JP3485552B2 - 防音装置 - Google Patents

防音装置

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JP3485552B2
JP3485552B2 JP2001255103A JP2001255103A JP3485552B2 JP 3485552 B2 JP3485552 B2 JP 3485552B2 JP 2001255103 A JP2001255103 A JP 2001255103A JP 2001255103 A JP2001255103 A JP 2001255103A JP 3485552 B2 JP3485552 B2 JP 3485552B2
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弘 矢野
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志郎 本間
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】この発明は、鉄道や高速道
路等に沿って配置される防音装置、すなわち、既存の防
音壁に改良を施した防音装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】たと
えば高速道路には、自動車の通行に伴って発生する騒音
が外部(道路周辺)に伝播するのを抑制するために道路
に沿って防音壁が設置されているが、この防音壁による
効果は完全なものではなく、やはり、道路周辺部におい
ては少なからず騒音による影響を受ける。
【0003】騒音による影響の度合いは、音源からの音
が観測点までどの程度伝播されるかによる。図12は、
音の伝播を模式的に示したものである。同図を参照し
て、参照符号Tは自動車が通行する道路を示しており、
参照符号Wは防音壁を示している。騒音による影響は、
観測点Rにおいて判断するものとする。
【0004】音源P(たとえば走行する自動車)から発
せられた音は、音源Pから防音壁Wへ伝播し、防音壁W
の先端部(回折点)Qで回折し、観測点Rに達する。こ
こで、P−Q間距離をa、Q−R間距離をbとし、P−
R間距離をcとすれば、行路差δ(δ=a+b−c)が
大きくなればなるほど観測点Rにおいて騒音の影響は小
さい。
【0005】ところで、音とは空気中を伝わる波であ
り、空気の圧力変動により伝播するものである。この空
気の圧力変動を「音圧」という。したがって、同図にお
いて、行路差δを大きくすることにより騒音の影響を小
さくすることができるが、音は上記回折点Qで回折して
観測点Rに達するものであるから、回折点Qにおいて音
圧を低減させることができれば、一層効果的に騒音の影
響を小さくすることができる。
【0006】回折点における音圧を低減させる方法は既
に知られており、防音壁の先端に、いわゆる1/4音響
管を設けたもの(特開平1−165808号公報参
照)、干渉装置を設けたもの(特開平2−13602号
公報参照)のほか、いわゆるアクティブコントロールを
行うもの等がある。
【0007】しかしながら、1/4音響管や干渉装置を
採用する場合には、これらの外形寸法が大きく、防音壁
が大型化する。特に音響管を採用する場合には、比較的
低い周波数帯域での騒音を低減するには音響管の寸法が
非常に大きくなる。また、アクティブコントロールと
は、低減させようとする音波に対して位相が180°反
転した音波をスピーカから発生させるものであるが、こ
のような装置は常時電力の供給が必要であることから、
メンテナンスを含めた防音壁の維持経費が必要であると
共に、耐久性も劣る。
【0008】そこで、本発明の目的は、従来の防音壁を
改良してコスト安価で耐久性に優れたコンパクトな防音
装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】(1) 上記目的を達成す
るため、本願発明者は、通常の防音壁の先端部において
音圧を低減させるために、共鳴器を設けることが有効で
ある点に着目した。
【0010】(2) そこで、本願に係る防音装置は、音
波の伝播を抑える防音壁部材と、防音壁部材の先端部に
配置された共鳴装置とを備えており、 上記共鳴装置
は、音波が入射する開口を有する頸部と、頸部に連通
し予め定められた容積を有する空洞部とを備える、比較
的低い周波数帯域の音波の音圧を低減するために予め定
められた共鳴周波数を有する共鳴器と、該空洞部の上部
を形成する天板上の上方のみ開放された空間に敷き詰め
られた、上記共鳴器が防音することができない周波数帯
