JP3512605B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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JP3512605B2
JP3512605B2 JP25572397A JP25572397A JP3512605B2 JP 3512605 B2 JP3512605 B2 JP 3512605B2 JP 25572397 A JP25572397 A JP 25572397A JP 25572397 A JP25572397 A JP 25572397A JP 3512605 B2 JP3512605 B2 JP 3512605B2
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史郎 斉藤
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インク液を液滴化
して被記録媒体上に飛翔させることにより画像を記録す
るインクジェット記録装置に係り、特には、圧電素子か
ら放射される超音波ビームの圧力によりインク滴を吐出
させて被記録媒体上に飛翔させるタイプのインクジェッ
ト記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、インク液を記録媒体上に飛翔
させて記録ドットを形成するインクジェットプリンタが
知られている。このインクジェットプリンタは、他の記
録方法と比べて騒音が少なく、現像や定着等の処理が不
要であるという利点を有し、普通紙記録技術として注目
されている。現在までに、数多くのインクジェットプリ
ンタの方式が提案されているが、特に発熱体の熱により
発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる方式(例え
ば特公昭56−9429号公報、特公昭61−5991
1号公報参照)、および圧電体の変位による圧力パルス
でインク滴を飛翔させる方式(例えば特公昭53−12
138号公報参照)が代表的なものである。これらの記
録ヘッドは、主に、キャリッジに搭載され、記録紙の搬
送方向に対して直交する方向への走査を繰り返すシリア
ル走査型のヘッドとして実用化されている。
【0003】これに対し、記録ヘッドをキャリッジに搭
載する代わりに、紙の幅と同じサイズで記録ヘッドを作
製して可動部分を小型化し、記録速度を向上させるよう
にしたライン走査型の記録ヘッドも知られているが、そ
の作製は簡単ではない。すなわち、ライン走査方式で
は、溶媒の蒸発や揮発によって局部的なインクの濃縮が
生じやすく、それぞれの解像度に対応する個別のノズル
が細いので目詰まりしやすいという問題がある。特に、
蒸気の圧力を使う方式ではインクとの熱的あるいは化学
的な反応等による不溶物の付着が、また圧電体の変位に
よる圧力を使う方式ではインク流路等での複雑な構造
が、さらに目詰まりを誘起しやすくしている。数十から
百数十のノズルを使用しているシリアル走査型の記録ヘ
ッドでは、その目詰まりの頻度を低く抑えることができ
るが、数千のノズルを必要とするライン走査型の記録ヘ
ッドでは確率的にかなり高い頻度で目詰まりが発生し、
信頼性の点で大きな問題となっている。さらに、ライン
走査方式は解像度の向上には適していない。すなわち、
蒸気の圧力を使う方法では直径20μm(これは記録紙
上では直径50数μm程度の記録ドットに相当する)以
下の粒径のインク滴を生成するのが難しく、また圧電体
の変位による圧力を使う方式ではその複雑な構造のため
に加工技術上の点で解像度の高いヘッドの作製が困難で
ある。
【0004】これらの欠点を克服するために、薄膜の圧
電体から発生する超音波ビームの圧力を用いてインク液
面からインク滴を飛翔させる、超音波を用いる方式が提
案されている(IBM TDB,vol.16,No.
4,1168頁(1973−10)、米国特許第4,3
08,547号明細書、米国特許第4,697,195
号明細書、米国特許第4,751,529号明細書、米
国特許第4,751,530号明細書、米国特許第5,
041,849号明細書、特開昭62−66943号公
報、特開昭63一162253号公報、特開昭63−1
66545号、特開昭63−166546号、特開昭6
3−166548号、特開昭63−312157号公
報、特開平2−184443号公報、特開平3−200
199号公報、特開平4−296562号公報、特開平
4−296563号公報、特開平4−356328号公
報、特開平5−278218号公報等参照)。この超音
波方式は、個別のドット毎のノズルやインク流路の隔壁
を必要としないノズルレスの方式であるために、ライン
ヘッド化する上での大きな障害であった目詰まりの防止
と復旧に対して有効な構造を持っている。また、非常に
小さい径のインク滴を安定に飛翔させることができるた
め、高解像度化にも適している。さらに、記録ドットの
高密度化を容易にするために、アレイ状に配置された複
数個の圧電素子からそれぞれに位相制御した超音波を励
起して、インク液面近傍の一点に集中させるセクタ電子
走査方式も提案されている(特開平2−184443号
公報参照)。しかし、これらの方式では、制御方法が複
雑であり、画像記録速度を向上させることが困難であ
る。
【0005】このような問題に対し、平板状圧電体に形
成された圧電素子アレイのうちの一部の圧電素子を同時
駆動グループとして選択して同時に駆動することによっ
てインク滴1つを飛翔させ、その同時駆動グループの位
置を順次電子スイッチの切り替えによりずらしてインク
滴の飛翔位置を移動させるリニア(ライン)電子走査方
式が提案されている。この方式では、記録速度の向上は
達成されるものの、幅の広い被記録媒体と同じ幅(例え
ば、A4横サイズの記録紙の場合の21cm、あるいは
A3サイズ等それ以上の幅)の長尺の圧電素子アレイを
有する記録ヘッドを作製することは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、幅
の広い被記録媒体への記録を可能とする、リニア電子走
査方式に基づくインクジェット記録装置を提供すること
を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上にも述べたように、ラ
イン電子走査方式の記録ヘッドでは、A4サイズあるい
はそれ以上の例えばA3サイズの長尺圧電素子アレイを
1つの平板状圧電体を用いて作製することは困難であ
る。そこで、本発明者らは、平板状圧電体を用いて形成
された圧電素子アレイ(圧電素子アレイユニット)を複
数個組合わせて長尺の記録ヘッドを作製することを検討
した。その結果、複数の圧電素子アレイユニットを配置
する場合、同時駆動グループの圧電素子の数より1少な
い数以上の圧電素子がアレイ方向に対して互いに重なる
ようにそれぞれの端部がその側面を対向させて(すなわ
ち、圧電素子アレイユニットを千鳥状の位置関係で)一
次元的に配置してそれら複数の圧電素子アレイユニット
を配置することにより、記録ヘッドを長尺化し、しかも
インク滴を安定かつ効率的に飛翔させることができるこ
とを見い出した。
【0008】
【0009】しかしながら、このように圧電素子アレイ
構体を千鳥状に配置する場合、隣接する圧電素子アレイ
ユニットの圧電素子同士の位置合せが比較的困難であ
り、圧電素子アレイユニットにおける配列方向(主走査
方向)と直交する方向(副走査方向)における超音波ビ
ームの集束を制御することも比較的困難である。
【0010】そこで、本発明者らは、さらに、複数の圧
電素子アレイユニットを組合わせる方法として、複数の
圧電素子アレイユニットをそれらの端面同士が対向する
ように直線状に配置することを検討した。この場合、2
つの圧電素子アレイユニットの対向端面(両圧電素子ア
レイユニットの境界部)直近の圧電素子の特性、特に片
側の圧電素子アレイユニットに圧電素子がなく、放射さ
れる超音波の強度が変わったり、あるいは振動モードが
変わり、また、相隣る2つの圧電素子アレイユニット間
にわずかな間隙が存在することや、あるいは圧電素子ア
レイユニット同士が対向端面で互いに接触している場合
に、隣の圧電素子アレイユニットの振動の影響で他方の
圧電素子アレイユニットの振動モードが変化し、周期的
な濃度むらや画素の位置ずれが画像に現れることがわか
った。本発明者らは、駆動回路で駆動信号を制御し、相
隣る圧電素子アレイユニットの境界部直近において特性
の異なる圧電素子を非駆動状態に設定し、同時に、1滴
の吐出に必要な同時駆動グループの圧電素子のアレイ方
向の中心に対して当該非駆動圧電素子とは対称位置にあ
る圧電素子をも非駆動状態に設定することにより、対向
