J 2/045 B41J 2/055

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体インクを保持するインク保持手段と、
    複数の圧電素子を所定間隔で配列して構成され、所定の
    駆動信号が与えられることにより前記液体インクの液面
    上に集束しかつ該液面に沿って移動する超音波ビームを
    放射する圧電素子アレイとを備え、前記超音波ビームの
    圧力により前記液体インクの液面からインク滴を吐出さ
    せて被記録体上に飛翔させることにより画像を記録する
    インクジェット記録装置において、 前記圧電素子アレイは、フレネル回折の条件で複数の領
    域に区分されると共に、該複数の領域が奇数番目の領域
    からなる第1のグループと偶数番目の領域からなる第2
    のグループとにグループ化され、第1のグループから放
    射される超音波の位相と第2のグループから放射される
    超音波の位相が互いに180°異なるように構成される
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 【請求項2】前記圧電素子アレイは、一様な厚さの帯状
    の圧電体層と、該圧電体層の一方の面上に一様に形成さ
    れた共通電極と、前記圧電体層の他方の面上に前記複数
    の圧電素子にそれぞれ対応して形成された複数の個別電
    極とを有することを特徴とする請求項1に記載のインク
    ジェット記録装置。
  3. 【請求項3】前記圧電体層は、長手方向の少なくとも一
    箇所にギャップを有することを特徴とする請求項2に記
    載のインクジェット記録装置。
  4. 【請求項4】前記圧電素子アレイ上に設けられ、前記超
    音波ビームを前記圧電素子の配列方向と直交する方向に
    関して集束すると共に前記圧電素子アレイと前記液体イ
    ンクとの音響的整合を行う集束/整合手段をさらに備え
    たことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記
    録装置。
  5. 【請求項5】前記圧電素子の前記インク保持手段と反対
    側の面上に配置された背面制動材をさらに備えたことを
    特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  6. 【請求項6】前記圧電素子アレイは、所定の曲率を持つ
    樋状の凹部を有する基板の該凹部内に、前記個別電極と
    圧電体層および共通電極を順次積層してなることを特徴
    とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  7. 【請求項7】前記圧電素子アレイは、導電体と絶縁体を
    交互に積層しその積層方向に沿った所定の曲率の樋状の
    凹部を有する積層体の該凹部内に、前記導電体を前記個
    別電極としその上に前記圧電体層および共通電極を順次
    積層してなることを特徴とする請求項1に記載のインク
    ジェット記録装置。
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