JP3483093B2 - トロイダル式無段変速機用転動体およびその製造方法 - Google Patents

トロイダル式無段変速機用転動体およびその製造方法

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JP3483093B2 JP25499296A JP25499296A JP3483093B2 JP 3483093 B2 JP3483093 B2 JP 3483093B2 JP 25499296 A JP25499296 A JP 25499296A JP 25499296 A JP25499296 A JP 25499296A JP 3483093 B2 JP3483093 B2 JP 3483093B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車などの車両
やその他の回転動力源等において、無段変速機として使
用することが可能であるトロイダル式(転がり式)無段
変速機を構成する転動体およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】自動車などの車両において使用される変
速機としては、従来の3段や4段などの有段変速機に代
えて、無段変速機を採用する試みもなされており、数年
前より一部実用化されて市販されているものもある
(“新型車解説書 NISSANマーチ”平成4年1月
日産自動車株式会社 編集発行C−9頁〜C−48
頁)。
【0003】この無段変速機は、連続的に変速するた
め、燃費,動力性能が向上すること、変速ショックがな
いこと、等の特徴を持っており、その構造によって、ベ
ルト式とトロイダル式の2つに大別される。
【0004】その中で、トロイダル式の無段変速機は、
図1に示すように、潤滑油を介して接触する金属製転動
体を用いた構造を有するものであって、このトロイダル
式無段変速機1は、入力軸2に接続したローディングカ
ム3および連結軸4を介して一体で回転する入力ディス
ク5,5を備えていると共に、歯車6,7を介して出力
軸8を回転させる出力ディスク9,9を備え、入力ディ
スク5,5と出力ディスク9,9との間にパワーローラ
10,10,10,10を設け、各パワーローラ10は
ボールベアリング11を介して各々支持体12により支
持された構造を有するものである。
【0005】そして、このトロイダル式無段変速機1で
は、入力ディスク5と出力ディスク9との間で挟まれた
パワーローラ10の傾きを変化させ、入力ディスク5と
出力ディスク9の相対回転速度を変えて変速しつつ、入
力軸2から出力軸8へと動力を伝達する仕組みになって
いる(特開平1−229158号など)。
【0006】このようなトロイダル式無段変速機1の金
属製転動体(5,9,10)においては、トルクを伝達
するために入力ディスク5に対しローディングカム3に
よって荷重を加えるようにしているので、駆動した際に
入力ディスク5とパワーローラ10との間、およびパワ
ーローラ10と出力ディスク9との間に、最大4GPa
程度にまで達する高い接触圧力が生じると共に、転動体
内部の深い位置に高いせん断応力が発生する。
【0007】そのため、従来の場合においては、機械構
造用鋼に浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼も
どし等の表面硬化処理を施すことによって表面硬さを確
保し、深い硬化層を得るようにすることもあった(特開
平7−71555号など)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、入力デ
ィスク5、出力ディスク9、パワーローラ10等の転動
体の接触面では高い接触圧力が生じ、スピンすべりによ
って生じる発熱により転動体接触部の温度が上昇し、硬
さが低下することによって早期剥離、破損を起こし易
く、転動寿命を低下させるという問題点があった。
【0009】また、高い接触圧力が生じるため、転動体
内部の深い位置に高いせん断応力が生じ、最大せん断応
力深さZo位置付近を起点とする亀裂が発生し、ピッテ
ィング剥離に至る損傷が生じることがあった。
【0010】
【発明の目的】本発明は、上記した課題にかんがみてな
されたものであって、機械構造用鋼を素材とし、浸炭焼
入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを施し、あ
るいは、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周
波焼入れ焼もどしを施し、もしくは、高炭素鋼を素材と
し、高周波焼入れ焼もどしを施して、転動体表面および
最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を高めること
により、転動部の温度上昇による硬さの低下を防止し、
長寿命のトロイダル式無段変速機用転動体を提供するこ
とを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるトロイダ
ル式無段変速機用転動体は、請求項1に記載しているよ
うに、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を
用いたトロイダル式無段変速機において、機械構造用鋼
を素材とし且つ浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入
れ焼もどしが施されていて転動体表面の炭素濃度が0.