の音波を吸音する吸音体とを備えて広範囲の周波数帯域
で防音するように構成したことを特徴とするものであ
る。
【0011】この構成によれば、観測点を音源から隔て
るように防音壁を配置し、この防音壁の先端部に共鳴器
を配置する。音源から発せられた音波は防音壁によって
音の伝播が抑制されるが、防音壁の先端部(回折点)で
回折して観測点へと進行する。このとき、音波は共鳴器
に入射するが、当該共鳴器は予め定められた共鳴周波数
(当該音波に対応させた共鳴周波数とすることができ
る。)を有し、入射した音波の周波数が共鳴周波数と一
致した場合、共鳴器からの反射波の位相が180°反転
し、共鳴器表面において入射波と反射波とが打ち消し合
い、結果的に回折点において音圧を低減させることがで
きる。しかも、本発明では、共鳴器の共鳴周波数を比較
的低い周波数帯域の音波の音圧を低減するように設定し
ているので、防音装置全体を従来の音響管を使用するも
のに比べてコンパクトにすることができる。さらに、本
発明では、天板上に吸音体を設けているので、上記共鳴
器が効果的な防音を達成することができない周波数帯の
音波が混在していても、吸音体によりかかる周 波数帯の
音波の音圧を低減させることができる。これにより、共
鳴装置全体として効果的な防音を達成することができ
る。
【0012】(3) 上記とは別の本願に係る防音装置
は、音波の伝播を抑える防音壁部材と、防音壁部材の先
端部に配置され、予め定められた共鳴周波数を有する共
鳴装置とを備えており、上記共鳴装置は、内部に空洞部
が形成されたブロック体を備え、当該ブロック体は、音
波が入射する露出面部を含んで構成されており、当該露
出面部は、予め定められた弾性を有する膜部材により構
成された構造とすることもできる。特に、上記膜部材
を、金属膜を含んで構成されていることを特徴とする。
【0013】(4) また、上述の防音装置において、共
鳴装置は、異なる共鳴周波数を有する複数の共鳴器を含
む構造とすることができる。
【0014】かかる構成によれば、各共鳴器が異なる共
鳴周波数を有するから、共鳴装置が複数の共鳴周波数を
有することになる。したがった、上記回折点において、
各共鳴周波数に対応した音波の音圧を低減させることが
できる。
【0015】具体的には、上記各共鳴器について、それ
ぞれ、頸部寸法および空洞部寸法のうち少なくとも一方
を異ならせることができる。また、上記各共鳴器につい
て、それぞれ、膜部材の面密度および膜部材と当該膜部
材が対向する面との距離のうち少なくとも一方を異なら
せることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】まず、本発明を理解するため、本
発明の本実施形態の説明に先立ってその前提的な防音装
置について説明する。図1は、本発明の前提的な防音装
置10を自動車専用道路(以下、単に「道路」とい
う。)11の脇に沿って設置した状態を示している。
【0017】この防音装置10は、道路11の脇に道路
11に沿って立設された防音壁部材12と、この先端部
に設けられた共鳴装置13とを備えている。この防音装
置10は、道路を走行する自動車14から発せられた音
(音波)15が防音壁部材12を越えて外部(観測点)
Rに伝播するのを効果的に防止しようとするものであ
る。
【0018】防音壁部材12は、従来から一般的に使用
されているコンクリート等を採用することができる。こ
の防音壁部材12の先端に共鳴装置13を備え、しかも
この共鳴装置13は予め定められた複数の共鳴周波数を
有している。これにより、様々な周波数の音に対して防
音効果を発揮でき、かつ軽量コンパクトでメンテナンス
フリーな防音装置10を実現している。以下、共鳴装置
13について詳しく説明する。
【0019】図2は、共鳴装置13の構造を示す斜視図
である。ただし、図2は共鳴装置13の内部構造を示す
ための要部斜視図であって、防音壁部材12の長手方向
に沿って連続している共鳴装置13の一部を切断した状
態で示している。
【0020】共鳴装置13は、たとえば鋼板により構成
された外枠16と、外枠16の中心部に配置されたコア
部材17と、コア部材17と外枠16とを連結する複数
の第1仕切板18〜24と、隣り合う第1仕切板18〜
24同士を連結する第2仕切板25〜30とを有してい
る。
【0021】外枠16は、たとえば厚みtが5mmの鋼
板を採用することができる。外枠16は図に示すように
屈曲形成されており、第1片部31,第2片部32,第
3片部33,第4片部34,第5片部35,第6片部3
6,第7片部37および第8片部38を備えている。ま
た、第1片部31と第8片部38との間に平板からなる