端面直近の圧電素子からの超音波をインク滴の飛翔には
関与させず、もってインク滴の大きさや飛翔位置のばら
つきがなく安定な記録画像が得られることを見い出し
た。
【0011】すなわち、本発明は、第1に、れぞれ複
数の圧電素子をアレイ状に配列した複数の圧電素子アレ
イユニットを相隣る圧電素子アレイユニットの端面が対
向するように圧電素子の配列方向に配置してなるアレイ
構体を含超音波発生手段と、前記圧電素子の配列方向
に延び前記複数の圧電素子アレイユニットで共通とした
スリット状の開口部を上部に有し、前記超音波発生手段
と音響的に接続されたインク液を保持するインク液保持
室と、前記超音波発生手段から発生された超音波ビーム
を前記インク液の液面近傍に集束させるように、前記圧
電素子アレイ構体の圧電素子のうち所定数の圧電素子を
同時駆動グループとして順次選択して駆動する駆動信号
を圧電素子に供給する駆動手段を含み、前記駆動手段
は、前記圧電素子アレイユニットの境界部直近の圧電素
子が前記同時駆動グループに含まれたとき、当該圧電素
子を非駆動状態に設定するとともに、当該同時駆動グル
ープの領域のアレイ方向の中心に対して当該圧電素子と
アレイ方向において対称位置にある圧電素子をも同時に
非駆動状態に設定することを特徴とするインクジェット
記録装置を提供する。
【0012】この場合、同時駆動グループが接合部直近
の圧電素子を含む場合の駆動において、通常の駆動より
駆動素子数が減少するため、インク滴の飛翔エネルギー
が減少し、インク滴が飛翔するエネルギー限界値以下に
なったときにもインク滴が飛翔しなくなる場合がある。
そのような場合は、さらに駆動手段で駆動信号を制御
し、超音波の発生を停止させた素子数以上、同時駆動素
子を圧電素子群の両側に追加し、同様の駆動(特に、フ
レネル駆動)を行うことにより、減少した飛翔エネルギ
ーを補い、安定にインク滴を飛翔させることができるこ
とがわかった。あるいは、超音波の発生を停止させた素
子以外の駆動素子に印加する駆動信号の変調(具体的に
は、駆動電圧の増大、または駆動信号の印加時間の延
長、あるいはその両者)を行うことにより、減少した飛
翔エネルギーを補完し、安定なインク滴を飛翔させるこ
とができる。
【0013】すなわち、本発明は、れぞれ複数の圧電
素子をアレイ状に配列した複数の圧電素子アレイユニッ
トを相隣る圧電素子アレイユニットの端面が対向するよ
うに圧電素子の配列方向に配置してなるアレイ構体を含
超音波発生手段と、前記圧電素子の配列方向に延び前
記複数の圧電素子アレイユニットで共通としたスリット
状の開口部を上部に有し、前記超音波発生手段と音響的
に接続されたインク液を保持するインク液保持室と、前
記超音波発生手段から発生された超音波ビームを前記イ
ンク液の液面近傍に集束させるように、前記圧電素子ア
レイ構体の圧電素子のうち所定数の圧電素子を同時駆動
グループとして順次選択して駆動する駆動信号を圧電素
子に供給する駆動手段を含み、前記駆動手段は、前記圧
電素子アレイユニットの境界部直近の圧電素子が前記同
時駆動グループに含まれたとき、当該圧電素子を非駆動
状態に設定するとともに、当該同時駆動グループの領域
のアレイ方向の中心に対して当該圧電素子とアレイ方向
において対称位置にある圧電素子をも同時に非駆動状態
に設定し、かつ非駆動状態に設定した圧電素子の合計数
に相当する数の圧電素子を当該同時駆動グループ外の両
側でその近傍に位置する圧電素子から選択して同時駆動
することを特徴とするインクジェット記録装置を提供す
る。
【0014】さらに、本発明は、れぞれ複数の圧電素
子をアレイ状に配列した複数の圧電素子アレイユニット
を相隣る圧電素子アレイユニットの端面が対向するよう
に圧電素子の配列方向に配置してなるアレイ構体を含
超音波発生手段と、前記圧電素子の配列方向に延び前記
複数の圧電素子アレイユニットで共通としたスリット状
の開口部を上部に有し、前記超音波発生手段と音響的に
接続されたインク液を保持するインク液保持室と、前記
超音波発生手段から発生された超音波ビームを前記イン
ク液の液面近傍に集束させるように、前記圧電素子アレ
イ構体の圧電素子のうち所定数の圧電素子を同時駆動グ
ループとして順次選択して駆動する駆動信号を圧電素子
に供給する駆動手段を含み、前記駆動手段は、前記圧電
素子アレイユニットの境界部直近の圧電素子が前記同時
駆動グループに含まれたとき、当該圧電素子を非駆動状
態に設定するとともに、当該同時駆動グループの領域の
アレイ方向の中心に対して当該圧電素子とアレイ方向に
おいて対称位置にある圧電素子をも同時に非駆動状態に
設定し、かつ当該同時駆動グループの非駆動状態に設定
された圧電素子以外の圧電素子へ変調された駆動信号を
印加することを特徴とするインクジェット記録装置を提
供する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明するが、全図にわたり、同一部材、箇所
等は、同一符号で表示されている。図1は、本発明にお
いて利用し得る1つの圧電素子アレイユニットを備えた
インクジェット記録装置のヘッド部の斜視図である。図
1に示すヘッド部10は、ガラス板等の支持基板11の
上面に圧電素子アレイユニットを有する。圧電素子アレ
イユニットは、長尺の一様な厚さの板状の圧電体12
と、その両面にそれぞれ形成された、複数のストライプ
状個別電極13および共通電極14とを有する。
【0016】共通電極14は、圧電体12の上面に、副
走査方向は音響レンズ15の口径と同等の幅をもって、
そのほぼ全面に渡って形成されている。他方、ストライ
プ状個別電極13は、それぞれ、圧電体12の幅と同等
の長さを有し、一定のピッチで圧電体12の長手方向に
配置されている。
【0017】個別電極13および共通電極14は、チタ
ン、ニッケル、アルミニウム、銅、金等を蒸着やスパッ
タにより薄膜として形成することができるし、めっき法
によっても形成することができる。あるいは、これら電
極13、14は、ガラスフリットを混合した銀ぺースト
をスクリーン印刷により塗布して焼結する焼き付け法に
より形成することもできる。
【0018】共通電極14と対向する各個別電極13と
により、圧電体12は機能的に複数の圧電素子に区分さ
れ、一次元的に配列された圧電素子アレイを構成する
(以下、各圧電素子を符号T(n):nは自然数)で表
示することがある)。
【0019】圧電体12の上面には、共通電極14を介
して音響レンズ15が形成されている。ここでは、音響
レンズ15は、レンズ部材層151にフレネル輪帯理論
に基づく複数の溝(図1においては、6つの溝15a〜
15f)を圧電素子の配列方向(主走査方向)に平行に
形成してなるフレネルレンズである。フレネル溝15a
〜15fのそれぞれの間隔riおよび深さでは、それぞ
れ、下記式(1)および(2)により与えられる。
【0020】
【数1】 (これら式において、riは、フレネルレンズの開口中
心からの距離、λwはインク液中の超音波の波長、F
は、焦点距離、λIはフレネルレンズ中での超音波の波
長である)。
【0021】レンズ部材層151は、これを圧電体12
の音響インピーダンスと、インク液19の音響インピー
ダンスとの積の平方根に近い音響インピーダンス値を有
する材料で、例えば、ガラス、エポキシ樹脂等の樹脂、
あるいはアルミナ粉末等を分散させた樹脂(例えば、エ
ポキシ樹脂)で形成することにより、音響マッチング層
としても機能し得る。
【0022】音響レンズ15は、主走査方向と直交する
方向において超音波を集束させる機能を有する。支持基
板11上には、圧電素子アレイ構体およびフレネルレン
ズ15を囲んで周囲壁16が立設されており、主走査方
向に平行に形成されたスリット18を有する蓋板17が
設置されている。フレネルレンズ15の上面、周囲壁1
6および蓋板17で規定されるインク液保持室19内に
は、インク液20が収容されている。インク液20は、
スリット18の幅の中央部から滴として吐出する。この
スリット18はインク液を保持するものであり、その位
置一定に保たれることが必要であるから、蓋板17は、
例えばステンレス、アルミニウム、シリコン、銅、ガラ
ス等、比較的剛直な材料で形成することが好ましい。な
お、インク液保持室19の内側の形状は、超音波ビーム
を阻害しない形状であれば特に限定されない。
【0023】さらに、支持基板11の一端部側には、圧
電体層12の下面に形成された個別電極13と同じ間隔
で複数の個別アレイ電極21が形成されており、この支
持基板11上の各アレイ電極21と圧電体12下面上の
各個別電極13とは、図示しない導電性接着剤を介して
整合して圧着され、電気的に接続されている。支持基板
11上のアレイ電極21は、支持基板11の端部上に配