8%以上、最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度が
0.6%以上となっている構成としたことを特徴として
いる。
【0012】同じく、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体は、請求項2に記載しているように、潤
滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を用いたト
ロイダル式無段変速機において、機械構造用鋼を素材と
し且つ浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波
焼入れ焼もどしが施されていて転動体表面の炭素濃度が
0.8%以上、最大せん断応力深さZo位置での炭素濃
度が0.6%以上となっている構成としたことを特徴と
している。
【0013】同じく、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体は、請求項3に記載しているように、潤
滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を用いたト
ロイダル式無段変速機において、高炭素鋼を素材とし且
つ高周波焼入れ焼もどしが施されていて転動体表面の炭
素濃度が0.8%以上、最大せん断応力深さZo位置で
の炭素濃度が0.6%以上となっている構成としたこと
を特徴としている。
【0014】また、本発明に係わるトロイダル式無段変
速機用転動体の製造方法は、請求項4に記載しているよ
うに、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を
用いたトロイダル式無段変速機において前記転動体を製
造するに際し、素材として機械構造用鋼を用いて成形し
たあと浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もど
しを施して、転動体表面の炭素濃度を0.8%以上、最
大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を0.6%以上
とする構成としたことを特徴としている。
【0015】同じく、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体の製造方法は、請求項5に記載している
ように、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体
を用いたトロイダル式無段変速機において前記転動体を
製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用いて浸炭
焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼も
どしを施して、転動体表面の炭素濃度を0.8%以上、
最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を0.6%以
上とする構成としたことを特徴としている。
【0016】同じく、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体の製造方法は、請求項6に記載している
ように、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体
を用いたトロイダル式無段変速機において前記転動体を
製造するに際し、素材として高炭素鋼を用いて成形した
あと高周波焼入れ焼もどしを施して、転動体表面の炭素
濃度を0.8%以上、最大せん断応力深さZo位置での
炭素濃度を0.6%以上とする構成としたことを特徴と
している。
【0017】そして、上記トロイダル式無段変速機用転
動体およびその製造方法において、機械構造用鋼として
は、JISに制定された機械構造用炭素鋼であるSC
や、機械構造用合金鋼であるSNC,SNCM,SC
r,SCM,SMn,SMnC等を用いることができ、
必要に応じて適宜の添加元素を適量含有させたものを用
いることができる。
【0018】また、高炭素鋼としては、JISに制定さ
れた工具鋼であるSK,SKH,SKS,SKD,SK
Tやばね鋼であるSUPや軸受鋼であるSUJ等を用い
ることができ、必要に応じて適宜の添加元素を適量含有
させたものを用いることができる。
【0019】また、場合によっては表面硬化処理後にシ
ョットピーニングやバニシング加工を行うこともでき
る。
【0020】
【発明の作用】本発明に係わるトロイダル式無段変速機
用転動体は、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転
動体を用いたトロイダル式無段変速機において、請求項
1に記載の発明では機械構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼
入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしが施されて
いて、また、請求項2に記載の発明では機械構造用鋼を
素材とし且つ浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに
高周波焼入れ焼もどしが施されていて、さらにまた、請
求項3に記載の発明では高炭素鋼を素材とし且つ高周波
焼入れ焼もどしが施されていて、それぞれ、転動体表面
の炭素濃度が0.8%以上、最大せん断応力深さZo位
置での炭素濃度が0.6%以上となっていることを特徴
とするものであり、また、本発明に係わるトロイダル式
無段変速機用転動体の製造方法は、潤滑油を介して接触
する複数個の金属製転動体を用いたトロイダル式無段変
速機において前記転動体を製造するに際し、請求項4に
記載の発明では素材として機械構造用鋼を用いて成形し
たあと浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もど
しを施して、また、請求項5に記載の発明では素材とし
て機械構造用鋼を用いて成形したあと浸炭焼入れまたは
浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを施し
て、さらにまた、請求項6に記載の発明では素材として
高炭素鋼を用いて成形したあと高周波焼入れ焼もどしを
施して、それぞれ、転動体の表面の炭素濃度を0.8%
以上、最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を0.