クロスメンバ39が設けられており、これにより外枠1
6の剛性を向上させると共に、共鳴装置13を防音壁部
材12の先端に取り付けるための取付部40を構成して
いる。もっとも、このクロスメンバ39は省略すること
もできる。
【0022】コア部材17は、たとえば鋼管により構成
することができ、第1仕切板18〜24を位置決めして
正確に配置するために設けられている。コア部材17は
省略することもできる。
【0023】第1仕切板18〜24および第2仕切板2
5〜30は、それぞれ鋼板により構成することができ
る。第1仕切板18〜24によって、外枠16の内部が
6つに区画される。そして、第2仕切板25〜30によ
って、外枠16の内部に6つの空洞部が構成され、それ
ぞれ第1共鳴室41,第2共鳴室42,第3共鳴室4
3,第4共鳴室44,第5共鳴室45および第6共鳴室
46が形成されている。また、第2仕切板25〜30
は、それぞれ隣り合う第1仕切板18〜24の間の所定
位置に配置されており、これにより、各共鳴室41〜4
6は、それぞれ異なった容積を有している。
【0024】つまり、この共鳴装置13は、6つの共鳴
器が集合したものとして構成されており、後述するよう
に各共鳴器は、異なった共鳴周波数を有している。以
下、第2片部32を含む共鳴器を第1共鳴器、第3片部
33を含む共鳴器を第2共鳴器、第4片部34を含む共
鳴器を第3共鳴器、第5片部35を含む共鳴器を第4共
鳴器、第6片部36を含む共鳴器を第5共鳴器、第7片
部37を含む共鳴器を第6共鳴器という。
【0025】外枠16の各片部32〜37には、それぞ
れ小孔32a〜37a(図2では35a〜37aのみ図
示)が設けられている。これら小孔32a〜37aは、
外枠16の内部、すなわち対応する各共鳴室41〜46
内に連通している。説明を簡単にするために第4共鳴室
44に着目して説明すると、第4共鳴室44を区画する
第5片部35には、12個の小孔35aが設けられてい
る。この小孔35aは、たとえば内径φが5〜30mm
に設定されている。また、他の片部32〜34,36〜
37に設けられた小孔32a〜34a,36a〜37a
は、各片部ごとにそれぞれ内径φが異なっている。
【0026】したがって、この共鳴装置13は、6つの
ヘルムホルツ共鳴器が構成されていることになる。さら
に詳しく説明すると、第2片部32〜第7片部37にそ
れぞれ対応する第1〜第6共鳴器が構成されている。第
1共鳴器は、上記第1共鳴室41(空洞部)とこれに連
通するように設けられた小孔32a(図示せず)を有す
る頸部とにより構成される。第2ないし第6の共鳴器に
ついても同様に構成される。ここで、上記頸部は、各小
孔32a〜37aの内周面によって構成される。
【0027】ただし、各片部32〜37に複数の小孔3
2a〜37aを有しているから、各共鳴器は、当該共鳴
器に含まれる複数の仮想共鳴器が合成されて一つの共鳴
器を構成している。その理由は下記の通りである。
【0028】まず、ヘルムホルツ共鳴器の一般的構成は
図3に示す通りであって、開口47aを有する頸部47
と、これに連通する空洞部48とを必要とする。これを
上記各共鳴器にあてはめてみると、頸部47は小孔32
a〜37aの内周面によって構成される。そして、第4
共鳴器について説明すると、一つの小孔35aに対して
これと連通する小空洞部48が対応しており、これによ
り、仮想の小共鳴器49が構成される。ところが、第4
共鳴器では複数の小孔35aが形成されているから、こ
の仮想の小共鳴器が複数形成され、これらが合成されて
一つの第4共鳴器が構成されている。このことは、他の
共鳴器についても同様である。
【0029】もっとも、各共鳴室41〜46にそれぞれ
対応させて複数の小孔を設けるほかに、単一の開口を有
する頸部を設けるようにしてもよい。
【0030】さて、上記各共鳴器の共鳴周波数frは次
式に基づいて決定される。
【0031】
【数1】
【0032】ここで、Pは開口率であって、各片部32
〜37に設けられた小孔の面積により決定される。ま
た、tは外枠16を構成する鋼板の板厚寸法であり、L
は各片部32〜37の内面と各第2仕切板25〜30の
内面との距離である。さらに、φは各小孔の内径であ
る。なお、πは円周率であり、cは音速である。
【0033】したがって、各共鳴室41〜46の容積お
よび各共鳴室41〜46に対応する小孔32a〜37a
の内径φのうち少なくとも一方を様々に変化させること
により、共鳴装置13に含まれる各共鳴器の共鳴周波数
rが様々に変化する。
【0034】以上のような構成を有する防音装置10に
よれば、次のような作用効果を奏する。
