JP3484509B2 - 仮撚加工糸とその製造方法 - Google Patents

仮撚加工糸とその製造方法

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JP3484509B2 JP13013895A JP13013895A JP3484509B2 JP 3484509 B2 JP3484509 B2 JP 3484509B2 JP 13013895 A JP13013895 A JP 13013895A JP 13013895 A JP13013895 A JP 13013895A JP 3484509 B2 JP3484509 B2 JP 3484509B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、混繊された嵩高な仮撚
加工糸に関するものであり、さらに詳しくは未延伸糸の
段階で太デニールフィラメントに対し、細デニールフィ
ラメントが自然延伸倍率差(ΔNDR)を有し、延伸同
時仮撚あるいは延伸に引き続き仮撚加工すると太デニー
ルフィラメントに対し、細デニールフィラメントが大き
な糸長差を発現する、ソフトな風合とストレッチ性に優
れ、かつ良好な張り、腰、反発性を有する仮撚加工糸に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】これまで梳毛調織物用のポリエステル仮
撚加工糸は、ソフト感と張り・腰感を両立させるためデ
ニールの異なる糸を混繊させたものが一般的である。こ
こで、太デニール成分が芯部を形成し、細デニール成分
が鞘部を形成した芯鞘2層構造とした仮撚加工糸とする
ため多数の改良技術が提案されてきた。仮撚加工した芯
鞘2層構造糸の従来例として、太デニール成分群に75
D−12F、細デニール成分群に75D−36Fを使用
したものが記載されている(特開昭50−20025号
公報)が、細デニール成分の単糸繊度が2dを越えてお
り、梳毛調織物用として用いるにはソフト感が不十分で
あった。細デニール成分が1.6d以下で太デニール成
分と細デニール成分の繊度差が1.8d以上の芯鞘2層
構造の仮撚加工糸が記載されているが、太デニール成分
は3〜4.4dであり、張り・腰感付与の点で不十分で
あった。また、この加工糸は毛羽を有するものであり、
工程通過性に問題があった。特開昭63−112742
号公報には、太デニール成分が6.5d〜11d、細デ
ニール成分が0.7〜2dで、太デニール成分群に対す
る細デニール成分群の繊度比が0.65〜1.5であ
り、3〜15%の糸長差を有する芯鞘2層構造の仮撚加
工糸が記載されているが、この場合、ソフト感と張り・
腰感の両立のため、単糸繊度差が大きく、染色差が生じ
やすい。しかしながら、本発明では細デニールフィラメ
ント側に比べ、太デニールフィラメント側に固有粘度の
高いポリマを用いるため、配向状態、細デニールフィラ
メント側との染色差が生じにくい。
【0003】固有粘度に差のあるポリマを用いた仮撚加
工糸については、特開昭50−25821号公報や特開
昭54−38952号公報などが公知であるが、これら
の加工糸は多数の毛羽を有するもので本発明とは、性質
の異なるものであり、また工程通過性に問題があった。
【0004】芯鞘2層構造とした仮撚加工糸の製造方法
に関しては、伸度差、デニール差の異なる糸を混繊、ま
たは合糸しつつ延伸同時仮撚する方法が一般的である。
伸度の低い高配向未延伸糸と伸度の高い低配向未延伸糸
とを合糸混繊し、延伸同時仮撚する方法がある(特公昭
61−19733号公報,特開平6−123032号公
報)。この方法では、収縮特性・染色性など種々の特性
の異なる原糸の組み合わせが可能である。しかしなが
ら、この方法では、供給すべき原糸を別々に紡糸して準
備するため、生産性が低いほか、複数の原糸供給装置を
有する特殊な仮撚加工機が必要である、といった欠点が
ある。
【0005】この欠点を補って同時紡糸で供給糸を得る
ため、断面積が連続的に拡大する吐出孔を持つ紡糸口
金を用い高ドラフトを作用させる方法(特開平4−19
4007号公報)、冷却差と高ドラフトを利用した方
法(特開平4−194010号公報)などにより異繊度
混繊糸を同時紡糸で得た後、延伸同時仮撚加工して芯鞘
2層構造の仮撚加工糸を得ようとする事も考えられる。
しかしながら、といづれの方法も、混繊糸中の太デ