6%以上とするようにしたことを特徴とするものである
が、このような構成とした理由について作用と共に説明
する。
【0021】図1に例示したようなトロイダル式無段変
速機1の入力ディスク5、出力ディスク9、パワーロー
ラ10などの転動体は、高荷重を受けながら高速で回転
する。そして、高荷重を受けながら高速で回転する場
合、転動部ではスピン滑りによって発熱を生じて温度が
上昇するため、転動部の硬さは熱によって低下(軟化)
する。
【0022】例えば、図1のトロイダル式無段変速機1
に適用した場合、転動部を通過した潤滑油の温度は、流
入前に比較して30℃程度上昇していることから、潤滑
油の温度が100℃では、転動体の接触部は最低でも1
30℃以上の高温となっていることが推定される。
【0023】一方、一般に、表面硬化処理した鋼材の炭
素濃度と常温硬さとの間には、図18に示すような関係
があり、マルテンサイト中に固溶する炭素濃度0.6%
までは、炭素濃度の増加と共に硬さが増し、0.6%以
上で硬さは一定となる。しかし、上記のような高温環境
で使用される部品の場合、高温硬さすなわち焼もどし硬
さに着目する必要があり、図18に示すように焼もどし
温度を〜300℃として硬さを測定した場合、焼もどし
温度が高温になる程、常温硬さで同等の硬さであった
0.6%以上で、硬さの低下が著しく、軟化抵抗に差が
あることがわかった。
【0024】従って、本発明では、機械構造用鋼を素材
とし、浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もど
しを施すことによって、あるいは、浸炭焼入れまたは浸
炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを施すこと
によって、あるいは、高炭素鋼を素材とし、高周波焼入
れ焼もどしを施すことによって、転動体表面の炭素濃度
を0.8%以上とすることで、高荷重・高回転下におい
ても軟化抵抗に優れ、硬さの低下が抑制され、接触後の
陥没量が低減し、剥離寿命が向上する。
【0025】また、転動体内部の最大せん断応力深さZ
o位置付近での応力に対する材料の降伏強度を確保する
ため、炭素濃度を0.6%以上とすることで、最大せん
断応力深さZo位置付近を起点とする亀裂形成を抑制
し、剥離寿命が向上する。
【0026】
【発明の効果】本発明に係わるトロイダル式無段変速機
用転動体では、潤滑油を介して接触する複数個の金属製
転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、請求
項1に記載の発明では機械構造用鋼を素材とし且つ浸炭
焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしが施され
ていて、また、請求項2に記載の発明では機械構造用鋼
を素材とし且つ浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さら
に高周波焼入れ焼もどしが施されていて、さらにまた、
請求項3に記載の発明では高炭素鋼を素材とし且つ高周
波焼入れ焼もどしが施されていて、それぞれ、転動体表
面の炭素濃度が0.8%以上、最大せん断応力深さZo
位置での炭素濃度が0.6%以上となっている構成とし
たから、高荷重・高回転下においても軟化抵抗に優れ、
硬さ低下が抑制され、接触後の陥没量が低減し、剥離寿
命が向上すると共に、転動体内部の最大せん断応力深さ
Zo位置付近での応力に対する素材の降伏強度が確保さ
れ、最大せん断応力深さZo位置付近を起点とする亀裂
生成が抑制され、剥離寿命が向上することとなって、転
動疲労寿命をより一層向上させたトロイダル式無段変速
機用転動体とすることが可能であるという著しく優れた
効果がもたらされる。
【0027】そして、請求項1に記載しているような浸
炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを採用
したときでも、また、請求項2に記載しているような浸
炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼
もどしを採用したときでも、あるいは請求項3に記載し
ているような高周波焼入れ焼もどしを採用したときで
も、それぞれの焼入れ方法がもつ特長を活かしたうえ
で、いずれのときにも、転動疲労寿命をより一層向上さ
せたトロイダル式無段変速機用転動体とすることが可能
であるという著大なる効果がもたらされる。
【0028】また、本発明に係わるトロイダル式無段変
速機用転動体の製造方法では、潤滑油を介して接触する
複数個の金属製転動体を用いたトロイダル式無段変速機
において前記転動体を製造するに際し、請求項4に記載
の発明では素材として機械構造用鋼を用いて成形したあ
と浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを
施して、また、請求項5に記載の発明では素材として機
械構造用鋼を用いて成形したあと浸炭焼入れまたは浸炭
窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを施して、さ
らにまた、請求項6に記載の発明では素材として高炭素
鋼を用いて成形したあと高周波焼入れ焼もどしを施し
て、それぞれ、転動体の表面の炭素濃度を0.8%以
上、最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を0.6
%以上とするようにしたから、請求項1ないし3に記載
したごとき転動疲労寿命がより一層向上したトロイダル
式無段変速機用転動体を製造することが可能であるとい
う著大なる効果がもたらされる。
【0029】
【実施例】この実施例においては、先に説明した図1の
トロイダル式無段変速機1に適用した場合について述べ