【0035】まず、図1に示すように、防音装置10を
道路11に沿って配置することにより、自動車14から
発せられた音波15は防音壁部材12によって音の伝播
が抑制される。ただし、防音壁部材12の先端部(回折
点)で回折して防音壁部材12の裏側へと進行する。こ
のとき、音波15は共鳴装置13に入射する。しかし、
共鳴装置13が音波15に対応した共鳴周波数を有する
ならば、共鳴装置13によって音圧が低減され、その結
果防音が達成される。
【0036】このように共鳴装置13を採用しているか
ら、音響管を採用する場合に比べて防音装置全体をコン
パクトに設計することができ、また、いわゆるアクティ
ブコントロールにより音圧を低減させる場合のようなコ
ストの上昇を防止することができる。
【0037】加えて、上記共鳴装置13はヘルムホルツ
共鳴器を構成しているから、きわめて軽量コンパクトに
防音装置10を設計でき、メンテナンスも不要である。
【0038】また、上記共鳴装置13が異なる共鳴周波
数frを有する複数の共鳴器を含む構成となっているか
ら、音源(自動車14)から様々な周波数の音波が発せ
られても効果的な防音を達成することができる。しか
も、共鳴周波数frを変化させるために、上記頸部の寸
法(φ、t)および空洞部寸法のうち少なくとも一方を
異ならせることにより簡単に行うことができるという利
点もある。
【0039】以下、本発明の実施の形態について説明す
る。 <第の実施形態> 本発明の第の実施形態について説明する。
【0040】図4は、本発明の第の実施形態に係る防
音装置50を模式的に示した図であり、図5は、この防
音装置50に適用された共鳴装置53の構成を示す斜視
図である。ただし、図5は共鳴装置53の内部構造を示
すための要部斜視図であって、防音壁部材12の長手方
向に沿って連続している共鳴装置53の一部を切断した
状態で示している。
【0041】この防音装置50は、上記防音装置10と
同様に、道路11を走行する自動車から発せられた音
(音波)が防音壁部材12を越えて外部(観測点)に伝
播するのを効果的に防止しようとするものであって、道
路11の脇に道路11に沿って立設された防音壁部材1
2と、この先端部に設けられた共鳴装置53とを備えて
いる。
【0042】本実施形態の特徴とするところは、共鳴装
置53の構造が上記共鳴装置13と異なる点であり、そ
の他の構成については上記防音装置10と同様である。
したがって、上記防音装置10と同様の構成については
同様の参照符号を付してその説明を省略し、共鳴装置5
3について詳しく説明する。
【0043】図5を参照して、共鳴装置53は、中心部
に配置されたコア部材17と、コア部材17から放射状
に突出するように配置された複数の第1仕切板18〜2
4と、隣り合う第1仕切板18〜24同士を連結する第
2仕切板25〜30と、第1仕切板18,24に連結さ
れた取付部51と、第1仕切板18〜24の先端辺部を
順に含絡するように張設された弾性膜部材62〜67と
を有している。なお、この弾性膜部材62〜67は、た
とえばウレタンゴム等により構成することができる。
【0044】すなわち、上記防音装置10では、外枠1
6(図2参照)を設けて当該外枠16によって共鳴装置
13の外周面を構成したのに対し、本実施形態に係る共
鳴装置53は、外枠をなくして弾性膜部材62〜67に
よって当該共鳴装置53の外周面を構成している。ま
た、取付部51は、たとえば鋼板からなる片部68,6
9と、クロスメンバ39とを有しており、この取付部5
1によって共鳴装置53を防音壁部材12の先端に取り
付けることができるようになっている。
【0045】第1仕切板18〜24、第2仕切板25〜
30および弾性膜部材62〜67によって、共鳴装置5
3の内部が6つに区画されており、それぞれ第1共鳴室
41,第2共鳴室42,第3共鳴室43,第4共鳴室4
4,第5共鳴室45および第6共鳴室46が形成されて
いる。また、第2仕切板25〜30は、それぞれ隣り合
う第1仕切板18〜24の間の所定位置に配置されてお
り、これにより、各共鳴室41〜46は、それぞれ異な
った容積を有している。
【0046】つまり、この共鳴装置53は、上記共鳴装
置13と同様に、6つの共鳴器が集合したものとして構
成されており、後述するように各共鳴器は、異なった共
鳴周波数を有している。以下、弾性膜部材62を含む共
鳴器を第1共鳴器、弾性膜部材63を含む共鳴器を第2
共鳴器、弾性膜部材64を含む共鳴器を第3共鳴器、弾
性膜部材65を含む共鳴器を第4共鳴器、弾性膜部材6
6を含む共鳴器を第5共鳴器、弾性膜部材67を含む共
鳴器を第6共鳴器という。