置された、IC化された駆動回路22にボンディングワ
イヤ23によって接続され、圧電体層12の上面に形成
された共通電極14も、図示しない配線により、駆動回
路22に接続されている。
【0024】超音波の集束は、主走査方向と直交する副
走査方向においては、既述のように音響レンズ15で行
い、アレイ方向である主走査方向には、同時駆動させる
ものとして選択した複数の連続した圧電素子(同時駆動
グループ)から発生される超音波の位相がインク液面で
同位相となるようなタイミングで圧電素子を駆動して超
音波を集束し、インク滴をインク液面から飛翔させる。
この主走査方向の集束は、駆動回路22によって、記録
すべき画像データに応じて同時駆動グループを選択して
駆動することによって行う。
【0025】より具体的には、選択した同時駆動グルー
プの圧電素子に対してフレネル輪帯理論に基づいて所定
の遅延時間差(位相差)を持たせた高周波の駆動信号を
供給して同時に駆動(フレネル駆動)することによっ
て、同時駆動グループの圧電素子から放射される超音波
ビームを主走査方向に集束させる。そして、このように
同時に駆動される圧電素子の位置を圧電素子1個分ずつ
ずらせて同時駆動を繰り返し行うことにより、集束させ
る超音波ビームの放射方向を主走査方向にリニアに移動
させる。この場合、同時駆動グループを複数個設定する
ことにより、インク滴を同時に複数箇所に超音波ビーム
を集束させることもできる。こうして圧電素子アレイユ
ニットから放射され、主走査方向に集束された超音波ビ
ームは、さらに、音響レンズ15により主走査方向と直
交する方向(副走査方向)にも集束され、最終的にイン
ク液の液面の所定の位置に集束する。このようにして、
インク液面に集束された超音波ビームにより発生した圧
力(放射圧)によって、インク液面に円錐状のメニスカ
スが成長し、やがてメニスカスの先端からインク滴が吐
出する。吐出したインク滴は、図示しない被記録媒体上
に飛翔して付着し、乾燥して定着されることにより、画
像記録が行われる。
【0026】ここで、飛翔するインク滴の大きさを決定
するパラメータの1つとして超音波の周波数がある。各
圧電素子は、駆動回路22から両電極13、14を介し
て圧電体12に電圧を印加して圧電体12をその厚さ方
向に共振させることによって超音波を発生する。従っ
て、超音波の周波数は、圧電体12の厚さにより決定さ
れる。この厚さは、超音波の周波数に反比例するので、
薄いものほど、超音波の周波数は高くなる。すなわち、
解像度の高いプリンタほど超音波を高周波にする必要が
あるが、圧電体12の種類と形成法もそれに応じて選択
される。
【0027】圧電体12は、この解像度で決まる厚さの
他に、電気入力と超音波出力の変換効率を表す電気機械
結合係数と、駆動回路22との電気的整合に影響する誘
電率を主な条件としてその材料が選択される。通常、ジ
ルコン・チタン酸鉛(PZT)等のセラミック圧電材料
や、フッ化ビニリデンと三フッ化エチレンとの共重合体
などの高分子圧電材料、ニオブ酸リチウムなどの単結晶
圧電材料、酸化亜鉛等の圧電性半導体等が用いられる。
具体的には、解像度が600dpi(dots perinch )
以下のプリンタにはPZTが、それを超える解像度(周
波数)のものには、ZnOが、圧電体層12の形成の容
易性と性能面から優れている。また、PZT等のバルク
状の圧電材料を研磨して圧電体層12として用いるとき
は、共通電極14と音響レンズ15とは、接着により接
合される。このようにPZT等を接着により音響レンズ
15に接合する場合には、レンズ材の加工性と圧電体層
12のインク液15との音響的マッチングを考慮すれば
よいが、ZnO等をスパッタ法等で堆積して圧電体12
を形成する場合には、それに加えてスパッタ時の温度や
圧電体の配向性等を考慮する必要がある。
【0028】図7に、一例として、上記フレネル駆動に
おいて、1滴のインク滴を飛翔させた場合における、複
数の圧電素子(図7中、6個の圧電素子T(4)〜T
(9)からなる同時駆動グループから発生した超音波の
集束状態(破線で示す)とインク液20の液面20aか
ら吐出するインク滴71の飛翔位置の関係を示す。図7
に示すように、同時駆動グループの圧電素子T(4)〜
T(9)をフレネル駆動することにより、1回の駆動で
一部分からインク滴が吐出する駆動方法においては、イ
ンク滴71はその同時駆動圧電素子T(4)〜T(9)
の領域のアレイ方向の中心付近から吐出する。また同時
駆動グループを同時に複数選択し1回の駆動で複数の場
所からインク滴を吐出させることもできる。いずれの場
合にも、インク滴の吐出位置は同時駆動グループに属す
る圧電素子全体の領域の幅よりも内側である。また、圧
電素子アレイユニットの端部に存在する圧電素子はその
特性が他の圧電素子とは異なる可能性が高いために、使
用しない方が望ましい。このような理由により、圧電素
子アレイユニットからインクが吐出する位置は、圧電素
子アレイユニット全体のアレイ方向の長さよりも主に内
側の範囲である。
【0029】図2は、それぞれフレネルレンズを備えた
図1に関して説明した圧電素子アレイユニット2個(3
0Aおよび30B)を千鳥状に配置した構成された圧電
素子アレイ構体30を参考例として示す斜視図である
(図2において、図1で用いた符号に、圧電素子アレイ
ユニットAに関しては「A」を、圧電素子アレイユニッ
トBに関しては「B」を添えてある)。圧電素子アレイ
ユニット30Aと30Bとは、同時駆動する圧電素子数
より1少ない数以上の圧電素子がアレイ方向に対して互
いに重なるように、それらの側面が対向するように一次
元的に(同一平面内に)配置されている。圧電素子アレ
イユニット30Aおよび30Bは、同程度の大きさのイ
ンク滴が主走査方向に対して同じ間隔に形成できるもの
であるが、これらの圧電素子ユニットの主走査方向の長
さは、必ずしも等しくなくてもよい。
【0030】次に、図2の形態において2つの圧電素子
アレイユニット30A、30Bが配置される位置関係の
具体的な例を図3および図4を参照して説明する。図3
は、2つの圧電素子アレイユニット30Aおよび30B
の第1の位置関係を示す。図3は個別電極とそれに対応
するインク滴の吐出位置を水平方向から見た図である。
なお、図3において、インク液面は省略してあり、また
位置関係をわかりやすくするよう、圧電素子アレイユニ
ット30Aおよび30Bは、離間して示し、圧電素子ア
レイユニット30Aの圧電素子を符号AT(n)で、圧
電素子アレイユニット30Aの圧電素子を符号BT
(n)(n=1、2、…)で表示する。
【0031】ここで、圧電素子アレイユニット30Aお
よび30Bは同じ材料、構成、サイズのものを用いると
する。これらの圧電素子アレイユニットそれぞれにおけ
る圧電素子の間隔は、一定であり、これをdで表示す
る。この例では、x個(図中、5個)の隣接圧電素子を
同時に駆動することによって同時駆動グループのほぼ中
央の1個所からインク滴が吐出するものである。この同
時駆動グループを例えば圧電素子1個ずつずらして順次
駆動することにより、主走査方向に沿ってインク滴を飛
翔させることができる。このとき、主走査方向に対する
インク滴の最小間隔(最小走査ピッチ)は、圧電素子の
間隔dと等しい。よって、圧電素子アレイユニット30
Aと30Bとの境界となるインク滴の間隔が、単一の圧
電素子アレイユニットによる最小走査ピッチであるなら
ば、被記録媒体(図示せず)上において一様なライン描
画ができる。従って、圧電素子アレイユニット30Aお
よび30Bは、図3に示すように、各圧電素子アレイに
おける同時駆動素子数n未満より1少ない数以上の数y
(図3の例では、(y=x−1=5−1=4個)の圧電
素子がアレイ方向に対して重なるよう配置すればよい。
図3に示す例では、重なり合う圧電素子AT(n−3)
〜AT(n)および対応するBT(1)〜BT(4)と
は、それぞれその幅方向に完全に(100%)互いに重
なり合っている。
【0032】一方、副走査方向に対しては、圧電素子ア
レイユニット30Aおよび30Bは、ずれた位置にある
が、駆動回路22によって適当な遅延時間を与え、か
つ、被記録媒体を副走査方向に適宜動作させることによ
り、被記録媒体上において一様なラインを形成すること
ができる。
【0033】図4に、2つの圧電素子アレイユニットと
の第2の位置関係について示す。この最小走査ピッチd
は同時駆動圧電素子の数と同時駆動圧電素子に印加する
駆動信号を制御することにより、個々の圧電素子のアレ
イ方向の幅よりも狭くすることが可能である。圧電素子
の配列間隔をdとすると、最近接するインク滴の間隔は
特願平7−45661号に開示した駆動方法により、d
/2とすることができる。いま、圧電素子アレイはx個