ニール成分と細デニール成分の間に十分大きな構造差
(NDR差,伸度差,配向度など)は得られておらず、
従って、大きなデニール差を付与できない他、延伸同時
仮撚加工した時にも十分大きな糸長差が得られない。さ
らに、一部に捲縮コンジュゲートマルチフィラメント
を用いる方法(特開平5−311533号公報)も試み
られた。この方法では、捲縮は既に仮撚加工以前に発現
しており、他の原糸と混繊するに際し混繊状態を制御す
ることが困難であり、また、仮撚加工での工程安定化に
も問題があり、品質的にも安定しない・製糸性が悪い等
の欠点が避けられない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、太デニール
フィラメントに対し、細デニールフィラメントが大きな
糸長差(5%を越える)を発現し、ソフトな風合とスト
レッチ性に優れ、かつ良好な張り、腰、反発性を有する
仮撚加工糸を提供することにある。
【0007】さらに、前記した新規な仮撚加工糸を同時
紡糸、次いで延伸同時仮撚加工で製造することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するために次の構成を有する。ポリエステルからなる
太デニールフィラメントと細デニールフィラメントの単
糸繊度比が少なくとも3倍以上で、細デニールフィラメ
ントの単糸繊度が2d以下であり、太デニールフィラメ
ントの固有粘度が0.7〜1.0、細デニールフィラメ
ントの固有粘度が0.55〜0.65で太デニールフィ
ラメントと細デニールフィラメントの固有粘度差が0.
11以上であり、且つ、下式を用いて計算した糸長差が
5%を越え、さらに、毛羽数が5コ/m以下であること
を特徴とする仮撚加工糸。 (糸長差)={(Ln−Lm)/Lm}×100 Ln;細デニールフィラメントの長さ Lm;太デニールフィラメントの長さ
【0009】また、上記の異繊度混繊の仮撚加工糸は、
孔径の異なる少なくとも2種の吐出孔群を有する紡糸口
金を用い、一方の吐出孔群(A)の吐出孔径が1mmΦ
以上であり、吐出孔群(A)から固有粘度が0.7以上
のポリマを、他方の吐出孔群(B)から固有粘度が0.
65以下で且つ吐出孔群(A)に用いたポリマとの固有
粘度差が0.11以上のポリマを、吐出孔群(A)から
得られるフィラメントが吐出孔群(B)から得られるフ
ィラメントより太くなるような吐出量比で、それぞれ独
立したマルチフィラメントとして吐出させ、同時に引取
り、次いで延伸同時仮撚加工することによって製造する
ことができる。
【0010】以下、本発明を更に詳しく説明する。本発
明でいうポリエステルからなる仮撚加工糸は、2種以上
のフィラメントから構成され、少なくとも繊度差を有す
る他、収縮差、断面形状差があってもよい。また、本発
明でいうポリエステルとは、80モル%以上がポリエチ
レンテレフタレート単位で構成されたものであり、本発
明の目的を阻害しない範囲で5−ソジウムスルホイソフ
タレート、ポリエチレングリコール、イソフタル酸など
の第三成分や各種添加剤が存在していてもよい。
【0011】本発明においては、細デニールフィラメン
トに対する太デニールフィラメントの単糸繊度比が少な
くとも3倍以上で、細デニールフィラメントの単糸繊度
が2d以下であることが必要である。太デニールフィラ
メントと細デニールフィラメントを3倍以上の単糸繊度
比とし、細デニールフィラメントの単糸繊度を2d以下
とすることで織編物としたときに細デニールフィラメン
トが織物表面に存在し、表面タッチのソフト感と十分な
張り・腰を発揮できる。繊度比が3倍未満であると織編
物としたときに、ソフト感または、十分な張り・腰のど
ちらかが不足してしまう傾向にある。しかし、あまり繊
度比をつけすぎると織編物の風合いが硬くなってしまう
ので10倍以下が好ましい。細デニールフィラメントの
単糸繊度が2dを超えると、風合いが硬くなる傾向にあ
り好ましくない。また、製糸段階や仮撚加工段階で毛羽
や糸切れを防止し、生産性を高くするため、細デニール
フィラメントの単糸繊度は0.2d以上であることが好
ましい。
【0012】本発明の仮撚加工糸は、固有粘度の異なる
ポリマからなることが特徴である。本発明において、高
いストレッチ性と良好な張り、腰、反発感を付与するた
め、太デニールフィラメントの固有粘度は0.7〜1.