【0047】さらに詳しく説明する。第1共鳴器につい
て説明すると、上記第1共鳴室41(空洞部)は、第1
仕切板18,19と第2仕切板25と弾性膜部材62と
からなるブロック体の内部に形成されており、この弾性
膜部材62(露出面部)は騒音の原因となる音が入射す
る部分である。そして、上記第1共鳴室41を形成する
第1仕切板18,19と第2仕切板25と弾性膜部材6
2とによって第1共鳴器が構成されている。なお、他の
共鳴器についても同様である。
【0048】ここで、上記各共鳴器の共鳴周波数fr
次式に基づいて決定される。
【0049】
【数2】
【0050】ここで、ρは共鳴室内の空気の密度であ
る。また、Lは、弾性膜部材と当該弾性膜部材が対向す
る面(第2仕切板)との距離である。さらに、mは弾性
膜部材の面密度である。なお、πは円周率であり、cは
音速である。
【0051】したがって、各共鳴室41〜46の寸法
(弾性膜部材と第2仕切板との距離)および各弾性膜部
材62〜67の面密度のうち少なくとも一方を様々に変
化させることにより、共鳴装置13に含まれる各共鳴器
の共鳴周波数frが様々に変化する。
【0052】以上のような構成を有する防音装置50
よれば、次のような作用効果を奏する。
【0053】まず、図4に示すように、防音装置50を
道路11に沿って配置することにより、騒音源(自動車
等)から発せられた音波は防音壁部材12によって音の
伝播が抑制される。ただし、防音壁部材12の先端部
(回折点)で回折して防音壁部材12の裏側へと進行す
る。このとき、音波は共鳴装置53の弾性膜部材62〜
67に入射する。これにより各弾性膜部材62〜67が
振動するが、共鳴装置53に含まれる共鳴器が音波に対
応した共鳴周波数を有するならば、共鳴装置53によっ
て音圧が低減され、その結果防音が達成される。
【0054】このように、本実施形態では、共鳴装置5
3を採用しているから、音響管を採用する場合に比べて
防音装置全体をコンパクトに設計することができ、ま
た、いわゆるアクティブコントロールにより音圧を低減
させる場合のようなコストの上昇を防止することができ
る。
【0055】加えて、本実施形態に係る共鳴装置53は
弾性膜部材62〜67の振動を利用したものであり、
記防音装置10のヘルムホルツ共鳴器と同様にきわめて
軽量コンパクトに防音装置50を設計でき、メンテナン
スも不要である。
【0056】また、本実施形態では、共鳴装置53が異
なる共鳴周波数frを有する複数の共鳴器を含む構成と
なっているから、音源から様々な周波数の音波が発せら
れても効果的な防音を達成することができる。しかも、
共鳴周波数frを変化させるために、上記弾性膜部材6
2〜67の面密度ρおよび各弾性膜部材と第2仕切板と
の距離Lのうち少なくとも一方を異ならせることにより
簡単に行うことができるという利点もある。
【0057】さらに、本実施形態では、弾性膜部材62
〜67としてウレタンゴム等を採用したが、この弾性膜
部材62〜67の表面に金属膜を被服してもよい。金属
膜としては、たとえばアルミ等を採用することができ、
被服の方法として接着等を採用することができる。もっ
とも、弾性膜部材自体を金属膜で構成することもでき
る。
【0058】このように弾性膜部材62〜67に金属膜
を備えることによって、弾性膜部材62〜67の耐久性
が向上し、その結果、防音装置50全体の寿命を延ばす
ことができるという利点がある。
【0059】上記実施形態では、一つの共鳴装置13,
53が6つの異なる共鳴周波数を有する共鳴器を含んだ
形態であるが、さらに多数の共鳴器を含む形態とするこ
とができるのは勿論である。また、複数の共鳴器を含ま
ずに共鳴装置13,53が単一の共鳴周波数を有する共
鳴器として構成されるようにしてもよい。<第2の実施形態> 図6 は、第2の実施形態に係る防音装置80を示してい
る。この防音装置80は、いわゆるT型防音壁81の上
端部に複数の開口82〜88が形成された閉塞部材89
を設け、これにより、結果として複数のヘルムホルツ共
鳴器を構成したものである。すなわち、上記開口82〜
88を有する閉塞部材89を設けることにより、開口8
2とこれに連通する空洞部82aが形成されて一つの共
鳴器が構成される。また、開口83とこれに連通する空
洞部83aとにより他の共鳴器が形成され、同様にし
て、複数の共鳴器が形成される。この場合、各空洞部8
2a〜88aの容積がそれぞれ異なるから、結果として
防音装置80は、異なる複数の共鳴周波数を有する。
して、この共鳴周波数は比較的低い周波数帯域の音波の
音圧を低減するように設定されている。これにより、防
音装置80を音響管に比べてコンパクトにすることがで