(図4中、AT(n−5)〜AT(n−1)またはBT
(2)〜BT(6)の5個)の同時駆動圧電素子で1つ
のインク滴を形成でき、その最近接のインク滴を、(x
+1)個(図4中、AT(n−6)〜AT(n−1)ま
たはBT(2)〜BT(7)の6個)の同時駆動圧電素
子で形成できる形態のものとする。この場合、圧電素子
アレイユニット30Aおよび30Bにおける各重なり圧
電素子の重なり程度は、図3の場合と同じであっても、
また、図4のように50%であってもよい。この場合に
おいても重なり合う圧電素子数yは、[同時駆動する圧
電素子数(x)−1]以上である。
【0034】以上図2〜図4に示す参考例においては、
圧電素子アレイユニット30Aおよび30Bは、別体の
独立したユニットとして形成されているが、例えば共通
電極は、両者に共通していてもよい。また、図2におい
て圧電素子アレイユニットは近接した平行な位置関係に
描いてあるが、実装上の問題等により、さらに離れた位
置であってもよく、あるいはインク滴の間隔を一定に保
てるならば平行な位置関係でなくてもよい。また、上述
の例ではx個の圧電素子からなる同時駆動グループの1
回の駆動で一部分からインク滴が吐出する場合を示した
が、1回の駆動で複数の場所からインク滴が吐出する場
合においても実施可能であり、その場合は各対応する圧
電素子同士の重なりは、例えば30%であってもよい。
【0035】次に、図3、図4に示すような圧電素子ア
レイユニットの配列によって形成されるインク滴の飛翔
軌跡について説明する。図5に、圧電素子アレイユニッ
ト30Aおよび30Bの上記駆動によって被記録媒体上
に飛翔されたインク滴の飛翔位置の軌跡の拡大模式図を
示す。dは最小走査ピッチである。被記録媒体は副走査
方向には動作させていないものとする。図5(a)に示
すように圧電素子アレイユニット30Aから吐出した最
も端のインク滴AI(n)と、圧電素子アレイユニット
30Bから吐出した最も端のインク滴BI(1)の間隔
はdに等しい。なお、インク滴の間隔を所定の値で保つ
ことができるならば、図6(b)に示すように、インク
滴の位置が重複していてもかまわない。この場合、各圧
電素子アレイユニットにおける圧電素子同士が重なる数
は図6(a)の場合よりも多い。
【0036】次に、上記参考例に関わるインクジェット
記録装置のヘッド部のインク液保持室の構成について説
明する。インク液保持室は、図1に示したように、各圧
電素子アレイユニットに対して設けることができる。こ
の個別にインク液保持室を備えた構造を本発明に従って
配置することにより所望のインクジェット記録装置を得
ることができる。
【0037】また、図6には、2つの圧電素子アレイユ
ニットからなる圧電素子アレイ構体を1つのインク液保
持室で囲包した構成のインクジェット記録装置の頂面が
示されている。蓋板17には、2つの圧電素子アレイユ
ニットに対応して2つのスリット18Aおよび18Bが
設けられている。スリット18A、18Bの位置は圧電
素子アレイユニットの配置された位置関係に対応してい
る。このように圧電索子アレイユニットの数にかかわら
ず、1種類のインク液においてはインク液保持室は1つ
することにより、インク液補充の煩雑さを軽減すること
ができる。なお、スリット18Aおよび18Bの長手方
向各両端部において、超音波ビームの集束が阻害されや
すいので、スリット18Aの長さ18ALは、圧電素子
アレイユニット30Aによって形成されるインク滴の吐
出範囲18AL’より長くし、同様に、スリット18B
の長さ18BLは、圧電素子アレイユニット30Aによ
って形成されるインク滴の吐出範囲18BL’より長く
することが好ましい。
【0038】なお、図2〜図4は、2つの圧電素子アレ
イユニットからなる圧電素子アレイ構体に関するもので
あるが、3つ以上の圧電素子アレイユニットを用いた場
合にもそれらを同様に配置することにより、さらに広い
幅の印字が可能なインクジェット記録装置を実現するこ
とができる。3つ以上の圧電素子アレイユニットを用い
る場合、インク滴の間隔を保つことができる配置であれ
ば、例えば互い違いの関係であっても、いわゆる階段状
であっても、またそれらが平行関係になくてもよい。
【0039】次に、図2に示すような複数の圧電素子ア
レイユニットをアレイ方向のその端面同士が対向するよ
うに配置してなる圧電素子アレイ構体を有する本発明の
インクジェット記録装置を説明する。
【0040】図8は、そのような2つの圧電素子アレイ
ユニット30Aおよび30Bからなる圧電素子アレイ構
体を有するインクジェット記録装置のヘッド部の一例を
示す。
【0041】このインクジェット記録装置のヘッド部
は、まず、支持基板11の下面に、2つの圧電素子アレ
イユニット30Aおよび30Bをそれらのアレイ方向端
面が対向するように整合して配置されている。共通電極
14は、両圧電素子アレイユニットに共通する一体のも
のとして形成されている。図1に示す例では、両圧電素
子アレイユニット間に継ぎ目や狭い間隙GPを含む境界
部が存在している。
【0042】圧電素子アレイユニットに対応する支持基
板11の上面領域には、音響レンズ81が形成されてい
る。音響レンズ81は、例えばガラス板等の支持基板1
1の上記上面領域を凹面に形成することによって形成す
ることができ、その場合、凹面音響レンズとして機能す
る。
【0043】また、支持基板11の上面には、支持基板
11と同様の大きさの板状体82が設けられている。こ
の板状体82内には、凹面音響レンズ81の凹面を底部
とするインク液保持室19の側壁面を構成するように断
面が逆V字状の溝が圧電素子アレイユニットの長手(配
列)方向に沿って形成されている。インク液保持室19
の側壁面を形成する逆V字状溝の両側面83a、83b
は上方に向かって合わさるように傾斜し、その頂部は、
スリット状に開放し、スリット状開口18を形成してい
る。インク液保持室19内には、所定のインク液20が
収容されている。
【0044】さて、ガラス支持基板11の下面には、圧
電素子アレイユニット30A、30Bと対向する位置
に、駆動回路22が設けられている。この駆動回路22
はガラス支持基板11の下面に形成された配線パターン
(図示せず)を介して共通電極14と各個別電極13と
に接続されている。
【0045】図9は、圧電素子アレイユニット30Aお
よび30Bを、本発明に従い、それらの端面同士が対向
するように整合させて配置した圧電素子アレイ構体を有
する以外は、図1に示すインクジェット記録装置と同様
の構成を有するインクジェット記録装置のヘッド部を示
す。圧電素子アレイユニット30Aおよび30Bの共通
電極は、共通のものとして一体に設けられており、フレ
ネルレンズ15も、圧電素子アレイ構体の全面にわたっ
て一体のものとして形成されている。なお、このヘッド
部において、インク液保持室19を構成する周囲側壁
は、上に向って合一するように傾斜しており、蓋板17
を設けることなく、頂部において、スリット18を形成
している。また、支持基板11には、溝11aが設けら
れているが、このように、圧電素子アレイユニットが直
接支持基板と接触しないことにより圧電素子アレイの裏
面側からの超音波の反射波は打ち消され、インク液中に
放射される超音波の音圧がより増大し、低い駆動電圧、
少ないバースト波数でインク滴を効率的に飛翔させるこ
とができる。
【0046】図10は、図8および図9に示したように
圧電素子アレイユニットをそのアレイ配列方向端面同士
が対向するように配置した圧電素子アレイ構体の駆動回
路22による駆動方法を説明するための図である。
【0047】圧電素子アレイユニット30Aの全圧電素
子素子数をN(図10では、12)、圧電素子アレイユ
ニット30Bの全素子数をM(図10では、12)、通
常の同時駆動グループSDGの圧電体素子数をn(図1
0では、9)としたとき、まず図10(a)に示すよう
に、圧電素子アレイユニット30Aの1番目からn番目
までの圧電素子(図10(a)では、個別電極13A
(1)〜13A(9)により規定される圧電素子AT
(1)〜AT(9)(図10には、表示していない)を
1グループとし、所定の位相差で同時駆動することによ
ってインク滴が吐出する。そして、次に、図10(b)
に示すように、2番目から(n+1番)目の新たなn個
の圧電素子(図10(b)では、個別電極13A(2)
〜13A(10)により規定される圧電素子AT(2)
〜AT(10)を同様に所定の位相差で同時駆動する。
以後同様に同時駆動する圧電素子の位置を圧電素子1個
ずつずらせて同様の同時駆動を繰り返し行うことによ
り、集束される超音波ビームの放射方向を主走査方向に
リニアに移動させる。
【0048】そして、図10(c)に示すように、同時