る。すでに説明したように、図1に示すトロイダル式無
段変速機1は、金属製転動体である入力ディスク5,出
力ディスク9およびパワーローラ10を1組とし、必要
とされる動力伝達性能により1組ないしは複数組(本実
施例の場合は2組)から構成される。
【0030】これらの金属製転動体である入力ディスク
5,出力ディスク9およびパワーローラ10において、
その素材としてはいずれも表1ないし表2に示すような
機械構造用鋼であるSCM420H、SCM440H、
SKH9、S55Cを使用した。
【0031】熱間鍛造後焼準処理を行った鋼材を部品形
状に機械加工した後、SCM420Hには図2〜図7に
示す表面硬化処理条件の浸炭焼入れ焼もどし、または図
8〜図11に示す表面硬化処理条件の浸炭窒化焼入れ焼
もどし、または図12に示す表面硬化処理条件のプラズ
マ浸炭焼入れ焼もどしを施した。
【0032】また、SCM440Hには図13〜図14
に示す表面硬化処理条件の浸炭焼入れ後高周波焼入れ焼
もどし、または図15〜図16に示す表面硬化処理条件
の浸炭窒化焼入れ後高周波焼入れ焼もどしを施した。
【0033】さらにまた、SKH9には図17に示す表
面硬化処理条件の高周波焼入れ焼もどしを施し、S55
Cにも図17に示す表面硬化処理条件の高周波焼入れ焼
もどしを施した。
【0034】なお、図2〜図12に示す表面硬化処理条
件の浸炭焼入れ焼もどし、浸炭窒化焼入れ焼もどし、プ
ラズマ浸炭焼入れ焼もどしに際しては、網状炭化物を球
状化するために2次焼入れを実施した。
【0035】そして、各条件で表面硬化処理を行った
後、転動面の表面粗さをRa=0.03μm程度に仕上
げて、入力ディスク5,出力ディスク9およびパワーロ
ーラ10を作製した。
【0036】そして、作製した入力ディスク5,出力デ
ィスク9およびパワーローラ10の品質を確認するため
に、EPMAを用いて部品断面の炭素濃度を測定し、ま
た、ビッカース硬度計で常温での硬さ測定を行った。そ
してさらに、高温での硬さを知るために、300℃で3
時間焼もどし処理を施したのちに硬さを測定した。
【0037】次いで、これらの転動体を図1に示した様
に組み付けてトロイダル式無段変速機1とし、表3に示
す試験条件で耐久試験を実施して、耐久試験後の陥没深
さを測定した。
【0038】これらの測定結果を同じく表1ないし表2
に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】表1ないし表2より明らかなように、本発
明の実施例1〜6に示すごとく、浸炭焼入れ焼もどしま
たは浸炭窒化焼入れ焼もどしによって転動体表面の炭素
濃度が0.8%以上、最大せん断応力深さZo位置での
炭素濃度が0.6%以上となっているものとすることに
よって、耐久試験100時間経過後においても表面硬さ
を確保することが可能であり、転動面の陥没深さも小さ
いものとすることが可能であって、これにより剥離の発
生が大幅に低減され、転動疲労寿命に優れるものにでき
ることが確かめられた。
【0043】また、実施例7に示すごとく、プラズマ浸
炭焼入れ焼もどしを行って所定の硬さとなっているもの
としたときでも、浸炭焼入れ焼もどしや浸炭窒化焼入れ
焼もどしを行って所定の硬さとなっているものとしたと
きと同様に優れたものにすることができ、高温処理のた
め浸炭処理時間の大幅な短縮が可能であることが確認さ
れた。
【0044】さらにまた、実施例8〜9に示すごとく浸
炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後に高周波焼入れ焼もど
しを施すことによっても、転動面の陥没深さおよび寿命
は浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを
施したものと同等に優れたものであり、浸炭処理時間の
短縮が可能であることが認められた。
【0045】さらに、実施例10に示すごとく高炭素鋼
に高周波焼入れ焼もどしを施した場合においても浸炭焼
入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを施したも
のと同等に優れたものであり、処理時間の大幅な短縮が
可能であることが認められた。
【0046】これに対し、比較例1〜9に示すごとく表
面炭素濃度が0.8%未満であったり、最大せん断応力
深さZo位置での炭素濃度が0.6%未満である場合に
は、耐久試験前の硬さが同等であったとしても焼もどし
軟化抵抗が低下し、転動面の陥没量が多く、短時間で剥
離が発生するものとなっていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】トロイダル式(転がり式)無段変速機の構造を
例示する断面説明図である。
【図2】本発明の実施例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図5】本発明の比較例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図6】本発明の比較例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図7】本発明の比較例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例で採用したガス浸炭窒化焼入れ
焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例で採用したガス浸炭窒化焼入れ
焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図10】本発明の比較例で採用したガス浸炭窒化焼入
れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図であ
る。
【図11】本発明の比較例で採用したガス浸炭窒化焼入
れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図であ
る。
【図12】本発明の実施例で採用したプラズマ浸炭焼入
れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図であ
る。
【図13】本発明の実施例で採用したガス浸炭後高周波
焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図で
ある。
【図14】本発明の比較例で採用したガス浸炭後高周波
焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図で
ある。
【図15】本発明の実施例で採用したガス浸炭窒化後高
周波焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明
図である。
【図16】本発明の比較例で採用したガス浸炭窒化後高
周波焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明
図である。
【図17】本発明の実施例および比較例で採用した高周
波焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図
である。
【図18】表面硬化処理した鋼材の炭素濃度と硬さとの
関係を例示するグラフである。
【符号の説明】
1 トロイダル式(転がり式)無段変速機 5 入力ディスク(転動体) 9 出力ディスク(転動体) 10 パワーローラ(転動体)
フロントページの続き (72)発明者 尾 谷 敬 造 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (56)参考文献 特開 平7−71555(JP,A) 特開 平6−159463(JP,A) 特開 平7−286649(JP,A) 特開 平7−208568(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 13/00 - 15/56 F16C 19/00 - 19/56 F16C 33/30 - 33/66 C21D 9/40 C23C 8/00 - 12/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、機械
    構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭
    窒化焼入れ焼もどしが施されていて転動体表面の炭素濃
    度が0.8%以上、最大せん断応力深さZo位置での炭
    素濃度が0.6%以上となっていることを特徴とするト
    ロイダル式無段変速機用転動体。
  2. 【請求項2】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、機械
    構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入
    れ後さらに高周波焼入れ焼もどしが施されていて転動体
    表面の炭素濃度が0.8%以上、最大せん断応力深さZ
    o位置での炭素濃度が0.6%以上となっていることを
    特徴とするトロイダル式無段変速機用転動体。
  3. 【請求項3】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、高炭
    素鋼を素材とし且つ高周波焼入れ焼もどしが施されてい
    て転動体表面の炭素濃度が0.8%以上、最大せん断応
    力深さZo位置での炭素濃度が0.6%以上となってい
    ることを特徴とするトロイダル式無段変速機用転動体。
  4. 【請求項4】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において前記転
    動体を製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用い
    て成形したあと浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入
    れ焼もどしを施して、転動体表面の炭素濃度を0.8%
    以上、最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を0.
    6%以上とすることを特徴とするトロイダル式無段変速
    機用転動体の製造方法。
  5. 【請求項5】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において前記転
    動体を製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用い
    て浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入
    れ焼もどしを施して、転動体表面の炭素濃度を0.8%
    以上、最大せん断応力深さZo位置での炭素濃度を0.
    6%以上とすることを特徴とするトロイダル式無段変速
    機用転動体の製造方法。
  6. 【請求項6】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において前記転
    動体を製造するに際し、素材として高炭素鋼を用いて成
    形したあと高周波焼入れ焼もどしを施して、転動体表面
    の炭素濃度を0.8%以上、最大せん断応力深さZo位
    置での炭素濃度を0.6%以上とすることを特徴とする
    トロイダル式無段変速機用転動体の製造方法。
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