きる。
【0060】図は、第2の実施形態に係る防音装置8
0に採用される共鳴装置13の具体例を示す断面図であ
る。また、図は共鳴装置13を側面側からみた断面図
であり、図は平面図である。図を中心にしてこれら
の図を参照して説明する。
【0061】この共鳴装置13は、フレーム110と、
フレーム110の上部に配設された天板111と、フレ
ーム110内に配設され、天板111と協働してフレー
ム110内に共鳴室112〜116(空洞部)を区画形
成する仕切板117〜121と、天板111上に立設さ
れた複数のポール122と、各ポール122間の空間に
充填された吸音体123とを有している。
【0062】すなわち、この実施形態の特徴は、防音壁
81の上方に複数のヘルムホルツ共鳴器を構成している
点、および各ヘルムホルツ共鳴器に吸音体123が装備
されている点であり、各ヘルムホルツ共鳴器によって比
較的低い周波数帯域の音波の音圧を低減し、吸音体12
3によって各ヘルムホルツ共鳴器で防音することができ
ない音波を吸音することができる。その結果、より広範
囲の周波数帯の音波15(図1参照)を吸収し、騒音を
低減することができる。
【0063】フレーム110は、図に示すように、底
板124と、底板124の隅部に立設された側板125
と、底板124の中央部に立設された区画板126とを
有している。これら各部材124〜126は、金属また
は合成樹脂等により構成することができる。また、参照
符号129,130は、補強板を示しており、吸音体1
23を保護するためのものである。補強板129,13
0も金属または合成樹脂等により構成することができ
る。
【0064】本実施形態では、底板124に脚部127
が設けられており、この脚部127によって共鳴装置1
3を防音壁81に取り付けることができるようになって
いる。なお、脚部127は、金属板あるいは合成樹脂板
により構成することができ、ボルト等を用いて防音壁8
1に締結するために、ボルト挿通孔128が設けられて
いる。
【0065】天板111は、金属または合成樹脂等によ
り構成することができる。天板111には、複数の貫通
孔131が設けられている。この貫通孔131は、上記
共鳴装置13における小孔32a等(図2参照)に対応
し、その内壁部分によってヘルムホルツ共鳴器の頸部が
構成される。また、上記防音装置10と同様に、各貫通
孔131について小空洞部48(図3参照)が形成され
ることになるから、各貫通孔131に対応して複数の仮
想のヘルムホルツ共鳴器が構成される。
【0066】そして、各仮想ヘルムホルツ共鳴器が合成
されて、一つのヘルムホルツ共鳴器が構成される。本
施形態では、フレーム110内に5つの共鳴室112〜
116が区画されているから、空洞部容積の異なる5つ
のヘルムホルツ共鳴器132〜136が形成されている
ことになる。
【0067】天板111には、複数のポール122が設
けられているが、各ポール122は上記各貫通孔131
に被せるように配置されている。本実施形態では、各ポ
ール122の内径と各貫通孔131の内径とが一致して
いる。各ポール122は、金属または合成樹脂等により
構成することができる。
【0068】吸音体123は、吸音材137と、金属繊
維板138とを有している。吸音材137としては、多
孔質材(たとえばグラスウールや発泡金属等)を採用す
ることができる。この吸音材137は天板111上に配
置されており、上記補強板129,130と、各ポール
122の外周面とにより区画される空間に敷き詰められ
ている(図参照)。
【0069】一方、金属繊維板138は、金属繊維を板
状に形成したものであって、吸音材137の上面に敷き
詰められている。なお、この金属繊維板138は、市販
品を採用することができる。
【0070】この実施形態では、共鳴装置13が上述の
ようなヘルムホルツ共鳴器を構成しているから、上記
音装置10と同様に、音源(自動車14:図1参照
ら様々な周波数の音波が発せられても効果的な防音を達
成することができる。
【0071】しかも、仮に、上記ヘルムホルツ共鳴器が
効果的な防音を達成することができない周波数帯の音波
が混在していても、吸音体123によりかかる周波数帯
の音波の音圧を低減させることができ、共鳴装置13全
体として効果的な防音を達成することができる周波数帯
域を拡大することができる。
【0072】また、本実施形態では、さらに金属繊維板
138の上面に耐候性フィルム138aを配設してい
る。耐候性フィルムとしては、たとえばポリビニルフロ
ライドフィルム(PVFフィルム)等を採用することが
できる。かかる耐候性フィルム138aを設けることに