駆動グループSDGに間隙GPの直近(圧電素子アレイ
ユニット30Aの圧電素子ユニット30Bとの対向端面
の直近)に位置する最端のN番目の圧電素子が含まれた
とき、駆動回路22の制御によって、当該N番目の圧電
素子(図10(c)では、個別電極13A(12)によ
って規定される圧電素子AT(12))を、駆動信号の
停止、接地または直流電圧の印加により、非駆動状態に
設定し、超音波の発生を停止させる。同時に、同時駆動
グループSDGのアレイ配列方向(主走査方向)の中心
(図10(c)では、個別電極13A(8)によって規
定される圧電素子AT(8))に対して当該N番目の圧
電素子と左右対称の位置にある圧電素子(図10(c)
では、個別電極13A(4)によって規定される圧電素
子AT(14))も同様に非駆動状態に設定して超音波
の発生を停止させる。
【0049】さらに、図10(d)に示すように、次の
同時駆動グループに圧電素子アレイ30Bの1番目の圧
電素子(図10(d)では、個別電極13B(1)によ
って規定される圧電素子BT(1)も含まれたとき、N
番目の圧電素子(AT(12))と圧電素子アレイユニ
ット30Bの1番目の圧電素子(BT(1))とを非駆
動状態に設定して、超音波の発生を停止させ、さらに同
時駆動グループSDGの中心(圧電素子AT(9))に
対してこれら圧電素子(AT(12)とBT(1))と
左右対称の位置にある2つの圧電素子(AT(6)とA
T(5)をも非駆動状態に設定して超音波の発生を停止
させる。
【0050】図10(e)は、圧電素子AT(12)が
同時駆動グループの中心に位置するように同時駆動グル
ープSDGが選択された場合を示す。この場合は、圧電
素子AT(12)とBT(1)とを非駆動状態に設定す
るとともに、圧電素子AT(11)をも非駆動状態に設
定して超音波の発生を停止する。
【0051】以後同様にして同時駆動グループSDGの
位置をずらしながら、駆動を行う。以上の説明からわか
るように、同時駆動グループの圧電素子数が1つの圧電
素子アレイユニットの全圧電素子数より少なく、かつ奇
数である場合、圧電素子1個ずつずらして選択される同
時駆動グループSDGに圧電素子アレイユニットの対向
端面直近の圧電素子が含まれる場合、非駆動状態に設定
する圧電素子の数は、2個→4個→4個→4個→3個→
3個→4個→4個→4個→2個のように順に変化する。
また、同様の場合であって、同時駆動グループの圧電素
子数が偶数の場合は、非駆動状態に設定する圧電素子の
数は、2個→4個→4個→4個→2個→4個→4個→4
個→2個のように順に変化する。
【0052】このように、駆動回路22の制御によっ
て、圧電素子アレイユニット同士の対向部における特性
の異なる圧電素子は超音波の発生を停止させてインク滴
の飛翔にはこの圧電素子を関与させないように設定する
とともに、同時にこの圧電素子と同時駆動グループの中
心に対して対称の位置にある圧電素子をも超音波の発生
を停止させることにより、音場を左右対称形にすること
ができる。それにより、複数の圧電素子アレイユニット
をアレイ配列方向に直線状に配置して長尺のアレイヘッ
ドを作製した場合に、圧電素子アレイユニット同士の間
に間隙等が存在していても、何等問題なく高画質の画像
を得ることができる。
【0053】ところで、図10に関して説明した駆動方
法では、同時駆動グループに継ぎ目直近の圧電素子が含
まれたとき、駆動回路22の制御によって、同時駆動グ
ループにおいて所定の圧電素子を非駆動状態に設定して
いる。従って、同時駆動グループにおいて、超音波の発
生に関与する駆動圧電素子数が、通常の駆動モードのと
きよりも少なくなり、集束された超音波ビームの強度は
低下する。特に通常の同時駆動圧電体素子数nが小さい
ほど、非駆動状態の設定による影響は大きくなる。数n
の選択によっては、超音波ビームの強度が、インク滴が
飛翔する限界強度以下になり、インク滴が飛翔しなくな
ることがある。また、超音波の発生を停止させる圧電素
子の位置が、インク液1滴の吐出に必要な同時駆動グル
ープの中央近傍に位置する場合においては、超音波強度
への影響がより大きくなり、インク滴が飛翔しなくなる
ことがある。これらの場合、駆動手段の制御によって、
同時駆動素子を同時駆動グループの両外側において追加
し、これら追加の圧電素子を同時にフレネル駆動させ
る。
【0054】図11は、このように圧電素子を追加して
駆動する場合を説明するものである。すなわち、図10
に関して説明したように、同時駆動グループSDGを順
次選択して駆動してゆき、図10(c)に対応する図1
1(1)に示すように、同時駆動グループSDGに間隙
GPの直近(圧電素子アレイユニット30Aの圧電素子
ユニット30Bとの対向端面の直近)に位置する最端の
N番目の圧電素子が含まれたとき、図10に関して説明
したように、駆動回路22の制御によって、当該N番目
の圧電素子(図11(1)では、個別電極13A(1
2)によって規定される圧電素子AT(12))を非駆
動状態に設定し、超音波の発生を停止させる。同時に、
同時駆動グループSDGの中心(図11(1)では、個
別電極13A(8)によって規定される圧電素子AT
(8))に対して当該N番目の圧電素子と左右対称の位
置にある圧電素子(図11(1)では、個別電極13A
(4)によって規定される圧電素子AT(4))も同様
に非駆動状態に設定して超音波の発生を停止させる。そ
して、このとき、通常の同時駆動グループSDGの範囲
外の圧電素子から、非駆動状態に設定した圧電素子の数
以上の合計数の圧電素子を、通常の同時駆動グループS
DGの圧電素子と連続するように、同時駆動グループの
両外側で同数となるように追加選択して、拡張同時駆動
グループESDGとして当該追加圧電素子を同様にフレ
ネル駆動させる。より、具体的には、図11(1)に示
すように、通常の同時駆動グループの圧電素子AT
(3)〜AT(12)に対して、非駆動状態の圧電素子
の合計数(2)の圧電素子を当該同時グループの外側で
同数となるよう(両外側で1個ずつ)追加選択し(圧電
素子AT(2)とBT(2)を追加選択)し、この追加
の圧電素子AT(2)とBT(2)をも同時に通常の同
時駆動グループの駆動圧電素子と同時にフレネル駆動す
る。
【0055】さらに、図10(d)に対応する図11
(2)に示すように、次の同時駆動グループSDGに圧
電素子AT(12)に加えて、圧電素子BT(1)も含
まれたとき、図10に関して説明したように、圧電素子
AT(12)と圧電素子BT(1)とを非駆動状態に設
定し、圧電素子AT(6)とAT(5)をも非駆動状態
に設定するとともに、圧電素子AT(3)とAT(4)
および圧電素子BT(2)とBT(3)を追加駆動圧電
素子として選択し、同時にフレネル駆動させる。
【0056】図10(e)に対応する図11(3)に示
すように、圧電素子AT(12)が同時駆動グループの
中心に位置するように同時駆動グループSDGが選択さ
れた場合は、やはり、図10に関して説明したように、
圧電素子AT(12)とBT(1)とを非駆動状態に設
定するとともに、圧電素子AT(11)をも非駆動状態
に設定しするとともに、圧電素子AT(6)とAT
(7)および圧電素子BT(5)とBT(6)を追加駆
動圧電素子として選択し、同時にフレネル駆動させるこ
とができる。
【0057】なお、非駆動状態に設定した圧電素子の位
置、駆動信号の電圧や印加時間、インク液の特性等によ
って超音波ビーム強度の低下の程度が異なるためが、追
加駆動する圧電素子の合計数は、その超音波ビームの強
度の実際の低下を補完するように選ぶことが好ましい。
【0058】このようにして超音波ビーム強度は、イン
ク滴が飛ぶ限界強度以上まで補完され、継ぎ目等による
画像の周期的な濃度むらや、画素の位置ずれの間題が解
消される。
【0059】図10に関して説明した圧電素子の駆動に
おける非駆動圧電素子の設定による超音波ビーム強度を
補完する別の手法は、同時駆グループが継ぎ目等の直近
に位置する圧電素子を含む場合に、駆動回路22からの
駆動信号の電圧を、図12の線bに示すように、通常n
個の圧電素子全てを駆動する場合の電圧信号(図12
中、線aで示す)より高い電圧の信号を駆動圧電素子に
印加することである。このときの駆動圧電素子に印加す
る電圧は、超音波ビームの強度低下を補完するに十分に
高い電圧である。あるいは、図10に関して説明した圧
電素子の駆動における非駆動圧電素子の設定による超音
波ビーム強度を補完する別の手法は、同時駆グループが
継ぎ目等の直近に位置する圧電素子を含む場合に、非駆
動圧電素子へ印加する駆動信号の印加時間を、図13に
示すように、通常n個の圧電素子全てを駆動する場合の
印加時間(図13(a))より長くして印加するもので
ある(図13(b))。高電圧の以下と印加時間の延長