0とする必要がある。また、細デニールフィラメントは
ソフトな風合いを付与するため固有粘度が0.55〜
0.65とする必要がある。
【0013】本発明では、細デニールフィラメントが加
工糸全体の外層部を形成するようになるために、織編物
の表面がソフトなタッチとなるが、このとき下式を用い
て計算した糸長差が少なくとも5%を越えることが必要
である。 (糸長差)={(Ln−Lm)/Lm}×100 Ln;細デニールフィラメントの長さ Lm;太デニールフィラメントの長さ 糸長差が5%を越えることで、ソフト感向上の他に、保
温性、軽量感の付与も可能となる。糸長差が5%以下で
は風合が硬くなり、品質の低いものしか得られない。か
かる観点から、糸長差は好ましくは7%以上である。一
方、糸長差が大きくなりすぎるとふかつき感の増加、抗
ピル性の低下、ネップの発生が起こるので25%以下が
好ましい。より好ましくは、17%以下である。
【0014】加工糸において毛羽が存在すると製織工程
などにおいてネップの発生や糸切れなどのトラブルを起
こしやすい。このため、加工糸には実質的に毛羽が無い
ことが好ましく、毛羽数は5コ/m以下であることが好
ましく、より好ましくは3コ/m以下である。
【0015】また、加工糸全体には交絡が付与されてい
ることが好ましい。このことは、太デニールフィラメン
ト群、細デニールフィラメント群の群内及び群間のフィ
ラメント間に流体交絡が付与されていることを意味する
もので、この交絡は太デニールフィラメント群と細デニ
ールフィラメント群の分離を防止し、ネップ化の防止と
製織工程での糸の通過性向上、抗ピル性向上などから付
与するもので、50コ/m以上が好ましく、100コ/
m以上がより好ましい。交絡度が高すぎると糸長差を大
きくした効果が損なわれるため300コ/m以下が好ま
しく、250コ以下がより好ましい。
【0016】太デニールフィラメント群に対する細デニ
ールフィラメント群の繊度比は0.5〜2.0が好まし
く、より好ましくは0.7〜1.5である。織編物とし
たとき、ソフト感の良好な風合いを付与するという点か
ら0.5以上が好ましい。また、張り・腰感を付与する
という点から2.0以下が好ましい。
【0017】さらに、本発明の新規な仮撚加工糸の製造
法は、孔径の異なる少なくとも2種の吐出孔群を有する
紡糸口金を用い、太デニールフィラメントを吐出する側
の吐出孔群(A)の吐出孔径が1mmΦ以上であり、吐
出孔群(A)から固有粘度が0.7以上のポリマを、他
方の細デニールフィラメントを吐出する側の吐出孔群
(B)から固有粘度が0.65以下で且つ吐出孔群
(A)に用いたポリマとの固有粘度差が0.11以上の
ポリマを、それぞれ独立したマルチフィラメントとして
吐出させ、同時に引取り、次いで延伸同時仮撚加工
することによって製造することができる。
【0018】従来、同一口金を用いて同時紡糸で得られ
る異繊度混繊糸は、太デニールフィラメント側が低配向
となり、細デニールフィラメント側が高配向となるため
に、延伸同時あるいは延伸に引き続き仮撚すると細デニ
ールフィラメントが芯部に存在し、太デニールフィラメ
ントが表層部に存在するため、織編物とした時に触り心
地の悪い風合しか得られなかった。同一口金を用いた紡
糸で、得られる細デニールフィラメントよりも太デニー
ルフィラメントの配向を十分に高くさせることが出来れ
ば、溶融紡糸後、引き揃えて巻取り、延伸同時仮撚加工
すると、太デニールフィラメントが芯部を構成し、細デ
ニールフィラメントがその周りに絡み付いた新規な仮撚
加工糸を得ることができる。
【0019】細デニールフィラメントに対して太デニー
ルフィラメントの配向を十分に高くさせるため、本発明
の如く吐出孔径と固有粘度の制御が必要になる。本発明