より、雨や直射日光等による共鳴装置13の経年変化を
抑えることができる。
【0073】さらに、本実施形態では、金属繊維板13
8を無くすこともできる。このようにしても、吸音材1
37のみによって防音効果を得ることができるから、共
鳴装置13全体として効果的な防音を達成することがで
きる周波数帯域を拡大することができる。その際、吸音
材137の上面に上記耐候性フィルム138aを配設す
ることもできる。
【0074】また、吸音材137を無くして金属繊維板
138のみとすることもできる。すなわち、金属繊維板
138の下方に空気層を設けることもできる。かかる構
成を採用しても、金属繊維板138のみによって防音効
果を得ることができるから、共鳴装置13全体として効
果的な防音を達成することができる周波数帯域を拡大す
ることができる。その際、吸音材137の上面に上記耐
候性フィルム138aを配設することができるのは勿論
である。
【0075】加えて、吸音材137の厚みを薄くするこ
ともできる。すなわち、金属繊維板138の下方に、吸
音材137と空気層とを設けることもできる。かかる構
成を採用しても、上記と同様の作用効果を得ることがで
きる。
【0076】さらに、金属繊維板138の下方に空気層
を設ける場合には、この空気層の厚みを調整することに
より、効果的な吸音を実現できる周波数帯を調整するこ
とができる。したがって、共鳴装置13により構成され
るヘルムホルツ共鳴器が効果的な防音を達成することが
できない周波数帯が混在していても、上記空気層の厚み
を調整することにより当該周波数帯の音波を効果的に減
音し、共鳴装置13全体として効果的な防音を達成する
ことができる周波数帯域を拡大することができる。
【0077】なお、本実施形態および上記第1の実施形
において、ヘルムホルツ共鳴器を構成する場合に、複
数の共鳴周波数を備えるために、空洞部90を図10
示すような形状とすることもできる。すなわち、開口9
1を備えた頸部92に連通するように第1空洞部93を
形成し、さらに第1空洞部93に連通する頸部94を形
成した後、これに連通する第2空洞部95を形成する。
そして、頸部92,94の寸法、第1空洞部93,第2
空洞部95の容積を変更することにより、所望の共鳴周
波数を得ることができる。の実施形態に関する変
更例11は、第の実施形態に関する変更例に係る
共鳴器の構造を示したものである。第の実施形態で
は、複数の共鳴周波数を得るために放射状に複数の共鳴
器を形成したが、本変更例では、2つの弾性膜部材9
6,97を採用して一つの共鳴器で2つの共鳴周波数を
得ようとするものである。
【0078】すなわち、本変更例では、弾性膜部材96
が第1の共鳴室98を区画する一つの壁面を構成し、第
1の共鳴室98を区画する他の壁面の一部を弾性膜部材
97が構成している。そして、この弾性膜部材が第2の
共鳴室99を区画する一の壁面を構成している。この場
合、弾性膜部材96,97の面密度および両者の距離s
1および弾性膜部材97とこれに対向する共鳴室99の
底面100との距離s2を変化させることにより、所望
の共鳴周波数を得ることができる。
【0079】
【発明の効果】以上のように本願発明によれば、防音壁
の先端部に設けられた共鳴装置によって騒音の原因とな
る音波に対して共鳴現象を起こさせ、防音壁部材の先端
部における音圧を低減させることができるから、観測点
における騒音を抑えることができる。しかも、音圧を低
減させるために共鳴現象を利用するものであるから、音
響管を採用する場合に比べて防音装置をコンパクトに設
計することができ、また、いわゆるアクティブコントロ
ールにより音圧を低減させる場合のようなコストの上昇
を防止することができる。
【0080】特に、共鳴装置をいわゆるヘルムホルツ共
鳴器として構成することにより、きわめてコンパクトに
設計でき、特別のメンテナンス等を不要とすることがで
きる。さらに、天板上に吸音体を設けているので、上記
共鳴器が効果的な防音を達成することができない周波数
帯の音波が混在していても、吸音体によりかかる周波数
帯の音波の音圧を低減させることができる。これによ
り、共鳴装置全体として効果的な防音を達成することが
できる。
【0081】さらに、共鳴器を複数備えるようにするこ
とによって、音源が様々な周波数を有する音を発する場
合であっても、観測点において効果的に防音を達成する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の前提的な防音装置の使用状態を示す図
である。
【図2】本発明の前提的な防音装置の共鳴装置の構造を
示す斜視図である。