とは両者を同時に行うこともできる。このように、同時
駆グループが継ぎ目等の直近に位置する圧電素子を含む
場合に、当該グループの駆動圧電素子へ印加する駆動信
号を変調させて駆動することにより、超音波ビーム強度
は、インク滴が飛ぶ限界強度以上まで補完され、継ぎ目
等に起因する画像の周期的な濃度むらや、画素の位置ず
れの問題が解消される。
【0060】以上、本発明の実施の形態を図面を参照し
て説明したが、本発明はそれらに限定されるものではな
い。例えば、圧電体に対する共通電極と個別電極の上下
関係は、逆にすることができる。また、音響レンズは、
フレネルレンズまたは凹面レンズとして圧電素子アレイ
ユニットまたは圧電素子アレイ構体上に別体に設けた
が、圧電素子アレイユニットを図14に示すように凹面
状に形成することにより、圧電素子アレイユニット自体
が音響レンズを兼ねることもできる。
【0061】
【実施例】参考例1 圧電体12として、チタン酸鉛系セラミックを使用し、
厚さ方向における振動の共振周波数が50MHzになる
ように厚さを約50μmに調整した。この圧電体12の
両面に、スパッタによりTiを0.05μmの厚さに、
その上にAuを0.3μmの厚さに被着してそれぞれT
i/Au積層電極を形成した後、分極処理を行った。そ
の後、一方の電極をリソグラフィによって幅が85μm
のストライプ状個別電極13に加工した。他方のTi/
Au積層電極は共通電極14として利用した。こうし
て、所望の圧電素子アレイユニットを得た。なお、圧電
素子アレイユニットの有効口径は1.4mmであり、ア
レイ方向の長さは11cmであった。この圧電素子アレ
イユニットの上に、エポキシ系樹脂からなるレンズ部材
にフレネル輪帯理論に基づいて所定のピッチで溝を機械
加工によって形成してフレネルレンズ15を形成した。
このフレネルレンズ15の焦点距離は2mmであった。
このようにして、フレネルレンズをそれぞれ有する圧電
素子アレイユニットを2つ作製した。
【0062】得られた2つの圧電素子アレイユニット
は、それぞれの15個の圧電素子を同時駆動グループと
して選択して同時で駆動することにより、圧電素子の間
隔と同じ85μmの間隔でインク滴を飛翔させるように
し、同時駆動する圧電素子15個分の幅=85μm×1
5=1.275mmだけ重なるように図3に示した配置
状態で配置した。こうして構成された圧電素子アレイ構
体を囲むようにインク液保持室を設置し、図6のような
スリット18A、18Bを形成した厚さ100μmのス
テンレス鋼製蓋板18を設けた。各スリットの幅は20
0μm、長さは12cmであり、スリット同士の端部重
複長さは、1cmであった。しかる後、電極13、14
を駆動回路22に接続し、インク液保持室内にインク液
を充填して記録装置を完成させた。
【0063】このインクジェット記録装置を駆動周波数
50MHz、印加電圧20Vppで同時駆動グループの
15個の圧電素子に所定の位相差を与え、かつ副走査方
向においては駆動回路22によって適切な遅延時間を与
えて、被記録媒体を副走査方向に適宜動作させて駆動
し、印字実験を行った。その結果、1つの圧電素子アレ
イユニットを用いた記録装置では不可能であったA4横
サイズの広い幅の被記録媒体にインクドット間隔が85
μmピッチの一様なラインを描くことができた。
【0064】参考例2 この参考例では、2つ圧電素子アレイユニットを図4に
示す配置関係で配置した以外は、参考例1と同様にして
インクジェット記録装置を作製した。すなわち、駆動回
路によって同時駆動グループの圧電素子数が15個と1
6個で、最小走査ピッチが85μm/2=42.5μm
が実現できるものである。この場合、圧電素子アレイユ
ニット同士の重なりは、図3と同様、同時駆動グループ
の15個の圧電素子に相当する幅=1.275mmであ
っても、また、14.5個に相当する幅=1.2325
mmのどちらでもよい。圧電素子15個分に相当する幅
が重なる場合、圧電素子アレイユニットの同時駆動グル
ープの圧電素子数は圧電素子アレイユニット30Aで
は、最端部において15個であり、圧電素子アレイユニ
ット30Bにあっては重なり端部において16個であ
る。また、14.5個に相当する幅の重なりの場合で
は、各圧電素子アレイの最端部の同時駆動グループの圧
電素子数は共に15個である。このインクジェット装置
を用いて印字実験を行い、42.5μmピッチの一様な
ラインをA4横サイズの被記録媒体の端から端まで形成
することができた。
【0065】
【0066】実施例 この実施例では、図8に示す構造のヘッド部を備えたイ
ンクジェット記録装置を作製した。
【0067】圧電体12として、比誘電率が2000
で、長さが4.5cmの5枚のPZT系圧電セラミック
板を用い、その共振周波数を50MHz(厚さ40μ
m)とした。実装時は、この圧電セラミック板5枚を、
音響レンズ部材である厚さ1mmのパイレックスガラス
基板11の上に、長手方向端面同士が接触するように直
線状に配置し、その一体となった圧電セラミック板の両
面にTi/Ni/Au 電極をスパッタによりそれぞれの
厚さが0.05μm/0.05μm/0.2μmとなる
ように形成し、2kV/mmの電界を印加して分極処理
を行った。その後、一体化セラミック板の一方の面上の
電極をエッチングすることにより、合計3000個の個
別電極13を幅60μm、電極間隔15μm(圧電素子
の配列ピッチ75μm)で形成し、一体化セラミック板
と他方の面上の共通電極14および個別電極13からな
る圧電素子アレイ構体を作成した。
【0068】音響レンズ81は、レンズ曲率2.3m
m、口径1.5mmとなるようにパイレックスガラス基
板11を凹面加工して形成した。この音響レンズ14と
圧電素子アレイ構体をエポキシ樹脂系接着剤を用いて、
音響レンズ81の開口部(凹面)と圧電素子アレイ構体
の電極の位置が一致するように接着した。
【0069】次に、インク液保持室19を配置し、さら
に駆動回路22を接続してインクジェット記録装置のヘ
ッド部を構成した。なお、インク16の深さは3mmと
し、共通電極14からインク液面までの距離は4mmに
設定した。
【0070】得られたヘッドのインピーダンス特性を測
定した。その結果、圧電素子アレイ構体には4箇所の継
ぎ目があるが、各継ぎ目を中心として左右2個の圧電素
子のインピーダンスが他の圧電素子のそれより大きくな
っていた。
【0071】上記インクジェット記録装置のヘッド部を
用いてインク滴の飛翔実験を行った。圧電素子に印加す
る駆動信号波形は、図15に示したように、50MHz
の矩形波バーストで、波数は500(10μs)、電圧
は100V0-P とした。圧電素子アレイ構体の2000
個の圧電素子のうち20個の圧電素子を同時駆動グルー
プとして順次選択して、図10に関して説明したように
フレネル駆動させた。継ぎ目の直近の圧電素子を含む同
時駆動グループに対する駆動においては、駆動回路22
の制御によって、継ぎ目直近の圧電素子を接地させて超
音波の発生を停止させるとともに、同時に、同時駆動グ
ループの中心に対して、継ぎ目直近の圧電素子と左右対
称の位置にある圧電素子を接地させて超音波の発生を停
止させ、かくして、超音波の発生に関与する駆動圧電素
子が最小で16個、最大18素子で個となる駆動を行っ
た。その結果、継ぎ目直近の圧電素子を含まない通常の
20個の圧電素子の駆動と全く同様に、中心軸からの位
置ずれやドット径のばらつきのないインク滴の飛翔を確
認した。
【0072】比較例1 全ての同時駆動グループの駆動において、同時駆動グル
ープに属する全ての圧電素子を駆動させた以外は、実施
と同様にしてインク滴飛翔実験を行った。その結
果、継ぎ目直近の圧電素子を同時駆動グループの右端に
含む駆動のとき、中心軸より左にずれた位置にインク滴
が飛翔した。また、継ぎ目直近の圧電素子を同時駆動グ
ループの左端に含む駆動のとき、中心軸より右にずれた
位置にインク滴が飛翔した。さらに、継ぎ目直近の圧電
素子をグループの中心近傍に含む駆動のとき、インク滴
の位置ずれは小さくなったが、インク滴の大きさが通常
の2倍に大きくなった。さらに、サテライトの発生も認
められた。
【0073】この現象を水中での音場測定をおこなって
調べてみた。実施例の駆動方法の場合、音場は中心軸
に対して対称型を示している。それに比べて、比較例1
の駆動方法の場合、例えば継ぎ目の素子をグループの右
端に含む駆動のとき、中心軸での超音波ビームの形状が
左に傾いた形状になっている。また、比較例1におい
て、継ぎ目直近の圧電素子を同時駆動グループの中心近
傍に含む駆動のときは、超音波ビームの傾きは小さい
が、ビーム強度が強くなっていた。
【0074】このように、同時駆動グループが、圧電素