における吐出孔群の吐出孔径とは最終吐出孔径を指し、
太デニールフィラメントを吐出する側の吐出孔群(A)
の吐出孔径は1mmΦ以上であることが必須である。吐
出ポリマ流の計量性を確保するために最終吐出孔の存在
する口金プレートの上流側に細孔を有する口金プレート
を設けてもよい。吐出孔群(A)の吐出孔径が1mmΦ
未満では、太デニールフィラメントの配向が低くなって
伸度が高くなるため本発明の目的が達せられない。太デ
ニールフィラメント側の吐出孔群(A)の吐出孔径につ
いてはデニールの大きいものを得ようとする際には、よ
り大きなものを用いた方が効果的であるため、とくに限
定されるものでは無いが、より好ましくは2mmΦ以上
である。一方、あまりにも得ようとする糸のデニールに
対して、吐出孔径が大きすぎると太デニールフィラメン
トがいわゆる雨降り状態となって均一性が低下する他、
曳糸性が低下するため、吐出孔群(A)の吐出孔径は8
mmΦ以下とすることが好ましい。より好ましくは、6
mmΦ以下である。
【0020】また、細デニールフィラメントを吐出する
の吐出孔群(B)についても、デニールの小さいもの
を得ようとする際には、より小さなものを用いた方が効
果的であるため、とくに限定されるものでは無いが、吐
出孔径が0.3mmΦをこえると本発明の目的とする細
デニール糸が得られなくなることがある。すなわち、ウ
ースター斑が大きくなる他、吐出糸の走行状態が不安定
となる、いわゆるピクツキ現象が生じる。よって、吐
孔群の吐出孔径は0.3mmΦ以下であることが好まし
く、更に、0.2mmΦ以下であることが好ましく、デ
ニールによって、より好ましくは0.18mmΦ以下で
ある。
【0021】固有粘度は、太デニールフィラメント側に
0.7以上のポリマを、細デニールフィラメント側に
0.65以下のポリマを用いることが必要である。太デ
ニールフィラメント側に用いるポリマの固有粘度が0.
7未満であると、細デニールフィラメントとの間に十分
大きな構造差が発現しなくなり、大きな糸長差が発現し
なくなってしまう。また、1.0を越えると、紡糸時の
吐出圧力が高くなり過ぎ、衣料用紡糸機での紡糸が困難
となり、均一性が著しく低下し好ましくない。細デニー
ルフィラメント側に用いるポリマの固有粘度が0.65
以下のポリマを用いることで、延伸同時仮撚加工の際
に、前記の高い固有粘度のポリマからなる太デニールフ
ィラメント側に仮撚応力が集中しやすくなり、目的の形
態の仮撚加工糸が得られる。固有粘度が0.65を越え
ると、太デニールフィラメントとの間に十分大きな構造
差が発現しなくなり、大きな糸長差が発現しなくなって
しまう。0.55未満では、紡糸時の吐出圧力が低くな
り過ぎ、製糸性・均一性が著しく低下し好ましくない。
【0022】本発明の如く、太デニールフィラメント側
の吐出孔径と固有粘度、細デニールフィラメント側の吐
出孔径と固有粘度をその繊度比に応じて厳密に制御する
ことではじめて本発明の目的であるソフトな風合とスト
レッチ性に優れ、かつ良好な張り、腰、反発性を有する
仮撚加工糸が同時紡糸で得られる異繊度混繊糸を延伸同
時仮撚加工することで得られる。
【0023】また、本発明において、紡糸速度は100
0m/分以上4000m/分以下とすることが好まし
い。より好ましくは2000m/分以上3000m/分
以下である。太デニールフィラメントの低伸度レベルを
極端に低くするため、1000m/分以上で紡糸するこ
とが好ましく、太デニールフィラメント側の分子配向の
低下を防止して、太デニールフィラメント側の伸度を極
端に低くするため、さらに、吐出糸の走行安定性の点か
らも紡速4000m/分以下が好ましい。
【0024】さらに、本発明の新規な仮撚加工糸は、前
記したような太デニールフィラメント側の吐出孔径と固