【図3】ヘルムホルツ共鳴器の一般的構成を示す模式図
である。
【図4】本発明の第の実施形態に係る防音装置の使用
状態を示す図である。
【図5】本発明の第の実施形態に係る共鳴装置の構成
を示す斜視図である。
【図6】第の実施形態に係る防音装置を示した模式図
である。
【図7】第の実施形態に係る防音装置の共鳴装置の具
体的構成を図示した断面図である。
【図8】第の実施形態に係る防音装置の共鳴装置を側
面側からみた状態での断面図である。
【図9】第の実施形態に係る防音装置の共鳴装置の平
面図である。
【図10】第1および第2の実施形態に関する変更例に
係る防音装置を示した模式図である。
【図11】第の実施形態に関する変更例に係る共鳴器
の構造を示した模式図である。
【図12】音の伝播を模式的に示した図である。
【符号の説明】
10 防音装置 12 防音壁部材 13 共鳴装置 15 音 16 外枠 18〜24 第1仕切板 25〜30 第2仕切板 31 第1片部 32 第2片部 33 第3片部 34 第4片部 35 第5片部 36 第6片部 37 第7片部 38 第8片部 41 第1共鳴室 42 第2共鳴室 43 第3共鳴室 44 第4共鳴室 45 第5共鳴室 46 第6共鳴室 47 頸部 48 空洞部 50 防音装置 53 共鳴装置 62 弾性膜部材 63 弾性膜部材 64 弾性膜部材 65 弾性膜部材 66 弾性膜部材 67 弾性膜部材 110 フレーム 111 天板 112〜116 共鳴質 117〜121 仕切板 122 ポール 123 吸音体 126 区画板 131 貫通孔 132〜136 ヘルムホルツ共鳴器 137 吸音材 138 金属繊維板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下土居 秀樹 兵庫県加古郡播磨町新島8番地 川崎重 工業株式会社 播磨工場内 (56)参考文献 特開 平11−256523(JP,A) 特開2000−265422(JP,A) 特開2001−317014(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E01F 8/00 G10K 11/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 音波の伝播を抑える防音壁部材と、 防音壁部材の先端部に配置された共鳴装置とを備えてお
    り、 上記共鳴装置は、 音波が入射する開口を有する頸部と、頸部に連通し予
    め定められた容積を有する空洞部とを備える、比較的低
    い周波数帯域の音波の音圧を低減するために予め定めら
    れた共鳴周波数を有する共鳴器と、 該空洞部の上部を形成する天板上の上方のみ開放された
    空間に敷き詰められた、上記共鳴器が防音することがで
    きない周波数帯の音波を吸音する吸音体とを備えて広範
    囲の周波数帯域で防音するように構成した ことを特徴と
    する防音装置。
  2. 【請求項2】 音波の伝播を抑える防音壁部材と、 防音壁部材の先端部に配置され、予め定められた共鳴周
    波数を有する共鳴装置とを備えており、 上記共鳴装置は、 内部に空洞部が形成されたブロック体を備え、当該ブロ
    ック体は、音波が入射する露出面部を含んで構成されて
    おり、 当該露出面部は、予め定められた弾性を有する膜部材に
    より構成されていることを特徴とする防音装置。
  3. 【請求項3】 請求項記載の防音装置において、 上記膜部材は、金属膜を含んで構成されていることを特
    徴とする防音装置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないしのいずれかに記載の防
    音装置において、 上記共鳴装置は、異なる共鳴周波数を有する複数の共鳴
    器を含んでいることを特徴とする防音装置。
  5. 【請求項5】 請求項記載の防音装置において、 上記共鳴装置は、異なる共鳴周波数を有する複数の共鳴
    器を含んでおり、 各共鳴器は、それぞれ、頸部寸法および空洞部寸法のう
    ち少なくとも一方が異なっていることを特徴とする防音
    装置。
  6. 【請求項6】 請求項または記載の防音装置におい
    て、 上記共鳴装置は、異なる共鳴周波数を有する複数の共鳴
    器を含んでおり、 各共鳴器は、それぞれ、膜部材の面密度および膜部材と
    当該膜部材が対向する面との距離のうち少なくとも一方
    が異なっていることを特徴とする防音装置。
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