子アレイユニットの継ぎ目直近の圧電素子を含む場合の
駆動時に、駆動手段を制御することによって、その継ぎ
目(境界部)直近の圧電素子の超音波発生を停止させ、
さらに1滴吐出に必要な同時駆動グループの中心に対し
て、当該非駆動圧電素子と左右対称の位置にある圧電素
子の超音波発生をも停止させることにより、継ぎ目等の
圧電素子アレイユニットの境界部による画像の周期的な
濃度むらや、画素の位置ずれの問題が解消される。
【0075】実施例 この実施例では、図9に示す構造のヘッド部を有するイ
ンクジェット記録装置を作製した。
【0076】圧電体12として、厚さが約0.5mm、
長さが115mm、比誘電率が200のチタン酸鉛系圧
電セラミック板を用いた。両面にTi/Au電極をスパ
ッタ法により、それぞれの厚さが0.05μm/0.2
μmになるように形成し、3kV/mmの電界を印加し
て分極処理を行った。その後、エッチングにより、1個
の圧電素子の幅60μm、電極間隔25μm(個別電極
の配列ピッチ85μm)になるように、個別電極13を
形成した。圧電体層12の副走査方向の幅は5mmであ
った。このようにして、形成された圧電素子アレイユニ
ットを2つ準備した。
【0077】一方、ガラス製の支持基板11に、Ti/
Auからなるアレイ電極21を形成した後、圧電素子ア
レイユニットとの間に中空構造を形成するための溝11
aを機械加工により、深さ0.2mm、幅2.2mmの
サイズで形成した。
【0078】ついで、圧電体12上の個別電極13とガ
ラス支持基板11上のアレイ電極21とが整合するよう
に、上記2つの圧電素子アレイユニットを位置合わせし
た状態で上記2個の圧電素子アレイユニットを配置し、
エポキシ樹脂で接着し、両電極が導通するように加圧し
た。このとき、圧電体12は、副走査方向において、そ
の両端において支持基板11とそれぞれ1.4mmの幅
で接触し、固定・支持されるようにした。
【0079】次に、圧電体12を厚さ50μmになるよ
うに研磨した後、Alからなる共通電極13をスパッタ
法で0.3μmの厚さに形成した。このとき、副走査方
向の共通電極14の長さ、すなわち口径は、2.0mm
とした。
【0080】音響マッチング層を兼ねるフレネルレンズ
15は、エポキシ樹脂とアルミナ粉末の混合物を用いて
形成した。まず、音速が3×103 m/s近傍になるよ
うに混合比を調整し、密度2.20×103 Kg/m
3 、音速2.95×103 m/sを得た。これを共通電
極面に塗布して硬化させ、厚さが約45μmになるよう
に研磨した。その後、焦点距離が2.5mmになるよう
に深さが1/2波長(約30μm)の溝を主走査方向に
平行に形成してフレネルレンズ15を形成した。最後
に、超音波放射面とインク液面との距離がほぼ2.5m
mとなるように側壁16を設けるとともに、駆動回路2
2を接続してインクジェット記録装置を完成した。
【0081】こうして得られた記録ヘッドのインピーダ
ンス特性を測定した。その結果、上記圧電素子アレイ構
体には、1箇所の継ぎ目があるが、この継ぎ目直近の左
右2個の圧電素子のインピーダンスは、他の圧電素子よ
りも大きくなっていた。
【0082】次に、上記記録ヘッドを用いてインク滴の
飛翔実験を行った。圧電素子に印加する駆動信号波形は
図15に示したように50MHzの矩形波バーストで、
波数は500(10μs)、電圧は30V0-P とした。
圧電素子アレイ構体の全2000個の圧電素子のうち、
20個の圧電素子を同時駆動グループとして順次選択
し、図10に関して説明したようにフレネル駆動させ
た。継ぎ目の直近の圧電素子を含む同時駆動グループに
対する駆動においては、駆動回路22の制御によって、
継ぎ目直近の圧電素子に直流電圧10Vを印加して超音
波の発生を停止させるとともに、同時に、同時駆動グル
ープの中心に対して、継ぎ目直近の圧電素子と左右対称
の位置にある圧電素子にも直流電圧10Vを印加して超
音波の発生を停止させ、かくして、超音波の発生に関与
する駆動圧電素子が最小で16個、最大で18個となる
駆動を行った。その結果、継ぎ目直近の圧電素子を含ま
ない通常の20個の圧電素子の駆動と全く同様に、中心
軸からの位置ずれやドット径のばらつきのないインク滴
の飛翔を確認した。
【0083】なお、実施例および実施例の結果は、
図14に示したような凹面形状を有する圧電素子を用い
た場合も同様であった。 実施例 実施例で作製したインクジェット記録装置を用い、図
11に関して説明した駆動方法によりこれを駆動した。
【0084】圧電素子に印加する駆動信号波形は図15
に示したように50MHzの矩形波バーストで、波数は
500(10μs)、電圧は100V0-P とした。圧電
素子アレイ構体の全2000個の圧電素子のうち、9個
の圧電素子を同時駆動グループとして順次選択し、図1
1に関して説明したようにフレネル駆動させた。圧電素
子アレイユニット同士の継ぎ目直近の圧電素子を含む同
時駆動グループに対する駆動においては、駆動回路22
の制御によって、継ぎ目直近の圧電素子への駆動信号の
印加を停止して(圧電素子側から見た場合、回路的にオ
ープン状態にして)超音波の発生を停止させるととも
に、同時に、同時駆動グループの中心に対して、継ぎ目
直近の圧電素子と左右対称の位置にある圧電素子にも駆
動信号の印加を停止して超音波の発生を停止させた。こ
れと同時に、同時駆動グループに継ぎ目直近の圧電素子
を含む結果、当該同時駆動グループにおける駆動圧電素
子数が7個になる場合には、当該同時駆動グループの範
囲(領域)の外側の左右対称位置にそれぞれ圧電素子1
個ずつ、合計2個の圧電素子を追加選択して同様に駆動
し、当該駆動グループにおける駆動圧電素子が5個にな
る場合には、当該同時駆動グループの範囲(領域)の外
側の左右対称位置にそれぞれ圧電素子2個ずつ、合計4
個の圧電素子を追加選択して同様に駆動し、当該同時駆
動グループにおける駆動圧電素子数が6個になる場合に
は、非駆動圧電素子の位置が同時駆動グループの中央に
位置するときは、駆動圧電素子数が5個の場合と同様
に、合計4個の圧電素子を追加選択して同様に駆動し
た。
【0085】その結果、圧電素子アレイユニットの継ぎ
目に起因する画像の周期的な濃度むらや、画素の位置ず
れを生じることなく、効率的に画像記録を行うことがで
きた。
【0086】なお、以上の結果は、音響レンズ15が凹
面レンズの場合のみでなく、実施例1、2に示すフレネ
ルレンズの場合も同様であり、また圧電素子アレイユニ
ットが図14に示したような凹面形状を有する場合も同
様であった。
【0087】実施例 実施例で作製したインクジェット記録装置を用い、図
10および図12に関して説明した駆動方法によりこれ
を駆動した。
【0088】圧電素子に印加する駆動信号波形は図15
に示したように50MHzの矩形波バーストで、波数は
500(10μs)、電圧は30V0-P とした。圧電素
子アレイ構体の全2000個の圧電素子のうち、16個
の圧電素子を同時駆動グループとして順次選択し、図1
0に関して説明したようにフレネル駆動させた。圧電素
子アレイユニット同士の継ぎ目直近の圧電素子を含む同
時駆動グループに対する駆動においては、駆動回路22
の制御によって、継ぎ目の直近の圧電素子を含む同時駆
動グループに対する駆動においては、駆動回路22の制
御によって、継ぎ目直近の圧電素子を接地させて超音波
の発生を停止させるとともに、同時に、同時駆動グルー
プの中心に対して、継ぎ目直近の圧電素子と左右対称の
位置にある圧電素子を接地させて超音波の発生を停止さ
せるとともに、図12に示すように、当該同時駆動グル
ープにおける接地(非駆動)圧電素子以外の駆動圧電素
子に印加する駆動信号の電圧を30V0-P から40V
0-P に増加させた。
【0089】その結果、継ぎ目に起因する画像の周期的
な濃度むらや、画素の位置ずれの問題が解消された。 実施例 増大させた電圧の駆動信号を印加する代わりに、図13
に示すように、超音波の発生を停止させた圧電素子以外
の駆動素子に印加する、駆動信号のバースト波の波数
(信号印加時間)を500(10μs)から1000
(20μs)に増加させた以外は実施例と全く同様の
操作を行った。この場合でも、実施例の場合と同様
に、継目による画像の周期的な濃度むらや、画素の位置
ずれの問題が解消された。
【0090】なお、以上の結果は音響レンズ15がフレ
ネルレンズの場合のみでなく、実施例2の凹面レンズの
場合も同様であり、また圧電素子が図14に示したよう
な凹面形状を有する場合も同様であった。
【0091】実施例の結果からも分るように、駆
動手段の制御によって、圧電素子アレイユニットの継ぎ
目等境界部直近の他の圧電素子とは特性の異なる圧電素
子は超音波の発生を停止させ、インク滴の飛翔に関与さ