有粘度、細デニールフィラメント側の吐出孔径と固有粘
度をその繊度比に応じて厳密に制御し、同時紡糸で得た
異繊度混繊糸を延伸同時仮撚加工を施すことにより得る
ことができる。
【0025】太デニールフィラメント側に通常には用い
られないほどの大なる孔径の吐出孔を用い、高重合度ポ
リマを吐出することで高配向化し、細デニールフィラメ
ント側に対し弾性回復を大きく、仮撚時の張力も大きく
させる。このため、仮撚加工時に細デニールフィラメン
トが鞘部を、太デニールフィラメントが芯部を構成し、
且つ、太デニールフィラメントに対して細デニールフィ
ラメントが大きな糸長差を発現するようになる。このこ
とは、あたかも紡糸速度を異ならせて引き取った、配向
度の異なる未延伸糸を紡糸後に合糸混繊して仮撚加工を
行なうのと同等の効果と見なすことができる。本発明で
は、同一の口金から引き取った混繊糸を延伸同時仮撚加
工を施すだけであるので、別々に紡糸した原糸を準備す
る必要がなく従来技術に比べ、極めて生産性が高い。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明
する。尚、実施例中の各特性値は以下の方法で求めた。
【0027】A.固有粘度[η] 25℃のオルソクロロフェノール中で測定した極限粘度
を意味する。ただし、高結晶化したポリマで、オルソク
ロロフェノールに完全に溶解せず未溶解物が残る場合に
は、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、次いで
ヘキサフルオロイソプロパノールを蒸発させた後、再度
オルソクロロフェノールに溶解させて測定することがで
きる。
【0028】B.糸長差 延伸同時仮撚加工して巻上げたチーズから糸条を張力の
かからないように引き出し、結び目を作る。結び目から
1mの糸条を同様に張力のかからないように引き出し、
切断して試料とする。試料は太デニールフィラメントと
細デニールフィラメントに注意深く分離して、それぞれ
0.1g/dの荷重下で糸長を測定し、下式により糸長
差を算出した。測定回数を5回として、その平均値を測
定値とした。 (糸長差)={(Ln−Lm)/Lm}×100 Ln;細デニールフィラメントの長さ Lm;太デニールフィラメントの長さ
【0029】C.風合特性(嵩高性、張り・腰感、ソフ
ト感) 各項目とも、試料を基準試料との一対比較による官能試
験を実施し、4段階評価した。「極めて優れている」は
◎、「優れている」は○、「普通」は△、「劣ってい
る」は×、で表した。基準試料は比較例において得た試
料と同一繊度、同一フィラメントの混繊糸を用い、同一
の仮撚加工、製織、加工を施したものを用いた。
【0030】D.毛羽数 加工糸を透明なガラス板に挟み、5〜20倍に拡大した
投映図より毛羽数を測定した。
【0031】実施例1 固有粘度[η]が0.83および0.63のポリエチレ
ンテレフタレートチップを常法により準備した。孔径3
mmΦ×孔数12、および孔径0.20mmΦ×孔数7
5の双方を有する紡糸口金を用い、紡糸温度295℃で
太デニール成分側に高い固有粘度のポリマを用い孔径3
mmΦ×孔数12から、細デニール成分側に低い固有粘
度のポリマを用い孔径0.20mmΦ×孔数75からそ
れぞれ独立したマルチフィラメントとして吐出し、紡速
2500m/分で巻取り、固有粘度の高い太デニールフ
ィラメントが単糸デニール10.8デニール×12フィ
ラメント、固有粘度の低い細デニールフィラメントが単
糸デニール2.2デニール×75フィラメントとなるよ
うに、高配向未延伸糸を得た。フリクション方式の仮撚
加工機にて、熱板温度200℃,延伸倍率1.80,撚
数2000T/mの条件で延伸と同時に仮撚加工した結
果、加工後は、太デニールフィラメントが固有粘度0.