せず、かつインク1滴の吐出に必要な同時駆動グループ
の中心に対して当該圧電素子と対称の位置にある圧電素
子に対しても超音波の発生を同時に停止させることによ
り、音場を左右対称形にすることができ、圧電素子アレ
イユニットを複数個直線状に配置して長尺のアレイヘッ
ドを作製した場合、2つの圧電素子アレイユニット間に
継ぎ目等境界領域が存在しても何等問題なく高画質の画
像が得られる。
【0092】また、上記の場合、通常の駆動時より超音
波を発生する圧電素子数が減少するため、インク滴の飛
翔のためのエネルギーが減少し、インク滴が飛翔するエ
ネルギー限界値以下になった時インク滴が飛翔しなくな
る場合があるが、超音波の発生を停止させた圧電素子数
以上、同時駆動素子を圧電素子群の両側に追加し、同様
にフレネル駆動を行うことにより、減少した飛翔のため
のエネルギーを補い、問題なくインク滴を飛翔させるこ
とができる。あるいは、駆動手段の制御によって、超音
波の発生を停止させた素子以外の駆動素子に印加する駆
動信号を変調(具体的には駆動電圧の増大、または駆動
信号の印加時間の延長、あるいはその両者)することよ
っても、減少した飛翔のためのエネルギーを補い、問題
なくインク滴を飛翔させることができる。
【0093】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
幅の広い被記録媒体に対しても安定で効率的な記録を可
能とするリニア電子走査方式に基づくインクジェット記
録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置に使用し得る
記録ヘッド部を示す概略斜視図。
【図2】参考例のインクジェット記録装置における圧電
素子アレイユニットを示す斜視図。
【図3】参考例のインクジェット記録装置における圧電
素子アレイユニットの配置を概略的に示す図。
【図4】参考例のインクジェット記録装置における圧電
素子アレイユニットの図3とは異なる配置を概略的に示
す図
【図5】参考例のインクジェット記録装置により飛翔さ
れたインク滴を模式的に示す図。
【図6】参考例のインクジェット記録装置のインク液保
持室の蓋板の構成をスリットとともに示す頂面図。
【図7】図1に示すインクジェット記録装置による超音
波の集束状態をインク滴とともに示す図。
【図8】本発明により直線状に配置された複数の圧電素
子アレイユニットを有するインクジェット記録装置の概
略斜視図。
【図9】本発明により直線状に配置された複数の圧電素
子アレイユニットを有する他のインクジェット記録装置
の概略斜視図。
【図10】本発明により直線状に配置された複数の圧電
素子アレイユニットの駆動方法を説明するための概略断
面図。
【図11】本発明により直線状に配置された複数の圧電
素子アレイユニットの他の駆動方法を説明するための概
略断面図
【図12】本発明により直線状に配置された複数の圧電
素子アレイユニットのさらに他の駆動方法おいて印加さ
れる電圧信号を示すグラフ図。
【図13】本発明により直線状に配置された複数の圧電
素子アレイユニットのさらに他の駆動方法おいて印加さ
れる信号の印加時間を示すグラフ図。
【図14】本発明のインクジェット記録装置に使用し得
る他の圧電素子アレイユニットを示す概略断面図。
【図15】本発明のインクジェット記録装置における圧
電素子の駆動のために印加される駆動信号波形図。
【符号の説明】
11…支持基板 12…圧電体 13…個別電極 14…共通電極 15、81…音響レンズ 17…蓋板 18…スリット 19…インク液保持室 20…インク液 22…駆動回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斉藤 史郎 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 八木 均 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 山本 紀子 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平8−238764(JP,A) 特開 平7−276638(JP,A) 特開 平2−11330(JP,A) 特開 平9−136412(JP,A) 特開 平8−238765(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/015

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】れぞれ複数の圧電素子をアレイ状に配列
    した複数の圧電素子アレイユニットを相隣る圧電素子ア
    レイユニットの端面が対向するように圧電素子の配列方
    向に配置してなるアレイ構体を含超音波発生手段と、前記圧電素子の配列方向に延び前記複数の圧電素子アレ
    イユニットで共通としたスリット状の開口部を上部に有
    し、前記超音波発生手段と音響的に接続された インク液
    を保持するインク液保持室と、 前記超音波発生手段から発生された超音波ビームを前記
    インク液の液面近傍に集束させるように、前記圧電素子
    アレイ構体の圧電素子のうち所定数の圧電素子を同時駆
    動グループとして順次選択して駆動する駆動信号を圧電
    素子に供給する駆動手段を含み、 前記駆動手段は、前記圧電素子アレイユニットの境界部
    直近の圧電素子が前記同時駆動グループに含まれたと
    き、当該圧電素子を非駆動状態に設定するとともに、当
    該同時駆動グループの領域のアレイ方向の中心に対して
    当該圧電素子とアレイ方向において対称位置にある圧電
    素子をも同時に非駆動状態に設定することを特徴とする
    インクジェット記録装置。
  2. 【請求項2】れぞれ複数の圧電素子をアレイ状に配列
    した複数の圧電素子アレイユニットを相隣る圧電素子ア
    レイユニットの端面が対向するように圧電素子の配列方
    向に配置してなるアレイ構体を含超音波発生手段と、前記圧電素子の配列方向に延び前記複数の圧電素子アレ
    イユニットで共通としたスリット状の開口部を上部に有
    し、前記超音波発生手段と音響的に接続された インク液
    を保持するインク液保持室と、 前記超音波発生手段から発生された超音波ビームを前記
    インク液の液面近傍に集束させるように、前記圧電素子
    アレイ構体の圧電素子のうち所定数の圧電素子を同時駆
    動グループとして順次選択して駆動する駆動信号を圧電
    素子に供給する駆動手段を含み、 前記駆動手段は、前記圧電素子アレイユニットの境界部
    直近の圧電素子が前記同時駆動グループに含まれたと
    き、当該圧電素子を非駆動状態に設定するとともに、当
    該同時駆動グループの領域のアレイ方向の中心に対して
    当該圧電素子とアレイ方向において対称位置にある圧電
    素子をも同時に非駆動状態に設定し、かつ非駆動状態に
    設定した圧電素子の合計数に相当する数の圧電素子を当
    該同時駆動グループ外の両側でその近傍に位置する圧電
    素子から選択して同時駆動することを特徴とするインク
    ジェット記録装置。
  3. 【請求項3】れぞれ複数の圧電素子をアレイ状に配列
    した複数の圧電素子アレイユニットを相隣る圧電素子ア
    レイユニットの端面が対向するように圧電素子の配列方
    向に配置してなるアレイ構体を含超音波発生手段と、前記圧電素子の配列方向に延び前記複数の圧電素子アレ
    イユニットで共通としたスリット状の開口部を上部に有
    し、前記超音波発生手段と音響的に接続された インク液
    を保持するインク液保持室と、 前記超音波発生手段から発生された超音波ビームを前記
    インク液の液面近傍に集束させるように、前記圧電素子
    アレイ構体の圧電素子のうち所定数の圧電素子を同時駆
    動グループとして順次選択して駆動する駆動信号を圧電
    素子に供給する駆動手段を含み、 前記駆動手段は、前記圧電素子アレイユニットの境界部
    直近の圧電素子が前記同時駆動グループに含まれたと
    き、当該圧電素子を非駆動状態に設定するとともに、当
    該同時駆動グループの領域のアレイ方向の中心に対して
    当該圧電素子とアレイ方向において対称位置にある圧電
    素子をも同時に非駆動状態に設定し、かつ当該同時駆動
    グループの非駆動状態に設定された圧電素子以外の圧電
    素子へ変調された駆動信号を印加することを特徴とする
    インクジェット記録装置。
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