79で単糸デニール6デニール×12フィラメント、細
デニールフィラメントが固有粘度0.61で単糸デニー
ル1.2デニール×75フィラメント、トータルでは1
62デニール87フィラメント(繊度比;0.8)であ
った。この加工糸は、太デニールフィラメントが芯部、
細デニールフィラメントがその周りの鞘部を構成した糸
長差12.3%の芯鞘2層構造加工糸であり、ストレッ
チ性に富むものであった。また、毛羽数は0コ/mであ
った。この加工糸に、800T/mの追撚を施し、通常
の製織工程により平織物を製織、染色した。得られた織
物はソフトなふくらみ感とともに、適度な張り・腰を有
した良好な風合いの加工糸織物が得られた。加工糸の糸
長差と織物の風合を官能評価によりランクづけした結果
を表1に示した。
【0032】実施例2,3 実施例1に用いたポリマの組合せを用い、細デニールフ
ィラメントのデニールのみ変更し、実施例1と同様に紡
糸、延伸同時仮撚加工、製織、染色した。糸長差と風合
を官能評価によりランクづけした結果を表1に示した。
【0033】実施例4,5 実施例1に用いたポリマの組合せを用い、デニールを変
更し、実施例1と同様に紡糸、延伸同時仮撚加工、製
織、染色した。糸長差と風合を官能評価によりランクづ
けした結果を表1に示した。
【0034】比較例1 実施例1に用いたポリマの組合せを用い、細デニールフ
ィラメントのデニールを2dを越えるものとして、繊度
比を3未満として、実施例1と同様に紡糸、延伸同時仮
撚加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価によ
りランクづけした結果を表1に示した。
【0035】比較例1の様に、繊度比を小さくすればす
るほど、糸長差は大きくなり嵩高性は大きくなるが、太
・細デニールフィラメントの明確な繊度差が発現しにく
くなり、ソフト感もしくは腰感のどちらかが不足してし
まうようになる。また、比較例1では糸長差が25%を
越えており、嵩高性が大きい事にくわえて『ふかつき
感』が生じ、好ましくない。
【0036】実施例6,7 太デニールフィラメントに用いるポリマの固有粘度を変
更し、実施例1と同様に紡糸、延伸同時仮撚加工、製
織、染色した。糸長差と風合を官能評価によりランクづ
けした結果を表1に示した。
【0037】実施例8,9 細デニールフィラメントに用いるポリマの固有粘度を変
更し、実施例1と同様に紡糸、延伸同時仮撚加工、製
織、染色した。糸長差と風合を官能評価によりランクづ
けした結果を表1に示した。
【0038】比較例2 太デニールフィラメントの固有粘度が、0.7未満とな
るチップを用い実施例1と同様に紡糸を行い、延伸同時
仮撚加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価に
よりランクづけした結果を表1に示した。
【0039】比較例3 細デニールフィラメントの固有粘度が、0.65を越え
るチップを用い実施例1と同様に紡糸を行い、延伸同時
仮撚加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価に
よりランクづけした結果を表1に示した。
【0040】これらの結果より、太デニールフィラメン
トおよび細デニールフィラメントの固有粘度を厳密に制
御することではじめて大きな糸長差を発現し、風合いの
良好なものとなる事が分かる。
【0041】
【表1】 実施例10 太デニールフィラメント側の口金孔径を2mmΦと幾分
小さいものに変更し、細デニールフィラメント側の口金
孔径は実施例1と同様で、デニール構成・ポリマの組合
せも実施例1と同様なものとして、紡糸、延伸同時仮撚
加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価により
ランクづけした結果を実施例1とあわせて表2に示し
た。
【0042】比較例4 太デニールフィラメント側の口金孔径を0.8mmΦと
小さいものに変更し、細デニールフィラメント側の口金
孔径は実施例1と同様で、デニール構成・ポリマの組合
せも実施例1と同様なものとして、紡糸、延伸同時仮撚
加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価により
ランクづけした結果を表2に示した。
【0043】実施例11 太デニールフィラメント側の口金孔径を2mmΦと幾分
小さいものに変更し、細デニールフィラメント側の口金
孔径は実施例4と同様で、デニール構成・ポリマの組合
せも実施例4と同様なものとして、紡糸、延伸同時仮撚
加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価により
ランクづけした結果を実施例4とあわせて表2に示し
た。
【0044】比較例5 太デニールフィラメント側の口金孔径を0.8mmΦと
小さいものに変更し、細デニールフィラメント側の口金
孔径は実施例4と同様で、デニール構成・ポリマの組合
せも実施例1と同様なものとして、紡糸、延伸同時仮撚
加工、製織、染色した。糸長差と風合を官能評価により
ランクづけした結果を表2に示した。
【0045】これらの結果より太デニールフィラメント
側の口金孔径の小さい口金を用いると、繊度比3倍以上
のデニール構成としたとき、糸長差は小さくなり嵩高性
・ソフト感に欠けるものとなってしまう事が分かる。
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】本発明は、太デニールフィラメントに対
し、細デニールフィラメントが大きな糸長差を発現し、
ソフトな風合とストレッチ性に優れ、かつ良好な張り、
腰、反発性を有する仮撚加工糸を提供する。
【0048】さらに、本発明の方法によると、デニール
差の大きい混繊糸が紡糸工程段階で得られ、次いで、延
伸同時あるいは延伸に引き続き仮撚加工すると、太デニ
ールフィラメントが芯部を構成し、細デニールフィラメ
ントがその周りに絡み付いたソフト感と張り・腰感を同
時に併せ持つ、従来、後混繊でしか得られなかった2層
構造加工糸を同時紡糸で得ることができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−112742(JP,A) 特開 平3−64543(JP,A) 特開 昭52−74024(JP,A) 特開 昭50−107204(JP,A) 特開 昭50−25821(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 1/00 - 3/48 D02J 1/00 - 13/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルからなる細デニールフィラ
    メントに対する太デニールフィラメントの単糸繊度比が
    少なくとも3倍以上で、細デニールフィラメントの単糸
    繊度が2d以下であり、太デニールフィラメントの固有
    粘度が0.7〜1.0、細デニールフィラメントの固有
    粘度が0.55〜0.65で太デニールフィラメントと
    細デニールフィラメントの固有粘度差が0.11以上で
    あり、且つ、下式を用いて計算した糸長差が5%を越
    、さらに毛羽数が5コ/m以下であることを特徴とす
    る仮撚加工糸。 (糸長差)={(Ln−Lm)/Lm}×100 Ln;細デニールフィラメントの長さ Lm;太デニールフィラメントの長さ
  2. 【請求項2】 太デニールフィラメントが芯部を形成
    し、細デニールフィラメントが鞘部を形成し、糸長差を
    発現した芯鞘2層構造となっていることを特徴とする請
    求項1記載の仮撚加工糸。
  3. 【請求項3】 ポリエステルからなる異繊度の仮撚加工
    糸を得るに際し、孔径の異なる少なくとも2種の吐出孔
    群を有する紡糸口金を用い、一方の吐出孔群(A)の吐
    出孔径が1mmΦ以上であり、吐出孔群(A)から固有
    粘度が0.7以上のポリマを、他方の吐出孔群(B)か
    ら固有粘度が0.65以下で且つ吐出孔群(A)に用い
    たポリマとの固有粘度差が0.11以上のポリマを、吐
    出孔群(A)から得られるフィラメントが吐出孔群
    (B)から得られるフィラメントより太くなるような吐
    出量比で、それぞれ独立したマルチフィラメントとして
    吐出させ、同時に引取り、次いで延伸と同時に仮撚加工
    することを特徴とする仮撚加工糸の製造方法。
  4. 【請求項4】 吐出孔群(A)の吐出孔径が2mmΦ以
    上であることを特徴とする請求項記載の仮撚加工糸の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 吐出孔群(B)の吐出孔径が0.3mm
    Φ以下であることを特徴とする請求項または記載の
    仮撚加工糸の製造方法。
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